Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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明けましておめでとうございます。今年も頑張って更新していきます。
2022年が良い年になりますように!!

FGO
ツングースカ面白かったです。
ついにコヤンスカヤの決着が着き、そして太公望は普通に良い人でした。
今年のFGOはどのようになっていくのか楽しみです。
(やはり新年ガチャは魔境でした…)

恋姫
天下統一伝も新年イベントが始まっているようです。
また魅力的な恋姫キャラたちが様々な姿になっているのは良いですね。
新年という事で今は晴れ着を着た恋姫たちがピックアップされているようです。
そして2022年は英雄譚4・5・外伝の情報が徐々に明かされていきますね。
楽しみです!!


さて、前書きで長くなりましたが本編をどうぞ!!
それにしても何だかんだでこの話で200話なんですよね。


朕道中-袁術と張勲-

637

 

 

ガツガツガツ。

勢いよく食事をする音が聞こえる。口の中に掻っ込む動作を見るに相当空腹であったことが分かる。

 

「むぐむぐ。生き返ったのじゃあ」

「どんどんと食べてくださいねお嬢様」

「七乃もな」

「はい、いっぱい食べましょう。なんだか食べれば食べるほど力が湧いてきますし」

 

がっついているのは袁術と張勲だ。食べているのは麦がゆ。

 

「はっはっは。この仙麦はただ食すだけで意気軒昂、頭脳明晰、精力絶倫、一粒三百米突(メートル)のスーパーフードだからのう」

 

スーパーキュケオーンとも言う。

始皇帝とキルケーによる共同開発によって作られたスーパーフード。

 

「助けてくださってありがとうございます仙人さま」

「うむ。助かったのじゃ」

 

袁術と張勲は目の前の人物が始皇帝だと思っていなく、仙人だと思っている。

2人にとって始皇帝は過去の人間なので生きているはずがないと思っているのが当然だ。彼の姿を見て普通の人間でないと思った事より仙人の類ではないかと判断したのである。

 

(それにしてもこの仙人さまは凄い覇気ですね)

 

張勲は彼の発する覇気に気付いている。そして覇気を抑えているのも気付いている。

仙人とはこれほどの存在なのかと驚いているが表に出さないように平然を装っているのだ。

 

(仙人ってこんなのが多いのでしょうか?)

 

袁術と張勲にとって仙人に会うのは初めてである。

仙人の世界がこんな傑物ばかりしかいないとなると恐ろしいものだ。

 

(はっきり言ってこの仙人さまの覇気って孫策さんや孫堅さんを軽く超えているような…)

 

始皇帝の覇気並みの人物となると世界に何人もいない。もしも雪蓮や炎蓮が始皇帝並みになるには幾つの月日を重ねればいいか分からない。

 

「して、何故お主らはあんな荒野で倒れておったのだ?」

 

空腹で倒れていたのは見て分かった。空腹で倒れるまでの過程が知りたいのだ。

 

「うむ…語るも涙。妾たちの大変な旅を話すのじゃ」

 

袁術はこれまでの過去を話した。

炎蓮の代から雪蓮より建業から追い出された経緯。追い出された後から荒野で行き倒れたまで。

袁術と張勲は包み隠さず話した。中には無駄に誇張された部分や嘘な部分もあるが始皇帝は大体理解した。

 

「なるほどのう」

 

始皇帝は、そう言えばと思ってこの異世界に召喚された当初を思い出す。

方士である于吉と戦った時に袁術と張勲を見かけていたのだ。当時は見かけただけで会話はしていない。

 

「全ては孫策めが悪いのじゃ!!」

「そうそう。孫策さんに負けて全て奪われたから…」

「違うのじゃ。孫策のやつがうだうだと五月蠅いから全て返してやったにすぎないのじゃ」

「そうでした。お嬢様が孫策さんに返してあげたのでしたね」

「うむ。なのに妾たちを建業から追い出すという始末。まったく人としてどうかしてるのじゃ!!」

 

自分の事を棚に置いて好き放題言う始末。

 

「そうかそうか。お主たちも苦労したのだな」

「本当なのじゃ。蜂蜜水も全然飲めないのじゃ…」

「今まで燻っていた傭兵たちをまとめて盗賊たちを討伐し、路銀を稼いでいたんですけど…色々あって今は私とお嬢様だけなんですよ」

 

袁術はどうにか勢力を戻して雪蓮たちに仕返ししようと考えているようだが上手くいっていないようだ。

意外にも袁術と張勲は本気を出せば勢力を取り戻せる力は持っているはずだ。ただ2人とも詰めが甘いのか最後の最後で選択を誤ったり、失敗していたりする。

 

「朕のおかげで助かったがこの後はどうするつもりなのだ?」

「こら、仙人よ。朕という言葉を使ってはならぬ。その言葉は皇帝しか使ってはならぬ自称なのじゃぞ!!」

「そうですよ。いくら仙人さまだからって使ってはいけない言葉があります」

「何を言っておる。朕という言葉は朕の為にあるものぞ?」

 

始皇帝は「さも当然だ」という顔。袁術と張勲は「え?」という顔をした。

 

(七乃。こやつ、朕という自称の意味を分かっておらぬぞ)

(そのようですね。仙人の世界は私たちと違いますから、そのせいかもしれません)

 

古代中国では『朕』という言葉は一般的に使われており、天子の自称として使われるようになったのは始皇帝の代からだ。

仙人は古代中国から存在していたと言われている。人間世界と仙人世界はかけ離れているので「朕」という言葉の重要性は異なっているかもしれない。

尤も目の前にいる人物こそが始皇帝本人なので「朕」という言葉を使う事は当然であり、仙術を極め真人にまで到達した存在なので誰も文句は言えない。

 

「仙人さまが朕という自称を使うのはいいですが、あまり人前で使わない方がいいですよ。最悪の場合、不敬罪で罰を受けても文句は言えないのですから」

「朕が罰を受ける事はないのだがのう」

「仙人さまでもここは皇帝が治める大陸なのですから、好き勝手にはできませんよ」

 

始皇帝を罰する事が出来る人物はいるのかどうかだ。

 

「話は戻りますが、私たちはこれでも洛陽を目指しているのです。洛陽で朕を自称したらどうなるか…」

「ほう。お主らも洛陽を目指しておったのか。実は朕もだ」

「え、そうなのですか。なら猶更ですよ」

「うーむ。朕が朕という自称を使うなというのは変な感じ」

 

袁術と張勲は目の前にいる人物が別世界と言えど始皇帝とは思っていない。もしも始皇帝と分かったら気絶するかもしれない。

 

「まあ、立香からもあまり騒ぎを起こすなと言われているしな。しょうがないのう」

(りつか…何処かで聞いたような?)

 

何処かで聞いた事があるような名前。しかし張勲は思い出せなかった。

 

(それよりもお嬢様。これは丁度いいかもしれませんよ)

(分かっておる。目の前にいるのが仙人なのじゃから仙術を使えるはずじゃ。ならば妾たちを守ってもらいながら洛陽まで安全に行けそうじゃ)

(実際に彼の周りになんか水っぽいのが浮いてますし。てか、彼ってちょっと浮いてません?)

 

覇気はもとより、彼の姿から特別だというのは分かる。そして仙人なのだから仙術を使えるのも当然だと思っている。

実際に始皇帝は仙術が使用する事ができ、そこらの盗賊ならば一瞬で制圧できる力の持ち主だ。

 

(ならば決まったな)

(はい。この方に私たちを守ってもらいながら安全に洛陽に向かいましょう!!)

 

袁術は洛陽に到着したら袁家の伝手を使って勢力を取り戻し、袁家を復興させようと思っているのだ。

上手くいくかはともかく。

 

「あの仙人さま。お互いに洛陽に行く目的があるのでしたら…一緒に洛陽まで行きませんか?」

「いいぞ」

((よし!!))

 

袁術と張勲は始皇帝と洛陽へ向かう事が決定した。

朕道中の始まりである。

 

 

638

 

 

朕道中の始まり。

始皇帝はふわふわと浮きながら袁術と張勲の後をついていく。

 

「やっぱ本当に浮いてる」

「これが仙術とかいうやつなのかのう」

 

2人にとって仙人は普通の考えでは分からない存在だと思っている。

仙人の力さえあれば盗賊たちが襲ってきても安全は保たれる。もしも負けそうになれば囮にして逃げればいいというのが2人の考えである。

尤も始皇帝がそこらの盗賊に負けるほどの弱者ではない。たった1人で一国を滅ぼしてもおかしくはない力を持っている。

 

「そう言えば仙人さまは何をしに洛陽へ行くんですか?」

 

袁術と張勲が洛陽に向かっている目的は力を取り戻すためだ。袁家の縁を辿って力を貸してくれる勢力に取り入ろうとしているのである。

 

「朕が洛陽に向かうのはちと調べものがあるのだ」

「調べものですか?」

「うむ。恐らくは洛陽の書庫にでもあるかと思ってな」

 

洛陽の書庫。正確には禁城の書庫。

膨大な資料は何処にあるかと考えれば大陸の中心である洛陽だと思うのは当然だ。

 

「何を調べるのですか?」

「この世界の始皇帝についてだな」

(この世界?)

 

始皇帝が調べたいものは外史世界の始皇帝について。

別世界とはいえ同じ始皇帝だ。気にならないわけがなく、どのような存在か知りたいが為に動いたのである。

この外史世界の始皇帝も特別で天才であったようで兵馬妖の作成や玉璽を魔道具化、妖術等の開発を進めていたようだ。

 

(この世界の朕も色々とやっていたみたいだしのう)

 

外史世界の始皇帝と異聞帯の始皇帝。

史実と同じ道を辿るが違うのは秦を建国した後である。

異聞帯の始皇帝はサイバー羽化昇天した結果、世界統一した。外史世界の始皇帝は不老不死を得る為に様々な妖術や禁術を会得した。

 

(この世界の始皇帝は不老不死を得られなかったようだが…その代わりに色々と残した可能性があるからな。それがちと気になる)

 

現段階で分かっているのは兵馬妖や玉璽。

 

(この世界の朕は本当に不老不死になれなかったのかのう)

 

外史世界の始皇帝。

異聞帯の始皇帝では考えつかなかった事をしている。その結果で何が起きているかは分からない。

 

(朕だったらサイバー羽化昇天以外…妖術や禁術を元に不老不死を目指すならどうするか)

 

始皇帝は考える。

 

(うーむ。不老不死を手にれる為の1つとしてあの方法を考えていたな。でもあの方法は不老不死になる為の前段階というか保険みたいなものだしのう)

 

外史世界の始皇帝が不老不死に何処まで近づいていたか分からない。洛陽で調べれば何か分かるかもしれないのだ。

 

(洛陽に行けば分かるか)

「仙人よ。どうかしたかのう?」

「なんでもないぞ」

 

ふよふよと飛びながら始皇帝は荒野を進む。

何事もなく洛陽に到着出来れば一番だ。しかし、こういう時に限って何かが起こるものである。

 

「殺されたくなかったら身包み置いていけやー!!」

「金目のもん寄こせー!!」

「女は置いていけ!!」

 

見事なまでの盗賊団が現れた。その数30人はいる。

 

「にょええええええ!?」

「いやああああああ!?」

「うわぁ」

 

盗賊団に悲鳴を上げる袁術と張勲。始皇帝はというと何とも言えない声を出した。

 

「お頭。この男の服装とんでもねえですぜ!!」

「すげえな。どういう素材で作った服だ?」

 

盗賊団は始皇帝に目を見張る。

 

「なんと…」

 

始皇帝は手で顔を塞いだ。

 

「お頭。こいつ俺らが怖いみたいですぜ」

「がはははは。俺様の覇気が凄いって事だな」

「「「がはははははは!!」」」

 

荒野に笑い声が響く。その中で始皇帝は憐れんでいた。

 

「なんと憐れな。人から物を奪えねば生きられないとはのう」

「は?」

「お主たちも苦労しているのだな。朕の秦ならば奪うなんて行為はさせないものの…」

 

始皇帝の統治した秦ならば盗賊行為なんて行為はない、犯罪行為がない。飢えも戦もない平和な国である。

そのような国で生きているならば盗賊団はいない。そもそも盗むという行為すら存在しないはずだ。

 

「民は不自由なく生きていくべきだ。奪うなんて行為はもっての外である」

 

始皇帝の統治する秦ならば不自由なく暮らせるが『知識』と呼べるものが消える。

何も考えずに生きるというのを取るか、英知を得たいのを取るかは人によって様々だ。

 

「はん。人から物を奪うなって説教のつもりかよ」

「俺らをこんなんにしたのは国のせいなんだよ」

「悪いのはこの世の中だ。こんな世の中だから俺らは不幸なんだ!!」

 

盗賊団は全て悪いのを国のせいにしている。

 

(うわー…この人たち子供みたいなこと言ってる)

(のう、七乃。あやつらは何を言っておるのだ?)

(ただの戯言なのでお嬢様は深く考えなくていいですよ)

 

何処からどう聞いても盗賊団の言い訳は聞くに堪えない。しかし始皇帝は「うんうん」と頷いている。

 

「その通りだ。誰かが大陸を手中に治め、平和にせねばならん。民たちは不幸になってはならん。幸せであらねばならんのだ」

「はは。分かってるじゃねえか」

「なら俺様たちに奪われてもしょうがないってわけだ!!」

 

盗賊たちは始皇帝たちに向かって襲い掛かる。袁術と張勲は小さく「ひっ!?」と悲鳴をあげた。

盗賊団に捕まった女性の末路は考えたくない。そんな中、始皇帝は特に焦りもない。

 

「いや、それとこれとは話が別だぞ?」

 

腕を天に掲げ、水銀を巨大な剣に変形させる。

 

「「「へ?」」」

 

盗賊たちは間抜けな声を出した。

 

「「へ?」」

 

袁術と張勲も間抜けな声を出した。

 

「それ」

 

掲げた腕を降ろすと水銀の巨大剣も同時に振り下ろされた。

誰にも当たってはいないが恐怖を盗賊たちに埋め込んだ。始皇帝には勝てない。逆らったら一瞬で殺されると分からされたのである。

盗賊たちの先ほどの自信は切断され、顔は真っ青。次々と武器を落としていく。

 

「お主ら」

「ひぃっ」

 

盗賊たちは悲鳴しかは声が出せなかった。

 

「お主らも好きで盗賊になったわけではなかろう。人から奪わねば生きられない…そういう道しか選べなかったのだろう。それでは憐れだ」

 

始皇帝は盗賊たちに近づく。それだけで盗賊たちは大きな覇気を感じた。

 

「お前たちに道を示す。ただ人から奪うのではなく、戦って平和を勝ち取ってみろ」

「は?」

「このまま盗賊行為をしていればいずれ捕まって罰せられるだろう」

 

彼らを捕縛するのは魏か蜀か呉のいずれかだ。

 

「ならば三国のいずれかに所属するのもいいだろう。もしくは三国以外でもいい。もしくは自らが三国を超える国を建国するのもいい…出来るかは置いておいて」

「何を言って…」

「盗賊行為をするくらいなら兵士にでもなった方がマシというものだ」

 

人から奪った物で生きるより、兵士となって生きる方がまだ良いと言っているのである。

盗賊として死ぬより兵士として死ぬ方が良いと言う者もいるかもしれない。国に仕える兵士の方が安定した収入も得られるかもしれない。

ならば今の世の中の通りとして兵士として戦えばいい。兵士にならなくとも真っ当に生きればいい。

 

「それでも盗賊を続けていくのならば朕は何も言わぬ。それはお主らが選んだ道だ」

 

始皇帝は水銀を矢印の形へと生成した。

 

「こっちが魏。こっちが蜀。こっちが呉。そしてそれ以外。選ぶのお主らだ」

「選ぶ…」

「そうだ。このまま盗賊行為で終わるよりもお主らの力で世を変えてみよ。お主らの力もほんのちょっとは平和への架け橋になるやもしれんぞ?」

 

指をほんのちょっとだけ動かした。

 

「……ほんのちょっとかよ」

「お主ら程度で平和になるくらいなら今頃、飢えも貧困もないだろうに」

「へっ、そりゃそうか」

 

軽く笑ってしまう盗賊の頭。

 

「なあ」

「なんだ」

「俺は三国よりもあんたに付いて行きたい」

 

他の盗賊たちも頷いた。

彼らは始皇帝の覇気に、カリスマに惹かれている。

先ほどまでいい加減な口調ではない。本気の眼で始皇帝を見ている。

 

「ふっ、流石は朕。言葉だけで更生させるとは」

「どうなんだ?」

「嬉しく思うが朕はやるべきことがある。お主らを導いてはやれぬ」

「……そうか」

 

残念そうに口を開いた盗賊の頭。

 

「あんたなら三国よりも早く大陸を平和にしてくれそうに見えたんだがな」

「ま、朕なら出来るな」

 

大陸統一でなく、世界統一を成した人物だ。

この外史世界でも始皇帝ならば統一させてもおかしくない。

 

「あんたスゲエな。そんな簡単に出来るって言うなんてな」

「実際に出来るし」

(簡単に出来たら苦労しないんですけど…この方なら本当に出来そうだから怖いんですけど)

 

張勲は静かに慄く。

 

(てか、盗賊たちをこんな簡単に魅了するなんてどんだけの覇気ですか)

(のう七乃。この仙人ってとんでもなく凄いやつなんじゃないかのう)

(ええ。私たち…実はとんでもない人と出会ってしまったかもしれません)

 

とんでもない人以上の存在だ。

 

「お主たちの道だ。頑張れ」

「また何処かで会えますかね」

「そうだのう。縁があればな」

 

始皇帝たちは盗賊たちと別れるのであった。

彼らがまた始皇帝と再会するのはまた別の物語である。

 

 

639

 

 

朕道中はまだ続く。

盗賊団を更生させた始皇帝たちは洛陽に向けて足を歩める。

 

「こ、この山を登るのか…」

「大変ですけどこの山を越えれば洛陽まで近道になるんですよお嬢様」

「うう…登りたくないのじゃあ」

 

山登りは大変だ。簡単に山を越えられるものではない。

 

「頑張りましょうお嬢様。それに……なにかあれば仙人さまの力でなんとかなりますよ」

「そうじゃな」

 

チラリと始皇帝を見る2人。

未だに仙人の正体が始皇帝だと分からないままだ。

 

「この山はなかなか良いのう」

「山が良いですか?」

「うむ、この山はなかなか神気に溢れておる。幻獣とかもいるかもしれん」

「げ、幻獣…」

 

始皇帝たちが登っている山はただの山ではない。神気が、魔力が溢れている。

幻想種が住んでいてもおかしくない程であり、仙人もまた住んでいてもおかしくない。

 

(仙人さまが言うのであれば嘘じゃないんでしょうね)

(七乃。この山登って大丈夫かのう?)

(大丈夫ですよ。だってこっちには凄い仙人さまがいるのですから)

(うむ、そう言えばそうじゃな。この仙人さまは恐ろしいほど強いし…なんなら妾たちの戦力として取り込みたいところじゃ)

 

袁術は始皇帝の力さえあれば誰にでも勝てると思っている。

盗賊団との戦いでも力の一部を見た。たった一部の力でさえも袁術の頭の中では孫家全員を叩き潰せると判断した。

化け物みたいな力を持つ炎蓮や雪蓮さえも始皇帝ならば指一本を動かすだけで倒せる。

 

(この仙人さまをどうにか取り入れたいのう)

 

始皇帝さえいれば袁紹や曹操らも倒せると思っている。

 

(これは逃す手はないぞ七乃)

(そうですね。しかしどうすれば仙人さまを取り込めるかが問題ですね。仙人さまが欲しいものや望むものとかあればいいんですけど)

 

仙人が欲しいものはイメージが出来ない。どちらかと言うと仙人に物欲等は無い。

 

(あれ、ほんとに仙人の欲しいものが予想できないんですが…)

(そんなものこれから見つけていけばよい。もしくは聞けばよかろう)

(それもそうですね)

 

好きなものを聞けばいいだけだ。これほど簡単な事はない。

 

「仙人さま。好きなものとかあるんですかのう?」

「好きなもの…ふむ、強いて言うなら水銀かな。腐らず、乾かず、固まらず。永劫不滅を象徴するかのようなその在り方はまさしく、朕に相応しい美しさであろうよ」

「す、水銀ですか」

 

水銀をたくさんあげるから臣下になれと言われても首を縦に振るイメージがつかない。

 

「い、一応聞きますが嫌いなものとかあるんですかのう?」

「嫌いなもの。ふむ、強いて言うなら水銀かなぁ……あれ本当に不味くてな。もう二度と口に入れたくないぞ」

「「………」」

 

袁術と張勲は何も分からなくなった。

ハテナマークを頭の上にたくさん添付しながら2人は山を登っていく。始皇帝も一緒に登っていく。

この山は神気が溢れていると言うが神獣らしきものはまだ見かけない。いるかもしれないと言うだけで簡単に神獣に会えるというわけではないのだ。

実は神獣に会えるかもしれないと思って内心ドキドキしてる袁術と張勲。もしも会えたら捕まえたいと思っている。

 

(捕まえれば一儲けできますかね?)

 

神獣で一儲けしようと思っているのならば罰当たりなのか、なかなか肝が据わっているのか。

 

「そろそろ足が疲れてきたのじゃ。七乃…おんぶしてくれたも」

「しょうがないですねえ」

「お主はその娘に甘いのう」

「お嬢様は可愛いですから」

 

張勲にとって袁術こそ仕える主君であり、可愛くて甘やかしたい存在だ。

彼女の為なら何でも出来る。他の人物ならばどうでもいいが袁術ならば命を賭けられるのだ。

他の者には分からなくていい。自分さえ袁術の良さが分かればいいと思っているのだ。

 

「仙人さまにはいませんか。目に入れても痛くない可愛い子なんて?」

「そうさなぁ」

 

そんな存在がいるかどうか考える始皇帝。

人としては面白く、素晴らしいと思える人物はいるが目に入れても可愛いかと言われれば少し違う気がする。

 

「まあ…あやつも見方によっては可愛いところがあるか?」

「おや、誰ですかそれは?」

「そやつはな朕と覇を競い合った…」

 

ここでパカっと擬音が聞こえた。

 

「「「え?」」」

 

足元に地面が無い。見えたのは暗い穴である。

 

「いやああああああああああああ!?」

「のわああああああああああああ!?」

 

張勲と袁術は落ちていった。

 

「落とし穴?」

 

ふよふよと浮いているので始皇帝は落ちていない。

 

「おっと、助けに行かねばな」

 

始皇帝は謎の落とし穴の底へと向かう。

 

 

640

 

 

山のある場所。

 

「天朝様。何か罠にかかったようです」

「新たな幻獣か?」

「幻獣って感じじゃないです。恐らく人…たぶん旅人か何かが間違って落ちたんだと思います」

「こんな所を通るとは変わった人間だ。いや、この山は普通の人間が入れるはずがない。間違っても入れるはずがないぞ」

 

少女と少年か少女か分からない者が2人が会話をしている。

 

「そうですよね。ここは普通の人間が入れるはずがない山です」

「そうだ。ここは特別な存在しか入れない山だ。間違って罠にかかったではない。間違って山に入る事もないのだ」

 

特別な山。神気が溢れ、幻獣や神獣がいてもおかしくない。

幽世のような場所なのである。よって簡単に人間が入る事は出来ない。

 

「確かに間違って迷い込んだなんて事はあるが…そんな事はない。朕が人避けの術まで張ったのだぞ」

「それでも確かに人間が入って来たのは間違いないですよ」

 

絶対に入ってこれない場所に誰かが入って来た。

少年とも少女とも見れる人物は考え込む。

 

「何故入ってこれたかは分からんがこれはいい実験になるかもな」

「実験て…どういう事ですか」

「お主の造ったナマモノの有能性を確かめてみようじゃないか」

 

少女は「なるほど」と頷く。

 

「せっかく作ったのですから本番前に練習するのは当然ですもんね」

「そうだ。どんなものであれ造ったものは確認するものだぞ」

 

動作確認は大切である。

 

「では試せ。天朝の言葉ぞ?」

「………」

「どうした?」

「いえ、貴方の事を天朝様と呼ぶのはやはり違和感があるので…」

 

微妙な顔をする少女。

 

「不敬」

「だって天朝様って言葉は天子様という意味ですよね。貴方は天子様ではないですし」

「いや、朕は天子である。まあこの国では違うがな」

「ほらぁ」

「ほらぁ、ではない」

 

パタンを本を閉じる少年とも少女とも分からない人物。

 

「朕は極東の国の天子である。国は違えど尊い存在なのは違いないのだ」

「そ、そうなんですか…」

「だからお主も言葉には気を付けろ」

 

ゾワリと闇が滲み出る。

 

「そ、それは止めてください」

「ふん。それよりも実験を開始しろ。あのナマモノを投入しろ」

「はい」

 

彼らが言うナマモノが解き放たれた。




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新は未定です。


前書きにも書きましたが何だかんだで200話に突入。
けっこう書いてきたな~ってしみじみ思います。

5章ですがまさか1年経過しても終わっていないとか予想外。
実は去年の段階で5章は終わらせて6章に入るつもりだったんですよ。それがまだ5章の前半だとは作者の私もびっくり。
一応八傑衆(魏)編で5章前半は終了です。次で中盤です。
はい、後半でなく中盤なんです。5章は長いんです。
5章のラストは赤壁の戦い編予定なんですが、それまでがまだまだあるんですよねえ。

現段階だと。
今は『八傑衆(魏)編(曹操暗殺計画編)』
次からはまだ仮ですけど
『魏の日常編』(書くか考え中)
『蜀の日常編』(書くか考え中)
『謎の〇〇形の〇館編』
『大胆な侍女にご用心編』
『呉と魏の戦争編』
『南中(南蛮)編』
『蜀での日常編』(書くか考え中)
『最後の〇〇衆編』
『呉の日常編』
『呉と蜀の同盟編』
『赤壁の戦い編』
~てな感じです。
実はまだこの中に他にも考え中の『○○〇編』が入るものがいくつかあったりします。
なので本当に5章は長いですよ。
ゆっくりと続きを待って頂けると助かります。



637
始皇帝が袁術と張勲を拾いました。
彼女たちに食べさせてあげたのはスーパーキュケオーン。
公式には無いですけど、いずれ出てもおかしくないと思います。
始皇帝の作った仙麦って本当にスーパーフード。リアルに欲しいです。

そして、始皇帝は袁術と張勲の2人と一緒に洛陽に向かう事になりました。
(2人は彼を始皇帝だと気付いていません)


638
朕道中
盗賊団を魅了する始皇帝はやっぱ凄いです。
彼に付いて行きたいと思った盗賊団は当然の反応だと作者は思う。
それだけのカリスマがあるから。

今の始皇帝がいれば恋姫世界を統一できるかどうか。
なんか本当に出来そうなので恐ろしいです。


639
朕道中はまだまだ続きます。
謎の山を登ります。この山に関してはオリジナル設定なのです。
古代の中国なら仙人が住んでいそうな山があってもおかしくないと思います。
日本だって鬼が住む山があったとか伝承にありますしね。

そして謎の穴に落ちるというオチ


640
謎の2人組が登場。
少年とも少女にも見える人物に関しては読者様たちも分かっちゃいますね。
既にこの物語にも登場してますし。

もう1人の少女に関しては初登場なので分からないと思います。この段階で分かった読者様がいたら凄いです。
彼女は恋姫シリーズのキャラです。
オリジナル設定を色々と組み込んでいますが彼女はオリキャラではありません。
ちゃんと恋姫シリーズに登場しているキャラですね。
彼女のちゃんとした活躍はまだ先ですけどね。

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