Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは!!
FGOではアキハバラエクスプロージョンが開催してますね。
現在、私は少しずつアキハバラタワーを登っております。全てのストーリーをまだ見てませんが今回も面白いですね。
各々の英霊達が秋葉原を楽しんでいるのがまた面白いですし、ほっこりします。

さて、今回も日常編です。
特にオチとかなかったりかもですが生暖かい目で読んでってください。


孫呉の日常2

583

 

 

虞美人の1日は遅い。

 

「ぐっちゃんパイセン。もう昼過ぎだよ」

「虞美人殿。規則正しい生活が一番ですよ」

「何で…2人がいんのよ」

 

寝ぼけた感じにポツリと呟く。

サーヴァントに睡眠は必要ないが精神的な疲れは存在する。その疲労をどうやって解消するかは人それぞれと言うか英霊それぞれだ。

趣味に走ってもいいし、食事を楽しむも良し。惰眠を貪っても構わない。

 

「はあ…項羽様に起こされたいわ」

「項羽殿が何処にいるか分かりませんからね」

 

虞美人の話によると項羽は既に外史に転移しているとの事。

彼女が外史に転移する前に項羽がカルデアから居なくなっているのを確認したからだ。

項羽がこの世界で少しでも行動を移せば目立つ。何せ姿が姿であるからだ。本人も召喚された当時は自分の姿に驚いていた程。

 

「ぐっちゃんパイセン。遅めの昼飯を食べよう」

「いらないけど…食べる」

 

モソモソと布団から起き出す虞美人。すると蘭陵王がまるで執事のように彼女の身支度を手伝っていく。

 

「ここの料理も美味しいからぐっちゃんパイセンも気に入るよ」

「カルデアにいるコックの英霊や紅ちゃんよりも?」

「あー…それを言われると」

(コックの英霊とはエミヤ(弓)殿の事でしょうか)

 

呉のお抱え料理人も腕は確かであろ、まさに料理の達人と言える。しかし申し訳ないがエミヤと紅閻魔に比べると少し劣る。エミヤや紅閻魔の域まで到達するにはもっと修行が必要かもしれない。

 

「でも美味しいのは確かだから」

「紅ちゃんたちの腕が神がかっているだけだからしょうがないか」

 

今さらだがカルデアの厨房は世界レベルに通用する。知らず知らずに藤丸立香たちは三ツ星レベルの料理を食べていたのだ。

 

「ぐっちゃんパイセンは何食べる?」

「なんでも」

「それは料理作る人にとって困る返しだ。ぐっちゃんパイセンも項羽にそんな事言われたらショックでしょ」

「項羽様はそんな事を言わないわよ。てか、私なら項羽様の食べたいものは聞かなくでも毎日作れるからね。心と心が繋がってるから」

 

いつも通り彼女の心は項羽の愛でいっぱいだ。

 

「うう~ん」

 

両腕を真っすぐに上に伸ばして屈伸運動をする。ポキコキっと音が聞こえてきた。

 

「老書文呼ぶ?」

「呼ばんでいい。確かにあいつの按摩は効くけど、あんなのは100年1度受けるのが丁度良いのよ」

 

閻魔亭の虞美人アンチエイジングは色々と面白かったもとい大変だったものだ。

 

「じゃ、食堂に行こっか」

「はいはい」

 

3人で食堂へと向かう。昼過ぎとはいえ、まだまだ昼食を食べている者たちはいるが今なら混むほどではないはずだ。

 

「何たべようかな。回鍋肉に棒棒鶏、青椒肉絲。炒飯も良いな。中華って美味しいよね」

「中華料理は我が国の誇りの1つですからね」

 

世界三大料理の1つが中華料理だ。

世界に貢献した料理という事で現代でも広く伝わっている。己が広めたわけではないが自国の誇りは自慢したくなるもの。

蘭陵王もつい嬉しくなる。

 

「私は食に関しては特に気にしなかったけど」

「虞美人殿は動植物から精気を吸収できますからね」

「私にとって食事は娯楽…趣味の1つみたいなものでしかないわ」

 

食事が娯楽・趣味で良い。食を楽しむ文化は昔から現代まで続いているのだから。

美味しいものを食べたいという欲求が現代の食文化を発達させたのだ。

 

「すいませーん。炒飯と麻婆豆腐で」

「私は棒棒鶏を頂きます」

「フカヒレ」

 

何でもいいと言っておきながら虞美人は高級料理を要求していた。

 

「フカヒレあるの?」

「前に出していたのを見たわ」

「あるんだ」

 

料理を注文してから談笑でもしながら待っているとすぐに料理が運ばれてくる。

 

「じゃあ、いただきます」

 

パクパクと箸ではなくレンゲが進む。

炒飯を口にかっ込み、麻婆豆腐をホフホフと食べていく。

蘭陵王は味を楽しむように棒棒鶏を食べ、虞美人も同じように食べていた。

 

「美味しいでしょ?」

「まあまあね」

「えー、呉のお抱え料理人にその評価はないでしょー」

「ん?」

 

急に可愛い声が聞こえてきた。

 

「えへへー、りっかー!!」

 

気が付けば小蓮が腰のあたりに顔をすりすりと擦り付けていた。まるで猫のようだ。

 

「これは小蓮殿。どうしたのですか?」

「3人を食堂で見かけたから声を掛けただけー」

 

ニコニコの笑顔。彼女はいつも元気いっぱいだ。

 

「ねーねー、お膝の上に乗せてー」

「今食事中だから駄目」

「えー、いいじゃんいいじゃーん。別にシャオが乗っかっても邪魔にならないし、なんか減ったりしないでしょ?」

「そうかもしれないけど」

 

誰かを膝に乗せるなんてカルデアでは日常で慣れている為、実際は何も邪魔にはならない。

 

「あ、シャオが乗っかったらやらしい気分になっちゃうからかなー?」

「それはないかな」

「むう、はっきりと言われるとムカツクー」

「どう言えと」

 

はっきりと「いやらしい気持ちになる」なんて言えるはずがない。もしかしたら冗談で受け取ってくれたりしたかもしれない。

 

(なんかぐっちゃんパイセンが冷めた目してるよーな?)

 

しょうがないと思いながら椅子を引いて膝を机の下から出す。すると小蓮は待ってましたと言わんばかりに膝へ、ぴょんっと飛び乗ってくる。

 

「えへへ。やったー!!」

 

本当に元気いっぱいな女の子である。

 

「そうだ。ぐっちゃんはさー」

「ぐっちゃん呼ぶなって言っているでしょうが」

「いーじゃん。シャオの旦那の立香がそう呼んでるだし」

「後輩。あんたはこんな小さい子まで手を出してんの?」

「色々と違います」

 

呆れた目で見てくる虞美人。カルデアでも小さい女の子を侍らしていると勝手に思われている誤解を解きたい。

侍らしているのではなく、懐かれていると思って欲しいのだ。その中には恋慕が含まれている女の子もいるが。

 

「小さいって言うなー。シャオはこれでも大人なんだからね」

「大人ねえ」

 

何処からどう見ても子供にしか見えない。しかし本当に子供というわけでもない。

 

「で、呉のお抱え料理人の腕をまあまあって。その評価はないんじゃないの。てか、残さず食べてるじゃない」

「不味くはないからよ。でも味はまあまあ」

「むー」

 

虞美人の舌は既にカルデア料理部に染められている。そもそも紅閻魔の料理で肥えさせられているからしょうがない。

呉のお抱え料理人も紅閻魔のレッスンを耐え抜けば虞美人も認めるはずだ。

そして小蓮が呉のお抱え料理人の腕を褒めていた事で実は呉のお抱え料理人は感動していたそうだ。

 

「ふーんだ。ぐっちゃんもきっとすぐに呉のお抱え料理人の腕に落ちちゃうんだからね」

「ないわね。紅ちゃんを越えない限りね」

「べにちゃん?」

「ぐっちゃんパイセンの友達だよ」

 

虞美人の数少ない友人の1人だ。

 

「閻魔亭っている温泉宿を経営してる女将さん。とっても良い人だよ」

「へー。その閻魔亭って場所に行ってみたいかも」

「はっ、お前ら人間なんかに行けるような場所じゃない」

「オレは行けたよぐっちゃんパイセン」

「お前は変なだけだ」

 

虞美人にとって藤丸立香は普通な人間なくせに努力家で諦めない心を持っている人間であり、妙に変な人間だと思っている。

「妙に変な」という部分が本当に濃い。何でそんな事に遭遇する、巻き込まれるんだとツッコミが入るくらいだ。

 

「立香が行けるんならシャオも行けるね。ねーねー、立香。シャオを連れてってー」

「そうだね。行けたらね」

 

本当に行けるか分からない。

正直に言ってほぼ不可能な気がする。しかし藤丸立香たちは異世界に転移しているのだから可能性はゼロではないのだ。

もしも小蓮が閻魔亭に行けたら色々と大変だったり、面白かったりするかもしれない。

 

「ところでシャオはお昼はもう食べた?」

「まだだよ。さっき起きたばっかりだもん」

「ぐっちゃんパイセンと同じで寝坊助さんか」

 

チラリと虞美人を見る。すると「こっち見るな」というアイコンタクをキャッチ。

 

「いいんです。寝る子は育つんですー」

 

寝る子は育つ。

この言葉は確かによく聞く。夜更かしの子を寝かしつける為に言ったり、寝坊したりした時の弁明だったり。

 

「立香だってシャオのおっぱい大きくなった方がいいでしょ?」

「んんー」

 

返事に困る発言だ。

もう一度、虞美人を見るが目をでまた「こっち見るな」と送られてくる。次に蘭陵王を見るが困った顔をされてしまう。

 

「シャオ、おっぱいこのままじゃ困るんだよね」

 

じーっと虞美人を見る。

 

「ぐっちゃんも結構大きいね。いいなー」

「胸の大きさなんてどうでもいいじゃない」

「どうでもよくないよ!!」

 

虞美人は体型を変化させられるので気にしていない。何故なら胸の大きさから身長、体重まで変化できるからだ。

その為に一度、宝具を発動して爆散する必要であるが。

虞美人はどうでもいいと言っているが実は項羽の前では気にするのだが、それはまた別の話である。

 

(どうしようか。そのままでも魅力的だよ…と言うべきか)

 

胸の大きさを気にする女性には発言をよく考えないと色々と地雷となってしまう。

彼女はよく炎蓮や雪蓮、蓮華みたいになりたいっと言っている。「そのままでも」という発言はある意味、小蓮の目標を否定してしまう発言にもなってしまうかもしれない。

 

「どしたの。難しい顔してるよ?」

「なんでもない」

 

どうやら難しい顔をしていたようだ。

 

「やっぱり、おっぱいが大きくないと駄目?」

「いや、駄目じゃないよ。シャオはもう可愛いから胸が大きくても小さくても問題ないよ」

「え、そうなの?」

 

小蓮が可愛いというのは本当だ。清姫に誓って嘘ではない。

 

「うん。それに早く雪蓮さんたちみたいになりたいっていう目標も否定しないよ。そのためにシャオが色々と頑張ってるのもね」

「立香。わーい、流石はシャオの旦那だね!!」

 

子供扱いしてしまっているのはまだあるが、早く大人になりたいという願望は子供の頃は誰でも思い浮かべる。その思いを否定なんて出来るはずがない。

 

「ま、それはそれとして早起きはした方がいいと思うよ」

「それじゃあ夜更かしできないじゃん」

「夜更かしは褒められたものじゃないと思うけどな。それに夜更かしすると肌が荒れたりするってっ聞くよ」

「シャオはまだぴっちぴちだから平気だもーん。ほら、触ってみてよ」

「え、触?」

 

小蓮は藤丸立香の返事を聞かずに手を持ち上げて太ももの辺りを触らせる。

 

「ほらぁ。もちもちのすべすべでしょ?」

「確かにそうだけど」

「んふふふふ。もっと触ってもいいんだよー?」

 

小悪魔っ子の小蓮。何度も思うがクロエに通ずる何かを持っているが気がする。

冗談なのか本気なのか分からない時があるが小蓮はほぼ本気で行動しているから侮れない。

 

「例えばもっと上の方とか…ね」

 

小蓮の指先がつつつっと藤丸立香の手の甲を上へ上へとなで上げる。

 

「こら、やめなさい。まだ日も高いのに」

 

ここは大人の対応で小蓮を注意する。

 

「じゃあ夜になったらいいの?」

(発言を間違えた?)

 

大人の対応で注意したはずが発現を逆手に取られてしまう。

またも虞美人と蘭陵王を見る。

 

(昼間から盛ってんじゃないわよ後輩)

(盛ってないからぐっちゃんパイセン)

(主…昼間からどうかと思います)

(あれ、なんかオレが悪い感じに!?)

 

こういう時は何故か男が悪い感じになる。納得が出来なさすぎる。

どうにかして雰囲気を変えるために考えていると急に変化が起きる。

 

「破廉恥ですぞおおお!!」

「ひにゃ!?」

 

いきなりの怒鳴り声が聞こえてきたのだ。怒鳴り声を発した人物は雷火である。

虞美人も蘭陵王もちょっと驚いたようでめをパチクリさせていた。

 

「まったく、白昼堂々と食堂でなにをしておられるか!!」

「立香のお膝の上に乗ってるだけでしょー」

「だけとはなんですか、だけとは。わしは先ほど下半身を触れさせていたのも見ておったのですぞ」

「ありゃま」

 

小蓮の行動がバッチシと見られていたようだ。

 

「ありゃまではありませぬ。孫家の姫君が真昼間から男に尻を擦り付けて何事か!!」

「まだそこまではしてないもん!!」

(まだ!?)

 

もしかしたら雷火が来なければ実際にしていたかもしれないという事だ。

昔も現代もマセている女の子はいるようだ。小蓮の積極力はそのうちカルデア溶岩水泳部並みになったら怖いものである。

男冥利につきるはずだが藤丸立香は気付かない。

 

「問答無用。そもそも女というのはまず第一に慎みを持つものでございますぞ。加えて芯を強く持ち、男にみだりに尻を振ってはなりませぬ」

 

雷火の説教がクドクドと始まってしまった。

 

「確かに炎蓮さまの御下命である、御遣いの子を授かるというのは特に孫家の姫君においては一層の大事ではございますが時と場をわきまえていただきたい。所かまわず発情するのでは獣と変わりませぬぞ…良いですか小蓮様は孫家の姫としてーー」

 

怒涛の説教だ。しかし小蓮は説教されている内容に納得ができていない顔だ。

 

「ねえ、後輩」

「なに。ぐっちゃんパイセン?」

「御遣いの子を授かるって何よ?」

「んーー」

 

まさかの質問が来てしまった。まさかと言うか藤丸立香の孫呉の役目を知らないカルデア勢ならば必ず聞いてくる。

 

「んんーーー」

「唸ってるんじゃないわよ後輩」

「ははは…私が説明しましょうか」

 

苦笑いをしている蘭陵王。既に藤丸立香の呉での立場を聞いている。

ランランリョウリョウと説明していく。

 

「要は種馬って事ね」

「種馬って言わないで」

 

やはりと言うか予想していた言葉を言われてしまう。

 

「虞美人殿。流石にマスターを種馬と言うのはどうかと」

「だって何処からどう聞いてもこいつ種馬じゃない。蘭陵王だって少しは思ったでしょうが」

「……いえ、そんな事は」

 

少し間があったのを見逃さない。しかし藤丸立香も当事者でなければ、内容を聞いて種馬と想像してしまうので怒れない。

 

「あんたカルデアでもこっちでも…そろそろ自重した方がいいわよ」

「いや、あの…狙ってやってるわけじゃないから」

「嘘も大概にしなさい」

 

何故か睨まれる。

 

「あれだけ英霊達と親密(絆を深めている)になっておきながら、こんな特異点だか異聞帯のような世界でも女を作って…あんたいい加減にしなさいよ」

「だから、狙ってやってるんじゃ」

「それはそれで質が悪いのよ!!」

 

アイアンクローを喰らわされられる。

 

「痛いっ!?」

「あまつさえ紅ちゃんまで毒牙にかけてるそうじゃない!!」

「ええっ!?」

「前に聞いたわよ。紅ちゃんがあんたの事を旦那様と言っていたのを!!」

 

ミシミシと顔から嫌な音が聞こえてくる。アイアンクローの威力が徐々に強くなっているのだ。

 

「あだだだだっ!?」

「紅ちゃんの為にここは後輩の頭蓋骨をぐちゃってしておこうかしら?」

「ぐっちゃんパイセン、それ死んじゃう!?」

 

ぐしゃ、ではなく、ぐちゃっという所が怖い。

 

「大丈夫よ。カルデアに医神と婦長がいるから」

「そうだけども!?」

 

アスクレピオスとナイチンゲールならば頭蓋骨粉砕くらいなら治せそうだ。

 

「蘭陵王助けて!!」

「主の…その、人誑しというか英霊誑しは自重した方がいいのは私も同意です。たまには反省した方が良いですよ」

「蘭陵王ーー!?」

 

良心の蘭陵王から見捨てられるのであった。

藤丸立香は虞美人にアイアンクローを喰らっている。彼の膝に小蓮が乗って雷火から説教を受けている。蘭陵王は心配しながら棒棒鶏を食べている。

第三者が見たらポカンとする状況だ。

 

「ら、雷火さん。さすがにそこまで言うのは…」

 

アイアンクローを喰らっておきながらも小蓮と雷火を仲裁しようとする。説教を止めるのが仲裁かどうかは置いておいて。

 

「お主もお主じゃ。先ほどから鼻の下を伸ばしよって。お主のそういう軟派な態度がそもそもシャオ様をつけあがらせるのじゃ。良い機会じゃから今日から改めい。まあ、今まさに罰を受けているようじゃが」

「うぐぐ…」

 

アイアンクローを喰らいながら説教を止めようとしても恰好は付かない。

 

「立香、気にしなくていいんだよ。てか、大丈夫?」

 

さりげなく藤丸立香の膝を占拠したままの小蓮は慰めるようにぽんぽんと肩を叩いてくれる。

 

「大丈夫だけど痛い」

「大丈夫ならもっと握力を強めるわね」

「やっぱもう無理です。ぐっちゃんパイセン」

 

ミシミシっとまた頭蓋骨から音が鳴った。

小蓮は心配しながらも視線を雷火へと視線を戻す。

 

「てかさあ、前々から思ってたんだけどさ。雷火の言う事って…古い」

「なんですと?」

「あのね、シャオの時代はもう慎ましくーとかそういう時代じゃないんだよ。好きなことは好きって言うの。そうじゃないと思いって伝わらないんだよ」

 

確かに小蓮の言う事に一理ある。

女性、男性の振舞い方は時代によって変化していく。

昔の振舞い方こうだった。でも今はこういう振舞い方だ。そんな会話が世代の異なる者同士がするもの。

世代によって言い分が異なるため、今の小蓮と雷火のように衝突し出すのだ。

 

「どーせあれでしょ。シャオと立香にヤキモチ妬いてたんでしょ?」

「な、なな、なにを仰いますか!?」

 

先ほどまで雷火がガンガンに優位であったが小蓮の言い返しでタジタジになりはじめる。

簡単に言うと動揺し始めた。

 

「あ、それとも自分がシャオみたいに積極的にできないからって八つ当たり? もう、これだからお年寄りは困っちゃうよね」

「わしはまったく、露ともそんなことは考えておりませぬぞ。勝手に話を進めないでいただきたい!!」

「へー、じゃあ立香のことはどうでもいいんだ」

「話をすり替えないでいただきたい。そもそもシャオ様の日頃の生活態度についてわしは申し上げているわけで」

「そっちこそ話をすり替えているでしょ。シャオの今の話してたじゃん」

「つまり普段からシャオ様はこうだから、生活態度を直すべきだと申しあげているわけでございます!!」

「えー、ずるい。さっきと話が違うよ!!」

「ずるくありませぬ!!」

 

どんどんとヒートアップしていく口論。

彼女たちが今いる場所は食堂。昼過ぎなので人は少ないが、それでも誰かしらいる。

2人が口論していれば視線が集まるのは当然。更にその2人が孫家の姫と孫呉の重鎮なら兵士だろうが文官だろうが騒めくものだ。

何か大事なものではないかと変に不安を思わせてしまうかもしれない。

 

「2人とも落ち着いてください。ここは食堂です。言い争いをするものではありませんよ」

 

棒棒鶏を食べ終えた蘭陵王は2人を仲裁する。

 

「言い争いは何も生み出しません。それでも続けたいのであれば場所を変えるべきです」

「蘭陵王の言う通りだよ。そろそろ2人とも落ち着いて」

 

何とか虞美人のアイアンクローから抜け出していたが顔にクッキリと跡が残っている。

 

「立香はどっちが悪いと思ってるの!!」

「どっちも」

「えー!?」

 

喧嘩両成敗というわけではないがここは2人を冷静にさせるために口を動かす。

 

「雷火さん。貴女の言っている事は間違ってないです。でも追及するところが何処かちぐはぐのように思えます」

「うぐ」

「先ほどの話を聞いていると小蓮殿の言い分を聞かずに己の言い分を押し付けているようでもありました。そこは小蓮殿が反発する部分でもあると思いますよ」

「蘭陵王殿まで。うぬぬ……確かに、少々頭に血を上げらせすぎたやもしれん。ただ、シャオ様は節度を持たれるよう、お願いいたしますぞ」

 

流石に第三者から注意されると雷火も冷静になったようだ。

 

「そしてシャオ。確かに雷火さんも言い過ぎたかもしれないけど、シャオも節度を持つのは大事にした方がいいと思うよ」

「うう、立香もそう思う?」

「うん。シャオにくっついて貰えるのは嬉しいけど、人の目のありそうな所じゃ悪目立ちになるから。人によっては本当にはしたないって思う人がいるよ?」

「はーい…」

 

小蓮も冷静になってくれた。

 

「でも、みんなに見つからないところでなら、何してもいいんだよね?」

 

蠱惑的な笑みで意味深な事を言ってくる。

 

「そうじゃない。そうじゃないぞシャオ」

 

反省しているのかしていないのかいまいち分からなかった。

 

「はい、言い争いはここまで。2人ともそれでいいね?」

「うむ。シャオ様言い過ぎ申し訳ありませんだ」

「シャオもちょっと言いすぎちゃった。ごめんね雷火」

 

謝って仲直り。

すぐに雰囲気が元通りになるわけではないが、悪くなることもない。仲直りをしたからには少しずつ雰囲気も良くなる。

その為には第三者が緩和剤になる必要がある。誰かが会話の糸口を作るべきなのだ。その方が助かるというものだから。

 

「そう言えば雷火さん。食堂に来たって事はこれからお昼?」

「む? ああ、そうじゃな」

「シャオもこれからだったんだよね」

 

2人は昼食を注文するのであった。

 

「てか、終わった?」

「ぐっちゃんパイセンは蚊帳の外だったよね」

「人間共の争いなんて興味ないわ」

 

アイアンクローを外されてからは小蓮と雷火の口論なんて我関せずにフカヒレを食べていたのだ。

 

「精霊にとって人間たちの争いはどうでもよいということか?」

「そうよ。えーっと…」

「雷火さんだよ」

「人間の名前なんて覚えてもね。どうせ私よりも先に死ぬんだし」

 

不老不死の存在にとって人間が寿命が短すぎる生物だ。

蘭陵王などの縁を結んだごくわずかの者くらいしか記憶をしない。

 

「しかし其方が項羽の妻である虞美人とはな。今でも信じられん」

「なんだ人間」

「信じられんが信じるしかないからのう」

 

雷火の目でも視線の先にいる虞美人からはまさに世から浮いているような存在感で人間にはない魅力を感じる。

嘘を言っている雰囲気もなく、藤丸立香たちも彼女の事を項羽の愛人・妻である虞美人と認めているのだ。

 

「お主の事や項羽の話を聞いてみたいものじゃな」

「雷火」

「なんですかシャオ様?」

「項羽の話をぐっちゃんから聞いたら1日持たないよ」

 

既に経験済みである小蓮。

 

「そ、そうなのか」

「聞きたいんなら話すわよ。それと項羽様と呼べ」

 

机に両肘を立てて寄りかかり、両手を口元に持ってくるポーズをしている。

 

「い、いや。また時間がある時に頼む」

 

1日では足らないと聞き、不用意に聞くのはまずいと判断。

聞いたら最後、永遠に項羽の話を聞かされる羽目になる。項羽と虞美人の歴史はとても興味深く聞いてみたいが仕事が残っている状況では1日を取られるのは色々と問題だ。

歴史家や歴史マニアなら仕事をほっぽって聞くかもしれないが。

 

「1日は取られるけど話の内容はとっても興味深いよ。項羽の人生はとても壮絶で興味深かったもん。資料の内容と全然違ったからね」

「ほう」

「漢王朝を建てたのは劉邦。でもその裏には項羽の活躍もあったんだって」

 

やはり興味深いと思い、やっぱり今からでも聞こうかなっと悩みだす。

 

「項羽は自ら暴政を敷く覇王になって、漢王朝を建てる為に劉邦に討たれたなんて全然資料と違うもん」

「それは真か。うむむ…興味深い。午後は仕事を休みにしようかの」

 

先ほどまで聞くのは時間がある時にしようかと思っていた雷火であったが小蓮の断片的な項羽の話を聞いて今からでも聞いてみたいと思い始める。

 

「休んでもいいんじゃない?」

「なんじゃ立香」

「雷火さん最近は働きづめって聞いたよ。ぐっちゃんパイセンの話で休みになるか分かんないけど」

「物凄いリラックス効果があるわよ」

(無いと思いますが…)

 

思った事を心の中で留めた蘭陵王。

逆に虞美人と項羽の話を聞いて興味深くて興奮するかもしれないからだ。

もしくはノロケ話を聞かされてしまう可能性もある。

 

「頑張るのも良いけどたまに休まないと倒れるからさ」

「そーだよ。シャオもそう思う。雷火ってば最近はずっと働いてるじゃん。ちゃんと休みを取った方がいいよ」

「これでも休みはちゃんと取っておるのじゃが」

 

無理してる人がよく言う台詞だ。本当はやすみを取っていないのに休みを取っていると言う。

 

「主に言われてもですね」

「どういう意味さ蘭陵王ー」

「そのままの意味です。主もちゃんと休みを取ってほしいものです」

 

藤丸立香も人類最後のマスターとして頑張っている。頑張りすぎているのだ。

体調管理はカルデアでもちゃんと受けており、肉体は問題ない。問題なのは精神の方だ。

精神に関しては藤丸立香が誰かに話してくれないと分からない。カルデアスタッフや英霊達が一番恐れているのが心が壊れてしまう事だ。

仲間達が支えてくれるとはいえ、たった1人に世界の命運を背負わせてしまっている。その重さは想像を超える重さだ。

精神に、心に罹る負担は誰も想像できない。

 

「ちゃんと休みを取ってるよ?」

「主も雷火殿と同じ事を言ってますよ」

「本当に休みを取ってるんだけどなあ」

「わしもちゃんと休んでるぞ」

 

本当にマズイを思ったら無理やりにでも休ませる。

藤丸立香に関しては英霊達も色々と休ませようと動いてくれる。例えばカーマはだったり。色々と最後あたりは暴走していたが。

精神面も肉体面も休んでこそが本当に休みなのである。

 

「老書文殿のお力が必要かもしれませんね。あの方ならば肉体の疲れは取れますから」

「え、オレも絶招経路按摩を喰らうの?」

「絶招経路按摩ってなんじゃ」

 

後日、本当に絶招経路按摩を施術されるのだがそれはまた別のお話。

 

 

584

 

 

ただの散歩気分で庭を歩いている。何となく自然と視線を上に向けると蓮華を発見。

 

「お~~~~い、蓮華さ~~ん」

 

つい見かけたので手をフリフリと振って呼びかける。

気付いてくれたのか此方側に顔を向けてくれる。何か話しかけてくれているが声は聞こえない。

単純に遠くて声が届いていないのだ。そういう場合は声が聞こえる場所まで向かえば良いだけ。つまり彼女の元に向かえば良い。

 

「こんにちは。蓮華さん」

「どうしたの。何か用でもあった?」

「特には。蓮華さんを見つけたから声を掛けただけかな」

「貴方もたまにいい加減というか何と言うか」

 

たまにだが英霊の皆にも言われる時がある。

 

「そう言えばいま暇?」

「暇ではないわ」

「のんびりしているように見えるけど」

「今は休憩中よ。今、侍女にお茶の用意をさせているところ」

 

休憩は必要な事。何にせよ活動し続ける事は不可能だからだ。

適度な休憩があってこそ人間は働き、戦い、生きていく事が出来る。

 

「私でも息をつきたい時くらいはあるの」

 

気だるい感じで「私でも」なんて、いちいち付け加えたのが気になった。

恐らく今の呉は色々と大変だと考える。原因はやはり三国の緊張状態だからもしれない。

 

「ゆっくりするといいよ。休める時は休まないと怒られるからね」

「怒られるって…」

「怒られるよ。オレは怒られた。無理やり布団に投げ飛ばされた事がある」

 

頼りになるアニキ系英霊たちに無理しているのがバレて無理やり休まされた事がある。

平気な振りをしても周りからは無理しているのが丸分かりらしい。最初の頃は自分自身でも無理をしていたと思い出す。尤も今でさえ無理をしている。

 

「もうぶん投げられるね。容赦なく。槍投げでもしてんのかってくらい」

「フフッ、なにそれ」

 

笑ってくれた。

 

「わ、私としたことが…ごほん」

「笑う事は悪い事じゃないよ。誰かが言ってた気がする。笑いは心のビタミンって」

「ビタミンって何よ」

 

ビタミンは体の健康を維持するために必要な栄養素。この場合、笑いや笑顔は心の栄養素という事だ。

 

「そう言えば思春さんは? いつも一緒だと思ってたよ」

「いつも一緒というわけではない。思春は私の将でなく呉の将だ」

(本人は蓮華さんの将と言われても悪い気はしないと思うけど)

「単純に私1人だけなだけよ」

「そっか。まあ、たまには1人でいたい時くらい人間、誰もあるか」

「そうよ。それに立香だって同じでしょ。いつも燕青が一緒な気がするわ。でも今日は1人でしょ」

 

カルデアは基本的に見守られているか監視されている。良い意味でも悪い意味でも。彼女の言う通り人間は1人でいたい事がある。

そうなると今、藤丸立香が蓮華と一緒にいるのは良いのかどうか。

 

「じゃあ、そろそろお暇するよ。蓮華さんの休憩を邪魔するわけにはいかないしね」

「あ、待って。もう少し話し相手になって」

「いいの? せっかく1人で休みたいのかと思ってたけど」

「ええ。それに貴方とはゆっくりと話がしたいと思ってたし」

 

反董卓連合で藤丸立香が天に帰っていなかったと分かり、色々と話し合いたいと思っていた。しかし反董卓連合ではゆっくり話す機会もなく、その後の袁術との戦いでも色々とあった為、またゆっくりと話す事が無かった。

やっと藤丸立香が呉に帰ってきて今まさにゆっくりと話が出来そうなタイミングだ。

 

「それなら喜んで」

 

藤丸立香もまた蓮華と話がしたいと思っていたのだ。

この後、侍女にお茶を持ってきてもらい話の準備は完了。

 

「今更だけど…母様は立香に何を言っていたの?」

 

本当に今更でなかなかの切り込みだ。

 

「雪蓮さんから聞いていてない?」

「聞いたけど。実際に貴方の口から聞きたくてね」

「……炎蓮さんは感謝してたよ。自分を止めてくれてありがとうだってさ」

「そっか。本当に母様らしいわ」

 

炎蓮は怒っていなかった。寧ろ己で孫呉を滅ぼさずに済んで良かったと思っていたのだ。

 

「やっぱりオレらが許せない?」

「複雑な心境だけど…立香たちを恨んでないわ。最初は確かに恨んでいたけど、誰かがやらなければならない事だったのは後から理解できてしまったからね」

 

藤丸立香たちが炎蓮を止めなかったら他の誰かがやっていた。そして孫呉の誰かが炎蓮を止められていたかと言われれば答えられない。

 

(本当は生きてるんだけど、その炎蓮さん自身から口止めされてるからなぁ)

 

実は炎蓮は生きており、今は蜀で正体を隠してる。もしかしなくても一部の人間にはバレているが。

 

「炎蓮さんはさ…」

 

炎蓮との戦い。そして決着後の事を細かく蓮華に話していく。

 

「ありがとう。色々とスッキリしたわ」

 

自分の母親の最期を知れてモヤモヤが少し晴れたかのような顔をしていた。藤丸立香としては彼女には嘘を付いて悪いと思っている。

 

「でも何も言わずに帰るのは許さなかったわよ。しかも帰っていなかったなんて」

「ははは」

 

雪蓮だけでなく孫呉の面々には色々と怒られたり過激なお仕置きを受けたりと思い出して苦笑い。

 

「取り合えず頬が痛かった」

 

頬をさすり出す藤丸立香。全員にビンタを受けたのだ。

ちなみに荊軻と李書文(槍)、燕青はビンタを回避していた。

 

「蓮華さんのが一番効いたよ」

「その痛みは忘れるな」

「お、威圧的」

「ちゃんと聞け」

「ちゃんと聞いてるよ。忘れてはいけない痛みはオレも嫌と知ってるから」

 

特異点や異聞帯での戦いの中で忘れられてはいけない痛みはある。肉体的にも精神的にも。

世界を取り戻す為に散った命はいくつも見てきた。世界を取り戻す為に大きな傷も受けてきた。無事だったからと、特異点、異聞帯を解決したからと言って忘れてはいけない。

これから藤丸立香が生きていく人生で永遠に刻まれた記憶だ。

 

「そう。ならいいわ」

 

蓮華も藤丸立香がふざけていない。本当に受け止めていると理解できた。

彼は時たまに雰囲気が変わるのだ。蓮華は天の国で起きた戦争の事を思い出しているのかと予想している。

特異点、異聞帯の戦いを戦争と現しているなら正解だ。

 

「それにしても李書文にも喰らわしてやりたいわね」

 

ブンブンとビンタを振るう動作をする。

李書文(槍)は炎蓮に直接とどめを刺した人物。考えようによっては仇となる人物だ。

思う所はあるが復讐をしたいとは思っていない。ただケジメはつけたいといった心情である。

 

「う~ん。素直にケジメを付けたいと言えば李書文も平手打ちを受けてくれる…かな?」

「彼は受けてくれない気がするけど…寧ろケジメという試合なら受けてくれそう」

「確かに」

 

実際に李書文(槍)は炎蓮を倒した事に後悔していない。それは炎蓮もだ。

結局、炎蓮は生きているので今では酒の席のネタ話になっているくらいだ。

 

「正直、私は彼に勝てる想像がつかないわよ」

「李書文を正面から打ち勝つ人なんてそうそういないからね」

 

まさに達人という強者の闘気は蓮華も感じ取っている。

 

「燕青もそうだけど彼らを正面から倒すなんて母様か姉様たちくらいだと思うのよね」

 

呉の武闘派たちなら李書文(槍)たちと戦える。勝つか負けるかはその時の勝負次第だ。

 

「ちょっと話が変わるけど良い?」

「いいわよ。どうしたの?」

「蓮華さんって自分にそっくりの人に会った事ってある?」

「なんか変わった質問ね。その答えだけど無いわ」

 

自分にそっくりな人。藤丸立香がそんな質問をした理由は諸葛孔明たちが漢中で遭遇した蓮華にそっくりな人物について。

その人物は愛紗のオルタを同じ存在で、蓮華のオルタと言うべきもの。その件の本人からも自分たちは未来の存在と言っていた。

 

「オレは会った事が無いけど孔明先生が蓮華とそっくりな人物に遭ったって言ってたんだ」

「え、なにそれ」

「まさに瓜二つって言ってた。だから蓮華さんたちも何か知ってるかなって思って聞いてみたんだ」

 

蓮華もとい呉の孫権と瓜二つ。

呉は大陸で大きな国の1つとなっている。そして孫権と言う名は孫策という呉の王の妹という事で通っているのだ。

そっくりという事で何かしら問題が起こるケースには事例がある。良くも悪くも。

悪いケースだと、そのそっくりさんが悪い事をして別のそっくりさん罪を被らされるなんて事があったりするものだ。簡単に言うと冤罪である。

 

「蓮華さんが知らないって言うならその蓮華さんオルタはあまり目撃情報は無いのか」

(おるたって何かしら?)

 

そもそも最初は仮面を着けて顔を隠していたと言う事で本人も情報を流さないようにしていたのかもしれない。

 

「私とそっくりか」

 

自分自身とそっくりな人物。孫権(暗影)は並行世界の未来の己。

関羽(暗影)は愛紗に対して敵意を剥きだしていた。孫権(暗影)は蓮華に対してどのような感情を浮かべるのか気になる。

 

「気を付けといて」

「気を付けてって…そう言われてもね」

「同じ顔だからこそ出来る事があるからね。悪い事や良い事でも」

「なるほどね。覚えておくわ」

 

蓮華が己のオルタと出会うのはそう遠い未来ではない。しかしその話はまた別の物語である。

 

「しんみりした話が続いちゃったね」

「そう言えばそうね」

 

本当は蓮華が休憩していたはずなのだ。話の内容によっては精神的のリラックスできない事もあるものだ。

 

「ねえ、何か面白い事を話してみてよ立香」

「面白い話をしろって言うものほど難しい事はないんだけど」

「ふふっ」

 

軽く笑っている蓮華。狙って言ったのかもしれない。

 

「姉様から聞いたのだけど、ちぇいてぴらなんとかの話がとても面白かったと言っていたわね。それを聞いてみたいわ」

「うっ、頭痛が…」

「なんで?」

 

過去にチェイテピラミッド姫路城の事を雪蓮に話した事がある。聞いた彼女は理解出来なかった部分もあるがあり得ない話に大笑いしていた。

 

「その話はオレの精神を削りながら話す。覚悟はあるか蓮華さん?」

「何で戦に向かう時の兵士の目をしながら確認を取るのよ」

 

どんな内容なんだと思ってしまう。

他にも色々と面白い・興味深い(イベント)話はあるがチェイテピラミッド姫路城の話は何故か人気がある。

 

「物語の構成は3部作だ。付いて来れるな?」

「だからなんで覚悟をした目なのよ」

 

藤丸立香は精神をゴリゴリと削りながらハロウィンの話をしていくのだった。

まさかの内容に蓮華は理解が出来なかった部分もあったが確かに姉の言う通り面白い話ではあった。あり得なさすぎる話ではあるが、逆にそのあり得なさが面白い。

藤丸立香とは裏腹に蓮華はついつい笑ってしまう。

他にも面白く、思い出深い話はある。それこそルルハワやデッドヒート・サマーレース、サーヴァント・ユニヴァースだったりとありすぎるくらいだ。

たった1日では話しきれないくらいあるのだ。その中から蓮華は気になったもの聞いていく。

笑ったり、ワクワクしたり、ある意味勉強になったりと色々あった。

 

「思った以上に聞き入ってしまったわ」

「面白かった?」

「ええ。良い息抜きになったわ」

 

気が付けば彼女の顔は朗らかになっていた。

 

「そういつまでも緩んではいられないか。立香、長くつき合わせたわね」

「いや、こっちもゆっくりできたよ」

「たまには2人きりで話すのも良いものね」

「なら、また一緒に話そう」

「ええ」

 

元気な返事をしてくれるのであった。

 

 

585

 

 

口笛を吹きながら廊下を歩いていると声を掛けられる。

 

「おい燕青」

「んあ?」

 

声を掛けてきたのは思春であった。

 

「おや、錦帆賊の棟梁」

「今は呉の将だ。侠客」

 

思春は普段から寡黙で感情を表に出さないため、近寄りがたい雰囲気を醸し出しているが燕青は気にも留めない。

梁山泊では荒くれ者ばかりであったので思春は逆に新鮮なくらいだ。全然気にせずに普通に接する事が出来る。

思春もまた燕青には錦帆賊時代の部下たちに通ずる雰囲気を感じるので話しかけやすいのである。

 

「どした?」

「蓮華様をお見かけしなかったか?」

「見てねぇなぁ。姉と妹は見かけたけど」

 

見かけていないものはしょうがない。

 

「珍しいな。いつもは一緒じゃねえか」

「いつも一緒というわけではない。それこそお前だって藤丸と一緒というわけではないだろ」

「確かに。まあ、オレとしては主が無茶しないようにいつも見張っておきたいところだが」

「なんかお前、重いな」

「あんたに言われたくないんだけど」

 

どっちもどっち。

 

「まあ、いい。蓮華様を見かけていないなら話は以上だ」

「そうかい。なんか火急な用だったか?」

「いや、そうでもない」

 

急ぎではない。恐らくちょっとした打ち合わせでもしようとしているのかもしれない。

 

「じゃあよ。逆に聞くけどうちの主を知らないか?」

「知らんな」

「即答だねぇ」

 

知らないのだからしょうがない。知らないのだから何を聞いても無駄だ。

そのまま2人は同じ方向に歩き出す。

 

「何で付いてくる?」

「いや、オレもこっちに進みたいだけ」

 

トコトコ無言のまま歩き出す。

会話が無くとも途切れても2人とも気にしない。しかし寡黙な思春には珍しく先に口を開いた。

 

「燕青。聞きたい事がある」

「なんだぁ?」

「お前らが劉備の所や曹操の所に足を運んでいるのは知っている」

「情報は流してねーぞ」

 

燕青たちは三国に滞在した事がある。

彼らは呉の天の御遣いと護衛で名が通っている。最悪な場合を考えると彼らが劉備と曹操に情報を流しているのではないかと疑われるのだ。

無論そんな事を彼らはしていない。しかし劉備と曹操と仲が良かったら呉の者たちにとっては良い顔ができないのも当然である。

 

「それならいい」

「お、もっと疑われるかと思った」

「疑って欲しいのか?」

「なんでもねーっす」

 

魏、蜀、呉の主要人物たちと出会って仲を深めているのは確かであるが三国にとって不利になるような情報は流していない。

彼らは三国の戦いに手出しする事は出来ない。管理者の貂蝉からも釘を刺されているからだ。

ちょっとした小競り合い程度ならば少しくらい力を貸しても良いらしいがターニングポイントになる戦いや事件は手を出してはならない。

それこそいずれ来る『赤壁の戦い』では絶対に介入してはならないと言われている。貂蝉曰く、赤壁の戦いはこの外史世界にとって重要なターニングポイントの1つだからとの事。

確かに赤壁の戦いは三国志の歴史の中で有名な戦いだ。三国志ファンならば必ず知っており、ファンでなくとも知っている有名な戦いだ。

 

(この世界にいつまで留まるか分からねえが、本当に赤壁の戦いまで来ちまったらどーすんのかねうちの主は)

 

貂蝉の言う通り、手を出さないのか。それとも破って手を出してしまうのか。

一番の問題は三国と縁を紡いだ事。悪い事ではないが後々、引き摺る事になってしまうからだ。

どの国と仲が良くなっても三つ巴の戦争になった時、三国から力を貸して欲しいと言われたらどう思うのか。そしていずれかの国が破れた時に引き摺ってしまうのか。

 

(うちの主は優しいからねぇ)

 

異聞帯での戦いがまさにそうだ。己の世界を救うために罪の無い異聞帯の住人を消滅させる。

救っておいて消滅させる。何とも矛盾な行為である。

異聞帯の戦いと三国の戦いに手を出すか否かは比べてよいものか分からない結果的には似たようなもの。

交流を深めておいて見捨てるという事になってしまうからだ。

 

(難しいものだねぇ)

 

それでも藤丸立香が助けてしまうのは、交流を深めてしまうのは、彼が人間だからだ。

人間だからこそ無視できない、納得できない。意味が無いと分かっていても動いてしまう時がある。それが愚かでありながらも素晴らしい。

 

(来たら来たで、その時か)

 

赤壁の戦いはいずれ来る。どのような運命が待ち受けているか分からないが選択せねばならないのは確かである。

 

「おい」

「んあ?」

「上の空だったぞ」

「ああ、悪い。ちと考え事してた」

 

余計な事を考えてしまったと思って燕青は顔をふるふると振る。

 

「しっかし孫家の次女もうちの主も見つかんねえな」

「蓮華様は一体何処にいるのだろうか?」

「どっかで休憩してんじゃねーか?」

 

たまには1人で休憩したいという事かもしれない。

 

「孫家次女しか知らない秘密の憩い場でもあるんじゃねーか」

「そんなまさか…いや、うむむ。私が知らないそんな場所が?」

「いや、そんな悩まんでも」

 

何故か唸る思春。

 

「いや、藤丸がどっかに連れ出したのではないか」

「何でそーなる」

 

まさかの発言だが否定できない部分はある。

 

「おい燕青。藤丸が蓮華様を連れ出しそうな場所を教えろ!!」

「いや、知らんがな」

「お前は藤丸一の従者だろ」

「その響きは悪くねえなぁ」

 

素直に嬉しいと思うのであった。

 

「でも本当に知らねえよ」

「なら、思い当たるような場所で良いから教えろ。まさかと思うが蓮華様を手籠めにしていたら…」

「その剣を抜くな抜くな」

 

何故か思春が危険な思想になっていく。主に藤丸立香が危険になるという思想。

 

「てか、炎蓮の姐さんはそういうのを推奨してなかったか?」

「う…まあ、そうなのだが」

 

天の御遣いの血を孫呉に取り入れる事。これは炎蓮が決めた事である。

トップが雪蓮になっても、その決まりは撤廃されていない。他の面々も何故か反対の意見が無いのが不思議である。

 

「なあ、うちの主が誰かとヤったか知ってるか。てか、ヤったていう情報ある?」

 

燕青も面白がって藤丸立香の孫呉での役目は反対していない。

 

「知らん」

「そっか。正直なところ主が誰と結ばれるか気になるからなー」

 

カルデアでも藤丸立香が誰と結ばれるかは密かに話題になったりする。一番の候補はやっぱりマシュ。

 

(オレら中華組だと秦良玉や武則天なんかも候補に挙がってんからなー。オレとしてはチビ女帝よりも秦良玉が主に合ってると思うなぁ)

 

しかし、この手の話をカルデアですると色々論争が起きそうであるから怖いものだ。

 

「……なあ」

「なんだ?」

「あんたはうちの主とはどんな感じ?」

 

無視する思春。

 

(特に何かあるわけないのな)

 

藤丸立香と思春の仲はどうかと聞かれれば普通。仲は悪くないが恋だの愛だのといった雰囲気はない。

 

「で、藤丸が行きそうな場所は?」

「だから知らんて」

「いいから言え」

「怖いねぇ」

 

怖くも無いのに思春の無言の圧に怖いと言う。

 

「じゃあオレがこの町で主と周った場所にでも行くか?」

「ああ」

「じゃあ、まずはラーメン屋だな」

 

舌なめずりをする燕青。

 

「ただラーメンが食いたいだけだろお前」

「しょーがねーだろ。本当に主と行った場所なんだからよ」

 

ため息を吐きながらも付いてくる。探す宛ても無いからしょうがないといったところだ。

蓮華と藤丸立香を探すという体で2人はラーメン屋に行くのであった。

 

「オヤジ。ラーメン大盛りで」

「おい。蓮華様も藤丸も居ないぞ」

「居ないねぇ。しょうがないからラーメンでも食うか。オヤジ、こっちにもラーメン1つ」

「おい、私は食うとは言ってないぞ!!」

 

燕青は思春を無視してラーメンを注文するのであった。

 

「どうせ探しっぱなしで疲れたろ。ちったぁ休憩しようぜ。どうせ急ぎの用でもないんだろ?」

「…ちっ」

 

舌打ちをする思春。

既にラーメンを注文されてしまって食わないのはラーメン屋の店長に悪いと思ったのか渋々、席に座った。

 

「飯食ってからの方が流れが変わるかもしれないだろ?」

「流れが変わるってなんだ」

「全然駄目だったもんが、一呼吸置くと上手くいく時あるだろ。そんなんだよ」

 

出されたラーメンをズルズルと啜る2人であった。

 

「新宿のラーメンも美味いが、ここのラーメンも悪くないねぇ」

「しんじゅく?」

「ある意味、オレと主が縁を紡いだ場所かな?」

 

亜種特異点の新宿。

カルデアの燕青ではない燕青と戦った縁ある地。

 

「そこでお前は藤丸と出会ったのか」

「んー…まあ、そうなる…のか?」

「なんか歯切れ悪いな」

「色々とあるんだよ」

 

藤丸立香と英霊の縁は複雑な時があるもの。簡単には説明しきれない。

 

「前々から思うがお前は本当に藤丸に対して忠誠が高いな」

「それを言うならお前さんもだろ」

 

燕青も思春も己の主に対する忠誠心は高い。それこそ自らの命を賭してしまう程だ。

以外にも2人は似ている部分があったりする。

 

「蓮華様は雪蓮様に次ぐ呉の中核になるお方だ。そして私を認めさせた王の風格ある方でもある。蓮華様に付いて行きたいと思うからな」

「ははは。あんたの主は雪蓮の姐さんじゃなくて蓮華の嬢ちゃんか」

「おい、誤解を招く言い方はよせ。雪蓮様にも忠誠を誓っている」

「分かってる分かってる。でも人間ってのは好きな人に贔屓しちまうもんだ」

「贔屓なんて…」

「してるもんだよ。自覚してなくてもな」

 

ズルズルとラーメンを啜る。

 

「いいか。分かりやすいのは冥琳姐さんだ。あの軍師は雪蓮の姐さんが好きだろ。無論、他の孫呉の奴らも好きだろうが雪蓮の姐さんにはある意味甘い。そういうもんだ」

 

つい納得してしまう。冥琳は平等に孫呉の面々に接しているつもりだが雪蓮に対して厳しくも甘いのは皆が知っている。

 

「贔屓するのは悪い事じゃねえ。時と場合によるが…いや、贔屓って言葉が違うか。好きな人に、認めた人を他の人より想うのは悪い事じゃねえって事だ」

 

人間なら好きな人、認めた人が一番と思うのは当然だ。

友人たちの中にも特に仲が良い人がいるというのと同じようなもの。

 

「それがあんたにとって蓮華の嬢ちゃんだって事だろ」

「まあ、そうだな」

 

分厚い叉焼を口に放り込む。

 

「むぐむぐ。で、認めた主を心配する気持ちは分かるよ。オレだってそうだ。そしてウチの主は今度こそ守りたい主だからな」

 

 

「今度こそ」という言葉に引っかかった。

 

「藤丸はお前にとって2人目の主なのか?」

「おっと、余計な事を言っちまったな」

 

煮卵を一口で食べる。

 

「……従者は主に従うべきだ。だがね、主が火山に突っ込もうとするのを止めない従者はいないのさ。オレは止められなかったがね」

「燕青…お前」

「今度はしくじらない。あんたも気をつけな」

 

ラーメンのスープを一気に飲み干した。

 

「悪いな。少し湿っぽくなっちまった」

「いや、構わん。お前みたいな侠客にも色々あるんだな」

「お前みたいなって引っかかるなぁ」

「奢ろう」

「待て、奢らせるために湿っぽい話をしたみたいになるからやめろ」

 

ラーメンを食べ終わって蓮華と藤丸立香を探したが結局のところ町にはいなかった。何故なら2人は城にいたのだから。

 

「おい」

「それはオレのせいじゃねーだろ」

 




読んでくれてありがとうございました。
次回の更新は2週間以内で頑張ります!!


583
ぐっちゃんパイセンとお昼+αって感じです。
お昼食べたり、雑談したり、騒いだり。

Fateで中華と言ったらやっぱり麻婆豆腐。
中華料理って美味しいです。

シャオは完全に虞美人をぐっちゃんと呼ぶようになりました。
彼女もけっこう怖い者知らずですから。そして積極性も恋姫の中でも上位だと思います


584
藤丸立香と蓮華の会話。
反董卓連合で蓮華があとでゆっくり話がしたいとかそう言うのを書いていたので。
その回収話みたいなものです。
暗影の話もちょっとだけ。まあフラグ的な?


585
こっちは燕青と思春の会話。
藤丸立香と蓮華が会話をしている一方その頃的なものです。
意外に相性が良さそうな2人組だと思ってます。

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