Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
もうクリスマスですね。世の中が賑わっているはずです。
しかしFGO界ではついに2部7章が更新されます。
ついに来たという感じですね。もうワクワクのドキドキです。


さて、此方の物語は徐々に南蛮編がオリジナル展開に進んでいきます。
一刀たちサイドにまた戻ります。


南蛮大乱戦-これが賊?-

819

 

 

「流石にこの辺りまで来るとだいぶ暖かくなってくるね」

「…だなぁ」

 

蒲公英と焔耶たちが先触れとして出立した後。

北郷一刀たちも十分な準備を整えた兵士たちを率いて蜀の南方に向けて軍を進めていた。

 

「あの2人大丈夫かな」

「大丈夫じゃないかな。桔梗さんと楼杏さんもいるし、今頃きっと仲良くやってるよ……たぶん」

「たぶんかー」

 

蒲公英と焔耶も癖があるのは確かだ。単体であれば普通だが2人をセットにすると何故かぐだぐだになる。

先触れは2人だけでなく電々と雷々、傾。そしてカルデア側からは俵藤太と玄奘三蔵、秦良玉が向かっている。今回はぐだぐだにはならないと思っているがどうなるかは分からない。

 

「朱里よ。今回の件、ここまで兵を動かす事態なのか?」

 

愛紗は今回の件に関して朱里に聞く。既に蜀の将を何人も送り込んでいる。更に現在、追加でも進軍しているほどだ。

過剰な戦力と言ってもよいくらいである。

 

「何とも言えません。ただ、桔梗さんと楼杏さんの要請ですから」

「更に俵さんたちも孔明さんたちを呼ぶくらいだからな」

 

桔梗たちからは応援要請を受けており、その中でカルデア側からも応援要請も受けている。今回の進軍に同行しているのは諸葛孔明に司馬懿(ライネス)、武則天だ。

現在ある程度のまとまった兵力を持って南方に現在向かっているのだ。

 

「あの2人が揃って判断するなら何かあるのか」

「ですから恋さんにも同行をお願いしたわけです」

「ん」

「恋殿さえいれば解決なのです」

 

音々音がえっへんと胸を張る。今回の進軍で蜀側からは恋を含め愛紗と鈴々まで将を組み込んでいる。軍師として朱里と音々音。そこにカルデアから3人。

本当に過剰戦力すぎる。

 

「俵殿が我々を呼ぶ程だから南蛮の方で何かがあるのは間違いないだろうな」

「魔術師である我々2人を呼ぶという事だ。そういう視点で調査して欲しいのかもな」

「妾は暇だから来た」

 

怪異や于吉関連であればカルデアの戦力は必要である。いずれは自分たちだけでも対処しなくてはならないのかもしれないと思う北郷一刀。

 

(それにしても蜀の南か)

 

北郷一刀の知る歴史であれば南蛮もとい南中が定番だ。しかし今までが今までであり、この異世界の南蛮がどうなっているか想像もつかない。

 

「ここより南で敵になりそうな連中の情報とかはないの?」

「はい。成都の昔の記録も確かめてみたのですが…西からはともかく南からの侵攻は十年以上もありませんでした」

 

ここ最近、急に南から侵攻が始まったという事である。何か予兆があったわけでもなかったのだ。

 

「西から来る方が大変だと思うがな。あちらは漢中への道よりも険しい山地だぞ」

「西と南はたぶん別の集団だよ。特に連携を取ってるわけでもないんじゃないかな」

「そうだと思います。桔梗さんも前にそう言ってましたし」

 

今回の敵は南の方。南蛮勢力のみだ。

 

(南蛮か。三国志で考えると孟獲などが挙げられるが…)

(まさにそうなんじゃないかな兄上)

(他には朶思大王や木鹿大王、兀突骨らもいるかもしれんな)

 

史実では存在しないが三国志演義では登場する人物たち。

この外史世界は史実と三国志演義を元にされた世界だ。架空の人物が存在してもおかしくない。

 

(それに孟獲相手なら)

 

諸葛孔明はチラっと朱里を見る。

 

(はは~ん。七縦七擒か)

(それが見れるかもな)

 

七縦七擒。

三国志の諸葛孔明が孟獲を捕えては逃がしてやることを7回繰り返した末に孟獲を心服させたというものである。三国志の流れに沿っている世界であるのならば起こる可能性は否定できない。司馬懿(ライネス)も同じく朱里をチラっと見るのであった。

 

「最後の南からの侵攻の時はいくつもの村が滅ぼされたとあったんですが…」

「それなら桔梗たちもそう言うだろう」

「そうなんですよね」

 

南蛮勢力の大規模侵攻の予兆が見えただけなのか、それとも別の事情があるのか。分からないからこそ今の戦力が必要だと判断したのかもしれない。

 

「もっとみんな、仲良くできればいいのにね」

「それが理想だな」

 

頬をぷうと膨らませる桃香に苦笑いをする北郷一刀。

理想は理想。現実に出来なければ夢想にすぎない。だからこそ嫌でも戦わなくてはならないのだ。

そんな考えをしていると可愛らしい声が響いてくる。

 

「にゃーっ!!」

「にゃにゃー!!」

「みんなおどるにょ。もっとおどるにょー!!」

「にゃにゃにゃにゃにゃー!!」

 

可愛い子供たちが元気よく遊んでいた。

 

「あ、なんかきたにゃ。おーい!!」

「おーい。おーい!!」

 

更には北郷一刀たちに手を振ってきてくれる。やけに薄着であるが、この付近はだいぶ暖かいのでそんなものかと勝手に解釈。

 

「なんだか楽しそうだね。おーい、おーい!!」

 

桃香も同じように手を振って返す。すると向こうの集団も全力で両手を振り返してくれた。

その様子をじーっと見る恋。何か気になっている様子だ。

 

「恋どうかしたか?」

「……?」

 

恋は北郷一刀たちに何か言いたそうにちょっと見た後、ぷいっとそっぽを向いてしまった。

 

「恋殿に変な目を向けるなですよ」

「向けてないからな」

 

音々音にジロリと見られるのであった。

 

「なんだか既視感がある気がするよ兄上」

「奇遇だな。私もだ」

「ね、猫っぽいのう…」

 

カルデアのジャガーを思い出す3人。

 

「…わたしたちも他国のみんなも、ああやって平和に暮らせればいいだけなのにね」

「だよなあ」

 

誰とでも仲良くなれる。子供の時はすぐに誰とでも仲良くなって遊んでいたが大人になるにつれて友達を作るのは下手になるものだ。

 

(子供の時ってどうやって初対面の人と仲良くなってたっけな……それにしても恋はまたあの子たちを見てる?)

 

問題があるならば恋でも何か進言するはずだ。何も言わないという事はそこまで大事ではないのかもしれない。

 

「さ、楼杏殿たちのいる陣地まで後もう少しです。頑張りましょう」

 

まだ手を振ってくれている一団に改めて手を振り返しながら南への行軍は続いていく。

 

「もういいかにゃ?」

「いいとおもうにょ」

 

北郷一刀たちの姿が見えなくなるまで手を振っていた子供たちは手を降ろす。

 

「めがみさまに報告にゃ」

「ぐんしさまにょ」

「お馬さんにょー」

 

 

820

 

 

北郷一刀たちは蜀の南方方面である南中(南蛮)に進軍し、ようやく楼杏たちと合流を果たす。合流した楼杏は何処か戸惑った様子出迎えてくれた。

 

「桃香さま。こんなところまで呼んでごめんなさい」

「こちらこそ遅くなってすみません。それで…状況は?」

「正直、何とも言えなくて」

 

何とも微妙そうな顔をする楼杏。

 

「どういう事ですか。まさか被害がいっぱい出てるんじゃ」

「いえ、そこまでではないの。もちろん各地の家畜や倉庫が被害に遭っているのだけれど…」

 

被害は遭っているがそこまで大きくはないとの事。しかしそれでも楼杏の顔は微妙そうというかなんて報告したものかという雰囲気だ。

 

「邪悪なんてもんじゃないよ。タチが悪いったらありゃあしない!!」

「随分嫌っているな、蒲公英」

 

何故か相当に怒っている蒲公英。焔耶とケンカしている時よりも怒っているように見えた。

 

「今日だって、たんぽぽたちが仕掛けてもすばしっこくて逃げ回るし」

「そうだな。ただの追いかけっこだったな」

 

俵藤太は軽く笑いながら頷いた。

 

「凶暴ってわけではなくて?」

「ええ。人の被害も今のところ出ていないわ」

「…それ、野犬とか猿の被害じゃないの?」

 

この時代はそういった野生動物による被害も少なくない。狼はもちろん、酷い時には血の味を覚えた虎や熊も出るのだ。

 

「いいえ、もう南部全体に広がっていると思うわ」

「むう、だとするとやはり賊か」

「以前この辺りを襲った南蛮の手口とだいぶ違いますね」

 

朱里は過去の情報を照らし合わせて今回と同じかどうか調べていたが全く子となっているのだ。

過去の敵とは別の敵というのは分かったが、今回の敵は如何せんよく分からない。

 

「うむ。これ以上、連中をつけあがらせるわけにはいかんのでな。応援を頼んだわけだ」

(つけあがらせるのはマズイとか…賊の対処法にしては随分甘い考えのような。猿とかカラス相手じゃないんだから)

 

敵が侵攻しているのに何処か危機感が無いのが不思議である。

 

「具体的にはどういう連中なの。みんなは見た事があるんでしょ?」

「それが兵を率いて向かうとすぐに逃げてしまって…」

「見たことはあるが。可愛いと言う連中の言葉も否定出来んな」

「「「かわいい?」」」

「それに、追い散らすのはかわいそうと言う人もいて…」

「「「かわいそう?」」」

 

何故か今回の敵の全体像が全く見えなくなってくる。可愛いいけど追い払うのは可哀そうとか本当に野生動物か何かではないかと思ってしまう。

 

「でもでも、ものすごく困ってるって言ってる人もいたよー」

「たんぽぽは追い払っても追い払っても出てくるって聞いた。実際そうだしね」

「がんこなカビの話?」

「賊なんだよね?」

 

楼杏たちの歯切れの無い報告が何となく分かってきた。彼女たちも今回の敵に対して戸惑っているのだ。

 

「南蛮のよく分からない云々は我々の力が必要なのか?」

 

応援で来た諸葛孔明だが説明を聞いていると本当に応援が必要だったか疑問に覚える。聞いていてぐだぐだを感じてしまい帰りたいと思ったのだ。

 

「ここからは拙者が話そう」

 

ヒョイと俵藤太が手を上げる。

 

「実は南蛮の者たちとは別に変な兵士に襲われてな」

 

森で南蛮の者たちを探している時に生気の無い目をした兵士に襲われたのだ。見た目は完全に人間であるが捕縛しようと倒すと泥になったのである。

謎の兵士については村人の証言もあった。最初はただの村人の勘違いかと思っていたが実際に俵藤太たちが襲われたとあれば信じるしかない。

 

「変な兵士の特徴として額に変な印はあったわ」

「電々もそれ見た見た」

 

見た目は人間だが倒すと泥になる。これを聞いて諸葛孔明たちが呼ばれた理由に納得。

 

「泥人形を人間に模すというのは魔術的に考えるとゴーレムのようなものか」

「そんな感じじゃなかったけどなあ」

 

実際に戦った玄奘三蔵の観点から本当に人間のようだったのだ。桔梗と蒲公英たちも同じ意見である。

 

「人間と泥か」

「もしかして南蛮の件と泥人間は別件かもね」

 

南蛮では2つの問題が起きているのかもしれない。

 

「南蛮の方は我々で対処しますので謎の兵士については孔明さんたちで調査をしてもらいたいのよ」

「そう言う事であれば」

「なら早速現場を見てもらおうか」

 

倒した泥人間の残骸はそのままに放置している。現場調査という事で俵藤太は諸葛孔明を案内しようとした時、誰かが駆けてくる音が響いてきた。

 

「あ、焔耶なのだ」

 

鈴々が駆けてくる者の名を口にした。

 

「楼杏…と、桃香さまも!!」

 

桃香の顔を見た事で笑顔になる焔耶。

 

「焔耶ちゃん。どうかしたの?」

「また、例の賊が現れたと報告がありまして…今、雷々に指揮を任せて秦良玉と傾が向かってます」

「雷々に指揮を任せて大丈夫なのか。焔耶が行った方がよくない?」

「本来ならそうなのだが…ワタシが行くと連中は逃げてしまってな」

(ああ…焔耶は分かりやすいレベルで殺気むき出しなぁ。てか、相手ってやっぱり野生動物じゃないのか?)

 

もう南蛮の者たちは本当に動物ではないかと思ってしまう。

 

「だよね。焔耶じゃすぐ逃げちゃうよね」

「なめられているお前よりマシだろ蒲公英」

「焔耶。それはわしも含むと考えて良いのか?」

「え、いや、それは…」

 

ちょっとした発言で冷や汗タラリ。尤も桔梗も冗談で言っただけである。

 

「それで賊は何処ですか?」

「ああ、この近所の村に…」

 

南蛮の者たちの侵攻範囲は既に広い。至るところで現れているのだ。

 

「なら現状を見てもらった方が早いわね。桃香さま。何人かと一緒に来てもらえるかしら。桃香さまと一刀さん…後はなるべく殺気を押さえるのが上手な子がいいわね」

 

桃香たちは被害に遭ってる村へ。諸葛孔明たちは俵藤太に案内されて泥人間の残骸のある場所へ向かう。

 

 

821

 

 

ある村にて。

桃香たちは焔耶の情報を元に駆けつけ、雷々たちと合流する。

 

「雷々ちゃん。賊は?」

「あ、桃香さま。こっちこっち」

 

手招きをする雷々。彼女の傍には秦良玉と傾も控えていた。

 

「あれ…賊は?」

 

キョロキョロと見渡すが賊らしい賊は見当たらず。

 

「賊はあれですね」

「あれが賊とかふざけてるのか。あんなのただのガキだろう」

 

苦笑いの秦良玉と仕事をサボりたい傾。

彼女たちの気持ちもその賊を見てしまえば理解できてしまう。

 

「にゃーにゃーにゃー。そのおいしいものを、よこすにゃー!!」

「こっちにもにょー!!」

「むにゃむにゃ」

 

可愛い子供たちが村人をタカっていた。

 

「……ええっとこれは」

 

桃香たちが楼杏に案内されてやってきた村の中心部は阿鼻叫喚の地獄というわけでなく、何とも微妙な状況だ。

 

「あいつらが今回の賊なのだけれど…」

「は、はわわ…」

 

端から見ると小さいのは大人に向かって何かをおねだりしているようにしか見えなかった。

 

「…かわいい」

 

ポツリと愛紗が呟く。

 

「愛紗、何か言った?」

「い、いえ。別に何も…」

 

本当は可愛いと聞こえていた。確かに可愛いというのは認める。

 

「ふや…また猫っぽいのが」

「あはは…カルデアのジャガーならぬ南蛮のジャガーですかね」

 

武則天と秦良玉はカルデアのジャガーを思い出す。

 

「おまえら、どこちゅーにゃ」

「がんとばしてるじゃないにょ!!」

「ないにょ」

「ど、どこ中!?」

 

何故か修学旅行で他校の中学生のメンチの切り合いを思い浮かべてしまった。

 

「どこの厨房か聞いているのではないでしょうか」

「そうなの?」

 

中学でなく厨房。

何処の厨房か分かればたかるにしても味の違いが分かるという事かもしれない。

 

「ねえ…ご主人様。あれって進軍してる時に見た子たちじゃないかな」

「だよなぁ。なんか普通に手を振り返したけど」

 

実はあの時に見た時も村を襲撃している最中だったかもしれない。あれだけ堂々とやられていたら気付かないものだ。

本当に襲撃していたかどうか怪しいものだが。

 

「待てよ。まさか恋はあれが賊だって気付いていた?」

「……変な感じ、した」

「流石は恋というか。気付かなかった俺たちが迂闊だったのか…」

「流石は恋殿なのです!!」

 

恋自身も殺気を感じているわけではなさそうで謎の賊たちに敵意があるわけでもなさそうだ。

 

「ちょっとご主人様も桃香さまもなに和んでるの。早くやっつけようよ」

「ああ…うん、そうだね。みんな困ってるもんね」

 

可愛くて倒すのは可哀そうと言う者の気持ちはわからなくはない。しかし被害に遭って困っている人がいるのも事実。

可愛さ余って憎さ百倍とも言うべきか、被害に遭った村人はたまったものではないのだ。

 

「当たり前だよ。可愛いからって何しても許されるわけじゃないんだよ」

「焔耶の前で言っちゃ駄目だぞソレ」

 

似たような事を焔耶に言っている蒲公英。もしも言ったら睨まれる事まちがいなし。もしくは口論が始まる。

 

「たんぽぽも可愛いけど別に悪いことしてないもん」

 

残念ながら第三者目線で見れば悪い事してる部類に入る。

 

「桃香さま。その…乱暴するのもなんですし、ここは焔耶が言っていたように殺気の1つでも叩きつけて追い払えば良いでしょうか?」

「ううん。その前にまずあの子たちのお話を聞いて…」

「そうだな。連中の目的が分かれば…」

 

桃香たちが妙に戦い辛い相手にはどうするか話すよそに恋はひょこひょこと小さな賊の所へ歩いていく。

 

「……えい」

「ふぎゃ!?」

「にゃ…にゃ!?」

 

いきなりの一撃に戸惑った声をあげる賊たちに恋はもう一度ゲンコツを振り上げた。

 

「……えい」

「ふにゃー!?」

「な、何なににゃこいつ!?」

「……邪魔」

 

恋は逃げようとした賊の尻尾を掴むとそのままグルグルと振り回して投げ飛ばした。

 

「ふにゃあああああああ!?」

「流石は恋なのだ」

「恋殿は手際が良いですからな」

 

鈴々は賞賛し、音々音はウンウンと自分のように頷いた。

 

「恋の奴は敵には容赦ないからな。可愛いとか関係無い」

「兵士として武将として間違った事はしてませんね」

「部下に1人はそういう奴は欲しかったが如何せん恋は扱いは簡単そうに見えて難しかったからな」

 

傾は大将軍時代を思い出す。自分の地位を盤石にするために人材は集めていた。無論、恋も手に入れようとしていたが上手く引き込めなかったのだ。

 

「れ、恋。何をやっているのだ!!」

「やっつけるって……恋、変なことした?」

「いやまあ、確かに退治しようと言ったんだけど…ええーっと」

 

確かにこの程度の相手ならば恋は殺気を出さずとも難なく仕留められる。

ビジュアル的な云云かんぬんと考えてしまう北郷一刀だが気にしてはいけないのかと悩んでしまう。

 

「お、おぼえてろにゃー!!」

「ふにゃあああ」

 

ポテポテと逃げていく可愛い賊たちであった。

 

「……勝った」

「すごーい、さすが恋さん!!」

「あれ、どうやったのー?」

「別に普通」

 

確かに普通に賊を退治した感覚であるのだ。賊を倒すのに年齢や姿、性別は関係無い。

 

「あれ、大丈夫なのかなぁ」

「……だめだった?」

「いや、問題はない。問題は無いんだが……ご主人様」

「俺に聞かないでくれ…」

 

恋は間違った事はしていない。しかし見た目的な問題というか傍から見てどうなんだろうと思ってしまって判断が鈍る。

 

「でも向こうの話も聞ける場面だったのに」

「あいつら、話が通じるような相手じゃないよ桃香さま。たんぽぽも桔梗さんたちも色々聞こうとしたけど全然ダメだったもん」

 

何もいきなり賊退治を決行したわけではない。対話が出来るのであれば対話しようとしたが南蛮の者たちは対話をしようとしなかったのだ。

 

「お館。連中…泣きながら逃げていったけど誰がやったんだ?」

「ああ。恋がちょっとな」

 

コクリと頷く恋を見て「なるほど…さすが恋だな」と納得する。

 

「本当は向こうの事情も聞いてみたかったんだけど」

「お言葉ですが桃香さま。あいつらは人の話が通じるような連中ではありません。ワタシたちも何度も試みてみましたが…」

「焔耶ちゃんも蒲公英ちゃんと同じ事を言う」

 

プクリと頬を膨らませる。

 

「なっ…こ、こればかりは仕方ありません。あの連中のおかげで南部の民は大変迷惑しているわけですし」

「でも焔耶、いつも逃げられてばっかりだったのよね。話すところまですらいけてないよね」

「お前はどっちの味方なんだ」

「ともあれ、何処かに落とし所があるといいんだけどな」

「追い払うしかないと言っているだろう」

 

焔耶と蒲公英も可愛い賊相手によっぽど酷い目にあったのかもしれない。

共通の敵がいるのに何で仲良く出来ないかは置いておく。

 

「いずれにしても次はちゃんと策を考えましょう。あの捨て台詞からすると次は大物が来そうですし」

「大物って…」

「連中の首魁ではないでしょうか」

「首魁って…どういう人なんだろう」

 

南蛮のボスというとイメージで筋肉の塊みたいなバカでかいのを想像してしまう。もしくは裏を突いて頭の良いキャラかもしれない。

 

「奴らの首魁…だとすると、やはりもっと可愛い…」

 

愛紗の顔がほころんでいる。部下のイメージからやはり可愛い首魁をイメージしてしまう。

 

「愛紗?」

「ごほっ、げふん。なんでもありません」

 

何だか可愛いと思ってしまう北郷一刀であった。

 

「全部、倒す」

「倒しちゃダメ」

「えー。別にいいじゃん」

 

なんて話をしている時だった。

 

「うにゃあああああああああああああああああああ!!」

 

村の外から聞こえたのは獣の遠吠えのような甲高い声というか咆哮だった。

 

「え」

「まさかもう来たの!?」

 

南蛮の首魁は想像通りの人物であった。愛紗の。

 

 

822

 

 

南蛮の森にて。

 

「にゃーにゃーにゃー」

「報告にゃー」

「めがみ様ぁー。軍師様ぁー。お馬さぁーん」

 

可愛い南蛮の部族たちがある人物たちの元に報告に向かう。

 

「おや、偵察から戻りましたか」

「軍師様。ほうこくにょ」

「はい。何でしょう?」

 

ニコリと笑顔で報告を聞く軍師。

 

「しょくの人間が来たにゃ」

「軍師さまの言うとおりだったにゃ」

「にゃー」

 

軍師は予想として蜀の人間がそろそろ南蛮地域に到着すると南蛮の者たちに伝えていた。実際に偵察として放っていた南蛮の者たちは蜀の人間たちを確認したからこそ軍師に報告しに来たのだ。

 

「いくさにゃー」

「戦いにょ」

「頑張る」

 

蜀と南蛮が戦が始まるのは予想していた。何故ならば軍師は三国志の歴史を知っているからだ。

 

(この世界が三国志の史実や演義を混ぜたような世界は大体分かりました。そしてマスターがいる事も…)

「軍師さまー。さっそく戦かにょ?」

「そうですね。準備を始めてください」

「わかったにゃー」

「「「にゃー」」」

 

バタバタと南蛮の者たちは戦の準備を始めていく。

 

「せっかくですしこの世界の武将たちと戦うのも一興ですね」

「ヒヒン…戦馬鹿」

「馬に言われたくありません」

 

カポカポと馬が歩いてくる。

 

「あの姉妹は?」

「まだ謎の泥人間と戦いながら調査してます。私も倒してきました。これがその残骸です」

 

馬から手渡されたのはただの泥であった。

 

「ただの泥ですね」

「はい。ただの泥でした」

 

泥を弄るも何も起きない。

 

「孟獲殿との誤解を解こうかと動いていましたがまさか向こうから攻めてくるとは思いませんでしたよ。謎の力を使ってまで」

「ヒヒン。更に蜀にまで侵攻してますしね」

「アレを侵攻と言っていいかどうか微妙ですがね」

 

近隣の村から食料をタカってるだけだ。

 

「彼女たちにはそのまま泥人間の相手をしてもらいましょう。我々は蜀の相手でもしましょうかね」

「承知。ヒヒン!!」

 

 

823

 

 

ボーイッシュな外見と原始的な狩猟民族の服装が特徴の女の子が南蛮の森を身軽に跳び跳ねて移動する。

彼女はある人物の元に到着すると跪く。その姿勢はもはや尊敬よりも崇拝に近い。

 

「影姫様。兀突骨、いま戻りました」

「おかえりさない兀突骨」

「うう…」

「どうしました?」

「いえ、ちゃんと名前を間違えずに呼んでくれたので」

「…………」

 

名前を間違えるのは失礼にあたる。部下や仲間の名前を間違える方が難しいと思う影姫。

 

「それで、どうしました?」

「蜀の連中がどうやら援軍を連れてきたようです」

「そうですか。では蜀もそろそろ本気で戦いに来たという事でしょう」

 

影姫は献上された果物を齧る。

 

「蜀の殲滅には是非ともアタイを」

「ふふ…分かってますよ。蜀軍よりも本当は殺したい人物が居たのでしょう?」

「影姫様の前では嘘は吐けないですね」

 

兀突骨には殺したい人物がいる。その人物が蜀の陣営にいたのだ。

蜀の殲滅の一番槍を影姫に願うが実際は私事だ。ただ恨みある者を斬りたいだけである。

 

「大丈夫ですよ。好きになさい…私の与えた力を存分に使いなさい」

「はっ!!」

 

兀突骨の背後には気が付けば多くの兵士が揃っていた。これら全てが影姫が生み出したものである。

 

「あれ…そういえば美以は?」

「孟獲さんならもう既に蜀に侵攻してますね。まず手始めに近隣の村を潰しているはずです。何処まで侵攻したか全く報告ありませんけど」

 

孟獲は蜀を侵攻し、影姫は謎の2柱の女神と戦っているのだ。

 

「そろそろ孟獲さんには戻ってもらって報告を聞きましょうか」

「ではアタイが連れてきますよ。ミケたちがある村を襲っているはずなので近くにいるかもですね」

 

そう言って兀突骨は素早く木々をバネに跳躍していく。

 

「…本当に孟獲さんは蜀を攻めてるのでしょうか?」

 

恐らく影姫と孟獲のやり方は全く異なっているのは間違いなしである。

 

「まあ、蜀の方はあとでいくらでもどうにでも出来ます。今は謎の女神についてですね………女神はこの大陸に一柱で十分です」

 




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新は…今年中にあと1話更新できたらします。


819~821
原作とほぼ同じ流れです。
しかしどこか違う展開へと流れていきます。
南蛮はいま二つに分断してますので一刀たちが出会うのはどちらかか。


822
謎の女神2柱サイド。
泥人間と孟獲たちと戦ってます。更に蜀もそこに加わります。
 
軍師はせっかくなので異世界の三国志の武将と戦ってみたいという心情です。
馬も。
姉妹は頑張って孟獲と和解しようとしてますけど異変が先に襲い掛かってきました。


823
影姫は謎の女神2柱(姉妹)が気になる様子。
なので蜀の方は孟獲が出向いてます。まあ、侵攻してるはずがただ飯をたかっているとは思ってません。

兀突骨
アニメでのキャラですね。彼女も活躍します。

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