Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
遅くなりましたがやっとこさ更新です。
ぐだぐだ新邪馬台国面白かったです。毎回ぐだぐだイベントは神イベントですね。
そしてリコレクションイベントも始まったアトランティスとオリュンポスの高難易度クエストにヒイヒイしてます。
てっきりデメテル戦が来ると思ってましたが来なかったのは予想外でした。
そしてそして今年もハロウィンイベントがあるようですね。
エリチャンはどこまでハロウィンを進化させるようです。
新たな新キャラ…梁山泊のアサシン。気になります!!
さて、本編どうぞ。
今回で『物の怪の現れる森』編は終了となります。
774
妖樹に捕まった仲間を助ける為に藤丸立香は作戦を考え、指示を出す。
捕まっている仲間は全部で4名。長い蠢く枝が蔓のように絡まっている。その手前で蠢く枝が守る役目と襲う役目を担っている。
助けるまでに襲い掛かってくる枝を処理し、仲間を絡めている枝を切り離すしかない。
妖樹の枝の数は多い。手数が多いという事は捌くのが厳しいという事だ。此方で戦えるのは張角と斗詩の2名だ。
「張角。複数の枝を道術で対処できるか?」
「容易いな」
「斗詩は張角が枝を対処した隙に突き進んで荊軻たちに絡んでいる枝を折るんだ」
「分かりました」
概念礼装『シュトルヒリッター』を起動して5匹の鳥型を召喚。斗詩を護るように配置された。概念礼装であれば幻覚に惑わされる事はない。
「よし斗詩殿。儂の合図と共に行けい」
「はい!!」
張角は符を複数飛ばして妖樹の枝をへし折っていく。
「今じゃ!!」
合図と共に斗詩は駆け抜けていく。鳥型のシュトルヒリッターは斗詩に襲い掛かろうとする枝を食い止める。
「やあああああ!!」
彼女の得物である金光鉄槌を力強く振るって猪々子が絡まっている枝を叩き折った。
「あでっ」
そのまま地面に落ちた衝撃により猪々子は目を覚ます。
「あれ…斗詩。樹に登ってなかったか?」
「何言ってるのよ文ちゃん。それに今はそれどころじゃないから」
「おお?」
「動けるなら手伝って文ちゃん!!」
「斗詩のお願いならどんな状況だって動…って、ケーカたちが捕まってるし、樹の化け物ぉ!?」
状況に混乱しそうになるが取り合えずやる事は理解した猪々子。近くに落ちていた斬山刀を持って荊軻たちに絡まっている枝を切断していく。
「おりゃああああああ!!」
一刀両断で捕まっている荊軻、燕青、地和を開放していく。
普通ならば混乱して何をすれば良いか分からなくなるはずだ。しかし猪々子は難しく考えず、最短で最良の行動を移したのである。
思考が単純だと言ってしまえば聞こえが悪いが、行動が早いと言えば聞こえは良い。今回はまさに後者に救われている。
「文ちゃんは燕青さんを。私は荊軻さんと地和ちゃんを運ぶよ!!」
「へーい!!」
すぐに荊軻たちを抱えて張角の援護により急いで藤丸立香たちの元に戻る。
「戻ってきました!!」
「戻ったぜ…あう」
バタリと倒れる猪々子。
「文ちゃん!?」
「こりゃ貧血だな」
よく見ると彼女の顔は青い。この体調でよく動けたものだ。
藤丸立香は急いで魔術礼装を起動して猪々子たちを回復させていく。
「この符水も飲ませるのじゃ」
「変なもん入ってねえよな」
「信用ないのぉ」
燕青のジト目に張角はちょっとショックを受けたフリをした。
「私が飲ませます」
天和が符水を受け取り地和たちを飲ましていく。
「さて、儂らは妖樹をどうにかするぞ」
仲間の救出は完了。あとは元凶である妖樹を倒すだけだ。
「妖樹は幻覚作用を引き起こす成分を持っておる。先ほども言ったが燃やせば成分が煙となって広がる。それ以前に森が燃える可能性もある」
「では、どうするんですか張角殿」
「その反対をすればよいのじゃよ」
燃やすの反対は凍らせる。
寒さに強い樹木は存在するが完全に凍結させてしまえば植物は生きていけない。
生命は氷の世界では生きてはいけないし、生まれる事もない。
「天候操作はお手の物だったね張角」
「うむ。凍らせる事くらいお手のもんじゃ」
呪符を複数枚展開。周囲を凍らせるほどの冷気が込められている。
「これで終わりじゃ!!」
妖樹を凍らせる呪符が放たれた。
「む?」
蠢く枝が何本も盾のように重なって呪符を防ぐ。そして凍った枝部分が折れ、別の樹木の枝に突き刺さった。
「もしや接ぎ木か」
接ぎ木とは2個以上の植物体を人為的に作った切断面で接着して1つの個体とする事だ。
妖樹は接ぎ木の事を知っていたという事に驚きである。妖魔になったとはいえ、元は植物。知性を得ているのか生存のための本能なのか分からないが厄介という事に変わりはない。
よく周囲を見渡せば妖樹の枝は複数の樹に突き刺さっていた。これを意味するは周囲の樹も妖樹の一部という事である。
「まさか囲まれた!?」
「そのようじゃな。せっかくビシっと決めようと思ったのに逆にピンチじゃわい」
ピンチの割に張角は焦っていない。まだ彼にとって焦る段階ではないという事だ。
呪符を放って襲ってくる枝をへし折っていく。妖樹は攻撃を止めて、枝を一か所へと集中させる。
妖樹の枝が絡み合って巨人へと成っていく。その姿はスプリガン系のグリーンマンに似ていた。
「そんな事も出来るのか」
グリーンマンは大きな腕が暴力的に振るわれる。
「下がって斗詩、張角」
「は、はい」
「こりゃいかん。ぺったんこになる」
威力が上がっただけではない。妖樹は接ぎ木によって更にグリーンマンを増やしていく。
「これは腰が折れるどころの話ではないな」
このままではグリーンマンの大群が生まれる。更に接ぎ木によって森全体が妖樹になる可能性もあるのだ。
早く倒さねば藤丸立香たちは妖樹の餌食になる。
張角としては相手が幻覚作用の成分を含んでいる妖樹でなければ火計で一網打尽にしていた。森が燃えようとも敵を倒せるのならば犠牲を厭わない。
(最悪、マスターさえ守れればよいか?)
最悪のケースも頭に入れ、グリーンマンの大群をどうするか考えていると1体のグリーンマンが粉砕した。
「お?」
斗詩と天和が驚いた顔をしているが藤丸立香は拳をグっと握った。援軍が来たのである。
「これはまた面妖な事になっているな」
「天和姉さん、地和姉さん無事!?」
人和を背負った李書文(殺)がグリーンマンを粉砕したのである。
「こりゃ丁度良い。お前さんには樹木の巨人を殲滅してくれ」
「お主は張角。何故こんな所に…いや、それは後回しだな。まずはこの状況を解決する事が先決か」
新たにカルデアから外史世界に転移した張角。何故居るかと言われれば己と同じだと李書文(殺)は瞬時に理解して問題解決へと拳を振るう。
「天和姉さん」
「人和ちゃん、地和ちゃんは大丈夫だよ。ちょっと貧血気味みたい」
「そっか」
安心して胸を撫でおろす。姉であり、家族が無事なのは何よりも安心するものだ。
「人和ちゃん。状況だけどあの大きな樹が妖魔みたいなの。それが周りの樹も巻き込んで増えてるの」
「なるほど…ん?」
「どうしたの?」
「何か鳴き声が聞こえて」
「人和ちゃんも?」
李書文(殺)はグリーンマンたちを拳のみで粉砕していく。
「脆いな。だがいくらでも生まれてくるか」
妖樹は接ぎ木で周りの樹と同化してグリーンマンを生み出していく。森の中という事が妖樹にとってアドバンテージだ。
完全に藤丸立香たちは妖樹の餌場に入り込んでいるようなものである。
「いくらでも倒せるがこれでは終わらんな」
「いや、そのまま倒し続くけてくれ。こっちはこっちで仕留める準備をしておる」
張角の周囲には呪符が展開されている。
(後は倒すべき妖樹を見つけねばな)
妖樹は接ぎ木によって周囲の樹と同化している。
周囲の木々と同化しているという事は最初の1本を倒したとしても別の樹が生きていれば倒した事にはならない。
それは妖樹に命のストックがいくつもあるという事だ。1本へし折ったところで別の樹に接ぎ木で己を移す事が出来る。
(これ以上接ぎ木で周囲と同化する前に倒さないといかん。それは一度に全て同時に倒さないという事じゃ)
同時に全て倒したくとも何処から何処までか分からない。既に妖樹は枝を複数伸ばして接ぎ木による拡大をしている。
正直なところ拡張はここら一帯を燃やしたいと思っているが燃やせば幻覚作用の成分が充満するのだ。ただの樹の妖怪であれば彼はすぐさま火計で燃やしたはずである。
「立香、お爺ちゃん!!」
「なんじゃ天和よ」
「え、姉さん。この人に真名を預けたの!?」
「同じ名前でややこしいからね。それに立香の仲間だから大丈夫だと思って」
「姉さん…それは流石に」
人和は姉に対して言いたい事はいくつかあったが今はそれどころではない。今の問題を解決する事が出来るかもしれない情報を手に入れたのだから。
(もしや彼女が張梁か。張宝といいこの世界の儂らは何でこんな可愛い女子になっているのか)
張角の思った事はカルデアの諸葛孔明も思った事だ。呂布奉先に関しては珍しく戸惑ったらしい。
「それで何かあったの天和、人和?」
「そうだった。声が聞こえたの」
度々、鳥の鳴き声が聞こえると言っていた天和。その鳴き声は人和にも聞こえており、貧血で倒れている地和にも聞こえていた。
最初は本当に鳥の鳴き声でしか聞こえていなかったが今は鳴き声の意味が分かったのだ。鳥語が分かったと言うべきなのかもしれない。
天和たちはその聞こえた言葉を信じてよいか分からないが今を打開できる可能性として伝えに来たのである。
「鳴き声の本質が聞こえた的な?」
「たぶんそう」
「で、何と言っておったのだ」
「それがね…」
天和と人和が言った情報は信じられるかどうか微妙な所であった。しかし試すには丁度よいのも確かであった。
「ならば魔力を回してくれマスター」
「任せて」
李書文(殺)がグリーンマンたちを倒していたおかげで張角は呪符を大量に展開できた。
大量の呪符の展開は見る者を圧倒する。妖樹にそれを感じる事が出来るかは不明であるが生命を刈り取る程の力である。
「刈り取ると言うよりも止めると言うべきかのう」
氷結の呪符。それは凍らせる力であり、生命活動を止めるという事だ。
「冷たいのが降るぞい。気をつけい…と言いたいが樹には人の言葉は分からんか」
大量に降り注ぐ氷結の呪符。その全てが妖樹に直撃し、活動を停止させた。
「これが太平要術の力じゃ。入信はいつでも大歓迎じゃぞ」
775
物の怪の現れる森に入ってから張三姉妹は鳥の鳴き声が聞こえていた。ただし彼女たちだけにしか聞こえていなく、藤丸立香たちには聞こえない。
最初はただの空耳かと思っていたが何度も聞こえてしまえば空耳ではないと思うのは当然だ。
この森は幻覚を引き起こす森だと分かった時はやはり空耳で幻聴かもしれないと再度認識していたが妖樹との戦いでより鳥の鳴き声が多く聞こえてきた。更には鳥の鳴き声が何を言っているのかも理解でき、これはもう自分たちはマズイかもしれないと思っていた天和と人和。
完全に幻覚に惑わされているかと思っていたが2人は張角と李書文(殺)におかげで耐性は出来ているはずだと再度、思う。
鳥の鳴き声は助けを求めている。その為に妖樹がどの範囲までに広がっている情報を伝えたのだ。
そのような情報は信じられない。しかし本当だったら妖樹を倒せる可能性だ。
だからこそ天和と人和は藤丸立香たちに判断を仰いだのである。
「鸚哥の鳴き声がする。それが妖怪だとすると花魄じゃろう」
「かはく?」
中国の伝わる木の精霊の一種でもある。
「あ」
天和が声を出し、指をさした先には掌サイズの大きさで肌の白い美女がいた。
「もしかしてこの子が?」
「そうじゃ」
花魄はまた鳴いた。
「ありがと?」
天和と人和は花魄がお礼を言ったように聞こえた。そして花魄は急に現れた大きな怪鳥にくわえられて飛び去った。
「つ、連れて行かれちゃったけど!?」
「大丈夫じゃよ。あの大きな鳥は花魄を冥界に連れて行く使者じゃ」
花魄の正体は死んだ者たちの無念だ。
3人以上が首吊り自殺した木に、その者たちの無念が集まって誕生する妖怪である。救済処置として冥界の使者である怪鳥が迎えに来るのだ。
「食べられちゃったわけじゃないんだね」
「うむ。寧ろ開放されたと言っていい」
本来であれば花魄は怪鳥に冥界へと連れて行ってもらえるはずだった。しかし生まれてしまった樹が原因であったのだ。
幻覚作用の成分を含む樹が妖怪化し、冥界の使者である怪鳥は近づく事が出来なかったのである。
花魄はどうにか妖樹から開放されたい為に声を出し続けたが普通は何を言っているか分からない。しかし張三姉妹には届いたのである。
「何で私たちには聞こえたんだろう?」
「さあの。考えられるとしたらお主たちと縁があったのか、もしくは共感できる何かがあったのか」
「私たち花魄なんて妖怪と関りはないわよ」
人和はピシャリと言う。今回初めて花魄という妖怪と出会ったのだから縁も何もない。
「そうか。なら分からんのう」
花魄は自殺した者たちの無念の集合体。ならばその自殺者たちが張三姉妹と関りがあったのではないかと思う張角であったが口にはしなかった。
彼女たちが張角たちならば同じく黄巾党を結成したはずだ。そして黄巾の乱も起きたはずである。そう考えると花魄の中身は張角を支持した黄巾党ではないかと予想出来る。
「解決したのだ。なら深く考える必要はないだろう」
李書文(殺)も察したのか花魄の話題を切り上げる。
妖樹は倒され、花魄も解放された。それだけ結果オーライというものだ。
「後は森を抜けるだけだ」
物の怪の現れる森の事件は解決した。それだけで良いのだ。
776
張角の符水は良く効く。
妖樹によって弱っていた猪々子たちは元気になっていた。
「この薬効くなあ」
両腕を上にぐんっと上げながら背伸びをする。快調と言わんばかりに肩をぐるぐる回す。
「あー。あー。んん、喉の調子も良いかも」
地和は発声練習をしながら体調を確認する。
「ふっふっふ。この符水を飲めばたちまち元気溌剌じゃぞ」
「怪しいもん入ってねえよな?」
「だから入っておらんて」
燕青は警戒しながら符水を飲んでいた。張角は一癖も二癖もある人物なので油断はしない。
なにせ善意でマスターに黄色い布を渡すのだから。言葉だけでは変な意味は含まれていないが、彼の能力を知っているのであれば警戒してしまう。
善意でという部分が厄介だ。彼は本当に悪いとは思っていないのだから。
「前に黄色い布を主に巻いた時は忘れてねえからな」
「むう。爺のお茶目だと理解してくれんのう」
「お茶目っつう言葉で片付けんな」
案外、張角もジェームズ・モリアーティやコロンブス・クリストファーたちと同じカルデアでは要注意爺である。
「カッコよくて頼りになるんだけどね」
「流石マスター分かっておるな。そんなマスターにイカした黄色いパンダナを」
「言った傍から!!」
これもまたカルデアでは日常の流れだ。
「では、私たちはこの森での出来事を報告しに蜀に戻ります」
「いやあ。なかなか面白かったぜ」
「面白くともないともないよ文ちゃん…」
森の調査。そして怪物退治をする事にはなるだろうと思っていた斗詩であったがまさか原因が幻覚作用の成分を持つ樹で更に妖魔だったとは思うまい。
想像以上に大変であったというのは誰もが思う感想である。
「藤丸さんたちはこのまま呉に向かうんですよね」
「うん。朱里ちゃんに頼まれた仕事はこれで大丈夫だしね」
先ほど述べたように後は斗詩たちがこの森での出来事を朱里に報告するだけだ。
「呉までお気を付けくださいね」
「斗詩たちも帰りも気を付けて」
「じゃ、またな~」
斗詩と猪々子たちはここまでだ。2人は蜀へと戻り、藤丸立香たちは呉へと向かう。
「行こうか」
「ちぃまだ本調子じゃないからおぶって」
「お姉ちゃんも~」
どう見ても嘘にしか聞こえない2人に人和はヤレヤレといった顔をしていた。
「自分で歩け」
「そんな事言わないでおぶりなさい」
「しかもオレかよ」
「お姉ちゃんは立香君がいーい」
「いいよ」
「甘やかすな主」
妖樹との戦いは命がけで神経張り詰めていたが今はゆるゆるであった。
「歩きながらで良いから儂にこの世界の事を説明してくれんかのう」
「そうだね」
張角はいきなり幻覚に惑わされる森にレイシフトした。そしていきなり妖樹との戦闘になった。
この外史世界での情報なんて全く分からない。辛うじて三国志と似た世界というのは理解したがどのような状況かは詳しくない。
「結構、説明が長くなるからゆっくり話していこう」
「ならゆっくり聞こう。お茶でも飲みながら…と言いたいがそれは無理か。かっかっか」
藤丸立香は外史世界についての説明を張角にしながら呉へと向かうのであった。
「ところで儂、天和たちの事が凄く気になる。儂ってこっちだと歌を歌っとる美少女なんか」
「うん。歌で大陸の天下取るって宣言したら黄巾の乱が始まったらしい」
「なんて?」
777
藤丸立香たちは呉へと向かって旅を続けた。
蜀から呉までの道のりは遠い。すぐに向かって到着出来るとは限らない。
既に魏と呉の戦争は始まっている。どのような状況になっているのか気になるのは当然だ。
魏や呉にも知り合いがいる。戦争をすれば生きる死ぬお世界であるため、次に会う時にはもう生きていないのかもしれない。
だからと言って藤丸立香たちに出来る事は何もない。この外史世界の歴史の流れに深く関わってはいけない。それは管理者である貂蝉との約束だ。
そんな約束をしていながら結構介入している気もしなくはないが貂蝉たちが特に何も言ってこないのでまだセーフという事かもしれない。
「雪蓮さんと曹操さんの戦いか。どうなってるんだろう」
まだ戦は継続中なのか。それとも終わったのか。呉に行かねば確かめようがない。
「今日はここまでにしようマスター」
「荊軻?」
「そろそろ日が暮れる。早く呉に向かいたい気持ちは分かるが夜に歩くのは危険だからな」
「…そうだね」
どうやら顔か行動に出ていた藤丸立香。無意識に早く呉に向かいたいと焦っていたようである。
何だかんだで呉での関りがこの外史世界で一番多い。どうしても情が呉に行くようだ。
「焦っていても呉にすぐに着くわけでもない。落ち着いて向かう方が肉体的にも精神的にも負担は少ないぞ」
「荊軻の言う通りだね」
焦って気を張っても疲労が溜まりやすくなるだけだ。ならば深呼吸して落ち着き、リラックスするのが一番である。
「おい。誰が奥から来るぞ」
李書文(殺)がサングラスを取って目を細める。
「野盗か何かか?」
燕青が誰よりも前に出る。
「3人…うち2人は大きいな」
一直線に焚火をしてい藤丸立香たちの元に近づいてくる謎の3人組。
「野盗だったらぱぱーっと片付けちゃってよね」
地和たちは安全位置である藤丸立香の後ろに移動。
張三姉妹はカルデア一行の中で安全なのが藤丸立香の近くだと理解していた。
「オレも前線に出る時は出るからね」
藤丸立香も安全な後方にいるわけではない。場合によっては危険すぎる前線に出る事はあるのだ。
「む…あの筋肉は」
「うわ。すぐに分かった」
警戒を解く李書文(殺)と燕青。
「何か久しぶりに見た気がする」
「誰?」
「貂蝉たちだよ」
大陸中の病魔を撲滅するために華佗たちは現在、蜀を離れていたのだ。
「ほほう。貂蝉か」
この外史世界の貂蝉が気になったのか張角も「どれどれ」と見る。
「久しぶりだな!!」
「おお。息災だったか」
「相変わらず可愛いわね立香ちゃんんん!!」
熱血そうな青年と筋肉モリモリの漢女2名。
「貂蝉?」
「あら、新しい人がいるわね。渋いお爺ちゃんでいいわね」
「マスター?」
「まあ、言いたい事は分かる」
やはりこの外史世界の貂蝉はカルデアの張角でさえ虚を突かれるようだ。
「もしかして呉に向かう途中だった?」
「うん」
「やっぱりね。魏と呉の戦争も終わったようだし」
「え、終わった!?」
貂蝉の口にした言葉に藤丸立香は目を見開いた。
まさかの情報に緊張が走る。察したのか貂蝉も真剣な顔になった。
「ええ、つい最近戦争は終わったそうよ。私たちも気になったから呉に向かう道中だったの」
戦争の後は怪我人や病人が多くいる華佗としては気になって戦場に向かっていたのだ。
「魏と呉の戦はどっちが勝ったんだ貂蝉」
「引分けみたいな?」
「引分け?」
「魏の侵攻に対して呉は防衛し、勝ったそうよ。そして魏軍は撤退した」
それだけ聞けば引分けでなく呉の勝利という事になる。しかし次の言葉に藤丸立香は言葉が出なかった。
「でも…雪蓮ちゃんが戦死したって」
雪蓮の戦死。それは呉の王が死んだという事だ。
読んでくださってありがとうございました。
次回の更新は未定となります。
正直に言うとリアルが忙しくなってきて更新が遅れます。
今回の更新がそうでした。
なのでゆっくりと更新をお待ちください。
774~776
『物の怪の現れる森』編終了です。
この物語は恋姫シリーズの乙女乱舞と天下統一伝のあるイベントを元に書いたものでした。
乙女乱舞で配信された『物の怪の現れる森』の元ネタの話と天下統一伝の『顔良の森脱出大作戦!』といういくつか設定を使わせていただき、オリジナル物語にしました。
今回の『物の怪の現れる森』編は色々と設定があったのですが全て活かしきれず書き切れなかったという部分があったので自分的には少し不完全な話でしたね。
張角と張三姉妹をもっと絡ませたかったというのがあります。
まあ、これはいずれ別で書こうと思います。
しかしカルデアの張角としては歌で大陸の天下を取ると言って黄巾の乱が始まったと聞いたら「なにそれ…」と言うでしょうね。
斗詩と猪々子ももっと活躍させるつもりでした。
それこそ猪々子には張角の補助を受けて天下統一伝の必殺技である『氷結波斬』で妖樹を倒すシーンも考えてました。
張三姉妹もまた前の話で登場させた楽器の付喪神と協力して戦うというのも考えてました。こっちも天下統一伝の技とか出したかったですね。
4つのルートの話では恋姫組とカルデア組でもっと活躍させたかった。
花魄。
この妖怪の正体については本編にも書いたように自殺者の無念の集合体。
実は黄巾党に所属していたある三姉妹(モブキャラですが)という設定がありました。
ちょっとした回想シーンで張角たちが彼女たちを助けた話でも書こうとしていましたが書けませんでした。
同じ三姉妹で黄巾党であった。実は縁がありました。だからこそこの花魄の声が聞こえたのかもしれないっていう設定でした。
妖樹。
設定として『樹木子』にしようと思ってました。
オリジナルで設定で元は幻覚作用の成分を含む危険な樹。ただ根から栄養を取るだけはなく、幻覚によって動物たちを自分の根元に誘い出して徐々に弱らせて殺して栄養にするという設定もありました。食虫植物みたいなものですね。
そんな設定を踏まえて上記の三姉妹が森に迷い込んで幻覚惑わされて首吊り自殺をしてしまった。
この時の外史は神秘ある世界になりつつあり、妖魔たちが存在している世界となっています。
なので妖怪・怪異が生まれやすいという設定もあって、花魄が誕生しました。
そして樹木子は人間の血を吸い続ける事で妖怪化します。(正確には色々とありますが)
自殺者たちの血肉を栄養にしていたら妖怪化してしまった。
同時に2つの妖怪が生まれたというものでした。
777
最後の最後で雪蓮が戦死したというまさかの情報。
本当に死んでしまったのか…それは次回の物語で語られます。
ついに『魏と呉の戦争』編が始まります。