Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。

今回は曹操暗殺計画編の後日談的なものです。
始皇帝と項羽の紹介というの名の説明。そこまで複雑じゃないです。

そして…FGOでは大宇宙冒険野郎が始まりましたね。
オデュッセウスのマスクフルフェイス。カッコイイ!!
しかし、それよりも気になるのが徐福ちゃんだ!!
ボイス付きに新規立ち絵だと。これは実装を期待してもいいのか!?

彼女がもきゅもきゅと食パンやら肉まんを食べている姿が可愛いです。


始皇帝と項羽と曹操

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曹操の目の前に始皇帝を名乗る者が現れた。

普通ならば不敬者だが不敬と思えなかった。何故なら不敬と思わせない程の覇気と王の風格を発しているのだから。

 

「し、始皇帝…貴方が?」

「そうだぞ」

 

覇気も王としての威厳も本物であるが、正体が始皇帝というのは信じられない。

彼女たちの反応も当然で、現代の日本で言うならば本物の織田信長が現れたようなものだ。

未来を生きる者からしてみれば始皇帝も織田信長も過去の人間で既に亡くなっているというのが事実だ。いきなり本人だと言われても信じられるはずがない。

ジトーーっと細目で見るが始皇帝本人は当然だというばかりの顔だ。

本気で自分は始皇帝と言っているようなもの。実際に本人であるが。

 

「信じられないわ」

「本人だぞ」

「……なんて真っすぐな眼」

 

曹操は司馬懿(ライネス)に視線を向ける。2人の会話から仲間だというのは理解できているから司馬懿(ライネス)から聞けば一番である。

 

「本当なの司馬懿?」

「間違いなく本物だよ」

「……こんな時に冗談を言うわけないわよね」

 

暗殺計画を乗り越えたばかりとは言え、冗談を言える空気ではないのは確かだ。

司馬懿(ライネス)が本物の始皇帝だと認めていてもまだ信じられない。それが普通の反応である。

司馬懿(ライネス)が認めているだけであって、本物の始皇帝だという証拠は何1つないのだから。

 

「貴方とは色々とたくさん話したいけれど、今は後にするわ」

 

暗殺計画は崩したがもう1つ問題がある。

八傑衆の飛燕が陳留に鬼を放っているというのだから急いで帰還しなければならない。

 

「彼の事が気になりますが急いで陳留に戻りましょう」

「燈の言う通りね。各領地から戻っているはずでしょうけど不安はまだ拭いきれないわ」

 

陳珪の行動によって各地に散らばった魏の兵力は陳留に戻っている。その一部として夏侯惇の部隊は洛陽に来ているのだ。

 

「春蘭。来てくれて助かったわ」

「はい。ですが…その、何も出来なかったんですけど」

 

急いで己の王を助けに来たかと思えば解決していたというのだから締まらないものだ。

その場にはよく分からない謎の覇気を発する猛者までいるからより混乱する。

 

「急いで陳留に戻るわよ」

 

洛陽での後始末は他の誰かに任せ、曹操は陳留に帰還する。

 

「陳留に行く…いや、戻るのか?」

「え、付いてくるの?」

「うむ」

 

司馬懿(ライネス)の仲間なのだから当然だ。

 

(なんかこの人、御しきれない感じがするわね)

 

彼を御しきれる人物がいるかすら分からない。

陳留に戻って大切な家臣と民、国の安否を確認した後は隣にいる始皇帝を名乗る者と色々と話す事になるだろうと想像する。しかし曹操は陳留に戻ったら戻ったで別の規格外と出会う事になるのだ。

 

 

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曹操の目の前に巨大な兵器人間と言える者がいる。

 

「えーっと。もう一度説明してくれるかしら秋蘭」

「はい。その…私も今だに信じられないのですがこの方は項羽殿だそうです」

 

頭を抱えている曹操。既に始皇帝の件で頭を抱えているのに追撃がきたのだ。

陳留を守ってくれた曹仁や曹純たちに労いの言葉を掛けたいはずなのだがそれよりも驚きの報告があがったのである。

 

急いで陳留に帰還してみれば鬼の大群を討伐し、危機を乗り切ったと報告を受けた。

その報告は問題ないが次の報告が問題であったのだ。鬼の大群との戦いである人物が加勢をしてくれたのだが、あの最強の覇王と言われる項羽だというのだ。

曹操の視線の先には始皇帝と同じように圧倒的な覇気を纏う項羽。

 

「始皇帝の次は項羽って…」

「私も混乱しています」

 

いつも冷静な夏侯淵も今回ばかりは動揺もとい混乱していた。人生の中で一番の混乱かもしれない。

真実か嘘か分からないが始皇帝と項羽の2人が目の前に現れるなんて事はあり得ない。

 

「更に劉邦や太公望…虞美人なんて出てきたら考えを破棄するわよ私」

「お、フラグ」

「ふらぐって何よ司馬懿」

「そのうち分かる」

 

曹操と夏侯淵の視線の先には始皇帝と項羽が談笑している姿が映る。

 

「ほう、お主もここにいたのか会稽零式…いや、項羽よ」

「始皇帝陛下。私は時が来るまで陳留で待機していたのです」

「なるほどのう。その時とは鬼の大群の事か」

「然り。そしてあと二日で指導者が陳留にくるでしょう」

「立香も来るか」

「そして最愛の虞も一緒です」

「おっ、天女まで来てるのか。お主の演算能力はやはり流石だな」

 

何やら2人だけしか分からないような会話をしていた。特に気になったのは「最愛の虞」という部分。

曹操はもしかしなくても虞美人の事を言っているのかと思って否定した。このような考えをしてしまっている時点で色々と普通の考えが出来なくなっているかもしれない。

 

「えー…まずはどこからまとめるか。じゃあ真桜から聞こうかしらね」

 

冷や汗タラタラとしている李典を見る。

 

「真桜。貴女は項羽の事を知っていたようだけど、説明なさい」

「は…はい」

 

李典は項羽の事を既に知っていた。

実は曹操暗殺計画が始まる前から項羽と接触していたのである。

 

「ええっと…ウチが趣味の絡繰り素材が無いかと外で探索していた時に出会ったんですわ」

 

李典は過去の事を思い出しながら説明していく。

非番の日に絡繰りのアイデアを閃く為に探検と称して素材を見つけに外に出ることがあるのだ。

 

「その日はちょっと街の外まで行ってたんです。で、そこで項羽はんに会いました」

 

運命だろうが偶然だろうが出会いなんていきなりだ。

当時の事を事細かく説明しながら李典もその時のこと思い出す。

 

「う~ん。立香はんから盗ん…じゃなくて借りたアレやけど難しいもんやな」

 

李典が藤丸立香から勝手に持ち出したアレの解析は芳しくない。分解してみるが途中までしか出来ていない。

 

「あんなん分からん。だけど興奮と興味は尽きんわ」

 

未知な絡繰りを解析する楽しみは大きい。分からないものを分かるようにする研究は楽しいが今の李典は解析が進まなくて壁にぶつかっている状況だ。

気分転換で絡繰りの素材探しという名の散歩をしているのだ。

 

「あ。熟考しとったらよく分からんとこまで歩いてしもうた」

 

考え事をしながら歩くのは危険だ。ながら歩きというわけではないが壁や人に当たってもおかしくない。

彼女の場合は気が付けば知らない場所まで歩いてしまったという状況だ。

 

「流石に歩き過ぎたな。お腹も空いたし戻るか」

 

周囲は森で緑で生い茂っている。

考え事をしながら歩いていると周囲すら見ていない。今度は周りを見ながら来た道を戻っているとある洞窟を発見する。

 

「お、こんな所に洞窟なんてあったんか」

 

洞窟を発見してすぐに思いついたのは秘密の工房に出来ないかどうか。

街からも遠くもないので工房にしたとしても通えない距離ではない。道具の搬入は面倒であるが徐々に準備すれば問題はない。

 

「お、中も良い感じに広いやん」

 

洞窟内も適度な空間になっており、ますます工房として良いと判断。

 

「いいやん」

 

そのまま奥まで探検すると李典はとんでもない物を発見した。

 

「な、なんやこっ!?」

 

パンっと急いで自分の手で口を塞いだ。

 

(あ、あっぶなぁ。大声だしたらアカンやつやろコレ)

 

李典が発見したのは人馬の怪物であった。しかしよく観察していくと目をキラキラさせていく。

 

「こ、これ…もしかしなくとも絡繰りやないか!?」

 

人馬の怪物は絡繰りであると理解した。まさに絡繰りの結晶とも言える物を見て李典は一気に興奮ゲージが上昇する。

何故、洞窟に絡繰りがあるのか、誰が作成したのか等、色々と気になる事は多くがあるが彼女はまず近くで見たいという欲求が勝つ。

恐る恐ると近づくと絡繰りの人馬の眼が光った。

 

「おわっ!?」

 

絡繰り人馬が動き出す。

 

「う、動いた…」

「起動完了。演算通りの結果である」

「しゃ、喋った!?」

 

絡繰りが喋り出すなんて信じられないと目を見張り、興奮が更に上がる。

 

「す、凄い。こんな絡繰りがあるなんて」

 

目の前がいるのが怪物と認識していればすぐに逃げ出しているが絡繰りならば別で李典は興奮しっぱなしだ。

 

「あ、あんさんは誰…って聞くべきか?」

「姓は項、名を籍、字を羽。人にはそう名乗れと指示されていたがよもやこのような姿では混乱を招くか」

 

カルデアでは受け入れられたが普通ならば相手に混乱や恐怖を感じさせてもしょうがない。項羽自身もカルデアで召喚された際は己の身体に疑問を覚えた程だ。

 

「んな、ななななななな」

「む、やはり恐怖させてしまったか」

「こ、項羽とか…なんだかよく分からんけど」

 

いきなり西楚の覇王と言われる項羽が現れて李典は混乱しかない。そもそも目の前の圧倒的な存在である絡繰り人馬を見て項羽だなんて思えない。

項羽を名乗る絡繰り人馬と李典の考えうる絡繰りの結晶体という事実が頭をグルグルとかき混ぜる。そして彼女が到達したのは恐怖や混乱よりも興奮であった。

 

「凄いやん!!」

「なに?」

 

彼女が発したのは恐怖ではなく歓喜の声。

 

「隅々まで調べさせてーな!!」

 

李典は絡繰り好きな魏の武将。項羽を見てすぐさま絡繰りの真髄だと理解した。

恐怖や混乱よりも絡繰りに対する熱意が勝ったのだ。

 

「いやあ。あの項羽はんが本物かどうか正直どうでもいいっていうか…絡繰りの真髄が目の前にあったら興奮するしかないなぁって」

 

嬉々として項羽との出会いを話していく李典。その熱意はまさに専門家やオタクが好きな分野をこれでもかと話している本気さだ。

 

「真桜。話が脱してる」

「あ、すんません」

 

項羽との出会いから項羽が内包している絡繰りの凄さの説明になっていた。

 

「真桜と項羽との出会いは分かった。ただ…何で報告が無かったのかしら?」

「あう…」

 

萎縮する李典。

 

「それは私が頼んだからだ」

 

ズシンと項羽が説明に加わる。

 

「演算により鬼の大群等の事を予測した。敵に私の事を情報を流さないようにするため、彼女には私の事を話さないように頼んだのだ」

 

情報規制を徹底の為に仲間にすら教えないようにしていた為、李典は主君である曹操にも話せなかったのだ。

項羽が陳留で隠れていた事は八傑衆ですら知らなかった。故に張白騎は項羽に全ての計算を崩されたのだ。

 

「敵を欺くにはまず味方から…ちょっと違うかもしれないけど分かったわ」

「私の存在を敵に知られると不利になる可能性があった」

「そうかしらね。敵に知られても大丈夫な気もするけど」

 

話を簡単に纏めると項羽が陳留に身を潜めていたのは敵を完全に倒す為であったのだ。

 

「項羽と真桜の経緯は分かったわ。そして項羽が陳留にいたのも」

「理解感謝する。そして私の予測演算の為、主君に報告をしなかった彼女の罰に関してだが減刑を求める」

「貴方に助けられたみたいだしね。いいでしょう。真桜、厠掃除1年」

「あれ、結構な罰やと思うんやけど!?」

「定番でしょ」

「せめて半年にしてほしいです…」

「我がまま言わない」

 

始皇帝と項羽に助けられたという事は飲み込めた。しかし問題は2人が本物かどうかだ。

 

「司馬懿から道中で説明を聞いたけど…今だに信じられないのよね」

「まあ、普通なら信じられないよな」

 

とても物分かりが良い者であっても過去の英雄が現れたとしてもすんなりとは信じられない。

 

「あの項羽も始皇帝と同じ経緯持ちって事でいいのかしら?」

「概ね」

 

曹操が司馬懿(ライネス)から説明された内容は信じられなくはないものだったのだ。

歴史では不老不死になれずに亡くなったはずであるが実際は不老不死に至っていた。そして始皇帝は原因不明で天の国に飛ばされたらしいのだ。

天の国で始皇帝と司馬懿(ライネス)は会合し、彼女は臣下もとい仲間となったという経緯持ちという事になっている。

 

「聞けば聞くほど信じられないけど…これほどの存在が今まで表に出なかったというのも信じられないからね」

 

目の前にいる項羽はともかく始皇帝の性格上、不老不死になったのなら既に大陸は彼のものだ。しかし天の国に行っていたというのならば今の世になっていると少しは納得できる。

だからこそ始皇帝は天の国に行っていたと予想できる。そして天の国の人間となっている司馬懿(ライネス)と知り合いとも納得できる。

 

「で、今更になってこっち戻ってきたと?」

「そういう事だな」

 

うんうんと頷く始皇帝。

 

「まさか秦を再興させるつもりじゃ…」

「それはないな」

 

キッパリと否定する始皇帝。

 

「え、そう…なの?」

「うむ」

 

何度も思っている事であるが始皇帝は異世界に秦を建国する気はない。例外はあるかもしれないが今いる外史で建国しないのは確かだ。

始皇帝のみならず藤丸立香達の目的は外史世界の異変解決。そしてカルデアへの帰還だ。

 

「この大陸の情勢は既に知っておる。魏、蜀、呉が覇権争いをしておるのだろう。そこに朕が加わる事はない」

「本当?」

「この大陸に朕は必要ない。今さら朕が出ても迷惑だろう」

「迷惑ってことはないと思うけれど」

「曹操よ。安心して覇権争いをするといい」

「安心してって…」

 

内心ほっとしている曹操。始皇帝が三国の戦いに参戦したらもう先が読めない。

 

「不老不死になった始皇帝というのも驚きだけど…項羽の正体が宝貝人間だったというのも歴史的大発見よね」

 

項羽は人間ではなかった。ある意味、歴史で綴られた最強の武功に納得出来てしまった。

これほどの戦力を持っているのであれば覇王と言われてもおかしくないのだ。

 

「始皇帝が項羽を作成し、その後は項梁が見つけて動かした。そこから項羽の伝説が始まったと」

 

歴史の裏の事実というものだ。

 

「で、歴史通りに進んだけど実際は死んだのではなく始皇帝と同じく天の国に行っていたと」

「そう言う事だね」

「……ふぅん」

「どうした曹操殿?」

「あら、真名で呼んでいいのに。一緒に窮地を乗り越えた仲なんだし」

「そうだね。で、華琳。何か思う事はあるのかい?」

「あるわね」

 

司馬懿(ライネス)の説明を聞いて曹操は混乱しそうになりそうになりながらも納得していくが、何処か引っかかる部分があるのだ。

 

「目の前にいる始皇帝と項羽が本物と言われても貴女の説明だけじゃ全て納得できない部分があるわ。でも彼らの覇気と威厳、実力は本物だと分かる」

 

2人から伝わる覇気から本物だと伝わってくるが曹操は何処か納得できない。

それは2人が本物だという圧倒的な証拠が無いからだ。しかし司馬懿(ライネス)たちが嘘を言っているわけでもない。

 

「まあ、華琳の言い分は分かる。私も同じ状況だったら納得できないだろうしね。納得できるには相応の証拠が必要だ」

「ええ。相応の証拠はないの?」

「う~ん…ないな!!」

「決め顔で言わないでちょうだい」

 

曹操は完全に納得できていないが始皇帝と項羽が本物だと認めた。

 

「一応、本物だとは認めたけど。でも司馬懿?」

「なんだい?」

「貴女、まだ話してない事があるでしょ」

 

司馬懿(ライネス)の説明は全て信じられないというわけではないが何処か大事な部分を外して説明している気がするのだ。

曹操にとって、その外された部分が重要である。

 

「貴女が隠している部分が一番重要だと思うけど?」

「何で私が隠していると思った?」

「勘よ。上手く説明したように聞こえるけど僅かに違和感を感じたの」

「鋭いね」

 

勘の良い者では僅かな違和感に気付くものだ。

 

「その台詞からしてやっぱり何か隠してるわね」

「嘘は付かない。確かに説明の中に外している部分はあるさ」

「やっぱりね」

「でもそれを教える必要は無いよ。華琳には知らなくてもいいものだからね」

「知らなくてもいい?」

「ああ。そもそも説明したところでもっと華琳が混乱すると思うしね」

 

苦笑いをする司馬懿(ライネス)。

全て説明した未来の自分を想像しての苦笑いだ。

 

「どんな内容を外しているのよ」

「さっきも言った通り混乱する内容だからね。そして話さなくてもいい内容でもある」

「気になるんだけど」

「話さないよ。ふふ、その気になるけど聞けないという歯がゆさの顔いいね」

「……変なとこで性癖を出さないで欲しいんだけど」

「性癖じゃない。趣味だよ」

 

もっと曹操が歪んだ顔をすればより笑顔になる司馬懿(ライネス)だが今は自重していく。

 

「はあ…」

 

ため息を大きく吐く。

 

「取り合えず始皇帝と項羽は本物という事だよ。私の命を賭けても良いよ」

「そこまで言うのね」

 

司馬懿(ライネス)が命の賭けてまでと言う。嘘や冗談で言っている空気ではない事から最終的に納得した。

 

「色々と気になるけど…納得しておきましょう。これ以上聞いても意味がないんでしょ。なら納得するしかないじゃない。そしていくら言ってもあの2人は始皇帝と項羽なんでしょ」

「そう言う事だ」

 

何か腑に落ちないが曹操は始皇帝と項羽が本物だと認める事にしたのだ。

 

「まあ、本物だとしても特別扱いする気はないわ。敬意はあるけどここは私の国で私は王。そこまでへりくだるつもりはないわよ」

「それでいいぞ。朕に向かって対等にくる気があるならばこい」

「私に気を遣う必要は無い」

 

始皇帝と項羽も特別扱いしなくてもいいと言う。

 

「そうしていくわ」

 

実際に特別扱いしなくてもいいと言うが人によっては彼らの覇気に負けてしまい萎縮し、特別扱いしてしまう事もあるかもしれない。

それこそ口の利き方に気を付けてしまう程に。

 

「まあ、色々と大変だと思うけど始皇帝と項羽含めてよろしく」

「とんだ大物たちが陳留に来たものね」

 

始皇帝と項羽は陳留で滞在する事が決定した。

 

「大変な事になりそうですね」

 

曹純が曹操にポツリと呟く。その言葉に完全に同意である。

 

「柳琳」

「はい。何でしょうか?」

「陳留の守り。大義であった」

「あ……はい!!」

 

曹純は笑顔になる。

 

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始皇帝と項羽が陳留にいる。

まだ違和感があるが彼ら程の覇気を持っている者たちならばどのような存在か会話してみたいと思うのは曹操の欲求だ。

本物かどうかは大事だが、相手が始皇帝と項羽ならば会話しないというのは損である。

 

「朕と対談したいと申すか?」

「ええ。偉大なる皇帝と対談出来るならしたいしね」

「良いだろう。飲茶しながら!!」

 

曹操と始皇帝の会談が決まった。

そうは言っても仰々しいものでなくお茶を飲みながら世間話するつもりの始皇帝。しかし曹操はそうでもない。

 

「お、中々いい茶だな」

「客に出すのだから悪いものは普通出さないわよ」

「それもそうか」

 

相手が始皇帝だからという部分もあれば高級茶葉を出せる程の財力もあるというのも見せ付けるという部分もある。

高級な物を出すという行為は持て成すというわけでなく、此方の財力を見せ付ける行為である。

 

「で、何か聞きたい事があるか?」

「色々と聞きたい事はたくさんあるわね。まずはやっぱり不死をどう手に入れたか」

 

人類の夢の1つだ。

 

「まあ、そうだろうな」

「教えてくれるの?」

「いいぞ」

「えっ」

「えっ、てなんだ」

「いえ、教えてくれるとは思わなくて」

 

本当に不老不死の方法を教えてくれると言われれば曹操の「えっ」は理解できる。

 

「水銀を飲んで不老不死になったと書物には書いてあったけど…まさかソレ?」

「それもあるが違う。いやあ、水銀って不味いぞ」

(本当に水銀を飲んだんだ)

 

水銀の味が酷いというのは分かった。

 

「立香の奴も不味いっていっておったなあ」

(え、藤丸も飲んだ事あるんだ…)

 

水銀を飲ませたというか食べさせた者は司馬懿(ライネス)。何処かで小悪魔尻尾を出して小悪魔スマイルを浮かべている。

 

「朕が不老不死になった方法は宝貝なる物からだ。具体的にはある宝貝人間の残骸を発見したことで太乙真人のロストテクノロジーを知り、これを解析することで肉体を機械化する技術を獲得した。真人への羽化登仙ではなく霊珠子技術による肉体のサイバネ化で不老不死を達成したのだ」

「ん?」

 

『ロストテクノロジー』や『サイバネ化』とか分からない単語が出てきて混乱する。

 

「えーっと…簡単にまとめると?」

「宝貝人間の残骸を解析し、自らの肉体を改造。不死の肉体を得たというか不死の肉体にしたという事だな」

「自らの身体を改造…それって」

「うむ。己の身体を弄り、寿命という制限をなくしたのだ。もっと分かりやすくするなら肉体を絡繰りにしたとも言えるな」

 

己の肉体を機械化。

曹操と言わず、現在の時代を生きる者にとって自分の身体を絡繰りにするという方法は思いつくはずがない。

医学ですらまだ進歩中だというのに身体を絡繰りにするのは禁忌だとも思える。

 

「身体を絡繰りに…」

 

絡繰りと言われると李典の趣味を思い浮かべる。

彼女が開発している絡繰りが肉体に繋がるのを想像すると怖く感じてしまう。曹操にとって肉体の絡繰り化はまだ理解が難しい。

李典であれば興奮しながら聞いているかもしれない。

 

「身体を絡繰りに…始皇帝は恐ろしい事を考えたのね」

「恐ろしくはないぞ…とは言えぬか。誰だって身体を弄るのは怖いからな。それが初に試みるなら猶更だ。しかし危険を冒さねば技術は得られぬし、向上もせん」

「尤もね。どのようなものであれ、新たなものを得るには危険を冒すのは分かるわ」

「そうだ。不老不死を得る為に死ぬ可能性もあったからな」

 

汎人類史の始皇帝は不老不死を得られず亡くなった。他にも不老不死を得ようとした者は努力したが得られずに亡くなった者は多い。

 

「……私には出来なさそうね」

「ま、それでもいいんじゃないか」

 

不老不死は人類の夢の1つであるが、人類全員が望んでいるというわけでもない。不老不死を望まず、限りある命を燃やす人生も素晴らしい事だ。

 

「不老不死を望めば…得るか破滅のどちらかだ。選択するのは人それぞれだ」

「そうね。でも始皇帝は不死を得て、どうだったの?」

「無論、大陸を完全統一。そして海の向こう全てまで統一した」

 

人命の限界を超えた治世により戦乱時代を回避した。

西洋ルネサンスに先駆けて産業革命を達成し、その圧倒的技術格差によって全世界を征服し、地球国家を統一したのである。

異聞帯と剪定されたが世界であるが2200年余りもの間君臨し、地上全土の民達から生・老・病・死の苦痛を排した永久不変の管理社会を敷く絶対者となったのである。

 

「天の国の話よね?」

「ああ。そこも複雑だが、概ねそれでいい」

(司馬懿の説明もだけどやっぱ何か隠している部分はあるわね)

 

またも説明に違和感を感じる。しかし違和感よりも天の国を統一したという部分の方がより興味が膨れ上がった。

魏の王として、統治者として始皇帝の統治が気になるのは当然だ。統治者の後輩なのだから先輩に聞きたいのである。

 

「天の国を完全統一したと」

「うむ」

「それはやはり武を持って制覇したと?」

「ああ。我が国力でひれ伏した国もあれば、武を持って降した国だってある。結局のところ統一するには力を魅せねばならぬ」

 

全てを統一するためには力が必要なのだ。力を示さねば誰も認められない。

 

「そうよね」

 

口元が少しだけ吊り上がる。

やはり大陸を統一するには武を持って制覇するという方法は正解であったのだ。劉備の考えも間違っているわけではないが甘い考えでもある。

そして大事なのがその後の統治だ。どのように平和にしていくかである。

 

「この時代ならば朕の焚書坑儒を知っているだろう。それを徹底した」

「まさか民から…」

「ああ」

 

支配体制の維持のために徹底的に儒を禁止・排除する。

すれば民たちからは知識欲というものは消えさり、考える力も低くなる。それは悪い事と思えるかもしれないが戦争や犯罪を無くす方法でもあるのだ。

 

始皇帝の思想では価値観を持って争いあう者が「人」であり、国民の全ては「民ではあるが人ではない」と考える。ならば人が自身ただ1人だけであるならば争いの起こりようもないとも考えたのだ。

「人」とはただ1人だけ。1人の「人」である以上、民の全てに責任をもち治世を崩すことなく永劫背負って立つ。それができる者のみが真の「人」であるのだ。

 

「そして飢えもなく病もなく、貧富の差も無くした。全員が平等だ」

 

全員が同じで考える力も無くした。全ては始皇帝の政策によって全て絶対に決まる。

 

「それでは文化の向上はないのではなくて?」

「まあ、確かにな。立香や荊軻とはそういう話をしたな。しかし朕の秦にも文化や技術というものはあるのだぞ。おっと、少し話が逸れたな」

 

民の文化レベルこそ低いが食糧問題や環境問題も存在せず、表面上は理想的な社会が完成されている。

 

「お主も立香や汎人類史の者たちと似たような反応だな」

「私としてもその統治は反感を覚えるわ」

「そんなに反感を覚える?」

「民から知識欲を全て奪う。それは文化の向上を無くすという事だもの」

 

知識欲が消え、文化も停滞した。

国における文化的基盤のひとつである詩はおろか、字や親兄弟、自分の名前という概念なども消える。

 

「始皇帝。貴方の国では真名も無いわよね」

「無いな」

 

そもそも真名という文化がこの外史特有であるが、名前は確かに中国異聞帯では消えていた。

 

「それは認められない」

「ふふ、それでいい。統治の仕方は王それぞれだ」

 

誰が何を言おうが始皇帝は己の統治・政策に間違っていないと思っている。

人によっては反感を覚える者がいようとも、その統治は始皇帝なりに秦とそこに住まう民達の為を思ってのものだ。

結果、民は生まれてから死ぬまで何かに思い煩うことなく健康に生き、始皇帝を讃え死んでいく。

 

人の可能性を消したという部分を見てしまえば誰もが「それは違う」と思うかもしれない。しかし絶対に争いもなく、飢えもなく、健康で病にも罹らなく、穏やかに生きていける。それも間違った事ではなく、理想の1つだ。

 

「貴方の統治を全て否定する気はないわ。だってそれは平和の1つの形なのだから」

 

その統治で結局平和が崩れ去ったというのならば反感をより抱く。しかし平和を維持し続けたというのならば文句のつけようがない。

これで文句をつけようものなら、曹操はただ何も考えずに文句を言う愚か者だ。

 

「貴方の統治は凄いと思う。でも私は別の統治を持って平和を成す」

「ははは、朕を前にしてよく言った。ならやってみるがいい。朕の偉業を超えられるものなら超えてみよ」

 

そう言う始皇帝だが絶対に己を超える偉業はないと思っている。それこそ絶対の自信である。

 

「朕の話は面白かったか?」

「ええ。実に面白かったわ。もっと話を聞いてみたいわ」

「いいぞ。どんな事も聞いてみるがいい……だがその前にお主以外にも朕の話を聞きたい者はおるようだぞ?」

「全く…そのようね」

 

チラリと周囲を見て声をかける。

 

「出てきなさい。貴女たちも話を聞きたいのならね」

 

曹操がそう言うと程昱や陳珪たちが出てくる。

 

「バレてましたかー」

「始皇帝の話を聞けるなんて代えがたい貴重なものですからね」

 

軍師系や政策関係者等は始皇帝の話は無視できないものだ。

 

「申し訳ありません華琳様」

「稟ちゃんが一番乗りでしたよねー」

「こ、こら風。それなら桂花の方が」

「ちょ、私を巻き込まないでくれる!?」

 

気配は多いと思っていたがゾロゾロと出てきた。気持ちは分からなくはないが多すぎる。

 

「貴女たち仕事は?」

「終わらせています」

 

きっちりと仕事は終わらせているようだ。

 

「新しくお茶を淹れ直しましょうか」

「では、私が淹れ直しましょう」

 

始皇帝と曹操の会談が気が付けば本当に飲茶の時間になっていくのであった。

 

「では、どんどんと聞きたい事を聞くといいぞ。立香ほどではないがトンデモ特異点の話とか知っているし」

 

恐らくそれは曹操達が聞きたい事ではない。

 

 

690

 

 

西楚の覇王と言われる項羽。

残虐非道な虐殺の数々を歴史に残しながらも、無敵の武勲を誇ったいう人物。注目するのは無敵の武勲という部分だ。その強さに憧れた者も少なくない。

自分の強さに自信を持つ武人は様々な武人と戦ってみたいという欲求が滲み出るものだ。

そんな中に本物の項羽が現れたのであるならば武人として戦ってみたいと思う者は出てくる。命知らずだろうが関係無く、武人は誰もが己が最強と思っているのだから。

 

「項羽!!」

 

夏侯惇は項羽に向かって声をかける。

 

「分かった相手をしよう。修練場まで行く事を推奨する」

「私とーーって、え?」

 

夏侯惇は項羽の強さを見たいがために鍛錬と称して戦おうと言おうとしたが先に肯定の言葉が帰って来た。

 

「如何した。私と剣を交えたいのではないか?」

「お、おお。そうだ」

 

何故、自分の言いたい事が先に分かったのか分からないが夏侯惇は深く考えない。彼女の目的は項羽と戦う事なのだから。

2人はそのまま修練場まで移動する。

 

(こいつが項羽か)

 

鬼の大群が攻めて来た時に助けに来てくれた者。圧倒的な武力で鬼たちを屠ったと夏侯淵たちから聞いている。

歴史に名を遺す程の武力とはまさに納得の力であったという。

武人として歴史通りの実力ならば戦ってみたいと思うのが夏侯惇だ。彼女だけでなく他にも彼と戦いと思う者はいる。

 

「到着したな」

「ああ。すぐに始めよう項羽よ」

 

修練場に到着した2人は間合いを取って剣を構える。

2人の闘志に引き寄せられたか張遼たちも修練場に集まる。

 

「おお、惇ちゃんが項羽と戦うのか」

「春蘭さま凄い」

「頑張れっすー!!」

 

気が付けば観客たちが増えている。

項羽と魏の大剣である夏侯惇が戦うとなると無視はできない。

 

「行くぞ項羽!!」

 

大剣を構えた夏侯惇は気合と共に剣を振るう。

彼女の一太刀ならば並みの者であれば切断されてしまう。しかし項羽は並みの者ではなく、大剣を受け止める。

 

「くっ。でやあ!!」

 

相手は人間ではなく人造人間。体格も大きく、人馬形態であり腕は4本。

手数は夏侯惇の倍だ。夏侯惇が剣1本に対して項羽は剣4本であり、圧倒的な力で剣を振るうので夏侯惇の一太刀も受け止められる。

重い一撃を剣1本で受け止めたということは残り3本が襲い掛かってくるということだ。

 

「どりゃああああ!!」

 

残り3本の剣が振るわれるかと思えば1振りだけであった。身体を捻って回避し、もう一度剣を振るう。

隻眼である不利を物ともしないように目を大きく開き、どのように相手が動くかを予想しながら動かねばならない。

 

「いくぞぉ!!」

 

相手がどのように動くするか予測する夏侯惇であるが項羽にそれは勝てるはずがない。

彼の演算能力は未来を予測する。相手の動きをどうこうの話ではないのだ。

 

(くっ、私の剣を全て視切られているっていうのか!?)

 

怒涛の剣戟を繰り出すが全て受け止められ、更には項羽自身はその場から一歩も動いていない。

最強の名は伊達ではないという事だ。

 

「まだまだぁ!!」

 

実力差に悔しさを覚えるが、それ以上に一太刀喰らわせてやろうという気が漲る。

 

「うおおおおおおおお!!」

 

気合は闘気となり剣へと収縮していき、刀身が輝いていく。

 

「餓狼至極剣!!」

「む」

 

駆け出して渾身の一太刀を項羽へと繰り出した。

 

「見事だ」

 

全力の一太刀を2本の剣で受け止めていた。

 

「これだけやっても2本の剣を使わせるだけか」

「ここまでだな」

 

お互いに剣降ろす。

 

「試合に付き合ってくれて感謝する」

「この程度構わない」

「項羽。やはり歴史に記された通り…いや、それ以上の強さだった」

 

上には上がいる。項羽の強さは想像以上であり、勝てる想像すらできない。

己の強さに自信を持っていた夏侯惇は悔しさでいっぱいであるが、それ以上に超えてやるという気概が大きく膨れ上がる。

 

「項羽。私は貴様を超えてみせるぞ」

 

力強く項羽を見る夏侯惇であった。

 

「春蘭さま。お疲れ様です!!」

「おお、季衣か。カッコ悪いところを見せてしまったな」

「そんな事ないです。カッコよかったですよ春蘭さま!!」

 

キラキラ眼の許緒。

負けたという事実よりも最強の武人とうたわれる項羽と戦ったという方が強いのだ。

 

「私も季衣と同じ思いだ。カッコよかったぞ姉者」

「秋蘭まで。はは、そうか!!」

 

負けたのに褒められるのは何だかムズ痒い気分であるが悪い気分ではない。だからこそもっと強くなってみせようとより思うのである。

 

「ひょえ~。惇ちゃんのあの一撃を受け止めたで。ウチでもアレは受け止められんだろうしなあ」

 

気を込めた一撃。いつの間に気の操作を覚えたのかと気になったが置いておく。

 

「次はウチが戦おうかと思ったけど…あれは同じ状況になりそうやし辞めとこうかな。でもやっぱり項羽と戦ってみたいしな~」

 

張遼の武人の血が漲る。項羽と戦いたいという気持ちと、戦っても夏侯惇と同じ結果になってしまうという予想がせめぎ合う。

首を傾けながら「うむむ…」なんて考えてしまう。しかし武人の血に抗えないのか張遼は飛び出した。

 

「つっ」

「受けよう」

「次はーーって、まだ何も言ってないんやけど!?」

 

張遼は「次はウチとも戦ってほしい」と言おうとしたが項羽が急に了承して出鼻を挫かれる。

戦ってくれる事に関して嬉しいが未来予測でも出来てるのかというくらいの返事であったのだ。

 

「未来でも見えてんのかい!!」

「肯定である」

「凄いな!?」

 

ただの冗談かと思っているが事実である。

項羽と張遼の試合が始まる。

 

「春蘭は魏の最大戦力。それを赤子の手をひねるかのように…覇王の名は伊達ではないわね」

 

実は夏侯惇と項羽の戦いを見ていた曹操。その隣には始皇帝と司馬懿(ライネス)。

 

「うむ。流石は朕の作った会稽零式だ」

「え、作った!?」

 

首を始皇帝に向ける曹操。

 

「そうだよ華琳。項羽は陛下が作った存在だ」

「ああ、そうだった。項羽は始皇帝が造り上げた絡繰りだったわね…これって歴史の謎が解明された瞬間よね」

 

ヒョイヒョイと歴史の謎が紐解かれていく状況にまた混乱しそうになる。

始皇帝と項羽に過去の話を聞けば歴史的大発見が湯水のように出てくるかもしれない。

 

「それにしても項羽の風貌は置いておくとして…歴史書に記されるような性格ではないわね」

 

歴史書より項羽の性格はもっと荒々しいイメージであったが実際は理知的。

実直な武人で落ち着いた物腰をしているから曹操はギャップを感じているのだ。

 

「まあ、私も彼について知った時は同じ気持ちだったよ。でも実際は華琳の思った通りだ」

 

歴史書に書かれた荒々しいイメージが強いのには理由がある。その1つとして『演算の結果による最短行動』だ。

 

「彼は天下泰平の為に行動したものが原因だね」

「それは?」

「項羽は始皇帝の死によって腐敗しきった秦の政府を見限り、次に天下を統治すべき者を探し始めたんだ」

「まさか」

「想像通り劉邦さ」

 

漢王朝を興す龍の因子を持つ天命の男を見つけたと同時に項羽はより動き始めたのである。

劉邦は才があるとはいえ当時はまだただの任侠人の内の一人に過ぎなかった。叛徒が蔓延る当時の情勢ではふとしたことで踏み潰されかねなかったのである。

項羽はあえて自らも叛徒として名乗りを上げるとともにのちの劉邦の障害となるであろう勢力を先んじて平定し始めたのだ。

 

力による平定をあえて行うことにより、それを良しとしない有志の徒を劉邦の元に集めさせた。劉邦の皇の器ができる時を稼ぎつつ自らをそれ以外の世の乱れを納める箱としたのである。

 

「ちょっと待って…項羽と劉邦の戦いの真実が紐解かれてない?」

「解かれてるよ。で、項羽が奸賊を束ねてもなお劉邦の器は完成には至らなかったのさ。結果項羽は悩んだ末最後の手段を決意することとなるんだ」

「その最後の手段って何よ。自ら劉邦を育てたとか?」

「違う。完成に至らなかった劉邦の器でも統治できる規模にまで天下を縮めることにしたのさ」

 

天下泰平の早期実現の為に項羽は動き出した。

広大な農地が叛徒に渡らぬ前に焼却。里を追われ飢えに苦しむ民が暴徒と化す前に虐殺。治めきれぬ土地と数え切れぬほどの民を切り刻んだのである。

 

「なるほど。歴史書の内容が見えてきたわ」

「まるで無益な暴政であり暴君の所行みたいだろう?」

「そんな項羽を討伐するため劉邦の元に世は一つとなったわけね」

「結果として項羽の活躍によって漢帝国が誕生したってわけさ」

 

まさかの歴史が紐解かれた。裏の真実というものだ。

 

「これが今の世に広まったら項羽の評価も一気に変わるでしょうね」

「あやつはそんな評価は気にしないだろうがな」

 

項羽は他人の評価は気にしない。全ては良い未来の為に動いているのだ。

 

「始皇帝も項羽も歴史書に書かれたものが全てというわけではないようね」

「事実は小説より奇なりって奴だよ」

「司馬懿の言葉?」

「いや、ある詩人の言葉」

 

過去の英雄・偉人・皇帝の人生は浪漫や夢が隠されている。尤も受け手がどう思うかはそれぞれだ。

 

「始皇帝と項羽のいる生活か。暇しないわね」

 

今の曹操に暇はない。そして更に暇なんて言葉を仙境へとぶん投げる出来事が起きる。

 

「項羽様!!」

「虞よ。合流出来て嬉しく思う」

 

虞美人の登場である。

 

「彼女が虞美人」

「考えるのを辞めたわ」

 

フラグ回収である。




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新は2週間後予定です。

4章のオマケにもあったように日常編という名の修羅場になるかも?
次回…「奥さん。旦那にちょっかい(解析)掛けている女がいますよ(仮)」の始まりです?


687
華琳と始皇帝の対面。
何度も書きましたが始皇帝の覇気に圧されてます。
夏侯惇たちはポカーンとしてます。


688
始皇帝の次は項羽…もう華琳は混乱しそうです。
彼女だけでなく夏侯淵たちも混乱しそうです。あれです…宇宙猫状態。

李典と項羽の出会い。
彼女は項羽の姿を恐怖ではなく興奮。絡繰りの真髄みたいな存在ですからね。
もうメロメロです。

始皇帝と項羽の説明。
証拠も何もない。司馬懿(ライネス)による説明だけ。
『天の国』と『天の御遣い』という部分を使ったり、実は…なんてもしもの話をしたり。納得出来なくはない…という形になりました。
証拠も無いので華琳は司馬懿(ライネス)の説明に違和感がある事に気付きますね。
一応は本物だとは納得しました。一応は。

本当の事を恋姫たちが知る時は暗影たちの正体が完全に分かった時になりますね。
暗影たちの存在こそ一番の証拠になりますので…そう、時空的な話的な。


689
始皇帝と華琳の対談。
始皇帝についてはほぼマテリアルの情報。でもそれが全てだからしょうがない。

テクノロジーの話は華琳も宇宙猫になります。でも彼女なら理解しそうです。
彼女もいきなり生身を絡繰りにするだとか、肉体を捨てるだとかは難しいというか忌避感があると思ってしまいます。
そして始皇帝の統治の究極も納得出来ないでしょうね。
完全なる平和を実現した事は凄いと思うけど華琳の目指す平和ではないという事です。


690
項羽と春蘭の試合。
魏の最強である彼女も項羽には勝てません。もっと修行が必要です。
しかし、もっと強くなることへの意志は大きくなりました。

『餓狼至極剣』
天下統一伝の技になります。
彼女もいつの間にか気を扱えています。
まあ、天武の才の持ち主みたいなものですから。

項羽の説明。
これもまたマテリアル。

fate世界の真実ですけど…まさかの事実に華琳はまた驚きます。
ほんと驚いてばっかりになってしまった。でもしょうがない。過去の英雄や偉人の真実は驚くことしかないですから。

最後にぐっちゃんパイセン登場。
華琳は何度目かの宇宙猫になりました。


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