Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
またも遅くなりましたが更新です。
いやあ、2部6章の妖精円卓領域 アヴァロン・ル・フェ。
前編面白かったです。もう後編がメチャクチャ楽しみです。あと約1か月の我慢ですね。
妖精騎士のガウェイン、トリスタン。そしてモルガン。本編ではまだ多く語られていませんが現段階でも良いキャラしてます。
オベロンなんか良いですね。はやく実装されて欲しいです。
さて、長くなりましたが本編をどうぞ。
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虞美人と荊軻は血痕を目印に追いかけると古い小屋に到着。
吸血巨人が小屋の中に入ったと完全に分かる。相手も追い詰められているとはいえ、バレバレの潜伏場所を簡単に教えている。
このまま街から逃げていくかと思えば違う。もしくは無差別に人間を襲って血を吸い尽くすかと思われた。しかしどちらもせずに小屋に隠れこんだ。
「何かあるのか?」
「んな事どうでもいいわよ。さっさとアイツをねじり殺す。それだけよ」
普通に小屋の扉を開こうとした時に虞美人が吹き飛んだ。
「何故」
普通に荊軻は疑問に思ったが理由はすぐに分かる事になる。
虞美人が吹き飛んだだけでなく小屋すらも吹き飛んでいる。原因は小屋の中から出てきた大きな肉の塊。
「なんだアレ?」
「吸血巨人ね」
「お、平気だったか。また死んだのではないかと思ったぞ」
「あのね。私はそんな耐久力低く無いから」
「すまんすまん。ついサマーキャンプの事を聞いてたらな」
「だからあの時はそういう特異点だったからよ。それよりもあの醜い肉の塊は吸血巨人。どーせ血を過剰に摂取したんでしょうね」
冷静に大きな肉の塊を分析。
その正体は吸血巨人である。虞美人曰く、血を過剰に摂取すると吸血巨人は肉体が変形してしまうらしい。
どんな生物も過剰に何かを摂取すると良くないというのは共通。薬も服用し過ぎれば毒となる。尤も吸血巨人が摂取したのは血であるが。
「小屋の中に非常食でも隠してたのかしらね?」
「簡単に言ってくれる。もしそうだったら助けられなかったという事でマスターが悲しむかもな」
「あいつは全てを救えるような人間じゃない。救えなかったら救えなかったと飲み込むしかないのよ」
吸血巨人が何を摂取して大きくなったかは置いておく。今は大きくなり過ぎた吸血巨人をどうにかするべきだ。
「荊軻、ぐっちゃんパイセン!!」
「マスターか」
ダッシュで現場に到着した藤丸立香たち。
「うえ、何あれ!?」
「……黄巾党残党と戦った時を思い出すわね」
粋怜が思い出すは黄巾党残党が怪しげな妖術で召喚した怪物。
「マズイわね。この付近は住居区じゃないからいいけど…あの怪物が住居区に移動したら被害は甚大よ」
大きな肉の塊もとい吸血巨人は動かないまま。しかし動き出せば街が破壊されるのは理解出来る。
「てか、何があったらあんな事になるの?」
素朴な疑問を口にする梨晏。
「疑問はごもっともだけど。それよりも先なのはアイツをどうするかでしょ?」
「そ、そうだよね虞美人さん」
目の前には大きな怪物。暴れれば呉は壊滅だ。
「んーー…どうするか。私が宝具発動して消し飛ばしても構わないんだけど」
「ぐっちゃんパイセン。それだとここら一帯が呪い地帯になる」
「ここらは住居区じゃないんでしょ?」
「だからって宝具を使っていいわけじゃないよ」
「じゃあ、どーすんのよ」
「ぐっちゃんパイセンの宝具は最終手段として置いておきます」
藤丸立香は膨れ上がった吸血巨人をジィっと見る。
「膨れ上がっているけどアイツにも心臓部があるはずだと思う」
「まー…そうね。あいつは不老不死じゃないけど再生能力は高い。でも核を潰せば死ぬでしょうね」
吸血種という存在は不老不死というイメージがあるが実際は全て不死というわけではない。高い再生能力を持っているというのがほとんどだ。
そうでなければ吸血鬼にニンニクが効くやら、銀の弾丸が効くやら、心臓に杭を打ち込むとやらの対処法が出てこなかったはずだ。
「人間と同じで心臓を貫けば良いって事?」
「人間と同じってのは違うけど、まあそんなもんよ」
梨晏の疑問に簡単に答える虞美人。
「でも心臓の位置ってどこだろ?」
全員が見るは触れ上がった吸血巨人。
膨れ上がりすぎて心臓部が何処か全く分からない。そもそも分厚く肉が膨れ上がっているせいで刃が届くすら怪しい状態だ。
「なんか方法はある後輩?」
「ある」
「お、やるじゃない後輩。その案とやらを聞こうじゃないか」
「皆の力が必要です」
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醜く膨れ上がった吸血巨人は何とか理性を有していた。
(うが…ううぐ…私はどうなっているんだ。傷を…癒すために方士に用意された血を飲んで…どうなった?)
身体に痛みは無い。傷が消えた証拠だが代わりに意識が霞んできている。
傷が治ったのに意識が霞むとはわけが分からない。普通は激痛で意識が飛ぶと言うのならば納得できるが今は矛盾の組み合わせだ。
(私の肉体は…どうなっているんだ?)
吸血巨人の視界は呉の街しか映っていない。
(人間の街……)
ギョロギョロと目を動かすと肉が見えた。牛や豚といった肉ではない。
自分自身の膨れ上がった肉である。
「なんだごればああああああああああああ!?」
己の肉体が醜く膨れ上がっているのに気付いた時、絶叫が響くのであった。
「なんだ。あいつ理性が少しは残ってんのね」
真下にて虞美人は双剣を持って呆れていた。
「なんだこれはって言ってるけど自業自得でしょうが」
「少しでも理性が残っていると言うが…全然だな。そのままイカれて街を壊すかもな」
絶叫を聞いて吸血巨人がどのような精神状態がすぐに分かるというもの。
「では、マスターの作戦を実行するために役割を果たそうか」
「面倒だけどしょうがないか……私、解剖ってやった事ないんだけど」
「ただ斬るだけだ。いつもやっていることだろう。私の匕首なんかよりも君が持つ双剣の方がよく斬れそうだ」
「あんたももっと長い刃を使えば?」
「私はこれくらいが丁度良いんだ」
2人は膨れ上がった肉を駆け上がる。
「魔力が集中している部分があるわ。そこが心臓部でしょうね」
双剣をグッサリと深く深く突き刺して力の限り切り裂く。ビシャアっと血が噴き出すが気にしない。
身体中が真っ赤になっても切り裂いていく。荊軻の白地の服なんて真っ赤である。
もはや解体作業であるが、相手もただ斬られているわけではない。吸血巨人の理性は無くなってきているが本能が己を守ろうと動く。
「肉が再生してきたな」
「当然の反応か」
「このままだと逆に再生した肉に押しつぶされそうだな」
「なら肉が再生するよりも早く斬ってやるわよ」
双剣に魔力を回すと燃え上がる。
「うざったいのよ!!」
背景に斬っという文字が出現しそうな勢いで吸血巨人の肉を切り裂く。
ついに見えた吸血巨人の心臓。大きくなっていたが弱点は弱点であり、狙えば終わり。
「見えた!!」
「や、やべろおおおおおおおおお!!」
「五月蠅っ。なんだこいつ、まだ理性があったのね」
ぶくぶくと肉が膨れ上がって心臓部を隠そうとする吸血巨人。醜く膨れ上がって理性も無くなりそうになりながらも死にたくないという本能だけで自己防衛に走る。
「後輩。心臓は見つけたわよ。そっちの準備は出来てるの?」
チラリと地上を見ると藤丸立香は概念礼装を展開していた。
「出来てるよぐっちゃんパイセン」
「よっし、ならタイミング合わせなさいよ。私と荊軻がまた心臓部まで切り開くから!!」
「了解!!」
藤丸立香も準備は完了済み。更に梨晏と粋怜も準備完了済みだ。
「本当にうまくいくの?」
「大丈夫よ。立香は何だかんだでこういう事件を解決してきたし」
2人は己の得物を構えて、吸血巨人の心臓を見すえる。
「梨晏、粋怜。今から概念礼装を使う」
「がいねんれいそう?」
「妖術みたいなものだと思ってくれていい。それで吸血巨人の心臓を貫く力を付与する。だからトドメは頼んだ!!」
「「りょーかい!!」」
このまま吸血巨人を肥大化させるわけにはいかない。
「概念礼装展開。『正射必中』、『フラガラック』、『破壊』」
3つの概念礼装が藤丸立香の周囲に展開。
「正射必中。綴りは美しく、在り方は綾の織物のように。正しい射をすれば、必ず中る」
梨晏と粋怜の得物に必中効果を付与。必ず当てる。絶対に外さない。
「フラガラック。その真価は後攻の絶対先制権ともいうべき、事象の矛盾を成立させる因果逆転の能力。発動すると相対した者の攻撃に対し必ず先に命中する結果を現出させる」
更にフラガラックによる能力付与。
吸血巨人は肥大化しながら街を潰そうとしている。その行為を相手の先攻と判断。
本来の使い方と違い、無理やり当てはめているが概念を付与できるという裏技に近い。
「破壊。崩壊せよ。新生の時は来たれり」
最後に貫通力、破壊力を付与。
「なんか不思議な感じ。妖術をかけられるって」
「でも力が沸き上がるのは感じるわね」
迎撃準備は完了。
「先輩、荊軻!!」
「ったく、こういう時だけはちゃんと先輩って呼ぶわね」
「任せろ」
虞美人と荊軻が交差するように切り裂くと心臓部が露出。
「今よ!!」
「てりゃああああああああああああああ!!」
「はああああああああああああああああ!!」
虞美人の合図に梨晏と粋怜は力の限り得物を投げた。
2人が投げた獲物はまるでロケットの如く吸血巨人の心臓部へと飛来する。
目で追うよりも早く吸血巨人の心臓部に2本の得物は到達し、貫通した。
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吸血巨人の心臓部が破壊された。
もはや肉体は保てずにボロボロと崩壊していくだけ。
(なんでこんな事になった。ただ私は孤島に住んでいただけだった。孤島に迷い込んできた人間の血を吸うだけで良かったのに。全ての悪夢の始まりはやはりあの男に、方士に捕まってから。妖魔と混ざった人間に利用されたから。何でこんな末路になってしまったのか)
孤島に密かに住んでいた吸血巨人の最後は勝手に利用されただけの末路であった。
「や、やったの?」
「ええ。もう終わりよ」
梨晏の疑問に答える虞美人。
吸血巨人はもう退治された。ただそれだけだ。
「こいつの死体は朝には完全に消えるでしょうよ」
「これだけの事があったんだ。明日には民たちから城に報告が上がるんじゃないかな」
「それなのよねー」
「あはは…」
事件は解決された。残るは後処理だけである。
月明りのある真夜中にて起きた怪事件であるが誰にも気付かれないように解決出来たとは想像しにくい。
今夜の異変に気付いた者は必ず目撃しているはずだ。藤丸立香の言う通り、明け方から城へとワイワイと報告が上がるかもしれない。ガヤガヤと噂になって呉の国全体へと広まるかもしれない。
「報告したら寝たいよ」
梨晏の言葉に全員が頷くが予想通り明け方から今回の事件を目撃した者たちからの報告がひっきりなしであった。
「「「やっぱりね」」」
「何がやっぱりなのよ」
雪蓮の前には眠そうな藤丸立香、梨晏、粋怜。
「眠そうね3人とも」
「そりゃあ明け方まで頑張ったからね~」
もう半分寝てる梨晏だが返事はちゃんとする。
「なんか報告だとでっかいものが目撃されたとか」
「吸血巨人っていう妖魔よ」
「あ、それ聞いたことある。血を吸われちゃうって妖魔よね」
「あ、雪蓮も知ってるんだ。アタシは知らなかったよ」
吸血巨人の情報は地域によってあったりなかったり。
「よく子供の時に聞かされた気がするなー。悪い事すると吸血巨人が血を吸いに来るぞって」
「悪い事したら吸血巨人よりも先に炎蓮さんがオシオキしに来そうだけど」
「…立香の言う通りだわ。私が悪い事したら嬉々としてオシオキしてきた気がする」
吸血巨人よりも炎蓮の方が恐ろしいと言うのが雪蓮の談。
「いや、炎蓮様も嬉々として罰を与えてたわけじゃないと思うけど」
「いんや粋怜。母様は嬉しそうに拳骨をかましていた気がするわ」
「愛の鞭ですよ」
「あれが愛の鞭なはずない」
今の話と関係無いが蜀の何処かで大きなくしゃみが聞こえたそうな。
「話が逸れたけど…事件は解決したのよね?」
「事件は解決したした」
「なら大丈夫ね。あとは民たちにはどう話を通すか…」
「そのまま吸血巨人の仕業で良いんじゃないかな。悪い子がいたから現れた。そして街で暴れようとしたから退治したって」
「そんな適当な……いや、案外ソレでいいかも。解決したんだから後はそのうち民たちの関心も消えるでしょ」
これにて吸血巨人の事件は解決された。
「ところでぐっちゃんと荊軻は?」
「荊軻は仕事終わりの一杯してる」
「あら、私も後で一緒に一杯しようかしら」
「ぐっちゃんパイセンは部屋でぐうたらするって」
「そう言えば蘭陵王がぐっちゃんの部屋に点心やら茶やら持って行ってた気がするわね。ぐうたらかぁ。私もぐうたらしたーい」
「雷火さんに怒られそうだね」
報告も終わって後はぐっすりと休むだけ。
吸血巨人は倒された。しかし事件が完全に解決したというわけではない。
それは何故、吸血巨人が出現したのか。そして藤丸立香が気になった事が1つがある。その1つとは虞美人が吸血巨人が遭遇して戦闘になった現場にて不自然な箇所にあった血痕。
事件は解決したが全てではない。肝心な真相が分かっていない。
実行犯を倒しても計画者を捕まえていないようなものである。
読んでくれてありがとうございました。
次回もまた未定です。すいません。
次回はまた日常編に戻ります。大体、3話くらいやってまた本編に戻るかもです。
568~569
吸血巨人との決着。
血を急激に摂取すると醜く身体が変形するという情報を膨れ上がると解釈しました。
今回も概念礼装を合わせて攻略した形になります。
『正射必中』、『フラガラック』、『破壊』の3つ。
もしかしたら『フラガラック』はいらなかったかも。それに能力の解釈もちょっと違ったかな(汗)
自分で書いておいてなんだけど虞美人たちの活躍が少なかったかなーと少し思ってしまいましたね。
ならばと思い、これからももっと活躍させようと思いました。(感想か)
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これにて吸血巨人の事件は終了。
実はまだ解決していない部分はありますが、それはそのうち分かります。