Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
FGOではついに始まった新ぐだぐだイベント!!
山南さーーん!!
最初見てこれが私が思った事です。
ガチャで早速お迎えです。しかし利休さんが来ません。
物語では色々と複雑な展開が起きております。続きが楽しみですね。
此方の物語も『物の怪の現れる森編』が佳境に入ります。
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藤丸立香たちはカルデアの張角と合流してから幻覚の森を進む。
彼らが目指す先は甘い匂いがする発生源だ。そして全員は耳を傾けながら謎の鳥の鳴き声を逃さないようにする。
「鳥の鳴き声がインコですか」
「そうじゃ。顔良殿」
「斗詩で大丈夫ですよ。藤丸さんたちの仲間であれば真名を預けるのは構いませんから」
「私も大丈夫だよ。張角が2人いたら名前を呼ぶ時にややこしくなっちゃうし」
既に真名の預け合いは完了済み。
藤丸立香たちの仲間だからといって真名を預けてくれるとは優しいというかお人好しすぎる2人だ。しかし悪く考えてはいけない。それだけ2人からしてみれば張角は悪人ではないと思われたのかもしれない。
「インコなんているのかな?」
「動物を見かけないのにインコだけいるなんて不思議ですね」
山犬や鹿、猪といった動物は見かけない。インコの鳴き声が聞こえたと言うが鳥自体見かけない。
「儂の考えだとインコじゃないかもしれんのう」
「え、さっき鳥の鳴き声はインコだって言ったじゃないお爺ちゃん」
首を傾ける天和。
「もしかして張角は妖魔関連だと思ってるのか?」
「そうじゃよマスター」
ただのインコではなく、鳥型の妖魔なのかと口にしたが張角は首を振る。
「インコの鳴き声をするような妖魔だと言われれば特徴的なのがおる。しかしそ奴は幻覚云々が使えるとは聞いた事がなくてな。伝承的に無害そうな部類じゃ」
「そうなんだ」
「恐らくそ奴は幻覚とは関係無い。ただ妖魔が存在するというのであれば幻覚もまた妖魔が起こしていると考えられる」
幻覚の森から妖魔の森と再認識される。
元々ただの森ではないと思っていたが妖魔の森だと認識できれば考え方も対処もしようがあるというものだ。
「幻覚をかけている妖魔か」
妖魔の中には幻覚を惑わしている存在がいてもおかしくない。実際に妖魔・妖怪に化かされるなんて言葉があるのだから。
「オレの知っている中でも幻を見せてくるのは心当たりが1つあるけどここは水辺じゃないしな」
「ああ。それではないと思うぞい」
藤丸立香が思った妖魔ではないと否定する張角。
何の話をしているかチンプンカンプンの斗詩と天和。
「あ、聞こえた」
急に天和が視線を変える。言葉の通り、鳥の鳴き声が聞こえた方向に向いているのだ。
「あっちだよ」
天和には聞こえたようだが藤丸立香たちには聞こえない。張角と斗詩を見ても首を横に振る。
何故か分からないが天和には聞こえるようだ。
(あの妖魔の声は特定の者にしか声が聞こえないとは聞いた事がないが…もしや彼女にしか聞こえない理由でもあるのか?)
考えても仕方がないと思って声が聞こえた先へと向かう一同。
近づくにつれて甘い匂いが強くなっていく。甘すぎて鼻の奥から脳にかけて痛くなりそうだ。
「張角は幻覚の原因が妖魔だとしてどんな妖魔か予想は付けてるのかな」
「いや、分からん。判断材料が少なすぎるしな。まあ、甘い匂いの原因も分かれば正解が分かるかもしれんぞ」
甘い匂いの正体。
ただの甘い匂いを発する果実なんてオチかもしれない。しかし気になる点を1つずつ理解していくことで分からない事が分かるようになるのだ。
(しかし甘い匂いが強すぎる。強すぎて気分が悪くなりそうじゃわい)
つい鼻を摘まんで甘い匂いを嗅がないようにしてしまう。匂い・臭いだけで気持ちが悪くなるなんて事は多々ある。
「む、これは…」
甘い匂いの正体が目の前に現れた。
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マンチニールという植物を聞いた事がある。
トウダイグサ科に属する被子植物であり、毒性を含む植物だ。果実はリンゴと似ており死の小林檎とも言われている。
この事から果実にだけ毒があると思われてしまうかもしれないが実際は違う。マンチニールは木の実から樹木まで全てが毒である。
猛毒であり、人間から動物まで死亡させてしまう恐ろしさがある。これほど恐ろしい植物があるとは普通は思わない。しかし世界には様々な新種の植物が見つかったりしているのだ。
猛毒の植物が存在してもおかしくない。毒キノコがあるのだから毒の木の実を実らせる植物があってもおかしくない。
ただマンチニールは何故、木の実だけでなく葉から樹液、樹木の全てに毒性を持ったのかまでは分からない。これも自然界の神秘と言ってしまえば終わりかもしれない。
「不気味な樹だ」
ポツリと呟いたのは張角だ。
マンチニールは樹木から木の実まで全て猛毒の植物が存在するのならば他にも恐ろしい植物が存在してもおかしくない。
それこそ人間や動物に幻覚作用を起こす成分を含んだ植物が存在してもおかしくない。そもそも麻薬の原材料として植物が挙げられる。ある毒キノコにも幻覚作用を起こす成分が含まれている。
絶対に存在しないとは否定できない事柄だ。
「幻覚を起こす理由はコレだな」
険しい顔になる張角。彼だけでなく藤丸立香や斗詩もだ。
幻覚作用を起こさせる成分を含んだ樹木。
現代で何と言う樹か分からない。そもそも現代に存在しているかも分からない。
例えば昔は存在していたかもしれないが現代までには絶滅してしまったから記録に残っていないという可能性がある。もしくは異世界特有の植物かもしれない。
何科で何植物と言うか不明であるが目の前にある樹は間違いなく人間や動物を幻覚で惑わす植物である事は間違いない。
「ただの植物じゃない…」
ポツリとまた呟いたのは斗詩である。
見れば分かる事であるが口に出して再認識しておきたかったのだ。
幻覚を起こさせる樹の下には動物たちの死骸が横たわっていた。中には人間の白骨死体もある。更に樹の枝には首吊り自殺した人間の白骨死体が3人。
見るだけで不気味であるがそれだけではない。樹がグネグネと蠢いているのだ。
「妖魔化した樹?」
「そのようじゃなマスター」
幻覚作用の成分を含む樹は妖魔化していた。これは最悪の進化と言うべきなのかもしれない。
「こりゃ厄介じゃのう」
「燕青に荊軻!?」
「ちぃちゃん!?」
「文ちゃん!?」
彼らの視界に入ったのは燕青たちが蠢く枝に絡まれた姿であった。
「あー…マスターたちだ。これも幻覚か?」
燕青が呟くが意識がはっきりしてなさそうである。
地和や猪々子に関しては顔色が青かった。
「マスターすまない。どうやらしくじった」
荊軻は意識が少しだけ保ててるのか視線が合う。
「今助ける!!」
「待つのじゃマスター。安易に近づいてはならん」
手を藤丸立香の前に出して制止させる。天和と斗詩も早く助けたいと思っているのだが張角が留める。
「アレは幻覚を起こさせる力を持っておる。近づけば近づく程にマズイじゃろう。更に長い時間ここに居るのもな」
樹木の下には甘い匂いを漂わせている木の実が熟れてベチャっと落ちていた。
木の実に幻覚作用を起こす成分が含まれていると仮定する。その果実の水分が蒸発して成分も一緒に空中に漂ったのならば気が付かないうちに摂取していたという事になる。
近ければ近いほどに幻覚作用を起こす成分が濃いという意味にもなってしまうのだ。
「儂の符水のおかげで耐性はできておるやもしれんが長い時間この場に居るという事はそれだけ多くの空中に飛散しているものを吸う事になってしまう」
「気が付けば幻覚に惑わされてる可能性があるって事だね」
「そうじゃ。それに…おっと」
樹の枝が蠢きながら襲ってきた。
「妖魔化しておる樹じゃから向こうから襲っても来るぞ」
妖魔化した樹木。
植物に纏わる魔物や幻想種というのは存在する。ドライアドやアルラウネ等だ。
何が切っ掛けで植物が魔物や妖怪に成ってしまうのか分からない。しかし中にはある理由があってただの植物が妖魔化してしまう例もあるにはある。
例えば樹木が流れた血を吸い続けて化けてしまうというものだ。
「見て分かるようにあの樹は人間や動物たちを栄養に妖魔化したのじゃろう」
「それだけでただの植物が妖魔化してしまうのか」
「神秘ある世界…幻想がまだある時代ならば考えられるな」
チラっと張角は3人の首吊り死体を見る。
(妖魔化した原因は神秘ある時代だからだけというわけではなさそうじゃがな。そうなるとあの妖怪は何処に?)
幻覚作用を起こす成分を持っている樹の生き方が起こした結果かもしれない。
熟れた木の実を食べさせて幻覚を引き起こす。食べなくても熟れて落ちた果実が幻覚成分と共に蒸発して空中に漂う。
幻覚によって惑わされた獲物たちはフラフラと樹の元に辿り着き、倒れて栄養にされてしまう。人間や動物の血を吸い続けた樹が長い年月によって妖魔化した。
否定できない可能性ではない。
「時間は無いぞ。すぐに片を付けねばこっちが幻覚に惑わされてお終いじゃ」
グネグネと樹木の枝が蠢いている。枝は獲物を突き刺す為に蠢いているようにしか見えない。
「来るぞ!!」
幻覚作用を持つ樹木が妖魔化した。妖樹と言うべきかもしれない。
蠢く妖樹の枝が獲物の血を吸い取るが如く突き刺そうとしてくるのを回避する。
「天和は下がるんだ」
「う、うん」
藤丸立香は天和の手を引いて後退する。そして張角と斗詩は襲い掛かる枝を打ち払った。
「気を付けい。刺さったら血でも吸い取られそうじゃぞい」
「ええっ、それは嫌です!?」
血を吸い取られるなんて誰だって嫌なものだ。
「妖魔とは言え樹なら燃やせばどうにかなりますかね?」
「ほっほっほ。妖樹からしてみれば容赦ないと思われるじゃろうな。しかし捕まっている味方を救い出さないと仲間も丸焼けじゃ」
「はい。なのでまずは文ちゃんたちを助けないと」
「それはそうじゃが燃やすのは反対だ」
「え、何故ですか」
「あの樹には幻覚を起こさせる成分が含まれているのならば燃やしたら煙となってここら一帯に充満する。それに森が火事になったら元も子もない」
燃やせば終わりだが森全てが燃える可能性があるため火を扱うのは危険だ。
燃やす方法以外で妖樹を処理せねばならない。
「さて、どうするかのう」
「相手は妖魔とはいえ樹だ。なら対処はいくらでも考えられるさ」
「マスターは自信満々じゃのう」
「張角ならもう対処方法を考えてるじゃないの?」
「むふふふ。まあの」
黄色い符をいくつも展開させる。
張角は妖樹の対処法を既に考えていた。しかし実行するには捕まった仲間を助けねばならない。
最悪のケースも考えて対処法を実行させる事も出来るが藤丸立香が簡単にはソレを許さない。助け出せるのであれば助け出す。
張角も仲間を無事に助け出せるのであれば、それに越したことはない。
「マスターよ。仲間をどう助ける?」
「指示は出します。お願いできるかな張角。それに斗詩も」
「ほっほっほ。よいじゃろう」
「私も大丈夫です」
まずは荊軻たちを救出するのが優先だ。
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李書文(殺)は人和を抱えては森の中を走る。
「あっちの方角から鳥の鳴き声が聞こえます」
「向こうか」
2人は森の中を歩いていると人和だけが急に鳥の鳴き声が聞こえたのだ。
一瞬だけでなく、何度も呼ぶように鳥の鳴き声が聞こえる。2人とも聞こえたのならば鳥が縄張り争いでもしているのかと気にしなかったかもしれない。しかしここは幻覚を起こす森であり、人和だけが聞こえるというのは気になる他ない。
最初は幻覚を見ていたのだから幻聴まで聞こえ出したかと思ったが2人ともまだ正常だ。
正常だというのも幻覚かもしれないと思っては疑心暗鬼になってしまうので置いておく。自分は正常だと思い森を突き進む。
「まだ鳥の声は聞こえるか?」
「はい。まるで私たちを呼ぶように鳴いてます」
動物を見かけない。鳥の姿も見えない。しかし鳴き声だけは聞こえる。
幻覚で幻聴だと思ってしまうかもしれないが今は違うと2人は思っている。鳥の鳴き声は本物だ。
「む。何か見えてきたぞ」
「あれは!?」
蠢く怪しい樹が2人の視界に入った。
読んでくださってありがとうございました。
次回の更新も2週間以内を目指します。
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インコの鳴き声の妖怪。
たぶんこれで何の妖怪か分かってしまうかもしれません。
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幻覚を起こす元凶は…幻覚作用の成分を含む植物でした。
え…これが今回の黒幕?って思ってしまったかなあ。
マンチニールという猛毒の植物があるのならば幻覚を起こす成分を含む植物が存在してもおかしくないと私は思います。
毒キノコなんて様々な毒や謎の成分を含む植物というか菌類ですしね。
ただの植物が妖怪化する。
一応、理由はあります。オリジナル要素とちゃんとした理由も。
773
李書文(殺)と人和も合流。
次回にて『物の怪の現れる森編』も決着がつきそうです。