Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
FGOではついに2部7章が開幕しました。
絶賛ナウイ・ミクトランを攻略中です。まさかの展開で目が離せません。
そして大晦日からの正月に何が待っているというのか…ワクワクです。
此方の物語では張勲の病気を治す薬の材料探しです。
色々とオリジナル展開となっております。
では、どうぞ!!
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森の中で藤丸立香は何かを探していた。
「なかなか見つからないな」
彼らは蜀に戻る道中でまさかの再会を果たした。雪蓮的には再会したくはなかったが縁とは不思議なものだ。
予想外な時に予想外な出会いや再会を果たすのものなのである。
「そっち見つかったー?」
「見つからなーい」
「天和も~」
「儂もまだ見つからんのう」
袁術との出会いから色々とあって病で倒れた張勲を助ける約束したのだ。今は薬の材料を探している最中である。
薬の材料は複数あり、手分けをして探しているのだ。
藤丸立香、雪蓮、天和、張角は冬虫夏草。燕青、荊軻、地和、人和は燕の子安貝。華佗、貂蝉、卑弥呼、李書文(殺)、袁術は仏の御石の鉢の欠片。
まずは第一段階目の材料集めだ。
冬虫夏草は薬の材料として分かるが燕の子安貝と仏の御石の鉢の欠片の名前が出てから「ん?」と思ったが実際に集めた身としてはおかしくはないのかもしれないと思う。
「簡単に見つかると思ってたけど見つからないものね」
冬虫夏草は子囊菌類のきのこの一種で皆が知っていると知識だと昆虫に寄生したきのこで薬の材料になるというものだ。
「華佗はこの森で見つかりやすいと言ってたけど見つかんないじゃない。適当なことを言ったんじゃないの」
「まさか」
華佗は医者で人を助けるために動いている。薬の材料について嘘を付くはずがない。
「はあ~…誰かが冬虫夏草の場所を教えてくれないかしら」
「天和も誰かに教えてほしいーなー」
もう探すのに疲れた雪蓮と天和。
「ねえお爺ちゃん。なんかすごい術でぱぱっと見つからない?」
「ほっほっほ。実は…」
「実は」
「ないのう。頑張って探すしかないな」
近道はあるようでない。頑張って探すしかない。
「えー…」
どっこいしょっとサルノコシカケに座る張角。
よく見ると周りにはきのこがたくさん生えていた。もしかしたらこの中にあるのかもしれない。
「この中から探すのは手間よ」
「冬虫夏草は昆虫に寄生しているのだから見分けは簡単だと思う」
藤丸立香は黙々と探す。文句を言っても向こうから冬虫夏草が現れるはずがない。
「もー…きのこの精霊でも現れて冬虫夏草がある場所まで案内してくれないかしら」
「さっきから文句言ってないで雪蓮も探し…て…」
藤丸立香の探す手が止まる。
「どーしたのー?」
気になって天和が藤丸立香の方に向かって同じく止まる。
「なに、どしたの2人とも?」
藤丸立香と天和の視線の先にいるのが理由である。
「ねえ…これなに立香?」
「たぶん創造神…いや、きのこの精霊かな?」
大きなきのこの後ろに妙なきのこがあったというかいた。
緑の傘にまだら模様。黄色い茎部分に小さな手足。キラキラのお目目。
「…化けきのこじゃ」
「天和。これは凄い精霊だよ」
藤丸立香は確信した。粗相のないようにしなければならないと。
「凄いかな?」
「ああ。凄いぞ」
藤丸立香は凄いと言うが天和は何が凄いのか分からない。
「なによコレ?」
ヒョイっときのこの精霊を摘まむ雪蓮。
「あ、雪蓮。もっと優しく触るんだ。粗相のないように!!」
「なんで立香はコレに対してそんなに崇めているような感じなのよ」
雪蓮も藤丸立香の様子に意味が分からない。
「張角お爺ちゃんはコレ何だか分かる?」
「どれどれ……こ、これは!?」
「知ってるのお爺ちゃん?」
カッと目を見開く張角。
「創造神…否、茸の精か。粗相をしてはならん!!」
「なんか立香と同じ事を言ってる」
何が凄いのか意味が分からない。
『手を離せでちゅ』
「え?」
『手を離してくれって言ってるでちゅ』
「喋った!?」
きのこの精霊が喋ったのに対してつい驚いて放り投げてしまった。
「ああーっとぅッ!?」
放り投げられたきのこの精霊を優しく受け止める藤丸立香。
「ナイスキャッチじゃマスター。傷はついておらんかのう。儂の治水は必要かな?」
「大丈夫そうだよ張角」
ヨチヨチと元気に動いているきのこの精霊を見てホッとする2人であった。
「なんて事をするんだ雪蓮」
「そうじゃぞ。罰が当たるぞ」
「何なのよ2人とも。はいはい、悪かったわよもう」
何度も思うが何故そこまで大事にするか分からない雪蓮と天和であった。
「ねえねえ、きのこの精霊って事は冬虫夏草の場所を知ってるんじゃないかな?」
「そうよね。だってきのこの精霊だもの」
きのこの精霊ならば冬虫夏草の場所を知っていてもおかしくないとは普通に思うもの。
「ねえ、聞いてみましょ」
「きのこの精霊様。いきなりですいませんが冬虫夏草の場所を知っていますか?」
『知ってるでちゅよ』
「本当ですか。教えてくださいませんか?」」
『いいでちゅよ。ただし条件があるでちゅ』
「何でしょう?」
『この森の先に悪い奴がいるでちゅ。退治してくれたら教えてあげるでちゅ』
ギブアンドテイクみたいなもので冬虫夏草の場所を教えてくれる代わりに悪者退治をする事になる。
「それなら私の得意分野だわ」
腰に携える剣の柄を握る雪蓮。
「天和は得意分野じゃないから立香が守ってね。お爺ちゃんも」
「任せて」
「ほっほっほ。任せるがよい」
きのこの精霊に出会えた事で冬虫夏草はすぐに手に入りそうである。
『悪者はお前たちなら楽勝でちゅ』
「あら、そうなの。手応えが無さすぎるのもつまんないわね」
そんな事を言っていた雪蓮であったが悲鳴を上げる事になる。
「嘘つきぃぃぃぃぃぃぃ!?」
巨大な芋虫が雪蓮たちに向かって襲い掛かってきているからだ。
きのこの妖精に悪者の所まで案内されて巨大な芋虫にロックオンされたのである。
「ちょっとダメダメっ。天和は大きな芋虫ダメ~!?」
虫が苦手な人は巨大な芋虫は生理的に嫌悪するはずだ。そもそも巨大な芋虫という時点で恐怖ものである。
「立香どうにかして~!?」
「ちょっと待って考えるから」
「早く~!?」
全員が仲良く巨大な芋虫に追われている。
「老体に走るのは堪えるのう」
「ちょっと張角のお爺ちゃん。妖術で芋虫を燃やしちゃってよ。虫はよく燃えるから」
『それは止めといた方がいいでちゅ』
きのこの妖精が雪蓮の案を止める。
何故かと聞き返すときのこの妖精は巨大な芋虫の額部分を指さす。
『ほんとは退治してもらってから教えようかと思ったけど先に教えるでちゅ。あそこに冬虫夏草が生えてるでちゅよ』
よく見るとにょろっとしたものが生えているのを確認。
「じゃああの芋虫が暴走してるのって冬虫夏草のせいって事じゃないの!?」
巨大な芋虫に冬虫夏草が生えているのであれば張角の妖術を食らわせば一緒に燃えてしまう。手に持っていた札をそっとしまう。
「あんたきのこの妖精なんだから管理しなさいよ!!」
『きのこが生えるのは自然現象でちゅ。管理もなにもないでちゅ』
自然現象に文句を言っても虚しいだけだ。きのこ妖精だからといってきのこを養殖しているわけでもなく、管理もしているわけでもないのだ。ありのままの自然である。
冬虫夏草が巨大な芋虫に寄生したのもたまたまである。ただの自然界の現象だ。
「あっそう!!」
「こら雪蓮。きのこの妖精様になんて口の聞き方してんだ」
「立香もきのこ崇拝してないで解決案を出しなさい!!」
解決案は出ている。
巨大な芋虫を足止めさせ、そのうちに冬虫夏草を収穫。そしてトドメに張角の妖術だ。
「簡単に言うけど一番重要な足止め方法は?」
「任せて。魔術礼装起動…ガンド!!」
巨大な芋虫に直撃し、動きが鈍くなる。
「やっるじゃない。なら冬虫夏草を採るのは任せて!!」
剣を抜き、飛跳ねて巨大な芋虫の額に生えている冬虫夏草を斬る。
「よし。収穫したわよ張角のお爺ちゃん」
「後は任せよ。激雷、天より来たるべし」
札を天高く投げると雷雲が発生し、巨大な芋虫に雷が落ちる。
「ほっほっほ。巨大芋虫の丸焼きじゃ」
「誰も食べないよお爺ちゃん」
ごろんと倒れる巨大な芋虫。ホカホカだ。
『ありがとでちゅ。これでこの森も平和になるでちゅ』
「なんであんなでかい芋虫がいんのよ…」
『急に生まれてきたでちゅ。神秘が濃くなってきたからでちゅかね?』
神秘が濃くなってきているという言葉にピクっと反応する藤丸立香と張角。
言い方として現在進行形で外史世界の神秘が濃くなっているのだ。元々、神秘はあったがより濃くなっているというのはどういう事なのか。
この外史世界に何かが起きている。
『その冬虫夏草はあげるでちゅ』
「当然よ。これだけ苦労したんだから。ところであの丸焼き芋虫はどうするの?」
『あのままでいいでちゅ。あの子を苗床に色んなきのこが生えてくるでちゅから』
「ああ…そお」
何はともあれ冬虫夏草を手に入れたのだ。
「ありがとうございました。きのこの妖精様!!」
「お疲れ様です」
綺麗にお辞儀する藤丸立香と張角であった。
『またでちゅ~。あ、そうだ。せっかくだからここらのきのこでも食べていくでちゅ』
「食べさせてもらいます!!」
『オロシャヒカリダケとか美味しいでちゅよー』
「なんかバッテリーが回復しそうな気がする」
なんのバッテリーかは知らない。
「食べてもいいって言うけど、どれが食用かな?」
「毒味は任せて!!」
毒がほぼ効かない彼だからこそ出来る選別方法だ。
「このきのこは?」
「食える。まあまあ」
「これ食べてみてよ立香」
「これは…毒だ!!」
「このきのこなんかどうかな~」
「うん…なんだか眠くなってきたな」
藤丸立香の毒味により食えるきのこの選別が終了したのであった。
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きのこ鍋。
色んなきのこがグツグツと煮込まれている鍋だ。よく分からないきのこがたくさん混ざっているが全て食べられるのは確認済みである。
「焼ききのこも良いよ。醤油とバターが良いんだ」
「凄く食欲がそそる匂いね」
「はぐはぐ」
「美味いのう」
仲良くきのこ鍋を囲っていると遠くから声が聞こえてくる。
「お~いマスター」
「天和姉さーん」
「いま戻ったぞー!!」
燕の子安貝と仏の御石の鉢の欠片の回収担当である燕青や華佗たちが戻って来た。
「何だか美味しそうな匂いがするじゃない」
「これは酒のアテになりそうだな」
「あらあらご立派なきのこねん」
「ん?」
何か含みがありそうながあったが気にしない事にした。
「どうだった?」
「もちろん手に入れたぜ」
「俺もだ」
燕の子安貝と仏の御石の鉢の欠片はもちろん回収成功だ。
「燕の子安貝を取ってくるの大変だったわよ」
「大変って…アンタ俺の背中に捕まってただけだったじゃねえか」
燕の巣の中にある子安貝を回収するために崖の上までよじ登ったのだ。登ったのは燕青。回収するために地和は燕青の背中にしがみついてた。
「頑張ってしがみついてたのよ」
「へいへい。よく頑張ったな」
一番頑張ったのは崖を登った燕青である。すぐに見つかったわけでなく、いくつもの燕の巣の中を確認するために何度も崖を登ったからだ。
「私たちも頑張ったんだがな」
「ええ。色々と情報を調べたりね」
荊軻と人和は影の功労者。
「こっちはきのこ妖精と出会ったよ」
「「「きのこの妖精だと!?」」」
「なんで天の国の人たちはきのこの妖精に反応するのよ」
きのこの妖精は偉大だからである。
「立香と燕青たちも無事に回収できたんだな。こっちはなかなか大変だったぜ」
華佗たちは仏の御石の鉢の欠片を手に入れる為に様々な場所を探し回ったのだ。
「本当に大変だったのじゃぞ。何度も妖魔に食われかけたのじゃからな!!」
「ええ、そうねん。妖魔によく襲われたわ」
「その度にズンズンと蹴散らしたがな!!」
華佗たちの方は3組の中で一番難易度が高いようである。
「何故か妖魔たちは袁術をよく狙ってきてな」
「袁術ちゃんが美味しそうだったからじゃない?」
「妾は美味しくなんかないぞ!!」
単純に妖魔から見て一番弱いのが袁術だと判断されたからかもしれない。
「そんなに妖魔に襲われたの老師?」
「西に向かうにつれて強い妖魔が現れてな。なかなか強敵揃いであった」
「うむ。強敵揃いであったぞ」
「ええ、そうねん。私の玉の肌が傷付いちゃう程だったんだから」
強敵と言っておきながら無事に帰還しているのだから彼ら全員が強者だ。
「金塊だか銀着の鬼が現れた時は死ぬかと思うたわ」
ガクガクブルブルと振るえる袁術。
「金塊に銀着?」
「いや…金角だか銀角と名乗ってたような」
有名な鬼の名前である。
「え、もしかして天竺まで行ってた?」
「ふふ、中々に面白き旅であったぞ」
「詳しく聞きたいんだけど」
「話すと長いぞ」
長編大作が完成しそうである。
「さて、次の材料だが蓬莱の玉の枝、火鼠の皮だ」
「やっぱ5つの難題やってる?」
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次の薬の材料は蓬莱の玉の枝と火鼠の皮。
蓬莱の玉の枝は華佗たちが担当。藤丸立香たちは燕青たちを加え、火鼠の皮を手に入れる事になった。
「薬の材料を聞いてやっぱ5つの難題だね」
「ははは。閻魔亭を思い出すな」
「それに物語としてかぐや姫も思い出すよ」
5つの難題で誰もが思い浮かべるのは『かぐや姫』だ。そして藤丸立香たちの旅路では『閻魔亭』を思い出す。
「かぐや姫に閻魔亭?」
カルデアの皆は知っているが雪蓮たちは知る由もない。
「かぐや姫ってのは物語だよ」
「天の国の?」
「うん。薬の材料にもある蓬莱の玉の枝や火鼠の皮が物語に出てくるんだ」
かぐや姫の概要を説明。
「ふ~ん。その姫さんは求婚したくなくて無理難題を出すわけね」
「まあ、そんな感じでもある」
「じゃあもしもかぐや姫がいたら私たちは結婚の資格があるって事ね」
物語のかぐや姫が欲する物が藤丸立香たちの持っている物であれば結婚資格は確かにあるという事になる。
「どうだろうね。もしかしたらオレたちには新たな難題を出されるかもよ?」
5つの難題は五人の貴公子たちのだ。ならば別の求婚者が現れた場合は別の物を持ってこいと言われるかもしれない。
「金閣寺の一枚天井とか言われそう」
「何よそれ」
「漢は黙って金閣寺」
「答えになってないわ」
分かる者にしか分からないのだ。
「天和は閻魔亭が気になるな。もしかして旅館か何か?」
「うん。秘湯中の秘湯がある温泉旅館だ」
「いいな~。ちぃも行ってみたい」
「温泉か。確かにゆっくり浸かりたいわね」
張三姉妹も疲れているのか温泉にゆったり浸かりたいようだ。
閻魔亭での出来事は何だかんだで忙しかったが最後にはゆっくり出来た。心身ともに癒されたのは確かである。
過酷な旅であるからこそ休む事は大切だ。身体を休める事は大切だが特に心が重要だ。藤丸立香の心は過酷の旅の中でいつも疲弊していく。
英霊の中にはいずれ壊れてしまうのではないかと心配している者もいるくらいなのだから。
「みんなで温泉に行ってみたーい」
「それもいいね」
前に炎蓮たちと療養するために温泉に行った事がある。その時は襲撃やらなんやらがあって大変であった。
この外史世界にも温泉はあるのだから時間さえあれば皆で温泉に行くのも悪くないかもしれない。
「温泉も良いけどまずは薬の材料集めだな」
「面倒だけどねー」
面倒そうにため息を吐く雪蓮。敵だった者の為に薬の材料を集めるというのは微妙な感覚である。
「で、火鼠の皮は何処で手に入るんだっけ?」
「火鼠の皮だから火鼠から獲れる。火鼠の生息地はまさにここだ」
火鼠は南方の果ての火山にある決して燃え尽きない木の中に住むという幻獣だ。
「だから火山登ってんのね」
藤丸立香たちはまさに登山中。活火山なのだから色々と注意が必要である。
「火口までは登らないが近くに燃えてない木があれば火鼠がいる可能性がある。よく見てくれ」
活火山であれば上に登るにつれ溶岩が噴き出している可能性がある。更に火山ガスの危険性もある。活火山に登るというのは危険と隣り合わせだ。
先頭は燕青や荊軻たち英霊が進んでくれる。
「姐さん燃えてない木あったか?」
「見えないな。マスターたちの方はどうだ?」
「こっちも同じく」
登りながら周囲を見渡すが燃えてない木はなかなか発見できない。登るにつれて見える景色は岩ばかりである。
たまに申し訳ない程度の雑草は生えているが火鼠が生息していそうな木は生えていない。
「もう少し登らないとダメか?」
「これ以上登るのはちぃ的にキツイかも~」
「文句ばっかだなぁ。でも確かにこれ以上登るのは確かに危険っちゃ危険か」
英霊たちならまだしも地和たちには厳しいのは確かだ。地和の文句にも納得できてしまう。
「老体の儂も山登りはキツイんじゃがな」
「アンタは大丈夫な気がする」
「けっこうか弱い爺じゃぞ?」
「何処がだ」
張角にか弱いという言葉は似合わない。
「それにしても火鼠って燃えてる小さな鼠なのか?」
「いや、話によると大きいらしい」
火鼠は体重が約250kg。毛の長さは50cmあり絹糸よりも細いと言われている。これだけで普通の鼠と比べたら大きすぎる。
火の中では身体が赤く、外に出ると白くなるとも言われている。
「じゃあ今この場で見つかたら白い大きな鼠って事ね」
燃えない木とは火山の炎の中にある、不尽木という燃え尽きない木の事だ。噴き出した溶岩や炎の近くに生えているはずだがそれもまだ見つからない。
「見つからないわね」
「み~つ~か~ら~な~い」
「ひょっこりと出て来てくれないかな」
案外そんな事を言っているとたまに叶うものだ。本当にひょっこりというかのっそりと白い毛の大きな鼠が現れた。
「「「……いた!?」」」
逃げる火鼠と追う藤丸立香たち。
「逃がすな!!」
「捕まえて皮を剝げ!!」
火鼠からしてみれば藤丸立香たちは密猟者かもしれない。
逃げる火鼠は炎の中に生えている木の中に入り込んだ。もしかしなくても火鼠が住むと言われる不尽木だ。
「木の中に…炎の中に入り込んだな。どうやって炙り出すか」
「もう炎の中だけどね」
木の中に閉じこもった火鼠をどうやって出すか考えていると挙手をする人和。
「ここは任してもらってもいい?」
「何か策でもあるの人和?」
「これ使ってみる」
取り出したのはメガホンだった。
「メガホン?」
「実は張角さんに作ってもらったの」
「ちぃも作ってもらったの貰ったわ」
「天和姉さんも~」
地和は剣型のペンライト。天和は槍型の金色スタンドマイク。
「張角いつの間に…」
「話が盛り上がってな。つい作ってしまった」
ついで作って良いかどうか分からないが案外、張三姉妹は貰って満更でもない様子だ。
「これはより大きな声を出せる絡繰りみたい。だから大きな声でびっくりさせて木の中から出てくるから試してみるわ」
カチカチと張角特性のメガホンを弄る。
「よし。じゃあ……出てきなさぁーーーい!!」
息をすうぅっと吸って一気に発生しらメガホンの口がアンテナの様に大きく変形。そしてビームが出た。
「「「え?」」」
メガホンから出たビームは不尽木を貫き、火鼠を無理やり叩き出した。
「よし、成功じゃ。さしずめ幻撃☆音波ってとこだな」
「なんてもん作って渡してんだ」
「ビームは浪漫じゃ」
「分かる」
藤丸立香は張角の浪漫を理解した。
「火鼠を捕獲したぞ」
荊軻は難なく火鼠を捕獲成功。
「え…これ、声出す度に今の出るの?」
「いや、調整すればちゃんと大きな声が出るようになっておる。今のはもしも悪漢に襲われそうになったら使うといいぞ」
「ちぃのもそういうのあるの!?」
「天和姉さんのも?」
「ほっほっほ。使ってからのお楽しみじゃぞい」
張角お手製の道具。ただの道具であるはずがない。
「何はともあれ火鼠の皮は手に入れた下山するか」
無事に火鼠の皮を手に入れたのであった。
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新たな薬の材料を手に入れた藤丸立香たちは華佗に教えられた合流地点に赴いていた。
深い森の中を歩いているとビクっとするくらいの悲鳴が聞こえてきた。
「にょわあああああああああああああああ!?」
この聞こえてきた悲鳴はとても聞き覚えがあるものであった。
「目覚ましに毎朝聞いていたいわね~」
「趣味が悪いよ雪蓮」
「だってあいつが今まで私にしてきた仕打ちしてみれば可愛いものでしょー」
悲鳴の主は袁術である。急いで駆け足で向かうと袁術よりもはるかに大きい虎に追いかけられていた。
「た、た、たあ、助けてたもぉぉぉぉぉ!?」
「何で追いかけられてんのかしら?」
「妾は何でもするとは言ったが人食い虎の囮になるとまでは言うておらぬ。言うておらぬぞぉぉぉぉぉ!?」
どうやら囮になっているという事だけは理解できた。
「あと少しだ袁術。そのまま一気に逃げきれ!!」
「ほわああああああああああああああ!?」
「今だ貂蝉!!」
「ええ、ぬぅふうっ!!」
李書文(殺)の声が合図を出した瞬間に貂蝉が人食い虎を受け止めた。
「ぬおおおおおおおぁあああああ!!」
虎の体当たりを正面から受け止めた貂蝉はそのまま巨大な虎を力任せに抱え上げた。
「イクわよ書文お爺ちゃん。うっふぅぅぅん!!」
そのまま李書文(殺)の方向に投げ飛ばして拳を叩きこむ。
「あらん。人食い虎って聞いたからもっと歯ごたえのあるモノかと思ってたけど…だらしがなぁいわねぇ」
「所詮は獣だ」
ズシンと静かに人食い虎は地面に倒れ込んだ。その様子をビクビクと見守る袁術。
「アンタもだらしないわね」
「だ、だだだだだ、だらしなくなどないぞ。妾は死ぬところだったのじゃぞおおお!!」
雪蓮を恐れているのに食って掛かる勢いは残っている袁術。
「大丈夫よん。ちゃーんと助けに入ったでしょう。よぉしよし」
「うむ。見事な囮役だったぞ」
「こ…ここ…」
穏やかな表情で小さな頭をなでる貂蝉と褒めてくれる李書文(殺)に袁術はしばらく言葉を詰まらせていたが緊張の糸が切れたように涙が漏れる。
「怖かったのじゃああああああ…ちょうせえええん」
袁術も囮役なんてやるつもりはなかった。しかし人食い虎の一部は薬の材料だ。
人食い虎は警戒心が強く、勝てない相手を襲うつもりはない。貂蝉や李書文(殺)が囮役をやっても意味は無い。よって袁術が囮役をやるしかなかったのだ。
「ええ。虎探し、よく頑張ってくれたわねえ。すごかったわよ、袁術ちゃん。ね、立香ちゃん」
「うん、そうだね。ナイスファイト!!」
親指をグっと立てる。
「なんだ。人食い虎退治は其方が先に済ませてしまったか」
ヒョイっと卑弥呼と華佗が茂みから顔を出す。
「ええ、袁術ちゃんがすっごく頑張ってくれたのよん」
「そうか。なら立香、必要な部位を取るから手伝ってくれ」
「了解」
黙々と人食い虎を解体していく藤丸立香と華佗。
「蓬莱の玉の枝は手に入れたのか?」
「もちろんだ。探すのには苦労したけどな。あ、ソコとソコも頼む」
「こ、コレもか……雄としてこれを採るのはちょっと抵抗あるな」
藤丸立香は下半身がヒュっとした。
「なるほどねえ。確かに囮役は袁術の方が美味しそうだしね」
「ふ、ふふん…妾でもちゃんと役に立つであろ?」
「まあ、ものすごい鳴き声と悲鳴も聞こえてきたけどね」
「当たり前じゃろっ。死ぬかと思ったのじゃ!!」
人食い虎に追いかけられるのは恐怖しかないのだからしょうがない。
「張勲のためなら何でもするって言ったくせに」
「ぐ、ぐぬぬ…何でもするとは言うたが、何でもするとは言うておらんのじゃ」
「はん……」
袁術の言い分に呆れて何も言えなかった雪蓮。
「うう、貂蝉。孫策がいじめるのじゃ」
「しょうがないわねえ。袁術ちゃん、すっごく頑張ってたんだから…少しは孫策ちゃんも褒めてあげて?」
「はいはい。まったく…そうやってると親子みたいね」
「親子?」
親子発言に微妙な顔をする袁術。
「そ、そんなぁ。いやだわ、袁術ちゃんは確かに可愛らしいけど、そんな母性本能をぎゅいんぎゅいん刺激されるような言い方されちゃったらぁん…うう、一刀ちゃんと私の間にこんな可愛い子が生まれるだなんて。いやん、想像しただけでムラムラしちゃうん」
「そこまで言ってないんだけど」
貂蝉の言葉に袁術とは違う意味で何も言えなかった。
「それで、だぁりんよ。後は何の材料が必要なのだ?」
「ああ、虎骨とそれ以外に必要なものも手に入ったから後は…」
いつもというか定型パターンになりつつあるが如く急な展開が発生する。いきなり大きな咆哮が聞こえてきたのだ。
「何だかまた元気な声がするわねえ」
「そういえば村の民から、この辺りには人食い虎だけでなく、人食い熊も出ると聞いたな」
「もしかしなくても」
そんな卑弥呼の言葉に応じるように草むらから姿を見せたのは件の人食い熊だった。
「血の臭いを嗅ぎつけてきたか!!」
「ふむ。どうせあれも仕留めねばならんのだろう。ならばちょうど良いではないか。ゆくぞ貂蝉」
「ええ…あら?」
貂蝉が人食い熊のある一点に集中する。
「何ですって…一刀ちゃんと立香ちゃんのより大きい?」
「そうか、そう大きいわけじゃないと思うが」
「いやん。華佗ちゃんってばそんなに自分のに自信があるなんて…どきどき」
(体格なら立ち上がっても卑弥呼や貂蝉くらいじゃないのか?)
ここで華佗と貂蝉との間で会話が噛み合っていない。
「ああ、言われてみたらそうね」
「なんで雪蓮が知ってるのさ。てか貂蝉まで」
いつ見られたのか気になるところである。
「ふふ、な・い・しょ。でも立派だったわ」
後で色々と話合いが必要かもしれない。
「まあ良い。虎よりこちらの方が歯ごたえがありそうだ。貂蝉、お主は袁術達を守っておれ。ここは私が引き受けよう」
「あら。暴れ足りないのは卑弥呼だけじゃないんだけど」
巨大芋虫に火鼠と来てまだ暴れ足りないらしい雪蓮。
「ほう。ならば共にゆくぞ。ぬふうううん!!」
「その珍妙な構えと一緒に並ぶのはちょっと微妙ね」
「ふんぬうううう!!」
「何と…こやつ、私の威嚇の構えに威嚇で返してくるだと…なかなかやるではないか」
卑弥呼のバッチシ決まったポーズは威嚇の構えだったようである。
「ならばこれはどうだ。ふん、ふんぬ、でええええい。これならば、うっふぅううん!!」
「キレてるキレてる。デカァァァイ!!」
「仕上がってるよ仕上がってるよ。大胸筋が歩いてる!!」
「背中に自信が宿ってる。新時代の幕開けだ!!」
卑弥呼の次々に変わるポージングに藤丸立香たちは褒め言葉を連発。
「今の褒め言葉なの?」
「褒め言葉さ」
実際にポージングを決めている卑弥呼は気持ちよさそうである。
「ぬううん。いいぞいいぞ。気分が良いぞう!!」
人食い熊に関しては最初と同じ威嚇の声をあげるだけ。
「ぬぬぬ…つまらん。貴様の構えはそれひとつか。相手の強さを解さぬ者など相手の内にも入らんわ。そういう相手こそ犬畜生にも劣るというのだ」
「熊だもの。そりゃ畜生でしょ」
「所詮はケダモノじゃしな」
知性体と獣の超えられない壁である。
「卑弥呼。飽きたならもういいかしら。こっちはそろそろ始めたいんだけど?」
「うむ。ならば遊びは終わりだ」
「ああ…うん。見るからに遊びだったわね」
先ほどの一連の流れは雪蓮にとってお遊びにしか見れなかった。 なにせ藤丸立香と燕青たちのノリの良さが完璧にハマっていたのだから。
「だらあああああぁふんぬうぅぅ!!」
卑弥呼の力強く重い拳が人食い熊を襲う。
「攻撃すると無茶苦茶ねえ。けど、それで終わりじゃないわよ。はあっ!!」
瞬時に駆け抜けて剣を振るう。
「すごい。もうおしまいだ」
「すご~い」
卑弥呼の続けざまの攻撃に態勢を崩したところに雪蓮のトドメの一撃。それだけで巨大な熊は大地に倒れ伏した。
「ま、こんなもんでしょ」
「がははははは。口ほどにもない」
「熊に爪一本も触れさせないまま倒すなんて…相変わらずやるわねえ」
「そういえば貂蝉、お主は一撃受けておったな。まだまだ精進が足らんという事だ」
「そうだ貂蝉。さっきの虎との戦いでどこか怪我してたよね。大丈夫か?」
「ああ…そういえば何だかこの辺りがジンジンしてきちゃったわん」
よく見ると大胸筋のあたりに傷がついていた。
「人食い虎の一撃だからな。ちょっと見せてみろ」
「いやぁん。華佗ちゃんってば、そんなところはずかしいわぁん。やだぁん」
「医者はそういう事は気にしないぜ。ほら、早く見せてみろ。手遅れになってからじゃ遅いから」
「やだ、手遅れだなんて…恥ずかしくて顔がそのまま爆発炎上しちゃいそうだわん」
その割にはとても嬉しそうな顔の貂蝉。
「貂蝉め。その一撃わざと受けおったな。ぐぬぬ…そんな所をだぁりんに診てもらえるなどなんとうらやましい!!」
本当に悔しそうなのと羨ましそうな顔の卑弥呼。そこでハっと何かを思いついて大胸筋に手をあてる。
「お、おわ。か、華佗よ…私も急に大胸筋に頭痛が…!?」
「それはいくらなんでも無茶ではないか?」
袁術ですら呆れた声が出た。
「なんだって頭痛が胸に起きるなんて…俺の知らない病魔だ。いったいどんな病魔が!?」
「そ、それは…」
「ああ、信じるのね。華佗らしいけど」
本当であればアスクレピオスも「興味深い」と言うかもしれない。
「うう…だぁりんに優しくされるのは嬉しいがその優しさが心に刺さる」
「それで華佗。熊と虎の材料は手に入ったけど他に何が必要なんだ?」
卑弥呼の事は一旦、置いておいて藤丸立香は次の薬の材料について確認する。
「ああ。これからがな…」
「虎や熊よりも難物だというのか?」
「それは間違いないだろうな。そのうえ、正直どこに行けば手に入るかもよく分からないんだ。噂では南の方にあると聞いているが…」
そもそも燕の子安貝などの5つの難題の方が難しいはずだ。
「何よそれ。そんなモノを探そうっていうの?」
「それほどの相手となれば…まさか!?」
貂蝉と卑弥呼はビビーンと緊張走る。
「ああ。角は鹿。頭は駱駝、目は兎、身体は大蛇、腹は蛟、鱗は鯉、爪は鷹、掌は虎、耳は牛…」
「え、ちょっとそれって…」
「うむ…そこまで聞けば妾でも分かるぞ」
ゴクリと誰かが唾を飲む。
「必要なのは龍の肝だ」
「やっぱ5つの難題じゃないか」
正確には少し違うが龍関係ではある。
読んでくださってありがとうございました。
今回ので2022年最後の更新です。次回の更新は来年ですね。
正月中に更新出来ればな~とは思ってます。駄目なら正月明けですね。
では、皆さん。良いお年をお迎えください。
824~825
薬の材料探し。オリジナル展開①
革命の呉の漢女ルートで語られた材料の中でいくつかあったのでそれをネタに書きました。
きのこ妖精。
探すのは冬虫夏草…菌糸類という事で思いついたネタでした。
詳しくは語りません。ただそっくりさんなだけです。
オロシャヒカリダケ。
分かる人には分かるネタですね。
燕の子安貝の話も考えましたが冬虫夏草の方が先に思いついたのでこっちは省略。
御石の鉢の欠片は西〇記が始まりそうなのでカットしました。
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薬の材料探し。オリジナル展開②
此方もまんまオリジナル展開でした。火鼠という妖怪から獲れるという事で火鼠の皮の話はなんとか書けましたね。
人和のメガホンの『幻撃☆音波』に関しては天下統一伝の必殺技です。
天和と地和のもいずれ出せればと思います。
蓬莱の玉の枝の話もあまり良いネタが思いつかなったのでカットしました。
金閣寺の一枚天井。
これも分かる人には分かるネタですね。
827
此方はほぼ革命呉の漢女ルートと同じ流れですね。
しかし薬の材料…やっぱ5つの難題だよなあ。