Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
妖精騎士杯…ブリトマートが良いキャラでした。
バーバンシーもカルデアでエンジョイしてるのも分かりましたね。
あとは幕間が来てほしいです…!!(願望)


此方の物語ではタイトルにあるように黒幕退治です。
やっと道士が活躍しますよー!!
スムーズにスマートに戦います。では、本編をどうぞ!!


魏と呉の戦-黒幕退治-

800

 

 

魏の本陣にて異変が起きた。許貢が妖魔と変化し、大暴れしているのだ。

曹操にとって今回の戦は天下分け目の戦ではない。好敵手と認めた孫策(雪蓮)とは満足に戦えず、部下の勝手な判断で望まぬ暗殺が起きた。

魏軍も満足に動けず、戦えない。軍の中では不和が起き、裏切り者が出る。これは曹操の望んだ戦ではなくなっていた。涼州の馬騰との戦いの結末よりも酷い状況であった。

 

(こんな戦…私は望んでいない。こんな戦を誰が望んだの)

 

「魏も呉も死ねぇえええええい!!」

 

首無し巨人の許貢は腕や脚を振るうだけで敵を叩き潰す。今や魏の本陣は大混乱で攻めて来た呉軍も大混乱だ。

 

「曹操ぉお!!」

「華琳様をお守りしろーーー!!」

 

敵は曹操たちだ。そして呉の将兵たちも殺す。魏と呉の兵士たちが群がるが意味は無し。

この場にいる全員は許貢にとって邪魔でしかない相手だ。

 

「許貢。よくも雪蓮様を!!」

 

雪蓮を襲った黒幕。そして知らされた事実。それらが混ざり込んで祭は怒りに満ちて矢を放った。

「そんな棒切れが私に効くか!!」

怒りを込めた矢であるが効きはしない。今の彼はどんな相手だろうが膂力で全員を捻り潰せると確信していた。

 

「この私が魏と呉の歴史を終わらせてやる!!」

「孫呉の歴史は終わらぬ!!」

「華琳様の命を容易く奪えると思うな!!」

 

祭と夏侯淵が同時に矢を放つが暴力的な膂力で弾く。巨人であり、強靭な膂力の前では矢の一本二本如きでは痛くもかゆくもない。

時間を掛けては被害は大きくなるばかりだ。夏侯淵は曹操を早く安全な場所へと避難させたい。祭は許貢をさっさと討ち倒して王朗を追いかけねばならない。

曹操を守らなくてはいけない。雪蓮と蓮華を守らなくてはいけない。魏と呉の将たちは焦りが滲み出る。

 

「粋怜、ここは儂に任せてお主だけでも本陣に戻れ!!」

「ええ。ここは頼むわよ祭!!」

 

孫呉の主柱とも言える雪蓮と蓮華を守りに行くために粋怜は何とか隙を見て離脱。

武器を強く握りながら全速力で駆け抜けていく。心情は焦りが滲み出ており、信じたくないが雪蓮が毒で死ぬという情報が脳を支配する。

 

(そんなはずない…雪蓮様が毒で死ぬなんて)

 

認めたくないとブンブンと頭を振るうが不安がどんどん大きくなる。早く雪蓮と蓮華の元へに戻りたいという気持ちを無理やり脚に力を入れていた。

 

「雪蓮様と蓮華様を頼むぞ粋怜」

 

祭は粋怜が離脱するのを確認すると再度、矢を許貢を向けて放つ。

 

「呉は後回しだ。どうせ孫策は死んでいる。まずは曹操、貴様からだ!!」

 

恨みつらみを拳に込める。

己を評価せず、まるで駒のようにしか思わない暗君を叩き潰せると思うと口元が歪む。許貢は曹操に狙いを定めて拳を振るった。

 

「死ねぇえええい!!」

「華琳様ーーー!?」

 

暴力的な拳が曹操へと迫る。

 

「あ、すいません。ちょっと割り込みますね」

 

振るわれた拳に横から衝撃が走り、狙いが大きく逸れた。

 

「な、なにぃ!?」

 

今度は脚に衝撃が走り、体勢を崩した許貢は尻もちをズシンとついてしまった。

 

「危機一髪でしたね」

「あ、貴方は?」

 

曹操の前に現れたのは中華服姿でスラリと姿勢の良い糸目イケメンであった。

 

「僕はただの道士です」

 

さも当然だと言わんばかりの自己紹介であった。

助けてくれたのだから敵ではないかもしれないが警戒解かず、すぐさま守るように郭嘉と荀彧が曹操の前に出てくる。

 

「敵じゃないですよ?」

「道士殿か!?」

 

別の方向から声が聞こえてきたかと思えば呉の将兵たち。

道士も手をフリフリと振っているので彼もまた知り合いだと分かる。敵ではないが呉の関係者ではないかと考え込む。

 

「僕は呉の関係者じゃないですよ」

「心読んだ!?」

「読んでもません。そんな顔してましたよ?」

 

警戒ゼロは流石に無理だとは理解している。彼の仕事は尻もちついた許貢の討伐である。

 

「道士殿。何故ここに?」

「あ、黄蓋殿ちょっとぶりです。実は管輅殿が再度占ったら魏の本陣と呉の本陣に良くない結果出ましてね。もしかしたら…って思ったらコレですよ」

 

チラっと許貢を見る。プルプルと震えながら顔というか胴体を赤くしていた。

 

(どうやらとっても怒ってますね。これで標的を僕にしてくれると助かります)

 

許貢の狙いはこの場の両軍の壊滅及び曹操を殺す事。その本来の目的から外すために道士は横やりを入れた。

 

「呉の本陣にも…」

「そっちには管輅殿が向かってます。彼女も結構お強いですので大丈夫ですよ」

 

祭と親しげというわけではないが普通に会話をしている。本当に呉のお抱えの道士ではないかと思ってしまう曹操であるが「違います」とまた言われる。

 

「先ほど管輅と名前が聞こえたけど…」

「僕は呉の関係者ではなく、管輅殿の連れです。呉と知り合いなのはちょっとした縁ですよ」

 

ちょっとした縁とは雪蓮たちを刺客から助けたというものだ。

 

「刺客から助けた…」

「はい。必要無かったかもしれませんが見かけてしまっては無視する事はできませんでしたから」

「…感謝するわ」

「貴女にお礼を言われるような事はしてませんよ?」

「いいえ、感謝させてほしいわ」

 

己の知らない所で部下が勝手に動き、求めていない事をしていた。彼女が言っていたように国事に関わる事だ。

彼女は雪蓮を暗殺する事を望んでいなかった。

 

「きっさまあああああああ!!」

 

怒声を叫びながら許貢は立ち上がる。

 

(うん。あの姿からして彼に埋め込まれたのはあの巨人ですね…これまた凄いのを)

「よくも私に恥をかかせたなああああ!!」

 

怒りで身体中を真っ赤に染めていた。

 

「道士殿ここに来たのはいいが何とか出来るのか?」

 

祭は道士がここに来た理由を聞く。

大暴れしていた許貢を不意打ちとはいえ、転ばせたのだ。矢も槍も効かないのに相手を転ばせた彼を見てどうにかできるかもしれないと希望が見えたのだ。

 

「ええ、倒せます」

 

さも当然だと言わんばかりの返事であった。

彼は妖魔退治のプロであり、獣退治ならばもっとプロだ。その事を知らない祭たち。

 

「堂々と言うものだな」

「えっと貴女は…」

「夏侯淵だ」

 

道士はちょうど魏と呉の間にいる。両者からの警戒・怒り・困惑が当てられる。

 

「夏侯淵…」

「黄蓋殿。貴殿の怒りは最もだ。しかし今はそれどころではないだろう」

 

本当ならば今すぐにでも夏侯淵を討ち殺し、曹操の首を斬りたいが今は許貢をどうにかせねばらない。

今回の本当の黒幕である許貢は絶対に殺したいが首無し巨人となり、己の矢が効かない。

 

「貴様らは絶対に許さんぞ」

「……ああ」

 

祭の怒りを肯定する夏侯淵。立場が逆であれば夏侯淵もまた絶対に許さないと言う。

 

「僕としては急いで撤退して欲しいんですけど」

「そのつもりだ。黄蓋よ…この状況でまだ我らと戦うか?」

 

答えは分かり切っている。

この状況で曹操の首を刎ねる事はできない。そもそも呉の本陣にいる雪蓮と蓮華がとても心配なのだ。

 

「貴様らはいずれ儂が必ず討つ」

「曹孟徳様を討ち取らせる事は私がさせん」

 

異変が起きてもはや魏と呉の戦は終わりだ。2人はすぐさま撤退するように動きだす。

 

「道士殿。何か我らに出来る事はないか?」

 

夏侯淵としては絶対に曹操を守り、撤退せねばならない。彼が首無し巨人となった許貢をどうにか出来るらしいが確実性を高めたい為に手を貸す事を決めた。

 

「僕1人で十分ですよ?」

「そ、そうか」

 

物凄い自信であった。

 

「おい、道士殿。儂に何かさせろ。雪蓮様の暗殺実行犯である許貢に何もせずに撤退は出来ん」

 

本当に犯人である許貢。怒り具合は曹操よりも上だ。

首無し巨人となったが妖魔だが何もせずにはいられない祭。何が何でも一矢報いたいのだ。

 

「僕としては両者ともに出来るだけ安全に撤退してほしいんですけど」

「奴を前に何もせんのは我慢できん!!」

 

彼女の気持ちは分からなくはない。大切な人の仇が目の前に居れば我慢なんかできない。

よく「復讐はよくない。考え直せ」や「貴方が犯罪者になるだけ。犯人と同じだ」と言うがそれは現代の価値観。

過去の時代において現代の価値観は意味は無し。人を殺すのに躊躇いが無い時代では復讐は最優先だ。

 

「…では目を狙ってください。確実に倒せる術があります。奴の目を狙って動きを封じてください。貴女の腕であれば容易でしょう」

「任せろ」

「もう片目は私が請け負う」

「要らぬぞ夏侯淵」

「私と分け合った方が早い」

 

舌打ちをする。祭にとって敵であるが夏侯淵の矢の腕は認めているのだ。

 

「頼みますお二人とも」

「殺してやるぞおおおおお!!」

 

突撃してくる許貢。もはや怒りで道士しか見えていない。

実際には祭と夏侯淵も見えているが敵として見ていない。突然現れた道士に不意打ちを喰らったが所詮は不意打ち。

暴力的な膂力で薙ぎ払えばどんな相手であれ肉塊である。

 

「許貢。貴様は絶対に許さんぞ!!」

「許貢…貴様はしてはならない事をした」

 

祭と夏侯淵の矢が同時に放たれ、許貢の目に突き刺さる。

 

「め、目がああああああああ!?」

「こんなもので儂の怒りは収まらんがな。おい道士殿ここからどうするのじゃ」

「動きを止めてくれたので助かりました。もう決着です」

 

道士は手に持っていた杖だか鞭を落とした。

 

「なにをして…」

 

ポチャンっと地面に落ちた。まるで河の中に落ちたように見えたのだ。

 

「「え?」」

 

2人とも不思議な光景に目をパチクリさせた。

 

「八十四符印、全基起動。天よ開け」

 

更に次の光景で口をあんぐりと開けてしまう。なぜなら天から大きな杖だか鞭が許貢の真上から落ちてきたのだから。

虫をプチっと簡単に潰すように許貢は何も言えずに退治された。

 

「終了です」

「お、お主は何者じゃ?」

「僕はただの道士ですよ」

 

 

801

 

 

呉の本陣にて。

 

「ふむ…梨晏はどうした。まだ戻ってこないのか?」

「は、はい」

 

姉の容体を心配して走らせたのだが中々戻らない。とても気になり、不安が大きくなる。

何かあったのではないかと頭を巡る。しかし今は戦いの中であり、呉が押している状況だ。

姉の容体は気になるが優先は魏との戦に勝利する事だ。でなければ安心して姉の前に顔を出せない。

蓮華は指揮者として責任を果たさねばならない。

 

「機は逃せん。よし、我らも押し出すぞ。穏、お前が太史慈隊の指揮を執れ」

「はい」

 

戻らない梨晏の代わりに穏に命じる。今の呉は魏に勝てるとそう確信している。

今の呉軍は魏軍よりも士気が高く勝利への流れも掴んでいるのだから。

 

「よし。このまま魏の本陣に我らも進軍するぞ!!」

「進軍する必要は無い」

 

空から声が響いてきた。その声に全員が空を見上げる。

 

「だ、誰だ…?」

 

空に浮かんでいるというよりも飛んでいる。背中から翼を羽ばたかせ、猛禽類のような鋭い目をした男であった。

口が嘴になっており、最初は鳥人の類かと思ってしまうのはしょうがない。

 

「誰だ!!」

「我が名は王朗」

「王朗だと?」

 

情報によれば今回の戦で魏の一番槍を務めていた隊の者だ。

彼の姿を見て異常だと判断。普通は翼を生やして飛ぶ事は人間出来ない。すぐに黄祖や反董卓連合、八傑衆での妖魔関連だと理解できてしまった。

 

「まさか于吉の」

「否。我は神の先兵だ」

「神だと…わけの分らん事を」

 

本当に何を言っているのか分からなかった。

穏たちも不審な目で王朗を見ていた。

 

「ふっ…まだ神の下に認められていないから神の先兵を名乗るのは不届きか。しかし貴様の首を取り、手土産として神の下へと私は向かうのだ!!」

 

本当に意味が分からない。会話が出来ているかすら分からなくなってきた。

いきなり空から現れて蓮華の首を取ると言ってきたのだ。分かる事はただ1つで確実に敵だという事だ。

 

「あの人何言ってるのかパオわかんないです」

「安心しろ儂も分からん。分かるのはただの敵という事じゃ。矢を放て!!」

 

呉の兵士たちは弓を構えて矢を放った。

 

「矢なぞ届かぬ」

 

翼を大きく羽ばたかせ、強風を発生させる。強風により矢は呆気なくボトボトと落ちていった。

 

「孫権の首は貰う!!」

 

もう一度翼を大きく羽ばたかせ、強風で呉の本陣へと襲う。妖魔の力とはいえ、羽ばたかせた強風で人間は態勢を崩す。

風の力とは侮れない。風の力にも段階があり、何かに掴まってないと立ってられない状況や歩けなくなるほどや、最悪吹き飛ばされる状況にもなる。

 

「隙ありだ!!」

 

強風によって孫権だけでなく、呉の兵士たちは動けない。一瞬の隙を狙って王朗は剣を孫権に向けて突撃する。

 

「死ね孫権!!」

「蓮華様!?」

「蓮華姉様!?」

 

身代わりになりたくとも態勢を崩されてすぐに蓮華の元に駆けつける事が出来ない。呆気なく終わってしまう事は否定したくなる。

 

「私の妹に手ぇ出してんじゃないわよ!!」

 

蓮華と王朗の間に現れた人影。その正体は雪蓮であった。

 

「姉様!?」

「馬鹿な孫策だと…まだ死んでなかったかこの死にぞこないが!!」

「まだ死んでなかった?」

 

助けに来てくれた雪蓮は肩から血を流していた。おびただしい汗の量に顔色も酷く悪かった。助けてくれてとても嬉しいが、そのような状態で戦わせてはいけないとすぐに分かる。

 

「雪蓮姉様。大丈夫なのですか!?」

 

とても戦わせてはいけない様子の姉に声を掛けるが返事は帰ってこない。彼女は南海覇王を構えたまま王朗を睨んでいた。

 

「雪蓮!!」

「冥琳、梨晏。姉様は大丈夫なの!?」

 

後から冥琳と梨晏が走ってくる。

冥琳は今回の戦は穏に任せていた。梨晏は雪蓮の様子を見に行くように指示した。そんな2人が血相を変えて現れたのだ。

 

「ねえ、姉様はどうしたのよ。どう見ても」

 

危険という言葉が出る前に王朗が答えを口にした。

 

「なぜ死んでいない。なぜ動ける。貴様は毒で蝕まれているはずだ。毒の効力でもう死んでいてもおかしくないはずだ!!」

 

雪蓮が毒で蝕まれている。その言葉は初耳であった。

穏や雷火たちを見ても同じように驚愕していた。彼女たちも何も知らない事がすぐに分かる。

毒の事を知っている様子なのは冥琳と梨晏だけだ。

 

「毒とはどういう事じゃ冥琳!!」

 

雷火がすぐに冥琳に問いかける。

 

「……あの矢傷。使われた矢には毒が塗られておりました」

「何故、解毒せぬ!?」

「既に医者にま診てもらいましたが解毒できるのは華佗だけだと…探してはおりますがもう時間が」

「なっ」

 

言葉に詰まった。冥琳はもう間に合わないと言っているのだ。そして梨晏もつい先ほど知ったので心情はほぼ蓮華や雷火たちと同じだ。なぜ黙っていたのかと問い質したいがもう時間が無いと言われれば言いたい事は言えない。

 

「姉様お退きくださいっ!!」

 

毒で蝕まれている彼女を戦わせるわけにはいかない。そう思って蓮華は叫ぶように雪蓮に声を掛けるがやはり返事は無い。

もう雪蓮はほぼ周囲の声が聞こえていない。彼女がやるべきことは目の前の王朗を倒す事だけに集中しているのだ。己の命は残りわずかと分かっており、残りの命をどう使うかは今この瞬間である。

次の呉の王は蓮華だ。ならば姉である雪蓮の役目は妹の蓮華を守る事だけだ。

 

「この死にぞこないめ。貴様もろとも孫権を貫いてくれよう」

 

剣を突く構えをすると同時に翼を大きく広げる。全力で羽を羽ばたかせ最大風力の強風をぶつけて串刺しにする算段だ。

雪蓮が如何に強くとも毒の蝕みと強風の組み合わせならば動く事はできない。態勢を崩し、隙だらけの相手ほど仕留めやすいものはない。

 

「これで孫呉は終わりだ。魏も今ごろ終わっている。後は蜀を潰せば神の時代が再来する!!」

 

王朗が何だからうんだらと言っているが雪蓮には聞こえていない。彼女が成すべき事は目の前の敵を倒すだけである。

南海覇王を力強く握って同じく突きの構えをする。気を練って身体からゆらりと気が発していた。

 

「突き勝負か。だが死ぬのは貴様だ!!」

 

翼を大きく羽ばたかせて強風を巻き起こそうとした時、月琴の音色が聞こえた。

 

「うぐぉ!?」

 

月琴の音色が聞こえた瞬間に翼が吹き飛んだ。

 

「何がっ!?」

「はあああああああああ!!」

「しまっ!?」

 

相手の隙を無理やり作ろうとしたが逆に己の隙を見せてしまった。

 

「小覇王一閃!!」

 

必殺の突きが王朗を貫いた。

 

「ば、馬鹿な…私はこれから神の下で…」

 

何か言っているが雪蓮には聞こえない。彼女は妹を守るために戦ったのだ。

 

 

802

 

 

雪蓮は次代の呉王を守った。その事を実感したと同時にプツンと何かが切れた。

ガクンと足の感覚は消えて倒れる前に誰かが受け止めてくれたのだ。

 

「雪蓮!!」

 

受け止めてくれたのは冥琳。彼女はそのまま冥琳の腕に抱かれる。

 

「おのれ曹操。おのれ許貢。ぜったいに許さない…追い打ちをかけるのよ!!」

 

蓮華は怒りに満ちている。

 

「蓮華…」

「姉様!!」

「うっ…姉さまぁ」

「シャオ…」

 

気が付けば小蓮や梨晏まで雪蓮の周りに駆けつけていた。

 

「雪蓮…この戦は我々の勝利だぞ。さきほど魏が撤退したと連絡があった」

 

他にも別の報告があったが今はそれどころではない。簡潔に雪蓮が知りたい報告だけをした。

 

「ふふ…そう、良かった。それにしてもみんなに知られちゃったわね」

「雪蓮姉様…」

「ひどいよ…隠してるなんて」

 

なぜ黙っていたのか。もしも本当の事を話していたら何とかなっていたかもしれないのだ。しかしもう遅い。

 

「だって…梨晏やみんなのそんな顔が…見たくなかったんだもの」

 

皆の顔は酷く悲しそうな顔をしていた。そして怒りの顔も。

 

「冥琳っ、ただちに追い打ちの部隊を編制して。いえ、全軍で曹操を追うのよ!!」

「蓮華様、どうか落ち着いてください」

 

呉は魏に勝利した。これ以上、敵を追撃しても意味は無い。

 

「何を言っているのよ。曹操は姉様の仇よ!!」

 

蓮華の怒りは否定できない。

本当は許貢の独断であろうとも彼は魏に所属している。彼女にとって怒りの対象は許貢であり曹操なのだ。

曹操の首を刎ね、魏軍全てを殺しつくしたいと本気で思ってしまった。曹操が何をしたのかと身に刻んでやりたい程に。

 

「冷静になってください蓮華様」

「でも!!」

 

既に呉軍は本陣に戻ろうとしている。詳しい内容はまだ分からないが魏は持ち直して組織的に退却しているそうだ。

深追いは危険と判断でき、戦の常識である。

 

「何でよ冥琳!!」

 

もはや蓮華は冷静でいられない。

 

「自分の愛した…大切な人が死のうとしているのに仇も討たないの!?」

 

その事に「悲しくないのか」、「悔しくないのか」と強く叫ぶ。

 

「冥琳は姉様はこんな目に遭ってもなんとも思わないの!?」

「そんな訳があるか!!」

 

今まで黙っていた冥琳が叫んだ。それこそ蓮華が怒りを消して怯える程に。

その様子を間近で見ていた雪蓮は小さく笑う。心の中で「蓮華が怯えてるわよ冥琳…」と呟いた。

 

「私にとって雪蓮は己の半身も同然。辛いに…悲しいに決まってるでしょう!!」

 

初めて感情を大きく露わにした冥琳を見た。

 

「生きている人間には生きていく責務がございます。我らが感情に流され、その責務を放棄するようでは雪蓮が安心して逝けるとお思いかっ!!」

「冥琳…」

 

彼女の言葉にようやく蓮華は冷静になった。

 

「……これで安心ね。私へと同じで…冥琳は蓮華の事もちゃんと…叱ってくれるから」

「雪蓮…」

「蓮華…頭の熱は冷めた?」

「うっ……く。はい…姉様」

 

目から涙が零れる。

 

「……み、みんな……もっと、そばへ」

「はい!!」

「もっと、近くに…もう、あんまり目が見えてないの。声も聞こえ…なくなってる」

 

蓮華だけでなく小蓮や梨晏も涙を流している。大きく泣き叫びたい気持ちを我慢している。

 

「雪蓮姉さま、シャオはここにいるよ!!」

 

小蓮だけでなく、他の者たちもいる。冥琳や梨晏だって当然いる。

 

「ええ…見えるわ。みんな…の…顔が。でも、もうお別れね…さっきから母様の顔がちらついているわ」

 

雪蓮は走馬灯を見ている。子供時代から今までの思い出が蘇るように頭の中を駆け巡る。

 

「私が勝手に死ぬのよ…母様は情けない娘を叱り飛ばしにきたんだわ…」

 

息をするのもつらくなってくる。冥琳の腕の中で彼女の呼吸が小さくなり、体温も低くなっているのも感じてしまった。

 

「もう無理に喋るな雪蓮」

「……冥琳。刺客の事、何か分かった…?」

「ああ…はっきりとした話ではないのだが、報せでは刺客の件を知った時、曹操は酷く驚いた様子だったそうだ」

「……やっぱりね。曹操はそんな手…使わないもの」

 

元々、予想していた許貢の独断だったのだ。

その情報を持ち帰ったのは粋怜だ。彼女は手で両目を抑えており、涙が止まらない。

間に合わなかった。炎蓮に続き、雪蓮も守れなかった。その不甲斐なさに自分自身に怒りが湧いてくる。

 

「曹操…は、きっと私と正々堂々と戦いたかった…でしょうね…ごほっ」

「姉さま!?」

「っ……まだ、大丈夫…それより蓮華」

「はい…。姉様、私はここに…」

「手を…」

 

弱弱しい声で言いながら彼女は蓮華の手を重ねる。

 

「呉の未来は…貴女に掛かってるわ……蓮華、もっと自信を持って、堂々と…ね」

「はい……っ!!」

「孫呉の力は人……それを、忘れちゃ駄目よ?」

「はい。決して忘れません!!」

 

蓮華の良い返事に満足に小さく笑う。

 

「り、梨晏」

「うん。ここにいるよ」

「ごめんね…結局、あなたとは…決着つかなかった」

「……仕方ないよ。でも、私…これからどんどん強くなるよ。あの世に行ったからって安心して怠けていたらいつか私が行った沖に、コテンパンにされるんだから…」

「ふふ…そうね……」

 

もう何も見えなくなってくる。

 

「シャオ……」

「うん…」

 

小蓮の顔は涙でもうグチャグチャであった。返事するのもやっとだ。

 

「私、ぜんぜん…お姉さんらしいこと……してあげられなかった…ごめんね」

「そんなことない…そんなことないよ。雪蓮姉さま…大好き。シャオ、大好きだったよ!!」

 

姉らしいことを出来なかったと思っていたがどうやら少しは出来ていたようだ。

 

「ふふ………めい…りん?」

「なんだ?」

「蓮華とシャオのこと……お願い…」

「分かっている」

「…もう、素っ気ないわね」

「性分だからな」

 

素っ気なくとも声はとても優しかった。

 

「……他のみんなにも、よろしく。黙って、逝っちゃって…代わりに謝っておいて…」

「承知した………雪蓮」

「なに…?」

「…待っていろ。いつか、私も逝く」

「うん…でもあんまり早く来ちゃ駄目よ。いくら私に会いたいからって……」

 

もう時間が無い。雪蓮は命の炎が燃え尽きるのを確信した。

本当はまだ死にたくなかった。しかしもう望む事すら許されない。

 

(今なら母様の気持ちが分かる…孫呉には強い子たちがいる。だから少なくとも明日の心配はしなくていい…)

 

自分が死んでも孫呉には蓮華がいる。小蓮がいる。冥琳がいる。梨晏たちもいる。

 

「それじゃ…また……いつか、ね………」

 

雪蓮は冥琳の腕の中で静かに目を閉じた。そして誰かの慟哭が呉の本陣に響き渡る。




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新はこのあとすぐ。



800
道士が普通に割り込んできてスムーズに許貢を倒しました。
流石は道士です。超有能道士で軍師で妖怪退治のプロでした。
宝具が強い!!

許貢に埋め込まれていた妖魔ですが『刑天』でした。
読者方には既に分かっていた方がいたかもしれませんね。
中国神話に登場する巨人。実際は凄い存在です。
斧と盾を持ってなかったので実力は下がってます。


801
蓮華を守る為に精神だけで身体を動かし、戦う雪蓮でした。
あれです…精神が肉体を凌駕しているような状態でした。これこそ気合で…と言う奴ですね。
必殺技である「小覇王一閃」で王朗を倒しました。

王朗。
飛燕と神に出会わなければ普通に曹操に仕えてました。
埋め込まれた妖魔は『大風』です。
妖魔であり、災害神だったりします。姿は大きな猛禽だと言われてます。

王朗の隙を作ったのは管輅。
たくさん活躍させるつもりがチラっとでした。しかし彼女が隙を作らなかったら雪蓮は負けてました。


802
雪蓮……
原作でも悲しい結末ですよね。
でもあるルートでは…
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