Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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日常編その2です。


孫呉の人たち2

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今日も今日とて揚州の建業で過ごす。

 

「あー立香さんに荊軻さん~」

 

どこかのんびりとした声が聞こえてきた。振り向けば穏がポテポテを歩いてくる。

 

「祭様を知りませんか~?」

「知らないな。荊軻は?」

「私も知らぬな」

「そうですか~。ありがとうございました」

「じゃあ見かけたら穏さんが探していたことを伝えとくよ」

「ありがとうございます~」

 

そう言って穏はまたポテポテと歩いて行った。

 

「……」

 

この地で数日が過ぎたが、いつも思うことがある。

それは露出が多い服ばかりを着ているということだ。今まで縁を結んでいた英霊たちも露出の高い服を着ていたから慣れてはいるが。

男としては目の保養になるから良いのだがたまに直視できない時があるから男子である藤丸立香は困るのだ。

 

「どうしたマスター?」

「何でもないっす」

 

荊軻も荊軻で生足を見るたびにドキリとさせられてしまう。そもそもカルデアでは魅力的な女性英霊が多過ぎなのだ。

 

「よし、なら外に行くぞ。情報収集だ」

「そう言って荊軻は酒が飲みたいだけでしょ」

「はっはっはっは。この地の酒は如何様なものかとな」

 

荊軻はどの地に行ってもこの外史の武将たちと出会っては酒を楽しんでいる。ここだと祭や粋怜と気が付けば飲み仲間になっていたのだ。

 

「飲み仲間の荊軻さん。祭さんがどこにいるか検討がつかないの?」

「そうさな…たぶん、外で飲んでいるんではないか?」

 

この言葉は正解のようで、実際に外で飲んでいた。

 

「本当にいたよ」

 

「おお、藤丸に荊軻ではないか。こっちだこっちだ」

 

祭に手でこっちこっちと振られて近づく。

 

「で、本当に酒を飲んでたよ」

 

確か彼女は今日、非番ではなかったはずだ。なのに真昼間から酒を飲んでいる事実。

こんなの冥琳や雷火に見られたら怒られるだろう。

 

「私も飲もう」

「うむ、荊軻ならそう言うと思っておったぞ。藤丸も飲むか?」

「俺って酒飲めないんで」

「何、飲めんのか。人生損してるぞ」

「大丈夫。その内飲めるようになるから」

「では、今飲んでみるか」

 

彼女が仕事をサボって酒を飲んでいる輪に入る荊軻と藤丸立香。

 

「遠慮します」

「なに、わしの酒が飲めんと言うのか?」

「アルハラは勘弁です」

「あるはら?」

 

前に間違って酒を飲んですぐに酩酊状態になったのだから飲めない。そもそも黄金のハチミツ風味の飲み物を一口飲んだ事で直後の記憶を失って目覚めると江戸に居たなんて事例があるので酒を飲む事自体は控えているのだ。

まだ1回限りだが酒飲んで何処かに転移するなんて体験したら、次から酒を飲むのが怖いと言うものだ。

 

「前に間違って酒飲んだら大変な目にあったから」

「何だ悪酔いするのか?」

「傍若無人になるのは荊軻です」

「んん?」

「おかわり」

 

荊軻は既に酒瓶を空けていた。

 

「おお、やはり荊軻はいつ見ても良い飲みっぷりだ。こりゃ儂も負けてられん」

 

祭も荊軻に負けじと酒瓶を空ける。荊軻に関しては昼間から傍若無人にならないでもらいたい。

 

「大丈夫だ。まだこの地ではなってないから」

「まだ…」

「ああ、まだ」

 

そのうち傍若無人になって燕青や李書文を困らす。回収すると言う意味で。

 

「そういえば穏さんが探してましたよ」

「穏が?」

「この前の事をやっぱり抗議したかったりして」

 

この前とは穏が祭に兵士の訓練を交換条件で押し付けた件だ。

 

「そうかもな。違う件もしれんが」

 

実はこんな会話があった。

 

「祭さま~、それに立香さんも~」

 

トテトテと近づいてきた穏。

 

「ご一緒で何をしてたんです~。もしかして祭さまが立香さんをいじめてたとか~?」

「人聞きの悪い。実は素振りや調練について少し教示をしていただけじゃよ」

「そうなんですか?」

「うむ。まだまだ未熟だが筋が良いぞ」

 

これでも多くの英霊から稽古を教わっている。そのおかげか祭の教示に上手く応えられているのだ。

藤丸立香はどこか生徒気質なので先生気質の者とは相性が良いのだ。

 

「ふふ、祭さまと立香さんは仲がよろしいんですね~。じゃあわたしは邪魔にならないようにここら辺でー」

「待たんか穏。お主に話があるのを思い出した」

「話ですか?」

 

首を傾ける穏。

話とは祭から見て穏の部隊の調練を見かけていないということだ。

武将として彼女の部隊を改善点やら注意点を話す。穏としても注意点に関しては否定できない案件だ。いずれは直さねばならない。

だから穏が自分の部隊を改善するために動くべきなのだが、何を思ったのか祭に押し付けようと考え出したのだ。

 

「儂にやれと?」

「良い案だと思いませんか。そうすれば私は楽を出来ますし、隊も強くなれますし、一石二鳥です~」

「それって穏さんは一石二鳥だけど祭さんは得が無いよね」

「そうじゃ。藤丸の言う通りではないか」

「得ならあるじゃないですか、祭さまの欲求がかなって軍が強くなりますよ?」

「儂個人に対する得がないと言っておるんじゃ」

「え~。祭さまって欲張りですねえ」

 

意外に強かというかなんというか。祭の言い分を認めない穏。欲張りなのは穏の方ではないだろうか。

彼女はすすっと祭に擦り寄って耳打ちをした。

内容としては付け届けを加えるということ。人の部隊を面倒を見るのだから無償なんて言葉はない。

 

「何をくれるのじゃ?」

「そうですねぇ…」

 

まずは美味しいお肉。

 

「肉だけか?」

「ふぇ?」

 

お肉だけでは足らない。

 

「じゃあ、お野菜もつけちゃいます」

 

今度は野菜。

だけどそれでも足らない。

肉と野菜の両方でも足らないのだ。

 

「じゃあじゃあ、お魚もつけちゃいます。これならどうですか?」

「いいや、足らんな」

「ご、強欲ですぅ…」

「何を言う。もとはと言えば、お主の方から言い出した事じゃろう」

 

付け届けをして自分のすべき仕事を人様に押しつけるのだから誠意が必要だ。

物事というのは等価交換で成り立っているとのこと。

 

「人の弱みにつけこんでぇ~」

「その弱みを与えたのか穏さんだけど」

 

どうやら自分の事は棚に上げているようだ。

 

「で、どうするんじゃ。嫌なら構わんが」

「構わないって、調練しなくても良いって意味じゃ…」

「馬鹿者。自分で調練せいという事じゃ!!」

「ですよね~」

 

正論なので言い返せない。

 

「分かりましたよ。じゃあ、お酒をつけます」

「ん?」

 

肉と野菜と魚と酒。

穏はさらに付け届けを追加する。これには祭も考え直す。

酒というキーワードが強いのだろうか。

 

「何年分じゃ?」

「年っ!?」

(祭さんも言うなぁ)

「まさか一食分で済ますつもりではあるまい?」

「だからって何年分って…そんなに付け届けたら陸家の家計がボーボーになっちゃいますよぉ~」

 

確かに年単位ならば大出費だ。でも人様の部隊の面倒を見るというのは一日二日というのではない。長い間調練して悪いところを直すのだ。部隊なのだから一人二人の問題ではないのだ。

 

「ならば、お主に出来る可能な限りの心意気を見せてみよ」

「ええと、それじゃあ…三日分」

「話にならんな」

「あ~~じゃあ十日分なら!!」

「まだじゃ。だが儂も鬼ではない。あと一声で許してやる」

「鬼のくせに~」

「んん、話は無かったことにするか?」

「祭さまって素晴らしい人ですよねぇ~。とても綺麗で魅力的な女性です~」

 

手首が千切れん限りの手のひら返しだ。

 

「じゃあ…半月分で」

「うむ。一月分じゃな。それで手を打ってやろう」

「ちょっ、祭さま。わたしは半月分って~」

「文句があるのか?」

 

こう言われてしまえばどうも反論できない。ガックシとしながら折れた穏であった。

 

「出費が痛いのなら自分で調練すれば良いのに」

「まさにそうじゃぞ」

 

2人のやりとりを蚊帳の外で見ていた藤丸立香は正論を言う。

 

「それだと私が楽できないじゃないですか~!!」

「おっと、本音が出たよ」

 

祭曰く、穏は楽をしようと考える事が多々あるらしい。

 

「立香さんもわたしの味方になってください~」

「んー…場合によっては味方になれたね。上手くいけば付け届けも年単位でも用意できるし」

 

この場に俵藤太がいればの話である。居ても俵藤太が食材を出してくれるかは別として。

 

「なんと、流石は天の御遣いじゃな」

「今用意してください~。陸家の家計が~!!」

「無理」

 

このようなやりとりがあったのだ。

 

「あったのう。あの条件じゃなきゃ割に合わんからな」

「穏さんも諦めれば良かったのにね」

 

そうまでしても兵士の訓練からサボりたかった穏。

 

「ふむ、それにしても」

「何ですかベタベタ触って」

 

酔っているのかボディタッチをしてくる祭。

 

「主だって部屋に仲間を連れ込んで仲間を触ったり声を聴いてるではないか」

「ほお」

「荊軻。それだけだと誤解されるから」

 

荊軻は間違った事は言っていない。ただ言葉が足りてないだけだ。

ただマイルームで楽しく会話したり、コミュニケーションにボディタッチをするなども多いため、周りから突っ込まれたり怒られたりする事があるだけだ。

 

「で、何ですか祭さん」

「いや、やはりなかなか鍛えていると思っただけだ」

「鍛えてますからね!!」

 

前線に出て戦うと言っても指揮官のようなもの。自ら戦うことはしないが体を鍛えておいて損は無い。

実際に鍛えておいてよかったという場面はいくつもあったのだから。

 

「そういえばお主は軍師であったな」

「みたいなものです」

「だが智謀があるならそれでも良し。戦うということは武力が全てではないからな」

「ああ、祭殿の言う通りだ。力だけが全てではない。ここを使うことはとても大切だ」

 

荊軻は頭をツンツンと突いてくる。計画や算段、策、編成。戦いの中で考えることは多くあるのだ。

 

「今も精進してます」

「うむ、頑張れ藤丸」

 

ニヤっと笑って一息に酒を飲み干した。荊軻も祭も手が止まる気配無し。

 

「そう言えば非番じゃないのに良いの?」

「構わんさ」

「それくらいにしといた方が良いと思うよ」

「構わんと言っておるだろう」

「そうかなー」

「構わんと言っておるだろうに」

「祭さんのために言っているんだよ」

「はあ?」

 

何故急に酒を飲むを止めさせようとしていると言うと、彼女の後ろにいる人物と目が合ったからだ。

 

「……」

 

冥琳が鋭い目で祭を見ているからである。

 

「なんじゃ?」

 

酔っているので気付かないのか、冥琳が気配を消しているのは分からない。

間違いなく冥琳は怒っている。そんなのこんな真昼間から仕事もしないで酒を飲んでる将軍を見かけたら怒りもするかもしれない。

 

「祭さん仕事はいいの?」

「仕事など酒を飲みながらしたところで、どうと言うことはあるまい」

(おーっと冥琳さんの目がまた鋭くなった)

 

このあと祭がどうなるのか心配になる。

 

「冥琳さんに見つかったら大変だね」

「なぁに、あんなひよっこに何を言われても気にせんわい」

 

何でも周家のご令嬢である冥琳は昔泣き虫でよく苛められていたのを助けたそうだ。

その話をしたら更に冥琳の目が鋭くなった。

 

(ゆっくりと近づいてきてる)

「ふふ、なら冥琳殿に見つかっても気にせず酒が飲めるということだな」

「おおとも。荊軻よまだまだ飲むぞ」

 

荊軻も最初っから気付いているのでこの後に起こる事を予想しながらニヤニヤしている。

 

「そもそも冥琳はいつの間にか偉そうな物言いをするようになってしまってなぁ…儂はあんなふうに育てた覚えはないぞ!!」

「私も育てていただいた覚えはありませんが」

「ん?」

 

不思議そうに首を傾けて背後を見ると今話に出ていた冥琳がいた。

 

「偉そうな物言いをするようになってしまって申し訳ありませんでしたな。これからは気を付けるようにいたしましょう」

「なっ…」

 

祭の表情が固まる。

酔いも一気に醒めて顔から赤みが引いて、代わりに浮かんだ冷や汗がタラリ。そして彼女の顔が此方に向き直る。

 

「のう藤丸よ」

「何ですか」

「儂やもしや…虎口に飛び込んだ兎か?」

「もう食べられてますね」

「…既に虎の胃の中か」

 

がしりと冥琳が祭の肩を掴む。

 

「さて、祭殿。そろそろ観念されましたかな?」

「い、いや待て」

「ここでは周りの迷惑になりますから場所を変えましょう」

「…助けろ藤丸!!」

 

祭は応援を呼ぶ。

 

「荊軻、次の店行こうか」

「だな」

「薄情者~!!」

「賢明な判断だ立香」

 

しかし応援は呼ばれなかった。

仕事をサボったら悪いから。

 

 

108

 

 

祭を冥琳に預けて荊軻と町を巡るのを続ける。前にも炎蓮と回ったから知っているが、やはり活気のある町である。

 

「そこのお兄さんにお姉さん。今夜の酒のおともにぜひ、うちの干物を一つ買て行ってくんな!!」

「主、買ってくれ」

「はいはい」

 

建業の町は本当に商売が盛んだ。歩けば必ず声を掛けられる。商売魂が熱い。

そんな街中を歩いていると怒声が聞こえてきた。どんな場所であれ喧嘩は当たり前にあるということだ。

 

「おい、何だよその態度は!?」

(何かな?)

「へっへ、冷たいこと言ってないでオレたちと遊ぼうぜ」

 

喧嘩かと思ったらナンパのようでもある。これは質の悪い人に絡まれているようだ。

こういう時は関わらない方が身のためだが、藤丸立香としては無視できない性分である。荊軻を見るとヤレヤレと言った感じの顔をしているがついてきてくれる。

 

「こっちかな?」

 

人気の無い裏通りに足を踏み入れると、絡まれていたのは知り合いだった。

 

「はあ…」

 

路地裏では人相の悪い3人の男が粋怜を取り囲んでいたのだ。

その状況に粋怜は呆れているようでため息を吐いていた。何がどうなって孫呉の将がチンピラに囲まれているのだろうか。

 

「くっくっく。怖がるなよ姉ちゃん」

「怖がっていないけれど」

「兄貴はな、山犬団の頭目様だぞ!!」

 

どうやら野盗か何かだ。彼女の正体を知らないということは彼らは余所から来た野盗なのだ。

そうでなければ孫呉の将である彼女に絡まないはずだ。

 

「とにかく、あんたたちみたいなのが道端でたむろしていたら、領民が迷惑なのよ。さっさと散りなさい」

 

一応優しく、諭しているようだが彼らはいう事を聞かない。

 

「あのね、何で私があんたたちとお酒を飲まなきゃいけないの。っていうか自分の顔見た事あるかしら。私とつり合いが取れると思ってるの?」

 

彼女の澄ました態度に頭がきて彼らは今にも腕力に訴えそうな気配だ。

 

「言うな彼女も」

「だね」

 

彼女の強さならば3人のチンピラなら簡単に一蹴できるだろうが、ここまで来て大丈夫だと思っても引き返せないだろう。

 

「ここは穏便に済ませよう。荊軻、リーダー格を頼む」

「了解した」

 

荊軻がスっと消える。

 

「よし…そこまでー!!」

 

藤丸立香が路地裏に突撃。

 

「え、立香くん?」

「なんだなんだ、この小僧?」

 

チンピラたちの視線が藤丸立香に集中する。

 

「彼女とても嫌がってるじゃないか。女性の嫌がることは男としてやってはいけないんだよ」

 

前にランスロット(セイバー)が言っていた。というよりもカルデアにいる円卓の騎士全員が言っていた。

 

「小僧が、場違いなんだよ!!」

「そうだそうだ。この方を誰だとーー」

「山犬団の頭目でしょ。さっき聞こえてきたから」

 

頭目が顎をクイっとすると手下2人が藤丸立香の前に出てくる。顔はニヤニヤしている。

きっとこんな小僧ごとき、いくらでもどうにでもなると思っている顔だ。確かにそうかもしれない。藤丸立香1人だけだったならば。

 

「このまま何知らぬ顔で消えるなら痛い目に合わないぜ」

「そうそう。痛い目に合いたいって言うなら、いくらでも手伝ってやるがな!!」

 

笑われてしまう。だが頭目を見て、粋怜も見る。今の周囲を確認。

自分とチンピラたちの距離も確認。まだ相手の間合いに入っていない。

 

「…荊軻!!」

「もう終わっている」

 

音も無く荊軻は匕首を山犬団の頭目の首に突き付けていた。

 

「え?」

「あら」

 

いきなり現れた荊軻にチンピラは動揺が走る。

 

「余計な動きはするな。そこのお前たちもだ…余計な動きをすればこの匕首がお前たちの頭目の首を貫くぞ」

 

匕首はもう山犬団の頭目の首とは目と鼻の先。荊軻の腕なら本当にチンピラが余計な動きをしたら首を斬ることができる。

これにはチンピラたちも嫌でも分かるってものだ。

 

「お、お前ら動くな。動いたら俺が死ぬ!!」

 

先ほどまで威張っていた頭目の顔は真っ青だ。

 

「さて、どうすればよいか分かるな?」

「へ、へい。すぐにでもこの場から消えますんで!!」

「それとそこにいる女性だがーー」

 

更にチンピラたちは粋怜の正体を知るや否や脱兎の如くに逃げ出していった。

呉の土地では孫呉に連なる者たちの名前は絶大ということだ。

 

「ありがとう立香くん。荊軻」

「粋怜さん大丈夫?」

「ええ。それと、さん付けは余計ね。粋怜でいいわ」

「じゃあ、粋怜」

「そうそう。私のことは呼び捨てでいいわ。せっかく真名を預けたんだから、ちゃんと粋怜って呼んでちょうだい」

 

呼び捨ての方が粋怜としては嬉しいようだ。他人行儀だとどこか慣れないらしい。

それなら藤丸立香も気が楽というものだ。

それにしても彼女は綺麗で優しいお姉さんだ。カルデアだとブーティカやエレナに近しい気がする。

最初に合った時も好印象でとても話しかけやすい人だった。

だけど優しいだけではない。彼女は孫呉の武将であり強さもある。前に兵士たちの訓練を見学させてもらったけど、その姿はまさに覇気ある将軍であった。

兵士たちは粋怜の号令にそろった動きをしていた。ああいうのが精鋭揃いの軍と言うのだ。訓練を見ていてその迫力に感動したくらいだ。

でも何故か訓練にいつの間にかに参戦させられていたけれども。あれは大変だった。

でもこなした。これでもレオニダスのスパルタ訓練をこなしたことがあるのだから。その時は他に見ていた祭や雷火に褒められたものだ。

 

「ありがとうね」

「活躍したのは荊軻だよ」

「なに、私は主の指示に従ったまでだ」

「指示?」

 

指示と言っても簡単なものだ。先ほど起こった事なのだから。

まず藤丸立香が現場に赴き、視線を集める。その隙に荊軻が気配を消して山犬団の頭目の背後に回る。

頭目の性格からして自分は前に出ず、安全なところいる性分だと予想。それが正解で部下2人を藤丸立香に仕向けた時点で頭目の安全は無くなった。

部下2人が藤丸立香の間合いに入る前に荊軻が頭目の首に七首を突き付けて終了。

 

「へえ、そういう指示だったんだ」

「まあ、俺がいなくても荊軻だけでどうにかできたと思うけどね。っていうか粋怜だけでも大丈夫そうだったけど」

「まあね」

「言い切ったよ」

 

でも事実だから仕方ない。彼女の腕ならば先ほどのチンピラなんて脅威ではないのだから。

 

「それでも助けに来てくれたって事実はお姉さん嬉しいわ」

 

彼女としては久しぶりに異性に助けられたのが新鮮なのだ。

 

「立香くんって、すっごく勇敢なのね。お姉さん惚れちゃったよ」

「またまたー」

「本当だって。ふふっ、もしかして立香くんは困っている女の子がいたらほっとけない性質なのかな?」

「我が主は女だろうが男だろうが、困っていたら手を差し伸ばす性分だ」

「あら、やっぱり」

 

そのおかげで損をしたり、助けられたりと多々ある。お人好しということだ。

だけどそれが藤丸立香の良いところの1つである。荊軻もそれが分かっているので微笑している。

 

「ま、それは良い男の条件よ。本当に惚れさせてね」

「いきなり何を言うんですか」

「だって、いずれは立香くんの子を産むかもだしね」

「だから、それはぁ!?」

「もー、立香くんったら、かーわいー」

 

からかわれた。

彼女は普段バリバリのキャリアウーマンだがプライベートだとプライベートだと気さくで陽気なお姉さんだ。

こういうのもみんなに慕われている要因だ。だがからかうのは止めて欲しい。変に期待してしまうと言うかなんというか。

そんな時にすすっと近づいてきて耳打ちをしてくる。

 

「でも冗談じゃないからね。いつか良い男になったら私はいいわよ」

「心臓に悪い!!」

「はっはっは、主もそろそろ慣れろ」

 

似たような女性はカルデアにいたけど、このようにグイグイ来るのはドキマギするものだ。

もっとグイグイ来る女性英霊もいるけど。

 

「そう言えば立香くんたちって今日は非番なの?」

「うん。粋怜は?」

「今日はこのまま警備隊の詰め所に行って、その後にお城に戻るわ。今日はそれであがりよ…よし、じゃあ今晩は食事しましょ。お礼も兼ねてね」

「いいの?」

「ええ。立香くんと荊軻とお酒飲みたいしね」

「俺飲めないんで」

「えー、そうなの?」

 

この後、食事をする事になるのだがエライ目にあったのは言うまでもない。

荊軻は言わずもがな、まさか粋怜までデキ上がってしまうとは思わなかったのだから。

荊軻で酔った人の豹変は慣れているが、まさか彼女も結構豹変するとは思わなかったのだから。

豹変した粋怜は意味深なことを言うし、ベッタリと密着したりと大変であったのだ。しかも酔った荊軻も参戦するのだからもう大変。

それと2人の美人からベッタリで周りの客から嫉妬の目を喰らったのも居心地が悪かった。そして結局収集がつかなくて、こんなので令呪を1角使って燕青を呼んでしまったのであった。

 

「マスター…こんなので令呪使うなよぉ」

「俺1人じゃ無理」

「まあ、今のマスターはおんぶに抱っこな状況だしな」

 

どちらか1人を引き取ってもらいたい。

その後は城に帰って冥琳に言われた客室に粋怜を寝かしつけてその日は終わったのだ。

 

(でも何で冥琳さんは粋怜の部屋じゃなくて客室に運べなんて言ったんだろう?)

 

この謎は後日知ることになる。

 




読んでくれてありがとうございました。
次回はまた未定です。早く更新出来たら更新します。

さて、またまた日常編でした。立香たちだったらこんな感じの物語になるかなっと思いながら書きましたね。次回も日常編です。それが終わりましたら物語は進みます。

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