Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
FGOでは1月下旬に2部7章後半が配信されますね。
徐々に1月下旬に近づいております。楽しみです!!

ニトクリス・オルタ。すぐにガチャりました。彼女がどのような活躍をするか気になります。
う~ん…毎回ですけど石がすぐ溶ける。


恋姫†英雄譚5
OPにが配信されましたね。此方も気になります。
どのような物語になるのかな。


南蛮大乱戦-一方その頃④-

838

 

 

龍の肝を求めて華佗たちは南蛮の森に赴いた。その森では現地民である孟獲と接触し、何だかんだで戦闘になるかと予想されたが華佗の言葉によって場は治まったのだ。

 

「怪我してるじゃないか。俺は医者だ診せてくれないか」

「んにゃ?」

 

華佗の治療開始。

 

「傷だらけじゃないか。何があったんだ?」

「うんにゃ…じつはショクってやつらとうらぎりとたたかってたにゃ」

「たたかってたー」

「たー」

 

気が付けば孟獲の部下たちであるミケ、トラ、シャムも一緒に治療を受けていた。

 

「最初は一触即発だったと思ったけど戦いにならずにすんだ」

「なっても簡単に倒せたと思うわよ?」

 

孟獲たちを見て瞬殺出来るんじゃないかと思って雪蓮。

 

「ジャガーマンの系譜かもしれない…油断してると痛い目にあうぞ」

 

高難易度クエスト『おいでよジャガーの国』を思い出す。

 

「バーサーカーで攻めるしかないんだ」

「ジャガーマンってほんと誰よ」

 

ジャガーマン。説明するには時間が足りない。

 

「お姉ちゃん的には可愛いと思うな~」

 

天和は猫のようにミケたちの喉をコチョコチョするとゴロゴロと鳴いてくれる。地和と人和もミケたちの喉をくすぐる。

 

「ほっほっほ。確かに可愛いのう。ほれ、甘い飴玉をやろう」

 

飴玉を配る張角。その姿は近所の子供たちに菓子を配るお爺ちゃんである。李書文(殺)も飴玉を配っていた。

 

「これが南蛮の者たちねぇ。この世界だとこんな可愛いもんなんだな」

「見た目は完全に子供だな」

 

見た目可愛い南蛮たちもただの子供ではない。彼女たちもまた戦士である。

 

「なるほど。戦時中だったか」

 

彼女たちは今まさに戦の最中だったようである。

「ショク」という言葉は蜀の事かと思ったが分からない。もしも蜀と南蛮との戦いであったとして関わるべきではない。

 

「実は薬の材料を探しているんだ」

 

燕青に背負われている張勲を見る。今の彼女は第五特異点イ・プルーリバス・ウナムでナイチンゲールがラーマを背負ったラーマバッグのようだ。

さしずめ張勲バッグ。

 

「薬の材料は龍の肝。龍を探してるんだ。何か知らないか孟獲」

「しってるにゃあ」

 

まさかの言葉に全員が孟獲に視線が集中する。

 

「この先のお山のてっぺんに龍が住んでると伝えられておるのにゃ」

「られておる」

「られれおる」

「られれろるー」

 

龍探しは困難を極めるかと思ったが運が良いのか龍の住処の情報を手に入れた。

 

「そうか…ありがとう孟獲!!」

「なに、みぃたちの傷を治してくれたお礼なのにゃ。気にするでにゃいにゃ」

「けど、ほんとうにいくのかにょ。お山はすっごくあぶないから。このあたりの人はだれも近よらないにょ」

「そうにゃ。トラたちもいったことないにゃー」

 

龍の住処に近づかない。龍は天災であり、普通は近づいてはならないのが当たり前である。

 

「な、なんじゃと…それはその」

 

袁術の顔が青くなるが雪蓮の一言に覚悟を決める。

 

「張勲を助けるんじゃなかったの?」

「そ、それはそうじゃが」

 

覚悟を決めても怖いものは怖い。本来、龍に人間は敵わない。簡単に食われてしまうのだから。

 

「のこるー?」

「うむ。残るなら、みぃたちのところにおってもよいぞ。華佗たちはおきゃくじんにゃあ」

 

孟獲にとって華佗たちは自分たちを治療してくれた恩人。余所者だろうとも助けてくれた恩は返すのが孟獲たちである。

 

「そうだな。流石に龍退治ともなると…袁術、もしも不安なら」

「い、いや。妾は七乃のために頑張るのじゃ。妾もついていくぞ。ついていくったら行くのじゃ」

「ふぅん。けど足手まといにはならないでよ?」

「わかっておるのじゃ。お主こそ足を引っ張るではないぞ孫策」

「ふふ。言うようになったじゃない」

 

憎たらしい袁術だが仲間のため、部下の為に覚悟を決めて危険な場所に向かう気概を少しだけ認める雪蓮。

 

「孟獲、そんなわけだから」

「わかったにゃ。なら、これ以上はみぃたちも止めないにゃ。気をつけていってくるといいにゃ」

「きをつけてにょ」

「きをつけるにゃ」

「おきおつけてー」

 

孟獲たちは手を振りながら華佗達を見送った。

 

「いってしまったにゃ」

「ほえー」

「どうしたにょシャム」

「んー…なんだか忘れてるー」

「なにを忘れてるにゃ」

「んんんー」

 

考え込む孟獲。そして頭に電球マークが付いた。

 

「そうだにゃ。あの山に住む龍はヴリトラという名まえにゃ!!」

「ヴりとらー?」

「ねーねー大王しゃまー。ヴリトラってやっちゅけられるのですかー」

 

ミケが孟獲にヴリトラについて質問する。

 

「わからんにゃ。にゃけどヴリトラは木、石、鉄、乾いたもの、湿ったもののいじゅれによっても傷つかないって長老から聞いたのにゃ」

「おおー」

「ほえー」

 

とてつもなく強い龍だとだけ理解できたミケたち。

 

「ねえねえだいおー」

「なんにゃ?」

「それ、かだに教えたにゃ?」

「教えてないにゃ」

 

何故なら今思い出したばかりなのだから。

 

「それ、かてるにょ?」

「そういえば昼も夜も攻撃を受けても傷ちゅかぬとも聞いたのにゃ」

 

ほぼ無敵の龍であるヴリトラ。

 

「「「………」」」

 

無言になる孟獲たち。

 

「それよりも休憩したのにゃから裏切りものたちをオシオキするにゃ!!」

「そうだったにゃ!!」

「オシオキー!!」

「キー」

 

孟獲たちは華佗の心配をしている暇ではない。何故なら南蛮も今は色々と大変なのだから。

 

 

839

 

 

龍が住むと言われる険しい山にて。

 

「結構険しいね」

 

足元は悪く、うっすら霧が掛かって向こうだって見通せない。今まで登った山の中でも上位に入り込むくらい歩きにくい。

 

「伊達に龍が住む山じゃないという事だろう」

「だらしないぞ立香」

「だらしな…これでももっと険しい山を登った事あるんだけどな」

「卑弥呼に肩車してもらってるあんたが言っても説得力ないわよ袁術」

 

袁術は卑弥呼に肩車中。実際のところ袁術のような小柄の者にこの山は厳しいだろう。

 

「ふふん。妾は小さいからこれでよいのじゃ。のう卑弥呼」

「うむ。峻険な山をこやつの足というのも厳しかろう」

 

正直な所、薄着過ぎる卑弥呼と貂蝉も大変なはずなのだが全然平気そうに見える。やはり鍛え上げられた筋肉が全てを解決しているのだ。

 

「しかし危なくなったら離れておるのだぞ?」

「分かったのじゃ」

(ふぉぉぉ。こうしておると確かに袁術が私とだぁりんの子供のように思えてくる…これはたまらん…たまらんぞおお」)

 

貂蝉が袁術を可愛がる気持ちが理解できる。本当にいずれは自分の愛の結晶を育てたいという父性が溢れてくる。

 

「何だかものすごい邪念を感じるんだけど」

「気のせいだよ地和」

 

邪念でなく純粋な気持ちである。

 

「卑弥呼。疲れたらいつでも袁術ちゃん交代してあげるからね」

「ははは。このくらい肩に鳥の羽根が乗っておるほどにも感じんわ」

「うむ。良い眺めじゃぞ卑弥呼」

 

険しい山登りだが雰囲気的にピクニックである。

 

「まったく呑気なものね」

「とはいえ、もうすぐ山頂か」

 

何だかんだで登山は順調であった。険しいというだけで特に事故も何も起きなかったのだ。

無事に山頂まで登れるのは良かったが油断はしてはいけない。山の天気は変わりやすく危険だ。だからこそ龍の仕業と言われているくらいだ。

 

「立香つかれた~…おぶって~」

 

天和が背中ら枝垂れかかる。

 

「こらこら危ないから」

 

足元が悪いのだからちょっとの事で転倒してもおかしくない。

 

「もうすぐ山頂だから頑張って」

「頑張ったらご褒美がほしい~」

「あら、それなら私も欲しいわね」

「雪蓮まで」

 

登山したご褒美は登り切ったという達成感である。

何だかんだで「疲れた」とか「きつい」とか言いながら山頂に到着。

本当は休憩したいが山頂には龍がいると言われている。すぐさま周囲を確認する。

 

「龍…あ、あれは」

「おお、あそこじゃ。あそこを見よ!!」

 

藤丸立香と袁術は同時に件の龍を発見した。

 

「あれが龍!?」

「驚いている暇はないわよ」

 

鋭い牙と爪。煌めく眼光。堅そうな鱗に長い胴体。圧倒的な威圧感。まさに巨大な龍であった。

 

「辺りに干ばつを起こす悪龍だから倒しても大丈夫って孟獲ちゃんは言ってたけど…本当に倒せるかしら?」

(干ばつを起こす龍か…)

 

藤丸立香の記憶で干ばつを起こす悪龍と言えば『彼女』を思い出す。

 

(ヴリトラ)

 

もしも目の前の龍もヴリトラならば目的もカルデアのヴリトラと同じなのかどうか気になるものだ。

 

「ふ、臆病風に吹かれたか貂蝉」

「まさか、私の愛の前に敵はいないわよ」

「袁術、ここは危ないから離れておれ」

「天和たちも後ろの岩陰に隠れてるんだ。張勲を頼む」

「任せて。立香たちも気を付けなさいよ」

 

地和と人和は燕青から張勲を受け取り、後ろの岩陰に隠れる。

張勲の病魔を治す為に龍の肝が必要だ。龍には申し訳ないが彼女を助ける為に戦わせてもらう。

 

「素材集めでワイバーンやドラゴンといくらでも戦ってきたんだ。いくぞ!!」

「でも、あの龍は強いぞ。気を付けろマスター」

「分かってる荊軻。油断はしない」

 

いざ龍退治をしようと身構えた瞬間に雪蓮の視界に2人の男女を捉える。

 

「ちょっと待って、あの龍の様子…誰か先客がいるみたいじゃない?」

「先客か。誰か戦ってるのか?」

 

龍は藤丸立香たちを捉えていない。見ているのは龍の周囲を動き回っている男女2人。

様子からして龍と戦っているようだ。しかも武器を手にしておらず、素手で戦っている。龍に対して素手で戦うなど命知らずにもほどがある。

 

「あっ!?」

 

女性の方が龍に弾き飛ばされた。飛ばされた方向は藤丸立香たちの方向。

凄い勢いで飛ばされて地面が抉れ、砂煙が舞う。

 

「チッ…やりやがったなあの龍め!!」

 

悪態を吐いている事から無事ではありそうだ。声も大きく元気であった。

 

「ちょっと何なのよもう」

 

いきなり飛ばされて来た女性。もしもぶつかっていたら大事故だったはずだ。

 

「で、誰よこんなところで龍と戦っている物好…き……は」

 

砂煙が晴れてくると龍に弾き飛ばされた女性の姿が露わになってくる。

雪蓮と同じ特徴的な桜色の髪。青い瞳。額の花鈿。モデル顔負けのプロポーション。そして荒々しい覇気。

忘れるわけもない。忘れるはずがない。雪蓮にとって目指していた尊敬する人物だ。

 

「か…あ…さま」

「ん?」

 

雪蓮の目の前にいるのは死んだはずの母である炎蓮。炎蓮も雪蓮の顔を見た。

 

「か、母様?」

「お前…雪蓮か?」

 

雪蓮は内心混乱した。死んだはずの母親が目の前にいるのだから。

幻覚でもなく、偽物でもない。雪蓮の本能が目の前にいる女性が己の母親だと認めていた。

死んだはずの母親。もう会えないと思っていた母親。会いたかった母親。炎蓮その人が目の前にいる。

何を話せばいいか分からなくなる。視界がぼやけ、涙が出そうになってくる。

 

「雪れ……………立香なんでこんなとこいんだよ」

 

炎蓮の視線は雪蓮から藤丸立香に移る。

 

「えーっと…薬の材料集め」

 

藤丸立香としては「ここでオレに話を振るのか」と心の中でツッコミを入れた。

ここは母親と娘の感動の再会ではないのかと思ったが場所が場所だけにそんな事は言っていられない。近くには強大な悪龍がいるのだから。

 

「薬の材料だぁ?」

「龍の肝が薬の材料に必要なんだ」

「は?」

 

炎蓮は周囲を見ると華佗に燕青たちがいる。知らない爺さんがいる。岩陰の方に天和たちや袁術たちがいる。そしてもう一度、雪蓮を見る。

 

「何で袁術と雪蓮が一緒にいんだ?」

「色々とあるんですよ。でも説明している暇はないようだ」

 

藤丸立香は悪龍を見る。炎蓮の他にもう1人が戦っており、その1人が藤丸立香の所に跳んでくる。

 

「書文先生だったんだ」

「おお、マスターか。実は炎蓮と龍狩りをしていた」

 

見れば分かるが何故、龍狩りをしているのかが分からない。

 

「炎蓮の付き添いだ」

「炎蓮さんの?」

「ただ暴れたいから龍に喧嘩を売ったそうだ」

「バーサーカー」

「お前まで言うか」

 

炎蓮はやはりバーサーカークラスの適正がある。

 

「血気盛んだな」

「む。老いた儂もおったか」

「全員おる」

「張角もおるとはな」

 

色々と説明をお互いに知りたいが今は置いておく。すべき事は悪龍退治である。

 

「龍の肝が必要なんだろ。なら龍退治を手伝え」

「言われなくても」

 

藤丸立香は魔術礼装を展開する。

 

「おら、雪蓮も龍退治手伝え」

 

炎蓮は何事も無かったかのように雪蓮たちに龍退治の応援を要請した。

 

「龍退治手伝え…じゃないわよ!!」

「あん?」

「あんじゃないわよ。何で母様がこんな所に…だって死んだはずじゃ。いえ、生きてたの!?」

 

雪蓮はまだ混乱しているが思いつく事が口走った。

 

「そ、そそそそ孫堅がなぜ生きておるのじゃ。とうの昔に死んだはずじゃろう!?」

 

雪蓮と袁術は炎蓮が生きている事に驚愕している。完全に死んだ事になっているのに目の前に生きていれば当たり前の反応である。

袁術は幽霊か鬼でも見ているように驚いている。実際のところ炎蓮は鬼の力を宿しているが。

 

「あの程度で死ぬか馬鹿が。それよりその台詞、そっくり貴様らに返すぞ」

「あの程度って…どう見ても瀕死だったでしょうがっ。それに自分から死ぬって言ってたじゃない!!」

「言ったか?」

「言ってた!!」

 

江東の河に船と沈む炎蓮を今でも忘れない雪蓮。あれで生きていたなんてあり得るはずがない。

ギャイギャイと炎蓮に対して突っかかる雪蓮を藤丸立香は見て「そりゃそんな反応になるな」と呟く。

 

「オレとしてはどうして貴様らが雁首揃えてこんな所にいやがるほうが気になるがな。我が孫呉が南蛮制圧まで…いや、そのクソガキが一緒つーことは孫一族は袁家の言いなりにでもなったか?」

「孫呉はもう袁術から独立して呉という国まで建国したわよ!!」

 

雪蓮が袁術と一緒にいるのも説明が必要だが何度も言うようにそれどころではない。目の前に悪龍がいると何度も言っている。

 

「それより来るぞ!!」

 

悪龍が咆哮する。龍の威圧感が重くのしかかる。

 

「積もる話は後ね。母様、ここは協力して」

「ふん。オレの邪魔をしねえなら、勝手にしろ」

「はいはい。そうするわよ」

 

剣を抜く雪蓮。その横には炎蓮。

このような状況だが雪蓮は嬉しかった。つい口が吊り上がる。

 

「じゃあ今度こそ行くぞ」

 

魔術礼装起動。全体強化を発動し、全員の一時的な肉体強化を行う。

相手は悪龍であり、強大な存在だ。簡単に倒せると思ってはいけない。

 

「でええええい!!」

 

一番に飛び出したのは華佗だ。気合の入った攻撃を繰り出すが弾き返される。

 

「く、何て堅い鱗だ。この硬さ…曹操に憑いていた病魔以上か!?」

「医者に戦わせてどーするってんだって話だ」

「ふっ、それもそうだな」

 

燕青と李書文(殺)も飛び出し、蹴りや拳を打ち込む。しかし華佗の言う通り悪龍の鱗は硬く、効いていない。

 

「撃ち込みがいがあるねぇ!!」

「无二打の儂だが何度も拳を撃ち込むのも悪くない」

「私たちも負けてられないわよん卑弥呼」

「うむ。鍛えられし我が肉体の美しさと逞しさと力強さを魅せる時!!」

 

貂蝉と卑弥呼も悪龍に向けて筋肉を打ち込む。

 

「ちょっと本当に鱗が固すぎない!?」

「おい雪蓮よ南海覇王をよこせ。そんな鈍らじゃあのクソ龍をぶち殺せねえ!!」

「これだって陣を出る時に持ってきた装飾が似てるだけの偽物。本物は今ごろ蓮華が持ってるってば」

 

雪蓮は剣を連続で悪龍に斬り付けるが文字通り歯が立たない。

 

「てか、何で母様は拳で戦ってんのよ。剣とか持ってないわけ?」

「あったが折れた。それに何故かあのクソ龍は剣や槍よりも拳の方がまだ効いてるんだよ」

 

よく見ると李書文(槍)も槍を持っておらず拳で戦っている。

「ふつーは拳よりも剣とか槍が効くでしょ?」

「そうだが何故か分からんが拳や蹴りが効いてる気がする。南海覇王なら何とかなると思ったが…にしても、あの蓮華に南海覇王とはな」

 

急に感慨深くなる炎蓮。王の器があると思っていた蓮華が本当に王となり、南海覇王を受け継いだのだ。

 

「そんな話をしておる場合ではないぞ」

 

荊軻が悪龍に攻撃してから戻って、手に持つ匕首を確認する。

切れ味は申し分ないはずだが悪龍に切れた様子はない。

 

「硬すぎるっていうわけではないな。何か概念的な力を感じる」

「概念的な力ってどういう事なんだ荊軻?」

「マスター、アレは武器の類が効かないといったそういうものだ。似たようなのがカルデアにもいるだろう?」

「……え、ヴリトラ?」

 

蛇竜ヴリトラ。

乾いた物、湿った物、岩、木、武器、昼も夜では殺すことが出来ないなんて言われている。

ヴリトラの恐ろしさよりもクリスマスを思い出す藤丸立香。

 

「クリスマス…ボックスガチャ。回さなきゃ」

「マスター。ここのヴリトラはきっとブラックプレゼントをくれないぞ」

「カルデアのヴリトラに会いたい。彼女は障害をめっちゃ繰り出してくるけど」

 

何だかんだで仲良くなってる藤丸立香とヴリトラ。

ヴリトラ曰く藤丸立香の生き様は好みドストライク。きっと『失意の庭』を足掻き、突破した時の藤丸立香に対しては大興奮間違いなし。

 

「李書文(槍)はもしかしてヴリトラだと分かって槍を使ってないのか」

 

スタっと着地して一旦、戻ってくる李書文(槍)。

 

「いや、あの龍がヴリトラかどうか分からん。だが似たような龍とは思ったぞ。だから槍ではなく拳で戦っておる」

 

また跳躍して悪龍に拳を叩きこむ李書文(槍)。

 

「あの悪龍はヴリトラ(仮)としよう」

「ちょっと立香。なんか良くない事が聞こえてきたんだけど…武器とか昼や夜では殺せないって」

「うん」

「そんなしっかりとした肯定は聞きたくなかったわね」

 

だからこそ炎蓮たちは素手で戦っている。武器が効かないのであれば鍛え上げた己の肉体を武器にするしかない。

 

「うっふううん!!」

「でえええい!!」

「ふん!!」

「あらよっとぉ!!」

「奮破!!」

「覇亜!!」

 

肉体・体術自慢の者たちが怒涛の攻撃を繰り出す。

 

「すごい、あの龍が苦しんでいる…これならイケるかもしれないな!!」

 

華佗の目に火が灯る。強大な悪龍であるが全くもって勝ち目が無いわけではない。

 

「あら。不味そうかと思ってたけど大丈夫そう?」

「無敵のようにも見えるけど勝てる可能性はある」

 

藤丸立香は手をかざして英霊の影を召喚する準備をする。

 

「うふ。今日は本気だから普段よりもツヤツヤテカテカ三割増しよぉん」

「がはははは。悪龍め、受けてみよ。当社比五割増のこのガチガチで、ムチムチの拳!!」

 

貂蝉と卑弥呼の怒涛の攻撃は止まらない。

 

「ヌルい、ヌルいぞおお!!」

「でええええええい。必殺ぅ、テカテカピチピチな貂蝉ちゃん肉体大爆撃ぃぃぃぃぃぃ!!」

 

貂蝉は気を溜めて一気に開放する。

 

「大切なのは保湿加減よん」

「ほう。やっぱやるじゃねえか、あの筋肉ども」

「マジすげぇなぁ」

「呵呵、本気で拳を交えてみたいものだ」

「いやほんと…規格外でしょあの2人。あの2人が敵だったらウチの呉もヤバイかも」

 

雪蓮としては貂蝉と卑弥呼の実力は炎蓮並みじゃないかと思ってる。恐らく自分でも勝つのは厳しいと思ってしまう。

 

「このまま押しきれるか?」

「無理だな。まだ足りねえ」

 

悪龍にダメージは与えているがまだ決め手は足りない。

 

「俺も負けてられないぜ。龍の急所はどこだあああああああ!!」

「華佗ちゃん、そろそろ夜になっちゃうわあん。さっさとカタを付けちゃいましょ」

「うむ。このような地で野宿など、御免被りたいからな」

「あらん、私は立香ちゃんや華佗ちゃんと暖め合って眠れるならそんなにイヤじゃないわよん」

「それはむしろ滾ってくる流れだな!!」

「けど…それもこれも、この戦いに決着を付けてからだ。…見えたっ、あいつの弱点は口か!!」

 

華佗の観察眼により悪龍の弱点を見抜く。

 

「任せてくれ。概念的なもので守られてるならこっちだって概念的なものでぶつけるさ」

 

藤丸立香の横には宙を浮く露出の多き美女がいる。しかしその美女の手足が蒼く燃えていた。

 

(なにアレ…立香が何か妖魔だか何だかを召喚する事ができるって聞いた事あるけど)

 

雪蓮としてはこれが初見である藤丸立香の召喚術だ。

蒼炎の手足を持つ謎の美女の真上には金剛杵(ヴァジュラ)。

 

「ある文献にはヴリトラの口にヴァジュラが撃ち込まれて倒されたとある。カーマ!!」

 

カーマの影はヴァジュラを悪龍の口にぶち込んだ。

別の文献だとヴァジュラも効かなくなっているとあるが目の前の悪龍には効いたようである。

カーマの影は一仕事終えたという感じにけだるそうに藤丸立香の後ろからのしかかっていた。

 

(立香ってもしかして露出の高い女性が好みなのかしら?)

 

ちょっとした誤解を受ける。男として露出のある女性に魅力を感じるのは一般的なものなのであながち間違いではない。

男の性とはそういうものだ。

 

「更に苦しんでるぞ。これはいけるかもしれない!!」

 

戦っている間に時間は経過し、現在は夕方になっている。昼でも夜でもない。

ヴリトラ(仮)を倒せる条件は揃いつつある。

 

「武器も効かぬ。湿ったものや渇いたものも効かぬ。なら雷はどうじゃ?」

 

張角は天候操作の術により悪龍に雷を落とす。

 

「ちと効いたじゃろう?」

 

悪龍の肉体にダメージが溜まってきている。

 

「今なら俺の鍼が効く。道を作ってくれ!!」

「任せな」

燕青、李書文(槍)、李書文(殺)が渾身の一撃を悪龍の顎を下から撃ち抜く。

 

「これなら間違っても食われる事はねえぜ」

「助かる。よし、我が身、我が鍼と一つなり、一鍼同体、全力全快。輝け金鍼…うおおおおおおおおおおおおおお!!」

「貂蝉、だぁりんの必殺の一撃、必ず当てさせるぞ!!」

「わかってるわよぉん。とおおおおおおおおう!!」

「たかがトカゲの分際で…この卑弥呼を舐めるなぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

貂蝉と卑弥呼は悪龍の腕を撃ち抜く。

 

「今よ華佗ちゃん!!」

「我が金鍼に全ての力、賦して相成るこの一撃。もっと、もっとだ、もっと輝けぇええい。賦相成・五斗米道ぉぉぉぉぉ。げ・ん・き・に・なれええええええええええええ!!」

 

華佗の放った黄金の一撃はそのまま巨大な龍に吸い込まれるように放たれた。

 

「え?」

「なに?」

「離れろ2人とも!!」

「彼奴を元気にしてどうするのだ。だぁりん」

「華佗ちゃんのばかぁ!!」

 

華佗は悪龍に鍼を打ち込むのだが倒す為ではなく回復させる為であった。

 

「いや…これは」

「龍が苦しんでるぜ。何でだ?」

「ああ。俺の五斗米道は命の力をより強くする技。それをただでさえ生命力の強い龍に打ち込めば…」

「生命力に身体が耐えきれなくなるってことなのか?」

 

華佗の言っている事は何となく分かる。薬も用量を守らねば毒になるという事かもしれない。

ヴリトラであったとしてもまさか自分の生命力で苦しむなんて伝承や文献でもない。概念的な守りも意味をなさないのだ。

 

「薬も過ぎれば毒となる。強すぎる龍の生命力を更に強化して逆に利用させてもらった」

「なるほど…五斗米道にはこういう使い方もあるのね」

「何かを壊す為に使うのは本意じゃないけどな…だが今の状態であと一撃加えれば!!」

「だけど…あのように暴れている龍に一撃加えるなんて」

 

悪龍は己の生命力が暴走して苦しんでいる。人間で言うワクチンを接種して副反応が酷い状態だ。

もはや悪龍は暴れ龍のような状態だ。

 

「今なら剣も効くかもしれない!!」

「けど、これ以上はどうにもならないわよ。私たちにだってもう剣が…」

「ならこの刀を使ってくれ。兵闘ニ臨ム者ハ皆陣列前ニ在リ…概念礼装『九字兼定』」

 

二本の刀が雪蓮と炎蓮の前に現れる。

 

「この剣…」

「ほう。気が利くじゃねえか!!」

「更に概念礼装『竜種』。そして『プリンス・オブ・スレイヤー』を付与!!」

 

竜相手には竜。そして龍殺しの力があれば鬼に金棒だ。

 

「行くわよ母様。狙うのは皆ががひと当てした所よ!!」

「オレに指図するんじゃねえ。行くぞ雪蓮!!」

 

雪蓮と炎蓮が一気に飛び跳ねる。

彼女たちの一撃を当てる為に荊軻たちは暴れている悪龍を一瞬だけでも止めるために一撃を繰り出す。

 

「今だ。やれ!!」

 

一瞬だけの悪龍に隙が出来る。

 

「雪蓮、炎蓮さん!!」

「これで」

「トドメよ!!」

 

2人の渾身の斬撃が振るわれる。

 

「はああああああああ!!」

「でりゃああああああ!!」

 

悪龍は長い長い断末魔の叫びを山々に響かせて地に墜ちた。

 

「やった」

「やった、やったのじゃ。すごいのじゃ!!」

「やったやったー!!」

「すごーーい!!」

 

悪龍退治これにて閉幕。

 

 

840

 

 

悪龍は倒された。これにて世界は救われた感はあるが本来の目的は張勲の病を治すために龍の肝が必要なのだ。

華佗と貂蝉たちは早速、薬の材料である龍の肝を採り出す作業をしていた。

 

「やはり龍を解体するのは時間がかかるな。しかし早く済ませてしまおう」

 

夕方であればもうすぐ暗くなる。早く龍の肝を回収して山を降りたいのだ。

 

「そうねん。でもほんとに野宿になったら立香ちゃんたちと暖め合いたいわん」

「色々と我慢ができなくなるな」

 

龍を解体しながらモジモジする貂蝉と卑弥呼であった。

モジモジしながら貂蝉はチラリと横目になる。実は気になる様子があるからだ。

それは雪蓮と炎蓮の再会である。

 

「母様」

「あのクソ龍に決めた一撃。良かったぜ雪蓮。流石はオレの娘だ」

 

ドヤっと笑う炎蓮に対して雪蓮は険しい目で見つめる。

 

「生きてたのなら……何で帰ってこなかったのよ。何で生きてたって言ってくれなかったのよっ」

 

母親が生きていたという奇跡。嬉しい気持ちでいっぱいであるが素直に生きてて良かったと言えなかった。

何故すぐに帰ってこなかったのか。何故ずっと黙ってたのか。気になる事だらけで頭の中が混乱中だ。

 

「んなもんどうでもいいじゃねえか」

「答えてよ母様!!」

 

目が潤んでいる雪蓮。しかし彼女の両目はしっかりと炎蓮を見つめていた。

 

「ちっ……」

 

流石に誤魔化す事は出来ないと判断したのか渋々と雪蓮の問に答えた。

 

「……………だよ」

「え?」

「だから、あんな別れ方して後から生きてたって言って帰って来れるわけねえからだよ!!」

 

この理由は藤丸立香も聞いていた。

大見え切って雪蓮たちに「後は任せた」と言って死んだつもりが実は生きていた。そんな今の自分を雪蓮たちに見せる事が恥ずかしかったのだ。

 

「そ、そんっな理由で」

「そんな理由じゃねえよ。大事な理由だ」

 

鼻息「ふん」と鳴らしながら腕組をする炎蓮。雪蓮からしてみればくだらない理由だが炎蓮にとっては重要である。

昔は恥よりも死を選ぶ事もあった。炎蓮にとってそれほどだったのかもしれない。

 

「そ…そん…そんな、そんな理…理由で。ふ、ふざけないでよ」

 

雪蓮はそのまま炎蓮の胸に顔を埋めた。ぽたりと涙が地面に落ちる。

 

「馬鹿じゃないの…ほんとに。ほんと馬鹿」

「誰が馬鹿だよ」

「母様の事よ。ほんと馬鹿でしょ」

 

涙がボタボタと地面に落ちる。雪蓮の身体が震える。泣き叫びたいのをおもいっきり食いしばって我慢する。

 

「……てめえだって死んだって聞いたぞ雪蓮」

「……ええ、死んでたみたいね。でも生きてるわよ」

 

静かに息を吐いて炎蓮は雪蓮を抱きしめた。

 

「よく生きてたな。子が親より先に死ぬんじゃねえよ」

「うん…うん」

 

母と娘の奇跡の再会。

誰も2人の邪魔はしない。袁術だって口を挟むほど無粋ではない。藤丸立香たちは静かに見守っていた。

乱世の時代に家族が戦で失うのは当たり前にあった。悲しみも多かった。だからこそ大切な家族が実は生きていて再会できたのは奇跡なのだ。

 

「はぁーー…」

 

雪蓮は息を吐いて手で両目を拭った。涙が垂れた跡は無く、いつもの調子を取り戻そうと平然そうな顔になろうとするがまだ少し泣き顔に近い。

 

「生きてたなら今まで何処に居たのよ母様」

 

今まで炎蓮が何処に居たのか。普通に気になるものだ。

 

「ずっと立香たちと同行してたな」

「え?」

「船と共に沈んだ後に立香たちに助けられてな。そのまま陳留に行った。次に幽州・徐州まで行って劉備んとこで世話になってた」

「は?」

 

目が点になる雪蓮。

 

「ねえ立香」

「はい?」

「反董卓連合の時に再会した時すでに立香は母様が生きてたの知ってたって事?」

「はい」

 

反董卓連合の時は炎蓮はお留守番してた。ちなみに当時、劉備は炎蓮の正体は知らない。現在であれば既に正体に気付いている可能性は高いが。

 

「劉備が曹操から逃避行してた時に雪蓮とこ寄ったろ。その時にオレあの列の中にいたぜ」

「へえ、そう」

 

会うわけにも行かなかったから孫呉の関係者から隠れてはいた。

 

「んでもって益州まで行って今に至るわけだ」

 

またもドヤ顔を決める。

 

「八傑衆云々の時に戻って来た時も立香は母様が劉備のとこにいる事を黙ってたのね?」

「炎蓮さんが黙ってろって言ったからね」

「言ったな」

 

藤丸立香と炎蓮はお互い見合って頷く。

 

「「「……」」」

 

黙る3人。

 

「でぇぇい!!」

 

藤丸立香と炎蓮にラリアットを食らわそうと動く。

 

「おっと」

「緊急回避」

「どっちも避けるなっ!!」

 

既に何度も喰らっている雪蓮のラリアット。もう簡単には喰らわないと学習した藤丸立香。

 

「ずっと黙ってたなんて許さないからね立香ぁ!!」

「やっぱこうなったよ炎蓮さん」

「ははは。湿っぽいのよりこっちの方がいいな」

 

怒っているが笑顔の雪蓮であった。




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新も2週間以内を目指してます。


838
ここでは特に孟獲たちと敵対せずに原作と似たような流れです。
まだ立香たちは南蛮の問題に巻き込まれません。でもそろそろです。


839~840

雪蓮と炎蓮の再会!!
でもその前に悪龍(ヴリトラ)との戦闘です。

恋姫世界のヴリトラを倒すのに色々と考えました。

恋姫原作では孟獲が言うように「木、石、鉄、乾いたもの、湿ったもの、昼、夜では死なない」とありました。
これは伝承と同じですね。ただちょっと違うのはヴァジュラが含まれてなかった事。
伝承によってはヴァジュラも効かない場合もあるんですよね。

なのでこの外史世界のヴリトラはまだ口にヴァジュラがぶち込まれて負けたヴリトラではないと判断しました。
なのでカーマのヴァジュラが効くと思って書きました。(水着頼光も出そうと考えてました。)
実際に恋姫原作の華佗が口が弱点と言ってましたからね。

武器が効かないはずだけど恋姫原作だと雪蓮と炎蓮の剣で倒したけど…なんでだろ。
やはり外史の管理者の力があったからかな?
それと華佗の力か。
まあ、この物語では概念礼装の『竜種』と『プリンス・オブ・スレイヤー』の力でなんとか効いたという感じにしました。


雪蓮と炎蓮の再会。
感動の再会だけど上手く書けたかなあ…。原作だと割とアッサリしてた気がしてましたけど此方では涙を流す程にしました。まあ、状況が違いますから仕方ないか。

炎蓮の戻らなかった理由だけど…今の雪蓮にも当てはまってるから人の事言えない。
ほんと親子ですよ。

今度は2人が蓮華たちと再会する話だけど…こっちはもっと感動できるような話が書けるように頑張ろう。


立香たちの目的もほぼ達成したの「一方その頃」側も次回で終わりですね。そろそろに南蛮編に合流します。


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