Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。

FGOではハロウィン総集編が開催されてます。
新規のユーザーだけでなく、既に駆け抜けたユーザーにも楽しめるように編集されていますね。
新ハロウィンはどんなのになるか楽しみです。


さて、賭博編も今回で終了です。
どのような展開で解決したかは本編をどうぞ!!


賭博場 -混乱収束、そして勝った報酬-

600

 

 

藤丸立香の指示の下、鬼退治が始まった。

時間は有限だ。速攻で2体の鬼を倒さねば被害は甚大。

 

「「ぐるるるるるるるぅああああああ!!」」

 

2体の鬼が吠える。

 

「まずは燕青、李書文(殺)は鬼たちを足止めしてくれ!!」

「いいよぉ」

「任された」

 

藤丸立香の左右から飛び出した燕青と李書文(殺)は跳び蹴りで鬼たちにくらわす。

 

「あらよっとぉ!!」

「応さ!!」

 

2人は同時にスキル『中国拳法』と『中国武術』を発動。秘宗拳と八極拳の技が鬼たちに打ち込まれていく。

 

「ハッ、フッ、セイ!!」

「冲捶、連環腿、通天炮、寸勁!!!」

 

ズドン、ズドンと重い一撃が次々と打ち込まれていく音が響いた。

 

「やるのう2人とも。うーむ、やはり達人か」

 

2人を賞賛したのは祭。彼女の周囲には無数の矢が突き刺さっていた。

 

「準備出来ましたか祭さん」

「うむ。ここでは投壺をやっていたからな。矢はいくらでもあった」

「わたしも準備完了です!!」

 

明命の周囲には数多くのクナイのような短剣。

 

「よし」

 

令呪の一角が光る。

 

「令呪を持って命ずる。武則天、宝具の発動を!!」

「見せてくれよう」

 

武則天は手を床に置く。

 

「刑の執行じゃ。宝具、告密羅織経」

 

毒沼ともいうべきものが武則天が手を置いた床から一気に広がった。毒沼は鬼たちの足を飲み込み、沈ませる。

 

「これは毒であり、其方らの罰でもある」

「「ぐるるるるるるるああああああ!?」」

「オレらまで毒沼に嵌るかと思ったぜ」

「嵌っても良かったぞ?」

「このやろう」

「野郎ではなーい」

 

パチンと指を鳴らすと矢とクナイのような短剣にも告密羅織経の効力が付与される。

 

「妾は下を攻めた。お主らは上じゃ」

「分かっておる」

「任せてください!!」

 

藤丸立香は概念礼装を起動。

 

「技巧。文明の担い手、技術とは人の可能性である。集中。一意専心。精神一致何事か成らざらん」

 

祭と明命の感覚が鋭くなっていくのが分かる。精密性でも上がっていくのも分かる。

 

「行きます!!」

 

クナイのような短剣を素早く、一気に投げ飛ばしていく。

 

「行くぞ!!」

 

矢を連続で射っていく。

2人が動かす腕は速過ぎて残像が出るのかっていう程だ。

 

「くらえ」

 

クナイのような短剣と矢には武則天の宝具が付与されている。

シンプルに言ってしまえば毒のクナイと毒矢の雨が鬼たちに降り注ぐ。

 

「「ぐるるるるるるるああああああ!?」」

「妾との合わせ技じゃな」

「矢毒・戦陣雨…と名付けようか」

「では、わたしは…煙幕幻弾!!」

 

明命が口にした技名の『煙幕』という部分に疑問を覚えたがスルーする。

狒々鬼と兕鬼は下は毒沼、上は毒矢と毒クナイという責め苦を味わい、動けなくなる。

 

「今だ。粋怜、思春さん!!」

「任せて立香くん」

「言われずとも!!」

 

粋怜と思春は武器を持って走り出す。目の前には鬼たちが嵌る毒沼。

 

「武則天、道を作って」

「分かっておる」

 

パチンと指を鳴らすと2人の前に道が出来る。

 

「そのまま走れ」

 

毒沼に出来た道を走り抜き、鬼を目指す。

 

「概念礼装起動。破壊…崩壊せよ、新生の時は来たれり。閃光…刹那の見切り、紫電一閃、天を割く」

 

概念礼装の力が粋怜と思春に付与される。

2人が狙う鬼の部位は決まっている。その部位とは首だ。

凶悪で強力な妖魔である鬼であっても首を斬られたら死んでしまうものである。

 

「残影撃!!」

「技名を言うなんてガラじゃないけど、言わせてもらうわ…蛇矛円斬!!」

 

切断音が聞こえた。

恐ろしいほどの斬れ味と誰もが思ったはずだ。2人はたった一太刀で2体の鬼の首を切断したのである。

2体の鬼の首はボチャンと毒沼に沈み、胴体もゆっくりと沈んでいくのであった。

 

「蛇矛円斬……まだまだ改良の余地ありってところかしら?」

 

毒沼に立つ勝利者の姿が藤丸立香の視界に入った。

これにて賭博場の戦いは閉幕。

 

 

601

 

 

2体の鬼退治が終わり、賭博場も完全に閉塞した。

粋怜としてはせっかくの大きな賭博場が閉じてしまった事に残念がっていたがしょうがないと言うもの。

謎の賭博場は八傑衆のための資金集めと鬼を生み出す牧場のような場所だったのだ。閉塞して正解である。

 

「報告は以上よ冥琳。報告書も読んどいて」

「なるほど。謎の賭博場は八傑衆が運営していたか」

 

冥林は粋怜の報告書を読み、すぐさま状況を理解した。

 

「ここ最近は八傑衆…いや、于吉絡みが多いな。まだ孫呉に邪悪な策を忍ばせているのか」

 

于吉は孫呉にとって仇敵だ。

彼が現れてから孫呉は現実ではあり得ない世界に足を突っ込ませられた。そして大事な人を奪われた。

現在も妖魔や八傑衆を呉に送り込んで潰そうとしている。彼は大事なものばかり奪っていく。

 

「やはり大本を絶たないといけないか」

「いずれは倒すわ。于吉は私にとって仇だからね」

 

粋怜は今でも炎蓮を守れなかった事を悔やんでいる。そして于吉の事を恨んでいる。

自らの手で首を刎ねないと気が済まないほどに。

 

「絶対に首を刎ねてやるわ」

「……怖い目になってますよ」

「あら、いけないいけない。でも冥林だって」

「う…」

 

于吉の事を恨んでいるのは粋怜だけではない。呉の全員が恨んでいる。

 

「…話が脱線したわね」

 

ため息を軽く吐いて切り替える。

 

「報告書にある魔薬。人間を鬼にする薬…妖魔やなんやらと目で見ているのですんなりと信じましたが実物はありましたか?」

「いや、見つけられなかったわ。鬼退治が終わった後に賭博場内を捜索したけど1つも無かった」

「そうですか。そんな薬は処分するのが1番なんですがね」

「同意だわ」

 

鬼にする薬は存在してはならない。

 

「魔薬が何処で作られているか。何処にあるか。まあ、于吉か」

「でしょうね。それよりも気になるのは」

「鬼になった人間ですね」

 

人間を鬼にする薬が魔薬。

薬が実在しているならば実際に鬼になった人間はいる。しかし賭博場に鬼になった人間はいなかった。

既に呉に放たれたならば被害報告が上がっていてもおかしくないはずだ。

 

「呉の領内で怪物が出たなんて報告は無い。そして何処かの村が襲われたという報告もない」

「浮雲の話しからすると何人も鬼にした口ぶりだったけどね」

「そうですか。しかしこうも報告が無いと…実は嘘だったか?」

「う~ん、そうなのかな。でも薬の効果は本物だったわ」

 

魔薬を飲んで鬼になった者を直に見ている。粋怜だけでなく、思春たちだって目撃しているのだ。

薬の効力は本物であることは間違いない。

 

「そうなると鬼になった人間たちは何処にいったか。魔薬の出所よりも消えた鬼の方が重要だ」

「そうね。魏や蜀の動向も気になる所だけど鬼になった人たちの行方も探さないといけないわ」

「探し出しておきましょう。それにこの問題は我々、呉だけの問題にならないでしょう」

 

于吉は呉だけを狙っているわけではない。魏や蜀も狙っている。

現在の大陸で勢力を伸ばしている三国を狙っている方士である于吉。

普通に考えて三国に喧嘩を売る事自体がおかしい事だ。しかし実際に潰そうとしているからこそ冗談ではなく本気度が恐ろしい。

たった1人で三国をかき乱す恐ろしい方士。どの国も他国よりも厄介だと思う存在だ。

 

「気になる所もありますが今は任務お疲れ様です。ゆっくりと休んでください」

「そうさせてもらうわ。それに立香くんにもお礼しないとねー」

「立香だけでなく、明命たちにもお礼をしてやってください」

「勿論よ。それとは別に立香くんには報酬があるの。ま、その報酬を任務終わりにあげようと思ったら邪魔が入っちゃったけどね。ふふっ」

 

なにやら面白そうに語る粋怜であった。

 

「別の報酬?」

 

何の事だが分からない冥琳であった。

 

 

602

 

 

賭博場での任務が終わった。

鬼退治後はパニックになった客たちを鎮め、従業員を捕まえ、賭博場内を捜索した。

なかなかハードな仕事内容であったが終わってしまえば、どっと疲れが出てくるものだ。

 

「仕事終わりの一杯行きますか」

「お、いいのう。粋怜の奢りじゃな」

「祭は私に借金があるでしょ」

「ぞれと今回は別じゃ」

 

全然、別じゃない気がするがツッコミはしない藤丸立香。

 

「思春たちも飲むでしょ?」

「いえ、私は…いや。いただきます」

「いただきます!!」

 

粋怜の任務終わりのご褒美。

せっかくのご厚意を断るのも悪いというものだ。

 

「燕青たちも飲むでしょー」

「おう」

「儂は茶で」

「妾も付き合うぞ。手伝った褒美を貰えるのならば貰わんとのう」

 

全員が任務終わりの飲みに直行。

恐ろしい事が起きた1日だったというのに喉が渇くし、腹も減る。それが人間の不思議な所である。

粋怜に案内されたのは繫華街ではなく、住宅街で一軒だけひっそり営業している隠れ家的な小料理屋だ。

見た目も良い雰囲気で落ち着いている感じだ。店内に入ればより大人っぽい雰囲気を感じる。

 

「メニューも珍しいものばかりだ」

 

エイヒレの干物を焼いて味付けしたもの、豚耳、ホヤ、珍しい川魚のあんかけ、鯉のヒレ。簡単に言えば珍味揃い。

更に高級品と言われている干しアワビにツバメの巣もある。珍味に高級品と揃って凄いお店だ。

 

「注文おねがいしまーす」

 

粋怜と祭と燕青はカポカポと酒をウワバミのように飲んでいく。

 

「カーーッ。この一杯が染みるのう」

「ちょっとぉ祭。そのお酒は私のよー」

「いいではないか。また頼めば。ほれ、燕青も飲んでるか!!」

「飲んでる飲んでる」

 

仕事終わりの一杯は最高だ。

 

「うん。上手い」

「そうだな。まあ、儂は茶だが」

 

思春と李書文(殺)は静かに飲んでいた。

 

「ふーやーさん。お猫様はですね!!」

「仕事終わりに何で猫の話を聞かねばならんのじゃ」

 

明命は絡み酒になっており、武則天に猫の素晴らしさを熱弁していた。

 

「みんなそれぞれの飲み方があるんだね」

 

藤丸立香は全員を観察しながらお茶を啜っていた。

 

「主~~。主もこっちで飲もうぜぇ!!」

「おう、立香。酌してくれぃ」

「立香くん飲も飲もー」

「いかん。絡み酒がきた」

 

結局は絡まれる運命だ。

何度も言うが酒と食事は人それぞれである。そして時間が来れば解散だ。

 

「飲んだ飲んだぁ」

「うむ。飲んだのう」

 

ふらふらと千鳥足で歩いていく燕青と祭。

 

「酔ったのか燕青」

「気分的にぃ」

「あうぅ。飲み過ぎました」

「私の背中で吐くなよ明命」

 

ふらふらに酔った明命を背負う思春。

 

「まあまあの店じゃったのう」

「まあまあって…あのお店って私オススメの店だったんだけど」

「妾の舌は全ての美食を極めたからのう」

「ほんっと、ふーやーちゃんって何者よ」

「女帝じゃ」

 

嘘ではない。

 

「さて、解散解散。あとは寝るだけ。報告は明日でいいしね」

 

これにて解散。

賭博場の任務は濃く深い1日であった。祭たちはほろ酔い気分で帰路に着くのであった。

 

「さてと。ご飯も済んだことだし、次は宿を探さないとね?」

 

粋怜は藤丸立香にポツリと呟いた。

 

「宿?」

 

急に何を言い出すんだと思う藤丸立香。既に宿は取ってあり、翌日には建業に戻る手筈になっている。

何故、宿を探さないという台詞が出てくるのか分からない。

 

「探すって…もう宿は取ってあるんですよね?」

「ええ。でもその宿だと燕青たちの目があって立香くん気にすると思って」

「はい?」

 

気が付けば燕青たちはいない。もう宿に向かってしまったようだ。

粋怜は藤丸立香の手を握り、すっと身体を寄せてきた。

 

「立香くんは何か好みの趣向とかある?」

「へ?」

 

粋怜の言っている事が分からずポカンとしてしまう。呆けた声も出てしまった。

 

「え、もしかしてこのまま何もしないで宿に帰るつもりだったの?」

「いや、だってさっき解散だって…え?」

 

頭の上にハテナマークがポコポコ出てくる。粋怜の言っている事がまったく分からない。

 

「忘れたの?」

「えーっと、何をですか?」

「立香くんが賭博勝負で勝った報酬」

 

賭博勝負で勝った報酬。

狒々に勝って得た報酬は麻薬についてと元締めの浮雲に会わせる事であったはずだ。

 

「やっぱり忘れてる。あと1つあるでしょ」

「あと1つ………あ」

「思い出したみたいね。あと1つの報酬は私を好きにしていいってやつ」

 

狒々は賭けの報酬として粋怜の身体を求め、勝利した事でその権利を手にした。しかし藤丸立香が狒々を賭博勝負で負かした事で、その権利を剥奪したのだ。

結果、粋怜を好きにしていい権利は藤丸立香の物になっているのだ。

 

「え、いや。確かに狒々に勝って権利を手にしたけど…」

 

粋怜を助ける為に狒々と勝負した。粋怜の身体を好き勝手したいが為に勝負したわけではない。

 

「立香くんには賭博勝負で助けてもらったし、鬼退治では力を貸してもらったしね。報酬とお礼も兼ねてよ」

 

蠱惑な笑みを浮かべる粋怜にドキリとしてしまう。

何故いきなりそのような流れになるか分からない。まさかの切り込みであった為、藤丸立香の心臓がバクバクだ。

 

「で、でもそんな理由で」

「いいのよ。賭博の報酬は絶対だし、それに立香くんならいいかなって」

 

柔らかい感触が腕に伝わってくる。甘い香りが漂ってくる。

 

「どんな宿がいい?」

「どんなって…いや、その、別になんでも…え?」

 

頭の中が整理できていないので自分でも何を言っているのか分かっていない。

 

「なんでもいいって事はないでしょ?」

「す、粋怜と一緒なら…ど、どこでもいいかな?」

 

ろくに思考が追い付かなくて適当に返事をしてしまう。

 

「ふふ…そう。じゃあ、お姉さんに任せて」

 

粋怜に腕を引かれるがまま、夜の街に消えていく。

 

「綺麗な部屋ね。奮発した甲斐があったわ。ま、ここの払いはお姉さんがするから」

(あれ…何でオレはこんな所にいるんだろう?)

 

気が付けば2人は雰囲気のある部屋に居た。

2人で入ったのは一軒の逢引き宿。現代で言うならばラブホテル。

 

(ここで…今から。え?)

 

今だに思考が追い付かない。

 

「あははっ、何よ立香くんってば。もしかして怖気ついちゃったのかな?」

「いや、だっていきなり…ええと?」

 

頭の中が真っ白の藤丸立香。横にいるのは美人のお姉さんで呉の両翼の将である粋怜。

未だに現実感があまりない。

 

「遠慮しなくていいわよ。ね」

「遠慮しなくていいって、そんな事言われても…」

「さあ、おいで…」

 

粋怜は自分からベッドの上で仰向けに寝そべった。そして衣服をはだけ、手招きしながら両足を広げた。

 

「怖がらなくていいわよ。お姉さんが優しく手ほどきしてあげるから」

 

ここにいるのは男と女。そして2人がいる場所で何をするかは決まっている。

彼女を意識してしまいゴクっと小さく喉を鳴らしてしまった。

 

「ふふふっ、なーんてね。失礼だったかしら。立香くんも初めてってわけじゃないでしょうし」

「んぐぅ」

 

ここで「ど、どど、童貞ちゃうわ」って言えば雰囲気をぶち壊せたかもしれない。

 

「ほら、もっとこっちにおいで。お姉さんの身体…ジッと見ていいのよ?」

 

粋怜は更に着衣を乱す。

普段の数倍は艶っぽく、大人の色香を漂わせる粋怜がそこにいる。

 

「ふふふ…どう? 立香くんに見られてるせいかしら…火照ってしょうがないの」

 

熟れた肢体をくねらせながら、盛んに挑発してくる。

ユサリと柔らかい双山が揺れた。下半身に伸ばした手はショーツをスルスルと脱がしていく。

 

「ふふふ。恥ずかしいけど、立香くんになら見せてあげる」

 

顔が熱くなる。自分の心臓の音が聞こえる。

 

「……狒々に負けた時は覚悟を決めたわ」

「え?」

「あんな奴に抱かれるかと思ったらゾっとしたわ。でも負けた私が悪い。どんな世でも勝った者が全てだから」

 

勝った者が全てを得る。負けた者は失う。世の理である。

 

「だからあの時、立香くんが助けてくれて本当に助かったわ」

 

今でも彼女の記憶に残っている。

 

「最初は立香くんが勝てるか不安だったのよ。だって、立香くんって賭博とか弱そうだし。でも勝った……カッコよかったわよ」

「イカサマで勝っただけですけどね」

「それでもよ」

 

イカサマであろうとも狒々に賭博勝負で勝った時の姿は本当にカッコよかったのだ。粋怜の言葉に嘘は無い。

久方ぶりにカッコイイ強い男性を見た。そして自分を助けてくれた。だからかもしれないが藤丸立香ならイイと思ってしまった。

賭博の報酬、天の御遣いの役目、粋怜がその気になった。色々と要素が重なった結果、今の現状になっている。

 

「立香くんが欲しい」

 

ズドンと心臓を貫く言葉であった。

藤丸立香は考える。ここで自分は何をすべきが正解なのか。

粋怜は冗談でも裏で何かあるわけでもなく本気であった。鈍感である藤丸立香でも流石に分かる。

まるでハーレム主人公みたいに藤丸立香は結構多くの人から好意を抱かれている。本気の者だっている。しかし今の状況みたいに本気の本気という思いをぶつけられた事は少ない。

尤も「本気の本気をぶつけて良いの?」って言ってくる者がいるかもしれない。その場合は本当に正妻戦争が起きそうである。

 

「立香くん」

 

本気の本気には誠意をもって受け答えをしなければならない。

 

「粋怜」

 

藤丸立香が粋怜の元へと足を歩める。

 

「何をしておる」

「「え?」」

 

2人だけの空間のはずなのに第3者の声が響いた。そして藤丸立香の視点がぐるりと回る。

 

「え?」

 

藤丸立香は気が付けば縛られ、床に転がっていた。

 

「マスターと粋怜がいなくなっていたと思っていたらこんな所に…まったく油断も隙も無い」

「ぶ、武則天…?」

 

第3者の声とは武則天である。

 

「ふんっ、ふんっ」

「痛い痛いっ。鞭で叩かないで!?」

 

ピシパシと藤丸立香を鞭で叩く武則天。パチンと指を鳴らすと酷吏が3人召喚された。

 

「運ぶぞー」

「「おー」」

 

3人の酷吏は藤丸立香を抱える。

 

「……聖神皇帝サマ。オレはこれからどうなるのでしょうか?」

「オシオキじゃ」

「え、何で?」

 

タラリと汗が垂れる。

 

「……鞭打ちですか?」

「違う」

「……水責め?」

「違う」

「……毒?」

「毒は効かんじゃろ」

「…………も、もしかしてフルコースです?」

 

ニパっと笑う武則天。それが答えであった。

えっほえっほと酷吏たちに運ばれる藤丸立香を見てクスリと笑ったのは粋怜。

 

「あーあ、邪魔されちゃった」

 

上手くいかなかったり、面白かったりする事が起こるのが人生だ。

 

 

603

 

 

コポコポと音を立ててお茶を淹れる。ズズズっと啜る音を立ててお茶を飲む。

「ふう」と息をついてホっとするは于吉。

 

「おかえり浮雲」

「はっー……疲れた」

「どうやら指示通りに動いたようですね」

「何で死んだふりなんてしなきゃいけないんですか。せっかく色々と準備を進めていたのに」

 

浮雲は賭博場で狒々鬼に食われたはずだった。しかし于吉の目の前でピンピンしていた。

 

「君の出番はもう少し先にしようと思ってね」

「もう少し先って…いつですか」

「そうですねえ。呉と魏が衝突した後くらい」

「魏と呉が近いうちに戦争するって事ですか。もぐ」

 

浮雲が皿に置いてあったあんまんにかぶりつく。

 

「ええ。恐らく流れ的にあの結果になると思います。その時の呉はこれでもかってくらいに精神がまいっているんですよねえ」

「そうなんですか?」

「ええ。そんな精神状態の呉に君の能力が合わされば徹底的に潰せるでしょう」

「ふーん。呉が負けるって事ですか」

「あの結果は……痛み分けですかねえ」

 

浮雲はいまいち信じられない。

妖魔の力を与えてくれた于吉はまるで未来が分かるように話す。

 

(実際に未来が分かるんだろうな于吉さんは。ほんっと凄い妖術師だよ)

 

そもそも五胡にいる女神の存在が信じられないほどだ。だからこそ浮雲は勝ち組にいると思っている。

三国なんかよりも圧倒的な勢力にいるのだから。

 

「それにしてもあの薬も凄いですね。人間を鬼にするなんて。アレも于吉さんが作ったんですか?」

「いえ、アレは私が作ったわけじゃないですよ。あれは仕入れたんです。あの方から」

(あの方って…あいつか?)

「それよりよく鬼たちを作ってくれました。全て飛燕に渡しましたよ」

「それですよ。せっかくボクの矛になるはずだったのに。全部、飛燕にあげちゃうなんて」

「ははは。魏を潰すためですよ」

 

愉快そうに笑う于吉。

 

「魏を潰したらボクの出番無くないですか。さっき言ってた魏と呉の戦争すらなくなるんじゃないですか?」

 

八傑衆の飛燕は魏を潰す任務を担っている。しかし于吉は未来で魏と呉が戦争すると言っている。

そうなると飛燕の任務が失敗すると言っているようなものだ。

 

「違いますよ。さっきのはもしも飛燕が任務を失敗した場合の話をしていたんです。飛燕が魏を潰してくれたら万々歳です」

「そ、そうですか」

「まあ、飛燕が魏を潰すと言っていましたが…彼の目的は国ではなく曹操ただ1人です」

 

パクリとあんまんを食べる。

 

「魏は曹操という中核で成り立っているようなものです。なので曹操を殺せば魏は勝手に滅ぶでしょう」

「しかし曹操の跡を継ぐ者はいると思いますよ。例えば夏侯惇とか」

「それこそ狙い通りですよ。きっと曹操の夢を叶えるために呉か蜀を攻めるはずです」

「なるほど。結局のところ魏と呉の戦争は起こると」

「はい」

 

ニコニコ顔の于吉。

 

「さぁて。今後がどうなるか気になりますね」

 




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新は2週間後予定です。


これにて賭博編は終了です。
次回は日常編にまた戻ります。そして日常編が終われば『彼女』の再登場です。
漢中で暴れまわった2人のうちの1人が。


600
2体の鬼との決着。
作戦と言っていいか分かりませんが、速攻必殺でした。

燕青と李書文(殺)の宝具を出そうと思いましたが今回は見送りです。
2人の宝具はまた今度。

祭と明命の天下統一伝技。
『矢毒・戦陣雨』と『煙幕幻弾』。
概念礼装と武則天の宝具を掛け合わせて放った形にしました。
調べましたら両方とも毒の付与があるようです。なので武則天の宝具と掛け合わせてみました。
でも、明命の方は強引過ぎたかなぁ。

思春の『残影撃』は前回出しましたね。
更に出したのが粋怜の『蛇矛円斬』。これに関してはまだ完成形の技じゃない形にしてます。
本来の『蛇矛円斬』はまた今度です。


601
賭博場の後日談。というか冥琳に報告。
鬼退治後は一般客を保護。従業員を捕縛し、事情聴取。賭博場内の捜索。
魔薬は見つからず、鬼になった人間たちは行方不明。
その答えは八傑衆(魏)編にて。


602
タイトルにあった「勝った報酬」の部分です。
藤丸立香×粋怜の未遂でした。

粋怜の大人のお姉さんという魅力でドキドキ。

もしかして…ってなるかと思ったら案の定。
定番というか王道のオチ。

オチにまたジョ〇ョの第3部ネタ。
公式のFGOでもジョ〇ョネタはありましたからねえ。
「殺生院」
「イバラギン」

603
実は死んだふりしていた浮雲。
彼の本当の活躍は2国の戦争後です。于吉が言っていた呉がこれでもかってくらい精神がまいっている状態…呉ルートをプレイしている人なら分かりますね。

これにて八傑衆(呉)?編は終了です。

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