Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
早くも物語が書けたので投稿します!!
今回は前話で予定していたように何太后や卑弥呼達の話にしました。
それとメインの物語に続く話もチョイチョイと。
72
藤丸立香はぼーっとしていた。
今日は特に何かする事もないのでぼーっとする事しかないのだ。
于吉の手がかりが無いので動く事もできない。これは卑弥呼の帰り待ちだ。そして于吉と繋がっているであろう張譲相手にも藤丸立香は何もできない。
董卓の客将とはいえ、十常侍に近づく権限は無い。これは董卓から情報を貰う事しかできないのだ。
あと貂蝉が潜入捜査しているらしい。
(あの姿でよく潜入とか出来るよね)
貂蝉はアサシンのように気配遮断スキルを持っているのだろうか?┈謎である。
勿論、燕青達アサシンクラスにも調べてもらっている。今やれることは全てやっている。
だから今は待つしかない。
「暇だから日向ぼっこしかできない」
微睡みに意識がどんどんと持っていかれる。久しぶりのレムレムモードだ。
レムレムモードになってどこかに飛ばされるのは勘弁である。
時代や世界は違えど太陽の温かさは同じのようだ。
「…………………………………………………………………」
眠ってどれくらい経っただろうか1時間か2時間か、眠って目が覚めてもまだ日は高いまま。
まだ眠気が残っているので至福の二度寝に入る。
そんな時に声を掛けられる。その声は知らない声であった。
「ねえ、ちょっと」
「んえ?」
目が覚めると目の前に全然知らない美人がいた。
「誰?」
「寝起きとはいえ、誰だなんて不敬な言葉ね。でも妾は寛大だから許してあげる!」
いきなり注意された。こちらが悪いのだろうか、と疑問に思うがまだ眠気によって意識がいまいち覚醒していないのだ。
目を擦りながら目の前に居る美人を見る。緑髪の長髪でどこが艶やかさと高貴さを隠すことなく感じさせる。
本当に誰だか分からない。分かるのは官軍、というよりも宮中の誰かだろう。おそらく偉い人かもしれない。
そうなると確かに今の藤丸立香は不敬になるかもしれない。でもまだ寝たままである。
「あー…えっと。姿勢を正します」
もそもそと正座をする。
「誰ですか?」
「貴方…私が分からないの?」
「分かりません」
本当に分からない。董卓のおかげで宮中に入れて居るがそれは董卓達に足を踏み入れて良いと、許可がある所だけだ。
そもそも今、藤丸立香が宮中に居る事自体がよくよく考えれば凄いというか異様というか変な状況であるが。
(あ、でも第二特異点ではネロの宮中や第七特異点ではギルガメッシュ王の宮中によく足を運んでたなぁ)
案外、お偉い人達の場所に身を置いていた気がしなくもない。
「自分は藤丸立香です」
「うんうん。まずは貴方から名乗ったわね。それで良いわ。私は何太后よ」
何太后。この名前は董卓から聞いた覚えが有る。それは霊帝の妃であり、何進大将軍の妹だった筈だ。
「ああ、霊帝様の妃様…」
「そうよ…って、それでも驚かないのね」
何太后としては焦ったり、恐怖したり、諂うかするかと思ったが目の前に藤丸立香は変わらずの態度のままだ。
不敬を通り越して新鮮な態度に気分は悪くない。
「貴方って確か董卓の所の客将をしているんですってね?」
「そうです。で、何太后様がどうしてこんな所に?」
そんなお偉い人が何でこんな所に居るのか分からない。そういう人は宮中でも奥の奥に居る筈なのに。
まさか第七特異点のギルガメッシュ王のように彼女も外に出て調べものをしたりするのだろうか。
そうなるとこの世界の何太后はなかなかアクティブだ。
「何か用ですか」
「貴方、私に対して思うことは無いの?」
「美人ですね」
「当たり前よ」
いきなり何か用とか思う事とか無いのかと、言われてもよく分からない。だから第一印象を直ぐに答えた。
当たり前と返されたが。だがその返しは英霊で慣れている。
契約した英霊の中には自分が美しいと自信をもって言う英霊は幾らでも居る。実際に美しいから正論なのだ。
「貴方は董卓の所で何をしているの?」
「客将」
「それは知ってるわよ。具体的には?」
「えーと…」
取り合えず彼女に逆らうのはやめておくべきである。特異点やカルデアでは彼女のように偉すぎる人物には幾らでも会ってきて感覚が少し麻痺しているかもしれないが普通だったらこの状況は異常である。最悪、不敬罪で首を刎ねられてもおかしくはないだろう。
そして董卓達に迷惑がかかったら困る。
彼女に言われた質問を答えていく藤丸立香。
(うーん、使えそうな情報を持っていなさそうね)
何太后としては何か使えそうな情報が欲しかった。それは今の宮中で上手く生き残る為にだ。
最近は何進と十常侍の対立がより大きくなっている。特に張譲達と十常侍の動きは怪しい。いずれ何か仕出かす可能性は高い。
その為に彼女にとって有利と成る情報を調べているのだ。彼女は目的のためには自ら動いた。危機を退ければこれ迄道理に贅沢な暮らしに娯楽を楽しめる。
「ーーそんなもんかな」
目の前にいる彼だが、董卓の所で客将をして居るのだが。密偵から聞いた話だと客将扱いだが董卓軍としては重宝しているとの事。
武力や知力に抜き出ている者がぞろぞろ揃っているのが吸収された状況だ。それを董卓に渡すのはもったいない。できれば欲しいものだと考えているのだ。
その破格な人材は何でも目の前に居る彼が中心でいるそうな。彼が破格な人材達の主人。
(見た目はなかなか良いけど…平凡そうね)
平凡そうな彼なら色香で籠絡できるかと思えば、今のところ彼は何太后に対して欲情した目を向けていない。
何太后を見る男の目は色欲に染まった者が多い。世の中の男はそんなモノだらけだけで、一声かければ籠絡できるものだと判断しているのだ。
だが藤丸立香はそんな気はなさそうである。時折こちらで色香を出しているが全く効いて無さそうである。女性に興味が無い、という分けでは無さそうでは有るが。
ただ自分の色香が効いていないのは癪に障ると思ってしまう。今まで自分の地位と美しさならどんな男も手玉に取れたが今回の事は初めてなのだ。
(何でかしらね?)
藤丸立香も女性の色香が効かないという分けでは無い。むろん効く。こういう言い方も妙かもしれないがカルデアでは藤丸立香は多くの女性英霊に誘惑されているから耐性が多少付いただけだ。
でもエウリュアレやステンノのチャームは今でも勝てない。よくチャーム掛けられて遊ばれる。
(特に董卓とかの弱みなども知っていなさそうね)
情報を知らないのなら、やはり籠絡して彼等の力を取り込みたい。
(芋男ならこんな事しないけど彼なら合格点だし)
何太后は藤丸立香の腕を掴んで自分の胸に引き寄せる。柔らかい感触が広がっていく。そして甘い言葉を紡いでいく。
こうすればどんな男だろうが落ちると確信して彼の顔を見る。
(えっ…!?)
藤丸立香の顔は少しは驚いて照れている感じではある。だがそれだけで、男を手玉に取ったという達成感は感じられない。
デレデレして完全に落ちると思っていた予想が外れたのだ。
(何で!?)
(ハロウィンの時のおっきーを思い出した)
しかも藤丸立香は何太后ではなくて刑部姫を思い浮かべている始末である。
「ねえ何太后様」
「えっ、何?」
自分の色香が効か無い事が予想外だった中、いきなり声を掛けられて少し動揺してしまう。
「后様って暇なんですか?」
「暇って…」
予想外の質問に肩がガクっとする。
暇では無い。でも霊帝のご機嫌取りやら何やらが毎日で同じことばかりではあるかもしれない。
最初は霊帝の妃として見初められた時は良かった。何もかも全て上手くいくものかと思っていた。でも今はそんなこと彼女は思ってない。
「ある意味暇かもね。面白い話でもしてくれるかしら?」
「いいですよ。そうだな…じゃあチェイテピラミッド姫路城の話を」
「何よそれ…?」
彼女の先ほどの行動で刑部姫を思い出したからハロウィンのあり得ない物語を紡ぎだす。もちろん話せる範囲で、脚色はするが。
脚色しても常識的に考えて信じられなく、そんなものが存在するなんて考えられ無い。それは聞いていて信じられない物だが耳を傾けるのに十分な話だった。
気が付けば何太后は彼の旅路の物語に夢中になっていた。話している内容がハロウィンで信じられないが物語としては面白い。
面白くて不思議で今日一日は彼の話を聞きこんでしまったのであった。
「ーーっていう事があったわ」
「坊主の話を聞いて来ただけだったのか端姫?」
何進としては何太后が董卓の所の客将の坊主を籠絡してきたという報告が聞けると思っていたが予想の斜めの報告であった。
「まさか端姫の色香が効かぬとは…正直信じられぬぞ」
「まったく効いていなかったわけじゃないんだけどねえ」
効いていない分けでは無い。だが藤丸立香の意識が何太后に魅了されなかっただけだ。
「うぬぬ…聞く話によると一騎当千の武人が居るというから我らの手駒にしたかったのだが」
「それと軍師と文官両方をこなすキレ者も居るそうよ」
「董卓め。どこでそんな人材を…私も自ら動くか?」
「姉さまのいやらしいお身体で誘惑すれば大丈夫ね。だって姉さま淫乱で度し難いもの。流石は姉さま」
「ああ……って、今のは褒めたのか端姫?」
よく分らないうちに藤丸立香はどんどんと何進と何太后に目を付けられる。
73
藤丸立香の先生である諸葛孔明はまたも賈駆から文官の仕事を回されていた。こんな仕事は彼がやる物では無いのだが、彼の才能をうまく利用しない手はないと賈駆は面倒くさい、もとい彼にこなせる仕事をふっているのだ。
これには賈駆の仕事が減っているので助かっている。これで彼女自身も色々と手が回せるというものだ。
「一応私は客将という扱いだが、こういうのを任せるのは拙いのではないのか? 賈駆よ」
「仕事が出来る奴が居るのならアタシは幾らでも利用するわ」
「……機密だったりしないのか」
「そういうのは回さないから安心して」
「今すぐ開放しろ」
「嫌よ。貴方ほどの人材を何もさせないのは勿体ないわ」
「それなら武則天も使え!」
「あー…彼女はちょっと苦手なのよ」
確かに武則天は基本的にマスター以外の者の言う事は聞かない。
聞く人が居てもそれは武則天自身が認めた人だけだ。
「たまに手伝ってくれるけど…彼女自身が好き勝手にするから困るのよね」
「まあ、しかたあるまい。彼女はちょっとな」
武則天は英霊とはいえ、皇帝だ。彼女に命令する事なんてできない。それを彼女は許さない。
だからこそ武則天は好き勝手にしているのだ。今頃は洛陽の町を歩いているかマスターと一緒に居るかだろう。
「ところで張譲のことが聞きたいんだっけ?」
「ああ。何でも道士と繋がってるだとか…貂蝉たちの情報だとな」
「うっ…」
圧倒的筋肉である貂蝉を思い出して顔を青くする。流石にもう気絶しなくなった。彼女も成長したようだ。
「そういえばその貂蝉とやらは?」
「知らん」
「月と一緒に居るだなんて言ったら許さないわよ」
「それを私に言うな」
話が一瞬それたが話を戻す。
張譲が謎の道士と繋がっているという事。
「道士かどうか分からないけど誰かと会っている形跡は有るわ。でも最近は無いみたいだけどね」
「そうか」
太平要術の書はその道士に奪われた。しかもその太平要術の書は元々、その道士の物で在ったのなら黄巾党と繋がっていた可能性が有るという事だ。
ならば張譲も黄巾党と繋がっている可能性が浮上してきた。
これは賈駆も面白い情報だと思った。張譲が黄巾党と繋がっていたらそれをネタとして追いやる事ができる。
だから賈駆も確実な情報を得ようと張譲について調べている。だがこの宮中で様々な人物の調べ上げなんて誰もがやっている。
「やはりこういう所は魔窟だな」
「否定はしないわ。実際にそうだし」
どの時代もこういう所は魔窟やら蟲毒の壺の中だとかと例えられている要だ。
こういう場所には然るべき専門の人が居るべきだろう。ちょっと頭が良いくらいの者では利用されて捨てられるのがオチだが。
だからこそ優しい董卓が此所に居ることが合わない。
(彼女だからこそか?)
董卓は優しい。史実とは真逆のような性格だ。
恐らくこの洛陽で唯一の癒しであり、救いなのかもしれない。
(そういえばまともなのが将軍に2人いたか…確か盧植と皇甫嵩だったか)
「失礼しますね」
「貴女は…趙忠じゃない。何よ?」
「ちょっと前に話した事で相談よ」
「ああ、アレね」
何かの秘密の相談と察知して諸葛孔明は部屋から出ようとするが賈駆に止められる。
「貴方も加わってくれない?」
面倒に巻き込まれてため息を吐いてしまう。
「何だ?」
妙な事に巻き込まれたものだ。
74
「こおおおおおおおおお!!」
「奮破!!」
貂蝉と李書文が拳で語り合っていた。語り合っていたというのは少し違う。恐らく稽古をしているだけだ。
稽古とはいえ、あの李書文と渡り合っている貂蝉はやっぱり只者ではない。
「ふんぬうううううううう!!」
「喰らえ!!」
拳と拳の打ち合いが続く。
「いやぁ、凄いねえ」
「まったく」
「せやな」
彼等の稽古を見るのは燕青に華雄、張遼。戦いが好きな武人達は暇な時よく稽古をしている。
そこに貂蝉が加わってより暑苦しくなっているのだ。
そもそも英霊と渡り合っている貂蝉とは一体。そうなると卑弥呼もまた同じくらいの強さなのだろうか。
彼らの筋肉は見せかけではないということだ。おそらく筋力はAやEXは有るかもしれない。
「お主の拳は重いな」
「当たり前でしょ。なんせ私の拳には愛が籠ってるんだからん」
「メチャクチャ強いけどキモイんやよな」
「ああん?」
「あ、すまん。だからその顔やめてーな」
流石の張遼も貂蝉の睨みには勝てないようだ。
「まったくこんな可愛い漢女のどこがキモイて言うのよ。酷いわぁん」
「可愛い?」
「まぁ、人様をいきなりキモイは確かに酷いかもな」
「そうよねぇ! 燕青ちゃんわかってるぅ」
「でも見た目は大事だぜ。常識的に考えて」
人様に「キモイ」は中傷の言葉だろう。でも言われてしまう原因があれば庇うことはできない。
貂蝉の見た目は女性下着を履いただけのゴリゴリの筋肉漢。常識的に考えて変質者と言われても擁護はできない。
「この姿のどこがキモイのよん。何も隠していない清廉潔白な肉体じゃなぁい?」
「何も隠していないっていうか、何も着てないからな」
「あっ、でもぉ! 大事な所は隠してるけどねん」
「そこは絶対に隠しとけ」
貂蝉の衣服防御はカルデアにいる誰よりも頼りない。
「ま、それは置いておいて。今回ばかりは于吉ちゃんにキツイお灸を据えないとね。だから私も鈍った感を取り戻さないと」
「その于吉とやらは強いのか?」
「いいえ、どちらかと言えば策を講じるタイプの子よ」
「なるほど。ならば我らが軍師の出番だな」
がんばれ重労働軍師。
「お疲れー」
「おっ、主」
「あらぁ、立香ちゃん!!」
「立香はんやん。どうしたん?」
稽古をしていた所に藤丸立香がやって来る。一緒に稽古をするわけではないが暇だったので見学しにきたのだ。
勿論、稽古しているのだから差し入れも忘れずに。
「はい差し入れ」
「気が利くやん立香!!」
「何か城下町で人気の饅頭だって」
「いただこう」
「いっただくわん」
「儂は茶で」
稽古は一旦中断。休憩である。
「貂蝉と手合わせしてたんだね」
「うむ。貂蝉という名前のくせして実力は一流だ」
「いやん、立香ちゃんったら惚れ直した?」
「……」
貂蝉がこういう人物というのは理解しているがそれでも圧倒される時がある。
圧倒されると言うか、背筋がゾワゾワするというか、貞操に危険を感じると言うか。
(それにしても李師匠と互角に戦えるって…やっぱり何者なんだろう貂蝉って)
英霊で無く、人間の身で在りながらその殻を破った者達を見た事は幾人か有る。それでも目の前に居る貂蝉は別な感じがするのだ。
前にも思ったが貂蝉や卑弥呼は人間ではないのかもしれない。変な意味ではなく、『外史の管理者』という存在に対してだ。
『外史の管理者』とは次元を超えた存在だ。意外にも英霊より高度な存在だってあり得る。話を聞いていれば外史という無限ともいえる世界を渡っているという。
それは此方側の主観で魔術ではなく魔法の域ではないだろうか?そう冷静に考えるとやはり貂蝉や卑弥呼は次元の違う存在である。
(なら同じ存在である于吉も…?)
目下の敵である于吉も油断できない存在に成る。ただでさえ、諸葛孔明や荊軻達に気付かれずに現れて太平要術の書を奪ったのだから。
貂蝉の情報からだと于吉は戦闘タイプではなく、策を講じて攻めてくるタイプだ。そうなると多くの策で攻めてくるだろう。
その策がどのようなものかは分からない。だが今もその策が足元に近づいてくるかもしれないから油断はできない。
(于吉はこの洛陽で張譲と繋がっている事は分かっている。ならこの洛陽で何か策を用意しているに違いない)
「あらん? 立香ちゃんの視線が熱いわよ」
「……熱い視線じゃなくて冷たい視線の間違いちゃうんか?」
考え事をしていたのだが貂蝉から勘違いされてしまった様だ。
「んー…貂蝉ってどんな人か詳しく知りたいなって思っただけ」
「あらヤダ立香ちゃんたらっ!?」
急にクネクネする筋肉漢女の貂蝉。その頬は何故か乙女のように赤らんでいた。
「アタシの身体の隅々まで知りたいだぁなんて!…あっ、ダメ、ソコはダメ。アタシにはご主人様がいるのにー!!」
「……そんな事は言ってないから」
「こいつは何を言っているんだ?」
「華雄が知らなくても良いと思うぜぇ…」
白い目で貂蝉を見る藤丸立香たちである。
「てか、本当に誰なのさ貂蝉の言うご主人様って…」
「うふふ…立香ちゃんに似て、可愛くてカッコイイ素敵なご主人様よ」
もの凄く気に成るがそのご主人様とやらに同情もしてしまいそうだ。
「でも、およよ…ご主人様にはライバルが多いし、アタシの気持ちに気付いてくれないの」
急に乙女のように落ち込んだ。いろいろと忙しいようである。だけどそのご主人様も貂蝉の気持ちに気付いていない振りをしているだけだろう。
気付いたら気付いたできっと大変だ。もしかしなくとも気付いているが現実に目を背けているのだろう、そのご主人様とやらは。
「うおおおおおお。でも貂蝉負けない。まだまだ漢女力が足りてないのよきっとぉ!!」
(その漢女力って何ぞ?)
漢女力の漢の部分は十分あると思う。女の部分は恐らく無いと思う。
「分かるか拳法の先生よぉ?」
「儂には全く分からぬ」
貂蝉の考えはきっとここにいる誰もが分からないだろう。
「…まあ、でもきっといつかは貂蝉の気持ちも通じるよ」
「立香ちゃん?」
「今日まで貂蝉たちと一緒にいたけど、貂蝉は悪い人じゃないからね」
貂蝉と卑弥呼の言動には背筋がゾワゾワするが悪い人間ではないのだ。善人と言われても分かるほど良い人なのだ。
人を気遣う気持ちもあるし、外史の秩序を守るために戦う熱い気持ちもある。
彼は間違いなく良い人間で信頼できる。
「貂蝉のその気持ちが実るかどうか置いといて、信頼は築けるよ。俺は仲間としてもう信頼してるしね」
新宿やアガルタで怪しい仲間はいたが、今回ばかりは信頼できる。それほど貂蝉と卑弥呼は善人だと思えるのだ。
藤丸立香が「信頼している」という言葉と笑顔を貂蝉に向ける。
「立香ちゃん…!!」
「この洛陽に来るまで一緒に戦った仲だし、守ってくれた事もあった。それは助かったし、嬉しかったよ」
「それわぁん…」
「まだ出会ったばかりなのに俺らを心配して気遣ってくれたのも嬉しかった」
「んんん!!」
「貂蝉は俺のことどう思ってるか知らないけど…俺は貂蝉や卑弥呼の事はもう信頼できる仲間と思ってるよ」
「もうダメぇん!!」
バタァンといきなり倒れて頬を赤くしながら悶絶している貂蝉。
「ダメん…ご主人様を裏切らせないでぇー!!」
「…どーしたのさ?」
何故倒れたのか分からない藤丸立香。
「ああ…これが絆されるってことなのねん!!」
「………」
何故か貂蝉との絆レベルが上がったようである。
本当に分からないけど絆レベルが上がったのが実感出来てしまった。
「あーあー、またウチの主は…」
藤丸立香の人たらしや英霊たらしは『EX』を誇る。
どんな相手だろうが9割がた仲良くなれるし、絆を深めることができる。
そのせいか男女関係なく友情、親愛、愛情と向けられるほどである。
それはこの外史に来てからも変わらず発揮している。
「まあ、スパルタクスやヘシアン・ロボ、あのおっかねえ山の翁の爺さんに煩悩菩薩の殺生院キアラまで絆を深めてるからなぁ主は…そこの筋肉漢女の貂蝉と絆を深めてもおかしくはないか」
「…だな」
燕青と李書文はうんうんと納得している。そして張遼と華雄もまた分からないでもない、という顔をしているのだ。
(まあ、確かに立香は人の心に近づくのが上手いっていうかなんていうか…でも無神経に近づくってわけでもちゃうんよね。なあ華雄?)
(う、うむ。私も彼の誠実な性格は嫌いではない。あの恋すら懐いているしな)
何かあったのか知らないが2人は少し頬を赤くしながら、その何かを思い出している。
(いつの間に何をしたんだ主?…荊軻の姐さん何か知ってっかな?)
藤丸立香の天然人たらしは何処でも猛威を振るっているようである。
しかもこれは意図的では無く、天然でやっているのだから恐ろしい。
75
卑弥呼は于吉の現れる妖馬兵が封印されている場所に来て中を確認したのだが。
「ぬう!?」
しかめっ面の卑弥呼。どうやら遅かったという意味の顔だ。
もう既にこの場に妖馬兵の軍隊は無い。もう于吉によって回収された様だ。
「おのれ于吉め…これはすぐに戻って貂蝉達と会議だな」
今のところ後手に回っている。これでは于吉に好きな様にさせてしまってばかりだ。
「于吉は暗躍しているが左慈の方の目立ちはないな…そもそもこの外史に来て居るか分からん」
彼らは今までも何度も敵対して外史で暗躍してきた。だが今回ばかりは今までとは違うのだ。
于吉はまるで確実に勝てる余裕がある感じであった。きっと他にも何か隠しているのだろう。これは此方も油断ができないというもの。
「しかし貂蝉はワシがいない間に華佗と立香に手を出しておらんよな?」
「聞いていておぞましいですね」
「于吉か!!」
歴戦の戦士の目で現れた于吉を見る。熱すぎる目でもある。
于吉は卑弥呼のその目が嫌いだ。何でもかんでもどうにか為ると思っている様な目が嫌いだ。
「まさかお主の方から現れてくれるとはのう」
「いずれは貴方たちと戦う運命です。なら隠れている必要はないでしょう」
いずれ戦う運命。それが早いか遅いかのだけ。
「私も隠れているのに飽きたので…反撃ですよ」
「来るか!!」
卑弥呼は拳を構える。
「いえいえ、此所では在りませんよ。それに私は自ら戦うという柄では有りませんので。私には私の戦い方があります」
「それは陰湿な策的という意味でか?」
「お好きなように捉えて構いませんよ。しかし、これだけは言っておきます。今回は今までと違いますよ」
「ほお…だが今回もお前たちの策は敗れる!!」
本当に于吉は卑弥呼の自信が嫌いだ。
「そちらにカルデアが協力していると言って油断しないことですね」
「ふん。お前こそ今回は相手を見誤っていまいか?」
普通に考えて戦力差を比べると卑弥呼側と于吉側でどちらが有利かと言われれば卑弥呼側が有利だ。
「そうですね…確かにカルデアは強すぎます。ですが英霊に絶対に勝てないなんてことは無いんですよ」
「何だと?」
英霊に絶対に勝てないということは無い。基本的に考えれば勝てないと誰もが思うが実はそうではない。
「英霊もまた頭や心臓を潰せば倒せます。それは人間や動物と同じです。知りませんでしたか?」
その通りだ。英霊も人間と同じように心臓の破壊や首の切断などが起これば、如何に破格の力を持つ英雄と言えど消滅するのだ。
英霊は無敵の存在ではない。
「更に英霊を束ねるマスター…確か藤丸立香と言いましたね? 彼を殺してもいい。それだけでカルデアは終わりなんですよ」
確かにカルデアは強い。だが今のカルデアは1つでも何かが欠ければ瓦解するほど脆いのだ。その大きな役割を持っている1人は藤丸立香である。
狙う箇所は考えれば考えるほど出てくる。
「私は無敵の相手と戦うわけではない。今言ったように狙う隙は幾らでも有るという事です」
「そんなことさせると思うか?」
「今回は『外史』の于吉としてでなく、『管理者』の于吉として本気で行きます」
『外史』の于吉ではなく、『管理者』としての于吉。その意味に卑弥呼は拳を握る。
「貴様…!?」
「この外史…三国志という物語に縛られません」
「この外史によって与えられた役割を放棄するか!?」
貂蝉や于吉と言った名前は三国志に出てくる登場人物だ。だが此所に居る于吉や卑弥呼はこの外史に登場する正規の人物では無い。
ただこの外史の登場人物に成るために名前を当てはめただけである。本当は彼ら管理者はこの外史の三国志に出てくる登場人物では無いのだから。
「放棄も何も…あなた方だって卑弥呼や貂蝉の名前を付けているだけで本来その人物達の役割をしていないじゃないですか?」
「儂はこれでもやっておるわ。貂蝉のやつがやっておらんだけだ!!」
貂蝉がこの外史で本来の三国志である『貂蝉』の役割を出来るがどうか不明である。
「まあ、お互い名前を勝手に貰ってるだけですから。何はともあれ…次は洛陽でお会いしましょう」
「待て、洛陽だと!?」
「まずは洛陽で初戦です!」
そう言葉を残して于吉は消える。
「ぬう、于吉め。今までと何か違うな」
読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりとお待ちください。次回は…来週投稿できたらします。
出来なかったら再来週ですね。
今回は何太后や卑弥呼たちの話でした!!
何太后の魅了は立香には効きませんでした・・・まあ、クラっとはしますがね。
だって立香もやっぱり男の子ですから。
そのせいなのか、何太后と何進に目をつけられます。
貂蝉の絆レベルが上がった・・・何でだ?
まあ、藤丸立香ならおかしくは無いと思いますが。
敵サイドにもスポットは当てます。
于吉だって負けているつもりはありません。実際に彼らの存在って普通ではないと思います。だって外史という多くの並行世界を渡って管理しているなら高度な存在だと自分は思いますから。