Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
遅れてしまいましたが何とか更新です。


FGOでは新イベント『ぐだぐだ龍馬危機一髪!』が始まっております。
既にオマケストーリーまでクリア方も多いでしょう。

今回のぐだぐだイベントも面白かったです。
坂本龍馬のランサーが来るとは…引かねば!!(作者はまだお迎え出来てません)
そして…魅力的なキャラが多いのに何でNPCなのー!!
高杉晋作さん、武市瑞山さん、田中新兵衛さーん!!
特に田中新兵衛さんが実装して欲しかったですーー!!

蘭丸ちゃんに阿国ちゃん可愛いです。良いキャラしてますねえ。
斬ザブローがまさかのメカ。カッコイイので即引きました。


さて、前書きでぐだぐだと書きすぎました。
そろそろ本編をどうぞ。




孫権(暗影)

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魔術礼装を起動し、身体を強化。蓮華を抱き抱えて、一気に駆け出す。

目指す先は思春と孫権(暗影)の元だ。2人は剣戟を行いながら民家の屋根を縦横無尽に跳び回っている。

 

「思春は南の方に向かったわ」

「了解!!」

 

蓮華が指示を出し、藤丸立香が跡を追う。

 

「あ、後輩」

 

虞美人を通り過ぎる。

 

「今ぐっちゃんパイセンがいた」

「無視すんな後輩」

 

虞美人が一瞬で藤丸立香に追いつく。

 

「無視してないから。あと今は忙しいので」

「その女を抱えて何処に行くのよ?」

「思春さんを追ってます。そしてもう1人の蓮華さんを」

「その女分裂したの?」

「蓮華さんはパイセンやエリちゃんじゃないので」

 

分裂が出来る者はそう簡単にいるものではない。しかしカルデアでは意外にポンポン出てくるものだ。

 

「虞美人さんって分裂するの?」

「する」

「ええ…」

 

蓮華は虞美人という存在の神秘に少し触れた。

 

「それよりもう1人の孫権って何よ」

「詳しくは分からないけど未来の蓮華さんらしい」

「いきなり襲ってきたわ。私が気に食わないというふざけた理由だ」

 

ただ気に食わないという理由だけで斬りかかられるなんて最悪だ。

思春は蓮華を守るために孫権(暗影)と剣を斬り合っている。

 

「ふーん。それで蘭陵王が急に飛び出したのね」

「蘭陵王もいるの?」

「ええ。てか、私は蘭陵王に連れられて外に出ていたから」

 

虞美人の話からすると蘭陵王が既に思春の助太刀に向かっている。

 

「ぐっちゃんパイセンも一緒に助太刀お願いします」

「面倒」

「そう言わずに!!」

 

 

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蘭陵王にとって孫権(暗影)とは既に2回剣を交えている。

1回目は益州、2回目は漢中。そして3回目は現在。

 

「1度、2度と決着はつけることが出来なかった。なら今回で決着をつけるか蘭陵王」

「私の名前を憶えておいでなのですね」

「強者の名は覚えている」

 

孫権(暗影)にとって弱者は名前を覚えるに値しない。強者のみが彼女にとって記憶に残すに値するのだ。

静かに剣を構えるのを見て同じく蘭陵王も剣を構える。思春も剣を構える。

 

「ふふ。一対一で戦いたいけど、2人同時に相手するのも面白いわ」

 

剣気がバチバチと発せられている。並みの者なら3人の周囲に近づけはしない。

 

「炎よ」

 

孫権(暗影)の剣にまた炎が纏われる。

 

「行くわよ。蘭陵王、甘寧!!」

 

跳んだ瞬間に2人の間合いに入り込んだ。

 

((速い))

 

真横に剣を振ると炎もうねりながら燃え上がる。

剣の斬撃と燃え上がる炎。どちらも人間にとって死に近いもの。

 

「さあさあ、もっと私を昂らせて!!」

 

炎の斬撃を繰り出していく。

 

(つ、強い。2人がかりでもものともしていない。雪蓮様と同等かと思ったが、炎蓮様と同等か!?)

 

怒涛の攻撃。

思春は孫権(暗影)の強さを再認識する。今まで戦った者の中でも一二を争う。

まだ相手は本気を出している気配はなく、頭には炎蓮以上ではないかという事が頭を過る。

 

「はああああ!!」

「とおっ、せい!!」

「もっともっと斬り込んできなさい!!」

 

思春と蘭陵王の2人と戦っている孫権(暗影)は剣舞を見ているように感じていた。更に剣から発せられる炎が合わさり、周りから見たら幻想的な剣舞と誰かが言うかもしれない。

 

「いいわ2人とも。こんな昂り、素晴らしい剣の斬り合いは初めてよ!!」

 

昂っていくと彼女はどんどんと枷を外していってしまう。テンションが上がっていき、本気を出したくなっていく。

戦士とは戦えば戦う程、拮抗していくほど、力が沸き上がる。曰く、身体が温まってきたというものだ。

 

「さあ、次の段階に上げるわよ」

「次の段階だと?」

「こうも相手が強いと私の本気をどれだけぶつけられるか試したくなるわ」

 

勢いが落ちない剣の斬り合いが止まる。孫権(暗影)は一旦2人から間合いを取る。

 

「久しぶりにこれを使うわね」

 

孫権(暗影)の服装が変化していく。

 

(服に眼のような装飾が出現した?)

 

孫権(暗影)の服装に眼のような装飾が計6つ出現した。

左右の腰付近に1つずつ。首元に1つ。頭の帽子に1つ。左右の腿付近に1つずつ。

 

(なんだアレは?)

 

ギョロリと目の装飾が動く。

 

(動いた!?)

(まるで霊基再臨のようですね……布面積が少なくなっている。彼女は脱ぐタイプの霊基再臨ですか)

 

どうでもいい事を思う蘭陵王。頭を左右に振って状況を確認し直す。

 

(眼のような装飾が動きましたがただの飾りか否か。ただの飾りでなければ何か仕掛けがあるのは当然ですね」

 

装飾が眼のような形にも意味があるはずだ。

形にも意味がある。名は体を表すというのならば逆もまた然り。

 

(眼。やはりアレは何かを見るものなのか?)

「行くわよ!!」

 

またも突進してくる孫権(暗影)と剣戟が打ち合わられる。

蘭陵王と思春は左右に分かれる。

 

「はあっ!!」

 

炎の剣を振るう先は思春。その隙に蘭陵王は孫権(暗影)の背後を取る。

 

(背中にも目の装飾がありますね。眼の装飾は計6つでなく7つか)

 

脚に力を入れて跳ぶ。剣を真っすぐに伸ばし、突進。

背中の眼の装飾がギョロリと眼が動く。剣の切っ先が届く前に孫権(暗影)の跳んで回避。

 

「こちらを見向きもしなかった。もしかしなくてもその眼の装飾は貴女の視界と繋がっているのですね」

「正解」

 

先ほど2人が左右に分かれた時に孫権(暗影)の視線は思春へ。眼の装飾は蘭陵王を向いていた。

 

「この姿の私に死角はない。複数相手にする時は便利なのよ」

 

炎を斬撃を飛ばす。

 

「せぇいっ!!」

 

蘭陵王は炎の斬撃を一刀両断。

 

「この眼はまだ視界を増やすだけの役割じゃないわよ」

 

ギョロリと眼の装飾が思春と蘭陵王を見る。

彼女の台詞から眼の装飾にはまだ仕掛けがあると分かる。

 

「眼は様々なものを視る事が出来る。細かい動きまで…それこそ筋肉の動き、脈の動き、眼の動き。更に眼は物理的な物を視るだけじゃない。普通では見えない物も見る事も出来る」

「普通では見えないものだと?」

「第三の眼とも言うべきかしら」

 

千里眼といった未来等を視る事が出来る力など良い例だ。

 

「稀に特別な眼を持った人間に会ったか事がないかしら?」

「ないな」

「私はあります。その眼は魔眼という事ですか」

 

魔眼をスキルとして昇華させた英霊は複数いる。

 

「魔眼なんて大層なものじゃないけどね」

 

視界を増やすだけでなく、別に何か力がある。魔眼の力は厄介だ。

どのような力があるか分かるまで迂闊には動けないが、動かなかったら良い的になるだけだ。

 

「ふふ」

 

ギョロリと眼の装飾が2人をまた鋭く見据える。

今度はゆっくりと歩いて2人の間合いに入ってくる孫権(暗影)。無警戒に入ってくるのではなく、何が来ても絶対に対応してみせるという自信の表れにも見える。

 

(なんだあの余裕は…いや、自信の強さは。あの眼が何だというのだ)

 

孫権(暗影)の覇気に押されて思春は足を一歩後退してしまった。無意識の後退は思春が孫権(暗影)に適わないと思ってしまった証拠。

時には退く事も大事であるが思春は己の主を侮辱されたままではいられない。

とっておきの技である『残影撃』が効かなかった。それは分からされたが終わりではない。

 

(ならばもっと速く、鋭く。そして限界を超えればいい)

 

思春は構え直す。

 

(もっと速く速く速く)

 

呼吸を整え、無駄な力を一切抜く。ただ駆け抜ける為だけでいいという気持ちを起こす。

 

「疾っーー」

 

一瞬で孫権(暗影)の元へと駆け抜ける。あとは得物である鈴音を振るうだけ。

 

「先ほどより速いわ。でもソレはこの眼で視たから、どのように私を斬るかは予測済みよ」

「な、うぐぁっ!?」

 

孫権(暗影)は片手でタイミングよく思春の首を掴んだ。

 

「先ほどより速い。視界を増やしても視認するのは難しい。しかしこの眼は視界を増やすだけでないと言っただろう?」

(簡単に捕まるなんてありえん。こいつは私が何をしようか、何処を狙おうか最初から分かってたみたいな動きだったぞ!?)

 

首を締める力が徐々に強くなっていく。

 

「うぐぐ…」

 

首に掴まれた手を引き離そうとするが物凄い握力でびくともしない。

 

(こ、このままでは窒息する)

「思春殿を離しなさい!!」

 

すぐに助けに入るが孫権(暗影)は顔を蘭陵王に向けていない。眼の装飾だけがギョロリと動く。

それだけで蘭陵王の剣を防ぐ。

 

「もう一度言う。思春殿を離しなさい」

「敵からの言葉なんて耳を傾けるわけないじゃない。もしも耳を傾けるなら何かこっちに旨みになるものでも出しなさいよ」

「正論ですね」

 

軽口を叩き合うが、どうやって思春の首から孫権(暗影)の手を離すか考える。

 

(それと彼女は思春殿の神速ともいえる一撃を軽く破った。彼女は眼で視て予測したと言っていたがまさか)

 

眼の装飾には特別な力が宿っていると言っていた。

『視る』と『予測』という言葉ですぐにどんな能力かを導き出す。

 

「まさかその眼は未来視が出来るのか」

「流石ね。それも正解よ」

 

剣を押し合ったまま会話は続く。

 

「未来視と複数の視界を有するか」

 

複数の眼で相手を捉える。複数の眼ですら捉えきれない場合は未来視で相手を捉える。

ほぼ死角はない能力だ。

 

「恐ろしいものですね」

「未来視と言ってもちょっと先の未来だけどね。でも戦いにおいて、そのちょっとが分かれば十分よ」

 

戦いに置いて数手先が見えれば有利なのは当たり前だ。

 

「なら私がこれから何をするかも分かってしまうという事ですか」

「ちょっとね」

(さて、どうするのか。未来が少し分かるか…何をやっても駄目な気がすると思ってはいけない。奇を狙うか)

(何をしてくるのかしら…ってコレは!?)

 

蘭陵王が仮面を外した瞬間に眩い光が放たれた。

 

「ぐぅっ!?」

 

光による目くらまし。そして謎の衝撃波により孫権(暗影)は思春から手を離し、吹き飛ばされた。

 

「視えたが…流石に驚いたぞ」

 

未来視により蘭陵王が何をするかは分かったが対応が出来なかった。

彼女の言う通り、少しの未来しか視えないと判断。全て視えていれば完全に対処されていたはずだ。

 

(仮面を外した後の発光は分かっていた。しかしその後は何をするかは分かっていなかったという事は数秒先の未来が見えるといったところか)

 

更にもう1つ分かったのは眼のような装飾も眩い光によって蘭陵王の位置を特定する動きをしていなかった。その事から眼の装飾も対応する事は可能である。

 

(眼の装飾を汚すか壊すかでもすれば視界を減らせる)

「蘭陵王」

「無事ですか思春殿」

「お前の顔は光るのか」

「それに関して今は置いといてください」

 

人の顔が光るのは普通はありえない。

 

「私も貴方の顔が光る仕組みが知りたいのだけれど」

 

孫権(暗影)も蘭陵王のフェイスフラッシュの仕組みに興味深々。

 

(一瞬だったけど彼って凄い整った顔をしていたわね)

 

蘭陵王、絶世の美男子。

 

「全く、此方の面白い力を見せたつもりが貴方の顔で全て持ってかれた感じだわ」

「そんな狙いはなかったんですが」

 

未来視の魔眼具よりも蘭陵王の素顔の方がインパクトがあるという事実。

 

「でも面白いわ。こんなにも楽しませてくれるなんて…っ危ないわね!!」

 

急に真横に飛跳ねた孫権(暗影)。そして彼女が元々いた場所には剣を振り降ろした虞美人。

 

「追いついた!!」

「マスター、それに蓮華殿」

 

虞美人の後ろより来るは藤丸立香と蓮華。

 

「またぞろぞろと揃ったものね。てか知らない奴も増えてるし」

 

孫権(暗影)の視線は虞美人。眼の装飾はギョロリと藤丸立香たち他全員を見ている。

 

「孫権さんの服装が変化している?」

「マスター恐らく霊基再臨のようなものかと思われます。更に服にある眼の装飾はただの飾りではありません。アレは複数の視界展開と未来視の力があります」

 

すぐに恐ろしい力だと理解。

 

「未来視は数秒先が視えるようです」

「数秒先でしょ。なら、どうにでもなるわ」

 

双剣をクルクルと回す虞美人。彼女にとって数秒先の未来は脅威ではないらしい。

 

「未来が分かる者に動じないか。貴女の名は?」

「答える必要ある?」

 

しれっと名前を教える気なし。

 

「気になったけど、教える気が無いならいいわ。弱者なら死ぬだけよ」

「はんっ。殺せるもんなら殺してみなさいよ」

「その台詞は強者にしか使えないわよ」

「強者よ。アンタよりね」

「安い挑発ね」

 

ニヤリと笑う孫権(暗影)。

多くの強者に出会えて嬉しいという感情が沸き上がる。しかし蓮華の顔を見ると苛つきが勝る。

自己嫌悪、不甲斐なさ、愚かさ。孫権(暗影)はこれが八つ当たりだと理解している。

過去の己はまだ自分の犯した失敗をしていない。そもそも過去の己が自分と同じ道を辿るか未定だ。

 

(この外史は私のいた外史じゃない。だからあの私は私のようにはならないかもしれない。だけど…)

 

弱くて何も知らない自分を見ると、どうしても苛ついてしまう。

 

「おい、未来の私とか言う不届き者。お前の目的は何だ」

「目的か」

 

目的は宝珠。呉の国内にあるか探しに来たはずであった。

関羽(暗影)に釘を刺されていたが結局は破ってしまった。しかし関羽(暗影)も己の過去と殺し合っていたのだから文句は言わせない。

 

(今更ながら自分の過去と殺し合うなんて馬鹿げた話だ)

「目的は何だと聞いている!!」

「ただの探し物だ。探し物をしていたら愚かな孫権を見つけたから斬りかかっただけだ」

 

探し物と聞いて藤丸立香は宝珠の事を思い出す。

漢中で司馬懿(ライネス)たちは暗影たちと宝珠の取り合いをした。何の為に宝珠を集めているのか分からない。宝珠も何なのか分かっていない。

 

「ふざけるな。最初も聞いたが私が愚かだという理由で斬られてたまるか。私は愚かではない!!」

「人間はみな愚かだと思うけどね」

「しーっ、ぐっちゃんパイセン」

 

虞美人は空気を読まず。

 

「愚かだよ孫権。お前は愚かだ。今のお前がどのような志を持っているかも分かる。そんな志を持っているからこそ愚かなのだ」

「私の志が愚かだと!?」

「ああ。お前の最終目標は大陸に覇を唱える事…天下を獲るなぞと思っているんじゃないのか?」

「それの何が悪いっ。孫呉は大陸を制覇する。それが平和への道のりだ!!」

「それは平和への道のりではない。争いへの道のりだ」

 

ピシャリと否定する。

 

「なんだと!?」

「お前らが天下を捕るのはいい。だがその先は平和でなく、まだ争いの世だ」

「何を言っている」

「お前の描く未来は平和ではないということだ。武を持って覇を唱える。世はいつだって争いだ。ならば戦い続けるしかない。大きな力を持って大きな敵を倒す続けるしかないのだ!!」

 

孫権(暗影)の気迫に圧されてしまう蓮華。

 

「平和とは全ての敵を潰してから得られるのだ。魏と蜀を倒したとしても平和は訪れない。それは天下ではない。まだ2国以上に強大な敵が存在するのだ!!」

 

魏と蜀以上の強敵。孫権(暗影)は何かを知っている。

強大な国は三国だけではない。海を渡れば大きな国はいくつも存在する。しかし今は全世界の話ではない。

蓮華たちがいる大陸の話をしているのだ。海外の話ではない。

孫権(暗影)の言う魏と蜀以外の強敵は一体何なのか。

 

「孫呉は誰にも負けないわ。例え、劣勢になろうとも必ず勝つ。それが孫呉よ!!」

 

蓮華も圧されたままではいられない。一度は孫呉が滅びかけたが巻き返した事がある。

どんな強敵にも負けないのが呉である。

 

「私もそう思っていたよ…でも滅びるのは一瞬だ。本当に一瞬だった」

「なに?」

「……何でもない。もういい。お前がどんな強敵にも必ず勝つと言うのなら証明してみせろ。この負け犬の私に勝てなければお前は、呉は簡単に滅びるのだからな!!」

 

時折、自分の事を『負け犬』と言う孫権(暗影)。それがどういう意味か分からない。しかし彼女の過去に関わっているのは確かだ。

 

「断界魔王」

 

彼女が持つ剣の炎が消え、代わりに妖気が流れ込まれていく。

 

「マズイ何か来る。概念礼装起動ぉ!!」

「妖剣・狐の嫁入り」

 

狐の幻影が見えたかと思った矢先、大きな斬撃が2回放たれ、トドメの一太刀で大きな衝撃波が蓮華たちを飲み込んだ。

全てを切断し、全てを破壊する奥義。喰らっていればただでは済まない。

済まないどころかこの世からオサラバである。

 

「………そっちを守るのね」

「概念礼装。月霊髄液と三重結界。ま、間に合った」

「ふん。結局は守られたか」

「守られても悪くない。オレも守られてばっかりだからね。自分の出来る事をしてこそなんだよ」

 

守られる事は悪い事ではない。守りたいと思う心があるからこそ行動できる。

守られた方は代わりに別の行動を持って返せばいいのだ。

 

「はああああああ!!」

 

蓮華も言われっぱなしではいられない。彼女は弱くはない。

行動を持って証明してみせる。剣を抜いて孫権(暗影)に斬りかかった。

 

「ほう。まさかお前から斬りに来るとはな。未来視で分かっていても驚いたよ」

「お前は口調がさっきから安定してないのよ。威圧的だったり、崩れたり何なのよ!!」

「基本は威厳ある口調にしてるが、楽しくなると素が出てしまうんだ」

 

斬り払って蓮華を後方へと飛ばすが、代わりに思春たち3人が来る。

 

「3人同時か」

 

眼の装飾がギョロリと動く。そして3人の攻撃全てを対応した。

 

「あの眼が面倒ね」

 

虞美人が赤黒い魔力弾を複数放つ。眼の装飾品を全て破壊する為の攻撃。

 

「まず眼を狙ってくるのは未来視を使わなくても分かる」

「あっそ。そう言えばちょっと聞いたけどアンタ後輩を知っている感じらしいじゃない。何処で後輩とどういう関係よ?」

「私は…立香とは…」

 

急にピタリと止まる孫権(暗影)。

 

「ぐっ…」

 

片手で頭を抑え始める。頭痛が発生したような動作だ。

 

「うぐ。私と立香は……」

 

シュタっと音を立てて、孫権(暗影)は跳んだ。

 

「おい、待て!!」

「勝負は…預けたぞ孫権。きょ、今日は体調が悪い」

 

孫権(暗影)は虞美人の問から頭痛を起こして撤退していった。

 

「何で急に逃げたのよ」

「虞美人さん。あいつに何を言ったんですか?」

「後輩について」

 

孫権(暗影)は何故か藤丸立香の事は知っていた。逆に藤丸立香は孫権(暗影)の事は知らない。

関羽(暗影)もそうだが孫権(暗影)の謎だけが残る。

暗影たちは未来の存在というのは分かったが孫権(暗影)は藤丸立香と知り合いという謎が追加された。しかし暗影の正体が分かるのは遠くない未来になる。

 

「何だったんだあいつは」

「無事ですか蓮華様」

「ええ。あいつも言っていたけど、またいずれ会うでしょうね。なら次で決着をつけてみせるわ」

 

いきなり未来の自分だと言うわけの分らない人物から好き放題言われた。我慢できない事は無いが、向こうから決着をつけるとか言い出しているのだ。

いずれまた襲ってくると言っているようなものだ。襲ってくるというのならば返り討ちにするだけだ。

 

 

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建業は既に遠く、孫権(暗影)は山道の岩に座り込んでいた。

 

「ふぅ…頭痛は治まったわ」

 

ガサリと誰かが近づく音が響く。彼女は鞘から剣を抜かない。

近づいている者が誰なのか気配で分かっているからだ。

 

「釘を刺したが破ったな」

 

現れたのは関羽(暗影)。

 

「ええ、私も貴方の気持ちがよく分かったわよ。愚かな過去の己を見てると苛つく。それが自分の勝手な自己嫌悪、八つ当たりだと分かってもね」

「………そうだな」

 

関羽(暗影)は孫権(暗影)の言葉に首を縦に振った。彼女もまた自己嫌悪、八つ当たりだと理解している。

 

「それよりも揚州方面。呉で宝珠はあったのか?」

「無かったわ。そっちは?」

「此方も外れだ。漢中で見つけた1つだけだな。残り2つは何処にあるのか」

「曹操の方に期待するしかないわね。確か洛陽の方に行ってるんでしょ」

「ああ。曹操が2つ見つけてくれると助かるな」

 

暗影たちが探している宝珠は残り2つ。

 

「ねえ関羽」

「何だ」

「貴女は昔の事を覚えてる?」

「昔の事だと?」

 

昔の事。過去について。

 

「私は少ししか覚えてない。思い出そうとすると頭痛がするわ」

「………同じだ」

 

暗影たちは昔の事をあまり覚えていない。

 

「仲間の事も忘れてしまってるわ。今日は甘寧に会えたから思い出した。でも顔と名前だけ。彼女とはどういう関係だったかまでは思い出せない」

「私もさ。大事な主君や…仲間の事も少ししか覚えていない。漢中で戦った奴らも見覚えもある気がするが何も思い出せなかったさ」

 

雛里たちの事。関羽(暗影)が愛紗の未来ならば雛里は仲間だ。

過去の世界だが仲間を傷つけた。しかし罪悪感は無いのは仲間かどうかも分からないから。

暗影たちは記憶が摩耗している。覚えているのは少しだけ。

 

「覚えているのが特に大事な人。そして私が負け犬になった原因。私が辿った旅路」

「全く同じだな。別の外史の我らだが…まさか負け犬になった原因は同じだとは思わなかったけどな」

「人間嫌な記憶は覚えているものよね」

 

関羽(暗影)は背を向けて歩きだす。

 

「無駄話は終わりだ。我らも洛陽に向かうぞ」

 

孫権(暗影)も立ちあがる。

 

「そうね。私用よりも任務だし…女カ様に怒られたくないしね」

 

 

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修練場にて剣の稽古をするは蓮華と思春。

蓮華が稽古をしているのは珍しいと思われるかもしれないが実際はそうでもない。彼女も鍛錬は欠かしていないのだ。

今日に関してはいつもより一層、気合が入っている。理由としては孫権(暗影)との接触だ。

孫権(暗影)から「弱い」だの「王になるべきではない」など好き放題言われて何も思わないわけがなく、怒りが湧くのが当然だ。しかし蓮華自身は孫権(暗影)よりも弱いというのは自覚している。

自覚しているからこそ次に会う時は負けるわけにはいかない。弱いとは言わせない。その為に普段よりも気合の入った鍛錬をしているのだ。

 

「未来の蓮華ねぇ。正直信じられないけど」

「本当だよ」

「ま、思春や蘭陵王たちまで見たって言うんだから本当なんでしょうね」

「蓮華姉様が2人。う~ん…想像出来ないや」

「同じ顔の人がたくさんいるなんて普通だと思うけど」

「いや、同じ顔がポンポンといないから」

 

蓮華と思春の鍛錬を見学しているのは藤丸立香、雪蓮、小蓮。話題はやはり孫権(暗影)だ。

街で未来の蓮華に蓮華が襲われたと報告を受けた時は普通に混乱案件。冷静に「夢でも見た?」と返したくらいである。

 

「死んだ人間が蘇った例があるからね。未来の人間が居てもおかしくないか。てか、私の横に天の国から来た人間だっているし」

 

黄祖や藤丸立香たちが良い例である。

 

「しかも、とっても強かったんでしょ。思春から聞いたけど雪蓮姉様や母様並みだって」

「それは気になるわ」

 

孫権(暗影)の強さは雪蓮たちが想像している以上。

街で戦っていた時も強いと感じていたが、それでもまだ本気を出していないと分かった。彼女はまだ実力を隠しているのだ。

 

「ちょっと戦ってみたいかも」

 

未来の蓮華の実力は未知数。武人として強者と戦いという欲求がある雪蓮として気にならないわけがない。

 

「また姉様は」

「でも私の勘が言ってるのよね。その未来の蓮華とやらと戦うのは私じゃなくて蓮華自身だって」

 

そうでなければ今まさに鍛錬している意味が無い。

 

「そうだね」

 

自分との決着は自分で付けねばならない。

カルデアでも英霊の中で己の過去と未来、もしもの世界という可能性は多く存在する。結局は自分自身で決着を付けている。

 

「あ、鍛錬終わったみたい。てか休憩かな。鍛錬するのも良いけどやりすぎはよくないのよね」

 

鍛えすぎは逆に身体を壊す。適度な休憩も必要だ。

もっと強くならなければと焦って逆に身体を壊しては本末転倒だ。

 

「立香、蓮華のとこに行ってあげて」

「分かった。じゃ、膝から降りてシャオ」

「えー。もうちょっと立香の膝を堪能したいのに」

 

さすりと藤丸立香の膝を撫でる小蓮。

 

「また今度で」

「じゃあ、また今度にするー」

(我が妹ながら攻めるわねぇ。たぶん呉の中でシャオが一番攻めてる気がするのよね)

 

小蓮の積極性は姉の雪蓮も認めている。

 

「蓮華さん、思春さん。鍛錬お疲れ様」

「立香。でも、まだまだよ。こんなんじゃあいつに勝てない」

「蓮華様。水分をお取りください」

「頂くわ」

 

鍛錬によって渇いた喉を潤す。

 

「鍛錬するのは良いけど無理はしすぎないように」

「そんなこと言ってられないわ。強くなるには無理するものよ」

「雪蓮さんやシャオも無理するなって言ってたよ」

「姉様とシャオまで」

「私も賛成です。鍛錬により力を入れるの良い事ですが無理のしすぎはいけません」

 

鍛錬に付き合っている思春も蓮華に注意する側だ。

 

「思春まで」

「そうそう。主の無茶は家臣や従者が止めるもんだ」

 

ぬるりと現れるは燕青。

 

「きゃっ。急に現れないでよ」

「オレ、アサシンなんでな孫家の嬢ちゃん。そして」

 

何故かデコピンを藤丸立香にする。

 

「何故」

「無茶する筆頭が人に無茶を注意するのはおかしいと思ってな」

 

藤丸立香にこそ「無茶するな」と言いたい。彼こそ無茶をするのに躊躇いのない人間なのだから。

 

「カルデアにいる奴らなら主に言われたくないセリフだぞ」

「うぐ」

 

痛い所を突かれて何も言い返せない。

 

「なんだ。立香だって無理するんじゃない」

「何のためらいもなくな」

 

いつも無茶する人間に「無理するな」と中止されても響かない。

 

「無茶する人間は止められねえさ。だからオレらみてえのは止めんだよ。分かったか思春」

「燕青の言う通りだな」

「「うぐ…」」

 

藤丸立香と蓮華は何も言い返せない。

 

「でも私は早く強くならないと。じゃないと私は未来の私とか言う奴に勝てない」

「鍛錬は継続だ。無茶して早く強くなれる可能性はあるが身体を壊すのも高いぜ」

「なら、どうすれば」

「そうだなぁ。鍛錬はそのまま継続するとして技なんかも覚えてみたらどうだ?」

「技?」

「必殺技ってやつ」

 

切り札、英霊ならば宝具だ。一発逆転を狙う、形勢を常に有利にする技。

 

「そう言えば思春は技を持っていたわね。あと姉様も」

 

何か技を習得する。悪くない提案だ。

孫権(暗影)もまた技を会得していた。彼女が披露した技は強力であり、まさに必殺の技であった。

 

「技か」

 

剣を見る蓮華。

孫権(暗影)に負けない自分だけの技を会得する。

 

「それもいいかもね」

 

蓮華が孫権(暗影)を倒す為の技を会得する修行が始まる。

 

 

622

 

 

八傑衆の異変は解決した。暗影との接触は予想外であったがなんとか乗り越えた。

全てが解決したとは言えないが一旦は呉での滞在は終了だ。藤丸立香たちはまた移動しなければならない。

次に目指すは司馬懿(ライネス)たちが向かった魏だ。于吉の刺客である八傑衆は残り4人で蜀と呉で戦った。

 

次に現れるとするならば魏であることは間違いない。既に司馬懿(ライネス)たちが向かっているが接触しているのかまでは分からない。

パスから司馬懿(ライネス)たちに異常が起きたような事は感じていないから接触していないか、難なく無事に解決したかのどちらかだ。

どちらにせよ藤丸立香たちは司馬懿(ライネス)たちと合流せねばならない。

 

「そう。もう出るのね」

「はい。お世話になりました雪蓮さん」

「そこは名残惜しそうにしなさいよ」

 

何故かヘッドロックをかけられる。

 

「すいません。オレらには」

「はいはい色々と事情があるんでしょ。でもすぐに戻ってきなさいよね。立香は孫呉の一員なんだから」

 

藤丸立香は孫呉の一員。そこまで認められているのは嬉しいものだ。

 

「確か魏に行くんだっけ?」

「はい。師匠たちは既に到着してるはずだろうな。それとあの方が何も問題を起こしてなければいいんだけど」

 

あの方とは始皇帝の事である。彼の有名度はこの異世界であっても大きい。

始皇帝が魏に現れたというだけで大事件。問題を起こすというよりも彼がいるだけで問題が起きてしまうのだ。

 

「あの方って誰よ?」

「こっちの話。大丈夫」

「気になるんだけど」

 

流石に始皇帝の話をするわけにはいかない。そもそも本人が居ないのだから話しても信じてはもらえない。

 

「話は元に戻すけど魏に行くなら気を付けてね」

「はい。八傑衆には気を付けます」

「それもそうなんだけど、魏の方はキナ臭くなってる感じだしね」

 

キナ臭いとは一体何か。八傑衆以外にも何かあるような言い方だ。

 

「冥琳アレ持ってる?」

「持ってるぞ。これを読んでみろ立香」

 

渡されたのは密書だ。

 

「読んでいいの?」

「お前なら構わんさ。それは洛陽から送られて来たものだ」

 

密書を開いて読み始める。

 

「そんなのが届いた時は驚いたぞ。いや、怪しいと思っただな」

「よね~。魏と洛陽の方で何が起きているんだか」

「返事はしていない。簡単に決めるような内容ではないからな」

 

密書の中身は色々と書かれているが纏めると簡単だ。

『曹操を討て』と書かれている。




読んでくれてありがとうございました。
次回の更新は2週間後予定です。

今回でやっと八傑衆(呉)編は終了です。次回からは八傑衆(魏)編が始まります。
いやあ、まさか八傑衆(呉)でこうも長くなるとは思わなかったです。


618~619
思春と蘭陵王VS孫権(暗影)。
相手が2人でも強い孫権(暗影)。暗影の強さは英霊並みにして話を進めています。

恋姫天下統一伝でも強化や進化の概念があります。FGOでいうところの再臨ですね。今回使わせていただきました。
孫権(暗影)は進化すると眼のような装飾が服に装着されるんですよね。そして露出も増えるという。

オリジナル設定も含まれております。本編ではただの装飾ではなく、魔眼具として設定しました。
視界の多数化や少し先の未来視。

天下統一伝では確かハロウィンイベントで五胡の材料で作られた服を着ると異能が得られるとか、そんなのがあった気がします。
なので五胡sideの暗影も服装に何かしらギミックがあってもおかしくないと思って設定させていただきました。
なので実は関羽(暗影)と曹操(暗影)にもギミックがあります。

未来視が出来ても流石に蘭陵王の顔が発光したのは驚いた孫権(暗影)でした。
そういえば虞美人も活躍させるはずが、あまり活躍させられなかったなあ…

孫権(暗影)は放った技『妖剣・狐の嫁入り』。
これは天下統一伝の孫権(動物)のです。使わせていただきました。


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暗影たちの過去。
関羽も孫権も記憶が摩耗されている設定です。
覚えていない、忘れている状態ですね。なので過去世界・別の外史世界であるが仲間の事が分からない状態になっています。(たまに思い出します。)

漢中で関羽(暗影)が雛里たちを攻撃しても特に罪悪感が無い感じでしたが、実はそれが理由。

覚えている部分もあるが所々だったりしますね。
彼女たちの「負け犬」発言。これは後々分かりますが、彼女たちはある人物に負けているというものです。
そして彼女たちは別々の外史の存在です。
孫権(暗影)が立香を知っている理由はまた今度で。


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負けたら次回はパワーアップする法則。
蓮華ちゃんはこれから頑張って技を会得します。さーて、天下統一伝のどの技を出そうか迷いますね。

藤丸立香が『無茶しないように注意する』
今さらですけど彼が無茶してる筆頭ですよね。


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最後に不穏な…。
これが八傑衆(魏)編のメインになります。

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