Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
おそくなりましたがやっとこさ更新です。
ぐっちゃんパイセンの話を書いていたらまさか原作ではサマーキャンプの復刻とは。
サマーキャンプからぐっちゃんパイセンの伝説が始まったようなものですね。
(閻魔亭や幕間もありますが)
さて、本編の方をどうぞ!!
561
異常事態が起きた。
3回目の食事でまさかの獲物が掛かった。否、獲物ではない。
アレは人間ではない。アレは人間以上の存在。同族か。それも違うかもしれない。
アレは食えない。アレと戦うのは得策じゃない。だから逃げた。手傷を負わせて逃げた。あいつのおかげだ。
反撃を喰らった。血が流れる。ボタボタ流れる。早く直さないといけないが今は逃げるが先決。
アレはまだ生きてる。
562
月明りに照らされ、赤い血だまりが鮮明に映し出される。
血だまりが流れ出ていた元に視線を追いかけると首をねじ切られた虞美人が横たわっていた。
「ぐっちゃんパイセン!!」
「虞美人さん!?」
藤丸立香と梨晏はすぐに駆け寄る。
何度見ても虞美人の首がねじ切られた姿しか視界に入らない。
「そ、そんな…」
梨晏は虞美人の首を優しく持つ。
「虞美人が殺されたなんて」
粋怜も今の状況を重く受け止めている。呼び方も「ぐっちゃん」から「虞美人」とに戻しているほど。
こんな状況では彼女は軽口を叩けるわけがない。
「虞美人は強いわ。そんな彼女があっさりと殺されるなんて想像できなかった…いえ、これは私の慢心ね」
彼女がまともに戦った所は見ていないが武将としての目で実力があると分かっていた。
今回の事件も八傑衆の雷公を倒した時と同じようにあっさりと片付けてしまうんじゃないかと甘い考えをしていた。その考えが甘かったのだ。
粋怜は静かに自分に対して 責する。こんな自分だから炎蓮を守れなかったと過去の後悔が蘇ってくる。
チラリと藤丸立香と荊軻を見ると無口のまま虞美人の死体を見続けているままだった。
2人とも仲間が殺された事に対して現実を見ていないのかもしれない。粋怜も炎蓮が矢に撃たれた時の事を最初は信じられなかったほどだ。気持ちも分からなくはない。
「立香、荊軻…」
どう声をかければいいか思いつかない。
「気にするな」なんて言葉は絶対にかけられるはずがない。大切な主人、家族、仲間が死んで慰める言葉は存在しない。
あったとしても受け手側にとっては余計な言葉にしか感じない。「貴方に私の気持ちが分かるはずがない」と言われてしまえば終わりである。
今できるのは一緒に居る事。悲しみや後悔に押しつぶされそうになっている時は1人にさせてはいけない。
しかし粋怜は忘れている事がある。だからこそこの後に起きる事に驚かされる羽目になる。
「虞美人さん…」
梨晏は虞美人の首を持ったまま。隣にいる藤丸立香は何も喋らない。
虞美人の死体をこのままにするわけにはいかない。藤丸立香と荊軻には虞美人の遺体をこの場から運んでもらうと考えていた時に虞美人とパチリと目が合った。
「え?」
普通に考えて目が合う事はありえない。しかし実際に虞美人と目が合っている。
「あんの吸血種がぁ~」
手に持っている虞美人の首から怨念を込めた声が響いてきた。怨念ある声を聞いて梨晏は恐怖で叫びながら首を投げ飛ばした。
「きゃああああああああ!?」
「投げ飛ばすなぁぁぁぁ!!」
虞美人の首が夜空に舞う。
「後輩キャッチしなさい!!」
「了解っす!!」
くるくると落ちてくる虞美人の首を優しくキャッチ。
「ナイスキャッチよ後輩。そのまま首を繋げなさい」
「魔力も回します」
虞美人の首を繋げながら魔力を回し、より早く再生するように促す。
「え、えーっと…虞美人さん?」
「何よ」
「い、生きてるんですよね?」
「ええ」
首が完全に繋がったかどうかクキクキと確認している。
梨晏は今でも信じられない目で虞美人を見ていた。首がねじ切られていたのに今は完全にくっ付いて元通り。
普通ではあり得ない光景である。その普通は人間であった場合だ。虞美人は人間ではない。
「そう言えばぐっちゃんは精霊だかなんだかと言っていたわね」
最初の自己紹介の時に虞美人は人間でなく精霊と言っていた。そして不老不死というのも後から聞いた。
不老不死なんて信じられなかったが目の前で起きた事を実際に見てしまえば『信じられない』という言葉は彼方に飛んでいく。
粋怜にとって人生の中でも上位に食い込むレベルで驚いた出来事だ。
「もしかして立香は知ってたの?」
「知ってたって言うか説明してたと思ったけど」
「そう言えば説明してた気がする…」
梨晏も虞美人が不老不死だという事を思い出す。
「本当に死んでいないのね?」
「死んでいないわよ。私は首をねじ切られたくらいじゃ死なないし」
「いや、首をねじ切られたら死ぬから」
常識が通じない虞美人に流石の粋怜も冷や汗タラリ。
「よく見なさいよ。今回は額に天冠を付けてないでしょ」
「あ、本当だ」
サマーキャンプを思い出す藤丸立香。
当時は何度も死んでは額に天冠を付けた虞美人が化けて出ていた。
((天冠?))
天冠がよく分からない2人。
「だから1回死んだ事にカウントされないから」
「宝具を発動して爆発四散するのに比べれば首をねじ切られたくらいじゃ死んだ事にならない…か?」
虞美人と一緒にいると藤丸立香も感覚が麻痺しているのか、常識はずれな事を言っている。
「立香。爆発四散って首がねじ切られた以上にマズイと思うんだけど」
「ああ、うん…そうだよね」
急に冷静になる藤丸立香。
「何言ってんのよ。爆発四散くらいで」
「ぐっちゃんパイセン。そうじゃないんだ」
やはり精霊と人間の常識は違う。
「ぐっちゃんパイセン。犯人は見たんだよね?」
「ええ。やっぱり妖魔だったわ」
そう言えばと思い、先ほど「あんの吸血種がぁ」とか言っていた。
この事から完全に犯人へとたどり着く。被害者と目撃者になった虞美人に間違いはない。
流石の犯人も殺したと思った人物が不老不死の生物だと思ってもみなかったはずだ。
「あいつめぇ」
苛つきながら虞美人は説明していく。
「見た目は男。項羽様に圧倒的に負けるけど美男子だったと思う」
「美男子かぁ」
若い女性が引っ掛かる姿と思ってしまう。逆もまた然りであるが。
「でもそれは仮の姿ね。そいつ変身できるみたいだし」
吸血種(鬼)じゃ変身能力を備えている。嘘か本当か分からないがよく聞く能力だ。
「そいつけっこう大きくて目測で30尺くらいだったかしら」
約9メートル。
「でっか」
梨晏は普通に驚いた。
確かに9メートルは普通に考えて大きい。
(スプリガンよりは小さいかな)
藤丸立香たちは9メートル以上のエネミーと多く対峙してきたので小さいと思ってしまうのは、またも感覚が麻痺しているのかもしれない。
「私を襲ってきた時にでかく変身したしね。てか、あれが本来の姿かも」
「で、この有様になったわけか」
荊軻は周囲を見る。まさに襲撃現場であり、先ほど虞美人が首をねじ切られた光景は殺人現場だ。しかし虞美人もただで首をねじ切られたわけではない。
「ふむ。向こうに血痕が続いているな」
「反撃した際のものね」
血がポタポタと垂れ落ちた跡を発見。この血痕の先に犯人がいるという事だ。
「派手にやったな」
よく周囲を見ると広く血痕が飛び散っている。
「だいたい私のだけど」
「呪いとか周囲に出てないよね?」
「出てないわよ」
呪いとか怖い話が出てきたが今は置いておく事にした梨晏。
「でも、おかげで犯人は見つけられそうだよね」
梨晏の言う通り。あとは追いかけてしょっ引くだけである。
「あんの野郎。よくも私の首をねじ切ってくれたわね。今度は私が加害者になってやる」
虞美人は双剣を握る。
「後輩、魔力を回しなさい」
「はいっす。そして魔術礼装起動『瞬間強化』」
「よっし。良いサポートよ後輩」
シュタンッと虞美人は夜空へと跳んだ。
「わっ、凄い跳躍力」
「荊軻はぐっちゃんパイセンを追いかけて。俺らも血痕を目印に追いかけるから」
「了解した」
荊軻も跳んで屋根の上を走っていく。
「私たちも急ぎましょ」
「そうだね粋怜」
藤丸立香たちも走る。
(んん?)
たまたまだった。
藤丸立香は虞美人を追いかけようとした時にある場所に血痕があるのを発見した。
普通なら虞美人が犯人に襲われた時に飛び散った血だと思うはずだが、一瞬だけ疑問に思ったのはその血痕が離れた箇所に付着していたという事。
(あんな所まで血が飛散したのか?)
襲撃現場より離れた箇所に血痕。血が飛散したものだと言われればおしまいだが、別の誰かのと推理してしまえば話が変わってくる。
「急ぐよ立香」
「わ、分かった!!」
しかし今は犯人を追いかけるのが先決だ。疑問に思った事を頭の片隅に追いやってしまった。
563
夜空の月を背に虞美人は舞うように街を駆け巡る。
彼女は道に垂れ落ちた血痕を目印に犯人を追っている。実は犯人の正体に心当たりがある。
この世界でなく元の世界では会った事があるが歴史にも文献にも乗らない出来事。この世界でも同じ存在であるが別人。
「見つけた。油断していたとはいえ、私の首をねじ切った罪は重いわよ」
血を垂らしながら逃げる様に走っている犯人を発見。
狙いを定め、一気に跳躍。双剣を振るう。
「がああああ!?」
ボトリと落ちる犯人の腕。
「ぐうう…同族がぁ」
「一緒にしないで欲しいわね」
ギロリと犯人を睨む。
見た目は好青年。はっきり言えば美男子。声を掛けられたら若い女性がほいほいついて行ってしまいそうだ。
だからこそ狙ってその姿なのかもしれない。やはり人間は美麗なるものに惹かれるものだ。
「何故、私を狙う。何故、食事を邪魔する」
「それ本気で言ってる?」
事件を捜索していたのは虞美人たちであったが先に手を出したのは犯人だ。先に犯人が虞美人を襲ったのだ。
「あんたの食事なんてどうでもいいのよ。あんたの一番の罪は私の首をねじ切った事よ」
虞美人が犯人を追い詰めるのは私怨に過ぎない。最初は手伝い程度だったが首をねじ切られた事によって仕返しをしたいだけ。
「おのれ」
犯人が恨めしそうに虞美人を睨む。
「何よ。先に仕掛けてきたのはあんたでしょ」
「ぬ…」
「それにあんたの正体は分かってんのよ」
「なに?」
別世界の存在だが同じ妖魔。
「私が知っている奴とは違うけど…あんた吸血巨人とか言われてるでしょ」
読んでくれてありがとうございました。
次回は…すいません未定です。なんだか最近はリアルの方が忙しくなってきたので…。
561
敵サイド。
敵もまさかの事態に焦っております。
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ぐっちゃんパイセンの首が夜空に舞う。
(いかん。最近は先輩の扱いが雑になっている気がする)
普通に梨晏と粋怜は驚くよね。
生首と目が合えば怖いものですので梨晏がつい投げ飛ばしたのに理解してください。
サマーキャンプでもそうでしたがぐっちゃんパイセンは致命傷を致命傷と思ってなくて気が付けば普通に戻っている。本当に常識外れです。
最後に藤丸立香は何かに気が付きましたがソレはいずれまた。
563
ついに犯人に追いついたぐっちゃんパイセン。
今回の妖魔は『吸血巨人』です。
また中国妖怪を調べてきたら上記の妖魔が出てきたので書かせて頂きました。
情報が少なかったのでオリジナル要素も含めて書いていってます。
ぐっちゃんパイセンが知っているというのはオリジナル設定です。
何千年も生きていれば様々な怪異と出会っていてもおかしくないという予想から作った設定ですね。