Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
GWも後半ですね。もう後半かーっと思ってしまいます。

まほよコラボ楽しくゆっくりとプレイ中です!!
ガチャ…青崎さんも久遠寺さんも来ません……石がもうなぁい
う~ん…今逃すと次はいつになるか分からないから頑張るしかないか?


さて、こっちの物語ではついに赤壁編です。
色々と異変が起きてきます。三国次元演義 5章最後の物語になります。




赤壁に集結していく

1001

 

 

赤壁の戦いが近づいている。現段階では決戦が夏口となっているが貂蝉が赤壁と言っているのだからほぼ確実に赤壁である。

この外史世界は色々とイレギュラーが起きているので変化はあるが、歴史の流れは修正しようと動いている。よってこの外史世界の歴史は赤壁の戦いが起きようとしているのだ。

 

藤丸立香たちは夏口方面に向けて赤壁を目指すつもりである。既に先行隊として諸葛孔明、李書文、荊軻、哪吒、陳宮、呂布奉先が夏口に向かっている。

もしも状況が変化していれば連絡が届く手筈になっている。

 

「そろそろオレらも出発しないとな」

 

藤丸立香たちも夏口に向けて出発する。途中で先行隊の諸葛孔明たちが待機しているので、合流して決戦地が本当に夏口か赤壁かが決定する。

念の為の準備行動だが決戦地はやはり赤壁だと思っている藤丸立香。

それ程までに三国志にとって有名であり、重要であり、ターニングポイントであるのだ。

 

「必ず何かが起こる」

 

何かが起こるというよりも于吉や武田信虎、鬼の群が動くはずだ。

三国には三国の戦いがある。そこに于吉や鬼が邪魔をしてはならない。三国の戦いを守る為に藤丸立香たちが于吉たちと戦うのだ。

 

「何だかんだで長くなったわね」

 

貂蝉がポツリと呟く。

 

「正直、立香ちゃんたちがここまで関わるとは思わなかったわ」

 

外史の管理者としてイレギュラーの存在がここまで関わるとはなかなか少ない。

 

(異世界からの来訪者…卑弥呼が連れて来る者たちは他の外史にもいるけど立香ちゃんたちみたいな存在は本当に稀なのよね)

 

何故、藤丸立香たちが呼ばれても、連れて来られても無いのに外史世界にいるのか。それは于吉を捕縛すれば分かる事だ。

 

(わたしたちが呼んだわけじゃない。そうなると于吉ちゃんたちが怪しいのよねん)

 

今回の戦いは貂蝉や卑弥呼たちも出張るつもりだ。今までも完全な異変であったが今回ばかりは今までよりも一番重要な部分だからだ。

 

「立香ちゃんたちを元の世界に戻してあげたいけど…もうちょっとだけ付き合ってねん」

「ここまで来たら最後まで付き合うよ」

「ありがと……あら、お見送りの子たちが来てるみたいよ。行ってあげて」

「見送り?」

 

誰なのかと貂蝉が指さした方に行くと月、傾、瑞姫たちがいた。

 

「立香さん。これから夏口に行くんですよね?」

 

夏口ではなく赤壁になりそうであるが、ここでは言わない。

 

「うん、これから行くよ」

「立香くんたちが蜀呉に加われば魏に勝てそうね」

「だな。あの項羽や始皇帝陛下までもが出るのだろう?」

 

今回の戦いではこの外史にいるがルデア勢全員が参加だ。今までの流れであれば、大きな怪異や鬼の群れが出てくる可能性が高い。

全ての戦力をつぎ込んで三国の戦いを于吉たちより守る。

 

「全員が参加するけど魏と戦わないよ」

「え、そうなの」

「なに、それでは蜀呉が負けるではないか!!」

 

魏の戦力百万という数字は瑞姫と傾の耳には入っているようだ。

 

「オレらが戦うのは于吉と鬼たちだよ。三国の戦いを邪魔させない為だ」

「うーん…」

 

魏の百万という戦力に何姉妹は負けると思っていたようだ。戦の勝利は兵の数によって決まるのが通常である。

普通に考えて誰もが魏が勝利すると思うのは仕方ない。しかしそこを覆すのが軍師の役目であるのだ。

 

「まあ、蜀や呉が負けてもいっか。だって私たちは立香くんたちについていくもの」

「瑞姫の言う通りだな」

「そうなの?」

 

何姉妹は蜀に世話になっているが最終的に所属するつもりなのは藤丸立香がいるカルデアである。

始皇帝や項羽がおり、技術や文化が発達している組織だ。そのレベルは三国を越している。

 

「だから魏が勝ったら私たちを迎えにきてね」

「待ってるぞ。私とお前の仲だろう?」

 

両頬に柔らかい感触が伝わった。

 

「ちょっ」

「ふふ。行ってらっしゃいの口づけ」

「くくく、験を担ぎのようなものだ。美女からの口づけなんて良いものだろう?」

 

嘘か本当か分からないがキス(口づけ)で運気が上がるなんてものがあるらしい。

 

(ふふ、こうやって立香くんには私たちの事を強く想ってもらわないと。既に姉様と繋がりがあるのは良いとして…私もそろそろ)

 

藤丸立香と深く繋がりが出来れば始皇帝とも繋がりが出来る。始皇帝の実力はハッキリいって三国の王たちを越えている。

誰に着くかと言われれば劉備でも孫権でも曹操でもなく、始皇帝と瑞姫は答える。

 

「れ、瑞姫さん、傾さん!?」

「月ちゃんこれくらい普通よ」

「ふええ…」

 

顔が真っ赤の月。そして心の奥で何かがじぇらっと燃える。

 

「月ちゃんもしたら?」

「ふえ!?」

 

より顔が真っ赤になる月。そして迷っている様子であった。

視線を合わせてきたらと思ったらすぐにずらし、また視線を向けてくるの繰り返しである。

 

「月?」

「ふわ!?」

 

声をかけたら驚かれる始末である。しかし何か覚悟を決めた様子の月は顔を近づけてきた。

 

「り、立香さん」

「マスターそろそろ出発しますよー?」

「むむ!?」

 

秦良玉と楊貴妃がなかなか来ない藤丸立香の様子を見に来る。そのせいで月が真っ赤になってフリーズ。

 

「どうしまし……」

「むうう」

 

何かを察した2人。

 

「マスターそろそろ行きますよ!!」

「月さん…抜け駆けは駄目ですよ」

 

既に抜け駆けした何姉妹は逃げていた。そして藤丸立香は道中で説教をされた。

 

 

1002

 

 

先行隊と合流し、決戦地は夏口ではなく赤壁だと情報を得た。

やはり予想通りと言うべきか、外史世界の歴史の流れと言うべきかもしれない。

 

「魏の百万という戦力は凄いな」

 

赤壁へ向けて移動の最中に魏の戦力を見た。まるで河を埋め立てようかというくらいの威容さであった。

曹操が何処からあれだけの数の船を用意したか不思議なくらいである。

魏の軍勢は夏口を抜けて長江の上流へと向かっている。やはり決戦地は赤壁だ。

ここからは赤壁に向かって進み、于吉や鬼を警戒する。

各チーム分けをして各配置に着く。何処から襲撃されても対応できるようにしなければならない。

 

「後輩」

「なにぐっちゃんパイセン?」

「組み分けは私と項羽様にしなさい」

「言われるまでもねえ」

「分かってるわね」

 

項羽と虞美人の夫婦チーム即決定。

 

「他もバンバン決めよう」

 

チーム分けをどんどんと決めていくのであった。チーム分けが決まれば次は配置箇所を決める番である。

 

「ふむ」

 

始皇帝が記憶したここ周辺の地図を水銀で描く。

 

「朕らはここにいる。蜀の位置がここで呉がここ。そして赤壁がここだな」

「船で移動しているから…」

「三国がぶつかる場所はここだろうね」

 

司馬懿(ライネス)の予測に始皇帝も頷く。同じく正確な開戦箇所を予想していたようだ。

 

「そうなると鬼の群れが現れるのはやはり…」

「会稽零式の演算による予測箇所も併せると高確率なのは…」

 

切れ者たちによる各予測を元により精密に陣営を張っていく。いつでも襲撃に備えるようにしていく。

赤壁の戦いが開戦したと同時に武田信虎たち鬼の群れとの開戦にもなるかもしれない。

 

「しかし会稽零式の演算の中でも三国の戦のど真ん中に現れる結果も出たようだが…」

「これは不思議だな。しかし項羽殿が突拍子もない演算結果を出すわけもない」

 

不思議な予測結果もあるが無視せず、可能性が低いとも思わず注意は怠らない。

 

「三国開戦のど真ん中か」

 

俵藤太は成都を出発する前から何かを考えていた。それは何か虫の報せを感じるという事だ。

他の者は特に何も感じていないが俵藤太だけが何かを感じ取っているのだ。

 

「…嫌な予感がするな」

 

俵藤太が嫌な予感がすると言うのであれば、此方も注意しなければならない。元々今回の戦いは警戒度は高く、いつもと別と分かっているから誰かが嫌な予感がすると言えば戦略の中に組み込む。

 

「そうだマスター」

「なに?」

「まだ決戦前だ。呉か蜀にでも行って顔を出していくといい」

「時間あるかな?」

「まだまだあるさ。特に呉の王に会ってきた方がいいんじゃないか?」

 

呉の王 孫権。彼女の心情はほぼ全員にバレてるので決戦前に藤丸立香が会いに行った方が良いと判断した俵藤太。

何処か彼女は依存気があるので決戦前に顔を合わせるだけでも心の余裕が出来るかもしれない。本当はその依存気も治した方が良いと思う所はあるが本人と呉の問題なので俵藤太はまだそこまで口にしないだけだ。

 

「じゃあ…まだ時間があるなら行ってこようかな」

 

藤丸立香を1人だけで行かせるわけにも行かないので秦良玉と司馬懿(ライネス)もついて行く事に。

 

(なんか悪い予感がしますので)

(大丈夫だよ秦良玉殿)

(何だか余裕がありますね司馬懿殿は)

(私は彼の師匠だからね)

 

己が藤丸立香の師匠という絶対の自信があるのであった。

 

「確かに決戦前には…」

 

一応、藤丸立香は孫呉所属となっている。彼らには彼らの戦いがあるとはいえ、赤壁の戦いに参加できないのであれば顔出しくらいをしなければ後から色々と言われそうである。

 

「赤壁までもうすぐか」

 

三国の動きは目紛るしく動く。

新野での補給線断ち作戦は翠たちの軍が魏軍に大打撃を与えた。しかしその後、無事に桃香たちの本隊に合流したという報せはない。

桃香たち本隊は江陵の奪還は成功したとの事。時間稼ぎをさせられてしまったが呉と合流する前に魏が仕掛けてくるというパターンは免れたようである。

 

しかし新たな情報では曹操たち魏軍は夏口を抜けて長江の上流。赤壁付近へと移動しているとの事だ。これは魏が呉を狙っているのではなく蜀を狙っているという事である。

その状況であれば上流の蜀と下流の呉に挟撃できる状況であるが百万という数により挟撃が上手く行くかと言われれば難しいところだ。

それ程までに魏の戦力をこれでもかと魅せられたようなものだ。

 

「蓮華、それにみんな」

 

藤丸立香たちは呉の本陣に到着する。

 

「立香!!」

 

蓮華が藤丸立香を見た瞬間に暗い顔から少しだけ明るくなる。

やはりと言うべきか、決戦前では緊張や不安が圧しかかっていたようだ。

 

「もう来ないかと思ったわ」

「そんな事ないよ」

 

そのまま天幕へと案内されて、現状況を説明される。既に蜀と合流して、作戦会議が終わっているとの事だ。

今回の戦力差をどうにかするには火計の策が案に出た。この話を聞いて特に驚きはない。赤壁の戦いで火計というのは有名だ。

 

火攻めであれば戦力に関わらず、敵の方で勝手に広まる。しかし広ませるには船同士を接触させなければならない。その工作を色々と仕込んでいるようだ。口には出さなかったが、見かけない祭が既に動いているのかもしれない。

特に運要素の風向きもある。此方に関しては朱里が何とかするとの事。ここで諸葛孔明が祈祷により風向きを変えるというのが繋がった。

蜀と呉では仕込める策は何でも仕込んでいるようだ。決戦までもう少し。

 

「……立香」

「何かな蓮華」

「ちょっと話したい事があるんだけど良いかしら」

「いいよ」

 

2人きりで話したいという事で外に出る。

 

「……もしかして気付いているかしら祭の事」

「祭さんが居ないなってのは思ってたよ。それにみんなの様子が落ちてるのも」

 

百万の戦力だけで士気が落ちているだけではない。他にも要因があるのだ。

 

「……祭と少しあってね」

 

その「少し」とは言い合いがあったという事。簡単に纏めると祭は魏の戦力を見て敗北すると悟り、降伏を蓮華に進言したそうだ。

決戦で孫呉を滅ぼされるよりも降伏して生き残った方がまだ可能性があるという事である。しかし孫呉は曹操に降伏するつもりはない。

その言い合いがエスカレートし、軍議から追い出したのだ。その結果が悪かったのか次の日から祭の姿を見た者はいない。

 

「行方不明って事?」

「……何人かの兵士が祭を魏の船で見たという情報があったわ」

 

この言葉で三国志にもあった黄蓋の妨害作戦を思い出す。

 

「私が悪かったのかしら…でも曹操とはっ」

 

魏との因縁。それは雪蓮暗殺の件だ。結果的には犯人は曹操ではなく、于吉や八傑衆の作戦だったのだが。

 

「何でよ祭」

 

三国志では黄蓋の妨害作戦は周瑜と孫権の奇策という話らしいが蓮華の様子から、妨害作戦に関わっているようではない。そもそも本当に祭が偽って魏に降伏したのかも分からない段階ではある。

 

「そんな事ないよ。きっと祭さんにも考えがあって動いていると思うよ」

 

祭の呉への忠誠は知っている。百万の戦力を見たからといって魏に降るという答えは出すはずがない。

孫呉が不利であっても死ぬまで戦う事を選ぶはずだ。

 

「……でも魏で祭を見たのは本当だそうよ?」

「うん。それが本当でも祭さんは呉の為に戦っているんだ」

 

はっきりと祭が裏切っていないと答えるのであった。

 

「……ふふっ。どこから出てくるの、その根拠」

「何処だろうね」

 

軽く笑ってくれる蓮華。藤丸立香に相談したおかげで少しは気が楽になったようだ。

 

「……王がこんな事を言うのは間違ってると思うけど、勝てるのかしら」

「勝てるのか…じゃなくて勝つと思わないと」

 

戦いで最初から勝てないと思ってはいけない。

勝利への可能性が少しでもあるのならば諦めない。どんな絶望的な差があっても覚悟を決めて戦うのだ。

そうでなければ今までの旅路で勝利出来なかったはずだ。特にORTとの戦いはまさにそうだった。

 

「無茶するなって言われるけど、死ぬ気で無茶すれば勝てるさ」

 

本当に死んだ者からの言葉である。蓮華には分からないが。

 

「……なんだか凄い説得力のあるように感じるわね」

「まあね」

 

赤壁の戦い。王の士気が高くなければ将や兵士にだって影響が出る。

王の辛い所かもしれないが空元気でも見せないといけないのだ。覇気を出し、将と兵士たちを鼓舞せねばならない。

 

「……でも、やっぱり不安なの」

「不安に感じるのは恥じゃないよ」

「だから……勇気をくれないかしら」

 

蓮華の手が藤丸立香の手に重なる。

彼女からは先程とは別の意味で彼女から緊張と不安を感じる。それは藤丸立香も同じだ。

 

「そ、その…」

 

顔が赤く、心臓が爆発するように鼓動を打つ。勇気が欲しいと言ったが彼女としては、その告白も勇気がいるものだった。

「勇気が欲しい」という言葉の意味は、鈍感部分もある藤丸立香でも流石に気付く。

 

「ま、まだ時間はあるし…今日は泊っていくんでしょ?」

「れ、蓮華さん…!?」

 

つい、さん付け。意外にも積極的な蓮華。

この積極的な行動は誰かの入れ知恵でもあるかもしれない。粋怜か穏か、はたまた包や小蓮だったりするかもしれない。

 

「……立香」

 

蓮華の顔が近づき、途中で止まる。その先は藤丸立香から来て欲しいという表れだ。

 

「あー、じれったい。そこは自分からぶちゅーでしょ!!」

「蓮華様は奥手ですからね~」

「マスターも奥手ですからね……むう」

「でも覚悟が決まれば攻勢に出るんだよね我が弟子は」

 

蓮華と藤丸立香の様子を草むらで野次馬根性しているのは上から小蓮、粋怜、秦良玉、司馬懿(ライネス)であった。

 

「駄目だよ姉様。待ってるだけじゃなくて、こっちから行かないと!!」

「まあ、男性の方から来て欲しいというのも分からないでもないがね」

 

この4人は藤丸立香と蓮華が2人きりで話したいという事を聞いて、普通に悪びれもなく後をつけてきたのだ。

 

「それにしてもシャオ様は余裕ですね。きっと自分も、と言うと思ってましたよ」

「流石にね。私も順番は理解してるつもり」

 

順番を理解している。その言葉には色々と意味が含まれている。

天真爛漫・自由奔放な彼女であっても孫呉の姫としての役目は理解している。幼い彼女が一番、大人なのかもしれない。

 

「まあ、最も呉の中で一番に立香の唇を奪ったのは私なんだけどね~」

「「「え」」」

 

幼いけど妖艶さも持ち合わす小蓮。

 

「シャオ様いつの間に」

「私はガンガン攻めちゃうからね」

(だからちょっと余裕なのね。普通に先越されたわ…案外、呉の中で一番進んでいるのがシャオ様だったりするのかもしれないわね)

 

以前に恋愛について聞かれたが上手くアドバイスを出来なかった。何なら雷火も祭、梨晏もだ。

アドバイスを聞いていないのに素で恋愛上達者になりそうな小蓮には驚かされそうである。

 

「こういう子が一番強かなんだよ」

 

司馬懿(ライネス)はカルデアでクロエたちの事が頭に浮かんだ。

 

「分かります」

 

うんうんと頷く秦良玉。

 

「そういう2人も余裕ね」

「まあね」

「ええ、まあ、その」

 

司馬懿(ライネス)と秦良玉の余裕さに感付いた小蓮と粋怜。

 

「そうなの!?」

「やっぱいつもいる方が有利なのかもね」

「どうだったの!?」

 

興味が全てそっちに移る小蓮。粋怜もまた普通に気になる。

 

「えーと、それは」

「獣だったね」

「そーなの!?」

 

南蛮での事件をチラっと話す。話すといっても本当に間接的に話すだけ。

 

「や、やだ立香ったら…そんなに凄いんだ」

「へえ、意外ね。立香はもっとこう…初心かと思ったわ」

「そういう時期もあったね」

「司馬懿…凄い上達者みたい」

 

司馬懿(ライネス)が上達者かどうかは分からないが小蓮からは尊敬の目で見られる事になる。

 

「で、本当の所どうなのリャンさん?」

「本当の所ですか?」

 

ヒソヒソと粋怜は秦良玉に事実確認をする。

 

「まあ、嘘は言ってないですかね」

 

藤丸立香にも初心な時期はあったし、色々な意味で成長しているので嘘ではない。

 

「ふぅん。あっちが獣だったいうのは?」

「その時は特別だったというのもありますけど…はい」

 

秦良玉が当時を思い出して頬を染める。

 

「なるほどね…へえ」

 

興味深いと思う粋怜の顔は意味深ににやけていた。

 

「そうなると蓮華様には荷が重い気がするわね。始める前に立香には手加減するように言った方が良いかしら?」

「立香の好きにさせてあげたいけど…私の時も優しくしてもらいたいな~」

「これから決戦だというのに、決戦前に壊されたら元も子もないしね」

 

気が付けば藤丸立香と蓮華の夜の話になる始末。ペチャクチャと4人が集まって雑談していたら普通は声でバレるものだ。

 

「貴女たち…」

「あ、蓮華様」

 

顔を赤くしていた。これでも勇気を出して告白した彼女としては盗み見されるのは怒る理由になる。

 

「立香、手加減してあげてね。蓮華様は初めてだから。流石に決戦前に腰砕けにしちゃうのはねえ?」

「弟子よ。火遊びもほどほどにな」

「マスター、リャンとしてはあまり手出し過ぎるのは良くないと思います」

「あのさ…」

 

プルプルと震える蓮華。そして蓮華による説教が始まるのであった。

 

「貴女たちいい加減にしなさい!!」

 

 

1003

 

 

今晩は呉の陣営で一泊。

藤丸立香は夜風にあたりに天幕から出る。これから決戦が始まるというのに妙に静かだ。

 

「ついに赤壁の戦いが始まるか……ん?」

 

夜風にあたりに来たのは藤丸立香だけではない。よく見ると冥琳も同じように夜風にあたりになのか天幕の外に出ていた。

 

「冥琳、こんばんわ」

「む、立香か」

 

気付いてくれたようで手招きをしてくれる。

 

「寝れないのか立香?」

「いや、そういうわけじゃないよ?」

「これから寝るのか」

「このあと寝るつもりだけど」

 

夜更かしは不健康の第一歩だ。睡眠は必ず取らなければならない。

 

「蓮華様を腰砕けにしてないだろうな?」

「ちょっ!?」

 

クツクツと笑う冥琳。

 

「決戦前に天の御遣いが呉王を夜戦で行動不能にして魏に敗北するなぞ笑えないぞ?」

「冥琳でもそんな冗談言うんだね」

「冗談じゃないが?」

「冗談が悪い!!」

 

本当に冗談が悪い。そのせいで魏に負けたなんて歴史に残したくないはずだ。

 

「確かに孫呉に血を入れろと大殿が推奨していたが流石に時と場合をだな……いや、決戦前だからこそか」

「だからしてないって!!」

「そうなのか?」

 

冥琳は藤丸立香が歩いてきた方向を見る。

 

(確か彼方の方向には蓮華様の天幕が…)

「ねえ冥琳」

「何だ?」

 

話題を変える。

 

「祭さんの事を聞いたよ」

「……そうか」

 

祭が裏切り、曹操に降伏した事。

彼女の姿を魏の船で見たという者たちもいる。本当に裏切ったかどうか分からないが魏の陣営に祭がいる事は事実に近い。

そのせいで孫呉の士気は少しだけ落ちている。呉の二大看板である祭が魏に寝返ったとなれば士気が落ちるのは当然だ。

 

「祭さんの事だけど、冥琳は何処まで知ってるんだ?」

「……どういう意味だ?」

「祭さんが裏切るわけない。今回の事は冥琳と祭さんの策か?」

 

祭が曹操に降る事はない。

雪蓮が亡くなった(本当は生きてる)戦いで祭は心を怒りで燃やした。

必ず曹操を、魏を倒すと決めているのだから、戦力が圧倒的に開いていても彼女は命を燃やしてでも曹操の喉元に迫るはずだ。

 

「祭さんだけじゃない。きっと皆、魏に降伏するなんて考えは無いと思う」

 

祭の裏切りに関しては理解しているのは三国志の内容を知っているからこそだ。

この作戦は秘密裏に行われている。周囲には誰も居ない事を確認しているからこそ藤丸立香は冥琳に聞いている。

 

「てっきり蓮華は知っているかと思ってたけど、知らない感じだったから2人の策かと思ったんだ」

「………」

 

彼女は答えない。

 

「分かった。もう聞かない」

 

秘密裏の作戦であるのだから、これ以上聞く事は無粋になる。

 

(もしかしたら粋怜や雷火さんあたりも知っている?)

 

ただ祭の安否が気になるところだ。

曹操も雪蓮暗殺の件で負い目があるとはいえ、祭を簡単に自陣に引き込んだとは限らない。

魏では内部に問題があり、雪蓮暗殺事件が起きたのだ。裏切りという点では慎重になっている。

孫呉重臣の祭が裏切って魏に降伏した事を曹操は必ず裏があると予想しているはずだ。

 

「……私は祭殿を信じているさ」

「そっか」

 

黙る2人。そして冥琳は口を開く。

 

「私は蓮華様に天下を捧げる。それが私の役目なのだ」

 

この言葉に嘘はない。本当ならば捧げる相手は蓮華ではなく雪蓮であったが。

 

「雪蓮が亡くなり、私の心に穴が空いた。半身が無くなった感覚だ」

 

冥琳と雪蓮の2人は己たちを一心同体とよく言っていた。比喩であっても本当な気持ちであったのだ。だからこそ雪蓮が亡くなった事が冥琳に大きな傷を与えた。

その境に彼女は変化が起きた。まるで己の身を削ってでも蓮華を王にし、天下を捧げると。

 

「だから曹操に負けるわけにはいかない。それまで死ぬわけにはいかないんだ」

 

前にも似たような事を言っていた。まるで曹操に勝ったら役目を終えると、死を迎えるような言い方だ。

 

「今回の戦いで全てが終わる。それまで力尽きるわけにはいかない。まだ雪蓮の元にはいけない」

「またその言い方。本当に体調が悪いんじゃないか?」

「問題ない。確かに決戦だから無茶はしているがな」

 

見た目は異常無さそうだが元気さというか覇気が無いようにも見えるのだ。しかし決戦に対して気や手を抜くつもりはない。

 

「赤壁での戦いで我が十全を引き出し、魏に勝利する」

「そっか。きっと雪蓮は見ているよ」

「ふふ、そうだな。なら無様な姿は見せられないな」

 

赤壁の戦いの裏では雪蓮と炎蓮も参加しており、赤壁の戦いを守りながら見守るはずだ。

 

「今は時間が無いなら戦が終わったら良い医者を紹介するよ」

「私は大丈夫だと言っているだろう」

「蓮華や梨晏は心配しているよ」

「全く…大丈夫だと2人にも言っているに」

 

ヤレヤレと言った顔をするが、誰かに心配されている時点で大丈夫ではないのだ。

良い医者である華佗に診せれば一発で分かる。そうなれば医者の言う事は聞いてもらうしかない。

 

「それに…いつか良い事というか驚く事があるからさ。それまで諦めないでほしい」

「何だそれは?」

「それはいずれ分かるよ」

 

雪蓮と炎蓮の生存に関してはいずれ話さねばならない。

恥ずかしいから会えないなんて我儘はいつまでも言っていられないのだから。

 

「よく分からんが覚えておこう」

 

本当によく分かっていない様子だが藤丸立香の言葉に嘘は無いと分かっているので頭の片隅に残す冥琳であった。

 

「そろそろ寝ようか。明日も早いんでしょ」

「そうだな。夜更かししてると立香だけじゃなく蓮華様にもとやかく言われそうだ」

 

既に仕事のしすぎで徹夜等をしている彼女は蓮華から注意されている。

 

「立香」

 

冥琳が藤丸立香の手を掴む。

 

「冥琳?」

「……私もこれでも不安を抱えていてな」

 

彼女は何でもこなし、天才で冷静沈着な人物であっても人間だ。不安を感じるのだって普通にある。

 

「私にも勇気をくれないか?」

 

 

1004

 

 

○○の塔にて。

 

「ついに赤壁の戦いが始まる」

 

武田信虎は静かに呟く。

その言葉に武田八鬼将たちは各々の反応を示していく。

 

「ツイニ…ツイニカァ!!」

 

特に一番の反応を示したのは闇生鬼であった。彼は独断行動を起こし、罰を受けて謹慎させられていた。

その結果、人斬りの欲求が高まっている。早く人の肉を斬りたい、傷を受けた復讐をしたいという欲と怒りが滲み出している。

 

「アノ小僧、アノ弓女メ……必ズ斬リ殺シテクレルワ!!」

 

闇生鬼の一番の狙いは妙な術を使った藤丸立香と矢を穿った紫苑だ。

 

「オオ、怖イ怖イ。闇生鬼殿ハマサニ天晴ナ殺人鬼ダ」

 

天晴鬼は怖がっていおらず、寧ろ愉快そうに笑っていた。

 

「ホッホッホッホ。闇生鬼殿ノ気持チハヨク分カルデオジャル。麻呂ラモ仕返シヲシタイデオジャルナ」

 

隋身鬼もまたカルデアに苦渋を飲まされた鬼である。

赤壁の戦いは魏蜀呉の三国だが、必ずカルデアも出張るはずだ。何故なら武田信虎たちが絡むのだから。

そうであれば必ずカルデアとも衝突するのだ。復讐の機会はいくらでもある。

 

「……シテ、計略ハ?」

 

騙妖鬼は静かに武田信虎の言葉を待つ。

 

「ああ。まず第一段階の計略だが」

 

赤壁周辺の地図を広げる。

 

「お前たちには八方向から攻めてもらう」

「……各々ノ行動ハ?」

「好きにしろ。派手に暴れ、侵攻しろ」

「ガハハハハハハ。ナンテ分カリヤスイ計略ダ!!」

 

大笑いする狂射鬼。

 

「ダガイイゾ。ソッチノ方ガ儂ニ合ッテオル!!」

 

妖気を滲み出す狂射鬼は早く暴れたい欲が爆発しそうだ。鬼たちの本拠地である『この塔』を破壊されては困る。

 

「殺ス殺ス殺ス。アノ男ヲ殺ス。私ヲ裏切ッタアノ男ヲ!!」

 

床を凍らして部屋の気温を下げている凍女鬼は変わらず恨みを吐いている。

近くにいると凍らされそうなので他の武田八鬼将たちは離れていた。

 

「オイ、麻呂ラニ近ヅクナ。弟ガ凍ッタラドウスルデオジャル!!」

「吾輩ノ扇ガ凍ッテ開カナクナッタ…」

 

鬼たちも凍女鬼の扱いに困っていた。しかし、このような鬼だからこそ使い道はあるのだ。

 

(きっと第一段階の計略で暴走するのは凍女鬼と闇生鬼だろう)

 

理性を失い、欲望のままに暴走する怪物となりつつある。

 

(いや、既に我らは怪物か)

 

人間を辞め、鬼となった段階で後戻りはなく、後悔のしようもない。後は突き進むのみである。

 

(赤壁で八鬼将が六体残って欲しいものだな)

 

次の計略。赤壁の戦いで武田信虎たちはただ三国を潰すのではない。

別に目的があって動くのだ。

 

「本当ニ暴レルダケデ良イノカ?」

 

騙妖鬼が再度、計略の確認をする。

八方向から侵攻し、好きに暴れろなんて計略でも何でもない。

 

「ああ、そうだ」

「………承知シタ。カルデア ノ目ヲ此方ニ向ケル」

「ほう?」

 

騙妖鬼はすぐに今回の計略を察した。その鋭さに武田信虎は素直に驚く。

 

(やはり騙妖鬼は出来が良いな。元の人間が我と同じで良いからか)

 

油断はしない。己のいた世界で敗北した時のような事はならない。

まずは第一段階の計略を成功させるのだ。

 

「いいか、お前らは囮だ」

 




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新もGW中。


1001
立香たちも赤壁へと出立です!!
赤壁の戦いの裏でカルデアは動きます。

何姉妹と月との絆はもう結構深いです。


1002
赤壁にて藤丸立香たちは8チームに分かれて行動開始!!

項羽と虞美人の話はもっと公式でもやってほしいと願ってます。
感動になるかトンチキになるか。

予測の時点で何かおかしい予測が…それは内緒。

立香と蓮華の濃い話はもっと書いてみたいです。


1003
立香と冥琳の話。
冥琳は蓮華に天下を掴むために身体と精神を追い込んでます。
華佗診察治療ルート一直線です。


1004
ついに武田信虎たちが動き出します。
赤壁で何を仕出かすのかは次回をお待ちくださいね。
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