Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
もうすぐ大晦日ですね。FGOの年末特番が楽しみです。
さて、タイトルが分かるように華雄の再登場!!(まあ、前回にもう再登場してますけど)
では、物語をどうぞ!!
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「流行病だって!?」
いきなり大声を出したのは桃香。
「落ち着いてください桃香さま」
「ご、ごめん。愛紗ちゃん」
愛紗に落ち着くように促される。
今ここで騒いでも流行病が無くなるわけではない。
「俺がその村に行ってくる。必ず流行り病を撲滅するから安心しろ!!」
華佗が熱い眼で桃香を見る。その眼から絶対に流行病を撲滅し、村人を助けて見せる気合が感じられる。
「お願いします華佗さん、村人を助けてください。報酬も多く出しますので」
「任せろ!!」
今すぐにでも飛び出したい気分に駆られるが、まだ桃香の執務室から飛び出ない。
「そこでだ…すまないんだが、何名か助手の代わりになる人手が欲しいんだがいいか?」
「人手ですか?」
「ああ、人手を貸してくれるんなら報酬から人件費を引いて構わない」
華佗1人でも村の流行病を撲滅し、村人たちを治す事は出来るが人手がいた方がより早く治療が進められるのも確かだ。
「大丈夫なのか。その、華佗殿を行かせる手前で言うのも申し訳ないが人手を出して、流行病に感染したら…」
「大丈夫だ。それに人手は女性が好ましいんだが良いか?」
「女性?」
「ああ。その流行病は何でも女性に感染しないようなんだ。罹るのは若い男性だけらしい」
子供や老人、女性は感染せずに若い男性のみが感染する流行病。
「それはまた奇妙な病だな」
「病なんて最初はよく分からないものばかりさ」
「で、でも…それだと華佗さんは大丈夫なんですか?」
「病を恐れては医者なんかやってられないさ」
「それもそうだけど…」
桃香の言いたい事が分かる華佗だが、流行病に感染している村人たちを無視なんできるはずがない。
「それで、人手は貸してもらえるだろうか。難しいというのなら強要はしない」
「いえ、出させてもらいます。すぐに手配しますので…愛紗ちゃん」
「分かりました。すぐに手配します」
愛紗が執務室から出ようと扉を開けた瞬間に肉の壁があった。
「どうやら話が終わったようだな」
「うわぁっ」
肉の壁の正体は卑弥呼であった。
慣れてきたとはいえ、急に出てくるとやっぱり驚いてしまう。なにせ卑弥呼の体格はとてつもなく大きいのだから。
「脅かすな卑弥呼殿…」
「脅かしたつもりはないのだがな」
「卑弥呼か。準備ができ次第に出発するぞ」
「承知したぞ、だぁりん」
医者として病を、病魔を倒す事が彼の命尽きるまで終わらない使命である。
彼は損得関係無く、正義感のみだけで患者を治療する。間違いなく善人の心を持つ。
彼のような素晴らしい医者がたくさんいれば大陸から病魔を撲滅できるのかもしれない。
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華雄。
元、董卓麾下の勇将である。武術の腕は確かだがプライドが高く、極度の突撃狂と言われている。しかし末端の兵士とは通じ合うものがあるのか、華雄隊の結束は固い。悪い人ではないのは確かだ。
月や詠たちも華雄の猪突猛進の所は悩みの種であったが、人柄として好いていた。霞とはコントのようにぶつかり合っていたが互いに認め合っていた。
恋は彼女が悪い人間ではないと本能で分かっていた。音々音も恋が悪い人間ではないと認めていたので同じく認めていた。楼杏や風鈴も彼女の真っすぐな働きぶりを認めていた。
噂による猪突猛進なだけの武将という低い評価はアテに出来ない。
「華雄さん…!!」
「ゆ、月か…それに詠に、みんなも…」
パタパタと華雄の元に駆け寄ってきたのは月。
「良かった…無事だったんですね」
「月もな」
再会を祝しての抱擁。
「相変わらずか弱いな月。しかし内側に眠る意志は強いな」
「アンタそういうのが分かる奴だっけ?」
「詠も相変わらずだな。その服はどうした?」
月もそうであるが、2人の格好は従女そのものだ。
「ここだと助平な男の従女になってるのよ」
「なにっ。おい、その男に変な事されていないか!?」
「もー詠ちゃんったら」
変な事はされていない。助平というのは否定できないが北郷一刀は善人だ。
彼女たちに嫌だと思わせる行為はさせないし、しない。
「恋もねねも相変わらずそうだ」
「…元気」
「お前も元気そうですな。ま、死ぬとは思ってませんでしたが」
恋は相変わらずであるが何処かにこやかだ。音々音もむすっとしていても何処か嬉しそうである。
「反董卓連合で行方不明になったと聞いたけど…元気そうでなによりだわ」
「楼杏も元気そうだな。心なしか洛陽にいた時よりすっきりした顔をしているように見えるな」
「そうかしら…いえ、そうかもね」
「風鈴は洛陽から追い出された後どうなったかと心配していたが…どうやら無事だったんだな」
「ええ、桃香ちゃん…劉備様に保護されていたの。で、今はみんなここにいる」
ほぼ漢の主要メンバーが蜀にいるというのは不思議な光景である。
「空丹様や白湯様もいます」
「天子様方までか!!」
「内緒ですけどね」
内緒と言っても曹操あたりは天子姉妹が蜀に保護されているのは感づいている。
いつかは蜀に天子姉妹がいる事がバレるのも時間の問題かもしれない。
「黄や傾に瑞姫までいるけどね」
「…あいつらもいるのか」
本当に漢の主要メンバーばかり揃っているとは如何に。
蜀を土台に漢帝国を復活させるつもりなのだろうかと思ってしまう。
「そうだ。霞はいるのか?」
「いいえ、霞さんはいません。彼女は曹操の、魏にいます」
「そうか…あいつは魏に」
ちょっとだけガッカリした顔をするがすぐに顔を戻す。
何だかんだで洛陽にいた頃は霞と一番仲が良かった。戦では互いの背中を守りながら戦っていたのだ。
ここまで元同僚たちや上司が揃っていたのだから再会できるかと思っていたが、そこまで現実は甘くない。
「こればかりはしょうがない。いや、月たちに再会できただけでも奇跡のようなものだ。これ以上の高望みは無粋だな」
反董卓連合で敗北し、戻る所は無い。最悪は死んでいたかもしれない。
それでも意地汚く生きていたら再会できた。乱世の世もまだ捨てたものではない。
「それにまさか藤丸たちに再会するとは思っても居なかったぞ」
「まあ、再会が漢女たちとの熱い戦いとは思ってもみなかったけどね」
「熱い漢女との戦い?」
「こっちの話だよ詠さん」
恐らく詠は漢女との熱い戦いは理解できない。
あの時は本当に手に汗握る戦いだったと華佗は語る。
「それにしても藤丸の仲間に見ない顔もチラホラ居たな。今もな」
視線を藤丸立香の横に移すと仮面を被った剣士が映る。
「蘭陵王と申します。以後よろしくお願いします」
(凄く礼儀正しそうな男だな。てか仮面を何で被ってるんだ?)
蘭陵王の仮面もとい、素顔が気になるのは誰もが思う。
「華雄、あんたは今まで何やってたのよ?」
「あの戦いから敗走した私は武者修行の旅に出たのだ。それこそ文字通り血を吐く程の修行をしてきた」
華雄は確かに強くなった。貂蝉と卑弥呼に食いかかる程に強くなった。
貂蝉と卑弥呼が本気で戦っていたかどうかは定かではないが、それでも朝まで打ち合う力は身に着けている。
愛紗や星たちでさえ貂蝉と卑弥呼を倒すイメージが湧かないと思う程。更に恋や炎蓮も「負ける気は無いが出来れば戦いたくない」という程である。
そんな怪物並みの実力者と朝まで打ち合えるなら強くなったと誰もが認めるはずである。
(今更だけど本当に貂蝉と卑弥呼って英霊並み…もしくはそれ以上の存在なんだな)
貂蝉と卑弥呼の正体は外史の管理者。人間でなく、それ以上の存在。
神とは違う括りかもしれないが、近い存在であるかもしれない。なにせ外史を、世界を管理する存在なのだから。
「武者修行で大陸中を旅したからな。名の知れぬ達人たちとも手合わせもした」
「1人で旅をしていたのですか?」
「ほぼ1人だったな」
「ほぼ…という事は誰かと旅をしていた事もあったんですね」
華雄の武者修行。
物語が書けるほどの壮大な旅かもしれない。
「ああ、時たま誰かと一緒に旅はしていたな。腹黒そうな青髪の女と我儘そうな金髪少女とだったり」
急に袁術と張勲の顔が浮かんだ。「まさか…」と思いながらもしも彼女たちならば孫呉独立の戦いの後、無事に生きていたということだ。
もしも生きていたというのなら今頃、彼女たちは何をしているのか。それは誰も分からない。
「他には……あの変わった女とも旅をしたな」
「変わった女?」
「まあ、あれが一緒に旅をしたと言うかどうか微妙だがな」
華雄が言う変わった女。これも何故だか分からないが気になってしまった。
藤丸立香だけでなく蘭陵王も何故か気になってしまった。それは直感というものかもしれない。
「どんな人だった?」
「うーむ…一言で言うなら人間嫌いの女、というべきか」
「「え」」
藤丸立香と蘭陵王の声が重なった。
華雄のたった一言で2人の頭の中にある人物が鮮明に浮かび上がる。
「それに人には無い別の美しさを感じるものがあったな」
「そんなに綺麗な方だったの?」
「ああ、綺麗だったぞ風鈴。天子姉妹のように皇帝とは別方向で世に浮いた存在にも感じた」
人間嫌いで、世から浮いた美しい女性。
これだけの情報だけで、ある人物を更に鮮明に思い浮かべてしまう。
「ねえ、蘭陵王…もしかして」
「はい。私も主と同じことを考えてます」
情報は確定したものではないが、2人は間違いなく『彼女』だと思ってしまう。
「名前は聞いたの?」
「いや、教えてくれなかったな」
「てか、人間嫌いの女なんでしょ。よく一緒に旅をしてたわね」
「その時は、たまたま進む先は一緒だったから…としか言えんな」
ただ進む先が一緒だっただけ。
一緒に横になって歩いたわけでも、野宿をしたわけでもない。実際は同じ方向に歩き、近くで別々に野宿をしていたようなもの。
例えるのならば同じ山で赤の他人同士が別々でキャンプをしていたようなものかもしれない。
「それでもよく一緒だったわね」
「向こうは私に無関心だったからな。でもちょっとだけは会話したぞ」
「どんな事を話したのですか?」
「これまた変な事を言ってな。項羽様を知らないか、なんて言ってたんだぞ」
「項羽?」
「ああ。あの西楚の覇王、項羽だ。既に死んだ人間だというのに」
藤丸立香と蘭陵王は完全に『彼女』と断定した。
「華雄さん…その人は今何処に?」
「知らん。途中で別れてしまったからな」
「どっちに向かっただけでも分からないかな?」
この異世界に『彼女』も来ている事が分かった。
「なによ藤丸。その女が気になるの?」
「あぅ…立香さん」
少し悲しそうな月を見て藤丸立香に対してムスっとする詠。
「いや、もしかしたら仲間かもしれなくてさ」
「アンタの仲間?」
「うん。で、華雄さん、その人は?」
「うーむ…別れた時に彼女が向かった方向は揚州方面だったか?」
「揚州方面…てことは呉に」
『彼女』が呉にいるかもしれない。
545
蜀が統治するある村にて。
村人はたった1人だ。つい数刻前までは賑やかに大人たちが畑仕事をしたり、子供たちが遊んでいたりしていた。
なのに今はたった1人の村人だけ。その村人は恐怖によって顔が塗りつぶされていた。
「は…は…ひぃぃ」
上手く声も出せない程の恐怖。
その村人の周囲には赤い血が異様に飛び散っていた。人間の遺体がそこら中に転がっている。内臓だったり、四肢だったりと転がっている。
男が女が、老人が、子供が死んでいる。村を待ってくれる兵士も死んでいる。耐性の無い人ならば気持ち悪くて吐いたかもしれないし、気絶したかもしれない。
村人がたった1人なのは彼以外みんな死んでいるからだ。
「殺すのは楽しいな。たったひと振りするだけで死んでいく」
村人の前には大きな金棒を肩に背負った巨漢が立っていた。巨漢が持つ大きな金棒にはベッタリと血が付着していた。
「お前は生かしておいてやる」
「…は、はは…はい」
「何でか分かるか?」
村人は恐怖で声も出ない。巨漢の問の意味も分からない。
「それはここでの事を蜀の劉備とかいう奴に伝えるためだ」
ニヤリと笑う巨漢。恐怖に染まった村人の顔が面白くてしょうがない。
「いいか。ちゃんと劉備に伝えろ。この村の事と…俺様がまた何処かの村を潰しに行くとな」
「は…は…はい」
「ならさっさと行け!!」
「はいぃ!!」
村人は必死に走り去った。
「ははははは。あとこの名も劉備に伝えろ。俺様の名は青牛角様だとな!!」
蜀にて異変が起き始める。
読んでくれてありがとうございました。
次回は明日に投稿出来たら…!!
明日に投稿できなかったら正月中に投稿するかもしれないし、正月明けかもしれないです。
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漢女ルートにあった流行病の内容をオリジナル設定で加えたものです。
これからどんどん展開していきます。
華佗たち+蜀の誰か+カルデアの誰かが流行り病を治しに行きます。
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やっとこさ華雄を再登場させました。(前回で再登場してますけど)
八傑衆編(蜀)では彼女も活躍予定です。
オリジナル展開です。この物語では彼女は月たちと再会。
ついに『彼女』が恋姫世界に。
登場予定は八傑衆編(呉)です。