Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
FGOではついにバレンタインイベントが始まりましたね。
どのような物語になるのか気になります。
そして各英霊たちのバレンタインイベントが気になります!!

きっと甘いひと時になるのでしょうね。
そして今年にも激重サーヴァントが現れるのか…。


三面同時侵攻作戦のその後

983

 

 

三面同時侵攻作戦後にて。

 

「何回目だっけカルデア会議」

 

藤丸立香たちが会議を始める。今回の議題は武田の鬼女と鬼たちについてだ。

 

「三面同時侵攻作戦の裏で鬼たちの襲撃があった。そいつらは武田八鬼将と名乗ったそうだな立香?」

「うん。孔明先生」

「私たちもちゃんと聞いたぞ」

 

藤丸立香だけでなく一緒にいた司馬懿(ライネス)たちも聞いていた。

武田八鬼将。その名の通り武田に仕える八体の鬼という意味に聞こえる。

 

「武田信玄には武田二十四将と言う家臣団がいた。カルデアにいる本人からも聞いたよ」

 

マイルームで武田信玄と会話していた時に出てきた単語だ。なかなか中二病をくすぐられるもので聞いていた時はカッコイイと思っていた。

 

「武田八鬼将は武田二十四将から取ったものだろう」

「オレもそう思う」

「私も同意だ」

 

部隊を作る際に人の名前を付けるのであれば、まさにその名前の人物が大将のはずだ。武田二十四将という名称なのに大将が上杉謙信ではおかしい。

であれば、武田八鬼将の大将は間違いなく武田を名乗る人物で間違いない。

 

「今回の鬼の大将はこの外史…いや、別外史の武田信玄ではないかと思っている。そこの所どうなんだ外史の管理者よ」

 

諸葛孔明はチラリと貂蝉を見た。

 

「……う~ん」

 

貂蝉は外史の管理者の1人だ。答えを知っている人物の1人である。

 

「三国時代の外史が存在するんだ。であれば戦国時代の外史が存在してもおかしくないと思う」

 

もしかしたら殷の王朝時代の外史や春秋・戦国時代の外史だって存在するかもしれない。

 

「外史の管理者として話せないかな」

 

藤丸立香は真っすぐに貂蝉を見る。

 

「……いえ、貴方たちはイレギュラーの存在。何も制約はないわ」

 

彼らは本当にイレギュラーな存在だ。この外史世界に呼ばれたわけではない。

 

「私は外史の管理者として余程の事が無い限り、力を貸す事も助言もしないわ。でも貴方たちはイレギュラーな存在。質問を答える事くらい全然できる」

「吾が会った鬼女は武田信玄で間違いないか?」

「いえ、違うわ」

「なら武田信虎だな」

「あら正解」

 

武田家には様々な血筋を持つ人物がいる。その中で歴史に疎い人物でも知っている名前は武田信虎、武田信玄、武田勝頼の親子三代だ。

三国時代の外史があるならば戦国時代の外史があると仮定し、武田の鬼女と思われる存在は有名所の3人に絞ったのだ。

 

「そうか…奴は武田信虎か」

 

武田信玄の親にあたる存在。本来であれば男性のはずだが俵藤太が出会った武田信虎は女性。もう男性だと思っていたら女性だったのは驚かない。

 

(カルデアでもこの外史世界でも些細な事になってるし)

 

もうどんな相手であれ男性だと思っていた人物が女性だったなんて驚かない。

 

「武田信虎は日本の人物だ。三国時代に鬼となってここに存在する事は限りなくイレギュラーじゃないのかな?」

「立香ちゃん。限りなくじゃなくて…完全にイレギュラーよぉ」

 

実は三国時代の外史の武将と戦国時代の外史の武将が会合した外史が存在するのだが、それは言わない貂蝉。

なぜならこの外史世界はそもそも別外史と繋がる事はない外史なのだ。だからこそ戦国時代の外史の武田信虎がこの外史世界に存在する事があり得ないのだ。

 

「間違いなく于吉ちゃんの仕業でしょうね」

 

外史の管理者であれば別外史を繋げる事は出来る。しかし悪い影響を与えるのであれば別外史の人物を呼ぶ事はそうそうに無い。

 

(于吉ちゃんめ。やっぱりこの外史に大きな影響を与える為に色々とやってるわね。あの影姫然り、八傑衆然り)

 

まさにカルデアで言う特異点にでもしようと思うくらいの暗躍だ。

 

「鬼たちの狙いは三国だって言っていた。今のところ大きく動いていない。もしかしたら狙いは赤壁なんじゃないかと思ってる」

「立香ちゃんの言う通りだと思うわ」

 

赤壁の戦いは何度も言うように三国志でも有名な戦いだ。まさにターニングポイントになる。

 

「于吉ちゃんの狙いは赤壁ね。貴方たちのいう所のターニングポイント。もしも鬼たちが三国を赤壁で滅ぼしたらこの外史はおかしくなるわ」

 

もしも鬼たちが赤壁で三国を滅ぼしたら三国時代は終わり、この外史は別の外史になるかもしれないのだ。

劉備たち三国志の人物たちが活躍するからこその三国時代の外史なのだ。

 

「そればかりは食い止めないといけないわ。相手が別世界の存在であれば私たちも大きく動ける」

 

貂蝉は握り拳を作る。制約がなければ外史の管理者も戦う事が出来るのだ。

 

「であればオレらは三国の戦いを于吉たちに邪魔させないように裏で動く事を続けるべきだね」

「そうだな。実際に三面同時侵攻作戦の裏で奴らは動いてきたしな」

「今までも力を貸してもらったけど…今回ばかりはより力を貸して欲しいわ」

「もちろん」

 

外史の流れは正常に進めなければならない。

 

「オレらで三国の戦いは邪魔させる事をさせない。けど桃香さんや蓮華たちにも話しておいた方がいいかもね」

「魏の曹操にも話しておきたいね。三国以外にも別の勢力があるとは知っているはずだけど今はどのような存在が動いているかは知っておくべきだ」

 

三国とも于吉たちの勢力は知っている。だからこそ最新の情報は知っておくに越した事は無い。

 

「そうねぇ。本当は知るべきではないんだけど…ここまで関わっちゃうとね」

 

本来であれば知るはずも関わる事も無かったはずだ。だからこそ今の外史はどんどんとおかしくなっている。

 

(この状態での赤壁で何も起きないはずがないわよねぇ)

 

赤壁の戦いは徐々に近づいてくる。

 

 

984

 

 

成都にて。

ある一室から歌声が聞こえてくる。

 

「あら。空丹さま、今歌ってらっしゃいました?」

「そうだったかしら?」

「そのように聞こえましたわ」

 

空丹は鼻歌交じりで張三姉妹の歌をうたっていたのだ。

 

「麗羽が言うのならそうなのね。どこで聞いたのかしら」

 

たまたま張三姉妹の歌が聞こえてきて、記憶に残ったからこそ無意識にうたったのだ。

 

「今は様々な地方から民が集まってきているようですし、街では文化の交流も進んで華やかなようですわ」

「そう。それはいいことね」

 

三国の戦いが始まっているが民たちにとっては変わらずに生活を続けている。戦が始まったからといって民たちは何か出来る事はない。

 

「麗羽殿、あまり下賤なことを空丹さまのお耳に入れぬようお控えください」

「楽しい事を楽しんでなにが悪いと言うんですの。貴女は頭が硬すぎますわ」

「麗羽殿は柔らかすぎて、溶けて流れているようですが」

 

にこやかに嫌味を言い合う2人。

 

「あ、あの…お二人ともそのくらいで」

 

流石に不味いと思ったのですぐに仲裁する月。

 

「そうよ。空丹様だけでなく始皇帝陛下の御前よ」

 

瑞姫も仲裁に入る。

実は始皇帝も一緒にいるのだ。何なら空丹と白湯を自分の膝に乗せている。

 

「あらあら、そうですわね。空丹さまと始皇帝陛下の御前ですし」

 

ピタリと嫌味の言い合いが止まる。麗羽と黄も始皇帝の前では余計な事は言えない。

 

「朕はあまり気にしてないぞ?」

「うう…」

「どうした白湯よ?」

「いえ、始皇帝陛下の膝に乗らせていただいているのが畏れ多くて」

 

同じ皇帝とはいえ、白湯にとって始皇帝は雲の上の存在だ。畏れ多いのは当たり前である。

 

「はっはっは。無礼だと思わんでいいぞ」

「白湯。陛下がこうおっしゃってるから大丈夫よ」

「姉様も少しは気にしてください…」

 

始皇帝は気にしない。空丹も気にしない。

 

(うう…わたしが気にします)

 

でもガッツリ座って離れようとしない白湯である。畏れ多いが正直に言うと安心するのもある。

心の何処かで始皇帝を父親のような存在だと思って安心しているかもしれない。

 

(姉妹であり、同じ天子として育てられたはずだがこうも違うのだな)

 

空丹と白湯は同じ天子である。しかし性格がこうも違うのだ。

姉妹とはいえ、人間なのだから性格が違うのは当たり前だが始皇帝が思うところは空丹と白湯の知識量や常識、自我についてだ。

知識量は少ないが白湯は常識をある程度持っている。しかし空丹は知識量がなく、常識も無いのだ。

 

最初は始皇帝が統治していた民と同じかと思っていたが違った。始皇帝が統治していた民は儒を持たせていなかったが必要最低限の知識や常識はあった。

膝に乗せている彼女は始皇帝が統治していた民よりも常識がなく、儒も持っていない。まるで人形のようだと思ってしまったのである。

 

(傀儡の皇帝であるのならば使いやすいが…ここまでするべきか?)

 

自我すらも薄いような存在が空丹だ。最近では北郷一刀たちと接触する事で少しは改善されているが、それでもまだ自我は薄いし、常識もない。

このような存在にしたのが今は亡き十常侍たちだ。そして目の前にいる黄もその1人。

 

黄は十常侍のように傀儡の皇帝にする為ではなく、清く美しい空丹を守る為に行動している。彼女は空丹を崇拝しており、その為には同僚の十常侍すら殺してみせる。

世情とかけ離れ、神格化している空丹が愛おしくてたまらないのだ。だからこそ今の空丹を変化させる事を嫌がっている。

神のように人とはかけ離れ、清く純粋で、近寄りがたい存在だからこそ黄の思う天子。きっと彼女は生涯を賭けて空丹を世話を続ける。

 

(うーむ。これも歪んだ愛なのだろうなぁ)

 

茨木童子が知ったらこれも「愛、怖いなぁ!!」と言うかもしれない。

 

(しかし、それでもここまで儒を無くすとはなあ。朕でもやり過ぎだと思うなー)

 

本当に心の無い人形のようだ。傀儡の皇帝を作るなら多少は常識を持たせるべきだと思っている。

 

(他に傀儡の皇帝にする以外に目的でもあったのか。もしや…いや、流石に違うだろう)

 

チラリと黄を見る。気付いたのかビクっとしていた。

 

(彼女はそういうつもりでこの子をこういう風にしたわけではない。本当にこの子が美しいと思ったからこそ今を保らせる為に動いているに過ぎない)

 

考えすぎで、空丹を傀儡の皇帝以外に別の目的があると思う事は勘違いかもしれない。

 

(流石の朕もそういう事は思いつかなかったしな。思いついても流石にやらんし。いや、だからこそ彼女をこういう風に…)

「陛下、考え事ですか?」

「む、いや、何でも無いぞ」

 

恐らく違うと思い、その考えを片隅に追いやるのであった。

 

「……今でも、戦いは続いているのよね月?」

 

ふと空丹が月に向けて世情について尋ねる。

 

「はい」

「わたしが何か違うことをしていたら、あの平和なままの日々が続いていたのかしら」

「っ…」

 

彼女の言葉にどう返事をすればいいか分からず、すぐに答えられなかった。

 

「そ、それは、えぇーと」

 

麗羽も同じであった。

 

「恐れながら主上様、世は今でも十分に平和で…」

「ううん。お姉様とわたしたちが皇帝だったときも、世は平和ではありませんでした」

「白湯さまっ」

 

心配をさせないために嘘を言おうとした黄であったが白湯が真実を口にした。

 

「あら、そうだったの」

 

それでも空丹は特に気にした感情はなかった。

 

「あのときのわたしたちは、あまりにも力がなくて、どうしようもなかった、です。だから月たちにも頑張ってもらいましたけど…駄目でした」

 

反董卓連合の事を思い出す。

麗羽は目を背けた。当時は董卓(月)が気に食わなかったというのと、本気で天子姉妹を助けようとしていたのは本当だ。

この会話になると彼女としてはいたたまれない。

 

「陛下。わたしは何をすれば世が平和になっていたのかしら?」

「何をしても無駄だったと思うぞ」

 

空丹の言葉に対して始皇帝はキッパリと酷な返事をした。

 

「始皇帝陛下それはあまりにも…っ」

 

始皇帝のあまりの言葉に黄は反論したくなったが出来ない。どんな相手であれ黄は空丹を守るためであれば強きに出れるが始皇帝だけは無理だ。

圧倒的に存在感が違うからだ。どんな事をしても彼には勝てないと分かってしまっている。

 

「真実だ。何をすればではない…そもそも何も出来なかったはずだ」

 

このような存在になった空丹は何かをするという考えは生まれなかった。だから何をしても無駄だという事だ。

 

「そうなのね」

「ああ」

「こうなったのはわたしの責任なのかしら?」

「そうだな」

「陛下っ」

 

情勢の責任は空丹にある。この事にまたも黄は反論したくなる。月や麗羽も反論したくなるが実際の所は真実だ。瑞姫は分かっているので反論しようとは思わない。

理由があっても責任は空丹にある。それこそが皇帝として生まれた責任である。

 

「空丹よ。其方は皇帝だ。皇帝に生まれたのであれば国の責任は全て其方にある」

 

どの国の王や皇帝であっても同じだ。皇帝や王とは国を管理し、活かさなければならない。

 

「それが皇帝というものだ」

「そうなのね」

 

傀儡の皇帝となり、臣下たちの言いなりとなり、勝手な行動を取らせる事になった。そして国を腐敗させた。

そうなった時に民たちの怒りは皇帝にも向けられる。寧ろ諸悪の根源とも思われる場合もあるはずだ。

 

「暗殺されかけた事もあったのではないか?」

「あったかしら?」

 

自分が暗殺されかけた事すらも分からない。

暗殺なら始皇帝にも何度もあった。何ならカルデアでも荊軻から何度か仕掛けられ、その度に藤丸立香たちに止められた事がある。

チラリと黄や月たちを見る。

 

「ええ、ありましたわ陛下」

 

瑞姫が答えた。暗殺が何回あったかまでは覚えていないが、確実にある事は確かだ。

何せ瑞姫本人がその暗殺事件に立ち会っていた事もあるのだから。

 

「何も知らず、臣下たちが勝手にやった事で国が傾いても皇帝の責任である。だから其方のせいである」

 

この言葉に白湯は俯く。なので始皇帝は頭を撫でた。

 

「皇帝とは国である。国が悪くなったら皇帝も悪いという事になるのだ」

「分かったわ。じゃあ今の世が戦になっているのもわたしの責任なのね」

「そうだ。切っ掛けを作ったのは其方だ」

 

三国が争っているのは空丹のせいではないが、切っ掛けを作ったのは間違いない。

漢帝国を終わらせて、次の時代に移行させた切っ掛けは空丹の代である。

 

「じゃあ、わたしはもう何も出来ないのかしら?」

 

空丹の言葉に始皇帝が答える前に白湯が答えた。

 

「そんな事ないですお姉様。今からでも出来ることはたくさんあります。一刀とか、桃香とか、朱里とか…みんなと一緒に頑張って絶対、戦わなくていいことに出来ます」

「ああ、白湯さま…なんてご立派な。うぅぅ」

 

健気な空丹の意志に麗羽は涙を流しそうになる。

 

「今からでも出来る事はあるのね陛下」

「ああ。今からできる事はある。どうしたいかは其方自身が決める事だ」

 

漢帝国を再建国させてみせるのも、このまま余生を過ごすのも彼女が決める事である。

 

「朕だって終えた後、次に出来る事をしているのだからな」

 

異聞帯の秦帝国が終わりを迎え、始皇帝はカルデアへと召喚された。確かに新たな道へと進んだという意味では、その通りだ。

 

「わたしにも出来るかしら」

「できますよお姉様。わたしも頑張ってますから」

「白湯は頑張り屋さんなのね。きっとわたしよりも白湯の方が上手くやるのでしょう」

「わ、わたしは、その、えっと…がんばります」

 

今の言葉は次の皇帝は白湯だと言っているようなものだ。

 

「ねえ、陛下のお話をもっと聞いてみたいわ。陛下も国を危うくさせた時はあったのかしら?」

「ああ、あるぞ」

 

ケロっと普通に肯定した。

 

「不老不死を模索し、ヤバイ時期があったからな。アレは今の自分でも駄目だと思う」

 

特に不老不死の模索時期の後半あたりだ。

 

「いやあ…更に別の朕が国を丸ごと資源にしたのは相当引いたな」

「別の朕?」

「ああ、こっちの話」

 

ある微小特異点での話。

 

(白湯様が次の皇帝に…そんな可能性もあるのですね)

 

反董卓連合が月たちの勝利であったのならば白湯が皇帝として国を統治していたかもしれない。しかし実現せず、今は三国の戦いになっている。

三国の戦いに天子姉妹がどう関わるかは分からない。

 

(本当に、次の戦いで終わりになるといいですね。空丹様や白湯様のような方を出さないためにも)

 

時代は変化し続けるものだ。

 

 

985

 

 

魏攻略作戦が一旦、頓挫した事で蜀も呉も当面は国力の増強にリソースを振る事になった。

蜀と呉は、つかず離れずの距離を保てており、間に入った長沙で紫苑が良い働きをしてくれているおかげでもある。

 

魏は今すぐ二国を攻めようという動きをしておらず時折、ちょっかいをかけてくる程度だ。合肥では呉軍の奮戦でしっかりと食い止めている。

今この時だけを切り取れば、仮初めの平和みたいなものだ。三国の体勢が整ったところで、また大きな戦が始めるのは決定的である。恐らく次の大きな戦いは漢水になるというのが軍師たちの見立てだ。

 

「嵐の前の静けさだなー」

 

ポツリと呟く。

 

「それってどういう意味なの立香?」

 

言葉の意味まんまだと思うが、実際は少し違うのかもしれないと思って蓮華は聞き返す。

 

「何か嫌な予感がするって意味。今は不気味なほど静かすぎて、これから何か起こるんじゃないかって事かな」

「なるほど。確かにそうかもしれないわね」

 

三面同時侵攻作戦後の三国は大きな動きをしていない。呉と蜀の戦相手である魏もちょっかいをかける程度だ。

時が来たら魏は三面同時侵攻作戦の仕返しと言わんばかりに動く可能性はあるのだ。

 

「かもしれないではなく、確実に起こる」

 

雷火は当然だと言わんばかりだという顔。実際にその通りなのだから誰も否定しない。

 

「お主もそう思うじゃろう黄忠殿」

「はい。私もそう思います」

 

黄忠もまた同意した。

 

「お茶とお菓子をお持ちしました」

「月すまないが私は自分のがあるので大丈夫だ」

「はい。分かりました司馬懿さん」

「すまないな月。客である貴女に給仕させるなんて」

「いえ、好きでやらせてもらってますので気にしないでください孫権さん」

 

お茶とお菓子を全員分用意する。

 

「ユウユウもお手伝いしますね」

「お願いします楊貴妃さん」

「お任せください」

 

説明が遅れてしまったがここは呉の建業。孫呉の本拠地である。

藤丸立香はお茶を口を啜って一言。

 

「そう言えばオレは何でここにいるんだろう?」

 

つい最近までは蜀を本拠地にしていたのだ。何ならもう蜀が本拠地で良いかと思っているほどである。

 

「何言ってるのよ。立香は呉の人間なんだから当たり前でしょ?」

「あ、はい」

 

当然だと言わんばかりに蓮華はハテナマークを出しながら首を傾ける。

一応、理由を述べるならば三面同時侵攻作戦が終わった後に藤丸立香が孫呉より戻ってこいと言われたからだ。それに対して蜀に残ると返事をしたら思春と小蓮によって引き摺らて呉へと連行されたのである。

 

鬼たちが三国を狙っているという情報を伝える事もあったので、呉に向かう事は決まっていたので悪い事ではないのだが。

司馬懿(ライネス)と楊貴妃は言わずもがなマスターの護衛だ。他に燕青と秦良玉、玄奘三蔵もいる。

 

「黄忠殿。今回の連絡表も分かりやすく助かったぞ」

「蜀と呉の為ですもの」

 

紫苑が呉にいるのは連絡員だからだ。以前の同盟会議で彼女は長沙を呉に明け渡すと同時に呉と蜀の間に入る連絡員に任命されたのである。

呉と蜀を繋げる為にしっかりと仕事を全うしているのだ。

 

「月ちゃん。こっちの資料をしまっておいてくれるかしら」

「はい。分かりました」

 

月は紫苑の補佐として付いて来ている。最初は詠たちに反対されたが月自身がもっと力になりたいと強く希望した為、通ったのである。

 

「此方での仕事が終えたら次は江陵ね」

「連絡員は忙しいの」

「今だけですよ」

 

次に江陵に向かうのは蜀と江陵の人たちとの交流を調整するためだ。

桃香たち荊州の紅陵まで赴き、正式に蜀に加わった人たちへの挨拶と呉との交流を深めようとしている。挨拶回りというやつだ。

そうやって顔を繋いで回るのが大切であり、魏との戦時下でも必要な事だと桃香は思っている。

その行動に北郷一刀や朱里たちも文句は言わない。

 

「そう言えば今度、劉備と今後の事に関して会議があったわね」

 

三面同時侵攻作戦は痛み分けで終わったが戦いは終わりではない。次の戦いに向けての作戦会議だ。

 

「場所は夏口だったわね」

「はい。玄徳様が江陵での視察が終わり次第、夏口に向かうとの事です」

「分かったわ」

 

魏との戦いは次こそ勝ってみせる。それが蓮華の意気込みだ。

 

(母様、姉様…見ていてください。私は必ず勝利してみせます)

 

その2人は蜀からガッツリ見ているのだが彼女は分からない。

 

 

986

 

 

孫呉で藤丸立香のちょっとした一日を知った者たちの話。

机に緑茶と月餅を用意するのは月と楊貴妃だ。その机を囲うように座るのは楊貴妃と月、紫苑、司馬懿(ライネス)、秦良玉。

 

「マスターは?」

「今なら三蔵殿と燕青殿と座禅をしてますよ」

 

座禅は精神統一をさせる方法だ。興味本位で小蓮や明命も参加している。

 

「そうですか。では、孫呉でのマスターの状況を報告します」

「いや、報告するように頼んでないんだが?」

「司馬懿ちゃんストップ。言わせてください」

「あ、はい」

 

楊貴妃に呼ばれて来たはいいが何をするか聞いていなかった。単純に飲茶するだけかと思っていたが雑談の中身は姦しい内容になりそうである。

 

「呉でのマスターってばモテモテ過ぎませんか!?」

「カルデアと変わらないんじゃないか?」

「そうですけども!!」

 

カルデアでもマスターはモテモテである。

 

「何なんですか。呉の将や臣下たちがほぼ絆されるじゃないですか」

「いつもの事だな」

「そうなんですけども!!」

 

ほぼ誰とでも仲良くなれる藤丸立香。ビーストクラスのドラコーとも絆を紡いだのは驚かされたものだ。

 

「危ないですよ。マスターが干乾びちゃいますよ!!」

「あの…干乾びるとは?」

 

楊貴妃の言葉に疑問を抱く月。

 

「マスターは呉の…その、種馬なんですよね?」

 

今でも何で藤丸立香がそのような立場になったのか理解していない。

 

「あんなにたくさんの人から搾り取られたら木乃伊になっちゃいますよ!!」

 

そう言われれば「あー」となってしまう。

 

「たぶん大丈夫なんじゃないか?」

「…私もそう思います」

 

司馬懿(ライネス)と秦良玉が否定する。

 

「何でそう思うんですか?」

「だって………」

 

急に黙る司馬懿(ライネス)と秦良玉。

 

「……はっ!?」

 

楊貴妃は2人に対して詰め寄る。

 

「そういう事なんですか。そういう事なんですね!!」

 

どういう意味か分かってしまった月と紫苑。

 

「あうう…」

「立香さんって実はぜ…元気な方なのねぇ」

 

月は顔を赤くし、紫苑は「あらあら」と想像してしまう。

 

「それは置いておくにしても…それでもマスターがいつ襲われてもおかしくありません!!」

「はうう…襲われるなんて」

「だって、実際に危なかった事がここ数日でありましたよ」

 

迫られるという意味で何人もいたものだ。

 

「粋怜様は何ですか。自分はマスターに身体を好きにさせる権利があるって。でもなかなか清算してくれないから自分から清算するしかないって何ですか!!」

「それは私もよく分からないな」

 

その件は賭博場での賭け金だ。粋怜が賭けで負けたから代わりに藤丸立香が勝利し、粋怜の身体を好きにしていい権利が手に入ったという事である。

藤丸立香本人としては自分が欲しいから勝利したわけではないのだが粋怜としては悪戯するように迫ってくるのだ。

 

「本人は満更でもなさそうなのがまた…」

「そう言うのであれば祭殿もそうですかね?」

 

秦良玉がポツリと呟く。

 

「そうですね。祭様は距離が近すぎると思います。炎蓮様のようです」

 

異様に距離が近い祭。酒を飲んでいた時ではその場の勢いで色々とありかけた事がある。

 

「私が一緒に居なかったら危なかったところでした」

「秦良玉様グッジョブです」

 

秦良玉の護衛は完璧である。最もその護衛が危ない時もあるのだが。

 

「その面子で言うならば雷火殿は可愛いものだな」

 

自分で用意した緑茶を飲む司馬懿(ライネス)。最近は自分で用意した紅茶が少なくなってきて寂しいものだ。

 

「そうですね。あのお方は節度はありますので…しかし、そういうのに興味なさそうでありながら雷火様はマスターを気になっていますね」

 

仕事でよく注意されたり説教されたりするが、それは気にかけているからである。しかしその中で別の気持ちも含まれている。

 

「炎蓮殿もそうですけど、呉の重臣に気に入られてますね立香さんは」

 

紫苑は成都での藤丸立香と炎蓮のやり取りを見ていると何処からどう見ても遠慮のない仲という感じだ。

炎蓮が言うには何故か自分を含めて4人とも藤丸立香に出会った時から気に入るのが速かったらしい。理由があるならば「あいつ」に似ているからかもしれないとの事。

「あいつ」とはと聞くともう顔や声も思い出せない昔の仲間らしい。

 

「これだけ聞くと年上に気に入られてますね」

「そうですね。ね、紫苑様?」

「あのユウユウちゃん。何でここで私を見るのかしら?」

「いえいえ、ジーー」

 

秦良玉も見る楊貴妃であった。

 

「あの…楊貴妃殿?」

「年上キラーって奴ですねマスターは」

「ある意味、カルデア含めてほぼ全員が年上であるけどね」

 

歴史観点から見れば英霊や外史世界の人物たちは藤丸立香よりも年上ではある。

 

「更に…孫三姉妹もですね」

 

特に次女の蓮華の好意や依存が危ない気がすると感じるのだ。

 

「雪蓮さんや孫尚香さんは真っすぐな好意を感じますけど…孫権さんはまた違う感じがしますね」

 

月は蓮華に何か自分に近しい何かを感じるので、すぐに分かったのだ。

 

「そうですね。あの方は強敵ですよ」

 

カルデアでもライバルは多いが外史世界でもライバルは多い。

 

「まずいですよ。あれはどんどんとズブズブな感じになります。ユウユウには分かります」

「そうかしら?」

「私もそういう風には見えませんが…」

 

紫苑と秦良玉は蓮華がそんな重いような感じには見えない。

 

「…私は分かるような気がします」

「月ちゃんはやっぱり分かりますよね!!」

「あの…楊貴妃さんやっぱりってどういう事ですか」

「……月餅美味しいですね」

 

それは月もまた依存気質を持っているからだと言えない楊貴妃であった。

 

「他にも冥琳様や梨晏様もですし…明命ちゃんたちも。マスターってば本当にもう!!」

「そこは弟子のしょうがないところさ。あの性質は変わらないさ」

「さっきから司馬懿ちゃんは余裕ですね」

「まあ、私は師匠だからね。言っておくが自称じゃないぞ?」

 

カルデアで数少ない自称ではない本当の関係だ。

 

「それを聞くと立香さんの仲間に自称する人が多いように聞こえるのだけれど」

「紫苑殿。我々の仲間にはその、自称する者が多く…」

 

この外史世界には居ない英霊の話だ。

 

「自称って何を自称しているのですか?」

「妻、恋人、母、姉、妹、家…」

「「え?」」

 

紫苑と月がよく分からないと言った顔をした。

 

「安心してくれ。我々も同じだ」

 

普通に聞いていると勝手に妻や姉等を自称するのは危ない人ではと思うかもしれない。

 

「楊貴妃殿。この話はよく分からなくなるので止めた方が良いと思います」

「そうですね…」

 

カルデアはある意味、謎の坩堝である。

 

「話を戻しますけど、これはマスターを守らないといけないということです。明日から出来る限り一緒に…」

「あの、明日には私と月ちゃんは江陵に戻らないといけないの」

「あれ?」

 

江陵に劉備が来る予定だからだ。




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新も2週間以内を目指します。


983
カルデア会議。
ついに別外史の鬼や信虎に辿り着きました。
色々とこの外史がおかしくなってきています。


984
空丹や始皇帝たちの話。
空丹が傀儡の皇帝にしては心が空っぽなのに関して。
これに関してはオリジナル設定を付け加えて物語に組み込もうと思います。
この件が物語に大きく関わってきます。

ぐだぐだ書いちゃったかなあ


985
呉でのちょっとした日常回。
それだけ。


986
こっちも日常回
姦しい話。
ぐだぐだでオチなし。

まあ、炎蓮が言う「あいつ」という昔の仲間の話フラグなんですけどね。
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