Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

143 / 297
こんにちは。
FGOではついに新イベントが始まりましたね。
皆さまが予想していた通り、ぐだぐだイベントでした。
PUで沖田さんと土方さん、ダーオカが出た時点で匂わせてましたし。

まさかの斉藤一に卑弥呼…卑弥呼!!
どうしようかな…卑弥呼もこの物語に出そうかな。恋姫の卑弥呼がいますし。


成都の城門にて

498

 

 

戦場に美しい白馬が駆け抜ける。白馬に乗っているのは蘭陵王と北郷一刀。

目指す先は成都の城門だ。桃香を助ける為に2人は一緒にいる。

 

「ハイヤー!!」

 

迫りくる兵馬妖を斬ったり、避けたりして突き進む。

 

「北郷殿、大丈夫ですか?」

「大丈夫だ!!」

 

振り落されないようにガッシリと捕まる。馬に乗ったことがない彼にとってバランスを取るので精一杯であるが今は頑張るしかない。

早く桃香を助けに行かなければならないとという気持ちの方が強いのだ。

 

「では、もう少し速度を上げますのでしっかりと私に捕まっててください」

「分かった!!」

 

グゥンっと速度が増したのを感じ、蘭陵王の腰に回す腕がより力む。

 

「斬って捨てる!!」

 

ワラワラとまた迫ってくる兵馬妖を斬り裂いて最短で成都の城門まで駆け抜けた。

 

「見えた」

「城門は開いてるけど…いっぱいじゃねえか!!」

 

成都の城門はまだ開いているが兵馬妖が守るように並んでいた。

 

「どうするんだ蘭陵王!?」

「このまま押し通る!!」

 

チャキリと剣を握り直し、兵馬妖に最高速度で突っ込もうとした時に誰かの声が響いた。

 

「応さぁ!!」

 

目の前に並んでいた兵馬妖が吹き飛んだ。

 

「なんだ!?」

「どうどう」

 

急に吹き飛んだ兵馬妖に驚いた北郷一刀。白馬も驚いたがすぐさま蘭陵王が宥める。

 

「驚かせたかな?」

 

城門から歩いてくるのは赤い男物のチャイナ服に黒眼鏡を掛けた老人であった。

 

「老書文殿。こちらに居たのですね」

(あの爺さんは確か藤丸の仲間だったな。確か話を聞くと李書文の未来の姿って)

 

北郷一刀は藤丸立香から老書文の事を聞いていた。カルデアという場所には過去や未来の姿の英霊がいるとらしいと。

更には円卓を囲むくらいのアーサー王がいると聞いた時は意味が分からなかった。

 

「異変が起きてから誰かが城門に来ると思ったからな。ここで待っておった」

「桃香が城門の上に捕まってるんです。何処に行けばいいんですか!?」

 

声を荒げるように北郷一刀は李書文(老)に迫ってしまう。

 

「落ち着け」

「す、すいません」

 

彼の気持ちは分かるが、こういう時こそ冷静になるべきだ。焦っていては良い流れを呼び込めない。

 

「あの階段を駆け上がれば城門の上だ」

 

指を指す方向を見ると階段があった。すぐさま北郷一刀は走り出そうとしたが兵馬妖が3人を囲む。

 

「急いでるってのに…!!」

「ここは儂に任せろ」

 

すぐ横にいた李書文(老)が消えたかと思ったら兵馬妖の前に移動していた。

 

「奮破!!」

 

北郷一刀は李書文(老)が兵馬妖を叩き潰す姿を見て、「あれこそが中国武術だ」と心の中で思った。

 

「早く行けぇい!!」

「ここは任せました老書文殿!!」

 

蘭陵王は北郷一刀を抱えて白馬に乗り、城門への階段を登り切る。

 

「桃香!!」

 

目に映ったのは益州の劉備が宝剣を握りしめて桃香に向かって駆け出した姿だ。

気付いた時には腰に携えた剣を抜いて一直線に走り出していた。北郷一刀の背後から蘭陵王が何か言っていたが無視してしまった。

冷静になるべきだと言われていたが大事な人が危険な目に遭いそうだと分かった途端に頭よりも体が先に動いたのである。

 

「桃香ぁあああああ!!」

 

ガキンっと金属音が響いた。益州の劉備が振るった宝剣を受け止めた証拠音。

 

「誰だ貴様!!」

「北郷一刀だ!!」

 

 

499

 

 

ある戦場にて大きな雄叫びが上がる。

 

「はあああああああああ!!」

「どりゃああああああ!!」

 

雄叫びの主は愛紗と翠である。己の武器を龍を模した仮面を着けた人物もとい暗影と呼ばれる怪人に振るう。

 

「この程度か?」

 

2人がかりで攻めているのにも関わらず暗影は涼しい顔で攻撃を受け止め、受け流していた。

 

「やはり弱いな関羽。そして馬超もな」

 

愛紗も翠も手加減しているつもりは無い。殺す気で武器を振るっているのだ。

 

「これなら、どうだあああああ!!」

「そんな大振りが当たるわけがない」

 

翠の全力の一閃を屈んで避けた後は蹴り飛ばす。

 

「うぐっ…んぐ!!」

 

蹴りが胃を潰すように入り、吐き気を催したが無理やり飲み込む。

 

「ぐ…うううあああぁどうだああああ!!」

 

相手の脳天を叩き割るつもりで縦に銀閃を振るう。

 

「効かんと言っている」

 

暗影は翠の渾身の一撃を受け止める。

 

「今だ愛紗!!」

「ああ!!」

 

暗影が翠の一撃を受けた瞬間に青龍偃月刀を振るった。

 

「だから効かんと言っている!!」

 

青龍偃月刀の刃が届く前に暗影は武器と共に回転する。回転斬りというやつであり、斬撃の竜巻のようでもあった。

回転斬りの衝撃波によって2人は吹き飛ばされる。

 

「痛ってえ…大丈夫か?」

「これくらい問題…ない」

 

すぐに立ち上がって暗影を睨む愛紗。正直に言って目の前の人物は今まで戦ってきた中でも一二を争うくらいの強者かもしれない。

そう思っているのは愛紗だけでなく翠も同じであった。気に食わないが実力はやはり本物だ。

 

(こいつ…まさか実力は恋並みか?)

 

愛紗の中で一番強いと思った武人は恋だ。暗影は恋と同等の強さを持っているかもしれないと判断。

 

(あいつが恋と同じ強さだろうが関係ない。あいつは桃香様を…!!)

 

青龍偃月刀を握り直し、もう一度駆け出す。

 

「はああああああああ!!」

 

怒りを力に変えて青龍偃月刀を連続で斬りつける。

 

「何度も言わせるな……効かんと言っているだろうが!!」

 

力強い一振りで愛紗の猛攻を吹き飛ばす。

 

「あたしがいるのを忘れんな!!」

「弱者は居ないのと同じだ」

 

翠の振るう銀閃を片手で受け止める。

 

「なぁっ!?」

 

片手で銀閃を握っている翠を持ち上げて投げ飛ばす。

 

「どんだけの馬鹿力だよ!?」

「ただ重心を利用しただけだ」

 

重心を利用した技であっても大人の女性を片手で投げ飛ばすほどの膂力の持ち主。それだけでも驚異だ。

 

「まだまだ!!」

 

何度も吹き飛ばされようとも青龍偃月刀を振るい続ける。

 

「ふん!!」

 

またも青龍偃月刀を己の武器で受け止める暗影。

 

「馬鹿の一つ覚えか。そういう真っすぐな所が苛つく」

 

先ほどから挑発ばかりで同じく苛々するが我慢をする。怒りに任せてしまえば相手の思うつぼだからだ。

愛紗も翠も分かっているが暗影の挑発は妙に癇に障る。

 

「さっきから弱いなどなんだと!!」

「事実だろう」

 

特に暗影は愛紗にばかり挑発してくる。理由は分からないが暗影が愛紗に対する言葉は何処か嫌悪感を含んでいるのだ。

相手を怒らせて冷静さを失うための挑発でなく、本気で貶している感じがする。正面切って「お前が嫌いだ」というニュアンスが感じられるのだ。

愛紗の記憶には暗影と何処かで会った事は無い。龍の仮面を着けているとはいえ、これほどの実力がある武人と出会っていれば顔が分からなくとも忘れるはずがない。

 

「本当に弱い。よくこれで劉備と天の御使いを守ってこれたものだ」

「なんだと!!」

「今まで無事だったのは運が良かっただけかもしれんな」

「黙れ!!」

 

鍔迫り合いに発展し、愛紗は暗影を力の限り押し飛ばそうとするが微動だにしない。

 

「その程度ではこれから貴様は大切な人や仲間も守れない」

「何故そんな事が貴様に分かる!!」

「分かるさ。貴様はいずれ敬愛する姉を守れず、可愛い妹も亡くし、お慕いする天の御使いも死なすのだから」

 

ブチリと何かが切れた音が頭の中で聞こえた。

 

「貴様がそんな事を勝手に決めるな!!」

 

訳の分からない人物に大切な姉妹やお慕いする人が自分のせいで死ぬなんて事を言われては黙っていられない。

何故、そんな事を他人から言われなければならないのか。目の前の暗影という人物が物凄く気に入らないと再認識する。

 

「何だ貴様は。私のことを知らないくせにそんな事がよく言えたものだな。何処かで私と会った事でもあるのか!!」

「よく知っているさ。嫌という程な」

「嘘を付くな!!」

「嘘じゃないさ。貴様という個体と会うの初めてだが…貴様の誇りや想いはよく知っている」

 

何処か引っかかる言い方をする暗影だが愛紗は気付かない。

 

「貴様は弱すぎる。ここまで来て、まだその程度の強さではいずれ来る脅威に耐えられない」

「いずれ来る脅威だと…それは曹操の事か。それとも孫策の事か!!」

「あんな奴らは脅威でも何でもない」

「なにっ!?」

 

いずれ来る脅威と言われて思いつくのが曹操か孫策であった。この大陸で2人以上の脅威は存在しないと思われる。ならば暗影の言う脅威とは何か分からない。

 

「まあ、貴様はその脅威を目にする前に死ぬがな」

「私に何か恨みでもあるのか。目的はなんだ!!」

「貴様に言うつもりは無い。どうせ死ぬ貴様にはな」

 

いきなり暗影の持つ武器からゾワリと嫌な気配を感じた。

 

「我が邪龍偃月刀の力を少しだけ見せてやろう」

 

暗影の持つ武器の名は『邪龍偃月刀』。敵の持つ武器の名称なんてどうでもいいと思う愛紗だが邪龍偃月刀に付いている目玉の装飾が怪しく光ったのを見て更に嫌な感覚が走る。

 

「死ね」

 

いきなり空高く跳び、邪龍偃月刀の刃部分に炎の龍が現れる。

 

「龍神落とし・獄炎」

 

邪龍偃月刀を地に突き落とした瞬間、周囲が燃え上がるように爆発した。

 

 

500

 

 

別の戦場にて雄叫びと女の子たちの喜色の叫びが響く。

 

「□□□□□□□□□!!」

「いっけー!!」

「男の呂布さん突撃だー!!」

 

呂布奉先が左右の肩に電々と雷々を乗せて兵馬妖の軍列に突撃していた。

マルチプルウェポンの方天画戟を様々な形態変化させて無双ゲームのように兵馬妖を破壊していく。

切斬、刺突、打撃、薙ぎ、払いと様々な攻撃を繰り出していくその姿はまさに天下の飛将軍だ。

 

「「薙ぎ払えーー!!」」

「□□□□!!」

 

胸部からの呂布ビームは「何だあれ!?」って言いたくなる。

 

「強いぞ男の呂布さんー!!」

「すっごいすっごーーい!!」

「□□□□□□□□!!」

 

久しぶりに大暴れ出来るのが嬉しいのか分からないが呂布奉先は絶好調であった。

 

「援軍として急いで駆けつけたが要らぬようだったな」

「私も呂布めの制御のために来たが必要無かったな」

 

呂布奉先たちの様子を見た星と荊軻。この戦場は心配なさそうだと判断する。

てっきり大暴れ過ぎて味方陣営まで被害を及ぼしていると思っていたが杞憂に終わって良かったものだ。

バーサーカークラスの者は何を仕出かすか分からないからこそ怖いのだ。最近は理性のあるバーサーカーという矛盾している英霊が増えてきているが、心内にある狂気は本物。

呂布奉先はバーサーカーらしいバーサーカーである。実は理性があるような時もあるが基本的には狂気が打ち勝っているのだ。

 

「あの2人はよく呂布殿の肩に捕まっていられるな」

(電々と雷々に娘の面影でも見たか?)

 

カルデアにいるフランケンシュタインは娘の面影があるらしく、彼女には優しい。

電々たちに娘の面影があったのか、錯覚を起こしているのか分からないが意外にも彼女たちに危害が加わらないように戦っている。

 

「いつ見ても呂布殿の武芸は凄まじいな。恋のやつめに負けないくらいだ」

「此方の呂布は本当にとんでもないからな。ただ制御するのが大変だが…」

 

呂布奉先と言わずバーサーカークラスの英霊を制御するのは難しい。そんなバーサーカークラスの英霊たちと絆を深めている藤丸立香は本当に凄いものだ。

最近はバーサーカークラスの英霊が何か問題を起こしたら取り合えずマスターを向かわせれば大丈夫という感じになっているくらいである。

それでも止められない場合はあるが。

 

「さて、他の戦場はどうなっているか」

 

荊軻の呟きの答えだが今のところ劉備・益州軍の軍配は悪くない。

兵馬妖の対処法を通達したおかげで破壊出来ているのだ。一騎当千の将たちが前に出て恐怖感を出さずに戦っている姿が兵士たちにより鼓舞している。

自分たちの将軍が真っすぐに敵に立ち向かう姿は勇気が与えられ、伝達していく。

 

「恐怖に打ち勝ちなさい。敵は必ずしも勝てない相手ではないわ!!」

「「「うおおおお!!」」」

 

流石は官軍で将軍に勤めていただけはある。桃香に投降した後はその実力から劉備軍の兵士の統率を任されてる。

元々劉備軍は桃香のカリスマを筆頭に愛紗や鈴々の強さを全面に出して戦ってきたが、それでは義勇軍止まり。それを規律ある軍隊として基礎から鍛え直したのが楼杏なのだ。

 

「皇甫嵩将軍後ろです!?」

「何ですって!?」

 

兵馬妖が後ろから迫りくるが凶刃が楼杏に届くことはない。

 

「油断大敵!!」

 

乾坤圏が兵馬妖に飛来し、破壊する。

 

「あ、ありがとう。助かったわ哪吒殿」

「不客气(どういたしまして)」

 

乾坤圏を腕に戻して視線を移す。

 

「殲滅!!」

 

哪吒は風火輪を使用して、文字通り戦場を飛び回って兵馬妖を破壊していく。

 

「私も負けていられないわね」

 

気を引き締め直して楼杏は兵士たちと共にまた兵馬妖に立ち向かっていく。

 

 

501

 

 

宝剣『靖王伝家』の刃を受け止めたのは北郷一刀であり、間一髪のところで桃香を助けた。

 

「貴様は…天の御使いか!!」

 

益州の劉備は北郷一刀の登場に一瞬だけ驚いたがすぐに状況を理解する。兵馬妖の軍団を無理やり突破してここまで来たのだと。

天の御使いは武人ではなく、戦場でも活躍したという情報は無い。この事から北郷一刀という人間は素人。

 

「無事か桃香」

「う、うん」

 

北郷一刀が戦場で剣を握ったのはこれが初めてかもしれない。今までは朱里たちと作戦を考えて指示を出したり、サポートしたりする立場のようなものであったからだ。

桃香を助けたいという一心で剣を抜いた時までは恐怖など無かったが今さら恐怖がジワジワと襲ってくる。自分は今、敵と剣を交差させた。

現代では剣術(剣道)を祖父から習っていたから剣の心得が無いわけではない。しかし本気の命の取り合いというのは初めてである。

この世界に来てから戦争によって命を落とすという事実は理解していたが自ら戦うという事はないと何処か甘えがあったかもしれない。だから実際に真剣を握った恐怖が襲ってくる。

 

「うおおおおおお!!」

 

気合を発して受け止めていた『靖王伝家』を振り払う。

すぐに桃香の前に出て構える。真剣を使った戦いに恐怖が湧くがすぐさま打ち勝とうと気合を発する。

 

「天の御使いが1人でここまで来れるはずがない。貴様をここまで連れてきた者がいるはず…」

 

益州の劉備は周囲をすぐさま見渡す。

 

「北郷殿、桃香殿!!」

 

新たに駆けつけてきたのは蘭陵王であった。

 

「いきなり飛び出すのは危険です…と言いたかったですが間一髪でしたからね。北郷殿、貴方は桃香殿の命を助けました。誇って良い事です」

 

先ほどまで恐怖がジワジワと襲ってきていたが蘭陵王の言葉で幾分、安心感が生まれる。

 

(あいつは…于吉殿が言っていた別勢力の1人か)

 

北郷一刀と蘭陵王は益州の劉備に視線を移す。

 

「あの者が桃香殿と同じ名を持つ劉備ですか」

「もう1人の劉備…」

 

北郷一刀としては三国志の劉備と言えば男というイメージがある。現代世界で三国志を題材にする漫画や小説は男として登場しているし、そもそも正史で劉備は男である。

男の劉備と言われても違和感は無いが、目の前の劉備は偽物だと思ってしまう。この世界の劉備は桃香なのだから。

 

「お前は誰だ」

「私は劉備だよ。天の御使い」

 

静かに宝剣を構え直す益州の劉備。

 

(下には兵馬妖を配置していたはずだが…仮面の男が蹴散らしたか)

 

于吉からはカルデア勢なるものは曹操や孫策等とは別の意味で脅威と聞いている。しかし益州の劉備には関係無い。

彼の目的は桃香なのだから。

 

「仮面の男はよく知らんが…天の御使いの事は少しだけ知っている」

「俺の事を知っているだと?」

「ああ。劉備陣営において劉備と同じ地位にいる者。この大陸の混乱を鎮めると言われていて、何処かの占い師が予言した者だったかな」

「そんな大それた者じゃないけどな」

 

天の御使いの噂は大陸中に広まっている。噂や情報について疎い者や興味無い者以外は知っているはずだ。ならば益州の劉備が天の御使いを知っていてもおかしくない。

 

「それと貴様の選択によって未来が変わるとも聞いている」

「俺の選択で未来が変わる…何を言ってるんだ?」

「そう聞いたからな。だが今はそんな事どうでもいい」

 

殺気が放たれるが北郷一刀は耐え抜く。

 

「私は劉備と一対一で対談、対決していたんだ。邪魔者は消えて欲しいものだな」

「嫌だ。俺は桃香を助けに来たんだ。はい、そうですかと言うわけねえだろ!!」

「私も同感です。貴方をここで倒し、異変を終わらせます」

 

蘭陵王も剣を抜き、構える。

 

「……本当は劉備に剣を抜いて欲しかったんだがな」

「なに?」

「何でもないさ。なら剣を交える前に天の御使いにも話を聞こうか」

「話だと?」

 

お互いに剣を構えたまま口が開かれる。

 

「天の御使いは劉備の夢を知っているか?」

「知っているさ。桃香の夢を叶えたいと思ったからこそ一緒に戦っている」

 

最初はこの世界に迷い込んだ時に助けてもらった恩を返そうとしていた。しかし一緒に行動するようになって彼の気持ちにも変化があった。

一般人だった彼にとって三国時代で生きるという事は過酷で辛い選択だ。桃香に付いて行くという事は乱世に足を突っ込むという事でもある。それでも桃香たちと一緒にいる事を決めたのだ。

桃香に愛紗、鈴々たちの理想に触れて本気で力になりたいと思ったからだ。

 

「ほう…ならば劉備の夢を叶えたいというのならば貴様は何をした?」

「何をしたかだと?」

「劉備の夢は大陸の平和だ。その為に貴様は何をしたと聞いている」

 

桃香は大陸の平和のために何をしたかと言われて何も言えなかった。

 

「貴様は大陸の平和を実現するために具体的に何をした。貴様の行動が劉備の夢に繋がったか?」

 

桃香の夢を叶えたいと思ったのならば北郷一刀は何をしてきたか。今に至るまで大陸の平和に少しでも近づいたのかと益州の劉備は聞いているのだ。

今の大陸が平和と言われれば否。大陸の至る所で戦争が起きている。主流となっているのが曹操と孫策の陣営。そして今ここになる。

 

「どうした、答えてみろ。何をした。実は何もせずに劉備たちと一緒にいただけじゃないのか?」

 

大陸の平和のために北郷一刀が何をしたかと言われれば具体的な活躍は出てこない。彼の力で大きな戦争を終わらせたとか、民たちの生活がより良くなるために改革的な法案を造ったわけでもない。

確かに桃香たちとただ一緒にいたと言われても否定は出来ないかもしれない。ただそれを決めるのは益州の劉備ではないのだ。

 

「俺がしてきたのは桃香たちを少し支えたくらいだよ」

「は?」

「確かに俺は戦で活躍したわけでも改革的な政策をしたわけでもない。桃香たちを少しでも支えられるように頑張ってきただけだ」

「頑張っただと…それだけか天の御使い。それだけじゃ滑稽にしか聞こえないぞ。はっ、ははははは!!」

 

北郷一刀の言葉に笑いがこみ上げる。大陸の平和のためにただ「頑張っている」なんて説明では何も具体性がない。

 

「何を頑張ったと言うんだ。頑張って大陸の平和に近づいたか?」

 

まだ大陸の平和に近づいていない。大きな戦はまだ続いている。

 

「全く平和に近づいていないのに頑張っているか…笑うしかないぞ天の御使い!!」

 

大きな笑いが城門に響く。しかし大きな声が益州の劉備を笑い声をかき消した。

 

「笑わないでください!!」

「なんだ劉備…やっと口を開いたかと思えば」

 

大きな声を出したのは桃香。その目には怒りが見えた。

 

「何で笑うんですか。ご主人様は私や愛紗ちゃんたちを支えてくれてます。それがどんなに助かっているか…」

「天の御使いは大陸の混乱を鎮めるのが役目なのだろう。なのに対した事はしてないんだ。笑わずにいられるか」

「笑うようなことじゃないです!!」

 

北郷一刀は確かに大した活躍はしていない。しかし小さい積み重ねと言うべきか桃香たちの助けになる為に努力はしているのは確かだ。

どんな些細な事でもやってきた。

桃香たちの負担を減らそうと事務処理的な事や武器の仕入れ等をしてきた。畑違いなのに外交官的な仕事もしてきた。戦時は軍師の中に入って自分の未来の知識が少しでも力になればと思って発言してきた。

『天の御使い』というステータスを利用して戦では兵士たちの鼓舞をした。街の治安を良くするために桃香たちと色々と政策を考えてきた。

それらの活躍が大陸に広まるようなものではないが見ている者は知っている。北郷一刀が努力は無駄ではないのだ。確かに桃香たちの助けになっている。

 

「ご主人様は私を助けてくれています。今だって助けてくれました。ご主人様の努力を知らないのに笑うなんて…貴方にそんな資格はありません!!」

「ありがとう…桃香」

 

自分のために怒ってくれた桃香に驚いたが、それ以上に嬉しさがこみ上げてくる。自分の努力が桃香たちの力になっていたのだから。

 

「益州の劉備」

「なんだ天の御使い」

「大陸に平和が近づいてないと言ったな」

「ああ、言ったとも」

「それは正確じゃない。大陸は平和に近づいてるよ…少しだけどな」

「なんだと?」

 

今度は北郷一刀が言い返す番だ。

 

「桃香に何を言ったか知らないけど…桃香は平和の為に少しずつ頑張っている」

「また頑張っているか」

「平原や徐州…そして新野。そこでより良い治安に、平和のために統治してきたんだ」

「そんな小さな土地の治安を良くしたところで何も…」

「何も意味が無いなんて事はない!!」

 

今度は北郷一刀が大きく叫ぶ。

 

「大陸の平和と比べてしまえば小さな事かもしれない。でも平和への大切な一歩なんだ!!」

 

大陸の平和という大望に比べてしまえば平原や徐州の統治は小さすぎるかもしれないが、意味が無いわけではない。

曹操に徐州を奪われてしまっても桃香がより良い平和な州になるように統治してきたという事実は無くならない。

彼女の人徳によって徐州の民たちが逃亡劇に付いてきてくれた。難民が桃香という素晴らしい人物が新野にいるからと聞いて流れ込んできたからだ。それは桃香が統治する新野が良い場所だからだ。

彼女が統治している土地ならば安心するという事。民が安心して暮らせるとは平和を意味するのだ。

それは大陸にいる人々の何割かが桃香に対して平和を実現させてくれる力があると広まっている証拠にもなる。彼女の行動が何も意味を成さないなんて事は無い。

 

「桃香の努力は俺も愛紗たちも見ている。意味のある努力だよ」

「ご主人様…」

 

桃香は目頭が熱くなるの感じる。

 

「…天の御使いも言うじゃないか。ならこれからどうやって大陸の平和に繋げていくんだ」

 

桃香の努力は間違ってないと分かった。しかしこれから夢の実現にどうやっていくかだ。

 

「大陸の何割かの人々がそこの劉備に平和を実現する力があると思っていたとしよう…だが、それは曹操や孫策にも当てはまる言葉だろうが」

 

曹操や孫策も桃香と同じようにより良い国するのために統治している。桃香を支持する民がいるのならば曹操や孫策を支持する民もいる。

 

「この益州を攻略したとし、良い統治をした。だが曹操や孫策は攻めてくるぞ。その場合はどうするんだ」

「戦うしかないだろ」

 

キッパリと言ったのは北郷一刀であった。

攻めてきたら戦うしかないし守るしかない。

 

「言うじゃないか天の御使い。だがそこの劉備は戦うのが嫌なようだぞ。対話なんぞで解決できると思っている」

「うっ…」

 

今の台詞で桃香は口を閉じてしまう。

 

「対話でも解決できるさ」

「ははっ、本当に対話なんぞで戦を止められると思ってるのか!!」

「ああ。対話でも戦が止められる時はある」

 

キッパリとまた言い放つ北郷一刀。武力行使でなくとも対話で戦を終わらせる場合があるのも確かだ。

 

「対話をする意味はあるんだよ桃香」

「意味はある…」

 

対話をするのとしないとでは全く違う結果が生まれるのだ。

 

「だが全ての戦が対話で止められるはずがない!!」

「ああ、それも正論だ」

 

そして対話で戦が止められないのも確かだ。

 

「でもさ。いきなり武力行使の戦をしなくてもいいんだよ。まずは対話から始まってもいいんだ」

 

対話、もしくは交渉とも言う。武力行使ではない戦のようなもの。

交渉が決裂した時が武力行使による戦なのだ。

 

「…天の御使いもなかなか言うじゃないか」

 

意外にも食いついてくる天の御使いに益州の劉備は少しだけ関心を示した。

 

「だが対話の戦なら既に終わった。そこの劉備では私を止められなかったぞ」

 

北郷一刀と蘭陵王が来る前に桃香と益州の劉備は対話という戦をしていた。結果、桃香は益州の劉備を止められなかったのだ。

 

「なら、もはや武力行使しかないぞ!!」

「ああ、分かってる。だからここまで来たんだ」

 

後ろにいる桃香を見る北郷一刀。

 

「ここは俺に任せてくれ桃香。こっから先は俺がやる。だって俺は桃香のご主人様なんだからな」

「ご主人様!…!」

 

桃香は争いが嫌いだ。それでも平和のために乱世に足を突っ込んだのである。しかし1人というわけじゃない。

彼女には仲間がたくさんいるのだ。彼女が戦えないのなら別の誰かが戦えばいい。

 

「桃香の理想を本気で考えているから愛紗や鈴々、それに朱里や星たちだって着いて来てくれる。桃香は何も間違ってないんだ」

 

桃香は優しいし、人徳があり、考えが甘く、夢想家である。だが間違っていない。彼女であるからこそ愛紗たちは力になりたいと思っているのだ。

 

「ここから先は俺らの仕事なんだ。桃香は総大将として大きく胸を張れ。自分が間違っていると思っちゃいけない」

「間違ってると思っちゃいけない…」

「ああ。それにもし、桃香が道を踏み外しそうになったら皆が止めてくれる。それが臣下の仲間の役割でもあるんだから」

 

安心させようと北郷一刀は笑った。笑顔を見て急に安心してきたのを実感する桃香。

 

「それではダメだ」

 

静かにポツリと言葉を溢したのは益州の劉備。

 

「守られてばかりか劉備。守られてばかりでは意味が無いぞ!!」

 

ギラリと睨んでくる。

 

「やはり劉備には覚悟が足りない。力が足りない」

「桃香に覚悟が足りないなんて事はないだろ」

「いいや、覚悟が足りない。だがその事を論ずる前に貴様が邪魔だ天の御使い!!」

 

殺気がまた放たれる。

 

「貴様が居てはまともに劉備と話せない。ならまずは貴様を殺してやる」

 

跳躍した益州の劉備は北郷一刀に向かって宝剣を振るった。

 

「させません!!」

 

蘭陵王が間に入り、宝剣『靖王伝家』を受け止める。

 

「関係無い者が入り込んでくるな!!」

「……何故、私が関係無い者だと分かる?」

 

受け止めた瞬間に益州の劉備は間髪入れずに蘭陵王に対して無関係者と口にした。普通ならば北郷一刀と一緒に来たのだから劉備軍の将や兵士だと思うはずだ。しかし益州の劉備は無関係者と判断したのだ。

 

「我々の事を知っているな。やはり後ろに于吉なる者がいますね」

 

兵馬妖の出現により于吉の存在はほぼ正解を予想していたが完全に繋がった。益州の劉備は于吉と手を組んでいる。

 

「ふん…私の邪魔をしないでもらおうか」

「いいえ、関係ありますよ。特に貴方の後ろにいる于吉とはね」

 

剣を一閃して益州の劉備を打ち払う。

打ち払われた益州の劉備はくるりと回転しながら後退。舌打ちをしながら蘭陵王を見る。

 

「仕方ない。天の御使いも無関係者もここで斬り伏せてやろう」

 

益州の劉備は宝剣『靖王伝家』を構え直す。

 

「見ろ劉備。これが靖王伝家の真の力だ!!」

 

宝剣『靖王伝家』が光りだす。

 

「貴様にこれが出来るか。靖王伝家の力を知らず、解放も出来ずに何が中山靖王の末裔か!!」

 

宝剣から放たれる光は強くなっていき、益州の劉備を飲み込む。

 

「何だ…何が起きている?」

 

眩しくて目を細めるが剣の構えは解かない。警戒度をより増す。

宝剣の発光が収束していくと現れたのは龍をモチーフとした翠色の鎧にフルフェイス兜を装着した益州の劉備であった。

 

「これが靖王伝家の真の力だ!!」

 

益州の劉備の変身を見て北郷一刀は叫ばずにはいられなかった。

 

「ニチアサのヒーローじゃねえか!!」

 

心の中では不覚にもカッコイイと思ってしまった北郷一刀。彼だってヒーローに憧れる男の子だから。




読んでくれてありがとうございました。
次回も2週間後予定です(遅くて)。早く更新出来たら1週間後です(たぶん)。

498
老書文もやっと少し活躍です。
お爺ちゃんはまだこれから活躍させます!!
そして北郷一刀と蘭陵王が城門へなんとか到着。2人は益州の劉備と対峙!!


499
暗影VS愛紗と翠。
暗影の圧倒的な実力を見せる描写になったかもしれません。
彼女が何で愛紗に異様に煽ったり挑発する理由はまだ書けません。
これもオリジナル展開になるためのものですけど…公式の情報によっては修正しないといけませんね。
そして『龍神落とし・獄炎』。これは天下統一伝の技。
これは『彼女』の技ですけど暗影が使える理由は…まあみんながほぼ察していると思います。


500
呂布奉先。肩に電々と雷々を乗せて発進中。
彼の娘はいずれFGOでも登場するのかな。その前に貂蝉かなあ。
卑弥呼も出たし貂蝉も出るか!? (卑弥呼と貂蝉二人の関係性はないけど)


501
北郷一刀が何をしたか。ただ『頑張った』だけだ。
誰もが「凄い!!」なんて思う程のものじゃないけれど誰かの力になったのは確か。
平和のために誰もが偉業を成す必要はない。平和はたった1人だけが起こすものじゃないから。

桃香の考えは甘いし、夢想家かもしれません。でもそんな彼女だから着いて来てくれる仲間がいるのも確かです。その結果、彼女に感謝してくれた人がいるのだから。
甘いままでもいい。でもやる時はやらねば。

さて、最後の最後で益州の劉備が変身しました。
はい某、ニチアサヒーローの『仮〇ライダー』をモチーフにしました。
『仮〇ライダー リュウビ!!』 ってところですかね。

そもそもなぜ、『仮〇ライダー』なのか。
天下統一伝の宝剣開放した桃香の姿を見て私は『プ〇キュア』をイメージしたからです。劉備(女)が『プ〇キュア』なら劉備(男)は『仮〇ライダー』じゃねっと思ったからなのです。
だって『変身』ですし…天下統一伝でも変身するのって案外、桃香(宝剣)だけな気もする。
完全にオリジナル設定ですけど、私は違和感ないと思ってます。(…のはず)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。