Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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やっと更新です。遅くなりました!!

BOX周回頑張ったー!!
でもすぐに種火やらQPやら素材が消えた…なぜだろう。
聖杯戦線面白かったですね。次のイベントは何かと待ち遠しいです。


では、本編をどうぞ!!




劉備と劉備

493

 

 

益州の劉備が兵馬妖を引き連れて戦を仕掛けてきた。

劉備軍と益州軍が兵馬妖と交戦。ただ無心に突撃してくる不気味さがあるが絶対に倒せないわけではない。

 

「単騎で相手をするな、複数でかかれ。まずは足を破壊するんだ!!」

 

俵藤太が大きく叫びながら兵馬妖の戦い方を兵士たちに伝える。

破壊するには剣や弓なんかよりも鈍器などが有効だ。だからこそ斗詩が持つ金光鉄槌は重宝される。

 

「てやああああああ!!」

 

斗詩が金光鉄槌を振るって兵馬妖を破壊していく。

 

「さっすが斗詩。アタイの嫁だぜ」

「文ちゃん、褒めてくれるのは嬉しいけど今は敵に集中して!!」

「分かってるって。あらよっと!!」

 

猪々子が斬山刀を真横に一閃して兵馬妖の胴体を真っ二つにする。彼女もまたそこらの兵士たちなんかよりも実力は一線を越えている。

愛紗や馬超たちの実力に彼女たちは霞んでしまうが実際のところ実力は本物である。一軍を任せられるのだから当たり前だ。

 

「んあ?」

 

真っ二つにするが兵馬妖はまだ動く。完全にバラバラにしなければ倒したことにならない。

 

「えい!!」

 

真っ二つにされた兵馬妖を金光鉄槌で完全に砕く。

 

「油断大敵だよ」

「ありがと斗詩ー!!」

「わわっ、今は抱き着かないで!!」

「なら後ならいくらでもいいのか?」

「もう!!」

 

いきなり大きな爆発音が別の所から響く。

 

「あっちの方は確か…厳顔さんがいるほうだっけ」

 

爆発音の正体は厳顔もとい桔梗の武器である豪天砲だ。大砲の威力は人間だろうが土人形だろうが吹き飛ばす武器である。

敵である時は恐ろしかったが味方だとこの上なく頼もしい。

 

「はあああああああ!!」

 

焔耶は己の武器である鈍砕骨を全力で振るいまくる。彼女の武器も兵馬妖に有効だ。

襲い掛かる兵馬妖を全て破壊しながら城門へ目指す。

 

「桃香さまあああああああ!!」

 

暗影によって主である桃香が城門の上へと投げ飛ばされたからだ。忠誠を誓っているため彼女としてはすぐにでも助けに行きたい気持ちでいっぱいになる。

最初は暗影を叩き潰したい衝動に襲われたが愛紗と翠がその役目を担っている。暗影を斬る役目は愛紗たちに任せて焔耶は桃香の救出に向かっている。

 

「邪魔だあああああ!!」

 

城門へと向かうが兵馬妖が邪魔してくる。倒しても倒してもキリが無いくらいだ。

気が付けば囲まれてしまっている。

 

「くそっ、囲まれたか!!」

「そりゃ1人で突っ走ってれば囲まれるに決まってんだろ」

 

兵馬妖の後ろから声が聞こえた瞬間に殴打音が聞こえ、兵馬妖殴り飛ばされた。

 

「お前は燕青か!!」

「私もいるよ!!」

「あ、お前まで!!」

「お前じゃなくて馬岱」

 

燕青と馬岱が駆けつけてくれた。

 

「まったく1人で突っ走って馬鹿なの?」

「馬鹿ではない!! 桃香様が捕らわれたんだから助けにいくのは当たり前だろ!!」

 

彼女の気持ちは分からんでもないがもう少し考えるべきだと言いたそうな顔をする馬岱。

 

「ワタシは両手両足が千切れようとも桃香様を助けに行くぞ!!」

「両手両足が千切れてたら助けにいけないでしょ」

 

馬岱は呆れる。確かに両手両足が千切れれば助けに行けない。尤も今の言葉は比喩のようなものなのは分かっている。

 

「焔耶」

「あんだよ燕青」

「分かる」

「おお、分かってくれるか!!」

 

燕青は物凄く共感出来てしまった。彼もマスターが捕らわれたら両手両足が折れようとも助けに行く。

 

(え、燕青さんってこいつと同類?)

 

同類ではないが主の忠誠の堅さと重さは同じかもしれない。

 

「主が捕まったら何が何でも助けにいくよなぁ。それこそ火の中、水の中でも」

「もちろんだ。分かってるな燕青!!」

 

ガッシリと握手する2人。

 

「もう、共感するのはいいけど今はそれどころじゃないでしょ!!」

「そうだった」

 

近づいてきた兵馬妖の首を蹴り飛ばして拳の連打で破壊する。

 

「おおーっ、燕青さん凄い。素手で倒しちゃった。さっきも見てたけど何者なの?」

「ただの侠客だ」

 

そう言って兵馬妖に拳を叩きこんだ。

 

 

494

 

 

爆発音が戦場に轟く。

 

「うおおおおおおおおお!!」

 

更に桔梗の気合の籠った声も響き渡る。

豪天砲が放たれる度に兵馬妖が吹き飛んでいく。

 

「見事な一撃だな」

「藤太殿か。なぁにまだまだよ」

 

もう1発、豪天砲を撃つとまた兵馬妖がコナゴナに吹き飛んでいく。

 

「それにしても火薬は残ってたのか」

「ああ、もしもの為に残しておいた」

 

もしもの為に何か用意しておくのは予想外な事が起きた時に役に立つ。

益州の劉備が兵馬妖なんて物を出してきたのは本当に予想外な展開すぎるものだ。

 

「お主の剛弓も凄いと思うがな」

 

俵藤太が力強く弓の弦を引いて放つ。矢は真っすぐに兵馬妖の頭を撃ち抜いた。

 

「あの堅い土人形をよく矢で貫けるな」

「それを言うなら紫苑殿もだろう」

 

視線を移動させると紫苑が矢を連続で放って兵馬妖を撃ち抜いているのが見えた。撃ち抜いた兵馬妖が一瞬だけ止まった隙に兵士たちに指示して攻めさせている。

 

「私が撃ち抜いた後に複数で掛かりなさい。単騎で突っ込んではダメよ!!」

 

兵士たちに指示した後はすぐに弓の弦を引いて矢をまた放っていく。矢を弓の弦で引いて放つ動作がとても早くて腕が何本も見える錯覚を起こしそうになるほど。

 

「くらいなさい!!」

 

連続で放つだけでなく、力を込めた一撃の矢は胴体に大穴を開ける程の威力。

 

「やるな紫苑のやつめ。なら、わしも負けておれんな」

 

豪天砲の砲口を上に向ける。

 

「とっておきだ、豪天砲撃!!」

 

空高く放たれた砲弾は複数に分かれて兵馬妖の軍団に降りかかる。

散弾銃ならぬ散弾砲と言うべきか、兵馬妖たちを一気に破壊していった。

 

「ほう、その大砲はそんなことまで出来るのか。前の戦では使わんかったようだが」

「これはこういう多数相手に有効なんじゃよ。張飛もとい鈴々を相手してる時は単騎じゃったからな。一対一の場合だと寧ろ当たらん」

「なるほどな…見れば見る程、恐ろしい武器だ」

 

よくよく考えてみると本当に恐ろしい。三国志演義を元になった異世界で大砲があるだけで戦争の常識が変わる。

豪天砲が大量生産されていれば劉璋は大陸の覇権を手に入れられたかもしれない。

 

「その武器はまだあるのか?」

「いや、これだけだ。成都の倉庫で埃に被っていたのをわしが見つけた。火薬を使う武器なんて最初は驚いたし、金がかかると思ったが…使ってみると恐ろしい威力だと驚いた」

 

銃や大砲を初めて使った者は誰もが驚いたはずだ。そして誰もがその威力に驚き、どんな戦争でも勝てると思ったはずである。

 

「誰が造ったか分かるか?」

「知らん。豪天砲の他に説明書きは発見したが作成者の名は残ってなかった」

「そうか。うーむ、ちと気になるな」

 

三国時代に大砲を作成した者が気になる。大砲の本質が分かる者ならば、すぐさま作成者を探すはずだ。

曹操あたりならばすぐに大砲の価値を理解して戦に取り入れるだろう。

 

「たくさんの豪天砲と大量の火薬があれば大陸の覇権を手に入れられるとわしも思った事はある。だが火薬は貴重でな…難しいものだ」

 

恐ろしい武器だが火薬の貴重さと豪天砲を大量生産できないという事で大砲というものは大陸に広まっていない。

 

「そもそも豪天砲の設計図がなくてな。腕の良い鍛冶師にも見てもらっても造る事が出来ないと言われたよ」

「まあ、その武器は剣やら槍を造ってる者に見せても分からんだろうな」

 

畑違いというやつである。剣や槍ばかりを造ってきた職人が大砲を見せられて造れと言われても造れるはずがない。

 

「桔梗、俵殿。無駄話をしていないで腕を動かしなさい!!」

「おっと、紫苑殿に怒られてしまった」

「紫苑は怒ると怖いからな。わしも怒っている時の紫苑だけには敵わん」

 

軽く笑って桔梗は豪天砲を撃つ。

 

「拙者も負けてられんな」

 

紫苑も桔梗も大活躍。これを見て俵藤太もただ指を咥えて見てるだけなんて事はしない。

矢を手に取り、紫苑に負けない速度で兵馬妖を撃ち抜いていく。

 

「まだまだ!!」

 

俵藤太のクラスはアーチャーなので弓矢が主な武器だが他にもある。

矢を撃ち終わったら兵馬妖の軍団に走り、刀を抜刀して斬り裂いていく。そして高く跳び上がって米俵を投げ飛ばす。

 

「美味しいお米を喰らえい!!」

「なに、米だと!?」

「え、お米?」

 

戦場に米俵が舞うという謎の光景を桔梗と紫苑は見た。

 

 

495

 

 

軍師陣営ではまたも忙しなく戦場の最新の情報を聞いては策を考え、各部隊に指示を出していく。

 

「ええい、いきなり異変が起きるとはな!!」

 

怪異や異変は人間の都合を考えてはくれない。いきなり遭遇したり、発生したりするものだ。

 

「雛里ちゃん。各戦場で新しい情報はある?」

「うん、紫苑さんと厳顔さんの部隊が土人形の兵隊を順調に倒しているみたい。猪々子さんに斗詩さんの部隊も同じくです」

「他は?」

「鈴々ちゃんの部隊は馬休さんたちの西涼騎馬隊と合流して戦ってます。星さんには先ほど電々ちゃんと雷々ちゃんの部隊に合流するように通達しました」

「分かった。楼杏さんと風鈴さんもの部隊も合流させてください」

 

朱里はすぐさま頭の中に描く戦場を更新して、次の手を考えてく。

 

「ライネス。サーヴァントたちの配置はどうなっている?」

「哪吒殿、燕青殿、俵藤太殿は既に成都の前で戦っている。各部隊に合流しているそうだ」

「他は?」

「呂布奉先殿は戦をすると分かった瞬間に発進した」

「ストッパーとして荊軻を付けろ」

「伝えておくよ」

 

諸葛孔明と司馬懿(ライネス)の軍師コンビも戦場の状況を確認し、英霊達に指示を出している。

 

「マスターはどうした?」

「我が弟子なら秦良玉殿と蘭陵王殿、李書文殿に炎蓮殿、傾殿を連れて成都に向かった」

「そのメンバーなら大丈夫だろう。現場での指示はマスターに任せるしかない」

 

兵馬妖を指揮する者は劉備を名乗る者。しかし兵馬妖が存在するならば裏に于吉が居る可能性は高い。

于吉がいるかもしれないと聞いて炎蓮はただ待っていられない。剣の抜いてすぐさま城門へ向かったのだ。

 

「報告です!!」

 

ゼェゼェと息が辛そうだが1人の兵士が慌てて報告をする。

 

「天子様たちの馬車が襲われています。援軍を寄こして欲しいとの事です!!」

「「「ええ!?」」」

 

驚く軍師陣営。まさか天子姉妹たちも襲われているとは驚いた。

驚いたがすぐに冷静になる。襲われる可能性があるからこそ一緒に遠征に来ているのだ。

護衛部隊は配置しているが兵馬妖相手では足らないかもしれない。

 

「恋さんを急いで向かわせてください!!」

「あたしも行くわ!!」

 

後ろを振り向くと玄奘三蔵は如意金箍棒を持っていた。

 

「三蔵殿。頼む」

「まっかせて。恋ちゃん行きましょう……って、もう走り出してるー!?」

 

恋は指示出された瞬間には走り出していた。

 

「待ってー!!」

 

急いで追いかける玄奘三蔵であった。

 

「天子姉妹の方には始皇帝に武則天、楊貴妃がいるから大丈夫な気がするが…まあ、いいか」

 

 

496

 

 

藤丸立香たちは戦場を駆け抜けて急いで成都の城門に向かう。

 

「蘭陵王は先に馬で向かって。そっちの方が速い。現場での状況は任せる!!」

「了解しましたマスター!!」

 

蘭陵王は愛馬を召喚して颯爽と駆けていく。

戦場は兵馬妖がそこら中に出現して襲い掛かってきて混乱中だ。

 

「おらああああああああああ!!」

 

炎蓮は兵馬妖を真っ二つにしながら進んでいる。

 

「于吉の野郎は何処だ。ぶった斬ってやる!!」

 

兵馬妖が出現したという事は于吉が絡んでいる可能性は高い。

 

「なんかあいつ凄い怒りだな」

「炎蓮さんは于吉と因縁があるからね」

 

過去に操られて自分の家族を殺させようとした事があった。そんな奴に怒りが湧いてこないはずがない。

 

「そう言えば傾さんも来てくれるなんて助かったよ」

「手柄を立てれば今の扱いが変わるかもしれんからな」

 

今の傾は劉備陣営で月と同じ侍女をしているのだが、大将軍だった頃の扱いと今とでは全く違うので少しでも改善しようと戦場に出たのである。

 

「戦場に出る時も侍女の姿なんだね」

「好きでこの恰好をしているわけではない!!」

「大丈夫。仲間にメイド服っていうか侍女姿で戦う人がいるから」

 

裸エプロンで戦う時もあるタマモキャット。

 

「そいつは色々と大丈夫なのか?」

「大丈夫。意思疎通は出来るから」

「意思疎通って…」

 

タマモキャットは時たまよく分からない事を言う時があるが、あんがい真理を突いた事を言うので油断できない。

 

「ところで裸で前掛けという姿が好きなのか?」

「………男として嫌いじゃない」

「ほう」

 

ニヤリと笑う傾。今度、誘惑する時に裸エプロンでもやろうかと考えているのかもしれない。

 

「マスターダメですよ」

 

後ろで聞いていた秦良玉から注意されるのであった。

 

「まあ、後で見せてやる」

「マスター」

「いや、何でオレが注意されるの」

 

兵馬妖が左右から襲ってくる。

 

「リャンさんは左を。李書文は右を!!」

「はい、任せてください」

「分かった」

 

左側の兵馬妖を秦良玉がトネリコの槍で突き、右の兵馬妖は李書文が槍で突く。

 

「李書文はそのまま炎蓮さんを追いかけて前衛を頼む。リャンさんは傾さんと後衛を頼む」

「分かりました」

「しょうがないから指示に従ってやる」

「魔術礼装『カルデア戦闘服』を起動。全体強化!!」

 

強化付与によって全身に力が入る。

 

「はああああ!!」

 

傾の鞭捌きが兵馬妖を襲う。

 

「ふむ、立香の妖術は効くな。もっと凄い妖術は無いのか。この土人形どもを一掃できるようなやつ」

「ないです」

 

藤丸立香の魔術は基本的にサポート型だ。強大な力を行使する魔術は使えない。

 

「もしかしたら概念礼装の組み合わせならいけるか?」

 

概念礼装を展開して何か出来ないかと頭を捻った瞬間に正面から炎蓮が飛んできた。

 

「のぶ!?」

「痛ーな」

「ど、どうしたの炎蓮さん?」

「なんかでけえのがいてな」

 

ズシンズシンという重低音が聞こえてくる。

目の前には大きな兵馬妖が現れた。

 

「どうやら他の兵馬妖とは違うようだぞ」

 

すぐさま李書文が藤丸立香たちの前に出て槍を構える。

巨大兵馬妖。報告で呂布奉先が倒した事がある兵馬妖と聞いている。

他の兵馬妖と違って体格が大きく、大きな槌を持っている。何処からどう見ても重量級の兵士だ。

 

「他にも来ましたよ」

 

今度は土で形成された馬に乗った兵馬妖に大きな剣を持った兵馬妖まで出現した。今まで槍を持った兵馬妖しか見てこなかったが兵馬妖にも種類があるようだ。

人形の軍隊を創るならば種類がいくつかあってもおかしくはない。今まで見てきた兵馬妖が一般兵だとすると、目の前の新たな兵馬妖は将クラスなのかもしれない。

 

「他の土人形と出来が違うってか」

「そのようですね。なら戦闘準備!!」

 

 

497

 

 

「きゃああああああああああ!?」

 

桃香は暗影によって空高く投げ飛ばされ、城門の上まで到達する。

 

「痛いっ!?」

 

お尻を強く打ってしまってジンジンするのでさすってしまう。お尻が六つに割れてないか心配である。

 

「うう…痛いって、そんな事よりも!!」

 

すぐに城門の上に居る事を理解して益州の劉備が何処にいるか探す。

案外すぐに視界に入った。益州の劉備は戦場を見下ろしていた。

 

「まったく…暗影め。無理やりここに飛ばしてくるとか予想外だ。正直に言うと君には自分の足でここまで来てほしかった」

 

益州の劉備の視線が桃香を捉える。

 

「初めまして…というべきだろうな我々は」

「初めましてだと思いますけど」

「そうだな。ただ私が一方的に君の事を知っているだけだ」

 

桃香は益州の劉備を知らない。しかし向こうは桃香の事をよく知っているような素振りだ。

桃香たちの活躍は大陸に広まっているから第3者からしてみれば一方的に知っているという意味合いかと思ったが、彼からの口ぶりからだと何か違う。

本当に何処かで出会って会話でもしたかのような感じであるのだ。

 

「初めましてかと思いましたけど……何処かで会った事ありますか?」

「いいや、君と出会うのは初めてだよ。目の前にいる君とはね」

 

何処か引っかかる言い方だ。

初めて出会うはずなのに向こう側は何処かで出会っているニュアンスを含んでいる。特に「目の前にいる君とは」という台詞が物凄く引っかかる。まるで別の自分と出会っているような言い方だ。

 

「貴方はどうして戦いをまた始めてしまったんですか」

「言っただろう益州を守るためだ。目の前にいる侵略者にそんな事を言われるとはな」

 

一方的に悪いと言われているが飲み込むしかない。実際に桃香達は侵略者なのだからだ。しかし桃香が益州の劉備を止める理由はある。

 

「……私たちは侵略者だから貴方が益州を守るためにまだ戦うというのは分かります。ですが仲間の兵士まで襲うのはあんまりです!!」

 

自分たちは侵略者だ。攻め込む理由があっても侵略者だという事実は消えない。

益州の劉備が守るために兵馬妖で桃香達と戦うというのならば変ではない。しかし益州の劉備は国の為に戦っていた益州の兵士たちまでも殺そうとしている。

仲間であった兵士たちを襲う理由は敗北してしまって桃香達に投降したからだ。国の為に戦って負けて、勝手に裏切り者扱いされて国から処分される事になってしまっては最悪である。

 

「私が言うのもおかしいかもしれませんが益州の兵士たちは国を守るために頑張って戦いました。なのに殺すのはあんまりです。これ以上はやめてください!!」

「敵国の兵士の身を案じているとやはり優しいな」

「なら…」

「だが、関係ない。そもそも私はそんな話をしたいわけじゃないんだ」

「え?」

 

ため息を吐く益州の劉備。まるで兵馬妖が益州の兵士を襲っているのはついでのような感じだ。

 

「私は君と夢について語りたいんだ」

「夢…ですか?」

「ああ。先ほどにも言ったが私の夢は大陸の平和だ」

 

大陸の平和。誰もが願っている夢である。

 

「私も大陸の平和は願ってます」

 

桃香の夢は大陸の平和であり、民たちの笑顔だ。その夢のために彼女は今まで戦ってきている。

 

「同じ夢だな」

「…はい」

「大陸の平和のために君は何をしてきた?」

 

大陸の平和のために桃香は今まで何をしてきたか。質問されてもすぐに答えが出てこなかった。

桃香は愛紗たちと共に困っている人々を助けてきた。平原や徐州、新野では治安を良くしようと仲間たちと頑張ってきた。頑張って来た結果、民たちからは凄く感謝されてきたのだ。

頑張ってきたが大陸の平和に繋がるかと言われれば微妙なところだ。

 

「平原に徐州に新野……統治してきて民からの感謝が多々あったのは知っている。しかしそれが大陸の平和につながっていないだろう」

 

大陸のごく一部だけが平和では意味が無い。それでは大陸の平和ではない。

 

「もしも徐州に曹操が侵攻してこなかったら良い国になっていたかもしれんな。しかし良い国止まりだ。大陸の平和は実現できない」

 

頑張ってきた事を否定されるのは嫌なものだ。徐州では本当に頑張って治安を良くしてきた。陶謙の後継として徐州をより良くするためにみんなと頑張ってきたのである。

 

「平原や徐州、新野のどれかで上手くいったとしよう。だが次は考えていたか?」

 

より良い国になったとして次を考えていたか。

大陸の平和が最終目標だとして徐州などをより良い治安としたとしても、それは大陸の平和の縮図みたいなものだ。

大陸の平和とは徐州でなく他の州全てを良い治安にしてこそだ。徐州を良くしたとしても他の州が良く無ければ意味は無い。

 

「平和のために何を考えていたんだ?」

「そ、それは…」

「答えられんだろう。大陸を平和にしたいと思っていてもどうすればいいか分からないんじゃないか?」

 

否定できなかった。

大陸を平和にしたいと願っていてもどうすればいいか分からない。

最初は各州の州牧たちと手を取り合って皇帝を中心に力を合わせれば良いなんて考えていたが漠然としすぎている。

人は殺し合うのではなく対話によってわかり合えると信じて疑わない気持ちのある桃香だからこそ、手を取り合って力を合わせる事が出来ると思っていた。

彼女の考えは良いものであり甘すぎるものだ。確かに手を取り合って力を合わせる事は出来る。

愛紗や鈴々は元は赤の他人であるが今や姉妹の契りを交わすほどの仲になった。だが分かり合える人間がいれば分かり合えない人間だっているのだ。

 

「どうすれば大陸に平和を訪れさせるか考えがなければ意味は無い。ただ願っているだけでは夢想家だ」

 

益州の劉備の言葉に黙ってしまう桃香。

 

「私はちゃんと考えている」

「じゃあ、貴方はどう考えてるんですか?」

「曹操と同じだ。この大陸の制覇だよ。力を持って大陸に覇を唱える!!」

「それは力で抑えた仮の平和にすぎません。それでは反董卓連合のような事が起きます!!」

「起きないよ。なぜなら全ての敵を倒すからだ。始皇帝がどうやって大陸を統一したか知っているか?」

 

始皇帝は大陸を初めて統一した皇帝だ。

どうやって統一しかたかと言われれば難しいが大雑把に言うと戦争で勝ったからだ。他にも色々あるはずだが主な理由は戦に勝ったから。

乱世の時代で覇権を手に入れるならば結局は力で決まる。現代でも色々と口論で戦いあっても最終的には武力による戦争に発展するはずだ。

どんなに頑張っても覇権を手に取るには『力』が必要なのである。

 

「反董卓連合のような事が起こる可能性があるのならば憂いを無くせばいい。袁紹のような奴らを全て倒せばいい」

「そんな、それじゃあ…多くの人が傷付きます」

「当たり前だ。覇権を手に入れるとはそういう事だろう。そもそも誰かが大陸の頂点に立てば不穏分子が出てくるものだ」

 

どんな時代であっても頂点に誰かが立てば不穏分子は現れる。始皇帝が良い例だ。

初めて大陸の頂点に立ち、中国の基礎を創った人物であっても何度も暗殺されかけたのだ。暗殺されかけた数だけ不穏分子が存在するという事である。

 

「だからこそ不穏分子は排除する。しなければ自分が殺されるんだぞ?」

「そ、それは…」

 

これも言い返せなかった。

否定したくとも心の何処かで益州の劉備の言い分が間違っていないと思ってしまったからだ。

頂点に立てば命を狙われるなんて当然な事。それは歴史が物語っている。

命を狙われるのならば迎え撃てばいい、先に仕留めればいい。

 

「私は君たちを倒し、益州の州牧となる。次に荊州と交州を手に入れるさ。荊州辺りを手に入れる時は孫策と戦いになるかもしれんな、最後に曹操を倒してお終いだ」

「それじゃあ多くの命が亡くなります!!」

「ああ、そうだ。多くの命によって平和は成される。現実から目を背けるな劉備よ」

 

多くの命によって平和が成される。このセリフも否定できなかった。

桃香はどんな戦も被害を最小限に抑えてきた。しかし誰も死なずなんて事は無かった。

戦が起これば敵味方関係なく人間は死ぬ。始皇帝が大陸を統一した時は信じられないくらいの命が散ったはずである。

 

「劉備よ。いつまでも甘い考えはできないぞ」

「っ……」

「君が本気で大陸の平和を考えているのならば甘い考えを捨てろ。そして覚悟が必要だ」

 

覚悟は決めたつもりだったはずの桃香。だから益州を攻める事を決めたのだ。それでもまだ覚悟が彼女には足りないらしい。

 

「最初は益州を攻めてくると決めた君には驚いた。だが今の君を見て分かった。まだ覚悟が足りていない。そんな君では大陸の平和を叶えられない」

 

スラリと益州の劉備は宝剣『靖王伝家』を鞘から抜く。

 

「この剣は君の物だと言ったな。その通りだ」

「っ、なら返してください!!」

「なら奪い返してみろ。私を倒して奪い返してみろ。その剣を抜いてな」

 

指をさした先には『龍神の剣』。彼女が謎の少年から貰った業物だ。

 

「この戦を止めたくば私を倒してみろ。そうすれば兵馬妖は止まる」

「貴方を倒せば…」

「ああ。その業物が飾りでなければ剣を抜いてみせろ」

 

宝剣『靖王伝家』の刃が桃香に向く。

 

「私はこの戦いを止めない。止めるには私を倒すしかない。ならば戦うしかないぞ劉備!!」

「そんな…貴方も大陸の平和を望んでいるなら一緒に力を合わせる事が出来るんじゃ」

「無理だな。私の平和への道筋と君の平和への道筋が違いすぎる。だから曹操の会談の時だって納得できなかったのだろう?」

「どうしてそれを」

「間諜を潜めておけばいくらでも聞ける」

 

曹操の本拠地に間諜を忍び込ませた事を成功させた方が凄いと思うが今は置いておく。

 

「一緒に手を取り合ったとして、私の計画を賛同してくれるのか。私の計画を実行させてくれたのか?」

 

もしも桃香と益州の劉備が手を取り合って力を合わせたとしても桃香は益州の劉備の計画を反対したかもしれない。

 

「そもそも手を取り合ったと仮定して君が私の主として考えていなかったか?」

「そ、そんな考えてないです」

「どうだかな」

 

桃香が益州の劉備の主になろうが、その逆だろうが、お互いに平和への道筋が異なっていればいずれ決裂する。

 

「平和は望んでも、どうやって平和にするかも考えていなければ曹操に降っていれば良かっただろうに。それで解決だった。それなのに降らなかったのは曹操のやり方が気に食わなかったからだろう。もっと違う…自分が納得する方法じゃなければならないのだろう?」

 

目の前にいる益州の劉備、曹操、孫策の誰だって平和を望んでいる。望んでいるが平和までの道筋が誰も異なっている。

ゴールは同じだというのに道筋が違うだけで手を取り合う事は出来ない。なぜ手を取り合う事が出来ないのかと桃香は不思議であると思っているが、自分だってそうだ。

相手の平和への道筋を理解出来ないし、納得出来ないのだから。

 

「手を取り合うべきだと言っているが…その手を取り合うというのは君の主張を相手に無理やり認めさせるということだろう?」

「そ、そんな事はありません!!」

「そんな事あるだろ」

 

またもため息を吐く益州の劉備。

 

「何も相手に無理やり此方の主張を認めさせるのは悪い事じゃない。戦で勝つという事はそういう事なのだから」

 

曹操や孫策だって相手に恨まれるのを覚悟して戦に勝ち、領土を広げている。

覇権を手に入れるのは恨みも買うという事である。

 

「平和を手に入れるという事は人の恨みも抱えなければならない。世の中全て綺麗ごとで回っていない」

「人の恨みも…」

「そうだ。覚悟して益州に攻めてきたんだろう?」

「………そうです。私は恨み辛りを言われる事は覚悟して益州まで来たんです」

「やっと言ってくれたな。そうだ乱世のこの時代で平和を成そうとするならば覚悟が必要だ」

 

切っ先を向けていた剣を降ろす。

降ろした事でホッとしたがすぐに息を飲む羽目になった。

益州の劉備は宝剣『靖王伝家』を構え直したからである。桃香は剣術の事はよく分からないが綺麗な構えだと思った。

 

「先ほども言ったが私を倒さねば戦は終わらないぞ」

「戦わないと…」

「今更なにを躊躇っている。戦は大将を討ち取らねば終わらないものだ。目の前に敵将がいるならば討ち取ってなんぼだろう」

 

桃香は『龍神の剣』の柄を握るが刀身を抜かない。

 

「………自分で戦うのが怖いか。それとも自分で人を斬るのに躊躇いがあるのか」

 

両方かもしれないし、単純に弱いから戦っても勝てないと思っているのかもしれない。

 

「いざという時に戦う事が出来なければ意味が無い。私はこうやって猶予を与えているが全く話を聞かない者だっているのだからな」

「……うう」

 

カタカタと振るえている。

 

「剣を抜け劉備。抜かないのならばここで死ぬだけだ!!」

 

駆け出した益州の劉備は『靖王伝家』を振るって桃香の首を狙った。

 

(ご主人様…!!)

 

結局は剣が抜けずに桃香は目を瞑ってしまう。

彼女が最後に思い浮かべたのは北郷一刀であった。

 

「桃香ぁあああああ!!」

 

奇跡なタイミングであるのか、北郷一刀が城門の上に現れて『靖王伝家』を受け止めた。

 

「誰だ貴様!!」

「北郷一刀だ!!」




読んでくれてありがとうございました。
次回は2週間後予定です。

どんどんとオリジナル展開になっていきます。
カルデア側もやっと活躍するはず…(たぶん)


493
兵馬妖との戦闘!!
斗詩や焔耶たちが頑張ってます。
主思いというか主大好きだと燕青と焔耶って結構はなしが合うかも。

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桔梗が持つ武器『豪天砲』。いや、本当にコレって誰が造ったのやら。
自分でも調べてみましたが分かりませんでした。
公式のファンブックとかに記載されてるのかな?
それとも元々、そういう武器を彼女が持っていたくらいでしか書かれてないのか。
もしもそうだったら恋姫シリーズのある設定を拝借させていただき、オリジナル設定を書いてみようかな。
あと『豪天砲撃』は天下統一伝の技となります。そして戦場には米俵が舞う。

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軍師陣はまたも忙しい。
それだけです。はい。

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藤丸立香たちもやっと出陣。
戦場を突っ切って益州の劉備と暗影のいる現場に直行。
ですが新たな兵馬妖が出現に邪魔されました。
新たな兵馬妖ですが、馬に乗った兵馬妖はアニメでも登場してた奴ですね。
巨大兵馬妖と大剣を持った兵馬妖(強兵馬妖)なんですが、これはパチンコに出てきた奴です。アニメとパチンコの兵馬妖って姿が全く違うようです。
造りが違う兵馬妖がいるならもっと違う兵馬妖がいてもおかしくないですよね。

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桃香と益州の劉備の対談。
益州の劉備は桃香に言いたい放題でした。
彼の言い分に否定できない分、彼女も黙ってしまう。ですが今回は益州の劉備のターンですので桃香ターンはまた今度です。

益州の劉備の正体。
誰もが分かっているみたいですね。
はい、彼はアニメ版に登場した偽劉備です。
アニメ版となんか違うというか違和感があるかもですが、それには理由があります。
その理由は後で分かりますので。

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