Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。

FGOではレディ・ライネスの事件簿の追加エピソードでフェイカーが実装されることが発表されましたね。(クラスはフェイカーではなくブリテンダーになったようです)
これはエルメロイ組やイスカンダルに対しての台詞が気になります。
なんとなくですけどモードレッドやカイニスと仲良くなりそう。

さて、こっちの物語本編では袁術と張勲が朕道中に巻き込まれ中。
はっきり言ってしまうと始皇帝ほぼ1人で解決します。

では本編をどうぞ。


朕道中-袁術と張勲と不思議な地下空間-

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2人の絶叫が響いていく。

 

「のわあああああああああああああああああ!?」

「いやあああああああああああああああああ!?」

 

落ちているのは袁術と張勲である。

普通に山を登っていたら足元が開き、落ちたのだ。何故、足元が開いたかはこの際関係ない。

いま重要なのは如何に助かるかだ。このままだ地面に激突してこの世とオサラバしてしまう。

 

「も、もう駄目じゃああああああ!?」

「お嬢様。私を下敷きにしてくださいぃぃぃ」

「そんな事できるかぁぁぁ!?」

 

袁術の為なら命を賭けられる張勲の忠義は素晴らしい。しかし袁術も人の子なので張勲を下敷きにはできない。

 

「あっ、そうだ。仙人さまなら助けてくれるはずです!!」

「そ、そうじゃな。流石に仙人さまもこの状況なら助けてくれるはずじゃ」

 

落ちている2人は上を見るが誰も助けに来てくれる様子はない。

 

「もう駄目じゃあああああ!?」

「見捨てられたあああああ!?」

 

このまま一直線に落下していく2人。今度こそ駄目だと覚悟した瞬間にぶよんっと柔らかい物が身体を包み込んだ。

 

「「え?」」

「人聞きの悪い。朕も目の前で落ちていく者を助けないほど鬼畜ではないぞ」

 

袁術と張勲は始皇帝の水銀のクッションによって助かった。

 

「え、えーっと…仙人さまは私たちよりも上にいたんじゃ」

「お主らを追い越し、下で助ける準備をして待ってたぞ」

「あ。そうなんですね」

 

2人が悲鳴を上げている隙に始皇帝は地下までたどり着き、水銀クッションを配置して待機していただけである。

飛べるなら空中で助ければ良かったのではないかと思われるかもしれないが、落下中の人間はパニック状態なので逆に助けると危ない。

安全に助けるならば下で救助準備を進めた方が一番なのである。

 

「助かったのじゃあ」

「仙人さま何度も助けてくれてありがとうございます」

「構わぬ構わぬ」

 

始皇帝にとってこの程度の救助で恩を売りはしない。

 

「落ちる者を助けるのは慣れておる」

「慣れてるって」

「まあ立香の奴は落ちるのに慣れて悲鳴はあげなくなったがな」

「落ちるのに慣れたっておかしくないですかその人?」

 

スカイダイビングでもないのに落ちるのに慣れる人間はいない。

そもそも高い所から慣れる事はないかもしれない。どんなに多く数をこなしたところで高い所から落ちるのは怖いものだ。

 

「しかしここは何処でしょうか?」

 

張勲の疑問は尤もである。

山を登っていたらいきなり謎の地下空間へと落ちた。冷静に考えても意味が分からないはずだ。

 

「見て分かる通り地下空間だ。これが自然のものなのか人為的なものかは分からん」

「ここはただの山じゃなくて神気溢れる山ですもんね。こういう場所があってもおかしくないか」

「もしかしてここって他の仙人さまが作った住処だったりするのかのう?」

「あ、お嬢様の言う通りかもしれませんね」

 

仙人の住処。

否定は出来ない意見だ。幻獣や神獣がいてもおかしくない山に仙人がいてもおかしくない。

人為的なものがあれば仙人が造ったものだと考えるのも妥当だ。

 

「ま、それは歩けば分かるだろう」

 

始皇帝が奥を指す先には道が続いていた。

地下空間の謎を解くなら進めという事である。

 

 

642

 

 

謎の地下空間を迷いなくズンズン進む始皇帝と、その跡を付いてくる袁術と張勲。

自然で出来た地下空間なのか人為的に出来た地下空間か分からない。初見での感想は自然で出来たものだと予想している。しかし落とし穴は人為的だと予想している。

 

「あのー」

「なんだ?」

「なんか迷いなく進んでいますけど出口が分かってるんですか?」

「いんや?」

「適当に進んでいるのか!?」

 

袁術がツッコミを入れる。

 

「適当ではない。ここが地下だという事は出口は上だ。そして空気の流れを感知しながら歩いているから迷っていないぞ」

 

上から落ちたならば出口は上というのは当然の答え。そして始皇帝の感知能力で空気の流れを読みながら進んでいるのだ。

感知しているのは空気の流れだけではない。他にも感知しているものがある。

 

(何かうじゃうじゃいる)

 

生物が地下空間にたくさんいる事を感知。

 

(てか、こっちに来てるのう)

 

ピタリと止まると後ろから袁術と張勲がぶつかる。

 

「いたっ!?」

「急に止まるでない!!」

 

始皇帝は前方に視線を向けたままで喋らない。

 

「これっ、無視するでない!!」

「お主ら朕の後ろにいろ」

「「へ?」」

 

何かが近づいてくる音が聞こえてくる。それも数が多い。

 

「来たな」

「何が…って、なああああああああ!?]

 

前方より出てきたのは見た事もない生物たちであった。

 

「ば、化け物おおおおおおおお!?」

「なんだアレら…まるで合成獣(キメラ)だな」

「ま、まさか幻獣!?」

「アレは幻獣では…いや、幻獣か」

 

キメラであるがよく見るキメラではない。

その名の通り、様々な生物が組み込まれた獣。

鳥、熊、獅子、蛇、馬、蜥蜴、蟲など様々な生物が見える。

 

(この世界ではああいうキメラたちがいるのか)

 

唸り声が響き、腹でも空かしているのか目がギラついている。

キメラたちにとって餌が3人と思っているかもしれないが見当違いだ。キメラたちにとって出会ってはいけない存在がいる。

 

「ふむ」

 

指をくるくるさせて水銀を収束させて大きな球体を生成させる。

 

「ほれ」

 

水銀の球体がキメラたちを弾け飛ばした。

 

「………ほんとーに仙人さまってとんでもないお方ですね」

「うむ。あの化け物たちを一蹴しよった」

 

後ろにいる袁術と張勲はどんな化け物が現れても仙人(始皇帝)がいれば大丈夫だと思ってしまった。

一緒にいれば安心感が湧く。この人に任せておけば何もかも大丈夫な気がすると思ってしまう。

 

(こやつを絶対に妾の部下に欲しいぞ)

(ええ。この人を味方に付ければ孫策さんなんて目じゃないですよ)

(それどころか曹操なんかも目ではないぞ)

 

気が付けばキメラたちは薙ぎ払われていた。

 

「こんなものだな」

「はえー…凄いのじゃあ」

「この程度は普通だ」

(その普通が凄いんですけど)

 

始皇帝はとことこ歩いてキメラの残骸を確認する。

 

「何してるんですか?」

「検証だ」

 

指の先に水銀のメスを生成し、キメラを解剖していく。

 

「うえっ、何をしておるのだ!?」

「見ての通り解剖だ」

 

テキパキと死骸のキメラを解剖していく。

 

「やはり…」

「やはりとは?」

「見てみよ。この生物は継ぎ接ぎだ」

「つぎはぎ?」

「これは誰かの手によって作られた生物である」

 

解剖による検証の結果、始皇帝が倒したキメラは誰かによって作られた生物。

様々な生物を分解し、1つに繋ぎ合わせて生み出した。

 

(普通に生物を繋ぎ合わしたところでキメラは生まれぬ。妖術やら禁術も使った形跡もあるな)

 

人為的に生まれたキメラが謎の地下空間に潜んでいた。

 

(もっと上に誰かいるな。数は…2人)

 

このキメラを造った張本人かもしれない。そしてこの謎の地下空間は実験場だ。

山で捕まえた獣をキメラとしての材料し、造ったキメラを放っている。

 

「神気溢れる山でこのような事をするとはな。なかなか狂気じみてるのう」

 

神気溢れる山の獣は幻獣だ。その幻獣を材料にするために切り刻んでいるとなると怖いもの知らずでもある。

 

「もしかして他の仙人さまが造った生き物だったりするんですかね?」

「仙人がそんな事するとは思わんがのう…いや、仙人にもマッドサイエンティストがいてもおかしくないか」

「まっど?」

「さいえんてすと?」

 

狂ってる天才と言われている言葉だ。

 

「上に向かうぞ」

 

 

643

 

 

「天朝様。放った全て合成獣が負けました」

「見れば分かる」

 

小さなゲイザーのような生物が壁に向かって光を放っており、映像が映し出されている。

 

「あの青い人…凄いですね」

「うむ。後ろにいる女2人はどうにでもなるがあの青い人間は勝てない。人間か?」

「どうしますか?」

「勝てないのは準備が足りてないだけだ。あの青い人間がここまで来たら色々と計画が滞る」

「では、逃げるという事で」

「うむ。ここは捨てる。出来の良い六番から十番のナマモノを放て」

「ナマモノでなくて合成獣と言ってください。そもそも教えてくれたのは天朝様じゃないですか」

「アレは合成獣の域に達していない。まだナマモノだ」

「もっと良いものを造れって事ですね」

 

少女はガサゴソと逃げる準備をする。少年とも少女とも見える人物はまた壁に映った映像を見る。

 

(あの青い人間…只者ではない。朕がここまで興味をそそられるのだ。朕と同じで特別な人間だろうな。機会があれば話してみたいものだ)

 

青い人間の正体が始皇帝と分かれば少年とも少女とも見える人物はより興味を惹かれる事になる。

 

「ふむ」

 

始皇帝たちの目の前には5体のキメラが立ちはだかっていた。

 

「なんかさっきよりも凄いのが来たんじゃが…」

「だ、大丈夫です。仙人さまがいればなんとかなりますよ」

 

チラリと始皇帝を見る2人であるが本人の視線は5体のキメラではなく、上に向けていた。

 

(感知していた2人が離れた…逃げたという事か)

 

捕縛して色々と聞き出そうと考えていたが逃げられたのならば諦める。

5体のキメラを瞬殺して急いで謎の2人を捕縛するほど緊急性は無い。この地下空間は変わり者の実験場だったと結論づける。

 

「あのー…仙人さま。なんかさっきより凄いのがいるんですけど」

「ん」

 

指をピっと払うだけで水銀の刃が放たれ5体のキメラを一瞬で切断した。

 

「瞬殺じゃな」

「瞬殺ですね」

 

もう何も驚かない袁術と張勲。

仙人に対して驚愕するのは当然なのだと、これまでの流れで理解したからである。

 

「このまま怪物が来た道を辿れば出口に出れますかね?」

「そうだな。ついてまいれ」

「「はーい」」

 

素直に返事をする2人であった。

このまま上へと目指して歩き始め、途中で罠がたくさんあったが全て始皇帝が突破。

何事もなく地上へと脱出したのであった。

 

「出口じゃー!!」

「空気がおいしいですねお嬢様」

 

袁術と張勲はググーっと両腕を空高く上げて背を伸ばす。狭い所や地下から出るとつい身体を伸ばす動作をしてしまうのは窮屈だと無意識に思っているからだ。

身体を伸ばすと何とも言えない解放感がある。

 

(途中で誰かが居たであろう部屋を確認したが何も無かったな)

 

地下空間で感知した謎の2人組。住んでいたであろう部屋は片付けられ、何も無かったのだ。獣、幻獣などを解剖や実験した部屋は血生臭かったがその部屋も特に何も無かった。

結果的に重要な事は分からずじまい。分かったのはこの山の地下空間で血生臭い実験が行われていたという事だけである。

 

「何だかよく分からない探検でしたね」

「もう懲り懲りじゃがのう」

「さあ、洛陽まで頑張りましょうお嬢様」

「こっから山を降りるのか…登ったり、降りたり大変じゃあ」

 

山を登れば降るのは当然だ。

 

「何を言っておる。降るのは楽だぞ」

「そうかもしれんが降るのも疲れるのじゃあ」

「いや、後は真っすぐに降りるだけだろう?」

 

始皇帝が指さす先は崖。

 

「え?」

「あのー…そっちは道じゃなくて崖なんですけど」

「そうだぞ」

「そうだぞ…じゃなくて崖からは降りれませんよ?」

 

降りようと思えば降りられるが危険すぎるので普通は崖から降りない。

 

「朕に任せろ」

 

ガシっと袁術と張勲を掴む始皇帝。そしてそのまま崖へと近づく。

 

「へ?」

「ちょ…」

「レッツ、ダイブだ」

 

始皇帝は袁術と張勲を抱えたまま崖からダイブした。

 

「にょええええええ!?」

「いやああああああ!?」

 

仙人(始皇帝)が普通でない事をするのは理解したつもりが、まだまだであったようで2人は今日で何度目か分からない絶叫をあげるのであった。そして3人は山を一瞬で降りるのであった。

 

 

644

 

 

少女と少年にも少女にも見える人物は山からだいぶ離れていた。

 

「拠点の1つを失ったのは痛いですね。あそこは様々な動物がいたんですけど」

「他にも良いのがいるであろう」

「そうですね」

 

少女はそこまで落胆した様子はなかった。

 

「この子たちが無事で良かったですので」

 

少女が合成獣をナデナデと優しく撫でると嬉しそうに小さく鳴いた。

周囲には5体の合成獣がおり、少女が造った現段階での傑作体。少年とも少女とも見える人物にとってはナマモノ程度らしいが三国の兵士程度では太刀打ちは出来ない強さだ。

 

「あなたたちはもっと強くなりますからね」

「もっと強い合成獣も造ってほしいものであるがね」

「なら鬼を材料としてください。鬼を材料にすればもっと強いのを造れます」

「あれらは朕の可愛い民でもあるのだが…いや、違うか。この大陸で生れた鬼は朕の民ではない」

「鬼が民?」

「こっちの話だ。いいだろう、いくらか用意してやろうではないか」

「言ってみるものですね」

 

少女はクスリと笑った。

 

「あ。見た事ない生き物発見です」

 

躊躇なく蜥蜴のような生き物を捕まえる。

 

「よく得体の知れない生き物を素手で触れるものだ」

「色々な生き物を飼育・解剖していると慣れてくるものですよ?」

「中には毒を持つ生き物がおるだろうに」

「その時はその時です。そもそも毒を持ってるかどうか最近は分かるんですよ」

 

少女は蜥蜴のような生物を解剖し始めた。

 

「あとにしろ」

「すいません。つい」

「つい、で解剖をするな。お主も変わり者よな」

「……そうですね。生き物を飼育するのは普通ですがコレだけは誰も理解してくれませんでしたよ」

 

解剖する手を止める。

 

「解剖が悪いというわけではないが…確かに良いとは普通は思わぬな」

「おかしいですよね、何かを理解するには細かくする必要があるんです。どんな物も細かい物が1つにまとまった物なんです。なら理解するにはまとまった物を細かくするしかないじゃないですか」

 

兵士が使っている剣だって1つの物から出来ているわけではない。作戦も1つの考えから生まれるものではない。薬も様々な薬草等で出来ている。現代で言えば自動車は数えきれない部品で出来ている。

何かを理解するには一度バラバラに分解・解剖する必要があるのだ。科学も技術も医療にも通じるものである。

 

「だからこそあのお方に私のコレを理解してくれた時は嬉しかったですよ」

 

少女は解剖をまた始めた。

 

「人によって生き物を解剖するのは邪教の類だと思われるかもしれぬ。しかし違う。それは文化や技術発達への近道である」

「ですよね」

「うむ。誰もやらなかった事に手をつけるが発達・進化に繋がるのだ」

 

誰もが目を向けなかった事に目を向ける。

人によっては理解出来ないと当時は思われても後々未来へと繋がる事もあるのだ。

 

「だからと言って新たな変化を性急に欲しがるがゆえに革命・抵抗運動をするのは持っての他であるがなっ!!」

 

ミシリと少年とも少女とも見える人物は拳を握った。

 

(天朝様も色々とあったんでしょうか?)

「ま、朕も人の事は言えぬか」

 

握った拳を緩め、扇子を開いて扇いだ。

 

「それは肉親にも理解されなんだか」

「はい。賢い妹もコレの良さは分かってくれませんでしたよ」

 

少女は苦笑いをするのであった。




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新は1週間~2週間後予定です。

今回の話はほぼ始皇帝がチャチャっと突破した話になりました。
袁術と張勲も驚いてばっかりになってしまいました。2人の活躍はまた今度かな。
まあ、謎の2人組を出したかった話でもありましたがね。


641~643
落下した地下空間には合成獣(キメラ)。
前回のナマモノとはキメラの事でした。
そしてここで登場したキメラは人工的に造られたキメラです。

キメラの群れに囲まれても始皇帝なら簡単に突破です。
意味がありそうだった六番から十番の合成獣(キメラ)も瞬殺。
残りの一番から五番はいずれ。こっちはちゃんと活躍できるかなぁ。
なんか始皇帝なら大抵の事は何でも解決できちゃうイメージです。彼が苦戦するようなイメージが想像できない。

そしてオチは3人でレッツダイブ。
オチだけに。
この後3人は無事に山を降りられました。


644
謎の2人組。

片方の正体は既に読者様たちに分かっちゃってますね。
鬼と天朝様ときたら…。てか、200話のあとがきにも書きましたがこのキャラは既に本編に登場してますしね。

もう片方の謎の少女。キメラを造った張本人でもあります。
彼女の正体を示唆するものは本編にも書いております。
動物の飼育と解剖が得意なのと、ある人物の姉。これで彼女の正体が分かる読者様たちがいるかもしれません。

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