Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは!!

FGOではサマーイベント復刻が終わり、リリムハーロット復刻アンケートが始まりましたね。
連続イベントで一息つく暇もありません。
石ももうありません(泣)

そして今年の水着イベントが楽しみですよ。
今年の水着キャラも既に予想されているみたいですね。
エレシュキガルにトラロック、クリームヒルトが熱いみたですね。そしてリップ!!

今年はどうなるのやら。


三国団結へ

1022

 

 

三国の王たちを救う為、武田信虎軍を倒す為、蜀と呉は戦力強化に必要なのは魏の協力が必要だ。

魏の目的も同じく王の救出に違いない。目的が同じであるならば協力関係を結べる可能性は高いが魏とは因縁がある。

因縁のある中で上手く協力が得られるかどうか問題だ。ただでさえ、崩壊したとはいえ赤壁の戦いをしたばかり。

魏の反応が気になるところだ。

 

「もうすぐ魏が軍を陣取っている所に入るけど」

「いきなり剣を振りかざしたりは……しないよな?」

 

藤丸立香たちは協力を得るために魏の現拠点に足を歩めている。

協力を得る為に蜀からは代表として北郷一刀。呉からは小蓮が代表として出ている。護衛や交渉人も用意している。

魏を倒すために向かっているのではなく、話をする為に向かっているのだからいきなり襲撃はしてこないはずだ。

 

「大丈夫だろうが警戒はしておくべきだろう」

「そうだな」

(何だろう…心なしか冥琳の声が小さいような。やっぱりまだ回復してないのかな)

 

平然を装っているように見えるが分かる者には分かる。

藤丸立香だけでなく小蓮や梨晏もまた気づいていた。

 

「魏の者と接触したら此方側に敵意は無いとすぐに伝えるべきだろうね。戦が終わらされた状況とはいえ向こうが襲ってこない確証が無いからね」

 

そんな事を言う司馬懿(ライネス)。

 

「警戒した事に越したことは無い…師匠の言う通りだったね」

「そうだな。やはり王たちが奪われ、膠着とも言える状態で蜀と呉が来たらこうなると思ってたよ」

「冷静すぎるだろ2人とも…」

 

魏の領域に入った瞬間、魏の兵士たちに囲まれる藤丸立香たち。まさにフラグ回収。

赤壁の戦いが崩壊したとはいえ、魏にとって蜀呉は敵国だ。お互いに王が奪われ、軍を壊滅させられたからといって終わりではない。

第四勢力である武田信虎は三国の敵であるからといって蜀呉が魏の仲間であるわけではない。この状態であれば魏を仕留めに蜀呉が攻めて来たと思われたも仕方がないのだ。

 

「蹴散らすか?」

「愛紗殿落ち着いてください。ここで我々から手を出せば交渉が出来なくなります」

「秦良玉さんの言う通りだよ。関羽落ち着いてー!!」

 

愛紗をどうどうと止める秦良玉と梨晏。

 

「どうするんだ?」

 

蜀と呉の者が何を話しても魏は聞いてくれない可能性は高い。だからこそ交渉役としての藤丸立香たち。

 

「此方に戦意はありません。魏の代表と話がしたいんです。取次をお願いします!!」

 

はっきり、大きく、此方の要求を伝える。しかし魏の兵士たちは武器を降ろさず、敵意は剥き出しのままだ。

カルデアは中立として魏にも伝わっているはずだが、魏が崩壊した状況だ。もしかしたら中立を破って蜀呉に与したと思われているのだ。

状況が状況だから、そう見られても仕方がないのかもしれない。藤丸立香としては兵士の中に上役がいれば話がしやすいかもしれない。

 

「此方に戦意は無い……武器を降ろしてくれ秦良玉殿、関羽殿、太史慈殿」

 

司馬懿が護衛の秦良玉たちに手を向ける。

 

「しかし司馬懿殿…!!」

「関羽殿大丈夫だ。此方は戦いをしに来たわけではない」

 

剣や槍を向ける魏の兵士たちであるが、向こうもこのまま戦いを仕掛けても良いかと悩んでいる。

指揮する将がいない状況で兵士も勝手に動けない。普段であれば兵士たちが捕縛して終わりだが、現状況で手出ししてしまえば大きな問題が発生する。

中立のカルデアに、蜀の代表である北郷一刀、呉の代表である小蓮。もしも捕縛、討ち取れば蜀呉は終わりであるが、残党兵が魏に攻めてくると魏兵も分かっている。

 

「きっと向こうも判断を仰ぎに誰かしら確認を取っているはずだろう。だから待つしかないな」

「司馬懿さんの言う通りです。今は待つしかありません」

 

朱里は北郷一刀の前に。本当は隠れたいが代表である彼を守る為に勇気を出している。

 

「どうやら来たみたいだぞ」

 

魏兵の後ろからヤイヤイと声が響いてくる。

 

「蜀呉が攻めて来たって!? こん状況に向こうは何してくれとんじゃ!!」

「攻めて来たわけじゃないと思うわよ。恐らく…」

 

魏兵を掻き分けて現れたのは霞と陳珪であった。

 

「霞さんに陳珪さん……話を聞いてくれそうで人達で良かった」

 

もしも夏侯惇や荀彧であれば話を聞いてもらえなかったかもしれない。普段であれば可能性はあったが曹操が捕縛された今の2人は冷静でないかもしれないからだ。

 

「なんや立香やないか。それに…うわっ蜀と呉の代表さんたちか」

「立香君に……なるほどね」

 

陳珪は藤丸立香たちの姿を見て察する。

 

「話がしたいんだ。こっちに敵意はありません」

 

藤丸立香だけでなく北郷一刀や小蓮たちを見ると敵意は無い事を確認。

護衛である愛紗たちは警戒しているがこれから戦を始める様子はない。

 

「いいわ。貴方たち道を開けなさい。私たちが案内します」

「陳珪様!?」

「ウチも許可する。責任は全部取ったる」

 

霞と陳珪が魏兵達の警戒を解かせ、武器を降ろさせる。

 

「着いてきて」

 

陳珪と霞の指示に従い藤丸立香たちは魏の陣営へと進んでいく。

 

「まずは第一関門突破という所か」

「次が本番だね。こっちの話を聞いてくれるかなー」

「聞いて貰わないと話が進みませんからね」

 

魏との交渉場にはつけそうであるが話に応じてくれるかどうかだ。

 

「立香君…此方に来たのはもしかして」

「協力を組むためなんだ」

「やっぱりね」

 

陳珪は藤丸立香たちが来た理由を分かっていたようだ。

 

「敵国だった我々に協力を…よくそんな事を思いついたわね」

「思いついたのはオレじゃなくて一刀。蜀の天の御遣いだよ」

「なるほど」

 

異常事態が起きたとはいえ、今までの因縁がある。その中で協力を提案するのはなかなか思い切った事だ。

今の魏では考えられない事である。

 

「もう1人の天の御遣い様は思い切った事を提案するわね。でも…今の状況を変えるにはそういった思い切った事をしないと駄目かしらね」

 

彼女の言葉から魏の状態が何となく察せた。

魏の統制は硬いように見えて脆い。何故なら曹操という大きすぎる支柱が理由である。

曹操が完璧でカリスマが大きすぎる故だ。薄々、魏内でも分かっていたかもしれない事だが曹操の後継問題。

もしも曹操の身に何かあった場合、誰が魏を引き継ぐのか。曹操を超えるもしくか同等の王が現れるのか。

現れなく、素質のある者がいないからこそ今の魏が問題になっているのだ。

 

「もしかして魏は曹操さんに代わる代表が決まっていない…それで揉めてたり?」

「いえ、代わりは決まったわ。確かに揉めはしたけどね」

「曹一族の誰かかな」

「ええ」

 

曹仁、曹洪、曹純の誰か。

 

「冷静であり、知識もあり、人を纏めるのであれば曹洪殿か曹純殿かな?」

「外れよ司馬懿殿」

「意外だな。曹仁殿か」

「意外やろ~?」

 

魏の代表が曹仁に。意外と言えば意外だ。

王にふさわしくないと言うわけではないが彼女の性格上、代表を務めるとは思わなかった。

 

「子孝殿もああ見えて人を纏める才があるんですよ」

「あれはあれで責任感がある。でもなぁ…」

「代表が決まっても今後の方針で揉めてるわけか」

「せや」

 

今後の方針は実は決まっている。ただ決まった方針に向けて動けるか如何かで揉めているのだ。

 

「曹操殿を助け出したい。しかし助け出しに行きたいけど現状では無駄な動きになってしまう。そういったところかな?」

「司馬懿殿も鋭いわね。その通りよ」

 

曹操を、自国の王を救出しに行く事は魏でも同じだ。しかし救出に行きたくとも現戦力では危険だという事だ。

魏の性急派と冷静派とも言うべき2つが言い争っているのだ。

性急派は夏侯惇や荀彧で、冷静派は夏侯淵や郭嘉といった所。荀彧も本来であれば冷静派の方だろうが曹操命なので今ばかりは冷静でないのかもしれない。

 

「その板挟みになっているのが曹仁といった所か」

 

そんな話をしていると奥から言い合いをしている声が響いてきた。

 

「だからすぐにで助けに行くべきだと言ってるだろうが!!」

「だから何度も言わせないでください。このまま無策に突っ込んでも華琳様を助け出せないと言っているんです!!」

「私がいくらでも策を出すと言っているでしょう!!」

「その策も全て良いとは言えませんよー。確実性がないですし、敵戦力も把握出来てません。そもそもあの大きな蟲をどうやって倒すんですか」

 

話はどうやら平行線のように聞こえる。

 

「もしかしてずっと?」

「ええ。曹孟徳様を助けに行きたいのは山々なんだけど…ああやって平行線でね」

 

曹操を救出しに行きたい。しかし現実的に考えても現在の戦力や兵の士気、敵を倒すための策が足りないのだ。

 

「桂花、冷静になってください。いつもの貴女なら無策で突っ込むような真似をしないでしょう!!」

「私は冷静よ!!」

「冷静でないだろう。姉者も落ちついてくれ」

「「だから冷静(よ)だ!!」」

 

こういう時だけ息が良い。蜀の焔耶と蒲公英みたいだ。

白熱しており、苛つきも充満しつつある。他の臣下たちも気まずそうだったり、苛々していたりしていた。

 

「あの空気が嫌やったからウチ抜け出したんよ」

「ええ。私もちょっとね…立香君たちが来てくれてある意味助かったわ」

 

正直に言うとあの空間に入って行くのは嫌であるが、そんな事は言ってられない。

早く桃香たちを助けに行かねばならないのだから躊躇っている場合ではないのだ。

 

「今、戻ったわ」

「蜀呉が攻めて来たわけちゃうでー」

 

陳珪と霞が会議の中へと入って行く。

 

「そうか燈……っ、どういう事だ?」

 

夏侯淵が厳しい目で陳珪たちを鋭く貫く。何故なら彼女たちの後ろには蜀と呉の者たちがいるのだから。

この状況に蜀と呉の者たちを陳珪が連れて来ればより空気が張り詰める。

 

「蜀と呉の者たちが話があるそうです。中立である立香君たちもいるし、攻めて来たわけではありませんよ」

 

冷静に陳珪が説明してくれる。このまま即戦闘なんて事にはなさそうだ。

 

「話だと?」

 

チラリと夏侯淵が藤丸立香と司馬懿、秦良玉を見る。次に蜀の北郷一刀や呉の小蓮たちを見る。

 

「……話か」

「ああ、魏に提案があるんだ」

「提案というか協力かな」

「協力ですって?」

 

協力という言葉に魏の面々が反応する。

 

「何で私たちがアンタら何かと…」

「詳しく話を聞きたいっす!!」

「ちょっ、華侖!?」

「すぐに席を用意するっす!!」

 

曹仁はすぐさま蜀呉の席を用意するように指示する。

現在の状態を脱するには何か切っ掛けが必要だった。陳珪が連れてきた藤丸立香たちはまさに欲しかった切っ掛けだ。

 

(姉さん良かったの?)

(このままだと、ずっと終わらないっす。だからこれで良いと思うっすよ柳琳)

(…そうかもしれないわね。早く華琳お姉様を助けに行きたいのは皆が思っている事。このまま終わらない話を続けるより良いわ)

 

流石に警戒は解けないが話し合いの場を作る事は可能だ。夏侯淵たちは口論を辞め、すぐさま二国との話し合い(交渉)を始める。

 

「で、何しに来たんだ貴様らは」

 

ギロリと睨む夏侯惇。

 

「姉者」

「ぐ…しかし奴らは」

「今はそうではない」

 

妹の夏侯淵に睨まれる夏侯惇は渋々殺気を消す。

 

(怖ぁ…夏侯惇怖)

(怖いよ立香ぁ)

(向こうも状況が状況だから…大丈夫だよシャオ。それと一刀)

(何だ?)

(愛紗さん宥めて)

 

北郷一刀はチラリと愛紗を見ると、彼女も殺気を出していた。

 

(愛紗も怖っ)

 

敵の懐に入っているのだから愛紗の警戒は当然であるが話し合いの場に殺気は似合わない。

 

(愛紗、殺気を抑えて。俺は大丈夫だから)

(…しかし、いえ、はい)

 

殺気丸出し話し合いなんで出来るはずもない。最初から躓く状況であった。

 

(これまともに話し合いになるのかな!?)

(交渉にならないと困るんだがな…)

 

梨晏と冥琳は頭が痛くなりそうだが何とか交渉に持って行かないと困る。しかし初手から蜀と呉からは提案出来ない。

話を通しやすくするにはカルデア側から通した方が可能性がある。

 

「話って何すか?」

「単刀直入に言う。王たちを救う為に力を貸して欲しいんだ」

「力を貸して欲しい?」

「うん。三国は武田信虎…鬼たちに王を囚われた。蜀と呉は王たちを助けるべき動くと決めた。魏もそうじゃないかな」

「そうっす。でも…」

 

助けに行く事は決定しているが、どうやって助け出すかが問題だ。魏でも策を考えているが有効な策が全く思いつかない。

そもそも軍を崩壊させられた状況で戦力も足りていないのだ。

 

「戦力が足りていないんだろう?」

「司馬懿アンタ…」

 

痛い所を堂々と言う司馬懿を睨む荀彧。

 

「事実だ。先ほど、話が聞こえてきたが…自分が策を考えて曹操殿を助けるとか言っていたが無理だろう?」

「そんな事…!!」

「そんな事ないっ。我が剣で鬼なぞ全員ぶった切ってやる!!」

「……詳しくは聞いていないけど有効な策があるのか程昱殿、郭嘉殿?」

 

荀彧と夏侯惇に聞いても望む答えは返ってこないから別の軍師である2人に聞く。

 

「正直に言って有効な策ではありませんね」

「試しても無駄死になりそうですねー」

「ちょっと2人とも!!」

 

荀彧は2人に対して「裏切り者」と罵るが間違った事は言っていない。

本当に彼女の考えたという策を実行すると魏は今度こそ完全崩壊する。早く曹操を助け出したい気持ちは分かるが、焦り過ぎて一か八かの策なんて実行させるわけにはいかないのだ。

 

「軍師3人中2人が反対しているんだ。それがどれだけ危険で無策なのか分からないのかい?」

「司馬懿殿の言う通りです。桂花、貴女は華琳様を助けに行くつもりが華琳様に魏軍を滅ぼす様を見せつけたいのですか」

「そんなわけないじゃない!!」

「なら、冷静になれと言っているんです!!」

 

郭嘉の怒声が響く。長らく一緒にいる程昱ですら目を丸くして驚いていた。それほど大きく初めて聞く怒声だったのかもしれない。

よく見ると他の魏の臣下たちも驚いていた。流石に我に返ったのか荀彧は悔しそうに口を閉じた。

荀彧の曹操への忠誠心はとても高いゆえに冷静さが欠けていたのかもしれない。

 

「姉者も冷静になってくれ。華琳様の為に…頼む」

「うぐ…秋蘭」

 

夏侯淵の懇願に夏侯惇は何も言い返せない。

 

「ごめんなさいね。話を続けましょうか」

 

陳珪が話し合いの仕切り直しをしてくれる。

 

「話がズレたけど其方は魏との協力を提案しているという事で良いのかしら」

「ああ。王を助け出す為には魏の力が必要なんだ」

 

藤丸立香は北郷一刀と小蓮を見る。ここで2人の発言権が許される。

 

「蜀代表の北郷一刀だ」

「呉の代表 孫尚香だよ」

 

二国の代表が直々に交渉の場に訪れるという本気度。流石に魏側でも分からないわけではない。

 

「三国の協力は俺が提案した。隠してもしょうがないから言うが…蜀の戦力は大分やられてるんだ」

「呉もね。正直に言ってまずいかも」

「堂々と自国が弱体化してると言いますね」

 

腹を割って話しているのだ。

 

「ウチらと一緒っすねー」

「華侖も堂々と言わない」

 

言わなくても大百足という災害に巻き込まれれば分かる事だがちゃんと口にして、嘘を付くつもりは無いという現れだ。

三国とも嘘を付かなくとも戦力が大幅に削れている事は事実だ。だからこそ強敵である武田信虎を倒す為に協力が必要である。

 

「俺らの王、呉の王、そして魏の王。全員が囚われ、処刑させられる状況だ。助け出したくても各国だけの戦力では足りない。だから協力を仰いでいるんだ」

「蜀と呉を力を合わせても心元無いの。だから魏にも協力してほしいの。魏だって自国だけの戦力じゃ無理だって分かってるでしょ」

「そ、そんな事…」

 

魏は強大で大陸の半分を手に入れた程の力を持っている。しかし今の魏では全盛期の力よりも劣化してしまった。

そんな状態で武田信虎と戦うのは無駄死にするようなものだ。否定したくても現実は否定できない。

 

「…もしも仮に魏が協力を承認したとしよう」

「秋蘭さん!?」

「栄華。話させてくれ」

「っ、すいません。話を続けて下さいませ」

 

三国が協力すれば戦力は大分立て直せるのは確かだ。しかし武田信虎軍を、災害レベルの大百足を如何に倒すかが問題なのだ。

敵の主戦力を倒す方法が思いつかないからこそ魏は赤壁から動けずに燻っているのだから。

 

「大百足を倒す方法はある。そっちは任せてくれ」

「此方だってただ協力だけしたいという話だけじゃないんだ。敵を倒す算段はある。鬼たちの情報だってある」

「藤丸殿、司馬懿殿…本当か?」

 

勝つ可能性があり、その補強の為に魏との協力を提案している。

 

「確かに俺らは敵同士だ。しかし今だけは力を合わせないか?」

「……我らと其方には因縁がある。それはどうするつもりだ」

 

魏と因縁。

蜀では翠との因縁や、徐州での件。呉では雪蓮暗殺の件。

そのような事があったのに協力が出来ると思っているのか。寧ろよく魏に協力を得ようとしているのが普通ではない。

 

「普通であれば我らは仇だろう。特に呉からしてみればどうだ?」

「…確かに雪蓮お姉様を殺したのは許せない」

「それは華琳様のせいじゃっ!?」

「桂花。華琳様が指示したものでなく、許貢の独断行動であっても責任は華琳様のものだ。そういう話になっただろう」

 

雪蓮暗殺事件は魏と呉ではとても根深い問題である。

 

「許せないのは今でも変わらない」

 

小蓮は冥琳と梨晏を見る。彼女たちも雪蓮を失った悲しみによって傷ついた者たちだ。

 

「でも…今だけはその事は置いておく。だって今度は蓮華姉様が死んじゃうかもしれないんだもん!!」

 

炎蓮、雪蓮に続いて蓮華まで死なせるわけには絶対にいかないのだ。

 

「蓮華姉様を救えるなら魏と協力する。その為に私怨は挟まない!!」

「蜀も同じ考えだ。今は因縁よりも桃香を…救いたいんだ。魏だって同じだろ」

 

今ここに蜀と呉の代表がいる。中立のカルデアだっている。

囲んでしまえば二国を倒せる事が出来る。しかし、それが何だと言うのか、何も解決には繋がらない。

魏にとって今の最優先事項は蜀と呉を倒す事でもなく、大陸の天下統一でもない。己の王である曹操を救う事なのだ。

 

「……協力を組もうと思うっす」

「華侖!?」

「だって、このままだと何も出来ないっす。このままだと華琳姉が死んじゃうっすよ。それでいいんすか!?」

 

曹仁は何も間違った事を言っていない。何度も確認するが魏の最優先事項は曹操を助け出す事。

今の状況で大陸の天下統一なんてどうでもいいのだ。

 

「皆は華琳姉と天下統一どっちが大切なんすか!?」

「そんなの華琳様に決まっているだろう!!」

「そうよ。華琳様がいなくて何が覇権よ!!」

「なら答えは決まってるじゃないっすか!!」

 

曹操を助け出す為に三国の協力が必要なのだ。

今さら三国の因縁なんてどうでもいい。決着は後でつければいい。身勝手なプライドなんて捨てればいい。

 

「答えは出たっす」

 

三国による協力体制が出来た瞬間であった。

 

 

1023

 

 

赤壁にて蜀呉は再編成が完了しつつあった。各国より防衛に任せていた軍とも合流し、無双の塔へと向かう準備を立てる。

その中で、雪蓮は気配を消しつつ、変装しながら呉の様子を伺っていた。近くにいるのであればどうしても気になってしまう。

合わせる顔が無いと言っておきながら、やはり会いたいと思ってしまう。

 

「今みたいな状況でなければもっと良かったのだけれど」

 

武田信虎によって大打撃を受けた呉。このような時に会いたい者たちの顔を見に行っても良い顔は見れない。

 

「冥琳は確か華佗の所だっけ…あ、いた」

 

雪蓮はすぐに物陰に隠れて様子を見守る。

 

「冥琳、華佗先生に見てもらおうよ」

「必要ない。それよりもすぐに蓮華様の救出準備を」

 

冥琳の顔色は誰が見ても悪かった。すぐにでも休むべきだと誰もが言うはずだ。

しかし彼女自身がソレを許さない。蓮華を大陸の王に出来ず、奪われもした。

このような状況で休むわけにもいかないと使命感に駆られている。

 

「駄目だよ休まないと。それに華佗先生なら冥琳の病気を治せるかもしれないって!!」

(冥琳が病気!?)

 

冥琳が病気なのは雪蓮にとって初耳だ。会っていないのだから当然なのだが、ある事を思い出す。

藤丸立香から呉から戻ってくる度に冥琳の体調が悪そうだと報告を受けていた。

最初はただの無茶のし過ぎだと思っていた。

 

「不治の病だ。華佗であっても無理だろう」

(不治の病!?)

 

冥琳は治療を諦めていた。彼女は命を燃やして蓮華を大陸の王にしようとしていたのだ。

 

「安心しろ梨晏。私はまだ死ねない」

 

本当は赤壁の戦いで終わりにするつもりであったが、まだ終われなくなった。

 

「冥琳、不治の病ってどういう事?」

 

2人の元に藤丸立香と玄奘三蔵が顔を出す。

冥琳の体調が悪そうなのは会う度に分かっていた。だからこそ会う度に休むべきと言っているが聞いてくれていないようだ。

体調が悪い人の「大丈夫」は大丈夫でない。言う事を聞かない者は無理やりにでも休ませねばならない。

 

「休んでいるさ。つい最近も立香が休ませてくれた…あれでだいぶ助かったぞ」

 

彼女がここまで生き急ぐようになったのは雪蓮が呉から消えてからだ。

半身が無くなったからといって寿命まで半分無くなったなんて冗談に聞こえない。

 

「冥琳さん。病気なら医者に診てもらうべきよ」

「三蔵殿…医者に診せても意味は無い。不治の病なんだ」

 

治らないのであれば時間の無駄だ。自分よりも優先して観てもらう患者がいるのだから自分は診てもらわなくてもいいと言っている。

 

「いいえ、不治の病であっても医者に診てもらわない理由にならないわ」

「三蔵さんの言う通りだよ!!」

 

今の冥琳は自分よりも蓮華が優先だ。気持ちは分からなくは無いが彼女を止めたい者もいる。

 

「今は時が惜しい。私よりも他の怪我人を優先してくれ」

「冥琳」

「…お願いだ立香。皆には黙っていてくれ。これ以上今の呉に心配はかけたくない」

 

ゆっくりと自分の天幕へと支えられながら帰っていく。

 

「冥琳…そこまで」

「マスター、あれは無理にでも華佗さんのとこに連れて行くべきよ。不治の病だからって治療を受けない理由にならないわ」

 

自ら決めた人生であれば玄奘三蔵もとやかく言うつもりはなかったが、自ら悪い方向へと進んでいくのであれば声をかけずにはいられない。

 

「華佗には冥琳の症状は伝えているんだ。より正確な診断をしてもらう為に連れて行こうとしたのに」

「彼女自身が診てもらおうとしないなんて」

 

物陰からゆっくりと出てくるは顔色の悪い雪蓮だ。

大切な人が不治の病と聞けば顔色が悪くなるに決まってる。

 

「立香は知っていたの?」

「知らなかったよ。体調が悪そうなのは気付いていたけど」

「私のせいよね」

「雪蓮さんのせいじゃないよ」

「三蔵…いいえ、私のせい。冥琳に無茶を頼んだのだから」

 

彼女は己がいなくなった後の呉を託した。だから無茶をしてでも呉を頂点にしようとしているのだ。

冥琳が言うように雪蓮とは一心同体。彼女が日に日に弱まっているのは雪蓮が亡くなってからだ。

 

「自分自身が嫌になるわね。蜀で隠居してる時に冥琳の事に気付けないなんて」

 

雪蓮はいつだって呉の事を思っていた。家族を、仲間を、大切な人を忘れるなんて事はしない。

それでも今さら自分の馬鹿な意地で冥琳たちに会わなかった選択がこの結果に後悔する。

 

「冥琳…私は」

「雪蓮さん」

 

後悔はいつだって後からだ。

 

「おーい立香」

「華佗?」

 

暗い空気の中に華佗が呼びかける。流石に空気が読めるので「また後にしようか?」と言ってくれるが問題ない。

彼の用件を聞く。

 

「周瑜を探してるんだ」

「冥琳を?」

「ああ。立香から教えてもらった症状だけでなく、やっぱり実際に診てみないといけないからな」

 

つい先ほどまで居たのだがニアミス。

 

「華佗…冥琳は不治の病みたいなんだ」

「何言ってるんだ。症状から推測するに不治の病じゃないぞ?」

「「「え」」」

 

一瞬だけ時が止まった。

 

「治るの?」

「治るじゃなくて治す。だから詳しく診断したいんだが」

 

彼は『神医』華佗。

 

 

1024

 

 

無双の塔にて。

桃香はパチリと目が覚め、鼻に独特な匂いが透き通る。

嫌な匂いではなく、どちらかと言えば良い匂いの方かもしれない。ただ嗅いだことの無い匂いだ。

 

今、自分がどういう状態か分からないが思い出したことがある。赤壁の戦いで襲撃を受けて気を失ったという事だ。

その事を思い出して身体を瞬く間に起き上げる。

 

「ご主人様、みんなは!?」

「やっと起きたのね」

「え」

 

声が聞こえた方に視線を向けると壁に背を預けて座っている曹操がいた。反対側には蓮華が座っている。

状況としては三つ巴のにらみ合い。最もこれから殺し合いなんて始まるわけはない。

 

「ここ…何処ですか?」

「鬼の本拠地だそうよ」

 

3人は武田信虎たちに襲撃され、気絶させられた。そこまでは辛うじて記憶に残っている。

桃香はふと周囲を確認する。足元には緑色の床があり、独特の匂いはその床からだと気づく。そして自分たちがいる部屋は牢屋にいるのだと気づく。

 

「捕まったんだね」

「この部屋にいれば誰でも分かるわ」

「蓮華さん…曹操さん大丈夫ですか?」

「私よりも自分を心配しなさい。頭が痛いんでしょ」

「あはは…はい」

 

頭が痛いのは3人とも同じだ。

 

「あまり見ない作りの部屋…」

「我々と鬼とでは違う。建物も違うんじゃないかしら?」

 

鬼にしては悪くない趣味だといわんばかりに内装を褒める。最もここが牢屋でなければの話であるが。

 

「…今目覚めたばかりで分からない事だらけなんですけど、さっきここが鬼の本拠地って」

「ええ。私が一番最初に目覚めた。その際に鬼の首領がいたわ」

 

曹操がぽつりぽつりと説明していく。

 

「鬼の首領の名は武田信虎。そしてここは無双の塔という場所らしいわ」

「鬼に無双か…自分たちが最強だと言いたいのかしら」

 

鬼は力強いイメージのある字。そして無双もまた何者にも負けずすぐれているという意味の字。

己らは誰にも負けない、三国すら敵ではないと言っているようなものだ。

 

「ご主人様に…みんな大丈夫かな」

 

皆を心配する桃香。彼女の皆を思う気持ちは曹操と蓮華も同じだ。

 

「武田信虎は少しだけ暴れたと言っていたわ。ただそれだけで春蘭たちがどうなったのか…」

 

ギリリと拳を握る曹操。天下分け目の大戦を邪魔された怒りが沸き上がる。

捕まっているが自分たちは無事な状況だからこそ仲間の心配を強く思う。

 

「ところで私たちはなぜ捕まったんだ?」

 

蓮華が最もな疑問を呟く。

武田信虎なんて聞いたこともない者に捕まり、牢屋にぶち込まれている。

鬼の存在は認識していたが赤壁の戦いを崩壊させるまでに横やりを入れてくる始末だ。

 

「それは…」

 

曹操が蓮華の疑問を答えようとした時、重苦しい覇気が圧し掛かってくる。

 

「これは!?」

「来たわよ」

 

何者かが牢屋に近づいてくる。その何者かこそが武田信虎だ。

 

「座敷牢の居心地はどうだ?」

「窮屈だわ」

 

武田信虎に負けないように曹操も覇気を発する。

 

「アッパレアッパレ。三国ノ王タチガ 目ガ覚メタ」

「怪我……問題無ソウ」

 

更に二体の鬼が座敷牢の中にいる桃香たちを覗く。

 

「貴様が武田信虎か」

「なかなか良い殺気だ孫権」

 

殺気と覇気を武田信虎にぶつけるが、当の本人は涼しげだ。

 

「武田…信虎さん。わたしの仲間は無事なんですか?」

 

まず自分よりも仲間の心配をする桃香。仲間たちの安否は蓮華と曹操も気になるところだ。

 

「貴様らの雑兵共なぞ知らん。ちょっと大百足が動いただけだからな」

(大百足?)

「溺れ死んだか、転覆した船に押し潰されたの何方かだろうな」

「そんなっ!?」

「何、生き残った者もいた」

 

三国の武将や兵士たちに興味がない武田信虎。これからの事を考えると生き残った者たちもどうせ鬼によって食い殺される運命なのだ。

 

「何が目的で我らを捕まえた?」

 

蓮華が曹操に聞こうとしていた事を当の本人より聞き出す。

 

「生贄だ」

 

恐ろしく、冷酷に呟かれた。

 

「貴様らは神の供物だ」

「神ですって?」

「ああ。貴様らは神の供物だから手を出しはせん」

 

座敷牢に手を伸ばしていた天晴鬼を包屍鬼が拳骨で成敗。

 

「そして我らは三国に宣戦布告をした。貴様らを助けに来たくば無双の塔まで来いとな」

 

仲間たちが助けに来る。その言葉に安心が得られるが、すぐに不安も押し寄せる。

目の前にいる鬼たちは桃香たちを捕縛し、軍を崩壊させたと言うのであるから。

 

「我は三国の残党兵が貴様らを助けに来る事を望んでいるぞ?」

「なに?」

「貴様らには見晴らしの良い場所で残党兵が鬼に食い散らかされる光景を見せてやる。そして神の生贄になる事を光栄に思え」

 

言いたいことだけ言って武田信虎たちは座敷牢から去っていくのであった。

 

「みんな…」

 

三国の王たちの生贄が近づく。




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新も未定。でも二週間以内をまた目指します。


1022
魏との交渉!!
良い感じの舌戦を書きたかったんですけど…上手くいかないものですね。
あとからもっと良い感じに書けたのでは?と思う作者でした。
他にも朱里や秦良玉とかもいっぱい喋らせたかった。

何とか魏と協力を組めました。
因縁は切り離せませんが…今は王たちの救出が大切なのです。


1023
此方は一旦、冥琳の話へ。
呉ルートでは彼女は不治の病なんですよね。

不治の病とは恐ろしいものです。しかし華佗ならば治せる!!
だって華佗が治せないの病は恋の病くらいなのだから!!

そうなると呉の医者が無能っぽくなるのがなぁ
呉の医者も優秀ですよ。ただ華佗が規格外なだけです。


1024
桃香たちと武田信虎たちSIDE
無双の塔で桃香たちは何が出来るのか…。
緊張しつつも座敷牢で王たちは話し合います。

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