Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
GW中の更新も今回で最後となります。
久しぶりにいっぱい書けた気がします。


GWももう終わりだと思うと…鬱になりそうです。
休みが終わるのが速いなぁ。


FGO
まほよコラボをゆっくりと楽しんでます。
現在進行状況の感想・・・青崎青子さんはぐっちゃんパイセンだった?


赤壁の戦い崩壊

1009

 

 

赤壁は燃えていた。その光景を見下ろすのは武田信虎。

冷徹に冷静に三国の状況を観察する。探し者を3人見つけ出す。

 

「旗艦にいるから見つけやすい」

 

武田信虎の背後には大猿鬼と身体に数多の目がある女性が控えていた。

 

「お前らは曹操と孫権を捕まえて来い。我は劉備を捕まえてくる」

彼女たちは上空にいる。飛行型の妖魔に乗っており、赤壁の戦いを見下ろしていたのだ。

 

「こっから落ちるんですか?」

 

ふわふわと浮遊している者がおり、于吉その人だ。

 

「そんな事をするはずがないといった事をしなければカルデアの隙を突けんからな」

「鵯越の逆落としを参考にしたんですっけ?」

「ああ」

「でも、これただの自殺では?」

 

上空からの襲撃を仕掛ける武田信虎。その高さは普通に落下したら死ぬかもしれない程だ。

相手の予測できない行動をするためとはいえ、高所からの紐無しバンジーとは正気ではない。

 

「この高さから落ちるのは鬼とはいえ死にますよ?」

「死なんさ。この高さから落下死する下級鬼や中級鬼ではないからな」

「大丈夫なら構いませんけど」

 

自信があるのであれば于吉は何も言わない。もし落下死しても次の策を用意しているので何ら問題ないので実行してもらう。

 

「頑張ってくださいね」

「任せろ。全てを終えた時、成功報酬は分かっているな?」

「勿論ですよ」

 

ニコリと笑う于吉。そして武田信虎たちは飛び降りる。

 

 

1010

 

 

北郷一刀の視界には武者の鬼女が桃香の頭部を船床に叩きつけた状況が写っていた。

突然すぎる事に彼だけでなく、朱里や愛紗たちでさえ身体と思考が止めっていた。しかし桃香の頭部から血が垂れて床に広がった時に覚醒した。

 

「桃香様ぁぁぁぁ!?」

 

一番最初に覚醒したのは愛紗であった。

 

「五月蠅いな。安心しろ殺していない」

 

静かに冷血に鬼女もとい武田信虎は制する。

 

「頭が少し切れて血が出ただけだ。喚くな」

「ふざけるなっ!! 桃香様から離れろ!!」

 

愛紗は怒りで青龍偃月刀を抜く。

 

「喚くな、動くな。我もこ奴を殺す気は無いが…貴様ら次第だぞ?」

 

その言葉に愛紗だけでなく全員が動けなくなる。桃香は敵の手中であり、現在の状況では助けようと動けば先に桃香が殺される可能性がある。

 

「貴様何者だ!!」

「我が名は武田信虎なり」

「武田信虎!?」

 

その名前にいち早く反応するのは北郷一刀である。その名前は日本の武将だ。

 

「貴様……似ているな」

 

武田信虎は北郷一刀を見て誰かを思い浮かべるがすぐに頭の片隅に追いやる。

 

「目的は何だ。魏の者ではないな」

 

流石に武田信虎が魏の者とは考えにくく、第四勢力であることは確かだ。

 

「武田信虎…武田八鬼将。藤丸さんが言っていた鬼」

 

朱里は藤丸立香たちより情報を得ていた。すぐ目の前にいる鬼が、その得ていた情報の鬼だと理解する。

藤丸立香たちが赤壁の戦いを鬼から守る為に動いているのは知っている。この鬼はその防衛線を抜いて来たのかもしれない。

 

(でも、どうやって桃香様を襲ったんですか!?)

 

武田信虎が何処から現れたのかが分からない。

ここは蜀の旗艦であり、彼女の周囲には護衛がついていながらも襲撃を許してしまった。

左右背後にも警戒していたのにも関わらず襲われた。そのことから導き出される答えは予想を超えるものであった。

 

「まさか…空から?」

 

朱里の言葉に武田信虎は笑う。

 

「はっは。空から襲撃とは予測出来なかったであろう?」

 

空からの襲撃。そして彼女は「鵯越の逆落とし」と言っていたのを思い出す。

 

「鵯越の逆落とし?」

 

朱里はその言葉に聞き覚えが無いが北郷一刀はとてもある。何をやったのかも理解出来てしまった。

それでも「空から降ってというか落ちてきて襲撃とかありえないだろ!?」と吐く。あり得ない作戦を実行するからこそ相手は何も対処出来ないのだ。

 

「…そう言えば我の目的であったな」

 

武田信虎は片手で桃香を持ち上げ、愛紗たちに頭から血を垂らした姿を見せつける。

 

「目的はこ奴だ。もらい受けるぞ」

「ふざけるな!!」

「ふざけておらんさ」

 

ミシリと掴む力を込める。

 

「簡単に砕けてしまいそうな柔らかい頭蓋骨だな?」

 

「ぐっ!?」

 

人質を取られている。それが己の主となるとより焦りが出て冷静さを欠け始める。しかし手が出せないからといって逃がすつもりはなく、すぐに武田信虎を囲む。

愛紗と恋が武田信虎を睨みつける。桃香が無事に助かれば愛紗による一刀両断待った無しだ。

 

「こ、こいつ何なんですか!?」

「分からんですが敵だって事は分かります…」

 

真直と音々音は異様な存在に慄く。今までも妖魔といった存在は確認していたが今回はいつもよりも違うのだ。

 

「…こいつ強い」

 

恋の直感が響いており、類を見ない強者の1人だと判断。

 

「ここで暴れても良いが、間違ってこ奴を殺してしまうかもしれんしな。自重しよう」

 

チラリと気絶した桃香を見てニヤリと笑う。

 

「それに孫権と曹操も捕えたと連絡があった。もうここに用はない」

「何だと!?」

 

今、武田信虎はあり得ない事を口にした。曹操と孫権を捕縛したと言ったのだ。

 

「孫権と曹操を…まさか同じ状況が魏と呉でも起きてるのか!?」

 

これでは三国の王が鬼によって捕縛された事になる。

 

「三人の王はまだ殺さん。しかし他の者共はどうなろうが知った事ではないな」

 

武田信虎が笑った瞬間に船が大きく揺れた。

 

「うわっ!?」

「ご主人様掴まってください!!」

 

大きな揺れに態勢を崩しそうになる北郷一刀を支える愛紗だが、揺れはより大きくなる。

嵐でもない、船同士がぶつかったわけでもない。長江の河で大きな波が発生しているのだ。

そもそも川で海のように大きな波が嵐でもないのに発生する事がおかしい。

 

「…河に何かいる!!」

 

恋が河の中に何かいる事を本能的に察知した。しかし他の者たちは船が大きく揺れて皆はそれどころではない。

何かに掴まってないと河へと叩き落されそうになってしまうくらいだ。

それでも恋は河の方に意識が向いている。

 

「れ、恋さん。長江に何かいるんですか!?」

「…大きな何か!!」

 

恋は目を見開き、最大の警戒レベルを上げる。

恋は無敵な超人だ。そんな彼女が最大限に警戒を上げるという事は異常な事である。

 

「…来る!!」

「え!?」

 

武田信虎は大太刀を船床に突き刺し、体勢を維持していた。

 

「出て来い。神喰い蟲の大百足よ!!」

 

長江の河より這い出るは巨大な百足であった。

恐ろしくも巨大で神を喰らう蟲の姿は三国全ての者に見せ付けられ、絶望を与える。

非力な人間は巨大な生物に潰されてしまう。実際に大百足が長江から這い出ただけで三国の船を破壊し、転覆させる。

 

広い長江の至る所から悲鳴が響くのが良い証拠だ。大百足にとって三国の人間は見えておらず、船なんて邪魔な物体にしか感じていない。

 

「な、なんだアレは!?」

「ば、化け物…!?」

「嘘だろおい…」

 

巨大な大百足は長江で動くだけで三国をいとも簡単に壊滅させていく。

武田信虎は笑いながら蜀の旗艦より大百足へと飛び乗った。

 

「待て貴様、桃香様を返せぇぇぇ!!」

 

大百足によって赤壁の戦いは崩壊した。大百足は暴れてもいないのに、河から這い出ただけで三国の船を破壊し、転覆させる。

三国が確固たる意志と覚悟を決めた決戦がぐちゃりと握り潰されたかの如くである。

 

「白川、百々目鬼。ご苦労だったな」

 

大百足に乗るのは武田信虎だけで非ず。大猿の鬼と身体中に数多の目がある女性がいる。

その二体は曹操と孫権を抱えていた。

 

「さあ、宣戦布告の時だ。尤も宣戦布告する国は残っているか分からんがな」

 

ニヤリと笑う武田信虎であった。

 

 

1011

 

 

大百足はまだ暴れていない。ただ長江の河から這い出ただけで三国の船を転覆させ、破壊し、兵士や武将たちを河へと転落させていく。

長江はもう地獄絵図へと変わっていき、数十万による恐怖の悲鳴が轟く。その光景を面白そうに見下ろすのは武田信虎である。

 

「はっはっはっはっは。これから宣戦布告だが聞いている者がいるだろうか?」

 

愉快そうな武田信虎。しかし宣戦布告をしなければ次の策へと移れない。

大きく息を吸い、赤壁中に響き渡る大音声を発した。

 

「聞けぃ三国の者共ぉぉぉ!!」

 

その大音声はそれどころではない三国の者たちにも響いていた。

 

「貴様らの王たちは我が預かった!!」

 

大百足の背から三国に見せ付ける為に曹操・孫権・劉備を突き出す。3人とも気絶しているのか何も声を出さない。

まるで人形を吊るしているような感覚で気絶した3人の頭部を掴んで見せ付けていた。

 

「華琳さまああああ!?」

「嘘嘘嘘!?」

「おのれぇい。よくも華琳様に辱めを…許さんぞ!!」

 

夏侯惇たちは転覆した船より何とか生還したが己の主を捕縛され、傷つけられたという事実に怒りと絶望が湧き出る。

早く助けに行かねばならないと思うが状況が状況であり、何も手が出せず、指を咥えてみる事しかできない。その事が夏侯惇たちにとって我慢できない。

 

「蓮華様ああああああ!!」

「姉様あああああああ!!」

 

呉でも魏のように叫んでいた。

この時、呉の者たちの脳裏には炎蓮と雪蓮を失った時が過る。更にとても嫌な予感が過ってしまう。

それは蓮華の死である。炎蓮と雪蓮に次いで蓮華までが死が訪れる事は絶対に叶えたくない。

 

「姉様、姉様!?」

「シャオ様 此方に掴まってください。このままでは溺れてしまいます!!」

「ふざけるな!! 蓮華様を返せぇぇぇぇ!!」

 

思春は夏侯惇のように怒りに狂うが同じように手が出せない。

 

「これより我、武田信虎は三国に宣戦布告をする!!」

 

武田信虎は三国を見下ろしながら宣戦布告した。

 

「せ、宣戦布告だと!?」

「ご、ご主人様ご無事ですか?」

「美花か。俺は無事だけど皆は!?」

 

転覆した船になんとか上る北郷一刀たち。周囲を見渡すと無事な者はいるが、行方が分からない者たちもいる。

 

「全員の…生存はまだ確認できません」

「くっ…」

 

愛紗や朱里たちの姿が見えない。それだけで焦燥感と不安感が襲い掛かる。

これはもはや戦争なんてものではなく天災が如くだ。

 

「我らは貴様ら三国を滅ぼし、洛陽を陥す。我らこそが大陸の覇権を握るのだ。手始めに貴様らの王の処刑を行う!!」

 

堂々と曹操・孫権・劉備の処刑宣言を赤壁中に響き渡らせた。

その宣言にどの国の者も顔を青くしたり、逆に顔を真っ赤にして怒る。

 

「貴様らの王を助け出したくば我が根城に来るがいい。そこを我ら武田軍と三国の決戦場とする!!」

 

大百足は長江から完全に這い出て空を支配する。

 

「王たちの処刑日は今より十五日後。日輪が頂きに到達した際に行う!! 言っておくが王を見捨てるのであれば順に此方から一国ずつ侵攻する!!」

 

王を助けに行こうが行かまいが三国は武田信虎によって滅ぼされに侵攻されるのだ。

己の王を助けに行かねばならないが大百足という驚異があるため三国の兵士達全員が救出作戦に賛同するか分からない。

 

兵士達は人間なのだ。強大すぎる怪物に絶望して逃亡を選ぶかもしれない。それでも王たちに忠誠を誓った者たちは戦力差が絶望的でも助けに行く。

武田信虎はその事を理解しているからこそ待ち構える。敵が自ら殺されに来るのだから待っているだけに良いのだ。

 

「処刑場もとい決戦場は我が根城の無双の塔だ!!」

 

無双の塔。

そのような建築物は聞いたことがない。大陸の何処にあるのだと誰もが思い、口にするのは当然だ。

 

「無双の塔の場所だが我が教えんでも分かる。どうしても目立つからな。それに目印はこの大百足だ!!」

 

嫌でも目に入る場所に建てられているとの事だ。そして巨大すぎる大百足が目印なら確かに分かりやすい。

 

「待っているぞ三国共。尤も処刑日までに間に合うか知らんがな?」

 

宣戦布告を終え、武田信虎は大百足に無双の塔へと戻るように指示を出す。

 

「十五日にも待たずとも今ここで終わらせよう」

「な……この気配は俵藤太か!!」

 

大きな魔力を感じ取る。その大きさから警戒態勢を上げる。

 

「南無八幡大菩薩……願わくば、この矢を届け給え!!」

「衝撃に備えろ!!」

 

宝具 八幡祈願・大妖射貫。

放たれた矢が龍神のように成り、大百足の頭部へと穿たれた。

その一撃は大百足を仕留める一撃である。直撃した大百足は頭部を撃ち抜かれ、地に墜ちるはずだった。

 

「何だと!?」

「流石の威力だ……しかしこの大百足には効かぬぞ」

 

大百足は健在であった。

俵藤太は予想外の結果をすぐに分析する。

 

「何だ…結界でも何でも展開しているのか?」

「無駄だぞ俵藤太よ。この大百足はヴリトラを捕食している!!」

 

ヴリトラと聞いてすぐに原因が理解できた。

 

「ヴリトラの概念を取り込んだか!!」

「その通りだ。貴様がこの外史にいるのだ。大百足を生み出す際に対処法を作るのは当然だろう!!」

 

大百足は俵藤太のいる方向へと顔を向ける。そしてその先には俵藤太だけでなくカルデアのマスターもいた。

 

「カルデアのマスターもいたか。ここで貴様らを始末してもいいが此方の計画が優先なのでな」

 

ギロリと俵藤太を睨む武田信虎。

 

「俵藤太よ。貴様への復讐はいずれだ!!」

「吾は本当に知らんのだがな」

「まあ、そうだろう。時間軸が違く、外史世界も違うのだからな」

 

武田信虎は時間軸と外史世界が異なると言った。これらだけでも答えを大体が導き出される。

その答えとは「未来での出来事」というものだ。

 

未来の人物に出会う事はカルデアではおかしな話ではない。未来の英霊は存在するし、未来の特異点や異聞帯から英霊となった者が召喚される事もあるのだから。

目の前にいる武田信虎は未来に発生する特異点(異世界)案件で会合する存在だ。この事実は後に今回と同じ案件が控えているかもしれないという事である。

 

(本当は吾らの未来ではなく、並行世界の吾らの話かもしれんがな)

 

未来に発生する特異点(異世界)案件は一旦置いておく。今大事なのは現在なのである。

 

「貴様らカルデアも無双の塔で待っているぞ!!」

 

武田信虎は高らかに笑いながら大百足と共に赤壁から飛び立つのであった。

赤壁の戦いを崩壊させた鬼と蟲。ターニングポイントに異変が発生。

 

 

1012

 

 

赤壁の戦いは崩壊し、三国のいずれかに勝利者はいなかった。赤壁に残ったのは敗北者のみ。

 

「冥琳!!」

 

彼女の手を掴み、河から引き上げる藤丸立香。

 

「ゲホゲホ、ガハッ」

 

河の水を飲んでしまったのか吐き出していた。衰弱が酷く見られる。

彼女は病である事を隠しており、蓮華が攫われた事と呉軍を壊滅させられた事により悪化を辿っている。

 

「すぐに医者を!!」

「冥琳、すぐに医者を呼ぶから死んじゃ駄目だよ!!」

 

梨晏がとても心配そうな顔をしている。壊滅状態の中で生きていた事は奇跡だ。

 

「れ、蓮華様は…?」

「蓮華様は………」

 

梨晏の反応が答えだ。

 

「………っ」

 

祭を救出しに、魏に勝利するために決戦に臨んだ。

策は何とか成功し、後は全力で魏を叩くだけであったのだ。しかし天災過ぎる事態が発生したのである。

 

空から前ぶりもなく大猿鬼が降ってきて蓮華を捕縛した。すぐに救出しようと動いた時には大百足が長江の河より這い出て呉の軍艦たちを壊滅させられた。

記憶に残っているのは成すすべなく蓮華を攫われ、河に落ちた事くらいだ。

 

「…ほ、他の皆は?」

「無事な人たちが救出をしてる。シャオや雷火さんたちは無事だから」

「そ、そうか…な、なら」

「喋らないで。すぐに治療するから!!」

 

衰弱が酷い冥琳に口を閉じさせる藤丸立香。

治療魔術を展開させる。完全回復とまでは無理だが一命を取り留める事までは出来る。

 

「オレは他の人たちを救出しに行く。冥琳の事を頼んだ梨晏」

「うん」

 

藤丸立香は駆け出す。カルデア陣営も赤壁にて救出に手を貸している。

武田八鬼将たちは大百足が姿を現した時には撤退していた。鬼たちは全てがただの囮に過ぎなかったのだ。

まんまと嵌められた。そして三国のど真ん中に現れる予測が予想以上のものであったのだ。

 

「大百足…」

 

武田八鬼将全てを囮にしても代わりになる戦力こそが大百足。

色々と考えるべき事があるが今は人命救助が最優先だ。河から何人も引き上げては治療魔術を使用していく。

全員は助けきれないかもしれないが、体力尽きるまで助け出す。

 

「しっかりしろ!!」

「はうぅ……」

「あうぅ……」

 

諸葛孔明は朱里と雛里を河から引き上げ、治療魔術を展開する。

 

「どこか痛みはあるか?」

「だ、大丈夫です。ごほっ」

「はあ、はあ…わたしも」

 

大丈夫だと言っているが大丈夫では無いはずだ。すぐに医者に診せねばならない。

幸い華佗も赤壁に来ている。戦が起きれば怪我人は当然なのだから医者として無視できない。

 

「華佗の元にすぐ連れて行く」

「と、桃香様は…」

 

何も答えず2人華佗の元へと連れて行く諸葛孔明であった。

悔しいはずだ。絶望したはずだ。怒ったはずだ。

戦を邪魔され、壊滅させられ、主を攫われた。2人の目からは涙を流している。

 

「愛紗殿!!」

「し、秦良玉殿か……」

 

愛紗も溺れかけた所を秦良玉に救われた。

外傷は無いが内臓を痛めている可能性はある。彼女もすぐに医者に診せねばならない。

 

「桃香様は!?」

 

自分の事よりも主の優先。

彼女は本当に桃香や北郷一刀のために命を賭ける事が出来る。自分の事は二の次なのだ。

 

「…桃香殿は拐かされました」

「っ!?」

 

信じたくは無いが愛紗自身も目にしていた事だ。

怒り狂いそうになるが、やるべき事は決まっている。

 

「と…桃香様を助けに行かねばっ!!」

 

青龍偃月刀を持って走り出そうとする。場所なんて分からないが早く助けに行かねばならないという使命感と焦燥感が愛紗自身を狂わす。

 

「愛紗殿お待ちください!!」

「離せ秦良玉殿。私は桃香様を助けに行かねばならんのだ!!」

「その身体では無茶です!!」

「離すのだ。離さねば秦良玉殿とはいえ斬るぞ!!」

 

今の彼女は冷静ではなく、このままでは暴れ出すのも時間の問題だ。

暴れ出しそうな愛紗にゆっくりと近づく武人が1人。

 

「は、離…うぐ!?」

 

その武人は愛紗を容赦なく無理やり気絶させた。

 

「馬鹿者が!!」

 

愛紗を気絶させたのは星であった。

既に治療を終えているのか身体の至る所に包帯が巻かれていた。

 

「すまんな秦良玉殿。愛紗に代わって謝罪する」

「いえ、愛紗殿の気持ちは分かりますので」

「全く…暴れ出しそうになりおって。誰もが同じ気持ちだぞ」

 

愛紗だけがすぐに助けに行きたいわけではない。全員が桃香を助けに行きたいに決まっている。

 

「□□□□□!!」

 

呂布奉先が転覆した船を方天画戟で破壊すると中から出てきたのは音々音と真直を抱えていた恋だった。

 

「ぷはぁっはぁぁ!!」

「けほけほ!?」

「おえっ」

 

助け出すのが遅ければ船に圧し潰され、溺れていたかもしれなかった。

彼女たちを呂布奉先は優しく救い上げる。

 

「…助かった」

 

超人である恋も永遠と息を止める事は出来ない。

 

「うげー…死にそうでした」

「い、生きてる…私生きてる!?」

「ええ。ちゃんと生きてますよ」

 

陳宮が音々音と真直を赤兎馬へと乗せる。

 

「馬。彼女たちを医者の元へ」

「お任せください。本当ならば私が許した者しか背に乗せませんが今は緊急事態ですしね」

 

赤兎馬も状況によっては空気を読む。

 

「恋殿も」

「…大丈夫。恋も手伝う」

 

まだまだ助けに行かねばならない者たちは多くいる。早く、多く助けねばならない。

 

 

1013

 

 

徴姉妹は同時に河へと手を伸ばして掴む。

 

「弐っちゃん、せーの!!」

「せーの!!」

 

2人が引き上げたのは夏侯惇と夏侯淵だ。

夏侯淵は気絶しているのか夏侯惇が抱えていた。

 

「死ぬな秋蘭!?」

「息はしています。無事です」

 

妹が無事と分かって一安心する。曹操を誘拐され、夏侯淵まで殺されていたら夏侯惇は復讐鬼になっていたかもしれない。

 

「助けてくれて感謝する。しかしお前らは?」

 

夏侯惇は2人とは初対面だ。助けてもらったのはいいものの正体不明では警戒をしてしまう。

 

「私は徴側」

「私は徴弐。マスター…藤丸立香の仲間と言えば分かるか?」

「ああ、あいつらの仲間か」

 

警戒をすぐに解く。

藤丸立香たちの仲間であれば夏侯淵の身を任しても安心だと理解したからだ。

 

「他の者たちは?」

「今救助中です」

 

別の方向から荀彧の声が響いてきた。

 

「なんだ桂花のやつは生きてたのか」

 

そんな事を言う彼女であるが死んでは欲しくない。

 

「そう言えばさっき哪吒が許緒とかいう人たちも助けていた」

「そうか」

 

被害は大きいが心に少しだけ余裕が出来るがすぐに怒りが再燃化していく。

曹操を傷つけ、攫って行った武田信虎と身体に数多の目がある女を必ず斬る。夏侯惇は取り合えずそこらに落ちている剣を拾う。

彼女の最優先事項は曹操を救出するだけだ。すぐさまいう事が聞かない身体に鞭打って立ち上がる。

 

「何処に行くんですか」

 

徴側が夏侯惇の前に立つ。

 

「その身体では無茶です。まずは治療せねばなりません」

「そんな暇はないっ。早く華琳様を助けに行かねばならんのだ!!」

 

傷ついた身体では救出に行きたくても無理な話。しかし彼女は血反吐を吐いても助けに行くつもりだ。

 

「無理も承知だ。助けてくれた事は感謝しているが邪魔するなら斬るぞ!!」

「阿保か!!」

 

霞のチョップが夏侯惇の脳天を直撃。そのまま棒のように倒れるのであった。

 

「ほれみい。限界やないか」

 

霞が夏侯惇を抱える。

 

「すまんなぁ徴ちゃん、弐っちゃん」

「構いませんよ」

(姉さん以外からの弐っちゃん呼び……いや、清少納言からも言われてるか)

 

蜀の愛紗と同じような件であった。

 

「無事かい荀彧殿?」

トリムマウが荀彧を抱えており、司馬懿(ライネス)が治療魔術を施す。

「うう、はっ…か、華琳様は!?」

「誘拐された」

「そ、そんな!?」

 

冷静に状況を説明していく司馬懿(ライネス)。

てっきり喚き散らかすかと予想していたが彼女は予想よりも冷静であった。魏軍の筆頭軍師として喚くよりも冷静でいなければならないという意志が強いようだ。

 

「秋蘭や風たちは?」

「救出済みだ。今も救出作業は続いてるよ」

「そう」

 

チラリと別方向を見ると霞のチョップによって夏侯惇が倒れる姿を見る。

 

「今死なれたら困るんだけど」

「夏侯惇殿ならあれくらいで死なないさ」

「死ぬなら華琳様を助けてからにしてほしいわね。まったく…」

 

荀彧は曹操救出作戦を考えだす。すぐに動ける兵士と将を集めて軍を再編成しなければならない。

大百足は赤壁より北側へと飛び去った。あの巨大さであるのであれば斥候を放てばすぐに見つかるはずである。武田信虎もすぐに分かると言っていたくらいだ。

ただ頭痛をさせるのが敵の戦力だ。大百足という暴力とまだ不明瞭な鬼の戦力。

あれだけの戦力にどう勝利すればいいのか分からない。

 

(あれを倒す策が出てこない…)

 

魔力で足場を作り、項羽は河を駆け、負傷者たちをその背に多く救出していく。その働きは100人力だ。

 

「ぐぬぬ…項羽様のお背中に」

 

嫉妬の虞美人。しかし今は緊急事態と思って欲しいが虞美人だからしょうがない。

虞美人だからしょうがないというのも変な話なのだが。

 

「あー…やっぱ項羽はん良いなあ。もっと項羽はんの身体を弄りたい」

「あん!?」

 

いつも通りの李典。しかし負傷中なので仰向けで倒れてる。

 

「どうやら救われた命を自ら捨てたいようね…仲良く3人」

「あ、待ってなのー!?」

「我々も!?」

 

于禁と楽進が連帯責任として巻き込まれた。とんだとばっちりである。

 

「ったく、何で私がこんな面倒な事しなくちゃなんないのよ」

 

虞美人は河に手を突っ込み、人を引き上げて雑にほっぽり投げた。一応ちゃんと死なないように配慮はしている。

 

「こっちか」

 

李書文(殺)は船の残骸を足場にしながら、ある地点へと跳んで行く。

 

「ここだな」

 

河から引き上げたのは祭。満身創痍で救出が少しでも遅れたら溺れ死んでいた。

 

「無事…ではないようだが生きてはいるな」

「まだ…死ねん……死ぬわけには……」

 

祭は赤壁の戦いで死ぬつもりであった。魏に、曹操に勝てるのであれば老将の命1つなんて安いものだからだ。

しかし捨てる命が捨てられなくなった。手足が引きちがれようが蓮華を助けにいかねばならない。

 

「まずは治療をせねばならんぞ」

 

李書文(殺)は祭を抱えて治療するために跳んで行く。その際に玄奘三蔵を見かける。

 

「如意棒!!」

 

玄奘三蔵は如意棒を河へと伸ばして溺れかけている者たちを助けているのだ。

 

「みんな掴まってー!!」

「助かりました~」

「しっかり掴まっててね」

 

綱引きしているみたいだという感想だった。

 

「あらよっとぉ」

「生きているか?」

 

燕青と荊軻は船の残骸の上より粋怜と思春を引っ張り上げる。

 

「こ、この程度…」

「た、助かったわ」

 

錦帆賊として長江で溺れる事はない思春であったが今回ばかりは流石に危険であった。

粋怜も運が良かったのか溺れ死なずに済んで良かったと思う。何せ死ぬわけにはいかなくなったのだから。

 

「蓮華様は!?」

「…囚われた。奴らは北へと飛んで行った」

「すぐに…ぐっ」

「無茶すんな」

「五月蠅い…ぐっ」

 

転覆した際に身体を強く打ったのかもしれない。すぐに医者に診せ、治療するべきなのだ。

 

「思春。今は身体を休める時よ」

「それでは遅い!!」

「私も貴女と同じ気持ちよ」

「う……」

 

粋怜は思春を睨む。彼女も蓮華を助けに行きたいに決まっている。

助けに行きたくとも、自分の身体の事は誰よりも分かっている。動きたくても動けないのだ。

その自分がたまらなく不快である。粋怜は己の拳を握りしめる。

 

(ふざけるな!!)

 

心の中で悪態を付く。

 

(炎蓮様、雪蓮様に次いで蓮華様まで失ってたまるもんですか!!)

 

己の主を三度も死なせる事は許さない。

 

「………ところで燕青」

「なんだ思春」

「あっちにいる派手な男は誰だ。お前の仲間か?」

「ああ、アレはーー」

 

雷火は包と共に河から引き上げられる。

船が転覆し、波に飲み込まれた時は死を覚悟したが運よく助けられた。己の運と救出者に感謝だ。

 

視界が次第に回復し、救出者の姿が見えてくる。どのような人物かと目を凝らすと見た事も無い服装をした者であった。

ただし覇気が抑えようもないくらい大きく滲む人物であったので雷火と包は混乱と畏れで叫ぶ。

 

「誰じゃ!?」

「誰ですかー!?」

「朕は始皇帝だが」

 

2人はより混乱した。別の方で始皇帝を見ている粋怜と思春も混乱というか呆けていた。

 

「「「え?」」」

 

救助中に色々とあるが無事に負傷者を助ける事に成功しているのだ。ここから先は医者の仕事だ。

華佗が闘気を燃えあがらせ負傷者たちを治療していく。補佐として貂蝉と卑弥呼も全力であるが、何故か2人の姿を見ると叫ぶ負傷者が多いようだ。

 

今ばかりは緊急事態なので華佗が率先して勝手に三国が用意していた治療部隊を纏め上げた。この惨状で命を助ける為に敵味方は関係無い。

助かる命があるのであればいがみ合っている場合ではないのだ。名医であり、中立である華佗だからこそ各国の医療部隊も今ばかりは素直に従っている。

 

「動ける者は手伝ってくれ。今は人手はあるだけほしい!!」

「任せて華佗ちゃん。私が百人千人分の働きをしちゃうわよん!!」

「儂なら一万人分だぞ!!」

 

ここからは医者の戦いだ。

 

 

1014 

 

 

数多くの負傷者を助け出しているが、まだまだ助け終わらない。

生存者と行方不明者を含めれば合計で百万以上はおり、簡単に救出作業が終わるわけがないのだ。

 

藤丸立香も魔術礼装を使用しているとはいえ、魔力が切れ始める。疲労が見えてくるが止まるわけにはいかないのである。

彼は限界まで救出行動を止めない。

 

「紫苑さん起きてください!!」

 

河から引き上げた紫苑は息をしていなかった。

 

「紫苑さん!!」

 

声を掛けても意識は戻らない。すぐに人工呼吸を始める。

こんな時にファーストキスだか口づけだかと言っている場合ではない。躊躇いや恥ずかしがっている場合でもなく、人命優先だ。

既に心臓マッサージや人工呼吸は他で助けた者に施している。その中でも助けられなかった者もいる。

藤丸立香は救命行動で後悔はしたくないのだ。

 

「う、ごほっ」

「紫苑さん」

「う…はあ」

 

紫苑は飲んだ水を吐き出し、空気を吸い込む。

 

「た、助かりました立香さん」

「無事で良かった」

 

助かった奇跡に感謝し、助けてくれた藤丸立香に感謝する紫苑。

幼い娘である璃々を残して死ぬわけにはいかないのだ。

 

「治療魔術を施しますのでじっとしていてください」

 

優しい光が紫苑を覆う。苦しさと痛みが治まっていくのを感じる。

完全回復とはいかずとも一命は取り留められる。静かに深呼吸をして冷静になろうとする。

 

「桃香様やご主人様たちは?」

「……桃香さんは囚われた。一刀や愛紗さんたちは無事だよ」

「そう…」

 

だいぶ楽になったのか紫苑は身体を起こす。

 

「立ち上がれますか。駄目ならオレの肩を貸します」

「ちょっと…厳しいかも」

「なら抱えます」

 

一命は取り留めただけで身体は負傷している。すぐに医者の元まで向かおうとするが2人は運が悪かった。

何故なら2人に恨みがある者が迫っているのだから。

 

「小僧 弓女ァァァァァァ!!」

 

闇生鬼の凶刃が迫っている。

 




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新は未定。


1009
作戦前の武田信虎陣営の話。
まさかまさかの空からの襲撃でした。
個の時代では遥か空からの襲撃は予測なんて出来ないでしょうから。

鬼であっても高所からの落下は危険です。


1010~1011
信虎の狙いは三国の王でした。
赤壁の戦い全てを壊さなくとも王さえ狙えば崩壊しますので。
まあ、結局蟲のせいで崩壊しますが。そして全ての決着は無双の塔にて。

無双の塔
これは天下統一伝で登場した設定となります。

蟲の正体は大百足でした。もう分かってたと思いますけどね(汗)。
その大百足も南蛮での邪龍(ブリドラ)を喰らって強化されてます。
自分で書いておいて、どうやって倒すんだコレ?

十五日の猶予は三国の軍の立て直し期間でもあります。
短すぎるか?

俵藤太と武田信虎の因縁。
前にミスリードで話してしまいましたが……答えは未来の特異点(異世界)で戦いがあったのです。
それがFGO×戦国†恋姫
裏設定で…時系列ではこの物語の次に起こる物語。もしくは並行世界の物語。


1012~1013
赤壁の戦いが崩壊した後の話。
救出作戦開始。もう敵味方と言っている場合ではない状況です。

個人的感想ですけど愛紗と春蘭と思春は荒れそうな気がする。
だから怒り狂った感じの描写を書きました。

そして粋怜とかもきっと心にキテるかも。だって炎蓮と雪蓮に続いてですから
それだろ呉全体に言えますか。

徴姉妹と夏侯姉妹って仲良くなりそう。

しれっと始皇帝が呉に登場。
もう孫呉は混乱。この後に項羽も控えているのに


1014
闇生鬼の凶刃が立香と紫苑に迫る。
赤壁の戦いは崩壊したけど八鬼将との戦いは終わったとは言ってない。
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