Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
オリンピックが終わって世間が落ち着くかと思えば、この頃は大雨で大変な今日頃ごろ。
まだまだ暑いですし、気を付けないといけませんね。
FGO2部6章の崩壊編クリアしました。今回も面白かったです!!
本当に止め時が分からずに一気に駆け抜けました。
いやあ、崩壊編は難易度も激ムズでした。難所がいくつもありまして、特にケルヌンノスが…アレは難しすぎる。
色々と頑張りましたが結局、石を砕いてコンティニュー。そして…オベローーーン!!
恋姫では公式サイトに新たなディザームービーが公開されてます。
まさか予想出来るはずもない…真・恋姫†英雄譚<4・5・外伝>が制作決定するなんて!!
4が呉の話で、5が魏の話。3つのエピソードで構成されてるみたいです。
そして外伝は『白月の灯火』というタイトルでムービーを見る限り、董卓メイン(漢ルートっぽい)感じですね。
作者的には『白月の灯火』が気になります!!
発売ですが、4が2022年夏。5が2023年春。白月の灯火が2023年の冬。
うーーん…まだまだ先!!
さて、物語本編ですが今回でまた日常編は一旦終わりです。そして、サブタイトルに書いてあるようにカルデアでのちょっとした出来事も書いてみました。
577
冥琳から相談のようなものをされてから数日後にて。
藤丸立香は包に声をかける。
「冥琳さまとのお茶会ですか? もちろん参加いたしますよ!!」
目をキラーンとする包。
「これは好機。冥琳さまからの印象を良くして出世の足掛かりにしてくれますよ」
「それは冥琳さんの目の前で言わないように」
既にそういうキャラだと理解されているが。
包、お茶会参加決定。
次に声をかけるは亜莎。
「冥琳さんがお茶会を誘ってるけど、どうかな亜莎?」
「あ、あの、私、何か不手際があったでしょうか…」
何故か不安な顔になる亜莎。
「め、冥琳さまから、こんな突然呼びつけられるなんて…お叱りを受けるに違いありません」
「いやいや、ただのお茶会だから」
本当に自信が無いと言うか、ネガティブな考えしか出来ないのか。彼女は祭や雪蓮のように心当たりがあるわけでもないはずだ。
「うーん…忙しいとか、難しいと言うなら断っておくけど」
「いえ、いきます。頑張ります」
(何を頑張るんだ…)
亜莎はお茶会を何かと勘違いしているかもしれない。
兎も角、亜莎もお茶会に参加決定。
両極端の2人とのお茶会はどのようになるかは分からないが、お茶会の日はすぐに来る。
「よく来てくれたな2人とも。急に呼びつけてしまってすまない」
「いえいえ、冥琳さまとお茶会が出来るなんて光栄です!!」
「あ、あのっ、お招きいたら、いただき、あいがとうございます!!」
ハキハキと声を出す包と噛んだ亜莎。
「そんなに身構えなくて良い。力を抜いてくれ。今日は無礼講…というわけではないが、ゆっくりと腹を割って語り合おうではないか」
「ひぃ、やっぱり…」
何がやっぱりなのか。何度もツッコミを入れたくなるがただのお茶会である。
「パオのことならなんでも話しますよ。その代わり、冥琳さまのことも色々と教えてくださいね」
「ああ、そのつもりだ。茶と菓子も用意してある。遠慮なく飲み食いしてくれ」
ニコニコしながら包は早速、焼き菓子に手を伸ばす。
「はい、いただきま~す。もぐもぐ」
包は勧められるまま素直にテーブルの上の焼き菓子を口にした。
「あ、これは」
亜莎は焼き菓子を見てすぐに気付く。
「おお、これは美味しいですねぇ!!」
大げさに包の食レポが始まった。
「ふわりと軽やかに駆け抜けていく薫風のような香りと素朴ながら奥深く、何度も手が伸びてしまう程に尾を引く塩気…いえ、言葉にしてしまうのは野暮ですね。その枠に押し込めてしまっているようで…とにかく美味しいですー!!」
彼女はグルメ番組に出れるかもしれない。
そんな彼女の感想を聞いて顔を赤らめる亜莎。嬉しいやらなにやらで口元が良い意味で少し歪んでいた。
「そうか、そんなに美味いか」
「はいそれはもう。このパオ、大げさには言いますが嘘は言いません」
「本当か?」
「本当です!!」
今の言葉に嘘は無い。
「…ということだそうだが、どうかな亜莎」
「はい、あの…でも別に私は」
「どうして亜莎さんが出てくるんです?」
焼き菓子の感想を言っただけなのに何故、亜莎が出てくるのか分からないといった包。
「実はこれが、以前亜莎が差し入れてくれた菓子だ」
「ほぇ、これが」
目の前にある焼き菓子こそが冥琳が亜莎から聞きたかった歓待用に用意したかったお菓子。
その時は亜莎から聞き出せなかったのだ。更にこの話には続きがあり、包が登場して「お菓子を探してきます!!」という話になっていたのである。
結局はお菓子の出所は分からずじまいで終わったのだが。
「冥琳さんから聞いて街で探してきたんだ。全然知らない穴場だったから苦労したよ」
目の前の焼き菓子は普通の点心屋やお菓子屋で売っているものではなかったのだ。
現代で例えるなら、肉屋が趣味で数量限定でお菓子を作ったようなものだ。肉屋の店長がお菓子造りが趣味だから売ってみたという言い方でもいい。
「そんな、立香さまの手を煩わせるなんて…こんなつまらないもの、命じていただければ私がまいりましたのに」
「それを断られてしまったと記憶しているが?」
「うう、あの時は…その」
何も言えない。
「ともあれ、包の口にも合ったのだな?」
「ええまぁはい。とても美味しいです」
まさか今回のお茶会で件の焼き菓子が出てきたのは偶然ではない。焼き菓子をこのお茶会で出したのは狙ってやった事である。
藤丸立香は亜莎から冥琳に差し入れられた焼き菓子の出所を調べ、密かに探し出したのだ。それをそれと知らせずに亜莎の前で包に食べてもらうのが今回のお茶会の目的。
気楽にしろと言って呼んでおきながら恐縮させてしまったのは申し訳ないが、事は実に上手く運んだ。
「分かったか亜莎。包もこれだけ絶賛する美味なのだ。お前ももう少し自分の見立てに自信を持て。それと度を過ぎた謙遜は無礼になることもある。国益を損なう事もある」
包が絶賛する程の美味しいお菓子。つまらないものと言ってしまうのは職人にも悪い。
「あっ…そ、そうですよね。心いたします」
自分が出したお菓子なんてつまらない。自分を卑下した言葉かもしれないが、職人が作ったという事を忘れていた。
自分の事ばかり考えており、職人の努力まで考えられなかった事に対して申し訳ないという気持ちになった。
「それに包。自己顕示欲の強さを咎める気は無いが、良いものは良いと認めなければならん。事案の主張をするのと同時に、他人の案も頭から否定することなく、十分に検討すべきだ。そうしてこそ、最大の功績が挙げられるというものだぞ」
彼女もまた自分の事ばかり。自分を良く見せようと他の良いものを無視する。
「ひゃわわ」
亜莎も包も自分たちでそのまま証明してしまったのでぐぅの音も出ない。両極端な2人だが根っこは一緒かもしれない。
どちらもある意味、自分の事しか見えていないという事だ。この事から亜莎は自信を、包は謙虚さを身に着け、協力してくれる事も覚えれば良い方向への進でほしいものだ。
「さて、私の思いが伝わったのなら改めて茶と菓子を堪能しようではないか。藤丸の労にも報いてやらねばな」
「ありがとう。力になれて良かったよ」
彼は少しだけ力になれた。後は包と亜莎しだいである。
「それにしても亜莎はよくこれを見つけたね。あの店ってお菓子屋ってわけじゃないのに」
「はい、あそこは材料の方が中心のお店なんです。だからいつも本当に少ししか並ばなくて…その、評判の良さから何度か通っているうち少し仲良くなって取り置き分を貰えるようになったんです」
彼女は全くもって人とコミュニケーションが取れないというわけではなさそうだ。お店の人と仲良くなって取り置き分を貰えるほど気に入られているのだから。
「素材を色々知っているからこそだね。オレも冥琳さんから貰って食べた時には驚いた。だって時間が経っているのに美味しいんだ」
ヒョイっと焼き菓子を食べる。
「うむむ…そういうことなら他にはない風味というのも納得ですね。でもパオだって負けたままではいませんからね。きっときっとこれ以上のお菓子を探してきます。なければ手ずから作りあげてみせますよ」
先ほどまでしょげていた包がもう気炎を上げていた。彼女はこうではなくては。
今回の仕組まれたお茶会にて2人が良い方向に進めるのではないかと思う冥琳。まさかの事で萎縮してしまった2人であったが注意と助言を受けた2人は今回の事を糧にして行こうと思っている。
まだまだ前途多難かもしれないが2人なら良い方向へと進んでいくはずである。
「そう言えば藤丸、今回は上手く収まったが包の口に合わなかったり、更に強く意地を張られたりということを考えなかったのか?」
「冥琳さんも亜莎も美味いっていうから味に疑問はなかったんだ。それに包はどんなことでも思ったことは正直に言うからね。そこは信じてた」
正直すぎて全部吹き抜け状態なのはひとまず置いておく。
「なるほどな。信頼のなせる技ということか」
納得がいったという感じに軽く微笑んだ。
「藤丸は剣や統治の才能はさほどではないが、人の心を掴み、良さを引き出す能力は誰よりも優れている。流石は天の御遣い殿だな」
「だから天の御遣いじゃ…いや、それはもういいか。じゃあ本来のお茶会を始めよう冥琳さん」
「そうだな。上から言うばかりではいかんしな」
せっかくのお茶会なのだから亜莎と包には良い気分にしながら茶を飲みたい。
注意と助言をしたのだから次は褒めて伸ばすというのも良いかもしれない。そう思いながら冥琳は2人に話しかける。
(やはり…お前が来てくれて良かったよ藤丸)
冥琳だけでは上手く事が進まなかったかもしれない。藤丸立香に話して良かったと思う。
尤も、そんな事を彼に言ったら謙遜するかもしれない。そう思うとつい口元が緩む冥琳であった。
578
カルデアにて。
藤丸立香はベッドにスヤスヤと寝ている。レムレム睡眠を起こしてからいまだに目を覚ます気配はない。
「先輩…」
「大丈夫だよマシュ。バイタルは正常値だし、異変はないよ……………時たま、アレアレっていう値は出たけど」
「そうなんですけど今回は今までで一番長くて……って、最後の方なにか言いました?」
「んーん。言ってないよ!!」
アレな値とは気になる事を言っていたがダヴィンチ(騎)の様子より藤丸立香に大きな異常が無い事は分かる。
(人によっては発狂するかもしれない値だったなー。立香くんじゃなくて値を見る方が)
異常が無いのに人によって値を見ると発狂するとはこれ如何に。
(立香くんが向こうで何があったのか色々と気になる。色々とね!!)
一旦、ソレを置いていおく。
「今は待つ事しか出来ないなんて…歯がゆいです」
「待つことも大事なことさ」
ただ待っているだけではないのが彼女たち。出来る事はしており、今でも藤丸立香がレムレム睡眠でどの特異点にいるのか探している。
いくつかの見つけた情報により彼が中国大陸、三国時代にいるのではないかとまでは分かった。しかし現在の解析により中国大陸の三国時代に特異点は存在しない。
特異点が存在しないのならば藤丸立香は何処にいるのかという謎が出てくる。
「この謎に関してどう思うホームズ?」
「今は」
「まだ語るべきじゃないか」
「…台詞を取らないでくれるかい?」
「だって答えないなら最後まで言う必要ないじゃないか」
シャーロック・ホームズは何とも言えない顔で「……」というのはちょっとだけ笑えた。
「こほん。まだ答えるべきではないが彼は無事だよ。寝ている彼に異常が無いのが答えだからね」
藤丸立香は穏やかな顔でレムレム。
目は覚めないが肉体、精神面はバイタル値より安定しているのは分かっている。
「前にも言ったけど私たちは出来ることをしよう。他のサーヴァントたちだって出来る事をしているんだから」
藤丸立香と契約し、カルデアにいる英霊達。彼がレムレム睡眠で謎の特異点に向かう事は何度も見ている。
その時は自分に出来る事をしているのだ。例えばキャスター陣たちは亜種並行世界の下総国の時のように己の魔術で調査したり、解決を試みようとしている。
他に待つ事しか出来ない者はいつも通りに過ごしている。「いつも通り」だからこそ良いのだ。
慣れない事であーだこーだしているよりも「いつも通り」にしていて出番が来た時にいつでも対応出来る方が一番である。
例えばセイバー陣営のある1組では。
「マスターがレムレムしてから早数日…今だに目は覚めない」
「真剣にレムレムって言うのを聞いててアホらしく感じんだけど」
ラーマが話し出したがモードレッドのツッコミによって出鼻を挫かれる。
「まあまあ、マスターが眠るイコール、レムレムという言葉はカルデアでは完全に浸透してますから今さらですよモードレッド卿」
「そーだけどよー。でも真剣な顔でレムレムって言うのがどーしても滑稽だろ」
「それは気のせいですよ」
その場の雰囲気や単語によってシリアスでも何となくギャグ寄りになってしまう場合がある。ふざけていないのにふざけているように見えるのだ。
雰囲気や単語の使い方は本当に大事である。
「そう言えば何でオレらは集まってんの?」
モードレッドの視界に映るはラーマ、ベディヴィエール、シグルド、バーゲスト。
「マスターがレムレムしてから数日。当方らで何か出来る事はないかと考える為に集まった次第だ」
「私もそう聞いている」
シグルドの答えにバーゲストも頷く。
「オレと優等生は円卓関連で分かるが…他はバラバラだな。どういう基準で集められたメンバーだよ……もしかして暇組とかか?」
「そんなわけないだろう。ここに集まったのはセイバー陣営の中でも特にマスターから信頼されているメンバーだ」
「うむ。曰く『お気に入り』という奴だな」
眼鏡キラーンのシグルド。
「眼鏡を光らせんな。眩しいだろ。てか、どーなってんだ」
本気でどうやって眼鏡を光らせてるのか興味があるモードレッド。その横で「マスターのお気に入り」という言葉に照れているバーゲストであった。
「モードレッド。貴殿もマスターのお気に入りだから嬉しいのであろう?」
「んなわけあるかっ。…マスターが良い奴なのは認めるけどよ」
すぐにシグルドの言葉を否定するモードレッド。
「なるほど…これが黒ひげの言っていたツンデレ」
「全然違うわ!!」
「そして我が愛はヤンデレと言うらしい」
「知るか!!」
(…と言うか『お気に入り』発言は広範囲に他の英霊たちに喧嘩を売っている感じになってしまうのだが…コレに触れると怖いからスルーしておこう)
ラーマの思った事は正解である。
藤丸立香は契約した英霊たちに順位を付けるような真似はしない。しかし無意識に頼りにしている英霊たちはいるのだ。
だからこそ、その英霊たちが『お気に入り』と言われてもしょうがない。
「まあ、それは置いておいて」
「置いておくな優等生」
「我々に何が出来るかですが…我々もマスターがいるであろう特異点に呼ばれる可能性があるので、いつでも特異点にいきなり呼ばれてもよいように準備しておく必要があるでしょう」
「やはりか…余もそう思う。我々はキャスターたちみたいな事は出来ないからな」
いつでもマスターのいる特異点に送られても良いように万全を期しておく。
「そうだな。しかし、私たちが呼ばれるかどうか…」
「バーゲストの言いたい事は分かる。今、考察されているマスターの元へと駆けつけられる優先英霊たちだな」
優先して召喚されていく英霊たち。既にカルデアから何騎か居なくなっているのが9割9分、中華系の英霊達なのだ。
「ダヴィンチ殿から聞いた情報だとマスターは中国大陸の三国時代あたりにいるらしい。それならば中華系の英霊達が呼ばれてもおかしくない」
「しかし日本出身の英霊も呼ばれていると私は聞いたが」
「その通りだバーゲスト。だから中華系の英霊達だけ、というわけではないだろう。それでも次点で呼ばれるとしたら日本英霊だが」
日本出身の英霊である俵藤太が呼ばれている。それを聞いて他の日本出身の英霊たちは他の英霊たちよりも、いつ呼ばれても良いように準備万端。特に源頼光や清姫は今か今かと待っているらしい。
「源頼光と清姫は逆に待っているのではなく自分から行こうと行動していると当方は聞いた」
「バーサーカーの2人がどうやって謎の特異点に行くんだよ」
「愛の力で行くらしい」
「愛って言葉で何でも片付けんな」
『愛の力』は偉大である。きっと多くの人が同意してくれるかもしれない。
「当方は愛の力を否定しない」
「わ、私も否定しない」
シグルドの言葉にまた頷くバーゲスト。
何故なら愛の力で奇跡を起こしている者がこの場にいるからだ。その人物こそがシグルド。
奇跡のような縁によって再会したシグルドとブリュンヒルデ。2人の愛は普通ではなく、『殺し愛』なんて言葉が浮かび上がる。
ブリュンヒルデの愛した者を殺さずにはいられないという性質に真っ向から受けて立つシグルドはまさしく漢。
英霊という存在であっても愛は変わらない。だからこそ彼は愛の力を疑わないのだ。
そんな2人を知ってバーゲストは驚いた。自分の性質の悩みは1人だけかと思えばカルデアにも似たような英霊がいるとは思わなかったのだ。そして2人が羨ましいとも思った。
(ブリュンヒルデ殿が羨ましい。マスターもシグルド殿のような…いやいや、流石にそれは高望みしすぎだぞ)
「なんで頭を振ったんだ?」
「な、なんでもない」
それでも望んでしまうのは我儘、欲望だが誰も責めはしない。
「シグルド殿。また今度、茶会に貴方の奥方を呼んでもよいだろうか」
「構わない。我が愛も貴殿との茶会は楽しんでいる。これからも呼んで欲しい」
似たような性質を持つブリュンヒルデとバーゲスト。案外、話が合うようである。
お茶会での話は専ら、愛や恋人等について。
「さて、話がズレたが…やはり我らが出来るのは特異点にいつでも呼ばれるように準備しておく事」
「そうですね…おや、何だかんだで時間が過ぎるのが早い」
「む、ベディヴィエール卿。そんなに時間が経過しているのか」
「ええ。今の時間は…」
ベディヴィエールとバーゲストの視線が時計に向けられる。
「もうこんな時間ではないか。急がねば…では、失礼する!!」
バーゲストは急いで部屋から出て行った。
「…モードレッドは行かないのか?」
「行かねーよ!!」
彼女が急いで部屋を出た理由は残りのメンバーも分かっている。
次にアーチャー陣営のある1組。
「アップルパイだ。召し上がれ」
エミヤ(弓)がコトリと皿に乗ったアップルパイを机に置く。焼いたアップルパイの甘い匂いが食堂を支配した。
甘い匂いを嗅いだら誰もがアップルパイを食べたくなるかもしれない。
「いただきます」
フォークでアップルパイを1口サイズにカットしてパクリと食べるとリンゴの酸味と甘みが広がる。
「うん、美味しい」
アップルパイを食べたアタランテは幸せそうな顔をする。
「流石はカルデアの料理長だ」
「いやぁ本当に美味しいネ。君がいるおかげでカルデアの食は安泰だろう。うんうん、フランにも食べさせてやりたいね」
ジェームズ・モリアーティもエミヤ(弓)の腕を褒める。彼の料理の腕はカルデアの全員が認めているほどである。
「本当に誇っていい腕だヨ。なにせ人間でなく女神サマだって美味しいと言ってくれるんだから。ネ、女神サマ」
ジェームズ・モリアーティが声をかけたのはエウリュアレ。
「ええ、美味しいわ。私の為に一生作ってくれてもいいわよ?」
「とても名誉な事だが遠慮しておこう。私では女神の専属料理人なんて恐れ多すぎる。それと面白半分でチャームのスキルを発動しないでほしいのだが」
「あら。女神のチャームをかけられるなんてとても名誉な事よ」
(それでオモチャにされたらたまったものではない…)
女神というのは優しく、美しく、残酷なものである。
「しかし女神サマがこうやって1人でアーチャー組に顔を出すなんて珍しいネ。もう1柱も一緒かと思ってたヨ」
もう1柱とはステンノの事だ。カルデアではエウリュアレとステンノの2柱で1つというのが当然という形になっている。
更にメデゥーサも加わっているというのがスタンダードでもある。更にさらにアステリオスも一緒だったりもする。
「私もいつも私(ステンノ)と一緒にいたいんだけどね」
パクリとアップルパイを食べる。
「カルデアは恐ろしいところね。私がこんな風になってしまうなんて…私だけでなく他の英霊達もきっと戸惑っているんじゃないかしら?」
彼女が言った言葉に否定はできない。
カルデアに召喚されてから己の変化に戸惑っている存在はいる。逆に第二の人生が如く謳歌している英霊がいるのも確かである。
それらが良い事か悪い事かは個人が決める事だ。
「実際に戸惑っている英霊がソコにいるじゃない」
エウリュアレの視線の先にいるのはバーヴァン・シー。
「私…何でこんな所にいるんだ?」
食堂でアップルパイを食べている自分自身にハテナマークを浮かべている。
「君が連れてきたのかロビン…まさかナンパしてきたのか?」
「ちげーよ。オレはそこの女神サンをエスコートしてたんで」
「23点のエスコートだったわ」
「低いなぁおい!?」
ため息を吐くエウリュアレに文句を言うロビン・フッド。恐れ多い事をしているが彼は結構、誰彼構わず言う事を言う。
そして見ない組み合わせだが実はこのカルデアでは戦友だったりする。何故、戦友かと言えば共に第6特異点で不夜のガウェインを倒したチームだからだ。
更にエウリュアレに関しては高難易度クエストでも頼りにしてもらっている。正確には相手が男性だった場合は特攻が突き刺さるから。
最初の頃エウリュアレは「戦えない女神なのに戦わせないで…」と言っていたが今では欠かせないアーチャーである。
「じゃあ誰が?」
「ハーイ。私だヨ」
挙手したのはジェームズ・モリアーティ。
「いやー、この娘ってなかなか悪の才能がありそうでね」
「確かに属性は混沌・悪だが…」
(この娘に色々と教えるのも面白そうだしネ)
彼はまた何か悪い事を考えていると思ってエミヤ(弓)はため息を吐きそうになる。後でシャーロック・ホームズにでも通報しようかと考えたがバーヴァン・シーに変な事をするとモルガンが宝具を撃ちこんでくるはずだからほっといていいかもしれないと判断した。
「このオッサンの話がちょっと面白かったから聞いてたけど、いつの間にか食堂でアップルパイ食ってた…なんだコレ?」
彼女は悪の華。そうであれとモルガンが望んだがゆえだ。
そんなバーヴァン・シーの悪の華はジェームズ・モリアーティからしてみればまだまだ綺麗に咲かせられると見ている。
(人間を悪の道に誘ったり、深く深く沈めた事はあったけど妖精に悪を教えるのは初めてになるかもしれないネ)
面白そうに「クックック」と悪役らしい笑い方をしている。
バーヴァン・シーは人間でなく妖精だ。ジェームズ・モリアーティが思っているほど甘い存在ではない。彼の思い通りになるか痛い目に遭うかはまだ分からない。
「…やっぱり彼は子供たちに悪影響を与えそうだな。一矢、頭に撃つか?」
真顔で怖い事を言うアタランテ。
「いいんじゃないか?」
「いいと思いますよ?」
彼女の提案にエミヤ(弓)とロビン・フッドは同意した。
「ちょ、同じ男性でアーチャー仲間としては止めて欲しいんだけど!?」
「では」
「ちょちょっ、本当に弓を出さないでアタランテ君!?」
「あっ。何か面白そうな事が起きそうな予感がするじゃん」
バーヴァン・シーがニヤリと笑う。自分にとって面白そうな事が起きそうな場合は首を突っ込む性分だ。
(うーん…これはちょっとマズイかも。さて、どうしよ…って、ア)
時計を見てピコーンと思いつく。面白くなりそうだから調べていて良かったと自分に感謝。
「アタランテ君、時計時計。そろそろじゃない?」
チラリと時計を見るアタランテ。
「む、もうこんな時間か。全くマスターは世話のかかる」
シュタッと駆け出してアタランテは食堂から消えた。
「……君は行かないのかネ?」
「何で私がマスターん所に行かなきゃなんねえんだよ?」
(彼女は違うのか?)
「女神サマは?」
「マスターの部屋に行って怪我するのはイヤ」
アタランテの皿を片付けるエミヤ(弓)の顔は何処か嬉しそうであった。
(フッ、やはりマスターは女難だな)
次にランサー陣営のある1組。
「何だか凄い光景だな。オジサンちょっとブルっちゃう」
ヘクトールの目の前にはスカサハ、アルトリア・ペンドラゴン(槍)、メリュジーヌ。
影の国の女王に聖槍の騎士王、アルビオンの欠片という伝説級のものばかり。ここがカルデアだからこそ成り立つ光景である。
「で、何でオジサン呼ばれたの?」
「それは私も思った。聞いた話だと友のピンチと聞いたのだが」
ヘクトールの他にヴラド三世(EXTRA)もいる。
「もしかしたらピンチになるかもしれねえってだけだよ」
2人を呼んだのはクーフーリン(槍)である。マスターのピンチとは女難的な意味である。
「それは…もうどうしようもないんじゃない?」
「友の助けにはなりたいが、ソレは助けられんな」
「2人の気持ちは分かんだけど…何だかんだでシャレにならないとこまで来てんじゃないかと思ってよ」
シャレにならない所まできているという部分にヘクトールとヴラド三世(EXTRA)は顔を顰めて黙った。
そのまま耳を傾ける。
「僕はマスターの恋人だ。だからマスターの事を色々と聞きたい。でだ、君たちはカルデアのランサークラス陣でも上位に入ると聞いた。マスターもきっと君たちを頼りにしてたと思う。次からは僕のになると思うから…えーと引継ぎって言うんだっけこういうの?」
(ナチュラルに喧嘩売ってんぞ…)
メリュジーヌもわざと言っているわけではない。これが普通だと思って言っているのだ。
既に溶岩水泳部とも似たような話をしており一度、衝突している。
「ふう…メリュジーヌよ、悪いが引継ぎはしない。そもそもマスターは特異点の状況や敵編成によって様々な英霊たちを組み合わせている。ずっと同じではないのだ」
(お、流石は師匠。冷静に返答しているじゃねえか)
「スカサハの言う通りだ。確かに我らはマスターからよく編成に組まれている。しかし状況によっては編成から抜ける事もあるのだ」
(騎士王も冷静に返答したな。そうだ、あの騎士王はこの程度で怒るはずもない)
子供の我儘に大人が言い聞かせている図に見えた。
「これなら大丈夫じゃない?」
「そうだな。師匠も何だかんだでマスターの事を気に入ってるから、また新たに現れた女にブチ切れるんじゃないかと思ったけど違ったわ」
「あのお方はそういうキャラじゃないでしょ」
杞憂に終わったと思って解散しようと思った矢先。
「それにだ…もうランサークラスの戦力も十分。今さら新たな戦力も必要ないと思ってる。なにせ私がいるからな」
(ん?)
「私の聖槍はマスターに捧げられている。私とマスターは槍と担い手のような間柄だ。その関係は斬っても斬り離せない。マスターのランサーは私という他ならない」
(んん?)
聞いていると先ほどのメリュジーヌの言葉の仕返しにしか聞こえない。
「何やら不穏な空気になっているぞヘクトール、クーフーリンよ」
「おっかしいなぁ。2人ともあんなキャラだっけ?」
「……まあ、師匠も槍の騎士王もバニーになるくらいだからな」
クーフーリンが言ったのは嘘ではない。スカサハもアルトリア・ペンドラゴン(槍)もバニーになっているのだ。
どちらのバニー姿も藤丸立香はドキドキした。
「ふむ。なら君たちを倒せば僕がランサーの中で一番だね」
(やっぱりそういうオチかよ!?)
これはマズイと思ってクーフーリンは身を乗り出す。
「それと我が馬鹿弟子もマスターからアニキと慕われてたな」
「じゃあソイツもあとで倒せばいいかな」
クーフーリンは身を退いた。
「なにしてんの?」
「いや、いま飛び出したら真っ先にオレがやられそうだったから」
「お決まりのランサーが死んだってやつ?」
「それ他人事じゃねえぞ」
ランサーだけがかかる呪いのようなもの。正直に言って恐ろしすぎる。
「で、どうするんだ。あの3人がカルデアで暴れたらすぐに崩壊するぞ。せめてシュミレーター室に行ってもらいたいものだ」
「ヴラドの旦那の言う通りだねえ」
こんな所で宝具を発動されたらたまったものではない。
「そう言えば冥界の女神も呼んだんだけど何処?」
「エレシュキガルも呼んだのか。まだ来てないとなると…」
「って、もうこんな時間じゃないか!!」
メリュジーヌが時計を見て焦る。
「急いでマスターの所に向かわないと!!」
最高速度で飛んでいくメリュジーヌ。
「む、私も急がねば」
「行くぞ、ドゥン・スタリオン」
残りの2人もマスターの元へ駆けていった。
「これは友のお陰でカルデア崩壊は免れたか?」
「たぶんな」
場面はまた藤丸立香のマイルームに戻る。
「さてと…そろそろ時間かな」
「ダヴィンチちゃん。ここは先輩の後輩である私に任せてください!!」
いきなり手を挙手するマシュ・キリエライト。
藤丸立香は眠り続けている。
眠り続けている人間に何もしないでいいわけがない。食事、栄養補給はどうするのか。運動をしなくても汗はかくのだから衛生面はどうするのか。他にも生理現象等がある。
迷惑をかけるのは必須だが、誰かにやってもらうしかないのである。
「私が先輩の汗を拭きます、着替えさせます。それが後輩の仕事ですので!!」
元気で大きな声のマシュ・キリエライト。
「うんうん。じゃあマシュに任せようかな」
ニコニコ顔のレオナルド・ダヴィンチ(騎)。
「ホームズは…もう居ない。身の安全の為にさっさと部屋から出たか」
シャーロック・ホームズはこれからこの部屋で起きる出来事を知っているので既に退出している。
「じゃあ私は…」
マシュ・キリエライトの手伝いをするか部屋から出るか3秒で決めようかと思ったが遅かった。
「「「マスター!!」」」
「わぁ、もう来た」
たくさんの英霊たち。マイルームにそんなに入らないってくらいギュウギュウに来た。
「駄目です。今日は私の番なんですーー!!」
武装したマシュ・キリエライトが入り口でギュウギュウの英霊達に突貫。
「また始まっちゃった」
レムレム睡眠中の藤丸立香の世話を誰がやるか。それだけでも大変。
「まったくこれだけ絆を深めた立香くんはスヤスヤレムレム。早く目が覚めて欲しいものだよ」
読んでくれてありがとうございました。次回の更新はそのうちの予定です。
前書きにも書きましたが今回で日常回はこれで一旦、終了。
次回から本編に戻ります!!
577
前回から話から続いて今回でまとまりました。
原作をプレイしている方は分かるかもしれませんが冥琳と包と亜莎の幕間を混ぜ込んだ話です。上手く繋げられたんじゃないかと思います。
まあ、今回は立香の出番はあまりなかったですけど。
冥琳が言っていた「人の心を掴み、良さを引き出す能力は誰よりも優れている」これも一刀も立香も持っている能力なんですね。
やっぱり似ていると思います。似ているからこそ書ける物語があります。
578
藤丸立香たちが恋姫世界にいる間、カルデアではどんな状態かを書いた話でした。
好みが分かれるかもしれませんが、マスターラブ成分マシマシの話になっております。
今回はセイバー・アーチャー・ランサー陣営を書きました。他のクラスはまたいずれ書きたいと思います。
この話で選ばれた英霊達は趣味だったり、ここ最近で登場したからせっかくだし…みたいなノリです。
次回は他のクラスの英霊達の話を書きたいです。
セイバー陣営では。
「お気に入り」発言…これは公式ではありません。お気に入りのグループは人それぞれですよね!!
まだどうなるか分かりませんがブリュンヒルデとバーゲストって性質が似ているような気がします。愛しているからこそ殺してしまう(食ってしまう)。
イベントとかで共演したりするのかな?
武蔵ちゃんも登場させたかったけど…まだ武蔵ちゃんが公式でどうなるか分かりませんからねえ。再登場はあるのか、それともオリュンポスで最後だったのか。
アーチャー陣営では。
これも公式ではありませんが我がカルデアではエウリュアレとロビンは戦友です。
1部6章の不夜のガウェイン戦ではお世話になりました。いや、本当に…特にエウリュアレ様は!!
モリアーティとバーヴァン・シーの2人も組み合わせとしては面白そうな気がします。
モリアーティがバーヴァン・シーに面白おかしく吹き込んで事件(イベント)が発声、その後のオチにモルガンに成敗されて終わりの流れが見えました…千里眼(偽)!!
ランサー陣営では。
アニキにはいつもお世話になっております。ランサーが死んだっ…なんて言いますけど実際には死なない!!
スカサハもアルトリアランサーも美しくてカッコイイです。2人とも人気のキャラですよね。
そしてメリュジーヌ…新たなマスターラブの1人。彼女は召喚されて最初から好意が高かったですね。
何故こんなにも好意が高いのかは幕間とかで明かされたりするのかな?
そして彼女は強い…単体宝具と全体宝具を状況によって変えられるのはイイ…戦略が広がりますね。(更に今回はコヤンスカヤにオベロンの登場で新たな戦略(周回)が生まれたみたいですし)
今回のオチですが、何番煎じも分かりませんがマスターのお世話をするために女の仁義なき戦いが始まった…正妻戦争ですね!!
ちなみに今回はマシュが勝利しました。