Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
久しぶりです。やはり最近は更新ペースが遅れてます。
でも頑張って完結までに目指します!!
FGOではアンケート復刻版をゆっくりと進めてます。
次はリリムハーロットかあ。ドラコーのガチャを…でも石がない
恋姫では新たな最新作が発表されてますよね
双天†恋姫ではトレーラームービーが公開しましたね。
そして戦国†恋姫では新作が…波旬信長。2人の信長とは面白くなってきましたね。
オルタですかい?
1018
赤壁の戦いは崩壊した。
武田信虎という第四勢力によって三国は壊滅状態にさせられた。王たちも誘拐され、各国は絶望状態だ。
将や兵士たちは士気が落ち、絶望し、途方に暮れている状態だが全員が絶望しているわけではない。己の主を助けなければならないと臣下たちが焦っているのだ。
蜀と呉は何とか動ける者たちが緊急会議を開いたところである。
「桃香様を助けに行くべきだ!!」
「蓮華様を助けに行くべきだ!!」
愛紗と思春が同時に声を発した。まさに怒号であった。
「お、落ち着け愛紗。その気持ちは誰もが思ってる」
「ご主人様…はい」
「思春…これから大事な会議だ。気持ちは分かるが落ち着け」
北郷一刀と冥琳の注意に2人は黙る。本当はもっと言いたい事があるはずだが、これから先の事を決めるのだから喚いても会議の邪魔でしかない。
「朱里…状況説明を頼む」
「はい」
「冥琳こっちも…被害状況と現状の説明をお願い」
「はっ。小蓮様」
蜀と呉は被害状況と立て直し現状を報告していく。
同盟国とはいえ自国の被害状況を報告するのは躊躇いがあったが、これからより力を合わせなくてはならない。
「お互いに酷い状況だな」
ポツリと呟く北郷一刀。しかし誰も否定せず俯く者も現れる始末だ。
せめて良い事があるのであれば何とか軍が動かせるというくらいである。しかし「何とか」レベルだ。
誰もが理解しているのか「良かった」とは言えない。これでは良い事と言えるとは言えない。
「これからどうするかだが…」
どうするも何も決まっている。王たちを助けに行く事だ。
「桃香様を助けに行くに決まっている!!」
「蓮華様を助けに行くに決まっている!!」
またも愛紗と思春の台詞が重なる。誰もが助けに行きたいと思っている臣下たちであるがこの二人の思いが強い。
思いが「特に」強いのは2人だけではない。他にも何人もいるのは当たり前だ。
(桃香待ってろ)
(桃香様……このワタシが守れなかった。くそっ…何でワタシは大事な時にいつもいつも!!)
(姉様…無事でいて)
(雪蓮…すまん。私は蓮華様を守れなかった。だが必ず助け出す!!)
(炎蓮様に雪蓮様……蓮華様まで失ってたまるもんですか!!)
己の王たちを助けに行くのは決定事項だ。
「蜀は桃香を…劉備を助けに行く」
「此方も同じだ。呉は孫権様を助けに行く」
王の救出作戦。しかし問題は多いのか朱里は苦い顔をしており、同じ気持ちなのか冥琳もであった。
「助けに行くのは反対ありません。でも相手の戦力が不明です」
「ああ…分かるだけでも強大すぎる」
強大すぎる戦力は大百足。そして強靭な鬼たち。
武田信虎の戦力は大百足や武田八鬼将だけではないはずだ。きっと鬼の大群が存在するに違いない。
「我々を壊滅まで追い込んだ怪物…それだけでも絶望だ。そして奴の言い方からして他にも戦力があるに違いない」
(奴…武田信虎)
朱里や冥琳たちは武田信虎という名に覚えは無いが北郷一刀にはある。何せ日本武将の1人であり、有名な『武田』なのだから。
(中国三国時代に戦国時代の武田が鬼として現れる…普通じゃない。これも于吉や左慈が黒幕か?)
北郷一刀の考えは正解だ。
未だに外史世界については北郷一刀もよく分かっていない。ただ必死に生きる事に精一杯だからしょうがない。
この外史世界には様々な秘密が隠されているが、それを知るのが于吉や左慈。そして自分がこの外史世界に来た理由も左慈たちが知っている。
(並行世界の俺が原因…いや)
頭も振るって今を考える。
自分が外史世界に来た理由よりも桃香たちを助け出す事が今の最優先だ。
「敵の戦力は未知数。すぐに動ける者を斥候に出すべきだろうな」
「であれば私を」
明命が立候補する。
「私も行かせてください」
美花も立候補する。
蜀呉斥候部隊が一時的に結成。すぐさま出立準備をし、武田信虎が座する無双の塔へ向かわなければならない。
敵戦力の確認。敵の指揮官や将の数。どのように鬼の大群が配置されているか。敵の本拠地の地理情報。
王たちを救う為に、鬼の大群を倒す為に情報は多く必要である。
「頼んだわよ明命」
「はいシャオ様」
「頼んだ美花」
「はっ。ご主人様」
軍は再編成中。目的は王の奪還と武田信虎の討伐。現在は敵戦力の把握を任務とする。
「敵戦力の把握は大事じゃ。じゃが既に分かっている戦力の対処はどうする?」
祭が呟く。
本当であれば彼女は療養が必要だが緊急事態に寝てはいられないと無理にでも身体に鞭を打ってる。
「現状の敵戦力か」
敵の大将 武田信虎。側近と思われる猿鬼の白川と百目鬼。配下の武田八鬼将残り六体。そして巨大な神喰い蟲である大百足。
思い出すだけでも絶望しかない。しかし絶望なんてしていられない。対処法は無いわけではないのだ。
「敵勢力に関してだが現状の我々よりも情報を知っている者から聞いた方が良いだろう。頼む立香」
「分かった。任された」
武田信虎陣営と多く戦って情報を得ているのは藤丸立香たちだ。三国では知らない情報を得ているので共有は必要である。
代表として藤丸立香は知っている敵勢力の情報を話していく。
「まず敵大将は武田信虎」
「武田信虎ってやっぱあの武田か立香?」
「ああ」
武田信虎という名前を聞いて分かるのはこの場で日本人だけだ。英霊達は聖杯の知識で知っているが愛紗たち外史世界の者たちは分からない。
「ご主人様は知っているのですか?」
「ああ。そいつは俺の世界の武将だ…」
「天の国の武将!?」
彼女たちが言う天の国の定義について色々と言いたいが今は置いておく。
「オレらが知っている武田信虎は鬼ではなく人であるんだけど…」
人間を鬼にする薬があるのだから不思議ではない。怪異については謎が多く神秘にも通ずる。藤丸立香と北郷一刀は『あり得ない』とは思わない。
「ご主人様、立香殿。そ奴は強いのか?」
星がシンプルに質問する。その答えに此方も藤丸立香もシンプルに「強い」と答えた。
偉人や英雄、歴史に名を残す者たちが弱いはずがない。何かしら特別を持っているのだ。実際に剣を交えた俵藤太も「油断ならぬ武将」と認めている。
「オレや一刀の知っている武将であれば軍を率いていた人物だ。鬼の群れを兵士のように動かせる可能性は高い」
只者でないのは誰もが理解していた。
「そいつは私が討つ」
愛紗は怒りを露わにする。桃香を傷つけ、攫って行った張本人だからだ。
「ワタシだって!!」
焔耶もまた同じ気持ちなのか拳を握りしてめていた。
「討つとしてもまだ相手の戦力が分かりません。情報を得てしっかりと戦略を決めるべきです」
「孔明の言う通りだ。だから敵目掛けて突っ込む事はしないでくれ。分かったな思春」
「分かっております」
まだ戦略も決まっていないが怒りに我を忘れて突撃行為をさせてはならない。
「次に配下の武田八鬼将。そいつらも人間から鬼になった存在で異能の持ち主の鬼なんだ」
二体を討伐し、残りは六体。怪異を喰らって能力持ちの鬼たち。
一筋縄ではいかない相手で、実際に戦った紫苑が一番分かっている。
「将を名乗っているくらいだし。そいつらが鬼の群れを率いてくるかもしれないわね」
「オレらは八鬼将たち全員と戦っている。全てを見極めたわけじゃないけど知っている情報をこれから説明していく」
赤壁の戦いで武田八鬼将は八包囲から侵攻し、藤丸立香たちは防衛していた。その時の戦いから分析し、得られた情報を開示していく。
「次に蓮華と曹操を攫って行った奴らだけど…そっちは分からない事が多い」
猿鬼の白川と百目鬼と呼ばれた鬼たちだ。
白川という大きな猿鬼は全く情報が無く、言葉通りの猿の鬼しか分からない。そして百目鬼と呼ばれる鬼の名は日本人で怪異少しでも齧っていたら分かる。
「百目鬼はその名の通り百の目を持つ鬼だ」
百目鬼はいくつか存在する。女性の方の百目鬼や俵藤太が討伐した百目鬼等だ。
今回の情報から予想するに曹操を攫った百目鬼は鳥羽石燕の『今昔画図続百鬼』の方かもしれない。
「百の目を持つ鬼か」
詳しい状況は魏軍の方が情報を持っている。何故なら曹操を攫って行ったのが百目鬼で、その姿をしっかりと確認したのが魏軍だからだ。
恐らく愛紗や思春のように夏侯惇も怒りを燃やしているかもしれない。魏の臣下たちの曹操への忠誠心は並みでなはい。
「大将は武田信虎。そして配下の将が計八体と考えれば…良いのか?」
武田八鬼将を二体倒しても猿鬼と百目鬼が加われば武田八鬼将は補充され、元の数になった事になる。
もしかしたら凍女鬼と闇生鬼は捨て駒にされたのか、最初から討伐される鬼がいると予想して補充準備はしてあったのか。何にせよ武田信虎は準備に抜かりはない。
「最後に大百足」
巨大な蟲。龍すら餌にする神喰い蟲。人間なんて大百足からすれば小さな虫にしか見えない。
あの巨大さを思い出す蜀と呉の面々は辛い顔をする。巨大な存在というものはそれだけで相手を絶望させるものだ。
敵の全貌はまだ分からないが一番の難所は大百足である。軍師陣はどうやって倒すべきかと考えているが答えが出ない。
数多の矢で攻撃。数多くの兵士の剣や槍で斬り、貫く。様々な陣形を駆使して大百足を追い詰める策。
どれも全て失敗すると頭で理解してしまう。
「大百足は拙者が受け持つ」
ここで俵藤太が静かに大百足の相手を宣言する。
「俵殿…あの蟲を倒せるのか?」
「やってみなくては分からんが前に別の大百足は退治した事はある」
その言葉に蜀と呉の面々が驚く。正直どうやって巨大すぎる大百足を退治したのか気になるのは当然だ。
「前とは別で能力も面倒そうだから準備は必要だ」
この外史世界の大百足は外史世界のヴリトラを喰らって能力を得た。ヴリトラの能力を得たという部分が厄介なのだ。
俵藤太の宝具が効かなかった事実に衝撃を受けたが万策尽きたわけではない。効かなかった段階から彼は次の手を考えているのだ。
(拙者だけでは厳しいな。準備というか援護が必要だ)
対大百足の戦いを既にシュミレートしている俵藤太は何が必要か、誰が必要かを考えていく。
「敵将の情報は開示した。その対策を急いで考えていく」
「分かったわ。そして不明瞭な情報は敵兵の数ね」
敵兵の数とは鬼の大群の事。武田八鬼将と大百足だけで三国を相手取る事は出来るが武田信虎は兵士の数も揃えているはずだ。
その鬼の大群を現在の蜀と呉の戦力で相手取る事が出来るかが問題である。
「…1つ良いか?」
北郷一刀が手を挙げる。
「どうしたの?」
小蓮が次の言葉を待つ。
「呉としては不服かもしれないが…俺は魏と協力したいと思ってる」
「なに?」
「ちょっ、ご主人様!?」
魏には蜀も呉も因縁がある。特に呉は雪蓮の件があり、溝は大きい。
(こっちだって翠たちの因縁も大きいが…背に腹は代えられない状況だ)
武田信虎軍は強大で凶悪だ。傷ついた蜀と呉では不安な部分はある。
カルデアの力を借りられるといっても無敵の陣営ではないのだ。戦力を強化できるのであれば強化するべきだ。
「敵の敵は味方って言うだろ?」
「敵の敵は敵じゃないのか?」
「鈴々。ここはシーー」
鈴々の言葉にガクっとしそうになるが今は真剣だ。
魏も曹操を救い出したいはずだ。蜀と呉も同じように己の王たちを救い出したいと思っている。
被害も同じように大きく、各国単体で武田信虎軍と戦うよりも三国を協力して戦った方が良いはずだ。
「今ばかりは一時的でも魏と協力して戦力をかき集めるべきだと思う」
「それは…」
北郷一刀の言わんとしている事は理解出来ている蜀と呉の面々。
敵戦力は分かる範囲でも絶望的な戦力。そこに鬼の大群が加わるかもしれない事実もある。
王たちを救い出す為に戦力をかき集めたいのは誰もが思っている事である。
「今だけでも協力し合うべきだと思う」
「オレも一刀の意見に賛成だよ」
「立香!?」
藤丸立香の賛成に呉の面々は意外にも驚く。
孫呉の魏に対する感情はよろしくない。そこまで雪蓮暗殺事件が尾を引いている。
勝つ為とは言え祭は己の感情を殺してまで魏に降った。このような状況であっても魏に対して協力というのに納得はできない。
「立香よ…魏に協力なぞ」
「……良いかもしれませんね」
「私もそう思います」
呉の面々で賛成を言い出したのは冥琳と穏。
「冥琳、穏!!」
「いえ、祭様。包も賛成です」
「包までもか!!」
「一時的に協力するだけであれば異論はありませんよ。だって最優先は蓮華様の救出でしょう?」
確執があろうが最優先事項の為に敵国と一時的に協力するのは悪い手ではない。目的が同じであれば協力も仰ぎやすくもある。
「仲良くしろなんて言わない。武田信虎軍と戦う為に戦力を分担出来ればと思うくらいだよ」
「む…」
「祭。ここは折れて」
「粋怜!!」
「蓮華様を救う為に」
「っそれは」
ここまで言われれば黙るしかない。
魏との確執。そして武田信虎軍の戦力。この2つを天秤にかける。
最優先は王の救出。今回は助け出す事が出来るかもしれないのだ。今だけは己の怒りを抑え込むべきなのかもしれない。
「しかし魏が拒否したらどうする?」
「その時は諦めるしかないかな」
「あっさりしてるな立香…でも拒否されたらしょうがない。時間も無いからな」
タイムリミットは刻一刻と過ぎている。時間を掛けて魏と交渉している暇があるなら王の救出に時間を割きたいのが本音だ。
「今すべきは敵戦力の把握。魏との協力。軍の再編成だな」
「ああ。そして魏の交渉だが立香たちに任せたいんだけど」
「オレらが?」
「勿論、俺らも一緒に行くさ。でも立香たちがいた方が話が進むと思う」
藤丸立香たちは魏とも面識があり、確執も無い。
「分かった」
「助かる」
蜀と呉の緊急会議は進んでいく。そして切りの良い所まで終わると呉の面々というか雷火が手を挙げる。
「一つ良いか?」
「ああ、どうぞ」
雷火は深呼吸をして冷静に質問する。
「始皇帝陛下と項羽がいるとはどういう事かの?」
「項羽様と呼べ」
「……始皇帝陛下と項羽様がいるとはどういう事かの?」
ギロリと虞美人に注意されたので訂正する。
「うん。いるよ」
「いるなあ」
「朕がいるのはおかしい事か?」
「項羽様の存在を許さないって事かしら。その喧嘩買うわよ」
「違うわっ!!」
武田信虎軍の事で頭がいっぱいであるが呉にとっては始皇帝と項羽の存在は無視できない。おかげで呉の面々は頭が混乱しそうになるばかりだ。
過去の偉大な存在が目の前にいる事実。そして赤壁での救助で始皇帝自らによって救われた雷火は宇宙猫状態であった。
「虞美人殿の事は知っておった。だから項羽殿が存在するかもしれないというのはあった。しかし始皇帝陛下までとは…」
史上初に大陸を統一した始皇帝と覇王の語源となった項羽。
この二大巨頭は呉を畏れさせる。蜀の面々は既に知っており、だいぶ慣れてきたので呉の反応に「自分たちもこんなんだったなー」という感想であった。
「しかもまた立香関係か。詳しく話してもらうぞ!!」
「あ、はい」
蜀と魏に説明した事と同じ内容を説明していく藤丸立香。何なら緊急会議の時よりも多く喋った。
始皇帝と項羽の存在について聞きたい事は大事だが最優先は王たちの救出だ。蜀と呉は王の救出作戦を開始する。
1019
蜀と呉の陣営は慌ただしく動き回る。必ず王を救出すると使命感に駆られているのだ。今すべきことを全力で行う。
「立香の準備は大丈夫か?」
「ああ。魏との交渉に行く準備オッケーだ。それと誰が付いてくるんだ?」
魏との交渉で藤丸立香だけでなく蜀と呉からも交渉人はいる。
これから一時的とはいえ、協力関係を結ぶのであれば蜀と呉からも誰か向かうべきだ。
「蜀からは俺と朱里。護衛に愛紗が来てくれる」
「こっちは師匠とリャン。そんで呉からはシャオと冥琳、梨晏だ」
各代表が赴くという事だ。そうでもしなければ魏の面々は出会ってくれもしない。此方が本気だという事を見せねばならない。
「魏の方も同じ気持ちだと思うんだけど…協力してくれるかどうか。それに兵士たちの問題もな」
北郷一刀が危惧している事は兵士達だ。忠誠心の高い兵士や臣下は諦めていないが大百足の脅威に絶望して士気が大きく落ちている事が問題である。
「それだ。誰だって巨大な脅威に恐れて絶望するのは分かる」
藤丸立香で言うならば第七特異点でのティアマト、第七異聞帯でのORT。他にも巨大な脅威はいくつも存在していた。
「戦意を失うのは分かる。でも…」
「ああ、諦められない。桃香を救うんだ」
北郷一刀は桃香を愛している。最愛の人を見殺しに出来るなんて選択肢は無い。
彼は蜀の天の御遣いで桃香と同等の立場である。彼女が不在の今は彼が代表なのだ。
元々はただの学生で一国を纏める力なんて無いが桃香を救うという一点において彼は無茶を承知で蜀の代表を自ら選ぶ。
「敵戦力の偵察は美花たちに任せてる。魏の交渉は…上手く行くと思う気がする。あとは兵士たちの士気だよなぁ」
北郷一刀の顔は覚悟を決めていた。それは左慈と戦った時と同じであった。
「一刀。蜀の代表の顔してる。カッコイイよ」
「そ、そうか?」
急に褒められて照れるのであった。
「兵士たちの士気だけど…何とかなるかもしれない」
「本当か立香か?」
「敵の戦力は強大だ。でもこっちだって負けてない」
兵士達は敵勢力の暴力に恐れている。ならば此方が勝てる可能性を示せばいいのだ。
「敵は巨大で凶悪だ。でも勝てる可能性はゼロじゃない。オレの時はいくつもそんな事があったんだ。勿論、運の良さもあったがちゃんと考えて勝てる可能性を掴んできた」
「詳しくは分からないけど…立香の言葉に嘘がないのは分かるよ」
「今回ばかりはオレらも表に出る。きっと皆は混乱するけど始皇帝と項羽の力を借りる」
大陸の覇者である始皇帝と覇王の項羽の名声は巨大だ。
「それは助かる!!」
巨大な敵に絶望しているのならば味方に圧倒的な覇者を迎え入れ希望を与える。そして勝てるという可能性を大いに魅せるのだ。
「勝てる可能性を見せるか…」
「勝つ策をきっちりと説明する。そしてこっちの力を魅せるんだ」
始皇帝たちの『力』を見せつける。超常の力には超常の力を。
「一刀も頼むよ」
「俺も?」
「天の御遣いという名声とその刀も強力だからね」
「なるほど」
北郷一刀は腰に携えた刀を見るは次元を切断する刀。ここ一番で逆転できる切り札でもある。
「そうだ。天の御遣いの名声なら立香もだろ」
「オレは違うんだけど…そう言ってられないな」
使えるものは何でも使う。
もしも魏との協力が結べれば大きな力となる。それは今までからしてみればあり得ない事で三国が一時的とはいえ、1つの敵と戦うために協力する事は奇跡に近い。
始皇帝や項羽たち、天の御遣いという名声。そして敵を倒す可能性がある『力』を魅せ付ける。絶望している兵士たちに勝つ希望を与えられる事が出来るのだ。
「プレゼンテーションするって事だな」
「始皇帝たちに話をしておくよ。詰める話をするなら魏との交渉結果だな」
「ああ。魏と協力出来たら、この話もしないといけないしな」
絶望には希望を。その為に2人の天の御遣いは力を合わせる。
1020
愛紗は軍の再編成をしている。そして休憩に入ったら青龍偃月刀を無心に振るっていた。
何もしていないと怒りで自分がおかしくなりそうだからだ。早く助けに行きたいという気持ちを暴走させないようにしている。
「愛紗殿。休憩はちゃんと取らねば身体に毒ですよ」
「秦良玉殿か」
青龍偃月刀の素振りを止め、水を貰って喉を潤す。そのまま内にある怒りの炎も鎮火できればと思うが出来ない。
怒りで心が燃えるが我慢しなければならない。戦う準備を確実に完成させ、桃香を救いに行かねばならないのだ。
「すまないな。気を遣わせたか」
「いいえ…愛紗殿の気持ちは分かります。私もマスターを奪われたら同じでしょうから」
愛する人や忠誠を誓った人を誘拐されれば誰だって冷静ではいられない。
「桃香様は私を導いてくださったお方だ。だから失うわけにはいかない」
「はい。その為に今は体力を回復するべきです」
「分かっているが…何かしていないと落ち着かんのでな」
「なら私を手合わせでもしましょうか」
休憩が必要と言っておきながら手合わせを提案する秦良玉。
休んでくれないというのであれば疲れさせて強制的に休ませるだけである。
「それは願ってもない。素振りよりも何倍も良い事だ」
愛紗と秦良玉が構える。
「愛紗殿の相手は鬼たちです。そして特別な力を持った鬼たちとも戦うでしょう。それを踏まえて手合わせします」
「助かる。私は鬼や妖魔との戦いは経験は少ないからな」
愛紗が望む相手は武田信虎だ。桃香を誘拐した張本人であり、仲間や主人である北郷一刀でさえ、ついでに殺そうとした怨敵。
「いくぞ!!」
青龍偃月刀とトネリコの槍が交差する。
2人が手合わせをしている場所とは別の場所で手合わせをしている者たちがいる。
李書文(槍)と焔耶だ。
「うおおおおおおおお!!」
「怒りを力に変えるのは良いが大振りすぎるぞ。隙が大きい」
「ぬあ!?」
焔耶も愛紗と同じくでジッとしていられずに李書文(槍)に手合わせを願い出たのだ。
「怒りを力に変え、冷静に対処しろ」
「分かってる!!」
「言葉と行動が真逆だぞ」
鬼との戦い方を教えて欲しいと言われているが李書文(槍)は専門ではない。対鬼であるならば源氏陣営を呼びたいくらいだが、結局は塵も残さず殲滅すればいいと言われそうだ。
「能力が分かっている八鬼将についてもう一度話す。それを踏まえて打ち込みをするぞ」
「来ぉい!!」
打ち込みの様子を見守るは蒲公英と徴姉妹の徴側である。
「まったく焔耶ってば戦いまで大人しくしとけばいーのに。武器振るってるくらいなら軍の再編成を手伝ってほしいよ」
「まあまあ、焔耶さんは大人しくしてるときっと自分が押さえ込めない。だからああやって発散してると思う」
「ほんと猪じゃん」
悪口を言う蒲公英だが焔耶の気持ちを蔑ろにしているわけではない。蒲公英もまたいつも通りでいる為にを軽口悪口を呟いている。
これでは自分がただの嫌な奴になるだけだから自分自身で嫌な気分になる。焔耶と口喧嘩になるからいつもの事になるのだ。
「やめやめ。焔耶のアレは桃香様を救うための行動なんだよね。蒲公英は軍の再編成を手伝って来ようっと」
「蒲公英ちゃんは魏との協力は大丈夫?」
詳しくは聞いていないが曹操と馬一族とは因縁がある。それは呉と魏と似たような因縁だ。
蜀の中でも馬一族は魏との協力に反対意識が高い。何故なら母の仇であるのだから。
「魏と協力に反対は無いよ。だって呉も協力を賛成したんだから…だから文句はない。今は蒲公英の私怨よりも桃香様を救う事だから」
「そっか。無理しないでね。私であれば相談に乗るからね」
「姉様より姉様っぽいな~」
そんな事を言っていると何処からともなく徴弐が現れそうだ。
「蒲公英は大丈夫だよ。寧ろ姉様の方が心配だよ」
その心配されている翠は現在、騎馬隊の再編成を行っていた。
騎馬隊は陸路に居たので赤壁にて大百足の被害にあっていない。その為、再編成に時間は掛からなかった。
赤壁の戦いは船上であった故に翠の得意分野である戦いは出来なかった。しかし武田信虎軍との戦いでは発揮が可能。
詳しい情報はまだ無いが予想では陸路の戦いとの事。涼州の、馬一族の戦いを鬼との戦いで見せ付けるのだ。
「よし、大丈夫だな。あとは馬たちが鬼やあのデカイ蟲に怯えなきゃいいんだが…」
「馬は乗る者と一心同体です。我らが気をしっかりと持てば馬も応えてくれるでしょう」
「んなも言われなくても…ってアンタは蘭陵王か」
「私もいるぞ」
翠の前に現れたのは蘭陵王と白蓮。
彼らは武田信虎軍との戦いで翠が率いる騎馬隊の編成に入る事になっている。
「敵の本拠地が無双の塔なんて言っているから戦場が陸なのは確かだ。私ら馬の扱いに長けた者たちの出番だな」
「私も皆さんの足手まといにならぬようにしましょう」
「よく言うよ。あんた程の将はそうそういない。なんなら馬の上で舞うように剣を振るうなんて私はできないぞ。なあ翠」
「ああ。アタシでも無理だ」
蘭陵王の実力は白蓮と翠は認めている。文句なんて全くない。
「ありがとうございます。しかし翠殿であれば私と同じような事が出来ると思いますよ?」
「無理無理。アタシに舞えってか?」
軽く笑う翠だが、何処か暗さがある。その理由に蘭陵王と白蓮は知っていた。
「魏との協力に不満がありますか?」
「っ…ねえよ」
「無いような感じに見えないぞ?」
翠の心情がバレバレのようだ。
「普通の私にも分かるくらいだぞ?」
「これから桃香殿たちを救う戦いです。心に迷いが無い方が良いですよ」
「…はあ。そこまで分かりやすいのかアタシは?」
顔に出さないようにしていても分かる者には分かるのだ。尤も最近まで敵対していた国と協力なんて普通は無く、因縁がある者がいるならば心配されるものだ。
「魏との因縁は知っています」
「…ああ、曹操は母の仇だ。魏はアタシらの敵だ」
仇の敵を許す事は半端な気持ちでは出来ない。理由があっても許す事も難しい。
こればかりは彼女の心の問題だ。
「でも桃香様は曹操たちを殺す事を良しとしないんだよな」
「…それはちょっと違うぞ」
「白蓮?」
「桃香は確かに戦が嫌いだ。でも変わってきてるんだよ」
桃香の成長とも言える事。
彼女は益州で己の名を語る男と戦った。そして王となるべく成長していったのだ。
夢想家である事は変わりないが、夢想を現実にするべく為に動き出している。
「戦が嫌いでも戦わなければならないなら戦うと覚悟を決めてる。殺す事が必要なら必要だと決めるさ。でも救える命があるなら、殺さなくても良いなら、そっちを馬鹿みたいに選ぶだけなんだ」
「そうだな…桃香様はアタシらの気持ちを分かっていて悩んでいたさ。それでも曹操を殺す必要が無いなら殺さないようにしていたからな」
「優しい主ですね」
「甘いとも言えるけどな」
優しくて甘い主。そんな主だからこそ人が集まり、蜀という国が出来たのだ。
「王の気持ちは理解しているのですね。でも曹操が許せないのであれば桃香殿と本気で語るしかないでしょう。彼女であれば其方の戦いはいくらでも相手になるでしょうから」
「ははっ、確かにな」
剣を振るっての戦よりも会話での戦であれば桃香は喜んで相手になる。
「許すか許さないかは人それぞれです。誰も責めはしません」
「魏との協力かどうかでアタシがウジウジしてる場合じゃない。まずは桃香様を助ける事が一番なんだよな」
やはり誰かに悩みを打ち明けるだけでも心がすっきりするものだ。
誰にも悩みを言えなくて溜め込むよりも、吐き出す方が良い。
「何かちょっと話すだけでも変わるもんだな」
「翠殿はとても良い女性ですよ」
「な、きゅ、急に何だよ」
「主を救う為に仇の国と協力する事を選ぶ貴女は強く素晴らしいと言いました。綺麗で心が広い美女ですよ」
「なーーっ、止めろ!!」
顔が真っ赤になる。堂々と褒める蘭陵王を黙らせる為に槍を振り回しそうになる。
「ははは、失礼。この言葉は私よりも北郷殿に言われたいですよね?」
「何でそこにご主人様が出てくるんだー!!」
更に顔が林檎のように赤くなる。
「真っ赤だぞ翠。ははは」
「白蓮も笑うな!!」
「白蓮殿も素晴らしい女性ですよ」
「え」
蘭陵王の褒める矛先が変更。
「白蓮殿は私の中で一番心が強い女性だと思ってます」
「おいおい、言い過ぎ」
「何故なら貴女は麗羽殿たちを許しているのですから」
白蓮は幽州の太守であった。
今は蜀の武将の1人であるが、そこに至った過去には麗羽が原因だ。
麗羽が幽州に攻め込んで侵略したのだ。幽州から命からがら逃げ出す羽目になり、屈辱を味合わされた。
そのような過去にあると言うのに今では蜀で一緒にいる状況だ。
「そのような状況はあまり無いですよ。ですが貴女は因縁の相手と一緒におり、何なら世話までしている。そして和解にまで至っている」
「言われてみればそうだな。白蓮…アンタ普通にすげーな」
「いや、許した覚えは…」
そんな事を言う蘭陵王だがカルデアでは案外そういう事があったりする。
「心が広くなければ出来ません。貴女も心が広く強く綺麗な女性です」
「や、止めてくれ。そんな真っすぐに褒められるのはちょっと慣れてないんだ」
「貴女も私ではなく北郷殿に…」
「ま、待ったー!?」
「アンタもアタシと同じ気持ちになりやがれ!!」
白蓮もまた顔が真っ赤になるのであった。
1021
蜀で軍の再編成をしているのであれば呉もまた軍の再編成をしているのは当然だ。
全ては蓮華を救う為に。
「シャオ様。後は此方でやっておきます。休憩に入ってくだされ」
「急にシャオ様が代表になったのですから慣れない事もありますから休憩はしっかりと取ってくださいね~」
「うん。ありがと雷火、穏」
蜀の王の代行が北郷一刀であるならば呉の王代行は小蓮となる。
まだ王として未熟だと思われるかもしれないが呉王の代行は彼女しか適任がいない。
呉は孫家が建国した国だ。炎蓮が土台を作り、雪蓮が建国し、二代目の王が蓮華へと継承された。もしも蓮華の身に何かあれば血筋的に小蓮に継承されるのが筋だ。
小蓮もまた己が王位継承権を持っていると自覚している。だからこそ現在は己が呉の代表として振舞っているのだ。
「呉の代表ってこんなに大変なんだね姉様」
自分が王になる事を想像しなかったわけではないが、実際になってみると大変なのが分かる。
雪蓮も蓮華も味わった王の重圧が小蓮にも圧し掛かる。そして自分の大切な肉親を失うという不安も圧し掛かる。
「はあ…」
休憩を取った方が良いと言われたから気分転換がてら外で休憩を取るが不安感が身体を重くする。
自分は王として未熟だと理解している。だから臣下たちの力を存分に頼るつもりだ。穏たち臣下も支えるべく力を存分に発揮している。
何が何でも蓮華を助け出すために全力を出しているのだ。それでも不安がとても重く圧し掛かっている。
母親である炎蓮を亡くし、長女である雪蓮も亡くした。そして今度は次女の蓮華の命の危機である。
もう二度と家族を、王を失いたく無いのだ。
「蓮華姉様…」
小蓮は蹲るように座り込む。
心を強く持たないといけない。今の自分は呉の代表であり、代行とはいえ王だ。
王であるならば弱気な姿を見せては臣下や兵士たちまで弱気にさせてしまう。
「…助けて」
自分たちが蓮華を助けに行かねばならないのに自分も助けて欲しいと思ってしまう。
「シャオ」
「ひゃい!?」
蹲って座っていたせいか誰かの接近に全く気付けなかった。誰かと思って振り向くとお茶とお菓子を持ってきた藤丸立香であった。
「疲れていると思ってお茶と甘いお菓子を持ってきたんだ。食べる?」
「……食べる」
甘いお菓子は幸福感を感じさせると言われる。不安に圧し潰されそうになっている彼女には必要な物だ。
少しだけでも彼女の不安を和らげればと思っての事。そして臣下たちには相談出来ない事も藤丸立香であれば相談できるかもと雷火が手配したというのもある。
「もぐ」
甘いお菓子を小蓮は齧る。藤丸立香は静かに彼女の横に座り、同じように甘いお菓子を齧る。そしてそのまま無言に咀嚼音が静かに響く。
お菓子を飲み込み、お茶を啜る。一息ついた小蓮はポツリポツリと呟き始めた。
「立香…姉様大丈夫かな」
「大丈夫だよ」
「酷い事されてないかな」
「されてない」
「何で分かるの?」
「実際は分からないよ。でも大丈夫な気がするんだ」
居ない者の安否は分からない。しかし嫌な事を考えるよりも今は「大丈夫」という事を信じていたい。
「シャオだって蓮華が大丈夫だって思いたいだろ?」
「うん」
悪い事や悪い未来を考えるよりも良い事や良い未来を考えるべきだ。それこそ心が不安で圧し潰されそうな時こそに。
「……王って大変なんだね」
「大変だよ。雪蓮と蓮華も大変だって言ってた」
「でも姉様たちは立派な王してた。私には…」
「それも言ってたよ」
「え、そうなの!?」
王になるのは生半端な気持ちではなれない。強き心が必要である。
「私も王になる資格があるのは分かってる。でもさ…そんな事は起きないんじゃないかと思ってたんだ。でも起きた…だから私は頑張らなくちゃいけない」
「蓮華にも言ったけど…一人でどうしようかと思っちゃいけない。力を借りるのは恥じゃない。王らしくないと思っちゃいけない」
「うん、分かってる。だから私は姉様を助け出す為に皆に頼ってる」
「それが一番だよ。オレだって皆に頼ってばかりだ。だから自分に出来る事…自分にしか出来ない事をするんだ」
「うん。シャオも自分の出来る事をする。必ず姉様を救うんだ」
不安な気持ちに圧し潰されそうであるが、蓮華を助けるという気持ちは無くしはしない。
もう二度と大切な家族を亡くすなんて事はしたくないのだ。
「……でもやっぱ不安はなかなか消えないね」
「不安はすぐには消えないよね……でも和らげる事は出来るよ。何かしてほしい事はある?」
「なら…抱きしめて欲しいかな」
抱擁は心や体が緊張している時にすると緊張や不安感を軽減してくれる。心が安定しやすくなるのだ。
藤丸立香は優しく小蓮を抱きしめる。
「これでいいかい?」
「うん…立香って温かいね」
抱擁は安心感を与えるというが、好きな人であればより効果は強い。
「シャオ」
「なに?」
「必ず蓮華を救おう」
「うん」
「そして…この戦いできっとシャオを助けてくれる人達が現れる。だから全力で行こう」
「うん」
藤丸立香は「あの2人」を思い浮かべる。
もう表舞台に出ないと言っていた2人であるが、今回ばかりは無理やりにでも引っ張り出す。
外史世界の正常な流れとは違う異常事態。こればかりは表舞台にもう顔を出さないと決めた2人にも力を出させてもらう。
呉の運命とは関係無い脅威になら2人も恥ずかしくて顔が出せないなんて戯言を言うわけにもいかないからだ。
(こんな状況でも顔を出さないなんて言うなよ雪蓮、炎蓮さん)
今の呉は今まで以上に絶望し、今まで以上に躍起になっている。まだ手遅れではない。
炎蓮と雪蓮を亡くし、今度は蓮華まで亡くすわけにはいかないのだ。特に孫呉の重臣たちは、その気持ちが誰よりも強い。
「おのれ…よくも蓮華様を!!」
壁に拳を叩きつけるは祭。彼女の怒りは有頂天だ。
「静かにしなさい。今のアンタはゆっくり療養しないといけない身でしょ」
「療養している場合ではないわ!!」
呉軍の再編成。そして蓮華救出の為に肉体の疲労や痛みなんて気にしている場合ではない。
「華佗はちゃんと休めって言ってたわよ。医者の言う事はちゃんと聞いた方がいいわ」
病人や怪我人にとって医者の言う事は絶対だ。カルデアのアスクレピオスもいつも言っている。
「五月蠅いぞ。背中の痛みはお主のせいでもあるんだぞ」
「それは本当に悪かったわ」
普段通りの粋怜。彼女は静かに椅子に座っていた。
「…ぬう。粋怜は蓮華を奪われてどうにも思わんのか!!」
「思うに決まってるでしょ!!」
祭よりも大きい怒声。これには祭もたじろぐ。
「私が蓮華様を奪われて本当に何も思わないとでも?」
彼女は静かに怒っていた。
「……すまん」
「いいえ…怒鳴ってこっちも悪かったわ」
目の前で炎蓮を殺され、雪蓮すらも救えなかった。そして今度は蓮華さえも失いかけている。
もう二度と大切な主を失うのは御免なのだ。雪蓮を亡くした時、もうこのような事はさせないと誓っておいてこの始末。
武田信虎軍に怒りを燃やし、不甲斐ない己自身にも怒りを湧いている。
「ここにおったか。怒鳴り声が聞こえたから分かりやすかったぞ」
「雷火先生?」
「それと老書文?」
祭と粋怜の元に雷火と李書文(殺)が訪れる。
2人の訪れた理由は李書文(殺)の施術を受けさせるためだ。華佗による治療に加え、李書文(殺)の施術も加われば肉体はより回復が早くなるからである。
実際に李書文(殺)の施術は傷ついた兵士たちに好評で効果も抜群だ。
「先に祭を頼む」
「応。構わんか祭よ」
怒りで己の肉体的疲労や痛みは忘れている祭であるが救出戦の時に本来の力が出せないのは一番困る。
彼の腕は誰もが認めているので施術を受ける事に文句はない。
「頼むぞ。早く儂を治してくれ」
「先に言っておくが完全に治ると思わんでくれよ」
「何を言う。お主の施術を受けた兵士たちは怪我をする前よりも調子が良くなったと言っておったぞ」
「儂の施術をそこまで評価してくれるのは嬉しいのだがな…しかし何でも完璧に治るわけではないぞ」
これから李書文(殺)は休むのがいつになる事かと思うのであった。
「粋怜も受けるといい。平気そうに見えるがお主も船が沈没した際に身体を痛めたであろう」
「雷火先生には隠せないわね。そういう雷火先生だって無理して動いてるんじゃないの?」
「無理して動いておる。三度目なぞ御免じゃからな。お主も同じであろう」
三度目はもう無いと自分たちに言い聞かせる彼女たち。
「ええ。今度は私の命に代えても助け出すわ」
「うむ。婆であるわしらが生き残るなんぞ間違っておる。生き残るは次の世代になる者たちじゃ」
呉をわけの分らぬ者たちに滅ぼさせてはならない。蓮華を救う為に己の命をいくらでも燃やしてもいい覚悟で臨む粋怜たちであった。
読んでくださってありがとうございました。
次回の更新も未定だけど2週間以内を目指します。
1018
蜀呉緊急会議。
まあ、王たちの救出は当たり前ですよね。そして魏との共闘。
ついさっきまで争ってたのに魏と協力は難しい。しかし今ならば可能はあるのです。
始皇帝と項羽の発表はすんなりと。まあ、もう書いたので二番煎じになりそうなので。
1019
立香と一刀の話。
いまこそ天の御遣いとして、その名が役に立つ時が来ました。
一刀は桃香と同等の扱いなので蜀の代表に。
覚悟は決まってます。彼もここぞという時は覚悟を決めますからね。
1020~1021
各キャラたちのちょっとした一部始終の話でした。
どの恋姫たちも必ず王を救い出すと怒りと覚悟を決めてます。
特に孫呉はねえ…。