Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
FGOではちょっと早いクリスマスイベントが始まりましたね。
今年のサンタはマルタさんなんですね。少女時代のマルタさん。可愛いですね。
そして地獄のボックス周回の始まりだ…
さて、物語は色々と動いています。
八傑衆(魏)編ではどのような展開になるかは本編をどうぞ。
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曹操との謁見が終わり、部屋を用意したとの事なので遠慮なく使わされてもらうために向かう司馬懿(ライネス)たち。
既に城の内部は理解しているので案内も必要なく向かう。実際に曹操から「司馬懿なら案内必要ないでしょ」と言われている。
魏に所属しているわけでもないのに城の内部を理解しているというのは不思議だ。曹操も司馬懿(ライネス)相手だからこそ自由に出歩く事を許しているのかもしれない。
(私も曹操に結構信頼されてるという事かな?)
もしくは有能で可愛いから。
コツコツと廊下を歩いていると正面から見知った顔を発見。
「おや陳珪殿に陳登殿」
「あら、司馬懿さん」
「こんにちは」
見知った顔とは陳珪と陳登だ。
「久しぶりー!!」
「お久しぶりです」
「好久不见(久しぶり)」
「三蔵さんと秦良玉さん、哪吒さんもお久しぶり」
曹操陣営の者たちと出会うのも官渡の戦い以来だ。
「やっぱり曹操様の所が居心地が良いから戻ってきちゃった?」
「飽きない場所であるのは認めるけどね。でも戻って来た理由は違うよ」
戻って来た理由は八傑衆である。
「八傑衆。聞いた事無いわね」
曹操と荀彧たちも知らない集団。独自な情報網を張っている陳珪も知らないようだ。
「また面倒そうな集団だね。こんな忙しい時に」
ため息を吐きそうになる陳登。魏の現状を理解しているからこそだ。
人材が不足しており陳登も陳留に呼ばれたのである。彼女的には田畑を耕している方が性に合っているのだが今回ばかりはしょうがないと思って陳留に来たのだ。
どんな仕事をやらされるのかと少しだけ不安になっている。
「そう言えば藤丸さんや藤太さんたちはいないの?」
「2人は別行動だよ陳登ちゃん」
「そっか」
「あら、残念」
(何が残念なんだ?)
陳珪の発言にちょっと気になったが置いておく。
「それにしても八傑衆。今の魏にとって敵は蜀や呉だけかと思ってたけど意外な所から変な敵が現れるものね。いえ、魏を敵だと思っている存在は探せばいるのよね」
魏は現在の大陸で一番大きい勢力だ。疎んでいる者たちもいないとは限らない。
「大樹がより大きく太く育とうとしている時に大樹を枯らす者が現れる…既に魔の手が伸びてるのよね」
「母さん?」
「何でもないわ」
小さく何か呟いたが聞こえなかった。
「陳登ちゃん。豫洲で育ててる畑は順調?」
「うん。今は品種も改良も試してるんだ」
「へえ、いいじゃない。陳登ちゃんの育てた野菜を食べてみたいかも」
「今度用意しておくよ」
「いいの。やったー」
野菜は美味しいものだ。
肉や魚だけでなく野菜も食べよう。
「喜雨そろそろ行くわよ。華琳様から呼ばれてるから遅れると怒られてしまうわ」
「うん」
「おや、そうだったのか。これは時間を取らせてしまったかな」
「いいえ、平気よ。ではまたね」
陳珪と陳登と分かれ、用意された部屋に向かう。
「城内を歩いたけどやはり人は少ないですね」
「そうだね。人材不足というのは本当のようだ」
全く誰も居ないというわけではないが以前に司馬懿(ライネス)が滞在していた時よりも人は少ない。
(本当にこんなところを攻められたらマズイだろうな)
(一瞬だ。オレだったらすぐにでも落とせる策が出る)
(おや、司馬懿殿)
心の中でライネスと司馬懿が魏を落とす策を考えるのであった。
今更だが魏の城で魏を落とす策を考えるのは物騒だ。
「この部屋だな。って、おや」
用意された部屋に入ると既に誰か居た。
「曹純ちゃんに曹仁ちゃんだ」
「三蔵っちだー!!」
「お久しぶりです」
彼女たちは李典と陳珪と同じく任務より帰ってきていたのだ。
「何で部屋に居るのかと思ったけどお茶と菓子を用意してくれているとは」
「華琳さまがおもてなしをと」
「疲れているのは其方だろうに」
「いえ、これくらい疲れに入りませんよ」
疲れていないというがよく見ると疲労が見えるのは確かだ。しかし曹仁に関しては元気いっぱいである。
「このお菓子美味しいっすよ」
「うん。美味しいわ」
もぐもぐと菓子を口に放り込んでいく曹仁と玄奘三蔵。
「美味」
哪吒も菓子をもぐもぐと食べる。
「司馬懿さんは自分で用意するのでしたっけ?」
「こればっかりは性分でね。それにしても本当に忙しいようだ」
「はい。悪い意味での忙しいではありませんが…これでは嬉しい悲鳴が本当の悲鳴になりそうですよ」
忙しすぎるのはただただ大変である。
領地が広まって魏が強くなるのは良いが平定、管理となると忙しいのだ。
「更に報告も受けましたが変な集団も出てきたようで」
「たしか活気中だったすか?」
「八傑衆よ姉さん」
既に2人も八傑衆について知らされているようだ。早い報連相は良い事。
「大丈夫っすよ。活気中なんてやつらはあたしがぶったおしてやるっす」
「だから八傑衆だって。でも姉さんが言うならなんとかなりそうね」
「それくらいの気概があってもいいだろう」
八傑衆は必ず魏を潰す為に現れる。どのような策を仕込んでくるかは分からないが警戒はしておくべきだ。
曹仁はどんな敵か分からないが、それでも強きのまま。しかし強きでいる方がいいのだ。
最初から弱気よりかは強きでいる方がいいのだから。
627
玄奘三蔵は荀彧と共に肩を並べて少数の部隊と歩いている。
実は曹操より荀彧たちと調査に行けと言われているのだ。
「え・ん・そくっ、え・ん・そく~」
ご機嫌な足取りで歩くは李典。
「遠足じゃないぞ真桜。桂花さまの警護だ」
「け・い・ご。け・い・ご」
同じくご機嫌な足取りの于禁。
「あんたたち。少しうるさいわよ。任務の内容は街を出たら説明するから黙ってついてきなさい」
「はーい」
元気よく返事するは玄奘三蔵。
「はっ。我らの部隊はこれぐらいの速度でへばるような兵はおりません。ご安心を」
恐らく先にへばるのは荀彧だ。普段は外に出るような任務はあまりしないが、現状は人手不足。
動ける者がいるならば人手不足時は動いてもらうほかない。
「頑張りましょ荀彧さん」
(この三蔵って人…私とは正反対な人な気がする)
街から少し離れた森に入り、粛々と歩き続ける。先ほど、李典が小さく「この森は…」なんて呟いていたが今は置いておく。
流石に楽進たちもそわそわしてきているので玄奘三蔵は荀彧に任務の内容を切り出してみた。
「そうね、そろそろ話してあげようかしら」
「おお、やっとかいな。んで、任務は何や。要人の調略か?」
「なんでそんな重要任務を、あんたたちみたいなおちゃらけ部隊に頼まないといけないのよ」
「おちゃらけ部隊は酷いのー」
否定は出来ないが有能であるのは確かである。
「少なくとも調略にはむいてないわ」
「まあ、確かに調略なんて難しそうなの」
「話を戻すけど最近この辺りの森を警戒している部隊から怪しい人影があると頻繁に報告を受けているの。今回はその調査が任務よ」
「初耳ですね」
森で怪しい人影。
「なんや、そうゆう話やったんか。それならそうと早よう言う手くれればええのに」
「街中でおいそれと作戦行動を漏らす馬鹿はいないわよ」
そもそも現状三蔵が彼女たちと一緒に任務をしているのは理由がある。簡単に言ってしまえばただ飯食わせるつもりはない、仕事しろということだ。
一宿一飯の恩は仕事で返す。それだけである。
「むしろ最初に曹操さんから説明してくれればよかったのに」
「華琳さまは忙しいの」
「で、怪しい人影ってどんなの?」
「どこかの勢力の斥候かもしれません」
「その可能性もあるの。でも国境の守備隊から何の報告も上がってきてないの」
「ええ、侵略部隊というわけでもなさそうよ」
野盗か、他国の斥候かと予想するが断定できる情報が無い。
「それならいったい何なんだろー?」
「脱走兵かもしれんで。沙和のしごきに耐えられんかったんとちゃう?」
「それはないもん。沙和の訓練は一流だもん」
一流なのと兵が逃げ出さないかどうかは別問題ではあるが突っ込まない事にした。
「へえ、3人は新兵の訓練を任されてるんだ」
「はい。今までは街の警備だけでしたが華琳さまから新兵の訓練をまかされております」
3人が別々に新兵たちを育成し、本隊へと送り出す。彼女たちの育成能力は本物だ。
それぞれの訓練法を実施しており、様々な兵士が育っている。
「沙和は最初おどおどしておってな。新兵訓練をサボってたんよ」
「あー、真桜ちゃん。それは言わない約束なの!!」
サボっていたわけでなく、新兵訓練をどうやれば分からなかったから何も出来なかったのだ。しかし今では自分だけの訓練を思いつき、実践している。
彼女が育て上げた新兵たちは精神力が強いと評判の兵士になっている。
「どんな訓練なの?」
「必殺沙和式罵倒訓練術なのー!!」
「そうなんだ?」
よく分かってない玄奘三蔵。
訓練と罵倒の関係性が噛み合わないからだ。
「あんな訓練で新兵が育つのが信じられないんだけど…って、話が逸れたわね。正直、問題の人影が見つかるとは期待してないわよ。痕跡の調査が今回の主な目的だと思って頂戴」
怪しい人影を発見できれば、捕縛が優先となる。しかし情報も何もないのでは痕跡を探すしかない。
「了解なの」
「さてと、問題の場所はこの辺りのはずよ」
森は鬱蒼に生い茂っており、下手をすると来た道さえ分からなくなりそうである。
このような場所に1人で入ると迷う可能性が高い。玄奘三蔵であれば迷う。そして藤丸立香か俵藤太が探しに来るパターンだ。
「よっしゃ。怪しい人影を探すで」
「おーなの!!」
「気合を入れていきましょう」
「遠足じゃないんだから、もう少ししゃきっとして。既に敵が潜んでいる可能性だってあるんだから」
「了解なの」
「本当に頼むわよ」
森の中を調査開始。
森と一口で言っても広いものだ。全員でぞろぞろと調査するよりかは手分けして調査するのが一番である。
玄奘三蔵、荀彧、楽進と李典、于禁のペアで分かれる。ある程度調査したら1度、合流地点に集合となる。
「あたしに任せてね!!」
「沙和も頑張るのー!!」
元気な2人。玄奘三蔵と于禁は性格的にも合うかもしれない。
「くれぐれも怪我しないようにね」
「お任せあれなのっ…て、へぶ!?」
いきなり木の根っこに躓いた于禁。
(もう不安なんだけど)
「ほら、足元にも気を付けないとね」
「くぅ~っ、こんなところに自然な罠を張り巡らせているとは敵もなかなかやるの」
「いや、今のはあなたの不注意じゃない…」
どう見てもギャグにしか見えないやりとりをかわしながら、于禁と李典たちは森の奥深くへと入って行った。
「さて、あたしたちも調査を頑張りましょう」
森の中を調査するがすぐに痕跡が見つかるほど簡単ではない。
「荀彧さんはどう思う?」
「何が?」
「怪しい人の正体」
彼女たちは周囲に手掛かりがないか見まわしながら森の奥へと歩みを進めていく。
辺りの警戒は楽進に一任し、玄奘三蔵と荀彧も周囲を警戒しつつも手掛かりを探す。
「正直、全く分からないわね。この辺りは特産物があるわけでもないし、軍が通るにはあまりにも不便すぎる」
森を突っ切るにも道が険しすぎ、警備隊に見つかるのは明らかである。
「斥候だとしたら何度も発見されているのはおかしいし、警戒されているところに何度も足を踏み入れるなんて、脳みそが足りてないんじゃないかしら」
斥候は目立たないように動くものだ。怪しい人影が多く確認されたと報告が上がっている時点でおかしいと気付く。
「楽進ちゃんはどう思う?」
「私ですか…皆目見当がつきませんね」
楽進も理由は分からない。
周囲に人の気配もなく、証拠も見つからない。
「不審な人影か。それって本当に人なの?」
「どういうこと?」
「動物とか。もしくは妖怪だったり」
「動物なら普通分かると思うけど。でも遠目で見たとしたら可能性があるわね。それと妖魔の可能性は……ないとは言い切れないわね」
「そう言えば別に変な噂もありましたね」
「変な噂ってなに楽進ちゃん?」
「この森ではありませんがある山で妖怪が出るなんて噂があったのです」
この世界では妖魔は存在する。楽進が言う噂とはある山にて謎の妖怪が出没するらしい。
謎の鳴き声が聞こえてきたり、謎の破壊音が聞こえたり、謎の歌声が聞こえてきたりと色々とあるらしい。
「ふーん。なら今度その山にあたしが行ってみようか」
「え?」
「悪い妖怪だったらアタシが懲らしめてあげるわよ」
妖怪に狙われては返り討ちにする経歴がある玄奘三蔵。
懲らしめて説法を説く。それで妖魔が心を入れ替えてくれかどうか分からない。
「なら今度そっちをお願いしようかしら」
謎の妖怪の問題を解決よりも今は森で見たという怪しい影だ。
人間だとしても目的が不明。そもそも人間かどうかさえ分からない。動物かもしれないし妖魔かもしれない。
まさかの八傑衆案件かもしれない。予想はいくらでも出来るが確定までは出来ない。
情報が少なすぎるのだ。
何も見つからずに2時間は経過している。
「なにもないわね」
荀彧の方に視線を向けると彼女もせわしなく回りを見ている。余程、調査に集中していると見える。
「荀彧さーん?」
「ひゃあああっ!?」
声をかけただけなのに悲鳴を上げられた。余程集中していたのかもしれない。
「ぎゃてぇ。びっくりした」
「お、おどかさないでよ」
「脅かしたつもりないんだけど」
話している間もどこか落ち着きがない荀彧。
「どうしたの?」
「なんでもないって言ってるじゃない」
「そう?」
本人が何でもないと言っているのなら何でもないと判断。
「あ、ちょっと」
「なに?」
「…なんでもないわ」
彼女の違和感さに首をかしげながら調査に戻る。
「楽進ちゃん。そっちは何かあったー?」
「いえ、いたって平穏です」
敵らしき気配もなし。既に3時間が経過しているので一旦、合流地点に戻った方がいいかもしれないと考えだす。
「荀彧さん。一旦戻りましょうか」
「ちょっとそこで待ってなさい」
「あ。どこに行くの」
「そそそ、そんなの私の勝手でしょ。ついてきちゃ駄目よ!!」
荀彧は前屈みになって顔を真っ赤にしていた。まるで我慢をしているように。
「単独行動は迷子になるわよ。だってアタシもそうだし」
「そんなに離れないから大丈夫よ。絶対についてこないでよ」
荀彧は急いで茂みの奥へと走り去って行ってしまった。
「……あ。野暮だったかな」
「野暮ですね三蔵さん」
彼女の状態を理解出来てしまった。男であっても女であってもしょうがない生理現象である。
この後、悲鳴が聞こえてくる。
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于禁と李典ペア。
「なんや悲鳴が聞こえたような…」
「沙和には聞こえなかったけど?」
「気のせいか?」
気のせいではない気がしなくもないが、気のせいだと思って調査を続ける2人。
現在だと何も収穫は無し。鬱蒼と生い茂る森を歩くだけになっている。このまま引き続き、調査する他ない。
本当にこのまま何も見つからなければ外交担当の兵士たちに警備の強化を伝えなければならない。
「それにしてもさっき、丸焼きにしたらうまそうなヘビを逃がしてしもうたな」
「もう~、あんな可愛いヘビ食べるなんてさいてーなの」
蛇を可愛いと思う人がいれば生理的に無理だと言う人もいる。人それぞれという事だ。
于禁は蛇を可愛いと思う派。李典は食糧だと思う派。
「それにしても怪しい影の形も証拠もないの」
「せやなあ。ここまで探しても何も無いなら戻った方がいいかもな」
何時間も探しても見つからないとなるとこれ以上探しても意味は無い。ただの時間の無駄になってしまう。
打合せ通り一旦戻るべきだと判断した李典と于禁。
「ほな、一旦戻ろっか」
結局なにも見つからずに李典たちは荀彧たちと合流する。そして蛇の話をしたら何故か怒られたのであった。
今回の任務は何も成果は上げられなかった。荀彧としては曹操に申し訳ないと嘆いていたが真面目に調査して何も見つからなかったのだからしょうがない。
「それにしてもなんでウチ怒られたんやろ?」
蛇の事を話したら何故か荀彧に怒られた李典。しかし怒られた事よりも別の事の方があって気が気でなかった。
「しっかし、ここが見つからずにすんで良かったわ」
李典がいる場所は秘密裏に造り上げた工房で曹操にも報告をあげていない。本来ならば報告するべき事だが理由があって報告をしていないのだ。
秘密の工房は本日調査した森の中にあり、調査時は平然を装っていたが実は内心ドキドキであった。
「謎の妖怪云々は知らんけど怪しい影ってウチの事やな。もしくはこの方やろなあ」
李典の視線の先には巨大な体躯。
「でもこの方ずっと眠ってるからウチかな?」
怪しい影の正体は李典。そして目覚めていれば『彼』の可能性も含まれる。
「ここ見つかったら絶対にウチ罰を受けるやろなー」
罰を受けるような事をしているにも理由がある。
「ま、この方が言うにはこうする事が一番らしいんやけど」
工房の机には藤丸立香から借りた(盗んだ)暁光炉心が置いてある。
バレたら絶対に怒られるが李典としては藤丸立香なら許してくれるのではないかと勝手に思っている。
「最初はコレを解析しようかと頑張ったけど…全然分からへんかったもんなあ。でもこの方に少し教えてもらったおかげでやっと進みそうや」
うっとりと暁光炉心を見る。そしてまた視線を『彼』に移す。
彼女は暁光炉心よりもうっとりの顔をしていた。まるで恋する顔である。
「凄いなあ。こんなん惚れるしかないやん」
初めて出会った時は恐怖したが彼の正体と構造を知った時は興奮が治まらなかったほどである。
「しっかし、いつ目が覚めるんやろ。時が来たら目が覚めると言うとったけど」
『彼』は眠っている。
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洛陽にて。
「飛燕。飛燕はおるか」
「ここにいるぞ董承殿」
飛燕の前にいるのは年配の男性。
彼の名前は董承。車騎将軍の位を貰っている男だ。
「今更だが司隷をくれてやっても良かったのか?」
「ああ。魏の現状は急激に広まった領地の平定に力を入れている。そこに新たな領地をくれてやれば更に人材は割ける」
「儂としては曹操に司隷を与えるなぞ業腹だ。奴は皇帝をないがしろにしている。このままだと漢を潰し、魏を大陸の中心にするぞ」
(まあ、曹操自身が大陸の覇権を手に入れると公言してるからな)
「曹操は魏の王から皇帝になるつもりだ。そんな事は許されない。儂は曹操を討つ。そして漢帝国を再建させるのだ」
黄巾の乱の時から漢帝国はもはやボロボロであった。そして董卓による大粛清から反董卓連合が起こり、霊帝も献帝も消えた。
現在は少帝が即位しているがお飾り状態。国をなんとか動かしているのは大長州や宦官たち。栄華を誇った漢帝国は見る影もない。
「少帝陛下は悪いお方ではない。しかし漢帝国を再建、強固にしていくには力が足りないのだ。漢帝国の皇帝は献帝陛下以外におらぬ」
「董承殿は献帝にお熱なのか?」
「変な意味ではない。献帝陛下こそ漢帝国の象徴にふさわしき人物なのだ。霊帝陛下よりもな」
董承の手に手紙がいつの間にか持っていた。
「曹操暗殺計画に仲間が必要だ。そして魏の内側に間者も必要だ」
「分かっておる。これから計画を進めるにあたって仲間はこれで集める」
手紙が仲間を集める物。
「まずは劉備と孫策の所に送る」
「曹操が邪魔だと思っている奴ら筆頭だからな。上手いけば反董卓連合のようになる」
飛燕も反董卓連合の出来事は知っている。
「あれほど大事になれば暗殺ではないな飛燕よ」
「いや、暗殺だ。もしも劉備と孫策が返事をくれたならば表向きは奴らに任せればいい。裏では我らが曹操を暗殺すればいい」
魏という国は劉備と孫策に潰してもらう。曹操個人は飛燕と董承の手によって暗殺すればいい。
(その手紙で劉備と孫策が仲間になる可能性は低いだろうな。ま、その為に張白騎がいるんだがな)
張白騎と用意した『ある軍団』。劉備軍と孫策軍の代わりになるものだ。
「孫策の方はいいとして、劉備のところとは仲良くしておきたい。なんせ劉備のところに献帝陛下がいるはずだからな」
「もうそんな情報を」
「儂らも無能ではない。消えた霊帝陛下と献帝陛下の行方くらい見つけられる」
ボロボロの朝廷でも何も出来ない事は無い。ある程度、内部を立て直す事が出来れば十分だ。
「劉備め、霊帝と献帝を保護していながら何故すぐに朝廷に返さんのだ。すぐに返せば朝廷はすぐにでも元に戻る。いや、前以上になったものを」
「劉備が天子姉妹を今だに手元に置いているのは何かしら理由があるのだろう。返さないというのなら奪い返せばいい話だ」
「そうだな。しかし今の敵は曹操だ。その後は孫策に劉備は天子姉妹を独占していると理由をつければ動いてくれるだろう」
魏は強大な国であるが蜀と呉が手を組めば結果は分からない。しかし2人の目的は魏の壊滅でなく、曹操の暗殺だ。
「曹操1人を殺せばいい。それだけで魏は勝手に滅びる」
「うむ。魏は曹操1人で成り立っているようなものだからな」
曹操の圧倒的なカリスマあっての魏でもある。ならば曹操が死ねば魏は急激に弱体化し、蜀か呉に飲み込まれる。
「次に魏の内部に潜ませる間者だが」
「それならもう既に潜ませておる。曹操もまさか内部に裏切り者がおるとは思うまいて」
「董承殿は仕事が速い事で」
魏の内部に裏切り者がいる。
読んでくれてありがとうございました。
次回の更新は2週間後予定です。
どんどんと物語は不穏へ。
八傑衆(魏)編では色々と陰謀が張り巡らされています。
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魏のみんなと再会(全員ではない)
読者様方も気付いておりますが、今の魏は革命(魏)の蜀から攻められる部分を元としています。
元にしていますがほぼオリジナル展開になると思います。
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ここは荀彧の幕間を元に書きました。
北郷一刀が居れば桂花のある状況を見ちゃったシーンになりますね。
まあ、この物語は魏√ベースではないので見られる事は無い…かも?
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この物語では怪しい影の正体は李典でした。
秘密裏に工房を造っていたのです。
工房を造った理由としては『彼』の為と自分の為でもありますね。
秘密基地っていうか秘密の工房って浪漫があります。
さて、『彼』とは一体誰なのか。(分かっちゃうかな)
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不穏な計画は進んでいます。そして、新キャラが登場!!
その名も董承。
彼は恋姫の『紫電一閃!華蝶仮面』に登場してくるキャラです。
曹操暗殺計画と言ったら彼が出てきますからね。
物語の展開上、彼もオリジナル寄りになっていくと思います。
そして魏の内部に裏切り者がいる?