Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
FGO2部7章後半は1月下旬に配信。何だかんだでもうすぐかもしれません。
待ち遠しいですね。後半はどのような展開になるか楽しみです。


此方の物語ではどんどんとオリジナル展開に進んでいきます。
どんどんとFGO側のキャラも登場していきますので!!


南蛮大乱戦-私は呂布です。いいえ、貴方は馬です-

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鍛え上げられた筋肉・巨体。靡く鬣。大きな槍。馬面にイケメンボイス。

何故か自分を呂布奉先と名乗っているUMA(馬)。

 

「う…馬だ」

「馬…ですね」

「馬だね。馬だよねご主人様?」

「馬なのだー」

「馬なのアレ」

「馬なんですかアレ…いえ、何で恋殿の名を驕ってるんですか」

「う……?」

 

北郷一刀たちに衝撃を与えたUMA(馬)。

色んな意味で動揺が隠せない。

 

「馬というかケンタウロスか?」

「けんたうろす?」

「下半身が馬で上半身が人間の幻想生物ってやつ」

 

見た目がケンタウロスなUMA(馬)。ただ北郷一刀の本能が「アレは違う」と囁いている。

 

「物知りだねご主人様。じゃあ天の国にはあんな生き物がたくさんいるんだ」

「いや…たくさんはいない。そもそもいないというか」

 

神話で存在していた生物で、現代には確認されていない。そもそもあんなUMA(馬)がたくさんいたら脳が破壊されそうである。

 

(ほんとなんだあの生き物…自分を呂布とか言ってるし)

 

本当に謎生物である。

 

「蒲公英。馬に詳しい馬一族としてどう思う?」

「アレ馬じゃないよ!?」

 

馬に長けてる蒲公英も理解不能のようだ。

 

「恋はどう思う。あいつ呂布とか名乗ってるけど」

 

動物好きでもある恋。もしかしたら珍しい動物も知っていてもおかしくない。

 

「……う…う…う………う?」

「恋殿、お気を確かに!?」

「恋がバグってる!?」

 

恋もUMA(馬)の衝撃に脳をやられたようだ。このような恋は見たことがない。音々音もまさかの恋の状況に動揺している。

本当ならば自分自身もバグりそうだがここは何とか冷静になるしかない。まずは相手が何者なのか調べなければならない。

 

「お前は何者だ!!」

「呂布奉先です!!」

「駄目だ。会話が成り立たない…」

「諦めないでご主人様!!」

「桃香も頑張ってくれ。対話は大切なんだろ」

「いや、アレとは対話が通じるのかな…」

 

対話が大切と言う桃香ですら対話を諦めかけている。それほどまでにUMA(馬)の衝撃は強すぎる。

恐らく曹操や孫策も脳をやられてしまうかもしれない。

 

「南蛮ってあんな馬がいるんだなー」

「南蛮だからって事は無いと思うぞ鈴々」

 

孟獲たちが住んでいる南蛮だからと思ったが、UMA(馬)は孟獲以上に次元が違すぎる。

 

「ふむ。強者かと思ったが我が姿に臆したか」

「まあ…臆したというか驚いたというか」

 

ブルルンと鳴き声を出すUMA(馬)。やはり馬だ。

頭が変な意味で壊されそうだが今は我慢するしかない。

 

「お前は南蛮勢力か?」

「ええ。南蛮の者に世話になっておりますね。まあ、今は世話をしていますがね」

 

謎のUMA(馬)は南蛮勢力。しかし内部分裂を起こしているどっちの派閥かまでは分からない。

 

「南蛮では内部分裂が起きてるようだな」

「ええ。此方としては望んでいなかったのですが…南蛮の者たちがあの姉妹を女神と崇拝してしまって」

(あの姉妹…女神?)

 

気になる事を言うUMA(馬)。もしかしなくても彼から詳しい事情が聞けるのかもしれない。

 

「あ、あの…お馬さん」

「呂布です」

「ええと、呂布さん?」

「何でしょう」

 

桃香が頑張って対話をしようとする。

 

「わたしたちは争いを出来ればしたくありません。今回は其方が攻めて来たという事でここまで来たのです。平和的に解決できませんか?」

「攻めたのは孟獲派であって我々は蜀を攻めたわけではありません。それはそれとして蜀と戦ってみたいというものはあります。鍛え上げられし我が陣営たちの力を見せる時なのです。いざ、尋常に勝負!!」

「どうしようご主人様。もうだめかもしれない」

「諦めるの早いぞ桃香」

 

平和的解決を望んだのに相手は戦がお望みであった。

 

「戦いたいから朱里を…うちの軍師を攫ったのか」

「戦を始めたのは孟獲でありますが南蛮と蜀の戦いを全体的に見ると此方も無関係ではありませんからね。相手の頭脳を叩く…これも戦の必勝法の1つです」

 

元々は蜀と南蛮の戦いであった。その中身は桃香と孟獲の戦いだ。その中に内部分裂した南蛮たちは入っていないが、孟獲が負ければ南蛮は蜀のものになる。

なれば内部分裂した南蛮の者たちは黙ってはいられない。元々使えていた王が敵国に負けたからといって反乱した南蛮の者たちも蜀に従順を示すかと言われればそうではない。

寧ろ次は反乱勢力が次の蜀の相手になるのだ。反乱勢力側の南蛮は桃香と孟獲の戦いに介入し、両方を潰すつもりなのである。

 

「さあ。かかってきなさい!!」

「やるしかないのか」

 

そろそろ頭の中の混乱も落ち着いてきた。最優先は朱里を救う事だ。そしてUMA(馬)を捕縛すれば詳しい情報も聞き出せるかもしれない。

やるべきことは決まったので愛紗たちはUMA(馬)の前に武器を構える。

 

「ふむ、4対1ですか…私は一向に構いません!!」

 

UMA(馬)は大きな槍をブンブンと回しながら構える。

 

「とにかくこのよく分からんナマモノを倒せばいいだけだ」

「倒すぞー!!」

「さっさと終わらせるよ。もうこんなのと会話してると頭がおかしくなりそうだよ」

「…倒す」

 

愛紗たち4人が闘気を放つ。相手は不思議生物であるが最初に感じ取った強さは本物だ。

UMA(馬)だからといって油断して掛かる事はできない。

 

(どう出てくる?)

(やっぱ馬なのだ)

(どんな戦い方するんだこの馬。やっぱあの槍を力強く振るうのかも)

「…倒す」

 

様子見をしているという事はすぐに理解したUMA(馬)。

確かに得体の知れない者と戦う時に不用意には近づけないというのは当然である。

 

「来ないなら此方から行きますぞ」

「こい!!」

「天下無双、その力をお見せしましょう!!」

 

大きな槍が振るわれるかと身構えていた4人であったがUMA(馬)は口を大きく開いて大きく酸素を吸い込む。

 

「ごおおおお!!」

 

口から火炎放射。

 

「「「何でだ!?」」」

 

まさかの火炎放射に全員がツッコミを入れる。

 

「馬って火を吐くんだなー」

「いや、吐かないからな鈴々」

「もしかして天の国の馬は火を吐くのご主人様?」

「天の国でも火を吐く馬はいないよ!!」

「だからホントに馬なの!?」

 

またも混乱させられる。

 

「我が名は呂布奉先。好きな物は人参!!」

「やっぱ馬だろ!!」

 

火炎放射の後に突進してくる。

 

「我が槍の餌食となれ。武芸百般(馬)(A)」

 

大きな槍を自由自在に振りかぶり、薙ぎ払う。その一撃、一撃は重く早く強い。

地面を抉り、木々を薙ぎ払う程の威力である。

 

「ぜぇいっ、はあっ、おおう!!」

「存在自体があり得ないのに一撃一撃もあり得ないじゃない!?」

 

悪態をついたのは蒲公英。彼女の気持ちも分かると全員が頷きたくなる。

もしも軍隊に突っ込んで来たら被害は免れない。恐らく一騎当千の如く兵士が潰されていく。

 

「こんなものか蜀の武将たちよ」

「…負けない」

 

恋の方天画戟がUMA(馬)の大槍を受け止める。

 

「やりますね」

「…この程度っ」

 

恋とUMA(馬)の打ち合いが始まる。一撃が打ち合われるたびに衝撃音が響く。

 

「やっぱ恋は凄いな。でも鈴々も負けてられないのだ!!」

 

鈴々も打ち合いに加わる。愛紗も蒲公英だ。

4対1だというのにUMA(馬)は押し負けない。

 

「戦闘機動(馬)(B)。人馬一体!!」

「くっ、また一段と荒々しいな!?」

「まだまだ!!」

「こんのぉ!!」

 

蜀の有数な武将とも引けを取らないUMA(馬)はやはり只者(?)ではない。

 

「だが負けてられん!!」

「うう…ああああ!!」

 

恋の渾身の一撃を放つ。

 

「むお!?」

「今だ畳みかけろ!!」

 

一瞬だけの隙を作った恋。少しだけよろめいたUMA(馬)に愛紗たちが飛び掛かる。

 

「でりゃああああああ!!」

「だああああああああ!!」

「てやあああああああ!!」

 

愛紗、鈴々、蒲公英の3連続攻撃。

 

「流石は恋殿なのです!!」

 

音々音が旗を力強くを振るう。

 

「やったかな」

「いや…まだだ」

 

3人の攻撃を受けたはずであるがUMA(馬)はゆっくりと構え直す。

 

「ほほう…やはり強い。特に其方の大きい赤髪の方。名を聞かせてください。無論、貴女方も」

 

「呂布…奉先」

「関羽だ。」

「鈴々は張飛なのだ」

「馬岱だけど」

 

4人の名を聞いて目を細めたUMA(馬)。

 

「其方は?」

 

UMA(馬)は北郷一刀の方に視線を向ける。

 

「劉備です」

「北郷一刀だ」

「ねねは陳宮なのです」

 

またも少し驚いた顔をしたようなUMA(馬)。

 

「これは…驚きましたね」

(驚いた?)

 

驚いたのは北郷一刀側である。

 

(やはりこの世界にも私なる者がいましたか。そして陳宮殿まで)

 

ジィィっと恋と音々音を見るUMA(馬)。その視線に音々音は北郷一刀の後ろに隠れる。

 

「ねねの壁になるです」

「一応、俺は蜀の頂点なんだけどなぁ。まあいいけど」

 

女の子を守る為に壁になるのは男の本望だ。少なくとも北郷一刀はそう思ってる。

 

「蜀の誰かと思っていましたがまさか劉備…蜀の中枢とは。それに北郷一刀…大陸の出ではない。服装も」

 

ここで彼女たちを倒せば蜀はほぼ壊滅状態になると言っているようなものだ。そして北郷一刀をもう一度見る。

この大陸で異質な存在に見える。尤もUMA(馬)の方が異質すぎる。

 

「ふむ…これは面白い。これは帰って報告した方がいいかもしれませんね」

「帰るだと?」

「もっと貴女方と戦いたいですがちょっと報告が出来ました。この決着はいずれにしましょう」

「なんだと」

「それに邪魔も入りました。全く無粋な」

 

周囲から泥人間の兵士が現れる。

 

「なっ…いきなりすぎだろ」

「この泥人間の兵士は貴方の仲間じゃないんですか?」

「いいえ。この泥人間の兵士は敵ですね」

 

謎の泥人間の兵士は南蛮勢力の内部分裂した派閥の仲間ではないようだ。そうなると孟獲派の仲間の可能性が出てくる。

 

「正直に言えば一番の敵が恐らく泥人間の兵士を生み出す術者ですよ。双方にとっても」

「あ、待ってお馬さん!!」

「呂布です!!」

 

UMA(馬)は大槍を振るって泥人間の兵士を薙ぎ払ってその場から離脱した。

 

「もっと聞きたい事があったのに…」

「桃香、今はそれどころじゃないぞ」

 

多くの泥人間の兵士が桃香たちを囲う。

 

「桃香様とご主人様をお守りするぞ鈴々、蒲公英、恋!!」

「ねねも下がってて」

 

愛紗たちが桃香たちを守るように展開する。

泥人間の兵士の強さはUMA(馬)に比べれば大した事は無い。しかし数が多いのだ。

数が多ければ一騎当千の武将でも圧されて任される可能性は否定できない。

 

「ちょっと数多くない!?」

「くっ…あの馬を追いかけたい所だが一点突破して撤退するしかないか」

 

深入りは危険と判断し、撤退するしかい。

 

「でも朱里ちゃんが…」

「ですが桃香様が危険です。朱里もこの場にいたら撤退を進言します」

「愛紗の言う通りだ。俺だって朱里が心配だけど…このまま全滅する方がもっとマズイ」

 

朱里も桃香たちの全滅は望んでいない。

 

「まずは態勢を立て直そう。そして朱里をもう一度助けに行くんだ」

 

撤退し、態勢を立て直すにはまず周囲の泥人間の兵士を倒さねばならない。

 

「鈴々に任せるのだ」

 

決めるは一点突破。撤退路を作る。

 

「じゃ、一点とっ…」

 

鈴々が一点突破をしようとした瞬間に空から水弾が降り注ぐ。

 

「んにゃ!?」

「なになに!?」

 

水弾は泥人間の兵士を倒していく。愛紗たちは桃香たちを守ろうと覆いかぶさるが一向に当たる気配はない。

狙いは全て泥人間の兵士たちだ。

 

「「合体、メコンデルタ!!」」

 

トドメと言わんばかりに空から大きな水の傘が降り落ちくる。水の傘によって泥人間の兵士たちは全滅した。

 

「な…なにが?」

「大丈夫ですか」

「大丈夫そうだよ姉さん」

 

桃香たちの前に現れたのは2人の女性。

笠をかぶり、特徴的で伝統的な民族衣装を着ている。片方はおっとりタイプな美人で、もう片方はクール美人。

 

「こんにちは、わたしは徴側。この子は妹の徴弐。二人合わせてハイバーチュンとか徴姉妹とか呼ばれているようですけれど…お好きに呼びくださいね」

 

 

836

 

 

桔梗、焔耶、楼杏の3人は朱里と孟獲の追いかけっこ勝負の審判をしていた。

勝負は朱里の策略により孟獲を罠に嵌めて有利だった。しかし勝負中にてまさかの事態が起きたのだ。

まさかの事態とは南蛮の者たちがいきなり襲い掛かってきて朱里を誘拐したのである。まさかの行動に桔梗たちは油断してしまったのだ。

今もなお桔梗たちは南蛮の者たちに襲われている。

 

「何だこいつら今までの動きじゃないぞ!?」

「うむ。こいつら戦い方が分かっておる」

 

南蛮の者たちは複数人で襲い掛かっており、コンビネーションも抜群だ。

 

「森の中の戦い方というか…これは相手が一枚上手よ」

 

南蛮の者たちは己の身体能力をバネに木々を跳び回って攻撃してくる。

 

「こいつらここまで戦えたのか!?」

 

素早く動き、飛跳ね、攻撃。

桔梗たちが見てきた南蛮の者たちとは思えない動きである。

 

「まさか今まで本性を隠しておったか!?」

「その可能性はあるわね。あの可愛さが演技だったら相当な食わせ者たちね」

 

南蛮の者の身体能力は知っていたが幼い子供の演技をしていたのは驚きだ。

 

「にゃにゃー!!」

「にゃーーー!!」

「にゃにゃーにゃにゃー!!」

「演技なのか楼杏?」

「う~ん…」

 

やはり演技なのかも怪しい。

 

「しかし演技でなければ朱里ちゃんを誘拐するなんて真似…」

「こいつらが難しい作戦というか何というか。そういうのを考えられるなんて思わないんだが」

「焔耶さん、この子たちも考えるわよ。たぶん」

 

今までの事から南蛮の者たちはほぼ本能で動いている。失礼かもしれないが作戦を考えるとは思えない。

 

「ならこいつらの後ろにいる者が知恵者かもしれんぞ」

「後ろの者。桔梗さんそれは孟獲以外にも指導者がいるって事かしら」

「その通りだ」

 

南蛮の者たちは雰囲気的に素直だからこそ知恵者が入れ知恵したらその通りに動くのかもしれない。

 

「南蛮も一枚岩ではないって事か。これは不味いですね。早く桃香様に報告しないといけません」

「そんな事は分かっておる焔耶。だがこ奴らの包囲網を抜け出さんと報告も何も出来んぞ」

「くそっ。ここまで奴らの動きが…うわっ!?」

「にゃにゃー。踏・南ばんっ。にゃにゃにゃ!!」

 

南蛮の者の高くからの連続踏みつけ攻撃。

 

「にゃにゃっ。廻・南ばんっ。にゃにゃにゃー!!」

 

身体を丸め、一気に回転しながら突撃してくる。

 

「いかん焔耶、避けろ」

「これは避けられ…」

「「そうはさせるかー!!」」

 

茂みより飛び出した電々と雷々が南蛮の者たちに突撃して、攻撃を逸らす。

 

「大丈夫、焔耶?」

「電々と雷々か。助かった」

「「にゃにゃにゃーー!!」

 

攻撃を逸らしただけでまだ南蛮の者たちを無力化したわけではない。彼女たちは既にまた木々を跳び回って桔梗たちの周囲を包囲する。

 

「ふん、ただ跳び回っているだけか。なら私の鞭で全員叩き落してやる」

「「「にゃにゃにゃ!?」」」

 

蛇のように動き、蛇以上に素早く動く鞭が木々を飛び跳ねる南蛮の者たちは叩き落した。

 

「蛮族ども、私の鞭の餌食になれ!!」

「ほう…傾め、中々の腕だな。鞭をああも自在に操るとは」

 

傾の鞭捌きは達人並み。見切れる者はそうそういない。

 

「御無事ですか」

「秦良玉か」

 

秦良玉たちは桃香により桔梗たちを援護に寄越した部隊だ。そして桃香側の状況を説明される。

 

「南蛮が内部分裂してるだと?」

「恐らくは」

「なるほど。なら合点はいく」

 

桔梗たちを襲った南蛮の者は孟獲の部下でなく、分裂した派閥の方というわけだ。そして元々、予想していた『知恵者』がいるという事である。

何故、南蛮が内部分裂しているかは分からない。しかし厄介な事に巻き込まれた事は確かである。

 

「何故、朱里殿を誘拐したか分かりません。桃香殿たちは誘拐した南蛮たちを追いかけてます」

「孟獲の方は?」

「孟獲もまた追いかけていきました」

 

ジャングル内で耳を澄ますと周囲から雄叫びや悲鳴が聞こえてきた。もしかしなくても南蛮勢力が内部で争っている。

 

「調査してたけど南蛮で反乱が起きてたなんて」

「調査不足だな楼杏。洛陽にいた時より腕が鈍ったのではないか?」

「傾…ええ、そうね。否定はしないわ」

 

南蛮の初接触からして油断していたのは確かだ。相手はただの子供程度と思っていたからこそのまさかの事実。

 

「まあいい。取り合えずこいつらを縛り上げて仲間を誘き出すぞ」

「早く朱里ちゃんを助けないと。秦良玉さんも…矢が!?」

 

雷々が秦良玉の方に顔を向けると、彼女の背後で誰かが弓矢を構えており、いまこの瞬間にて矢が放たれた。

 

「はい。気付いています」

 

放たれた矢はトネリコの槍によって弾かれる。

 

「何者か!!」

 

茂みから現れるは生気の無い顔をし、額には謎の印が刻まれた謎の兵士であった。

すぐさま俵藤太たちが接触した謎の兵士。泥人間だと理解できた。

 

「こ奴らあの時の」

「わわ、また現れた~!?」

 

桔梗たちの反応であるように間違いなく泥人間の兵士だ。

 

「あの時より数が多いよ~!?」

「ふん、こんな木偶の棒ども大将軍である余が叩き潰してくれる」

「元だね」

「ええい、茶々を入れるな!!」

 

傾が電々にツッコミを入れている隙に秦良玉が一番槍で駆け抜ける。

 

「盗賊打破(B)開放!!」

 

スキルを開放し、泥人間の兵士を倒していく。トネリコの槍を振るう姿は一騎当千である。

 

「やるな秦良玉め。儂も負けてられん」

 

ガチャリと豪天砲に弾を装填。

 

「くらぇい!!」

 

発射された弾は泥人間の兵士たちに命中し、吹き飛ぶ。ある限り弾を装填し発射を繰り返す。しかし泥人間の兵士は数が多い。

 

「まだおるか。ならば豪天砲の弾を全て使い切ってやるわっ」

 

泥人間の兵士は南蛮の者たちを倒した後に襲い掛かって来た。タイミング的に助けに来たようにも見える。

可能性として泥人間の兵士は南蛮と繋がっていると考えられる。最初は南蛮と関係無いと考えていたが再認識が必要となってくる。そう思っていた桔梗だが次の光景で混乱してしまう。

 

「桔梗さんあれを!!」

「なぬ!?」

 

先ほど倒した南蛮の者たちが起きだして泥人間の兵士と戦っているのだ。

 

「やはり南蛮と泥人間の兵士は無関係なのか?」

「まだ分からない。先ほどの秦良玉さんの話だと南蛮は内部分裂を起こしてるらしいわ。ならこっちの南蛮でなくもう片方の南蛮と繋がってるかもしれない」

「ならどっちにしろこ奴らを倒してから問いたださねばな」

 

今は考えるより先に泥人間の兵士を倒すことが先決だ。今この瞬間だけは南蛮と桔梗たちの敵は泥人間の兵士である。

 

「さっきまで敵対した奴と一緒に泥人間の兵士と戦うってのは変な感じだな」

「焔耶殿。そんな事を言ったら蜀という国は敵対した者たちがたくさん集まってますよ」

 

敵対というか様々な陣営やら、死んだ事になっているやら何やら。

 

「はは、それもそうだな秦良玉」

 

焔耶は秦良玉と共に泥人間の兵士を打ち倒していく。

 

「数が多くとも私の敵ではな…くお!?」

 

数が多い泥人間の兵士だが焔耶たちの敵ではない。このまま全滅させてやろうと思っていた焔耶であったが動きを止めて緊急回避を行う。回避した理由は濃厚な殺気を感じ取ったからだ。

元々いた場所には誰かが剣を振り下ろしていた。

 

「何者…お前はっ」

「ちっ、避けられたか」

 

焔耶だけでなく、秦良玉たちの視線もその『誰か』に向けられていた。

その誰かはボーイッシュな外見と原始的な狩猟民族の服装が特徴の女性であった。彼女を見て何者かと気付いたのは桔梗と焔耶の2人だけである。

 

「貴様は…ゴツコツコツ!!」

「兀突骨だっ。間違えるな!!」

 

兀突骨。

三国志演義に登場する南蛮にある烏戈国の王と言われている存在だ。

 

(兀突骨…確か架空の人物と云われていますがこの世界では実在する人なのですね)

 

秦良玉は泥人間の兵士を倒しながら兀突骨を観察。そして焔耶に尋ねる。

 

「知り合いですか」

「………まあな」

 

兀突骨は焔耶に殺気を向けたままであったが周囲を見渡す。全員に敵意を向けているが強い殺気を向けたのは焔耶と桔梗。しかし焔耶への殺気が一番濃い。

 

「いずれ殺しに行くつもりだったがそっちからこっちに来るなんてな。魏延…お前を殺す。姉ちゃんの仇だ!!」

 

脚力を爆発させ、焔耶に斬りかかる兀突骨。振り下げられた剣を防ぐも突進力によって圧されてしまう。

 

「姉ちゃんの仇を取る。絶対に殺すぞ魏延!!」

「くっ!?」

 

怒りの一撃という名の斬撃。重く、手を緩めれば頭から一刀両断されそう勢いである。

 

「死ねぇええええええええ!!」

(なんだこの凄味は!?)

 

絶対に殺すという怒気と殺気と凄味。この3つが合わさり焔耶を精神的にも圧している。

 

「ま、負けるか!!」

 

押し返そうとするも兀突骨は押し負けない。

 

「焔耶!!」

「焔耶殿!!」

 

桔梗と秦良玉が助太刀しようと動こうとするが泥人間の兵士が邪魔をする。

 

「僵巴兵ども、さっさとそいつらを仕留めろ!!」

「きょうしへい?」

 

僵巴兵。それが泥人間の兵士の名称。

この事から完全に兀突骨は泥人間の兵士について何かを知っている。

 

「はんっ、そうか。お前がこの泥人間の兵士の首魁か!!」

「アタイはこいつらを貸してもらってるだけだ」

「貸してもらってるだと?」

「お前が知る必要はない。お前は死ね。そして次は厳顔だ!!」

 

ギリギリと剣が鈍砕骨を押して焔耶をそのまま潰そうとする勢いだ。

 

「焔耶さん今助太刀します!!」

 

僵巴兵を斬り進み、楼杏が兀突骨に剣を振り下ろす。

 

「そんな剣がアタイに効くか!!」

 

兀突骨は何も武装していない腕で剣を受けた。

 

「なっ…剣が受け止められた!?」

 

振り下げられた剣は兀突骨の腕を斬り落とさず、腕で受け止められており、斬り傷1つもない。

 

「そ、その腕は」

 

何故、腕が切断されなかったのか。驚きながらも腕を見ると皮膚が鱗で覆われていた。

 

「アタイの鱗は硬い。剣で斬れるものか!!」

 

焔耶と楼杏を蹴り飛ばし、間合いを取る。

 

「アタイの守りの要だ。最初はこんな鱗は嫌だったがあの方のお陰で剣まで防げるまでに昇華したんだ!!」

(あの方?)

 

兀突骨の背後に誰かが暗躍している。それは恐らく僵巴兵を作り出した術者の可能性が見えてきた。

 

「桔梗さん。あの人誰なの?」

 

電々は兀突骨の正体を聞こうとするが桔梗も詳しくは知らないのだ。

 

「奴はゴツトツトツ…」

「兀突骨だ!!」

「兀突骨だ。昔、儂が主催した武術大会には奴の姉が出場し、決勝で焔耶と戦ったのだ」

 

戦いは焔耶の勝利に終わった。互いに実力者であり、加減も出来なかったのだ。

焔耶は決め手の一撃を兀突骨の姉に食らわした結果、勝利できたのだが思いのほか深い一撃であったと桔梗は語る。

 

「そうだ。姉ちゃんは焔耶に負けた…その後に姉ちゃんは熱を出して倒れたんだ。そして病に罹って…罹って…」

 

ギリリと歯を食いしばる兀突骨。「姉ちゃんの仇」という言葉と今の彼女の感情から兀突骨の姉はもうこの世にはいない。

 

「姉ちゃんはただ負けたんじゃない。そいつに毒でも何でも使われて死んだんだ!!」

「何を言うか!!」

 

桔梗は怒鳴った。

 

「焔耶が毒を使うだと…そんなわけがあるか!!」

 

桔梗が主催した武術大会。正々堂々の試合に毒を使わせるはずがない。

 

「お前らは仲間みたいだからな。不正なんていくらでも誤魔化せるだろ」

「不正をするか!!」

「何とでも言えるだろうが!!」

 

怒りが殺気が周囲に広がる。

 

「姉ちゃんはアタイの唯一の家族だったんだ。アタイの家族を奪ったお前らは許さない!!」

「勝手な事を!!」

 

兀突骨の言い分を聞いて全くの納得も出来ない。彼女の姉が亡くなったのは同情するが死んだ原因にさせられるのはお門違いだ。

 

「アタイは姉ちゃんを治す為に色んな薬草を探して使ったんだ。でも治らなかった。なら魏延が強力な毒を使ったんだ!!」

「だからそんな事は」

「証拠は無いだろ!!」

 

ギロリと焔耶を睨む兀突骨。それに対して焔耶は黙ったままだ。

 

「焔耶も黙ってないで何か言え」

「……」

 

桔梗が何か言い返せと言っても焔耶は何も言い返さない。

 

「おい焔耶…まさか」

「桔梗様。今のこいつに何を言っても無駄です。ならさっさとぶちのめすしかないですよ」

「はっ、言い返さないって事はやっぱ毒を使ったんだな。この卑怯者め。姉ちゃんの仇は討つ!!」

 

剣の柄を力強く握り、怒りの気が発せられる。

 

「死ね魏延!!」

「撃ち返す!!」

 

斬る為に飛び掛かる兀突骨。撃ち返すために構える魏延。何故か間に入る南蛮の者。

 

「「え?」」

「うにゃああああああああああああ!!」

 

爆発した。

 

 

837

 

 

ある場所で爆発した。爆発音はジャングルに響き、様々な者の耳に響く。

それは爆発させるように教え込んだ者の耳にも。

 

「おや、自爆しましたか。教え込んだ甲斐があったものです」

 

自爆とは爆発。爆発とは高火力の一撃。相手の懐に入り込んで自爆すれば一気に大ダメージを与えられる。

1人の犠牲で多くの敵を倒せるという画期的で恐ろしい戦法である。

 

「ふふ…やはり自爆しかありますまい」

 

謎の軍師は知的で冷徹である。自爆を教えたと言うが非道だからというわけではなく、効率的に考えたもの。そして教え込まれた者は南蛮の戦士だ。

戦士であるならば謎の軍師は勝つ必勝法を教え込んだだけである。愉悦のためではなく、勝つ為に。

 

「彼女たちは幼く見えますが立派な戦士。本懐を遂げられ本望でしょう」

 

恐らく蜀と孟獲サイドの者たちに大ダメージを与えたと予想する謎の軍師。しかしこれで終わりではない。

 

「これで蜀が退いてくれると楽ですが無理でしょうな。そして孟獲も…いえ、後ろにいる者も退かないでしょう」

 

謎の軍師にとって倒すべき敵は蜀でも孟獲でもない。本当の敵は泥人間の兵士の術者だ。

蜀と孟獲を相手にしているのは『せっかくだから』というのと『孟獲の後ろにいる者』を炙り出すためだ。

 

「名は影姫か。偽名でしょうね」

 

謎の軍師の後ろにいるのは縄でグルグル巻きにされた南蛮の者。彼女たちは孟獲派閥の者たち。

 

「泥の人間ですか……あの女神でもあるまいし」

 

ガサガサと茂みから誰かを抱えた南蛮の者たちが現れる。

 

「軍師さまー」

「ショクの軍師つかまえたにゃー」

「にゃー」

 

献上品を収める様に蜀の軍師である朱里を謎の軍師の足元に置く。

 

「しょかちゅこーめーって言ってたにゃ」

「こーめー」

「ほう。この娘が諸葛孔明ですか」

 

謎の軍師は南蛮の者たちに自家製ジャーキーをご褒美に渡す。

 

「「「かじかじかじかじ」」」

 

南蛮の者たちにジャーキーを齧る。

それを余所に軍師は朱里の様子を確認するが気絶しているので意識はない。

 

「此方の世界の孔明とも戦ってみたいですね。しかし孔明と言えど、意識を失っている女性に手をかけるのは抵抗がありますね」

 

これが本当に容赦のない戦であれば即座に首を切り落としている。

 

「水でもぶっかけますか」

「容赦ありませんね。ヒヒン」

「馬。帰ってましたか」

 

カポカポと歩いてくるUMA(馬)。

 

「この世界の蜀の者たちはどうですか?」

「劉備に関羽、張飛、馬岱と戦えました。いえ、実際には劉備とは戦ってませんけど」

「ほう」

「よく分からない人間の男もいましたね」

「ほう?」

「此方の世界の呂布とも戦いました。あと此方の世界の貴方もいましたよ。小さい子でした」

「ほお」

 

この異世界はまだ分からない事が多いが三国志と三国志演義を元にした世界だという事は理解している。

 

「此方の私と戦うのも面白そうですね。そして無敵将軍とも」

「きっとギャップに驚きますよ?」

 

UMA(馬)はこの世界の呂布と陳宮に出会って多少は驚いた。尤も相手は逆にもっと驚いていた。

強さも本物であった。関羽も張飛も馬岱も強かった。特に呂布が一番強かった。

 

「この世界の蜀はなかなか侮れないですよ」

「面白くなってきましたね。あ、ジャーキー食べ終わったら水汲んできてください」

「にゃー」

「其方の2人は仲間を揃えて自爆した仲間を回収しに行きなさい」

「「にゃー」

 

水がたっぷり入った桶が到着。

 

「ぶっかけてください」

「にゃー」

 

朱里の顔に冷たい水がぶっかけられる。

 

「はわわーーーー!?」

「おはようございます」

「だ、誰で」

「ヒヒン。おはようございます」

「馬が喋っぇーーー!?」

 

また気絶する朱里。

 

「何でまた気絶させるんですか馬」

「挨拶しただけです」

 

コレを7回繰り返した。おかげで朱里は水浸し。




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新も2週間以内を予定しております。


835
UMAと恋姫勢との戦い。
恋姫の中でトップクラスの恋でもUMAの存在に混乱するそうです。

馬が肝炎放射って…公式なんですよね。
公式でも愛されている気がします。

最後に徴姉妹が登場!!
どんどんと乱戦になってきそうです。
なんとなくですけど徴側と桃香って仲良くなれそうです。


836
南蛮たちの技。
廻・南ばんっ 廻・南ばんっ
これは天下統一伝のミケやトラたちの技です。

兀突骨。
アニメ版の恋姫で登場したキャラですね。
この外史での彼女は原作よりも焔耶に対して恨みは強いです。
そしてオリジナル設定も組み込んでおり、強化されてます。
鱗…これは演義の設定ですね。

南蛮の者が自爆。これを教えたというか、そういう風に改造した者は…
(南蛮の者たちにも魔術回路を持っている設定です)


837
南蛮の者たちに自爆を教えたというか改造した本人登場。
まだ名前は軍師ですけど正体はまる分かりですね。

本文にも書いたように非道だかた自爆を教えたわけではありません。
敵を倒すために教えたのです。
やはり自爆は強い…!!


軍師は色々と考えて動いております。既に今回の戦いで倒すべき敵は見つけております。

孔明である朱里もUMAには混乱します。


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