Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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連続更新です。
今回も日常編…ですけどちょっといつもとは違う。
具体的には135話みたいなもの。

はい。またカップリングの話を書いてみました。

またも賛否両論があるかもしれません。
これは違う、解釈違いだ!! と思う読者もいるかもしれません。

なので、なんでもドンと来い!!という方推奨的な感じです。

色々と含め、それでも大丈夫というなら本編をどうぞ。
(まあ、そこまで深い感じではないと思います)


孫呉の日常9-大胆な行動-

606

 

 

「雷火さん。こっちのまとめ終わりました」

 

書類整理の手伝いをしてくれと呼び出された藤丸立香。

テキパキと書類をまとめて雷火に渡していく。

 

「助かる。今度はこっちを頼む」

「まだまだたくさんあるなぁ」

 

藤丸立香がやっている手伝いは雷火が確認を終えた書類を時期や自柄毎に分別、整理する。いわゆるファイリングだ。

書類それぞれの内容を確認し、間違いが無いように整理していくのはカルデアでもこなしている。藤丸立香も特異点に行き解決するだけが仕事ではない。

特異点解決後はレポートを作成したりと色々とやっているのだ。

 

「ふむ。少しは立香も使えるな」

「少し。評価が厳しー」

「そら、口ではなく手を動かせ。そんなでは終わる仕事も終わらぬぞ」

「はーい」

「っと、そろそろ時間か」

 

雷火は筆を走らせるのを止め、おもむろに立ち上がった。

 

「なにか用事ですか?」

「ああ。午後からシャオ様に少し呼び出されておってな。それもあっておぬしを手伝いに呼んだのじゃ」

 

積極性の孫呉の末娘。招集がかかれば雷火もすぐに馳せ参じる。

 

「わしが戻るまでやっておけとは言わぬ。出来る範囲で進めておいてくれ」

「了解です」

 

雷火は大きく頷いて、そのまま部屋の外に出ていく。

呼ばれた理由は何かと考えながら足を進め、小蓮のいる部屋に到着。

 

「シャオ様。失礼いたします…む?」

 

部屋に居るは祭と粋怜であった。

 

「お主らどうしたのじゃ?」

「訓練を終えて食事をとっておったら小蓮様から会議をするから来てくれと言われてのう」

「ご相伴にあずかってた私もお呼ばれしたってわけ」

 

祭が会議と言った。小蓮は何の会議が気になるところである。

 

「なるほど、わしの他に祭と粋怜とは。一体どういう用件じゃろうか」

「ちょっと謎よね。あ、雷火先生も急に呼ばれたんですか?」

「いや、わしは昨日、時間をとってほしいと頼まれての」

「雷火に相談するついでに儂らも呼ばれたわけか。ううむ、いまいち話が見えてこないのう」

「まあでも、シャオ様の相談だし、可愛らしい用件じゃない?」

 

孫呉の末娘の相談事。イメージ的には粋怜の言う通り可愛い相談かもしれない。

可愛い相談で孫呉の重鎮3人を呼び出すのも小蓮くらいしか出来ない。

 

「いやいや、わしらが思いもしないようなことを言い出されるに違いない」

「おまたせー」

 

件の小蓮が丁度帰ってくる。

 

「ごめんごめん。ちょっと偵察してたら遅くなっちゃってー」

「いえいえ、わしも先ほど参ったばかりで……偵察とは?」

「ふふん、それが今日みんなに集まってもらった議題なんだよね」

 

何処で何を偵察していたか気になるが、これから会議もとい相談が始まるのだからすぐに分かるはずだ。

 

「もったいぶらずに何を偵察してたのか教えてくださいよシャオ様」

「あのね、立香のことを偵察してたの」

「「「立香(くん)を?」」」

 

まさか藤丸立香が議題に出るとは予想外と思ったが、そうでもないようなとも思った3人。

 

「そ。今日の話は立香に聞かれたら困るからね。でもでも立香ってばどこにもいなかったんだよね。姉様か誰かと出かけているのかな?」

「立香ならばわしの部屋で書類の整理を手伝わせておりますが」

 

つい先ほどまで一緒にいた雷火の証言に嘘は無い。

 

「なーんだ、雷火のところにいたんだ。って、じゃあ雷火はさっきまで立香と二人きりだったの!?」

「え、えぇ。まあ」

 

食い気味の小蓮にちょいと圧されてしまう。

 

「むーっ、雷火にまで先を越されるなんてー!!」

「小蓮様、もしや儂らをお呼びになった理由は立香のことですかな?」

「確認するまでもないと思うのだけど、そうでしょうね」

 

確実に藤丸立香の事しかない。しかし彼の何について話し合うかまでは分からない。

 

「で、何をお聞きになりたいので?」

「あのね、3人にはちょっと知恵を貸して欲しいだけ。ほら、立香の血を孫呉に入れるって話でしょ?」

 

藤丸立香が天の御遣いとして建業に現れ、炎蓮がどのように孫呉へ組み込むかと考えた時に「天の血」と孫呉に入れると決めたものだ。

全ては孫呉が強くなるためのもの。孫呉に天の血が入ったとなれば拍が付き、何処も無視できないものになる。

 

「でね、シャオも立香をゆーわくしてるんだけど」

「ぶふぉっ!?」

 

雷火が吹いた。

 

「それでこそ孫家の女ですな。して、首尾は?」

「正直、イマイチな感じだったんだよね。可愛いって言ってくれるんだけど、なーんか遠慮されてるってゆーか~」

(あー、確かに立香くん、いきなり押せ押せで来られると手は出さなそう。てか、なんか慣れてる感があるのよね)

 

粋怜は知らないのはしょうがないがカルデアには押せ押せというよりもプライベートもへったくれもない以上にガンガン攻めてる者たちがいる。

 

(さては小蓮様の剣幕に押されて勃つものも勃たんかったか?)

 

勃つも何も藤丸立香にとって小蓮はそういう対象に見ていない。小悪魔系的な可愛い女の子と認識している。

 

「これじゃあ姉様たちにどんどん先を越されてシャオは相手してもらえなくなっちゃうでしょ。やっぱり、そういうのは孫家のためにならないと思うんだよね」

「確かにそれはもっともでありますな。種は多ければ多いほど、孫家の安寧にも繋がりましょう」

「何が起こるか分からない世の中だしね」

 

血を途絶えてさせてはいけない。現代でも大事にされているが過去の時代はより大事にされていた。

 

「ま、まぁ言わんとすることはわかりますが…して、我々はどのような知恵を授ければ?」

「んとね、シャオも考えたんだけど…じっくりと立香と距離を詰めていくのが大事なのかもって思ったの」

「あ~、いわゆる節度あるお付き合いってやつね」

 

節度は大事。

 

「そうそう。だから雷火たちにはどういうやり方がいいかを一緒に考えて欲しいわけ」

「なるほど事情は承知いたしましたぞ。しかし、なぜ我らなのです?」

「だって3人ともシャオよりずっと長生きしてるでしょ。だったら男の子と仲良くなる方法も知ってるだろうなって」

 

人生の先輩から教えを乞うのは悪い事ではない。

 

「「「………」」」

 

何故か急に黙った3人。

 

「どしたの?」

「いいえ、なんでもありませんよシャオ様。えーっと、ここは年長者の顔を立てようと思います。祭か雷火先生、お先にどうぞ」

「うーむ、儂はいまいちそういう機微には疎いからのう。内政の専門家にして人心掌握に秀でた雷火の意見をまずは聞きたいところじゃの」

「き、貴様ら…」

 

粋怜と祭は雷火の逃げ場を無くす。

 

「雷火の男の子攻略法は確かに気になる。じゃあ雷火からよろしくね」

「ぬ、ぬぬぬ」

「ほれ、唸ってばかりおらんで儂らにも男子をいかにして手玉にとるか早く教えてくれんか?」

 

ニヤニヤと笑っている祭。

 

「調子に乗りおって…。えぇと、その、ま、まずはやはり食事に誘うとかではないじゃろうか」

「確かに男子を落とす上では王道な攻め方じゃのう」

「ふむふむ、まあよく聞くよね。まずはご飯からって。それから?」

「それからですか。まぁ、美味しい食事の席であれば会話も弾むでしょうし、お互いの趣味や嗜好を確かめまして相性が良さそうであれば次回、また次回と食事の回数を重ねてお互いに、その…し、心理的な障害がないことがはっきりしたならば正式に交際の取り決めを」

「要は一緒にご飯を食べて仲良くなってから子作りするってこと?」

 

咳き込む雷火。シンプルに略すとそうなるのだが、それでもシンプルすぎて何か違う気がする。

 

「こ、子作りの話なぞわしは一言もしておりませぬっ。申し上げているのはあくまでその前段階の交際をするかどうかであり…」

「つまり、付き合う前から子作りなんてあり得ないってことね?」

「当然じゃ」

「うーん、確かに立香もそんな感じのこと言ってたけど…それに一緒にご飯はもうやったんだよね。もっと早く進める方法とかないかなー。のんびりしてたら姉様とかみんなに取られちゃうよ」

「ふふふ、ならば儂の男子の落とし方をお教えしましょうぞ」

 

2番手は祭。

 

「お、さすがは祭。立香くんを落とすなんて赤子の手を捻るようなものって感じかしら?」

「はははは、粋怜あまりおだてるでない。よいですか小蓮様。男子と距離を詰めるとっておきの方法とは」

「方法とは?」

「共に酒を酌み交わすこと以外にありませぬ!!」

「わしの言うておることと大差ないではないか!!」

 

酒を飲むのと食事をするというのは確かに同じである。

 

「いいや、儂のやり方はひと味違う。酒を酌み交わし続けるのじゃ」

「その落とすって別の落とし方じゃないかしら?」

「何を言うか。酒の一舐めで酔いが回るようでは孫家の婿などとても務まらんわ。互いに限界を超えるまで飲み続け、右も左も分からなくなった頃、どちらともなく閨に相手を誘い入れ…」

 

祭の言っているのは何か違う。酔って判断がおぼつかないところを狙う送り狼のやり方だ。

 

「馬鹿者。シャオ様のお年を考えろ。いくつの発想だそれは。もう少しまっとうなやり方を提案できぬのか」

「なんじゃと。雷火の方こそ、蓋を開けてみれば食事の回を重ねてなどと今日日、街の生娘でもそんなことは言い出さぬぞ」

「な、なにぃ!?」

 

バチっと火花が迸る。

 

「ちょ、ちょっと祭も雷火もケンカしないで。もう、じゃあ粋怜は何か良い考えある?」

「私ですか…私の考え、というような立派なものではないのですけれど、そもそも祭も雷火先生も少々シャオ様とは年が離れすぎております。2人が恋路に燃えたのは一昔前…否が応でも時代は進むものではないかと」

「お主、今もの凄く失礼なことをサラリと言わなかったか?」

「それは私も同じ事…シャオ様はもう少し、年の近い者にお聞きになる方が良いのではないかと思います。立香くんも今どきの男の子。我々のやり方が通じない可能性は大いにあり得るのではないかと」

「…確かに粋怜の言う事には一理あるかもしれんのう」

「しかし、小蓮様の年に近い我が軍の将というと、あまり思いつかんのう」

「年が近い人っていうと、思春とか明命、姉様とか…てか、そもそも姉様はあんまりアテにならないし、思春は恋愛なんてって感じだし、明命は…うん」

 

小蓮にとって明命は戦力外らしい。彼女の頭の中にいる明命が「ガーン!?」って言った。

 

「ふふ、シャオ様1人お忘れではないですか。まだ若く、魅力に溢れ、男を手玉に取るなど造作もなさそうな将のことを」

「雷火、そのような者はいたかのう。儂にはさっぱり思い当たらんのじゃが」

「わしにも思い当たらぬな。若いとなるとあとは梨晏くらいだが」

「あーーっ、確かに。梨晏なら今どきの男の子の攻略法たくさん知ってそう」

 

この瞬間、梨晏のとばっちりが確定した瞬間であった。

 

「でしょう。ですので我らのような年寄りでなく、イケイケな梨晏ならばより有益な助言が得られるではないかと。ねえ祭、雷火先生」

「イケイケ…まあ、確かに梨晏はイケイケではあるな。うむ」

「しかもあの派手な格好…儂ほどではないにせよ、はち切れんばかりの肢体も併せて幾人もの男を手玉にとってきたんじゃろうなあ」

「きっと梨晏なら若い男の心を思うがままに操る術を熟知しているはずです。確か今日は非番ですし、部屋を訪ねてみてはいかがでしょう?」

「ほんと、じゃあ梨晏にちょっと話聞いてくる。3人ともわざわざ時間とってくれてありがとうね!!」

 

早速、部屋から走り出した小蓮。

 

「よーし、これで立香をろーらくしちゃうんだから!!」

 

彼女の気合の入りようが木霊した気がした。

 

「行ってしまわれたな」

「粋怜、お主も悪よのう」

「えー、なんのことかしら。私はホントのことしか言ってないでしょう?」

 

ケラケラと軽く笑う粋怜であった。

 

「とぼけた奴め。ところで、前に立香と良いところまでいったと聞いたんじゃがそこはどうなんじゃ。てか、それを話せば良かったんではないか?」

「む、それは初耳じゃな」

「こやつ、前に立香と逢引き宿に入ったそうでな」

「なに!?」

 

雷火はどうやら知らなかったようだ。

 

「まあ、その時は邪魔が入っちゃったから結局なにも無かったのよねー」

 

もしも邪魔が入っていなかったらどうなっていたか。本当に男女の営みに発展していたかもしれない。

 

「もう過ぎた事だしね。でも立香くんが女の子に興味がないって事は無いみたいよ。私に欲情はしてたっぽいし」

「ほっほーう」

「私に欲情するって事は年上も全然大丈夫。祭もイケるでしょ。雷火先生もイケるんじゃない?」

「な、何を言っておるか!!」

「雷火も初心じゃのう」

 

取り合えず3人の中で藤丸立香は年上も大丈夫だと分かった瞬間である。

 

「熟女もイケるのか立香は。いや、わしはまだ熟女ではないが」

「え?」

「おい粋怜」

 

ジロリと睨む。

 

「それはともかくとしてわしはまだ粋怜の男の落とし方をまだ聞いておらぬのだが?」

「そうじゃった。儂らだけに話させておいて、よもや自分だけ手の内を晒さぬつもりはないじゃろうな?」

「うふふ、そのつもりよ。だってこの先2人と相手が競合しないとも限らないでしょ?」

 

既に一歩リードしてなくもない。

 

「「なにっ!?」」

「あ、私、冥琳に用事があったんだった。じゃ、これで失礼するわね~」

 

ヒラヒラリと部屋から出ていく粋怜であった。

 

「待てい。卑怯者!!」

「そうだ、わしらにだけ恥をかかせおって、この恨みは末代まで忘れぬからな!!」

 

 

607

 

 

腕を真上に上げてぐぅんと背伸びをする。

 

「う~ん。非番ってもなー、こうやることないと身体が訛ってしょうがないなー。立香あたりご飯にでも誘ってこよっかなー」

 

非番とは休み。何をするかは人それぞれで趣味に時間を割く者もいれば、ゴロゴロとぐうたら過ごすのもまた良し。

 

「梨晏~。今、部屋にいる~?」

 

コンコンとノックする音が響く。声からして小蓮である。

 

「シャオちゃん。うん、いるけど。どーしたのー?」

「あのね、ちょっと梨晏に相談したいことがあって、時間だいじょうぶ?」

「私に相談…もちろんいいよ。今開けるねー」

 

扉を開けると可愛い孫呉の末娘がちょこんと居た。

 

「梨晏、せっかくの非番なのにごめんね」

「ああ、気にしないで。暇で暇でしょうがなかったから立香でも誘ってご飯行こうかなって思ってたくらいだしね」

 

暇な時に丁度、小蓮が来てくれた。本当に悪いとは全く思っていない。

 

「おお、さすがイケイケ!!」

「へ?」

 

いきなり「イケイケ」と言われて首を傾けてしまう。何が「イケイケ」なのか分からない。

 

「あ、んとね、梨晏に男の子の落とし方を教えてもらおうと思って来たの」

「お、落とす…それはあれかい、城壁からとか、屋根の上からとか?」

 

小蓮の言っている事が分かっていながらもとぼけて見せる梨晏。

 

「んもー、梨晏ったらとぼけちゃって。れ・ん・あ・いの落とすだよ」

「あ、あー、そっち、そっちのことだね。あはは…でも、なんでそれを私に?」

 

まさか小蓮から恋愛相談されるとは予想外。正直に言ってしまうと梨晏は恋愛事は苦手である。

苦手というか経験が皆無なので、そういう話が出来ないだけである。恋愛に興味が無いわけではない。

 

「ふぇ、だって梨晏、男の子を手玉に取るなんてお手の物でしょ?」

「へっ?」

「粋怜たちがイケイケの梨晏なら若い男の心を思うがままに操れるって言ってたよ」

(あんの宿老どもめぇぇ)

 

すぐになぜ自分がこのような状況に置かれているか理解出来た。

 

「い、いやー…そんなの買いかぶりすぎだよー」

「そんなことないよ。梨晏ってすっごくオシャレだし、色気ムンムンだし、服なんていっつも攻め攻めだし!!」

(おおう…まさかのベタ褒め)

「シャオが男の子だったらメロメロだよ。それにさっきもさらっと立香とご飯に行こうとかしてたし、そこら辺もできる女って感じだよね」

 

梨晏のよく分からないところで小蓮からの評価が爆上がりであった。

 

「そ、それは…どうなんだろうな。ていうか私、そんなに攻め攻めかな?」

「もーおー。焦らさないでシャオにも教えて。もうシャオには梨晏しか頼れる人がいないの!!」

 

頼られるのは嬉しいが専門外の事を頼られるのはどうしようもできない。

 

(ど、どうしよう。そんなこと言われても私が教えられることなんて…)

 

キラキラの目を向けられる。

 

(だめだっ。このキラキラした眼には逆らえない!?)

 

純粋無垢なキラキラの目。大人はそういう小さい子供の訴えを逆らえない。

逆らっても罪悪感が凄い。

 

「う、うん、わかった。普段はそういう相談は乗らないんだけど今日はシャオちゃんにだけ特別にね」

「わーい、ありがとう梨晏」

 

ここで本音を言えば良かったのだが梨晏はつい小蓮を落胆させたくなくて見栄を張った。

 

「じゃ、じゃあ長くなりそうだし、取り合えず座ろっか。ちょうど買い置きのお菓子もあるからついでに食べちゃおう」

「わーい。梨晏、ありがとー!!」

 

小蓮に見栄がバレないように梨晏は相談を受けるのであった。

 

「ーーーで、そういうわけで立香が全然相手にしてくれないんだよね~…ぽりぽり」

「ふんふん、なるほどね」

「でもね、シャオ的には可愛さはもう十分だと思ってるの。おっぱいとかお尻はみんなにはなかなか勝てないけど、それ抜きにしてもね」

「うんうん、確かにシャオちゃんは可愛いね」

 

小蓮が可愛いのは嘘ではなく、誰もが彼女を美少女だと言うはず。

より成長すれば美人になるのは確定コースだ。

 

「でしょー。だから、やっぱりどうやって立香を落とすかって話になるんだよね」

「ん…んうー、そうだね」

 

藤丸立香をどうやって恋に落とすか。意外にも難しい議題だ。

 

「それで梨晏に聞きたいんだけど…やっぱりシャオももうちょっと色っぽくした方がいいかな?」

「い、色っぽく!?」

 

小蓮は色気よりも可愛さ重視だと思われる。

 

「確かにシャオのおっぱいはちっちゃいよ。でも、もっとこう、梨晏みたいにおっぱいとかざっくり見せる様に…」

「い、いやいやいや。それはシャオちゃんにはちょっと早いんじゃないかな!?」

 

小蓮が梨晏の似たような服を着るのは残念のようなマズイような。

そもそも梨晏としては自分の服がそんなに攻めているのかと予想外と思ってしまう。

 

「えー、そんなことないよ。私だってすぐに姉様や梨晏に負けないくらいバインバインになるんだから、今からその予行演習するの」

 

遺伝的にいずれ大きくなるのは想像できる。

 

「シャオちゃんが本当にそうなってから存分におっぱい見せればいいと思う。絶対その方がいい。ほら、今から見せちゃうとさ、ありがたみがなくなっちゃうと思わない?」

「ありがたみ…あ、確かに。見せる時はここぞの方がいいってことだよね!!」

「あー…そ、そうそう。そういうことなんだよ。男との駆け引きってやつだね!!」

 

駆け引きかどうか不明なところだ。

 

「なるほど…さすが梨晏、すっごく勉強になるね。じゃあ私もここぞって時に向けて毎日綺麗にしておかないと」

「え、えーっとさ、シャオちゃんは立香とは最終的にどうしたいのかな?」

「それはもちろん赤ちゃんを作るんだよ?」

「ぶふぇ!?」

 

吹きだす梨晏。

 

「どしたの?」

「い、いや、なんでもないよ。そっかぁ、赤ちゃんかぁ…」

「う~ん、じゃあさ、梨晏はどうやったら私が立香と子作りできると思う?」

「どどど、どうって、あれをあれしてあれするしかないんじゃないかな!?」

 

まさかの答えにくい質問。

 

「んも~、梨晏ったら。シャオはそういうことを言ってるんじゃないの。シャオだってどうやって赤ちゃん作るかくらいはちゃんと知ってるよ」

「ええっ、知ってるのっ……じゃなかった。そうだよね~」

 

つい失礼な事を言い出しそうになった。小蓮も子供じゃないというのを認識してしまう。

 

「変な梨晏。それでシャオ的には今の状況からどうやって立香とそういう方向にいくかってのが分からないんだよね」

「ふ、ふ~ん。そういう方向で…」

「で、そこで梨晏の出番ってわけ。ねえねえ、どうしたらいいと思う?」

 

その出番というのが勘弁してもらいたい部分だ。

 

「そ、そうだなぁ。やっぱり実際に距離を詰めていったりするといいんじゃないかな」

「実際の距離ってどういうこと!?」

「ええっ、いや、まずはこう、手を繋いだりとか」

 

実際の距離というか物理的な距離であった。

 

「うんうん。それで?」

「そ、それで?」

「梨晏のことだから、ただ手を繋ぐだけじゃないでしょ?」

(わ、私をなんだと思ってるんだろう)

 

恋愛マスター的な存在だと思われている。

 

「あ~えっと、えっと。そ、そう。ちょっとこう腕を巻き付けて、む、胸とか当てちゃったりしたりして…」

「うわぁ~大胆~。間違いなくどんな男の子もイチコロだね」

 

確かに女性に耐性のない男性だったらイチコロかもしれない。

 

「そ、そうなんだよ~。あっはっは~」

「それで、他には!?」

(他にも!?)

 

まだまだ終わらない質問責め。

 

「あー、そうだねえ。こうやってさ、さらに寄せて耳元でふーとかしたりみたりして…」

「おぉ~~なんかすっごくやらしい。オトナって感じ!!」

(や、やらしいのかな)

 

やらしいらしい。

 

「こ、これだけやられたらどんな男の子でもコロっていくね。間違いない!!」

「そ~れ~で?」

(え、まさかまだあるの!?)

「次はいよいよ」

「い、いいや。急いては事を仕損じる。次は…ちゅ、ちゅーだね」

「へ~~。ここでちゅーなんだ」

「そ、そう。何事も順番が大事だからね。あとはもうシャオちゃんなら分かるんじゃないかな」

 

流石にこれ以上の質問攻めはボロが出そうである。

 

「なるほど~。急いては事を仕損じるかあ。梨晏も言われるとなんだかすごく深いなあ」

「ふ、深いかな?」

「うん。梨晏に言われないとそういうことまでは全然気が回らなかったと思う」

 

どうにか色々と納得してもらえたようである。質問責めもなんとか峠を越したのか心の中でホッとする。

 

「シャオちゃんの役に立てたみたいで良かった」

「うん、本当にありがとう。早速実践してくるよ!!」

「さ、早速!?」

 

積極性と行動力の塊。

 

「もたもたしてたら誰かに先をこされちゃうかもしれないでしょ。立香~待ってなさいよ~」

「あ、ちょ、ちょっと、シャオちゃん、私も行くから待ってー!!」

 

実は相談なんて必要なくて小蓮の才能だけで大丈夫だったのではないかと思う梨晏であった。

 

 

608

 

 

窓から夕陽が差し掛かる。

 

「終わったー」

 

ようやく書類との格闘が終了する。

雷火が中座してから戻ってくるの間では全て終わらなかった。結局作業が終了するのに夕方まで掛かってしまったのだ。

整理した書類の束を雷火へ渡すと彼女は中に目を通して、うんうんと頷いた。

 

「うむ…まあ良いじゃろう。許容範囲内じゃな」

「よし」

 

夕方に仕事が終わる。定時終わりとは素晴らしいものだ。

 

「後はわしが確認がてらもう一度整理しておこう。その前に食事にするかの。何か望みはあるか?」

「そうですね。じゃあ一緒にご飯食べにいきましょうよ」

「え……いやいや、これはあくまで褒美をやるだけ。そういった気持ちは全く。いや、ほんとに全く…」

「雷火さんどうしたの?」

「い、いや、なんでもない。まあ、あまり高いものでなければ奢ってやろう。働きには報いなければな」

 

奢ってくれるのは嬉しいものだ。

 

「雷火ー、立香ーいるー!!」

「シャオ様!?」

 

扉の外から小蓮の声が聞こえてくる。

 

「ごめんごめん、今取り込み中だったりする?」

「あれ、梨晏の声も」

 

更には梨晏の声も聞こえてきた。彼女の声を聞いた瞬間に「ヤベッ」みたいな顔をする雷火。

 

「そうそう、一緒にご飯でもどうかなーって」

「だってさ。雷火さんちょうどいいし、2人と一緒に行きましょうか」

みんなでワイワイ食べるのもまた良し。

「…今日は遠慮しておこう。食事はまた後日、新たな仕事をこなしてからという事で」

「そうですか?」

 

急にどうしたのかと思うのは当然だ。もしかしなくても小蓮との会議に何かあったのか。

 

「もっと大きな仕事をこなせということだ。今日はシャオ様と食事をしてくるといい」

「そっか、分かりました。じゃあ今日はお疲れ様です雷火さん」

「うむ。いやはや、今日は同行すればどのような報復を受けるか知れたものでは無いからな」

 

最後の方はボソボソと呟いていたが小さくて聞き取れなかった。

 

「お待たせ」

 

部屋を出ると小蓮と梨晏が待っていた。

 

「ううん、待ってないよ。あれ雷火は?」

「なんか今日は遠慮するって」

「…逃げられたか」

「ん?」

 

梨晏も雷火と同じようにボソリと何か呟いていたが小さくて聞き取れなかった。

 

「ああいや、何でもない何でもない。ま、無理に連れ出してもしょうがないし今日は3人で行こうか」

「うん。行こ行こ」

 

小蓮は元気よく腕にくっついて歩き出した。

 

(んー…シャオちゃんはああいう感じのままでいいと思うんだけどなー)

 

下手に作戦を考えて行動するよりも小蓮の思うままに行動するのが一番だと思う。

小蓮と藤丸立香の様子を見ながら梨晏はおすすめの飯屋に直行する。

 

「いいお店だね」

「でしょ。ここのお店美味しんだよ」

 

この店はメニューが豊富で一通りなんでも食べられるとの事。席に着くや否や小蓮は藤丸立香の隣に座って身体をしっかり密着させてくる。

 

「ねーねー、立香はどういうご飯が好み?」

「最近の好みは麻婆豆腐かな」

「なるほど麻婆豆腐なのね。じゃあ今度、美味しい麻婆豆腐のお店に行こうよ」

「これからご飯食べるのにもう次に行く予定を?」

「もちろん。立香が良ければね。立香はどうかな。シャオとご飯に行きたい?」

「もちろん」

「ほんと、やったー!!」

(私の方がシャオちゃんから学ぶことが多い気がするよ)

 

彼女の積極性を見て感心してしまう。既に次の予定を組み込んでいるのだから。

 

「梨晏はどうする。さっきからぼーっとしてるけど」

「ごめんごめん。なにを食べようか迷っちゃってね」

「むー…梨晏はそういう作戦なんだね」

(作戦?)

 

何故か食事には出てきそうにない言葉が出た。

 

「あ、じゃあじゃあ立香。シャオ、1人だとあんまりたくさん食べられないからちょっと手伝ってもらってもいーい?」

「いいよ。シャオは何を食べるんだ?」

「んとねー、炒飯に餃子でしょ。あと甘味でゴマ団子と杏仁豆腐も食べたいな!!」

 

あまりたくさん食べられないとは一体。今聞いたメニューはガッツリコースだ。

疑問に思いながらも彼女は育ち盛りだから今の量でも少ない方だと勝手に判断。

 

「シャオちゃんがそんなに頼むなら私もちょっともらってもいいかな?」

「いいよ。今日はいっぱい教えてもらったからね」

「そう言えば雷火さんも呼び出してたね。今日は会議でもあったの?」

「んふふー内緒。女の子には秘密がたくさんあった方がいいからね」

 

女の子には秘密がたくさん。それこそ男性には分からないような秘密だ。

 

「秘密か。っていうかシャオ」

「なになに、どしたの?」

「なんか近すぎないかな」

 

最初から密着していたが、気が付けばよりグイグイと密着してきている。

これだけ密着していると冬でもなければちょっと暑いくらいだ。

 

「そうかなー?」

 

するりと小蓮の小さな指が藤丸立香の手に絡みつく。いわゆる恋人繋ぎの様相を呈している。

梨晏が近くにいるというのに大胆な行動だ。

 

「あー、杏仁豆腐おいしそーだなー」

 

チラリと梨晏の方に視線を向けると棒読みな台詞を言って他人の振りをした。

 

(なぜ他人の振りした)

「立香ー、今は私と話してるでしょー」

「ごめんごめん。でもこんなにくっついたら食べにくいよ」

「シャオはそんなことないけどなー。ああでも…」

 

おもむろに胸元に手をやるとぱたぱたと風を送り始める。

 

「シャオちょっと熱くなってきちゃったかも~」

 

何か狙ってやっている感が出ている。

 

「じとー」

「どうしたの?」

 

小蓮は藤丸立香をジトーっと目で見つめながら上着の襟で風を送っている。

時たまなにか白いのがちらちら見えている。

 

「あれー立香ったらどうしたの~?」

「なんでもないよ。それよりも注文でも取ろうかーー」

「うふっ、隙あり」

 

いきなり耳元で「ふーっ」され、耳の中に生暖かい空気が入り込む。

 

「あわっ!?」

「ど、どうしたの立香!?」

「ちょっとびっくりしただけだよ。シャオいきなり驚かさないで」

 

こういう悪戯に耐性が無いわけではないが、驚くものは驚く。

 

「ごめんね立香…………あれぇ、おかしいな」

 

何故か予想していた反応ではなかったのか小蓮は首を傾けていた。

 

「うう、なんかお腹痛くなってきた」

 

何故か腹痛を感じる梨晏。

 

「大丈夫?」

「ああいや、風邪とかじゃないから気にしないで。ほんとに。って料理の注文まだしてなかったね。おーい店員さーん」

 

何だか様子のおかしい2人と食事をしていくのであった。

 

「美味しかったね。今日は誘ってくれてありがとうシャオ、梨晏」

「ううん、いいんだよ。立香が気に入ってくれたなら良かった。いやあ、1人だとなかなかこういうご飯処には足が向かなくてさー」

「やっぱりみんなでご飯食べると楽しいよね」

 

再びホールドさせる右腕。

 

「次は立香と2人きりでもいいかもなーって」

「次来る時はあんなに頼まない事。オレと梨晏がいなかったら完食できなかったんだから」

「でも、そういうのもみんなで来る楽しみだよね。ま、次はシャオちゃんのお願いを聞いて、2人で行ってあげてよ」

「り、梨晏~」

 

頼み過ぎて食べきれないから、みんなに手伝ってもらう。確かにそういう楽しみもある。

 

「そうだね。今度はシャオと2人だけで行こうか」

「え、ほんとなの。じゃあ次も一緒に行ってくれるの?」

「もちろん」

 

今度は小蓮とだけで食事するのも楽しみだ。

時間を取れるように予定をどう立てようかと考えた時に件の彼女の口から予想できなかった言葉が出た。

 

「じゃあ、ちゅーして」

「…はい?」

 

どさくさに紛れて何を言い出しているのか。

 

「いやいや、何で?」

「だってまたご飯食べに行ってくれてこれだけくっついても平気なんだからちゅーも大丈夫でしょ。梨晏と雷火が言ってたもん!!」

「それどんな理屈っ、ていうか梨晏と雷火さんが言っていた?」

 

逃げる梨晏。

 

「ほら梨晏も空気読んでくれてたんだよ。ちゅーくらいいいでしょ!!」

「いや、あれは空気を読んだんじゃなくて追及から逃げただけだよ絶対!!」

 

後日、捕まえて追及してやると心に決めた瞬間である。そして雷火も含まれる。

 

「そういう細かいことはいいから。ねえねえ~」

 

にじり寄ってくる小蓮。小悪魔スマイルで藤丸立香からのキスを期待している。

 

「シャオの唇はぷにぷにだよ~。絶対にちゅーしたら気持ちいいから」

 

とても子供が言いそうにない台詞を言っている。

 

(いや、クロエなら言うか?)

 

前にも思った事だが何処か小蓮はクロエと似ている気がする。

 

「そういう問題じゃありません。はい帰るよシャオ」

「ええーっ、これじゃ前から全然進歩ないじゃん!!」

 

何の進歩かはなんとなく分かるが追及はしないでおいた。

 

「こうなったら遠慮なんてしないんだからね。シャオの本気を見せてやるんだから、首を洗って待っていなさいよねー!!」

 

大きな声で宣言されても困ってしまう。これだけ好きを全力でぶつけられるのは清姫並みだ。

流石にこのまま無視は酷だと思って城へと歩んでいた足を止める。

 

「わぷっ」

 

急に足を止めたので小蓮の顔が藤丸立香の背中にあたる。

 

「うー、急に止まんないでよー」

 

顔もとい鼻を抑えている。

 

「ごめんごめん。ほら見せて」

「えう?」

顎クイからの顔を急接近。

 

(り、立香の顔が近い。もう立香ったら、いきなりなんだから~)

 

目を瞑って口を少しつきだす。そしておでこにコツン。

 

「え?」

「大丈夫みたいだね。この続きはシャオが大人になってから」

「ええー!?」

 

またも藤丸立香は城へと歩き出す。

 

「シャオはもう大人だよー!!」

「そういう事を言っている間は子供だよ」

「むー!!」

 

頬を膨らませる小蓮。

 

「なら見てなさい。さっきも言ったけど、シャオの本気を見せてやるだから。正確には明日の朝!!」

(明日の朝に一体何が…)

 

明日の朝に何が起こるか分からないが、あまり深く考えない事にした藤丸立香であった。

 

「………明日の朝にのう」

 

何となく夜の散歩をしていた『彼女』がその一部始終を見ていた。

 

 

609

 

 

明日の朝。今日の朝とも言う。

 

「おはようございま~す。なんちゃって」

 

藤丸立香の部屋にて小さな声で挨拶をしたのは小蓮。

彼女の視線の先で寝ているのは部屋の主である藤丸立香。藤丸立香の部屋なのだから彼が居るのは当然だ。

ただ小蓮が部屋に居る理由は寝ている藤丸立香にも分からない。そもそも部屋に入って来た事自体に気付いていない。

 

「立香~…ぐっすり寝てる?」

 

安定した寝息が聞こえてくる。

 

「ね・た・ふ・り、とかじゃないですよね~?」

 

返事は帰ってこないが静かな寝息は聞こえてくる。寝息が返事という事だ。

 

「完全に寝てるね」

 

音を立てずにベッドで寝ている藤丸立香に近づく小蓮。

 

「えい」

 

指を頬を突くとプニプニと反発してくる感触が伝わってくる。それでも起きないのを確認。

 

「立香ってば深く寝てるのかな」

 

更にツンツンと頬を突くが起きる気配は無い。

 

「この程度じゃ起きないのか。それとも狸寝入りなのかな」

 

じぃーっと寝顔を見ていても飽きないと思う小蓮。このまま寝顔を見ていると自分まで眠くなってしまいそうになるため、顔を横に振る。

彼女が藤丸立香の部屋に朝早く侵入してきたのは寝顔を見るためではない。

 

「昨日の夜に言ったよね。シャオの本気を見せてあげるって」

 

小蓮の積極性は孫呉の中でトップクラスだ。

母親の炎蓮ですら認めている程であり、彼女が動く時は最速の行動をする。

 

「んふふ~」

 

小蓮の顔が藤丸立香の顔に近づき、重なる。

 

「ん~…やっぱり完全に寝てるみたい。お返しが来なったし」

 

チロっと舌を出す小蓮。

 

「もっとし~ちゃおっと」

 

また重なる2人の顔。

堂々と行う彼女の積極性は肉食系女子と誰もが言うはずだ。

この行為はカルデアでも起きているかもしれない。何故なら藤丸立香のマイルームには誰かしら潜んでいる可能性は高く、寝ていればベッドの中に誰かが入り込んでいるからだ。

ならば彼が寝ている間に何かをされていてもおかしくない。英霊の中にも小蓮以上の積極性の者がいるのだから。

 

「そろそろ、びっくりして起きてくるかと思ったけど…起きないや。そろそろ退屈だよ。立香ったらおーい」

 

目覚める気配がない。深く寝ている人間はちょっとやそっとじゃ起きはしない。

 

「んもう。ちっとも起きない…そんなに疲れてるのかな。あ、もしかして昨日夜、シャオと分かれた後に蓮華お姉ちゃんか他の誰かと?」

 

そんな事は起きていないが彼女の妄想は自由だ。

 

「むぅ…立香ってば、お姉ちゃんたちばかり構って全然シャオに構ってくれないよね。シャオの積極性が足りなかったのかな?」

 

彼女の積極性は十分すぎるくらいである。

 

「そうだっ、いいこと考えた。立香がみんなを可愛がるなら、シャオは立香を可愛がってあげればいいんだ」

 

閃いた瞬間とも言うべきか、小蓮は答えを見つけた。

 

「王の余裕ってものを見せつけてあげるの。名案ね!!」

 

名案かどうか分からないが彼女はコレと決めたならば一直線。すぐに行動を起こす。

 

「はぁい、じっとしててくださいね」

 

寝ているので動きはしない。

 

「シャオが布団に潜り込んじゃいま~す」

 

ペラリと布団を捲る。

 

「……え」

 

布団を捲ったら武則天がいた。

 

「なんじゃ」

「何であんたが立香の布団の中にいるの?」

「立香の安眠の為じゃよ」

「そうなんだ」

 

安眠の為に一緒に寝る。あながち間違いではないかもしれない。

 

「ならシャオが代わってあげる。そ・れ・に、ここからは大人の時間で~す」

「そうか。なら子供のお主は帰る時間じゃな」

 

パチンと指を鳴らすと酷吏が召喚される。

 

「え」

 

2人の酷吏は小蓮を抱える。

 

「そやつの部屋に戻してこい」

「「アイサー」」

「え、ちょ、ま、待って。これから立香を可愛がって…、これからが本番なのにー!?」

 

パタンと閉じた扉の向こうから小蓮の声が響くのであった。

 

「全く、油断も隙も無い。あの小娘の積極性は溶岩水泳部並みじゃのう……いや、まだ可愛い方か」

 

流石の小蓮も溶岩水泳部の積極性には勝てない。もしかしたら溶岩水泳部並みにいずれは到達するかもしれないが。

 

「マスター…立香よ。お主は本当に誑しじゃよなぁ。お主は気付いていなかったかもしれんが先ほどの小娘との行為は見なかった事にしよう」

 

モゾモゾと布団の中に入っては顔を出す。彼女の正面には眠っている藤丸立香の顔。

 

「悪夢は見ておらんようじゃな」

 

彼の旅路は武則天も知っている。

ただの一般人が世界の救う重責を背負わされた。彼はもう普通ではない。

普通であるとうたっているが実際は違う。それでも彼は止まるわけにはいかないのだ。

 

「ふむ」

 

指を彼の頬につたわせ、そのまま唇を触る。

 

「ふむ、なんだか先ほどの事を思い出すと苛々してきたな」

 

普段ならば先ほどの程度では苛つきはしない。しかし何故か武則天は苛ついていた。認めたくはないが嫉妬の感情。

 

「立香は多くの者に良い顔をしすぎじゃ。お主は妾が共同統治者として認めた者なのじゃから少しは自重しろ」

 

そのまま彼女の顔が藤丸立香の顔に重なった。

 

「んむ…」

 

先ほどの小蓮が行った行為の上書き。

 

「……妾は何をしておるんじゃろう」

「ん…ん?」

 

ゆっくりと藤丸立香の目が開く。

彼の胸には武則天が乗っている状況だが驚かない。慣れとは恐ろしいもので布団の中に誰か居てもちょっとやそっとじゃ驚かない。

驚くとすれば新参の者や、普段ならばそんな事をしない者が居た時だ。

 

「おはようふーやーちゃん」

「おはよう。妾がおらなかったらお主は今ごろ吸われておったぞ」

「寝ている間に何が…」

 

何が吸われていた可能性があったのか気になるところである。

そう言えば、と昨夜の事を思い出す。小蓮が何か行動を取ろうと部屋に侵入してきたのを武則天が追い出したのかと予想。

 

(シャオがオレの何を吸うんだ?)

 

寝ぼけているので頭が回らない。

頭をスッキリさせるにはベッドから起きて顔を洗う、身体を動かすのが一番だ。

 

「ふーやーちゃん。起きるからちょっとどいてもらっていいかな」

 

胸の上で乗っている武則天は黙ったまま。

 

「ふーやーちゃん?」

 

もう一度、名前を口にするが黙ったまま見つめてくるだけだ。

 

「武則天?」

「………何でじゃろうな。今日の妾はちょっとおかしいかもしれん」

「どうしたの?」

 

自分から「おかしい」と言う武則天。

藤丸立香から見た彼女はいつも通りに見えるが、実際は分からない。

 

「マスターよ」

 

武則天は両手を藤丸立香の顔の左右に向けて置く。壁ドンならぬベッドドン。「ドン」という擬音は鳴ってないので違うかもしれない。

2人の顔が急接近で、いつ重なってもおかしくない距離だ。

 

「ぶ、武則天?」

「お主は妾のマスター…そして共同統治者と認めた存在じゃ。それは分かっておるな?」

 

藤丸立香は武則天と絆を深めた仲だ。彼女から『共同統治者』として認められた時は恐れ多くも信頼されていると実感し、嬉しく思った程である。

バレンタインでのひと時はより彼女の本音を聞き、話し合った。彼女の気持ちを重く受け止めて一緒にチョコを食べた。

彼女と一緒に『修行』をした時はより互いに距離が近づいた。武則天が本当に藤丸立香を認めてくれたのは間違いではないのだ。

 

「うん。分かっているよ。武則天が認めてくれた…それは誇りに思う」

「うむうむ。ちゃんと分かっておるな」

 

武則天の見た目は可愛らしい童女だが彼女はれっきとした大人。誰もが敬い、畏れた女帝。

軽い返事はしていない。彼女が認めたのならば深く受け止めるのが当然だ。

 

「妾がこんな事を言ったのはお主だけじゃ。だからこそお主が他の女にも良い顔をしているのがちと癪に障る」

「武則天?」

「マシュは許そう。彼女こそ穢れの無い存在。妾も守ってあげたくなる気持ちは分かるからの」

 

武則天は藤丸立香の首元に噛みつく。

 

「え、ちょっ!?」

「じゃが、他の女は癪に障るのう」

「ど、どうしたの?」

 

まさかの行動に驚く。普段の彼女ではしない。

 

「お主はどんな英霊も認め、理解する。相手が善であろうが悪であろうがな。それは簡単そうに見えて難しい事じゃぞ」

「あ、ありがとう」

「じゃがな。誰彼構わず良い顔をし過ぎるのも自重した方が良いと思うぞ」

 

最近は『自重』という言葉を聞くようになったのは気のせいではない。

 

「お主は鈍感そうに見えて実は気付いているはずじゃ。相手の気持ちが分からない人間ではない。ただハッキリできないのはこの先どうなるか分からないから」

 

藤丸立香は相手の気持ちが分かる。様々な人物と出会い、様々な感情を受け止めている。ならば好意の感情だって分かる。

あからさまで、分かりやすい好意をぶつけてくる人物もいるくらいだ。それで分からない鈍感はライトノベルに登場する主人公くらいである。

 

「お主の気持ちは最終的に自分自身で決めるのは当然。じゃが、これからも女を増やすのは感心せんな」

「増やすって…言い方がちょっと」

「間違っておらんじゃろう?」

 

何度も言っているが藤丸立香は狙って絆を深めているわけではない。

 

「だから、そんなマスターに罰を与える事にした」

 

ニパと笑う。

 

「そんな良い笑顔で罰って言われても!?」

 

いきなりすぎて混乱しそうになる。しかし眠気は消えた。

ガリっと齧る音が聞こえる。

 

「痛っ」

「齧られるくらい。慣れてるじゃろ」

「……」

 

否定は出来ない。

 

「そこは否定して欲しかったのう。なんかまた癪に障るな」

 

首筋から武則天は口を離す。

 

「お主を欲しがる英霊たちは何人もおるからのう」

「そ、そうかな」

 

デコピンされる。

 

「そういうところじゃぞ」

 

契約している英霊の中には独占欲が強い者がいる。

 

「お主は妾が認めた共同統治者。それを誰かに取られるのは良い気分はせん」

 

藤丸立香の胸で寝そべっていた武則天は起き上がる。

 

「お主が誰のものなのか。少し分からせてやろう」

「あの、何で衣服を肌蹴させてるの…ですか?」

「妾がこんな事をするのは普通はないぞ。軽い女だと思うでない」

 

武則天は自分でこのような大胆な行動をしているのに違和感、驚いているくらいだ。

 

(ううむ…本当に妾は何をしているんじゃろう。しかし嫌な気はしないのも事実)

 

彼女の視線は藤丸立香の目からずらさない。

 

「立香よ…お主は嫌か。嫌なら嫌と言え。妾は嫌ではない。お主だからこそ嫌ではない」

 

「嫌だ」と言えば現在の戯れは終了する。

 

「嫌じゃないよ」

 

まさかの展開だが藤丸立香は武則天の事が嫌いではない。彼女とは深く絆を結んだ関係だ。

彼女の気持ちを否定しない。今の彼女は本気の本音を語っているのならば藤丸立香も本音で返せねばならなのだ。

 

「そ、そうか」

 

何故か顔がニヤけそうになるが我慢する武則天。

 

「でも、オレなんか…」

 

ピタっと藤丸立香の唇を指で止める。

 

「なんか、という言葉を使うな。それはお主を認めた者たちへの侮辱になる」

「ごめん。失言だった」

「先ほども言ったが、妾はお主だからいいのじゃ。妾の事を知りながらも手を伸ばしたお主がいい」

「オレも武則天に認められて光栄だよ」

 

彼女の本気の思いを軽く受け止めず、重く受け止めるべきだ。

本気の思いには本気の返事と行動をすべきである。だからこそ藤丸立香は嘘偽りない言葉を伝えたのだ。

深めた絆には様々な感情が含まれている。友情や愛情とあるが今回はどちらなのか、もしくは他の感情かもしれない。それは2人だけにしか分からない。

 

その後、2人が仲睦まじく庭で飲茶している姿を燕青が見たそうな。

 

「な~んか、いつもより距離が近い気がするなぁ。いや、良い事なんだろうけど」

 

物理的にも精神的にも。

 




読んでくれてありがとうございました。
次回の更新はまた今日中。


読んで分かるように藤丸立香と武則天のカップリングの話でした。
大胆な行動をしたのはシャオじゃなくてふーやーちゃん。
途中まではシャオの話でしたけど…すまない。シャオのメインの話はまた今度で。

武則天もマイルームやバレンタイン、幕間等で隠れマスターラブな感じがします。
まあ、だからと言ってデレデレな感じじゃないんですけどね。

私は藤丸立香×武則天(ふーやーちゃん)良いと思います!!

それにしてカップリングの話は難しいですね。
これもからもまだ書いていきます。色々と気を付けながら。


606~607
シャオの幕間を元に書いたものです。
まあ、これも原作と同じですね。

大人の魅力を持つ粋怜、祭、雷火。まさか恋愛相談が苦手とは…最初は意外でしたね。
梨晏は…何となく予想できました。

それにしてもシャオ本当に積極性と行動力の塊だと思います。
もしも彼女が呉の王だったら、それはそれでまた興味深い未来です。
そういう外史も存在するかもですね。


608
シャオのターンかと思えばふーやーちゃんのターンでした。

一応、書いておきます。藤丸立香と武則天の2人に何があったかは読者様の想像にお任せします。
取り合えず2人の絆がより深まったと思います。

さて、武則天が感じていた『違和感』の正体はまた今度。


次回にもう1回、日常編を書こうとしましたがやめました。
次回はまた本編に戻ります。

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