Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
連続更新です。
前話で更新は未定と書きましたが何とか早く書けたので早速更新しました。

では本編をどうぞ!!
流れが原作と同じですが徐々にズレ(異変)が起きていきます。
そんなズレを修正していく者たちも徐々に関わっていきます。


魏と呉の戦-刺客-

781

 

 

魏と呉の緒戦が既に開戦されていた。

 

「かかれーーーーー!!」

「いっけーーーーー!!」

 

夏侯惇と許緒の号令と共に魏兵たちが雄叫びを上げながら突撃していく。

 

「「「おおおおおおお!!」」」

 

魏兵の数も多く、呉の砦の1つが陥落しそうになっていた。

 

「ぬう、なんたる兵の数か。備えはしてあったが、まさかこれほど早く、淮南に攻め込んで参るとは…建業への伝令はもう送ったか!?」

「はっ!!」

「何人送った?」

「選りすぐりの5人にございまする」

「足りん。相手はあの曹操だ。もっと多くの伝令を放て!!」

「はは!!」

 

砦を守る呉兵たちは勝てないと判断した。しかし降伏する気はサラサラなく、最後まで抵抗する気で溢れている。

敵に降伏せず、命を燃やして敵に一矢報いるのが呉の兵士だ。

 

「秋蘭様」

「うむ。砦へ送った降伏の使者は返事を持ち帰ったか?」

「はい。ですが、呉の兵士は決して敵には降らぬ。城を枕に全員が討ち死にする覚悟だと」

「頑迷な…これほどの兵力差では砦は一日と持つまい」

 

夏侯淵と言葉に典韋も頷く。

 

「いや、天晴な心掛けだ。それでこそまことの武人よ。我ら姉妹で死に場所を与えてやろうぞ」

 

夏侯惇は呉の兵士の気概を気に入っていた。

 

「まだ緒戦だ。姉者、張り切りすぎるなよ?」

「何を言うか。緒戦だからこそ我が魏軍の恐ろしさを敵に示さねばならんだろうが」

「はい。ガンガン攻めましょう!!」

 

夏侯惇と許緒は緒戦から士気が高い。

今回の戦は天下統一への大きな前進だ。寧ろ3分の1を制覇するようなものである。

 

「ふっ、名のある将との戦までその気迫は取っておけ」

 

魏兵の士気は高く、呉の砦が陥落するにも時間の問題だ。

 

「華琳様。全軍が州境を超え、揚州へと入りました」

「ええ、戦況はどんな具合?」

 

荀彧は現在の魏の侵攻状況を明確に報告していく。

 

「はい。州境の砦はすべて我が軍が包囲しました。先陣の王朗隊は既にわいなんに深く斬り込んでおります」

「砦の兵に降る気配は?」

「それはまだございません」

「ふふ、袁紹の軍とは士気が段違いね」

 

馬超たち涼州での戦い以上でもあった。

 

「ただ、州境には多数の罠や防壁が張り巡らされておりました。それらは取り除きましたが今後、進軍する際にも注意が必要となりましょう」

「何か言いたそうな顔ね稟」

 

郭嘉は不満がある。

 

「建業への遣いの件です。あれは無用だったのでは?」

「はい。宣戦布告をしたようなものですからね。敵もさるもの引っかくもの。州境には入念に備えがしてありました」

 

程昱も続いて言葉を出す。

今回の呉へ赴いた遣い。これは寧ろ無かった方が良かったかもしれない。

敵に必要の無い慎重さ等を上げさせたのだ。その結果が州境に張り巡らされた多数の罠である。

 

「実際、宣戦布告のつもりだったもの。孫策がそれに気付かないような愚か者じゃなくて良かったわ」

「また悠長なことを…」

 

孫策との戦を楽しみたいという考えが読めてしまう。しかし郭嘉はソレを否定しない。

好敵手との戦を楽しむというのも士気を高くする要因の1つだからだ。

 

「あんたたち、つべこべ文句ばかり言わないの。華琳様の堂々たる王者の戦をお支えするのが私たち軍師の務めでしょ!!」

「桂花、貴女こそなんでもハイハイ首を縦に振ってないで言うべきことは言いなさい!!」

「何ですって!?」

 

キイキイと言い合いをする軍師2人。

 

「はー…私の軍師は喧嘩ばかりしているわね」

「これでは戦う前から負けですねー」

「うっ…」

「も、申し訳ございません」

 

こんな2人だが曹操にとっては可愛い軍師だ。そして信頼できる軍師でもある。

 

「凪」

「はっ」

 

すぐに楽進が曹操の下に現れる。

 

「あなたは真桜と沙和を率いて王朗隊の支援を。先鋒の部隊は練度も経験も足りていない…功を焦らないよう目を光らせなさい」

「承知しました!!」

「霞」

「あいよ!!」

 

張遼の返事にピキっとした荀彧。

 

「はいでしょ?」

 

すぐさま言葉遣いを直すように注意する。

 

「あなたは騎兵を率い、敵の砦が放つ伝令を一人残らず捕えなさい」

「一人残らずって…そらまた難しい注文やなぁ」

「華琳様のご命令よ。あとその口のきき方!!」

「はいはい、御意でんがな。やってみまー」

「もう!!」

 

張遼の言葉遣いに関して曹操は気にしていない。普段通りの言葉遣いの方が彼女らしさがあるからだ。

 

「春蘭、秋蘭には州境の砦を落とし次第、東西に広く展開させ、長江まで進軍させるとして…風、船団は予定通り、淮水を下っているわね?」

「はい、問題ございません」

「やはり淮南を制圧した後、最後は建業の北にて長江で孫呉水軍と決戦になるでしょうか?」

「ふむ。その可能性は高いが孫呉は悲願の揚州統一を果たしたところ。このまま我らが淮南を蹂躙するさまを指を咥えて見ているとは思えないわ」

 

孫呉は様々な苦難を乗り越えて今に至っている。取り戻し、揚州を統一したばかりでまた奪われるような真似を孫呉が黙っているわけがない。

曹操は的確に相手の感情を読んでいく。

 

「水上決戦は流石に分が悪いですからね。呉軍が長江を越えればしめたものです」

「ええ、船の戦は疲れるわ。出来れば広々とした大地で決着をつけたいものね」

 

魏軍の実力は高いが未熟な部分もあるのも否定はしない。

魏と呉の水軍の練度は呉の方が上だ。見栄を張って己の方が上とは言わない。敵であっても曹操は己より上であれば賞賛する。

 

「さあ、孫伯符。英雄と幹雄、世に謳われる者同士、正々堂々の戦をしようではないか」

 

 

782

 

 

建業に伝令を届け兵士が必死な形相で駆けてきた。

 

「申し上げます。魏の大軍勢が州境を越えて、淮南の諸城に攻めかかっております!!」

「我らの予想より十日は早かったか!!」

 

報告を聞いた雷火は唸った。

 

「も、申し上げます。敵の先鋒…王朗の率いる舞台はすでに淮南の奥深くまで侵攻しております」

「報せが遅い。何故、今頃になってか!!」

 

後手に回された状況を理解した祭も唸る。

 

「で、伝令を狩る敵の追撃が激しく、私とともに発った者も…その、ほとんどが」

「むっ…」

 

戻って来た伝令も必死だったというのがすぐに理解。苛ついて必要な報告を持ってきた伝令たちに怒った己を恥じる祭。

知らぬことだが張遼の伝令狩りが相当に激しかったという事である。

 

「すまん、言い過ぎた。その傷でよく報せを持ち帰った。誰か、この者の傷の手当を!!」

「はっ」

 

すぐさま傷ついた伝令を治療するべく動く。

 

「曹操め、これほど素早く軍勢を整えるとは」

「魏軍は陸路で攻めてきおったか。じゃが、淮南はともかく長江に守られたこの建業を如何に攻めるつもりか」

「恐らく淮南への侵攻と同時に船団が淮水を南下しているでしょうね」

 

現状で考えられる魏軍の動きを予想する穏。

 

「ふー…急ぎ、雪蓮様にもお報せせねばの」

「はい~。魏軍の侵攻は予想していましたが何も今日でなくてもって思っちゃいますよね~」

 

ヤレヤレと顔を振る。

 

「ああ。日が悪かったな」

 

この場に雪蓮と冥琳が居ない事がソレを意味する。そんな2人は建業から離れて長江の畔へと向かっている。

 

「炎蓮様には随分ご無沙汰してしまったな」

「そうね」

 

雪蓮と冥琳は長江の畔に建てられた小さな祠に訪れていた。

炎蓮の魂を弔うために建立された祠である。簡単に言えば墓参りだ。本来ならば藤丸立香も一緒に連れて行きたかったが彼は不在。

 

(まったく…こういう時に限って立香は居ないんだから。呉に帰ってきたらまたオシオキね」

 

出会いがしらのラリアットがまた確定した。

そもそも藤丸立香としては炎蓮の墓参りをするというのが何とも微妙な感覚になる。何せ彼は炎蓮の生存を知っているからだ。

雪蓮だけでなく他の呉の面々が炎蓮の生存を知った時、どうなるか分からない。

 

「久しぶりね母様、元気にしてた…って、それは変か」

 

慰霊碑の下には誰も埋まっていない。しかし炎蓮の慰霊碑は必要という事で建てられたのである。

 

「もっと墓参りに来いと怒ってるやもしれんぞ?」

「そんなこと言わないわよ。そんな暇があったら戦しろって怒鳴られるわ。けど…ああ見えて母様は寂しがり屋だからね」

「そうか…なら掃除しようか」

「ええ」

 

2人は川から汲んできた水で碑石を綺麗に洗い流す。

布で磨き、丁寧に汚れを落としていく。その後は周辺の掃除をする。しかし孫家の信頼する墓守が毎日、手入れをしているため当たりはほとんど散らかっていない。

それでも2人は雑草を抜いて落ち葉を掃き清める。

 

「こんなところかしらね」

 

死者を供養するのは重要な事だ。古代の中国では供養しない死者は鬼となって人を襲うと言う。

もしも炎蓮は鬼となったら誰も止められないと思う雪蓮。

 

「まだ此方に落ち葉があるぞ雪蓮」

「テキトーでいいわよ。どうせ母様はそんなこと気にしないし」

「立香がいたらちゃんと掃除しようと言うぞ?」

「そうかしら?」

 

墓の掃除はきちんとするべきだ。掃除が終わると2人は改めて慰霊碑に向き直った。

 

「母様」

 

雪蓮は南海覇王を慰霊碑の前に置いて語りかける。

 

「母様が果たせなかった夢。揚州統一の大仕事は無事に私が成し遂げたわよ」

 

今までの起きた報告。

揚州統一は炎蓮の悲願であったが娘の雪蓮が果たしたのである。

 

「喜んでくれてる…ううん、怒っているわよね。袁術なんかにしてやられて、こんなに回り道をしちゃったんだもの。でも、ようやくここまで来ることができた。母様が広げ、その志半ばで去ることになってしまった私たちの故郷…その故郷は今、孫家と呉の民のもとに還ったわ」

 

今や呉という国にまでなり、雪蓮は一国の王である。尤も勝手に名乗っているだけであるが。

 

「見てて母様。ここから母様の本当の夢…いよいよ孫家が天下に歩みを進める時よ。母様の遺志は私が継ぐ。天下の民の安寧…戦の無い世の中をこの私が必ず実現してみせるわ」

 

天下の民の安寧。この乱世にそれを実現するのはとても困難である。

現代であってもその夢は難しいのだから。それでも彼女は諦めず進んでいく。

 

(雪蓮…)

 

冥琳は雪蓮の両肩がかすかに震えていることに気付いた。

 

「母様…戦を無くすために戦う。その矛盾、葛藤を母様はとっくの昔に乗り越えていたわよね。甘いって笑うでしょうけど…私にはまだつらい。戦をすれば兵は傷つき、民も苦しんでしまう。それがまだ割り切れない」

 

少し震えた声で雪蓮は慰霊碑に語り掛けていた。普段は決して誰にも見せない姿。口にしないような心の奥底に秘めた本音。

非情に振舞っても彼女は根っこの部分が甘いという事を親友である冥琳は分かっていた。

 

「母様…どうしてもつらいの。戦をするたびに家を焼かれ、田畑を失い、逃げ惑う民の姿が頭の中に浮かんで…」

 

彼女は教えを乞うように小さく呟いている。しかし慰霊碑からは返事は帰ってこない。彼女は非情かと思えば違く、優しすぎるのだ。しかし優しいのが間違いではない。

誰かが傷付く事はつらいものは当然だ。それが家族、友人、守るべき民であるのならば尚更である。

人生は矛盾だらけで、理想を叶えるためには望まない事もしなくてはならない事もある。しかしそれを1人で抱えていかなくてもいい。

誰もがみんな弱い1人の人間だ。1人で何もできないのであれば力を合わせれば良いのだ。

 

「孫呉の力は人」

「私も孫呉の一員だ。雪蓮が辛かったり苦しかったりする時は私も全力で支えるさ」

「ふふ、ありがとね冥琳」

 

目尻の涙拭う。

雪蓮は1人じゃない。彼女を支える仲間は多くいるのだ。

 

「あ、冥琳ったら目が真っ赤」

「それは雪蓮もだろう」

「ふふっ、2人ともまだまだ甘ちゃんって事かしら。涙なんて母様がこの世で一番嫌いなものだわ」

「炎蓮様の前では弱音は禁物だな」

「そうね、泣き言を許すような母様じゃなかったわ。母様、さっきの話は忘れて。ちょちょいと天下を獲ったらお酒でも持ってまた会いに来るわよ」

 

ここで「ちょちょいと天下を獲ってくる」と言えるあたり雪蓮は大物だ。

 

「もういいのか?」

「ええ。もう一度、お別れを言ってから」

「分かった」

 

また慰霊碑の前に跪いた雪蓮と冥琳。

 

「そろそろ行くわね母様。これから曹操と戦わないといけないから」

 

曹操からの宣戦布告を受けた孫策。これからきっと苛烈な戦いが始まる。

冥琳としては既に曹操が動いており、呉の領内に侵攻していると予想している。それこそ淮南あたりに居るのではないかとも思っている。

 

「だからしばらく来れないわよ。ま、心配しなくても私は立派に戦ってみせる。母様が思い描いた夢、天下の民が思い描く未来に向かってね」

 

雪蓮は覚悟を決める。そして絶対に曹操を倒すと慰霊碑の前で約束した。

 

「母様…見せてあげるわ。母様の娘たちの戦いぶりを。そして呉の輝かしい未来を」

 

慰霊碑の前にはまさに呉の王がいる。そして曹操に負けないとも確信した。冥琳は最後まで彼女の横で支えようと誓った。

2人は強き意志を持って曹操との戦いに赴こうした矢先、最悪の一矢が放たれた。

 

 

783

 

 

矢。

弓の弾力を利用して発射される武器だ。遠距離武器であり、銃が創られるまでは絶大な威力を誇っていた。

 

「ぐっ…!?」

 

矢が雪蓮の肩に突き刺さった事を理解するに少しだけ遅れた。

 

「雪蓮!?」

「なっ…これは」

「矢…敵か!?」

 

冥琳は雪蓮を庇うように立ち、鞭を持つ。その銘は『百虎九尾』だ。彼女にしては珍しく大声で叫んだ。

 

「姿を現せ卑怯者め!!」

「言われずとも」

「殺れいっ、孫策の首を取れ!!」

 

装束を纏った5人の刺客が茂みより現れる。

 

「冥琳、下がって。こいつら手ごわいわよ!!」

「雪蓮こそジッとしていろ!!」

 

雪蓮は南海覇王の剣を抜く。

 

「こんなのかすり傷よ!!」

 

矢に撃たれた痛みを無視して雪蓮は南海覇王を振るった。

 

「はあああああ!!」

「きぇええええい!!」

 

1人刺客を切り裂く。

 

「おのれ!!」

「誰の回し者だ!!」

「死にゆく者に教える名など無い…つぉ!?」

「軍師だからといって戦えないわけではない!!」

 

2人目の刺客を倒す。

 

「貴様!!」

「周瑜は無視しろっ。孫策を殺せ!!」

「そうよ。あなたたちが欲しいのは私の首でしょ!!」

「ぬあああああ!!」

「はあああああ!!」

 

3人目の刺客の首を刎ね飛ばし、勢いを殺さず4人目の刺客の胴を一刀両断した。

 

「雪蓮、無茶するな!!」

 

矢傷を受けており、傷口からは血を流している。

 

「化け物めえ!!」

「はあっ…ふふふ。光栄ね。そうよ、私は虎の娘。人の力で敵うとでも思ってるの?」

「ぬおおおおおお!!」

「はああああああ!!」

 

最後に残っていた1人も袈裟に斬り捨てられ、血だまりの中に沈んだ。

 

「ふぅ…冥琳、無事?」

「それはこっちの台詞だ!!」

 

全員を斬ってしまい、誰に命令されたのか聞き出せないと思っている暇はない。まずは受けた矢傷の手当をしなければならないのだ。

すぐさま駆け寄って傷を診ようとした時、雪蓮は肩に刺さった矢を強引に引き抜いた。

 

「あぐぅっ…」

「勝手な真似はするな!!」

「大げさねえ。かすり傷だってば…ぐっ」

「かすり傷ではないっ。いい加減にしろ!!」

 

傷口からはかなりの量の血が流れていた。

すぐに止血するために冥琳は酒の入った瓢箪の蓋を開ける。

 

「ええええ…まさか」

「我慢しろ」

「うう…やだな」

 

傷口を酒で消毒するとよほど染みたのか雪蓮は顔を歪ませた。

 

「ああ…もったいない」

「言ってる場合か」

 

次に服の一部を破って即席の包帯を作って傷口に巻いていく。

 

「すぐに医者に診せないと」

「これくらい平気なのに…冥琳!?」

 

雪蓮は冥琳を横に突き飛ばして、迫る凶刃を南海覇王で受け止める。

 

「なっ、まだ居たのか!?」

「おのれぇい。油断していたと思ったのに」

 

茂みより新たな刺客が襲ってきたのだ。

その数は合計で10人。最初の5人は2人を油断させるために先発として襲ってきたにすぎない。

 

「まだこんなにっ」

 

雪蓮の顔色は悪い。最初の5人は勢いで仕留めたが追加の10人をこれから倒すのはどう考えても厳しい。

戦えると言った冥琳であるが本職ではない。刺客10人から雪蓮を守りながら全員倒す事は不可能だ。

 

「下がってて冥琳…私が全員斬るわ」

 

南海覇王を握り直して刺客を睨む。

 

「待て、これ以上動くな。出血が酷くなるぞ!?」

「でも、このままじゃ殺されるわよ」

 

何もしなければ無残に殺されるだけ。絶対に勘弁だと言いたいほどだ。

 

「時間を掛けるな。さっさと殺すぞ」

「分かっている。囲んで一斉に斬りかかれ!!」

 

10人の刺客は2人を囲む。

 

「これは…マズ」

「斬りかかれぇい!!」

 

10人の刺客たちが2人に斬りかかろうとした時、周囲に月琴の音が響いた。

 

「な、なんだ。誰かいるのか!?」

 

刺客たちは止まり、そして周囲を見渡す。

雪蓮の暗殺はいずれバレるだろうが目撃者がいるのであれば、その人物も口封じとして殺さなければならない。

今だに響いてくる月琴の音が何処から弾かれているのか耳を傾けていた。

 

「そこだ!!」

 

1人の刺客の指の先にあるは茂み。3人の刺客が一斉に襲い掛かった瞬間に一際大きい月琴の音が響いた瞬間に吹き飛んだ。

 

「なっ!?」

 

いきなり刺客3人吹き飛んだ現象に全員が一瞬だけ止まった。

 

「な、何が…」

「ははははは!!」

 

今度は急に笑い声が聞こえてた。すぐさま笑い声の方に視線を向けると獏のような動物に乗った男性が爆走してきた。

 

「ぐおわあああ!?」

 

爆走を止めずに刺客たちを轢いた。

 

「どうどうシフソウ君」

 

獏のような動物に乗って急に現れた男性は流麗な中華服に身を包む、常ににこやかな笑顔と涼しげな振る舞いをしていた。

 

((なんだかうさんくさい))

 

雪蓮と冥琳は同時に同じことを思ってしまった。

 

「あれ…なんかうさんくさいとか思ってません?」

「「思ってない」」

「安心してください。僕は貴女たちの味方ですよ」

「「……」」

「あれ…信じられてない?」

 

急に現れたうさんくさそうな男性から「味方です」と言われても信用できない2人。

信用できないが刺客たちを攻撃したのだから完全に敵というわけではないという事は分かった。

 

「やはり第一印象は胡散臭いじゃな」

「僕ってばそんなにうさんくさいですかね?」

 

月琴を持った不思議な少女が茂みの中から現れる。先ほど3人の刺客を吹き飛ばした張本人だ。

 

「あの子は?」

「僕の連れです」

「どちらからと言うとお主が私の連れじゃな」

「そ、そうなのか?」

 

とても変わった2人組であった。

 

「この部外者が!!」

 

刺客たちは雪蓮の殺害よりも急に現れた2人の男女を先に殺す事を決定。

 

「道士殿。頼むぞ」

「任せてください」

 

道士と呼ばれた男性は杖のような鞭を取り出した。

 

「そんな物で我らを倒せると思うな!!」

「5人はその男女を殺せ。残り5人で孫策を殺すのだ!!」

「お前らは僕1人で十分だ」

 

鞭を素早くを振るって刺客たちを弾き飛ばした。

 

「なんだと!?」

「み、見えんかったぞ!?」

「お前らが遅いだけだよ」

 

気付かせぬうちに間合いを詰めて重い拳を叩きこんだ。

 

「ぐぅおぉぉぉ!?」

「まずは1人」

「こいつ!?」

「2人、3人、4人…そうれそうれ!!」

「つ、強い…」

 

道士という割には武人ではないかと思う程の動きであった。冥琳はてっきり妖術やら何やらで倒すかと思っていた。

気が付けばたった1人で10人の刺客を打ち倒していた。息1つ切らしてないのを見るに相当、腕の立つ人物だと理解出来た。

 

「終了です」

「全員殺したのか?」

「まさか。こっからは尋問の時間ですよ」

「全員死んでおるぞ」

「あっれぇ!?」

 

刺客たちを調べる月琴の少女。

 

「ふむ…情報は喋らないという徹底ぶり。口に含んでいた毒を噛んだか」

「プロですね」

 

刺客として依頼主の情報は渡さない。

彼らは暗殺のプロであり、口も堅い。それこそ死を選ぶ程に。

 

「こ奴らが何処の者からの刺客は分からんが…これで一安心じゃな」

「あ、ありがと。呉の王としてお礼を言うわ」

 

雪蓮は矢傷を我慢しながら2人の男女にお礼を言う。

 

「助けてくれたお礼をしたいところだけど…」

 

ヨロっと身体が倒れそうになった雪蓮を冥琳が支える。

 

「あまり動くな……すまんな2人とも。お礼をしたくとも我が王はこのような状況だ」

「いえ、無茶はしないでください」

「私は孫策よ。名前を聞かせてちょうだい」

 

呉の王として命の恩人の名前くらいは聞いて覚えておきたい。

 

「私は管輅じゃ」

「管輅って…あの占いの?」

「その管輅じゃ」

 

まさかの名前が出て少しだけ驚いた雪蓮と冥琳。

 

「女性だったのか。噂では男性の老人と聞いていたが…」

「所詮は噂じゃ」

 

噂なんて尾ひれが付いて付き過ぎるものだ。本当の事から全くもって全然異なる内容になっていたりするものである。

 

「で、其方の男性は」

「僕は」

「こっちは道士と呼んでくれ」

 

男性の方が自己紹介をしようとしたら管輅が先にスパっと簡単に済ませた。

 

「はい。僕は道士です」

「そ、そうか」

 

何故か道士の名前が聞けなかったが今はそれどころではない。

優先すべき事は孫策の矢傷の治療である。早く城に戻らなければならないのだ。

 

(あの矢傷…)

(何もするな道士殿)

(僕ならこの場で治せますよ?)

(アレはあのままでいい)

 

管輅の孫策の矢傷には触れなくてよいという判断に道士は従った。

 

「おや、馬の脚音?」

 

遠くから馬の駆ける音が近づいてくる。

また刺客が襲ってきたかと警戒するが次に聞こえてきた声に安心してしまう。

 

「姉様、雪蓮姉様!!」

「なーんだ、蓮華か」

 

蓮華の声で安堵したが馬の飛ばし方でただごとでは無い事が理解できた。

 

「蓮華様。こちらです!!」

「姉様、急ぎお伝えする事が…なっ、そのお怪我は!?」

 

蓮華は辺りに倒れている刺客の死体に気付く。そして彼女の目にも胡散臭く見えた男性に対して剣を抜いた。

 

「まさかこいつが姉様と冥琳を!?」

「あっれぇ、何でかな!?」

 

普通は彼が雪蓮たちを助けたと見えてくれるのではないかと思う道士であった。

 

「やっぱお主は胡散臭い男と見えるようじゃな」

「おかしいですね。僕ってばそんなにうさんくさいはずは無いと思うんですけど…もしかしてネタにされてる?」

 

ネタにされてるかどうかは分からない。

 

「ちょっと蓮華ったら落ち着いて。どう見ても彼が私たちを助けてくれたって見えるでしょ。冷静な蓮華らしくないわよー」

 

普段ならば間違えるはずが無いが今の彼女は冷静ではなかった。魏が攻めて来たという情報と大切な姉が襲われたという情報で頭の中が少し混乱したのである。

 

「ちょっと不覚を取っちゃってねー。ちゃんと護衛をつけておけって、今更ながら母様の言葉が身に染みるわ」

「蓮華様。実は…」

 

冥琳は今まで起きた事を説明する。

 

「くっ、いったいどこの手の者ですか」

 

残念ながらそれは分からない。最初の刺客5人は全員仕留め、追加で現れた刺客たちは自害した。

 

「しょうがないでしょ。一度、ついちゃった火はなかなか消せないのよねー。ま、心配無用よ。傷は大して深くないわ。この通り腕も動かせるし」

 

腕をぐるんと動かそうとした時に激痛が走った。

 

「いったぁ!?」

「姉様、無理はおやめください」

「いたたた…」

「おとなしくしてろ雪蓮」

「はーい」

 

戦闘中は我慢できたが今は激痛が走る。

 

「それで…蓮華、急ぎの報せって何かしら。曹操でも攻めて来たの?」

「え、あ…まさにそうです」

「だと思ったわ。予想よりも早かったわね」

「ついに来たか…こんな時に」

 

いざ、魏との戦を始めようとした矢先に謎の刺客から強襲。そして雪蓮の負傷。

これでは幸先は悪いと言っているような物だ。

 

「戦況はどうなっているの?」

「はっ。敵は陸路で揚州へ侵入。進路の砦を悉く落としながら建業に迫りつつあります」

「そう…梨晏と粋怜に州境を固めさせるつもりだったけど。後手に回ってしまったわね」

「はい…」

 

蓮華は返事をしてからもう一度、刺客の死体に目を向けた。

何かを考える様に顎へ指を添えて数秒で気付いた。何度も記憶中で確認し、間違い出ない事を確信する。

 

「どうしたの?」

「姉様。私はこの者に見覚えがございます」

「え、本当?」

「許貢の家臣です。間違いありません」

「許貢の…」

 

許貢とは炎蓮が戦死した時に呉を裏切り独立した豪族だ。

 

「奴は姉様に攻められ、敗れた後は曹操の下へと走ったはずです」

「まさか」

 

刺客を放った犯人に対して冥琳は目を見開く。

 

「汚し、曹操。呉を攻めると同時に卑怯にも刺客を放って姉様の命を狙おうなどと!!」

「んー…そうかしら?」

 

タイミング的には蓮華の予想が的を射ている。しかし雪蓮としては曹操がこのような事をするのかと納得がいっていない顔であった。

 

「僕らはこの後どうするんです?」

「このままついて行く」

 

管輅と道士はこのまま呉へと直行。

 




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新も未定です。


781~782
原作とだいたい同じ流れです。

炎蓮への墓参りに関しては立香も居なく、一刀は蜀ルートなので
雪蓮と共にいるのは冥琳となります。

炎蓮の墓参り。
実際のところ彼女は生きてますので…もしもこの場に立香が居たら凄く気まずいでしょうね。
本来だったらシリアスなシーンなのに…生存してる人の墓参りとは。
雪蓮が炎蓮が生存していると知らないので仕方ないのですが。


783
最初の流れは原作とほぼ同じですが後半からオリジナルです。
雪蓮たちを助けに入ったのが謎の道士と管輅。

オリジナル設定ですが管輅も戦えます。
月琴の衝撃波とか出します。道士は普通に強いです。

道士にたいする雪蓮と冥琳の感想「うさんくさい」
もうネタですね。
こっから2人が呉と関わっていきます。


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