Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

263 / 297
こんにちは。
fgoでは巡霊の祝祭が始まってますね。
今回はケツァルコアトルに金時に酒吞童子の3騎。
イベント配布で手に入れられなかったマスターは嬉しいものですね。
今回の3人の中だと私は金時には助けられてました。


恋姫†英雄譚5
3つの物語で構成されており、EP1の『覇王、死す』は魏ルートのアフターストーリーだとつい最近知りました。
これは気になる…。


南蛮大乱戦-南蛮決戦③-

873

 

 

焔耶と兀突骨の因縁の戦い。

因縁があるというが一方的に兀突骨が勝手に襲ってきているだけであるのだが少なからず無関係というわけではない。

 

兀突骨がこうも焔耶に恨みがあるのは姉が関係している。兀突骨の姉は桔梗が主催した大会に参加し、焔耶と戦った。

勝者は焔耶で兀突骨の姉は敗北した。その試合は互いに手加減が出来ず、焔耶は兀突骨の姉に大きな重傷を与えたのだ。その傷が原因で兀突骨の姉は熱を出し、病に罹って亡くなったのだ。

 

兀突骨の姉が死んだ原因の一旦は確かに焔耶が与えた傷も関係している。しかしだからと言って兀突骨の姉を殺害したのが焔耶だとは言えない。

その時はお互いに武人として、戦士として戦って受けた傷なのだ。兀突骨の姉も受けた傷は焔耶のせいだと思ってもその後に熱が出たのも病に罹ったのも焔耶のせいだとは思っていない。

 

熱が出たのも病に罹ったのも己の身体をちゃんと治さなかったせいだ。それで死んだのである。もしかしたら恨み言もあったかもしれないが全てが焔耶のせいだとは言えない。

事実、兀突骨の姉は焔耶に熱が出ても、病に罹って苦しんでも焔耶のせいだとは言わなかったのだから。しかし兀突骨は違う。

 

たった1人の肉親を失った。その悲しみはとても深いが姉が死んだ原因の一端が少なからずとも焔耶と知った時の憎悪はより深い。

姉の亡くした悲しみを紛らわすように怒り、その怒りの矛先が焔耶になったのだ。姉が死んだのは焔耶が毒を使ったからだ。熱も病も全て毒のせいだ。主催者である桔梗も焔耶と関係者である為、毒を使う事を許したグルだと思った。

 

兀突骨の姉は卑怯で汚い手によって殺されたのだと兀突骨は囚われてしまったのだ。全ては姉を亡くした悲しみを紛らわす為に。

 

「どうだ魏延!!」

 

ガキィインっと剣で魏延の身体を鈍砕骨ごと殴り飛ばす。

 

「ぐっ…」

「弱い。弱いな魏延。こんな奴に姉ちゃんが負けるはずがないんだ。やっぱり姉ちゃんはお前の卑怯な手で殺されたんだ!!」

 

兀突骨の目には憎悪の炎が混じっている。

 

「うらうらうらうらうらうら!!」

 

怒りを込めた怒涛の連続斬り。焔耶は鈍砕骨で防いでいくが攻めに転じれない。

 

「ふー、ふー、ふー」

 

兀突骨の身体から憎悪の気が滲み出ている。腕を突き出すと鱗が浮き出てきた。

 

「魚鱗癬。撃て!!」

 

腕に浮き出た鱗が弾丸のように放たれる。

 

「うおっ、鱗が飛んだだと!?」

 

鈍砕骨を振るって弾丸のように飛んできた鱗を叩き落とすが何発が身体に掠る。

 

(当たっても死ぬことは無さそうだが、当たったら当たったて十分な痛みはある)

 

掠った部分には切り傷が出来ていた。

 

「この鱗は他の奴らと違う。昔は嫌だったが影姫様のお陰で戦う力となったのさ」

 

飛ばせば武器。鱗を浮きだせば鎧代わりだ。気を纏わせれば威力も耐久も上がるのだ。

 

「死ね魏延!!」

「死ねるか!!」

 

剣と鈍砕骨が打ち合う。

 

「卑怯者は死ね。卑怯な手を使う者は武人でも戦士でもない!!」

「言ってくれるな」

「事実だ!!」

 

回転斬りからの蹴りを打ち込む。

 

「うぐっ」

 

腹に蹴りを打ち込まれ、胃液が逆流しそうになるが無理やり飲み込む。

 

「ゲホっゲホっ」

「本当に弱い。弱すぎる。こんな奴にアタイの姉ちゃんは……ぐうううううあああああ!!」

 

怒りを向ける仇が弱すぎてより怒りが滲む。そして怒りの咆哮を上げる。

 

「弱い。こんな弱い奴を囲う劉備も弱いんだろうな」

 

実際に桃香は武人というほど強くはないので否定はできないのが悔しい。しかし次の言葉は焔耶が許せるものではなかった。

 

「お前のような卑怯者を囲う王だ。なら劉備とか言う王も卑怯な王だろうな」

「なんだと」

「何が人徳のある王だ。きっと裏では卑怯な手や姑息な手を使ってそう見せてるだけだろ」

「黙れ兀突骨!!」

 

怒りの声が発せられ、焔耶からも怒りの気が滲み出る。

 

「ワタシの事をとやかく言うのは構わん。しかし桃香様を…玄徳様に対する不敬は許さん!!」

 

同じく怒りの一撃で兀突骨を殴り飛ばす。

 

「うがぁ!?」

「こっちだってもう許さん。玄徳様を侮辱した罪は重いぞ!!」

「ぐぐ…魚鱗癬ですら防ぎきれない威力か。馬鹿力め」

 

焔耶にとって桃香の侮辱は地雷である。

 

「悪いがワタシは貴様の敵討ちなんぞにやられるつもりは無い」

「一発アタイを殴り飛ばしたからって言い気になるなよっ!!」

 

全身を魚鱗癬で覆い、気を高める。そして脚に力を込めて跳んだ。

 

「お前なんかにアタイを捉えられるはずなんかない」

 

周囲の木々を跳び回って攪乱させるつもりだが焔耶は冷静だった。無理に視線を跳び回っている兀突骨に向けない。寧ろ目を閉じて棒立ちになる。

 

「あれだけ言って諦めたか!!」

 

剣の切っ先を向けて兀突骨は焔耶の背後へと跳ぶ。

背後からの刺殺。卑怯者の武人にはお似合いの死だと思ってのものだ。

 

「ワタシが諦めるはずがないだろ。貴様は確かに速いが気が大きく出て察知はしやすいんだよ!!」

 

背後から跳んできた兀突骨を回避し、もう一度殴り飛ばした。

 

「うごがああっ!?」

「起きろ。まだまだ玄徳様を侮辱した罪は消えてないぞ」

(さっきよりも気を込めて魚鱗癬を硬化したのにさっきよりも威力が上がってるだと?)

 

身体を覆った魚鱗癬がバリっと割れて地面に落ちる。

 

「いい気になるなよ魏延。アタイの力はこんなもんじゃないんだからな!!」

「そうか。だがこれで決めてやる」

 

強く鈍砕骨の柄を握り締めて駆け出し、跳ぶ。

 

「潰れろ。鈍砕撃!!」

 

力の限り己の得物である鈍砕骨を振るい落とす。

 

「…なに?」

 

一撃は確かに入ったが手応えが無かった。何か嫌な予感が過ったため、すぐに退避する。そして視界に入るは兀突骨の新たな姿。

 

「鎧か?」

「これがアタイの切り札。藤甲だ」

 

兀突骨の身体には藤のつるが鎧のように巻き付かれていた。片腕は藤のつるで編まれた盾があり、恐らくその盾で鈍砕撃を防がれたのだ。

しゅるしゅると藤の盾が解かれ、片腕に巻き付き戻った。

 

(あの鎧は動くのか…妖術の類か?)

「この藤甲は特別製だ。影姫様より力が込められたものだからな」

 

藤甲は藤のつるで編まれた特別な鎧だ。特別な製造法で作られ、刀や矢も通用せず川などでは浮いて移動する程の軽さを持つのだ。

三国志演義では藤甲を着た軍を藤甲軍と言い、蜀を苦しめたとも言われている。

 

「藤甲よ両腕に力を!!」

 

しゅるしゅると藤のつるが兀突骨の両腕に巻き付き、大きな腕になる。

 

「喰らえ!!」

 

大きな藤の腕で焔耶は殴り飛ばされる。

 

「うわっ!?」

 

殴り飛ばされ、木へと叩きつかれる。

 

「どうだ。凄いだろ。そしてお返しだ」

「うぐ…確かに強いな」

「このまま殴り殺してやる」

 

しゅるしゅると藤のつるが兀突骨の身体を覆う。

 

「うらうらうらうらうらうら!!」

「舐めるな」

 

連打の中を掻い潜り、鈍砕骨を打ち込むが全くもって手応えが無い。

 

「何かしたか魏延?」

「効いてないのか!?」

「そんな軽い一撃が効くもんか!!」

 

重い藤つるの拳が焔耶を殴り飛ばす。

 

「どうだ苦しいか。だが姉ちゃんの方がもっと苦しんだんだ。この程度で終わると思うな」

 

苦しんで死んだ兀突骨の姉。ならばと焔耶も苦しませて殺さねばという黒い意思を持ってしまった兀突骨。

しゅるしゅると藤のつるが片腕により巻き付き、長く太くしなやかに伸びていく。それは藤の鞭であった。

 

「もっと痛め、もっと苦しめ、そして死ね!!」

 

藤の鞭による高速の連撃。その全てを喰らう焔耶。

 

「うぐっ!!」

「どうだ。痛いか、苦しいか。だがこんな程度じゃ足りない。姉ちゃんはもっと苦しんだんだからな」

「はっ、この程度なんともないな。なんなら何進の鞭捌きのほうが巧いぞ」

「減らず口が!!」

 

藤のつるがより巻き付き、鞭が極太の棍棒へと変形する。

 

「お前が潰れろ。誰も仲間に知られずに孤独に死ね!!」

「誰も知られずになんて、そんなことない。ここにいるぞー!!」

「は?」

 

地面ごと潰す藤の棍棒が振り下ろされたがその下に焔耶の死体は無い。

ギロっと視線を横に移すと蒲公英が焔耶を抱えて回避していたのだ。

 

「た、蒲公英お前なんで」

「たまたまここ通ったらアンタが危なかったら助けたの。アンタみたいな奴でも死んだら桃香様が悲しむでしょ」

「なっ」

「借り1つだからね」

「…言ってろ」

 

蒲公英に腕を掴まれ、立たされる。

 

「まだ戦えるでしょ。桃香様の為に負けないんでしょ」

「ああ。蒲公英に言われるまでもない」

 

焔耶と蒲公英は武器を構えて兀突骨に視線を戻す。

 

「お前は魏延の仲間か。はん、魏延に仲間が居たなんて信じられないな。だってこんな卑怯な奴にも仲間がいるのが驚きだ」

 

実際に驚いているわけでなく、挑発の為に言っているだけだ。ただ恨み相手を貶したいだけだ。

焔耶は黙って聞いているだけだったが返したのは蒲公英だった。

 

「何言ってんのあんた?」

「なに?」

 

蒲公英は兀突骨の言っている事が心底意味が分からないといったところだ。

ビシっと人差し指を焔耶に向ける。

 

「こいつに卑怯とか姑息とかそういう頭を使うような事が出来るわけないじゃん」

「「は?」」

 

兀突骨だけでなく焔耶も蒲公英の言葉に聞き返してしまった。

卑怯・姑息な手段とは頭を使う事だ。考えて考えて相手が嫌だと思う事を思い付き、実行するのだ。

 

「こいつは短絡的で無鉄砲な奴だよ。そんな奴が相手に勝つ為に毒とか使うわけないじゃん」

 

バシっとビシっと確実にそうだという答えを蒲公英は口にした。

その答えにポカンとしてしまう焔耶と兀突骨。

 

「蒲公英お前…ワタシをそういう風に思ってたのか!!」

「うん」

「ワタシはそこまで短絡的じゃないぞ」

「冗談は笑えないよ?」

 

自分が短絡的じゃないと否定する焔耶に対して蒲公英は「こいつ何言ってんの?」みたいな顔をしていた。

戦いの最中だというのに2人はいつものコントのように口喧嘩を始めてしまうのであった。そんな様子をポツンと空気になった兀突骨は呆けながら見ていたがすぐに冷静になって怒りが湧き上がる。

 

「ふざけるな!!」

「ふざけてないよ。焔耶はそういう奴だ。短絡的で難しい事は考えない。ただ猪突猛進で馬鹿みたいに突撃するだけの武人だ」

 

焔耶は素直で最優先の答えを一直線で見つける。間違っていたのならば次の答えを見つける一騎当千の猛将だ。

 

「こいつは馬鹿だけど武人としての志はいっちょ前なんだよね」

 

焔耶は武人の心構えは本物だ。一対一で戦う相手に卑怯な真似はせずに己の実力で叩き潰す武人だ。

 

「そんな奴が毒なんて使うワケないじゃん。そもそも毒の使い方なんか分からないでしょ。相手に食らわせる前に自爆するだけ」

 

焔耶が使う武器は鈍砕骨。剣や弓だって使う事はあるが毒は一度も使った事はない。毒で相手を倒すよりも鈍砕骨で倒す方が性に合っている。だからこそ猛将なのだ。

 

「それに焔耶が発している気は澄んでるよ。武術ってのは心に疚しいところがあれば濁りとなってソレが出てくる。でもこいつからは今まで感じた気は澄んだ気だけ」

「何でそんな事が分かるんだよ!!」

「分かるから言ってんだよ。蒲公英は武人。こいつも武人。ならそれだけで十分!!」

「蒲公英お前…」

 

武人と武人同士でしか分からない事、気付かない事があるものだ。

 

「あんたも武人…いや戦士ってやつなら分かるでしょ。ただあんたが認めたくないだけ。焔耶が毒なんか使ってないって」

「黙れ!!」

 

兀突骨は戦士だ。相手も武人・戦士であればどのような者か分かる。

彼女も本当は焔耶がどのような人物か分かってしまったのだ。だからこそ苛ついていた。だからこそ怒った。だからこそ焔耶の正体を知らずに殺したかった。

 

「ふざけるなふざけるなふざけるな。噓だ噓だ噓だ噓だ。魏延は卑怯な奴なんだ。毒を使って姉ちゃんを殺したんだ。じゃなきゃ、じゃなきゃぁああああああ!!」

 

兀突骨の姉は卑怯な手で殺されてなかった。純然たる武人と戦士の戦いで喰らった傷が原因で死んだ。兀突骨の姉は焔耶に対して「許さない」、「恨んでる」とは言ってなかった。

 

ならば兀突骨がやっている事は何なのか。彼女がやっている事は的外れなのか。唯一の肉親を失った悲しみに飲み込まれるのが嫌だから怒ったのだ。怒りの矛先があるからこそ心が悲しみに折れなかったのだ。

怒りが原動力の兀突骨は今さら自分の間違いを認めない。

 

「藤のつるが兀突骨を飲み込んでいくだと?」

 

しゅるしゅると藤のつるが兀突骨を飲み込むように絡みつき、大きくなっていく。その姿はまさに藤の巨人。

藤丸立香がこの場にいれば兀突骨の姿を見て植物系のスプリガンと言うかもしれない。

 

「大きい…」

「魏延。お前を殺す。お前が姉ちゃんを殺したんだ!!」

 

強大な藤の腕を振り上げて地面を叩き砕いた。

 

「おっと。ちょっと焔耶無事?」

「無事だ」

「あいつ。怒って大暴れしてんだけど」

「見りゃ分かる」

 

兀突骨はもう誰の声も届かない。ただ焔耶を殺すだけを考える。

 

「やるよ焔耶」

「は?」

「は、じゃない。今ここで倒さないとこいつ止められなくなるよ。あんたを殺したら次は桃香様を狙うと思う。ご主人様を狙うと思う。それはあんたも嫌でしょ」

「桃香様を狙うのは許さん。お館は…まあ、その、ついでに助ける」

(素直じゃないね)

 

焔耶と蒲公英は武器を握り直す。

 

 

874

 

 

兀突骨はもはや藤の巨人となった。

ただ焔耶を殺す事だけしか考えない。邪魔する者も殺す。ただ殺す。

 

「魏延。魏延。ギエェン!!」

「ここにいる」

 

怨嗟の声で叫ぶが焔耶は冷静に見据える。

 

「逃げるつもりはない。ここで決着をつけよう」

「私も手伝うよ。一対一だなんて言ってられないし」

 

チャキリと武器を構える。

 

「魏延を殺す。邪魔する奴も殺す!!」

 

藤の腕が伸びてしなる。大きな蛇というよりも藤の龍にも見えた。

 

「死ねええええええええ!!」

「死ぬかあああああああ!!」

 

龍が如くの藤の鞭が嵐を巻き起こす。

焔耶と蒲公英は受け流し、弾き返す。

 

「潰れろ!!」

 

今度は藤の槌を形成し、連続で叩き潰していく。地形の変形なんて当然の威力。しかし2人は掻い潜り回避する。

 

「ちょこまかと!!」

「そりゃちょこまこと避けるよ。当たったら死ぬし」

「おのれ!!」

 

藤の槌はしゅるしゅるとまた変化していく。藤の腕が完成。

 

「握り潰してやる!!」

「あぶなっ!?」

「蒲公英気を付けろ。捕まったらぺりゃんこだ!!」

「ぺちゃんこというよりもグシャっでしょ!!」

 

2人を捕まえようと藤の腕を振り回す。2人を叩き潰そうと振り下ろす。しかし2人は捕まらない、潰れない。

 

「あいつは藤の鎧で分厚く、堅い。槍で刺しても斬っても効果はないね」

 

回避しながら蒲公英は影閃を振るって兀突骨を突き、斬り付けるが本体に届かない。焔耶の鈍砕骨ですら効いていない。

特に衝撃を和らげる鎧なので焔耶の一撃は相性的に悪い。

 

「手はある」

「え、意外」

「意外とはなんだ」

 

焔耶は懐から何かが詰まった革袋と石を取り出した。

 

「なにそれ」

「……お館に使えるかもしれないから持っとけって言われたモノだ。本当に使うとは思わなかったがな」

 

革袋と石を見て北郷一刀が言っていた事を思い出す。

 

『兀突骨と戦うならコレが使う時があるかもしれないから持っててくれ焔耶』

『なんだソレは。いらん』

『そう言わずに。ほんとに要らなかったら捨てていいから』

『……分かった。邪魔になったら捨てるからな』

 

貰った物だが使い道は分かるがどうして兀突骨との戦いに役に立つか分からなかった。しかし今に思えば確かに使い道は出来たのだ。

天の御遣いだからなのか、戦いに必要な物が分かるのか。何にしろ今の状況では使えるかもしれない。

 

「蒲公英はこの革袋をアイツにぶちまけろ。ワタシはこの石を使うから」

「はいはい」

 

蒲公英は何かが詰まった革袋を貰って兀突骨に向かって駆け出す。

 

「邪魔だチビ!!」

「うるさい。そんな鎧に篭ってでかくなった奴にチビとか言われたくないよ!!」

 

巨大な藤の腕を掻い潜り蒲公英は革袋を投げつけ、そして銀閃も投げつけた。革袋は突き破られ、中から液体が飛び出し、兀突骨に掛かる。

 

「なんだコレは?」

「さあね」

 

液体が掛かっただけで特に何も異常は無い。一瞬だけ警戒したのが馬鹿みたいだと思った兀突骨は蒲公英を握り潰そうとするが藤の腕が止まる。

何故なら焔耶の声が響いたからだ。

 

「兀突骨!!」

「魏延か!!」

 

焔耶は石を投げて液体のかかった部分に埋まった。

 

「石なんて効くか!!」

「それで倒すんだよ!!」

 

藤の腕で乱打するが焔耶は恐怖せずに突っ込んだ。乱打の隙間を掻い潜り、間合いへと入り込む。

 

「こ…のぉ!!」

「喰らえ兀突骨!!」

 

藤の鎧に投げ埋め込んだ石に向かって鈍砕骨を振るう。ガチンっと砕くように響いた瞬間に火が燃え上がった。

 

「なっ、燃え、火!?」

 

藤の巨人となった兀突骨は燃え上がる。

藤甲の製造方法は藤の蔓を編み、油に半年漬けたのち取り出して陽にさらして乾くとまた漬ける。これを10回あまり繰り返したものを甲冑にしたものだ。

それゆえに火に弱いのだ。妖術か何かで強化されていようが火に弱いのは変わりない。

 

「うあああああ、燃えてる!?」

「兀突骨。さっさとその鎧を脱げ。焼け死にたくなかったらな!!」

 

燃えやすい藤甲。最初は油という液体が掛かった部分だけが燃えたが、既に火は藤甲の全体に広がっていた。

 

「うあああああああああ!?」

「さっさと脱げ兀突骨!!」

「うぐぐ…い、いや、これは燃えてるんじゃない。火を纏ってるんだ!!」

「何を言ってる!!」

 

藤の巨人は何重にも蔓を纏った形態だ。まだ本体である兀突骨に火は届いていない。

 

「ははは。火を使うとは卑怯だな!!」

「そんな鎧を使ってるやつに言われたくないよ!!」

 

兀突骨の言葉に蒲公英は言い返す。

 

「だがこの火が逆にアタイの力となった。逆にお前を焼き殺してやるぞ魏延!!」

 

燃えながらも崩れないように藤の腕がより大きく形成される。

 

「燃えて潰れて死ね!!」

「ならこれで決めてやる!!」

 

焔耶は気を開放して走り出す。兀突骨は逆に火を纏ったとはいえ、時間の問題である。お互いにこれで決着をつけるつもりだ。

 

「うおおおおおおお!!」

 

焔耶は高く跳躍し、鈍砕骨を振り下ろす。

 

「鈍砕撃!!」

「またソレか。そんなのアタイに効かないっての!!」

 

既に破られた技が兀突骨に効くはずがない。火を纏った藤の腕を振り上げて正面から鈍砕骨を受ける。

 

「ははははは、やっぱ効くもんか。そのまま焼いて殴り殺してやる!!」

「…なら」

「なんだ?」

「1回でダメならもう1回だ!!」

「なに?」

 

焔耶はまた跳んで鈍砕骨を振り下ろす。

 

「2回目でダメなら3回。3回目でダメなら4回。それでもダメならもっともっと振り続ければいいだけだ!!」

 

鈍砕骨を何度も何度も振り下ろす。敵を叩き潰すまで何度も鈍砕骨を振り下ろす。

 

「なっ、こ、こいつ……ぐ、腕が押し返される…壊れる。ぎ、魏延!?」

 

ミシミシと火を纏った藤の腕が音を立てて、崩壊した。

 

「鈍砕骨闇舞!!」

 

藤の巨人と叩き潰し、破壊する。中からは兀突骨が露わになった。

 

「ぎ、魏延!!」

「もう終わりだ兀突骨!!」

 

焔耶は拳を握りしめて今日一番の一撃を兀突骨に打ち込んだ。

 

「ワタシの勝ちだ!!」

 

兀突骨との戦いは終わった。

 

 

875

 

 

藤甲が燃え、破壊された。兀突骨は焔耶の渾身の一撃によって殴り飛ばされる。意識が飛んで暗転する。

自分は焔耶に敗北したのだと嫌でも分からさせられる。

 

『兀突骨』

『ね、姉ちゃんゴメン。アタイは…アタイは』

 

意識を失ったはずなのに兀突骨の目には大柄で筋骨隆々で長髪の女性が写った。彼女こそが兀突骨の姉である。

 

『兀突骨。私の仇を取ろうと考えるな。私が死んだのは魏延から受けた傷が原因だ。熱や病にうなされている時は少なからず魏延を恨んだ』

『な、なら』

『でも死んだのは魏延のせいじゃない。毒のせいじゃない。アイツとは真剣勝負をしたんだ。その受けた傷も真っ向から受けた傷だ」

『姉ちゃん…』

『アイツは戦士だ。卑怯な真似はしていない。アイツも戦士の誇りを持っている。兀突骨。お前はも分かっていただろう』

『うう…』

 

兀突骨の姉は兀突骨の頭を優しく撫でる。

 

『お前を1人残してすまない。だが私の仇を取ろうと恨みと怒りに飲み込まれるな』

『姉ちゃん…姉ちゃぁあん』

 

兀突骨の姉は優しい笑顔だった。その顔を見た瞬間に目がパチっと覚めた。

 

「ね、えちゃん」

 

身体中が痛い。自分が背中から倒れているのが理解出来た。周囲を見渡すと藤甲の残骸が燃えているのが分かる。

やはり自分は敗北したのだと理解してしまう。

 

「起きたか」

「ぎ、魏延」

「お前の負けだ」

 

そんな事は既に分かっている。だからこそ何も動こうとはしない。

 

「…さっさと殺せ」

 

負けた者の末路は死だ。抵抗するつもりもなく死を受け止める。

焔耶は鈍砕骨を兀突骨に向けるが振り下ろす事はなかった。

 

「早く殺せ」

「もう決着はついた」

「なら…!!」

「殺さない」

「なぁっ!?」

 

鈍砕骨をゆっくりと降ろす。

 

「生きろ」

「い、生きろだと。敗北した戦士の結末すらお前は…」

「お前を侮辱するつもりはない。お前はワタシに対して仇を取ろうとしているがワタシはお前に対して何の恨みも無い。殺す必要はない」

「お、お前…!!」

 

焔耶は兀突骨から背を向ける。

 

「まだ私を恨んでいるというのならいつでも相手になってやる」

「な…」

 

怒りが治まらないというのならば無くなるまで相手をする。姉を失った悲しみに飲み込まれるのならば、どうすればいいか分からないのならば、全て焔耶にぶつけてこいという事だ。

 

「強くなって正々堂々と戦いに来い。あんな変な力なんて借りずにな。1人の戦士として。その方がお前の姉の為にもなる」

 

兀突骨は両手で両目を抑える。

 

「くそ、くそ、くそ。ふざけやがって…ふざけやがって」

 

両手で目を抑えたのに隙間から涙が漏れる。

悔しい。自分が間違っていた、ただの八つ当たりだというのに気付いてしまった。気付いていたが後ろを向いていた。自分の不甲斐なさに嫌になる。

様々な感情が今更に滲み出てきてしまった。その感情が涙となって出てきてしまったのだ。

 

「姉ちゃん、アタイは…」

 

兀突骨の怒りは姉を亡くした悲しみを紛れさせるもの。その怒りが無くなった時、彼女は涙を流す。

 

「あんなこと言って良かったの。アイツ絶対また襲ってくると思うよ」

「いいんだよ。ワタシはアイツの姉を殺した原因なんだ。それは事実だ」

 

殺したくて殺したわけではない。武人と戦士の真剣勝負の結果的なものだ。ただ原因の1つという意味では事実である。

 

「兀突骨の姉を倒した武人として、その妹である戦士の決闘に断りはしない」

「あっそ」

 

もしも次に会う時があれば焔耶は兀突骨を戦士と認めるはずだ。それこそ兀突骨の姉のように。

 

「おら蒲公英。早く行くぞ。桃香様が心配だ!!」

「はいはい」

 

2人は新たな戦場へと向かうのであった。

 

 

876

 

 

南蛮陣営の本拠地。祭壇にて。

影姫は使い魔を飛ばして戦況を確認していた。

 

「兀突骨が負けましたか。せっかく力を与えたというのに……それに傀儡姫も負けましたか」

 

戦況は陳宮を名乗る軍師の策によっておかしくなった。南蛮反乱勢を突撃させて自爆させるという冷酷な策によって南蛮陣営は崩された。

 

「圧倒的な戦力差だったというのに…それに傀儡姫全員が負けるとは予想外でした。そこまで私が生み出した傀儡姫は弱かったという事だったのでしょうか」

 

僵巴兵はまだまだ残っているが徐々に蜀と南蛮反乱勢が南蛮陣営を押し込んでいく形で動いている。

 

「孟獲は勝手に動きますし…私の予想外ばかりです。しかしまだ負けたわけではありませんね」

 

使い魔からの連絡では先ほど、孟獲が蜀と南蛮反乱勢の王と接触したとあった。

戦争の勝利条件には敵の王・大将を討ち取る事だ。

 

「向こうから王が来ているのならば是非もない。孟獲を利用しつつ討ち取ってみせましょう」

 

影姫は椅子から立ち上がり、歩を進める。南蛮決戦である。

 




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新も2週間以内を予定しております。


873
焔耶と兀突骨の戦いが始まりました。

この作品の兀突骨はアニメ版よりも憎悪がマシマシです。
悪い方向に考えてしまったので。
強さも影姫に力を与えられたのでマシマシです。

焔耶の地雷は桃香を貶される事。
桃香ラブの彼女なら怒りMaxです。
怒りが力になるってのはどの作品にもありますね。それは現実でも。

兀突骨の切り札『藤甲』
三国志演義でもあった鎧ですね。影姫によって藤甲も強化されてます。

蒲公英参上。
犬猿の中ですけど何だかんだでお互いに助け合いはします。
アニメ版でも蒲公英は焔耶が卑怯な真似をするような人物ではないと判断してますからね。

兀突骨が怒りを有頂天にして藤の巨人になりました。
本文にも書きましたがす植物系のスプリガンであるグリーンマンみたいな感じです。


874
藤甲は火に弱い。
これは三国志演義にある内容です。諸葛孔明がソレに気付いて藤甲軍を火で燃やしたってやつです。
一刀はそれを知っていたからこそ油の入った革袋と火打石を渡しました。

鈍砕骨闇舞
天下統一伝の必殺技ですね。鈍砕撃を昇華させた技だと思いました。


875
兀突骨との戦は決着。
自分の仇討ちがただの八つ当たりだと気付いてしまった。
そういう時は自分に悔しいと思うかもしれません。(個人的に)

ちょっぴり兀突骨の姉が登場(兀突骨の意識世界というかなんというか)
どんな喋り方か分からないのでオリジナルです。
アニメ版だと台詞は無かったので。

焔耶の「強くなって正々堂々と戦いに来い」の台詞。これはアニメ版をリスペクトしたものです。
彼女の武人として器の大きさを現せたらと思って書きました。


876
南蛮勢は追い込まれました。
戦力差は圧倒的ですが、やはり陳宮の自爆特攻が効いてます。
次回で南蛮での最終戦です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。