Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。

ついには締ったFGOの7周年記念のイベント。
色々と情報が公開され、イベントでは色々とあったみたいですね。
私はまだ詳しく見ていないのでこれかた公開された動画を見ます!!
そして本日のイベントと新たなFGOの新情報が楽しみです!!

更に…真・恋姫†英雄譚4 ~乙女耀乱☆三国志演義[呉]~が発売!!
新たな孫呉の話が楽しみです。
炎蓮の過去の話が気になりますね。




二度目の遭遇

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部屋の扉を開けた時、北郷一刀の視界には因縁ある男が入った。そして部屋の扉が勝手に閉まった。

勝手に扉が閉まった事に北郷一刀は気にしない。気にしたのは藤丸立香だけだ。

彼にとっての因縁の男とは左慈である。

 

「何でここに…」

「何でって、ここは俺の別荘だ。居てもおかしくないだろう?」

 

左慈は絵を描きながら視線を北郷一刀に移している。そしてチラっと藤丸立香にも移した。

 

「カルデアのマスター。ドアは開かないぞ」

 

藤丸立香は左慈から視線を離さないままドアノブ捻るが開きはしない。左慈の言う通りであった。

 

「閉じ込められたのか藤丸」

「そのようだ」

 

2人の視線は左慈から外さない。

よく観察すると彼は龍の絵を描いている。正直に言って上手い。

 

「…ここがお前の別荘だって?」

「ああ。休暇だから別荘にいたって良いだろう」

 

休暇の為に別荘に行く。全くもっておかしい事ではない。

 

「こんな所に別荘だって?」

「ここが蜀の領地になる前からあったぞ。ま、人避けの術式を展開していたから普通は気付かないがな」

「俺らは気付いたぞ」

「そりゃ人避けの術式を解いたからな」

 

サラサラと龍の絵を完成させていく左慈。

 

「まさか愛紗や月を攫ったのか」

「あいつらは勝手に入って来たぞ。その後は知らん」

 

本当に興味が無さそうである。

 

「蠟人形が勝手に動いていたぞ」

「アレは…ああ、ただの実験だ。泥人形のな」

「泥じゃなくて蝋だろ」

「こっちの話だ」

 

左慈は龍の絵をサラサラと書いていく。

 

「本当に休暇の為だけにここにいるのか」

「さっきから警戒してるな。当然か」

「反董卓連合の時にいきなり襲われればな」

 

北郷一刀は刀の柄を握る。

鞘から抜けない刀であるが振り回せる事は出来る。

 

「そうだったな。あの時は失敗した…だが今回はどうかな?」

 

北郷一刀と藤丸立香は身構える。

 

「画竜点睛という言葉を知っているか?」

「は?」

「最後の大事な仕上げ。または少しの手を加えることで全体が引き立つという意味だ」

 

急に国語の授業が始まった。

 

「画竜は龍の絵。点睛は瞳を描く事だ」

「それが…どうしたんだ」

「画竜点睛にはこんな由来もある」

 

中国南北朝時代に有名な画家がいた。

その画家はある寺の壁に4つの龍を描くのだが、何故か瞳だけが描かれていないのだ。

画家に龍の瞳を描かない理由を聞くと「瞳を描くと龍が飛び去ってしまうから」と答えたのだ。

その言葉に人々は信じるはずもなく、龍の絵に瞳を描いて欲しいと懇願したのである。画家は人々の懇願を聞き入れて瞳を描くと龍が寺の壁から飛び立ったのだ。

飛び立たなかったのは瞳を描かれなかった龍のみであったというのだ。

 

「そんな由来から物事の大切な仕上げを瞳を描き入れることに喩えた画竜点睛という言葉が生まれたんだ」

 

左慈が描いた龍の絵には瞳が描かれていない。

 

「左慈の逸話にも絵にまつわるものがちょっとある」

「なに?」

「絵に描いた龍から肝を取り出すというやつさ」

「それがどうしたんだよ」

「左慈は…俺は描いた絵を物体化させられるんだよ」

 

龍の瞳を描き入れる。

 

「画竜点睛ってな」

 

龍の絵が飛び出し、北郷一刀へと向かっていく。

 

「概念礼装軌道。月霊髄液!!」

 

水銀が北郷一刀を守るように動き、画竜と相殺する。

 

「あ、ありがとう藤丸」

「ほう…カルデアのマスターも少し出来るようだな。英霊に任せて自分は後ろで高みの見物してるだけかと思ってたな」

 

筆を置いて左慈は椅子から立ち上がる。

 

「別荘で休暇を取っていたが北郷。お前の顔を見たら不快になったよ」

 

濃い殺意が北郷一刀に放たれる。

 

「冷静であろうとしたがどうも駄目だな。お前を見ていると苛つく。殺したくなる」

 

怒りというよりも恨みといった感情だと実感する。

 

「お前ら2人を殺すのは簡単だ。しかしすぐに殺すのもつまらん。少しは抵抗してみろ」

 

濃厚な殺気が部屋を支配する。

藤丸立香は英霊の影を呼ぼうとした瞬間に腹部に激痛が走った。

 

「がっ…」

「英霊の影を召喚するのは知っている。それは面倒だな」

 

気が付けば左慈が藤丸立香の腹部に拳を埋め込んでいた。

 

「藤丸!?」

 

鞘の抜けない刀を振るうが当たらない。左慈は先ほどまで立っていた場所に戻っていた。

 

(どういう事だ。一瞬で間合いを詰めたのか?)

 

反応出来ない程の速度で動いたというのならば驚くよりも理解できなくなる。

左慈と藤丸立香との間合いは空いていた。しかし一瞬で詰めて拳を叩きこんだ。まるで距離なんて関係無い程である。

 

「大丈夫か藤丸?」

「だ、大丈夫だ…ごほっ」

 

腹部を抑えながら視線は左慈に向ける。令呪を使用しようとして光った瞬間に左慈は藤丸立香と北郷一刀の間に居た。

 

「「え」」

「間抜けな声だな」

 

確かに待透けな声を出してしまった2人。そして腹部に重い激痛を走らせて左右に蹴り飛ばされた。

同時に壁に叩きつけられる。

 

「があっ!?」

「ぐっ…」

 

痛みが走るが意識は飛ばすわけにはいかない。歯を食いしばって立ち上がる。

 

「弱いな。本当に抵抗してくれ」

 

つまらなそうに喋るが左慈の怒りと恨みを混ぜた殺気は薄まらない。

 

(どういうことだ。瞬間移動したみたいじゃないか)

 

藤丸立香はこの状況では不利だと考えて英霊の影を召喚しようとした。しかし気が付いた時には彼は藤丸立香たちの間合いに入り込んで打撃を打ち込んできたのである。

結果、英霊の影の召喚を問答無用でキャンセルさせられたのだ。

 

(どういう原理でオレらの間合いに入ったんだ)

 

現段階で分かっているのは左慈が瞬間移動の如く間合いに入ってくるだけだ。

 

(確かめるしかない)

 

藤丸立香はもう一度、英霊の影を召喚しようとするが予想通り左慈が間合いに入り込んできて拳を叩きこまれた。

 

「何度も同じ事をよくするな。なら頑張って召喚してみろ」

(左慈の奴がまた一瞬で移動しやがった)

 

北郷一刀は左慈と藤丸立香の一連の流れを見たが何も分からなかった。

本当に瞬間移動したようにしか見えなかったのである。

 

(今分かっているあいつの力は物理透過と絵を物体化させる2つ。そして瞬間移動か?)

 

北郷一刀は考える。

 

(そう言えば彼は何処か自分の名前を他人的に呼んでいた気がする)

 

藤丸立香も考える。

 

(絵を物体化させる際に、左慈は…俺は書いた絵を物体化させられるなんて言っていたな)

 

貂蝉と卑弥呼の2人を思い出す。そして左慈と于吉は2人と同じで外史の管理者だ。

彼らは歴史上の名前を使って役を演じているような存在だ。尤も本当に役を演じているかどうか怪しいところである。

 

(もしかしなくても…)

 

偉人として演じているのであれば能力も同じという可能性が出てくる。

 

(まさか瞬間移動も左慈の能力なのか?)

 

左慈の逸話の中で瞬間移動というものがあったかと記憶の中を探す。そして奇しくも2人は同じタイミングで左慈の逸話を思い出した。

 

((まさかアレか))

 

左慈の逸話を思い出した2人。しかし2人が思い出したのは別々の逸話である。

 

「左慈の逸話の中で曹操が蜀の生姜を欲しがっていたのと錦を欲しがっていたのがあった。その時に左慈はすぐに生姜を手に入れてきたし、既に出ていた使者に錦をあと二反買い足すように伝えたというのがあった」

「ほお」

「その時、左慈は魏にいた。すぐに生姜を手にしたという事と錦を買いに行かせた使者が左慈に出会ったと言っていたという事。それらは考えようによっては瞬間移動をしたとも言える」

 

左慈の逸話には色々とある。

 

「藤丸はそっちか。俺は許褚が左慈を追いかける逸話の方だ」

「一応、北郷のも聞いてやる」

「許褚が左慈を追いかけるが一向に距離が縮まる事はなくて全く追いつけないってやつだよ。距離の操作能力…これも見方によっては瞬間移動だ」

 

2人の回答に左慈は意外そうな顔をした。

 

「お前ら案外記憶力あるんだな」

 

左慈という偉人は万人が必ず知っているかと言われれば首を縦に振れない。しかし2人が左慈の逸話を知っているのに対して素直に驚いたのである。

 

「そこまで分かってるなら特に何も言う事はない。正解だ…俺は瞬間移動が出来るし距離操作が出来る。ま、瞬間移動さえできれば十分だろうがな」

 

言い終わった瞬間に左慈の拳が北郷一刀の腹部にめり込んでいた。

 

「お、おごっ」

「さっきからカルデアのマスターしか殴ってない。どっちかと言えば俺が殴りたいのは北郷だ」

 

そのまま服を掴まれて投げ飛ばされる。

 

「北郷!!」

「平気だ」

 

受け身を取る。

祖父との特訓で嫌というほど投げ飛ばされて受け身を練習したせいか急な状況でも身体が勝手に反応した。

 

「意外にしぶといな北郷もカルデアのマスターも。これでも結構、力を込めたつもりだったんだが…ならもうちょっと強く殴ってもいいな」

 

左慈が一瞬で距離を詰めて藤丸立香と北郷一刀を殴る。そして元の位置に戻る。

 

「む?」

 

殴った瞬間に違和感を感じた。先ほど殴った時よりも頑丈になっているような感覚だ。

 

「概念礼装起動…した。コードキャスト」

 

藤丸立香と北郷一刀の周囲に一瞬だけ数字が複数浮き出た。

 

「瞬間移動に距離操作。簡単に言ってるけど脅威の能力だ。それは回避が困難を意味する」

 

間合いは関係無い。任意で攻撃が絶対に届かす事が出来るようなものである。

 

「回避ができないなら耐える為に耐久力を上げるしかない」

「そのて…」

「でりゃあああああああ!!」

 

左慈が「その程度で」と言い終わる前に北郷一刀が刀を振りかぶる。

 

「喰らうか馬鹿が」

 

刀を振るうが左慈がズレたように動いたため、床に当たる。

 

「概念礼装起動。赤の黒鍵」

 

赤の黒鍵が投擲される。

 

「そんなモノが当たるか」

 

投擲された赤の黒鍵は左慈の身体を通過した。

 

「分かってるさ」

「だから俺が続けて攻撃するんだよ」

 

もう一度、刀を振るう。左慈の透過能力は発動すればインターバルがある事は知っている。

 

「インターバルの時間が分からんだろうが」

「だけど透過中はそっちも攻撃できないだろ」

 

連続で刀を振るう。

透過能力も制限があると判断している。ならば力の限り、振るい続けて当たるまで粘るのだ。

コードキャストは耐久力を上げるだけでなく筋力といった力も上昇させる。此方も時間制限付きだが十分すぎる。

 

「確かに透過中は此方も攻撃できん。そして透過時間も無限じゃないさ。でも距離を操作できると言っただろ」

 

距離操作により北郷一刀の間合いから抜ける。

 

「離れても追いかければいいだけだ」

「逸話では追いかけても距離が縮まらなかっただろ」

 

左慈が消える。そして現れたのは藤丸立香の背後であった。

 

「隙あらば英霊の影を召喚しようとしているな?」

 

背後から床へと叩きつけられる。

 

「それしか出来ないからなカルデアのマスターは」

「てめえ藤丸を!!」

「北郷。お前はもっと何も出来ない」

 

距離を詰められて蹴りを喰らう。

 

「頑丈になったのは良いな。多く叩き潰せる」

 

怒りと恨みを混ぜた殺気は未だに薄まらない。

 

「叩き潰す数だけ心がスっとするからな。だがそれでもこの感情は簡単には消える事は無い」

「……左慈。お前は何で俺にそこまでの怒りを向けるんだ」

 

北郷一刀は左慈に向けられる怒りと殺意に全くもって分からない。

反董卓連合の時でさえ、初めて出会ったというのに左慈からは恐ろしいまでの殺意を喰らったのだから。

 

「お前は言っていたな。八つ当たりとか、俺の事はアイツだとか。どういう事だ」

「言ったところで貴様の頭では理解できんさ」

 

馬鹿にされたが、その程度の言葉では冷静さを欠きはしない。

相手はただ挑発しているだけであり、乗ってしまえば思うつぼだ。

 

「わけも分からず殺されてたまるか!!」

 

理不尽に殺されるのはたまったものではない。

自分が相手に復讐されるような事をしてしまったのかと考えていたが何も思いつかない。北郷一刀は左慈に何もしていない。

 

「俺がお前に何をしたんだ!!」

「お前を見ているだけで苛つく。声を聞くだけで不快になる。全てひっくるめて殺したくなるんだよ」

「答えになってないぞ!!」

 

左慈はただただ北郷一刀に殺意を向けている。

本当に何も心当たりが無いため理不尽にしか感じない。逆に北郷一刀は左慈に対して怒りが湧く。

 

「俺が何をしたんだ!!」

 

刀を振るうが左慈にかすりもしない。突きを、蹴りを喰らって床に叩きつけられる。

 

「大丈夫か北郷」

「だ、大丈夫だ藤丸」

 

刀を支えに立ち上がる。

 

「左慈!!」

 

ギロリと怒りを向けて睨む北郷一刀。

理不尽の殺意。更に友人である藤丸立香まで傷つける。温厚な彼であっても我慢できないものはある。

 

「少しは良い目になったじゃないか」

 

三国志の異世界に転移してから北郷一刀は怒った事は少ない。

今回の事は上位に入る怒りだ。

 

「ふん…そうだな。俺に一太刀食らわせたら教えてやるよ」

「なんだと?」

「俺が貴様に対して怒りを向けてる理由だ」

 

左慈が北郷一刀に向ける怒りの正体。

 

「ま、鞘から抜けもしない刀で俺を斬れるか怪しいがな」

 

馬鹿にするように少しだけ笑った左慈。

実際のところ言い返す事はできない。北郷一刀が握っている刀は鞘から本当に抜けないのだから。

 

「わけも分からないままのお前を殺すよりも怒りを持ったお前を殺す方が鬱憤がより発散できそうだ」

 

左慈は構える。

 

「ふん!!」

「ぐあ!?」

 

一瞬で距離を詰められ、拳を喰らう。

 

「北郷!?」

「こいつの心配をしている暇はあるのかカルデアのマスター?」

「うぐ!?」

 

腹部に蹴りを喰らう藤丸立香。

北郷一刀の剣術と藤丸立香が扱う魔術礼装や概念礼装で持っても左慈の方が実力は上である。

切り札である令呪や契約した英霊の影を呼び出す術式を発動しようとしているが左慈はそれを許さない。

彼は北郷一刀だけを見ているわけでなく、藤丸立香の動きも良く見ている。令呪を使う動作をしようとした瞬間に突きや蹴りを喰らって止められるのだ。

左慈の能力である瞬間移動と距離操作で藤丸立香は何も出来ずに殴られ、蹴られているのだ。

 

(この状況をどうにかするには…)

 

相手は間合い無視、物理攻撃無敵といった存在だ。突破口を見つけなければならない。

 

「うおおおお!!」

 

気合を叫びながら北郷一刀は駆け抜けて刀を振るうが透き通った。

 

「馬鹿の一つ覚えが」

 

そんな事は分かっている。彼が攻撃が効かないと分かって駆けたのは藤丸立香の元に行くためだ。

 

「藤丸いけるか?」

「ああ」

 

殴られっぱなしではいられない。

 

「俺は刀を振るうしかできない。藤丸は魔術で援護してくれ」

「任せてくれ」

 

刀を振るうと言っても鞘から抜けない刀。魔術が使えると言っても礼装頼りだ。

彼らの本当に力は考える事。考え抜いて突破口を見つけるのだ。




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新はまた週間以内を考えております。


747
ついに再会した左慈。
今回から北郷一刀と藤丸立香VS左慈の話です。

北郷一刀も藤丸立香も戦えるキャラじゃないので色々と工夫して戦わせます。
まあ、一刀に関しては立香より戦えるかな。
立香に関しては魔術礼装や概念礼装を工夫して書いていきます。

左慈の絵の物質化
これは左慈の逸話を元に考えた能力です。

左慈の瞬間移動と距離操作。
どっちか1つあれば十分ですかね。
こちらも左慈の逸話を元に考えた能力です。彼って色々と面白い能力を持ってるんですよね。

左慈と北郷一刀の因縁。
これも今回で分かっていきます。

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