Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
何だかんだで10月も後半で11月までもうちょっと。
もう1年経過ですよ。
FGOでは新イベントが控えてますね。
聖杯戦線ですけど、どんな物語になるか気になります!!
940
蓮華は山越族の叛乱を早期に鎮圧し、寛大な処遇をもって、彼らと再び盟を結んだ。
揚州の山越族は孫呉に帰順した。その後、孫呉の力を強くするために南海(交州)の山越族と戦い、山越王を下したのである。
何でも現在の南海は太守もあらず、県令たち山越族と結託し、好き放題していたとの事。攻める理由はいくらでもあった。
南海には豊かな耕作地が広くあり、交易品も充実している。呉の国庫を潤沢にしてくれる魅力があり、曹操と戦う前の呉の国力強化にもなったのである。
呉の王として勝利を収め、またその後の統治にも民からは不満の声は上がらなかった。雪蓮の後継者、新たな孫呉の王として誰もが蓮華の実力を認めるところになったのだ。
こうして雪蓮没後の領内も安定の兆しを見せていたが曹操が大陸の北を完全に支配したという情報が届く。
「曹操がついに」
呉と戦後から魏は静かであった。しかしそれは内部を立て直し、完全の大陸の北を掌握するために動いていたにすぎない。
曹操は不安材料を全て処理し、残りの大陸を手に入れようと動きだすに違いない。それこそ呉と蜀を降すために。
「曹操が攻めてくるのは時間の問題じゃな」
唸るように言葉を発したのは雷火であった。その言葉に蓮華たちは同意する。
「私たち呉に戦いを挑んでくるのか。それとも劉備さんとこの蜀のどちらですかね~」
曹操が呉か蜀のどちらを先に攻めてくるのかはまだ分からない。動向を見張っているがまだ動きはないのだ。
「穏。もしも曹操と戦いになったら勝てるか。率直な意見を聞きたい」
「そうですね~……負けはしませんが勝てもしませんね」
「おい、それはどういう事じゃ穏。言っている意味がわからんぞ」
祭は穏の意見に首を傾ける。
「前の時みたいに防衛戦で負けはしません。しかし此方から仕掛けるとなると勝てないという事です」
北の大陸を支配した曹操。その領土は広く、精鋭揃いの呉であっても侵攻する際には呉の軍事力では物足りないというのが本音である。
侵攻したとしても広い領土を律儀に手に入れながらは厳しい。その間に曹操は軍を立て直して攻められたらアドバンテージは向こうにあるのだから。
防衛戦もいつまでも負けないというわけではない。もしも先に蜀を陥落されれば完全に呉は孤立する。それでは防衛戦も敗北するだろう。
「予想はしていたけど…良くない状況ね」
「はい。あまりよくないですね~」
時間の問題という事である。
「うぬぬ…なんと弱気な」
「そう言うがな祭よ。事は簡単ではないのじゃぞ」
「雷火まで」
現実を見れば誰だって呉は魏に勝てるかと言われれば、はっきりと勝てるとは言えない。
国力を高めてはいるが、まだまだ不十分だ。しかしこれ以上、呉の領土を広げるのは出来ない。
「曹操に勝つには何が必要だ?」
「単純に軍事力です」
「それを補うにはどうすればいい?」
「冥琳さまとも話していましたけど~…劉備さんの力を借りるのも1つの手かと思ってます」
「劉備か」
蜀の王である劉備。現在、大陸で魏と呉に並ぶ一大勢力だ。
蜀には多くの腕利きの将や軍師たちがおり、人材の宝庫とも言われている。その分では魏の人材にも負けない。
「蜀も単体では魏に勝てません。ですが我々、呉と組めば魏に勝てる可能性は上がります」
「それでも勝てないのではないのか」
「曹操さんは本当に強いですからね~。でもそれを勝てるようにするのが軍師である私たちの仕事ですので~」
「蜀と同盟か」
呉と蜀の同盟。魏の脅威は劉備も十分承知のはずだ。
共通の敵であり、敵の敵は味方とも言う。一時的でも魏を倒す戦力を確保できるのであれば劉備も願ったりのはずである。
「悪い話ではないけど…劉備は信じても良い人間かしら」
蓮華は劉備という人間を知らない。
反董卓連合でも一瞬だけ顔を見た程度で会話らしい会話もしていない。そんな人間を信じて同盟を組んで良いものかと思うのは当然だ。
「姉様の代では盟約を結んだ相手でもあるから…絶対に組めないとは言えないけど」
雪蓮と桃香は盟約を組めたが、蓮華も同じように組めるとは限らない。
「穏や祭たちは会った事があるのよね。どんな印象だった?」
「そうですね~…炎蓮さまとも雪蓮さまとも、蓮華さまとも違いますがぁ、器が大きい人なのは確かだと思いました」
「儂も一度、会っておるが、あれはまっこと得体の知れぬ者じゃな。何故、左様に次々と人の心をとらえていくのか」
劉備の人を惹きつける力は本物だ。そして天運も持っている。
そうでなければ、あれほどの人材は集まらず、蜀を建国し、王になれるはずがない。
「わしはどうも劉備が奸物に思えてならんの。あれは信用できん」
雷火は劉備に好印象はないようだ。どちらかと言うと祭の言うように得体の知れないという部分が大きい。分からない人物だからこそ信用も何も出来ない。
曹操や蓮華たちのように天下統一を目指しているわけでもないのに魏と呉と同じくらいの勢力まで拡大したのだ。不気味すぎるのだ。
「劉備さんも大陸の平和を掲げているらしいですけど…考え方が違うと思いますね~」
「そうね」
劉備自らが戦を仕掛けるというのはあまり聞かない。あったとしても益州攻略くらいなものだ。
「我々は曹操ばかり敵と思っていましたが、劉備の勢力拡大は目を見張ります。劉備さんは孫呉と同じくらいの大勢力になりましたからぁ。これからのお付き合いは考えないと駄目ですよね~」
「………劉備という人物像が良く分からないわ。今の話だとただ得体が知れず、かつ多くの人を惹きつける人間としか分からないんだけど」
孫呉では劉備と深く関わった人間はいない。居ても雪蓮だけだ。その雪蓮であっても劉備を深く知っていたわけではなかったのだから。
「姉様は興味深い人間だと言っていたけど…」
「ならぁ、もっと劉備さんを知っている人に聞いてみましょうか~」
「え、誰かいるの?」
「はい」
941
執務室にて。
「それで呼ばれたと」
「ええ。劉備について知っている事を聞きたいのだけど良いかしら?」
呼ばれたのは藤丸立香と楊貴妃、徴姉妹であった。
最初は藤丸立香だけから聞こうとしていたが他の者の視点からも必要という事で、中でもよく関わりのある楊貴妃と徴姉妹も呼ばれたのである。
蜀と同盟するには劉備がどういう人物か知る必要がある。
「オレの感想から言うと劉備は善人だよ」
悪か善かと言えば確実に善だ。
「優しい人で戦を嫌う人」
「善人で戦を嫌う者か」
「ええ。劉備さんは優しい人ですよ。民を想い、困っている人をほっとけない人です。私と似てると思いますよ」
徴側も落ち着いた声を話す。彼女と桃香は特に波長が合うのか蜀ではよく一緒に話していた。
彼女の人生経験とも言うべきか桃香は徴側から学ぶものが多いようだ。
「私から見れば甘い夢想家だと思うけどね。あと姉さんに似ていないと思う」
徴弐からは厳しい感想だ。
桃香は確かに善人であり、大陸の平和を願っている。皆が笑顔で戦の無い世界を望んでいる。
話合いで相互理解出来ると目指している。だからこそ徴弐は夢想家と言ったのだ。
現実的には話し合いで解決出来るのならば一番だ。しかし話し合いで解決というのはなかなか難しいものだ。
「夢想家…か」
話し合いで解決し、大陸の平和を実現させる。確かに夢想家らしい内容だ。
戦乱の世で話し合いとは交渉だ。交渉とは如何に自分の利益は得るかの話合いなのだ。
「確かに劉備さまは優しいお方ですね。そして天然系です」
「て、天然?」
「周りの目を気にせず人と違う行動を取る人ですかね。あと会話の受け答えが少しズレてたり、行動が抜けたり」
「そ、そう」
得体が知れない。他の人と違った感性があるというのは天然もその1つかもしれない。
4人の話から纏めると劉備は優しい善人で甘い人というのが伝わってくる。しかしまだ信じられない。
「劉備には不思議な力があるわ。立香はどう思う?」
「不思議な力?」
劉備の不思議な力と言われてすぐにピンと思ったのが『人徳』だ。
「劉備の魅力とは何なの。なぜ、劉備は人を惹きつけるのかしら」
桃香の元には愛紗や鈴々は勿論、朱里や紫苑たち様々な者たちが集まる。まさかの漢の者たちだって集まっているのだから。
漢の一部の者たちは藤丸立香たちが連れてきたのだが割愛。
「劉備の魅力は…やっぱ人徳かな」
「そうですね。彼女の優しさの本質こそが人徳だと思います」
劉備という人間は人と人の絆、信頼を第一に考えている。
長い戦乱で世の中の人間は疲弊している。その中で劉備の元には天下の覇権争いから脱落した人たちが大勢集まっている。
そんな人たちにとって劉備の優しさや彼女の掲げる平和の理想はきっと心地良いのかもしれない。
「ふむ、なるほどの」
「劉備さんは五常の中で信、義、仁の三つを特に重んじるお方のようですからね~」
雷火と穏は反芻するように飲み込む。
「確かにそれも大切なことだ。しかし…」
劉備の掲げる理想がいかに耳に聞こえが良く、その寛容な心に皆がすがりつこうとも、巨大な脅威にさらされれば誰もがそれを夢想だと気付く。それは徴弐の言う夢想家と同意見だ。
天下の人心を束ねるためには、やはり力を示す事がなによりも重要だ。力無い正義ほど、悪しきものはない。
「そうですね。優しい言葉を言うだけでは守れるものも守れません。それを劉備さんは分かっていますよ」
「そうだね。戦が嫌いとか言いながらも戦う事が必要と分かっているよ。それでも甘い事ばかり言う人だけど」
ただ劉備の目指す天下にも理はある。そうでなければ、多くの人が劉備に仕えたり、頼ったりしないのだから。
「ええ。姉様も劉備のことは評価していたようだしね。敵として劉備を侮ったりしないわ」
「敵って…」
「敵になるかもしれないのは否定できないでしょう立香」
同盟を考えているが、結局は他国であるのならばすぐに味方とは考えられない。
「不思議な魅力。人を惹きつける力はマスターと似ているかもしれませんね」
「そうかしら…似てない気がするけど」
徴側の言葉に蓮華はつい反対意見を出した。
人を惹きつける魅力。絆を繋ぐ事、信頼を大切にしている。確かに似ているとは言える。
「ユウユウも似てないと思いますね」
「楊貴妃さんまで~」
「だって劉備様は天然でありながら強かな方ですから」
「天然でありながら強か?」
「えーっと、お腹に一物を持ってる感じですかね」
「ふむ、腹黒いという奴か」
楊貴妃の言葉に雷火は別の言葉で答える。しかし楊貴妃は否定する。
「いえ、腹黒いわけではないですよ。天然な性格も演技ではなく完全に彼女の本質です」
「違うのか?」
「腹黒いと言うよりも頑固者ですね。天然で頑固にも自分の考えを通す性分です」
桃香は天然な性格であるが心の中では常に考えている。どうすれば平和になれるのか、どうすれば分かり合えるのか、どうすれば自分の考えが分かってくれるのか。
甘く夢想家と言われているが、それを実現させるために強かさを持っているのだ。
「それを聞くと油断できん人間じゃな」
「やっぱり立香と似てないじゃない」
「私が言ったのはそういう部分じゃないんだけど、弐っちゃ~ん」
「私も楊貴妃の方に同意見なんだけど」
「この流れだと劉備さんが勘違いされそうなんだけれど」
勘違いも何も本当の事ではある。
優しくて困っている人をほっとけない善人だ。夢想家でありながら頑固にも己の考えが正しいと疑わない。
本気で平和の世を実現しようと動いている。だからこそ彼女のカリスマに惹かれる人間がいるのも確か。
(己の考えこそが正しいと疑わないのも必要な事だよな。だからこそ王としての資質があると思う)
それを貫き通した結果例が異聞帯の始皇帝である。己の行動に疑問を持ってはいけないのだ。
「聞けば聞く程あまり聞かない性質の人間というか王だわ。曹操とも私とも違う。母様や姉様とも違う」
蓮華が思う王のイメージとはかけ離れている劉備。だからこそ興味が無いというのが嘘になる。
「……一度会って話をしてみたいわね」
「なら実際に会ってみるのが一番!!」
バーンと執務室の扉を開けたのは小蓮であった。
「シャオ!?」
「気になるなら会ってみるのが一番!!」
「そうかもしれないけど相手が相手よ」
相手は蜀の王だ。簡単に会えるわけがない。
「大丈夫。手はあるよ!!」
小蓮は自信満々に答えた。
「手があるって…何よ」
「立香がそろそろ蜀の仲間のとこに帰るんだって」
「え、立香の帰る場所はここでしょ?」
「「え?」」
蓮華の返事に藤丸立香と楊貴妃が疑問を感じた。徴姉妹はよく分かってない。ただ一瞬だけ異様な空気を感じたのは確かである。
「立香は孫呉の一員なんだから帰る場所はここでしょう?」
「それもそうだね」
小蓮は気にせず同意した。
「それで話の続きだけど」
蓮華から謎の圧を感じたが一旦置いた。
「今、立香の仲間が蜀に滞在しているからさ。合流しに行くみたいだから私も一緒に付いて行くの」
劉備との交流がある楊貴妃たち。確かについて行けば劉備に出会えるのは確実だ。しかしそれでも危険がないわけではない。
「危険ですぞ小蓮様」
「大丈夫だよ。立香たちと劉備は仲が良いみたいだし。それに立香が私を守ってくれるでしょ?」
小蓮は藤丸立香に抱き着く。
「まあ、襲われる事は無いと思うけど…」
一緒に来たからと言って即、襲う事はない。何なら張三姉妹や何姉妹、孫親子すら連れてきても何も人質等をしていないのだから。
そもそも炎蓮と雪蓮を連れてきても人質として呉に交渉しないほどだ。小蓮を連れて行っても劉備がどうこうするとは思えない。
「小蓮様。貴女様は孫呉の姫だという事を理解しておられるのか」
「だから大丈夫だってばー」
「ぬぬ。確かに立香たちの実力は本物じゃ。大丈夫だと思うが警戒しないわけにはいかん」
雷火の言い分は正論だ。小蓮は自分の立場をちゃんと理解した方がいい。
「小蓮様ではなく、儂が赴こうか?」
「いーやー。シャオが行くのー!!」
「まあ、決まったら一緒に行こうか」
結局は小蓮が付いてきそうだ。彼女も子供っぽいかもしれないが、実際は頭の回る女性だ。
劉備が、桃香がどういう人間が理解できるはずである。
「早速、明日には行こうね立香」
「そうだね」
「何言ってるのよ。立香はここに残りなさい」
「「え?」」
何故か蓮華が藤丸立香を呉から出さしてくれない問題発生。
942
蜀陣営、江陵にて。
「江陵の同盟も正式に締結出来たのね。良かった」
桃香たちはここ近辺の状況確認を行っていた。
「ええ。江陵の水軍も協力してくれるって。長江に蜀の軍船を自由に通す許可はいくつかの交易の優先権で手を打ったわ」
紫苑の言葉に詠は返事を返す。
荊州は大陸の中央に位置し、北部を曹操の魏が、東部を孫権の呉が、そして西部を桃香たち蜀が勢力圏にしている。
その西部の要衝の地、江陵が改めて蜀に協力すると確約してくれたのだ。
「同盟じゃなくて、蜀への併合にした方がいいんじゃないのか?」
「もし江陵の人たちがそれを望むならね。無理やりにするつもりはないよ」
「江陵は交通の要地。どこかの勢力に寄生しなくても自給で十分にやっていける。だから独立気質が強めなの。味方につけるには独立を認めておく方が確実なのよ」
魏や呉も当然、江陵を狙っているが、それは同盟相手ではなく支配地としてだ。
ここで蜀まで支配を目論めば江陵は全方位に抵抗するか、どこかの勢力に選んで属する。
そのようなリスクを冒すくらいならば、最初から独立を認めた上で同盟関係を結んでおく方が良いのだ。
「今の状況で、こうして同盟を組める相手はお互いに貴重です。蜀には水軍も防衛の兵力は不足していますから」
朱里は現在の蜀の痛い所を呟く。
「で、江陵はそんな感じだけど長沙はどうするの?」
「私も璃々もお世話になりっぱなしでしたし、蜀に加わるのは問題ないのですけれど…」
黄祖を失った孫呉との戦いの後。
長沙に戻る道を塞がれた紫苑は、新野や蜀に身を寄せていたのだ。長沙の守備部隊には何かの時には孫呉とは争わずに投降するようには言い残していた。しかし残った者たちは、その命に逆らって孫呉に徹底抗戦を貫いたらしいのだ。
その後、色々な事情や幸運が重なって今も長沙は江陵と同じように呉の一部にはならずにいる。
「蜀の本国とはかなり離れちゃってるし…何かあってもすぐに駆けつるとはいかないのよね。統治だって簡単じゃない」
「ええ。ですから名目上はもうしばらく、独立勢力という形でいる方が良いかと思います。我儘を言って申し訳ありません桃香様」
「気にしないでください。紫苑さんにはこれまででも十分に助けてもらってますし、みんなにとって一番いい道を探しましょう」
「ふふっ。璃々を守ってもらった事に比べれば大した事ではありませんわ」
にこりと笑う紫苑。
「それに長沙を守ってくれていた皆も私たちが世話になっていた恩を返すべきと言ってくれていますから…状況が落ち着けばいずれは」
「長沙の皆さんから慕われてるんですね紫苑さん」
「桃香様にそう言われると気恥しいわね」
実際のところ慕われているはずだ。そうでなければ彼女の立場は戦場から逃げた太守と言われてしまうのだから。
優しくて、厳しくて、寛大。普段の紫苑の様子を見ていれば慕いたくなる気持ちは分かるものだ。
「なら長沙のみんなの期待に応えるためにも呉との件を何とかしないとな」
「そうだね。孫権さんたちこそ、江陵みたいに同盟を結びたいんだけど」
呉も北は魏と接している。勢力を拡大するなら蜀に来るしかない。
「呉は南の交州や呉の内部にいた異民族を勢力下に治めて勢力を順調に拡大させていますし」
「そこまでしたら次は荊州しかないか」
白蓮は呉が侵攻するなら荊州と当たりを付ける。
「はい。ですから今はまず孫権さんに交渉の席に着いてもらえるように、此方の力を示すしかないと思います」
「孫権さんと…戦う」
「取り合えず、顔を合わせられれば早いんだけどな」
顔を合わせれれば早い。確かに桃香としては戦うよりかはまず話し合いをしたいのだ。
しかし件の孫権と顔を合わせたくとも、その縁が無い。どうすれば良いかと考えた時、桃香と北郷一刀は同時に「「あ」」と言うのであった。
「ねえ、ご主人様」
「俺も同じ事を考えてたと思う」
「頼まれてくれるかな?」
「頼んでみるか」
943
荊州の巴丘市街地。
周囲には様々な露店が出ており、賑わっていた。そんな賑わう市街地を普通に何事もなく歩くのは荊軻、燕青、炎蓮、雪蓮の4人であった。
「くうぅ~~。久しぶりの外ねー」
「久しぶりって言うが大体外に出てただろーが」
「違うわよ燕青。州を越えてのって意味よ」
雪蓮と炎蓮は蜀で厄介(身を潜めている)になっている。既に亡くなった者になっているが気にせずに蜀の領地内を出歩いているくらいだ。
一応は自分たちの情報が呉や魏に回らないように注意していたがそろそろ大丈夫だろうという事で、手始めに荊州の巴丘市街地まで足を伸ばしたのである。
「お前ら有名人だろ。ちったぁ自重しろ」
「そろそろ私や母様よりも民の視線は蓮華たちにいってるわよー」
「そうだな。流れてくる情報だと蓮華のやつは頑張ってるみてーだし」
雪蓮と炎蓮は普通に楽しそうに市街地を出歩く。こういう時はビクビクと変に周囲を気にしない方が怪しまれないものだ。
だからこそ普通に自然体でいるべきなのだ。
「まあ、炎蓮の言う事は間違ってないな」
荊軻は酒瓶を口に近づけ、雪蓮と炎蓮も同じようにする。周囲からは昼間から酒を飲む酔っ払い美女にしか見られないだろう。そして燕青は酔っ払い美女の介抱人。
「そう言えば私たち以外にもここに来てる人たちがいるんだっけ?」
「ああ。視察目的で北郷や星たち。そしてここにと言うよりも呉に向かってる孔明たちだな」
荊州は中立の場所だ。しかし現在だと三国に囲まれている状況である。
魏も呉も狙ってる状況であるが、なかなか良好なのが蜀である。そうでなければ江陵と同盟は組めない。
蜀と荊州は良好だからこそ、より良い関係に進める為に視察をしているのだ。
「たぶんだが荊州は蜀が獲っていくだろーな」
炎蓮がポツリと呟く。
「でもうちが黄祖からぶんどった長沙がある…いえ、徹底抗戦されてたわね」
「黄祖に忠誠を誓っていた奴もいただろーが、どっちかっつーと紫苑の為ってのもあるだろうぜ」
「紫苑殿も悪い人じゃないからな」
今更ながら荊州には良い思い出が無い炎蓮と雪蓮。ある意味、荊州は因縁の地でもあるのだ。
「紫苑さんかー…あの人良い人だけど怒らせると怖いのよね」
実は怒らせてしまった事がある雪蓮であった。
「それはお前が馬鹿だからだ」
「ひっど」
それでも怒らせた雪蓮が悪い。
「ま、紫苑も大した奴だ。オレぁ認めてるぜ」
炎蓮が認める数少ない人物だ。
「それと孔明たちまで呉に行く事になるなんてね」
「ああ、前にダメ元でアンタらに交渉した件か」
「どっちかって言うと孔明たちの方が本命だと思うけどね。アレは一応的な許可でしょ」
「許可も何もねえだろ。オレらが許可したところで意味ねえ。蜀と呉で決めろってんだ」
雪蓮と炎蓮は桃香からある頼みを受けていた。それは呉との同盟の架け橋になって欲しいという事だ。しかし2人は即「嫌だ」と反対したのである。
その答えを予想していたのか特に食い下がる事は無かった。どちらかと言うと呉と同盟を検討している事の報告にすぎない。
「オレらは呉と縁があるからなぁ。蜀の誰かが使者で行くよりかはオレらの誰が行った方が印象が悪くねえんだろ」
だからこそ本命がカルデアの孔明たちなのだ。実際のところ孔明も断ろうとしたが結局は同盟は蜀と呉が決める事だ。使者的な仕事くらいは問題ないと判断したのである。
貂蝉たちに確認したら「構わないわよ~」と言っていたくらいだ。
「孔明もただ同盟を考えていると伝えるだけって言ってたし、そっから先は蜀と呉の問題だ」
蜀と呉の同盟に深く関わるつもりはない。
(深く関わるつもりはないのだが…深く関わっている状況だ)
三国に深く関わらないと決めていたが今では結局のところ関わってしまった。そういう運命なのか外史の流れに巻き込まれたのか分からない。
「雪蓮よ。立場的にまだ呉王だったら同盟を受けたか?」
「私だったら?」
「ああ」
「そうね。たぶん受けなかったと思うわね」
ピシャリと反対する。
「それは桃香の事を知らなかった場合ね」
桃香は良い人間だ。そして甘すぎであり、夢想家だ。雪蓮はそんな人間を同盟相手にはしない。
個人的には友好関係は結べるかもしれないが、国を背負う王の立場からしてみれば結べない。
「でも、蜀に来て桃香と話してからは考えが変わったわ。今の桃香なら同盟は結んでるかも。だって彼女なかなかの曲者だしね」
軽く「ニシシ」と笑う雪蓮。
「まあ、ただの甘ちゃんじゃねえわな。でなければ魏と呉に並ぶ国を建国出来ねえ。あいつは持ってる」
炎蓮も桃香の事は認めている。彼女には曹操や雪蓮、蓮華には持っていないモノを持っているのだから。
「ま、すぐに殺せそうなほど弱いが」
「そんな事を言うと怖い臣下が殺気を向けるぜぇ」
「愛紗や鈴々だろ。あいつらとは面白い戦いが出来そうだ」
「うちの母親が戦闘狂な件」
「人の事言えんだろう」
「荊軻もひどっ」
ワイワイと雑談し合う4人である。
「それにしても早く立香帰ってこないかしら…って、ちょ!?」
「ん、こっちだ荊軻、燕青」
グイっと引っ張られる荊軻と燕青。
「何だよ?」
「何でシャオがここにいるのよ!?」
雪蓮と炎蓮の視線の先には呉に向かった藤丸立香たちと何故か小蓮がいた。
読んでくださってありがとうございました。
次回の更新は2週間後くらいを予定しています。
940
蓮華たちは蜀との同盟を考えています。
941
立香たちから劉備の人間性を確認中。
恋姫の劉備は時代的にも珍しいと言われるくらいの人物ですからね。
珍しいというか時代的に合わないと言うべきか。
蓮華が立香を呉から出してくれない…。(でも出ます)
942
桃香たちも同じように呉との同盟を考えてます。
まあ、原作の流れと同じです。
943
呉と蜀の同盟の話の流れは徐々に原作からオリジナル展開になっていきます。
炎蓮と雪蓮の存命やカルデア組が関わっていきますからね。
雪蓮と炎蓮はシャオちゃんを発見してちょっと焦りました。