Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
もう10月になりますね。
この物語の5章も8月に終わらせるつもりですが…伸びました。
いや、本当に終わらない。もう目指すは年内に5章を終わらせます。
てか、もうこの物語を執筆して6年なんですよね。時が経つの早ぁ。
今回はいつもより短いです。
では本編をどうぞ!!
1055
孫呉に炎蓮と雪蓮が戻ってきた。この奇跡は呉の者たち全員に希望を与えた。
敵は強大で恐怖の塊だ。しかし2人のおかげで呉の者たちはもう関係無い。もう怖くもなんともない。
目指すは蓮華を救う為に全力で戦うだけで良いとシンプルになった。
「行くぞてめぇらああああ!!」
炎蓮の号令で呉の戦士たちは突撃を開始する。その足取りは軽く力強い。
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」
その気迫は鬼神が如く。鬼を鬼神が如くの戦士が恐怖を与える。
鬼が人間を恐怖させるのは当然だ。しかし人間が鬼を恐怖させるなんて笑えない。その笑えない事を呉の戦士たちがやっている。
「ヒィ!?」
天晴鬼は恐怖した。
「行くぞ粋怜!!」
「はっ!!」
「梨晏行くわよ!!」
「うん!!」
その怒涛の勢いは呉の戦士たちも伝染し、一緒に突撃する。
「来ルナ!?」
天晴鬼は己が食らった怪異の力を解放する。
「野鉄砲。鬼熊!!」
野鉄砲。
人を襲うときにはその人の視界を奪う力を持つ怪異。
鬼熊。
歳を経た熊が妖怪となった存在。力が非常に強く、恐ろしい怪異である。
天晴鬼は野鉄砲で粋怜たちの視界を奪い、鬼熊の力で己を強化する。
「コレデ 返リ討チダ!!」
芭蕉扇と片腕は失ったが新たな怪異の力で潰そうとする天晴鬼だが、戦いの流れは呉が引き寄せた。
天晴鬼は戦いの流れから外れたのだ。こういう時は理屈関係無く、悪い方向へと流れる。そして呉にとって都合の良いように流れる。
「やっと戻ってきたぜ」
「エ?」
「隙だらけだぜ。オラァァ!!」
「ムオ!?」
燕青が天晴鬼を蹴り上げる。
「貴様 イツノ間ニ!?」
「また気配を消してな」
蹴り上げた先には荊軻が待ち構えていた。
2人は芭蕉扇によって発生させられた竜巻に飛ばされたが戻ってきたのだ。戻ったら呉の戦士たちが異様なほどに上がった士気に驚いたものだが。
「竜巻に遠くまで飛ばされたからここまで戻ってくるのに時間がかかったぞ」
荊軻は蹴り飛ばされた天晴鬼の頭目掛けて匕首を突き刺し、蹴り落とす。
「グオグギョギュウウグゴオ!?」
脳天に突き刺された天晴鬼は目をグルグルさせた。
野鉄砲の能力は解除され、粋怜たちの視界が戻る。屠る敵は見えた。
「決めろ」
蹴り落とした先にいるのは粋怜と梨晏。
「呉の何処が弱いって?」
「呉は強いのよ!!」
粋怜と梨晏は槍を振るって天晴鬼の首を斬り落とす。
「エ?」
天晴鬼は最期に見たのは自分の首無しの身体だった。
(吾輩ハ…何デ…コンナ……モット…ヤリタイ事ガ)
天晴鬼の正体は元 公家の人間。
人間だった頃の彼は美男子であり、公家である為、エリート貴族とも言ってもいい。
そんな彼唯一の悪い部分は女癖が悪いところだ。それが無ければ当時にあんな大事件を起きず、彼が死罪にならなかったのだから。
この天晴鬼は死罪になる前に鬼となって逃亡した。しかし死罪の決定は覆らなかった。今まさに死罪となり、彼の人生の幕は下りた。
「このまま鬼を全て殲滅せよ!!」
「「「うおおおおおおおおおお!!」」」
呉の戦士たちが鬼の大群に食って掛かり、炎蓮と雪蓮の為に道を創ろうとする。
「母様。あのバカ高い塔をこれから登るのは時間が掛かると思うけど?」
「当たり前だ。馬鹿真面目に登ってる暇は無ぇ!!」
「じゃあどーすんの」
「答えは…哪吒!!」
「承知」
空から炎蓮と雪蓮に近づくは哪吒。
「哪吒。オレらを塔の最上階まで連れてってくれ」
哪吒は2人の腕を掴んで一気に無双の塔を飛び超えていく。
「ちょっ、高ぁ!?」
「空を飛べる哪吒は凄い奴だ。このまま天辺まで頼む!!」
「最上階へ!!」
最初から無双の塔の最上階に行くなら哪吒の力を使えば良かったと思うかもしれない。しかし最初から使えなかった理由が大百足だ。
大百足が空を支配しており、哪吒が空を飛んで無双の塔 最上階に向かう事は普通では無理だった。しかし今は俵藤太たちが大百足を惹き付けているので一瞬だけ哪吒が飛んで無双の塔最上階まで向かう事が出来るのだ。
哪吒は全力噴射で飛び、無双の塔 最上階まで到達。空より視界に映ったのは3人の王と武田信虎。
「見つけた。でも…!!」
武田信虎が今まさに蓮華を処刑しようとしていた。
「哪吒 私たちを投げて!!」
哪吒は雪蓮と炎蓮を全力投球。投球先は武田信虎と蓮華の間だ。
「その心意気や良し。貴様はただの材料としてではなく、武人として斬ってやろう!!」
武田信虎の声が聞こえてきた。
「私の妹に手を出してんじゃないわよ!!」
雪蓮が先に着地し、武田信虎の太刀を剣で受け止める。
「なに!?」
「この死合。オレも混ぜろ!!」
次に炎蓮が着地し、武田信虎の首を狙って剣を振るった。
「チッ」
舌打ちした武田信虎は瞬時に後退し、間合いを取った。
「嘘…」
蓮華の目の前には二度と会えないはずの2人が立っていた。
「や、蓮華。助けるのは二度目ね」
「なに簡単に捕まってんだよ。それでも王だろ情けねえぞ。だが…よく生き延びたな」
「…姉様、母様」
蓮華は涙を流した。絶望の涙ではなく、希望の涙だ。
どうして、という気持ちが湧くが今はどうでもいい。これは夢でなく現実だ。2人が生きていたという奇跡にこんな状況でも嬉しさが勝ってしまう。
「後は私と母様に任せなさい」
雪蓮と炎蓮は武田信虎を見る。本当は顔を向けて再会を祝したいが今は出来ない。
出来ない理由が2人の視線の先にいる武田信虎である。
「孫堅に…孫策?」
「あ、孟徳ちゃん久しぶり。顔を向けたいけどちょっと今は無理だからゴメンね」
「……生きてた…の?」
「ええ。あんな毒では死ななかった。それだけよ」
「いや、一回死んだろ?」
「母様 五月蠅い」
曹操もまた信じられない者たちを見ていた。
孫堅と孫策は死亡したという報告に虚偽は無かった。国絡みで王の死亡を偽っていたなんて事も無かった。
2人は本当に死亡したという事になっていたのだ。しかし目の前にいる2人は今まさに現実として生きている。
「色々と話したい事はあるのは分かってるわ」
「でもよ…それはコイツを倒してからだ」
今もなお雪蓮と炎蓮の視線は武田信虎に釘付けだ。視線を少しでも逸らしたら殺されると分かっているからだ。
「孫堅と孫策…?」
武田信虎は急に現れた2人を冷静に観察。空に飛んでいた哪吒を視認。
どうやって2人が最上階まで到達したかを瞬時に理解した。
(なるほど。大百足が俵藤太に惹きつけられている隙にここまで来たのか)
空は大百足が支配しており、飛んでくるような者がいるならすぐに処理するように指示は出していた。
(どうやら来たのは2人だけ。飛んでいた赤いのは大百足の方に戻ったか)
武田信虎は予想外の出来事を対処しなければならない。まずは精神を落ち着かせるために深呼吸をした。
「塔を下層から登って来た者には礼を持って相手をするつもりだが…貴様ら狡い真似をしおって」
「真面目に登ってたら間に合わないからな」
ニヤリと笑う炎蓮。
「ずるいやり方で来たのは認めるけど私たち相手じゃ不満かしら?」
雪蓮の問いかけに武田信虎は笑った。
「否。貴様らと戦うのは面白そうだ」
武田信虎は太刀を構えて2人を睨む。
「貴様らは俵藤太と戦う前の前哨戦としよう!!」
妖気を開放し、武田信虎は本気の死合を開始する。
「おら雪蓮使え。オレは自前の剣使う」
「これ南海覇王じゃないの」
「その剣 今はオレのじゃねえからな」
「それを言うなら私のでもないんだけど…蓮華 今だけ使わせてもらうわよ」
剣を構える2人は気を開放。
「鬼火纏い」
武田信虎は太刀に鬼火を纏わせ、炎の太刀を創り出す。
「一切の慢心無く貴様らを斬り殺してやろう!!」
「やれるもんなら」
「やってみな!!」
3人は剣を交差させた。
1056
無双の塔 屋外戦場にて。
各戦場に配置されていた武田八鬼将 天晴鬼、隋身鬼、狂(凶)射鬼の敗北。
途中参戦させた上級鬼六体の敗北。更に参戦させた狂暴な怪異も全て敗北。
武田信虎軍の主要戦力が倒されていき、三国同盟軍の士気は上がりに上がっている。
現段階で武田信虎軍には下級鬼と中級鬼の大群が残っている。強力な主戦力は大百足であるが、空から降りて来ずに俵藤太たちと戦っている。
数だけで勝っていようが策と士気の上がりようによっては敗北する可能性は無きにしも非ず。
「計画ガ 大分 遅レテイル」
包屍鬼は現状況を冷静に纏める。
本来であれば三国の王たちは武田信虎に処刑(生贄)されている。そして女神降臨神話の流れによれば女神が戦場に降臨していても良いくらいだ。
段取りが崩れているが戦争は予想通りにはいかないものだ。予想通りにいかないのであれば自分たちで修正していくしかない。
「天晴鬼モ 敗北 シタノカ」
「ソノヨウデス。更ニ 孫堅ト孫策ガ 参戦シ 孫呉ノ士気ハ ウナギ登リデス」
「哭闇鬼ノ 報告デ 生存ハ 確認シテイル。ココデ参戦カ」
大百足を戦場に降ろせば戦況を一気に変えられるが、大百足は俵藤太たちによって足止めさせられている。
今から大百足を宛にする事は出来ない。三国同盟軍を倒すには大百足無しで戦わなければならない。
「フッ…人間ダッタ 頃ハ 怪異ノ力 ナンテ 使ワカナカッタ。僕ノ策ト 信頼スル兵士ノ力 デ戦ッタ。怪異ナンテ 最初カラ 必要ナイ。鬼ニナッタ 僕ガ 言ウノモ 滑稽ダケド」
包屍鬼は甲冑を身に着け、刀を腰に携える。人間だった頃の物ではなくこの外史世界で造った装備であるが、身に付けると昔の戦いを思い出す。
「殿」
包屍鬼の近くに同じく甲冑を身に付けた3人の鬼が控えていた。その3人の鬼は包屍鬼が隠していた上級鬼。
「僕ハ 殿ジャナイ。今ノ殿ハ 信虎殿ダ」
「イエ、我々ノ殿ハ 貴方ダケデス」
残り2人の上級鬼も微笑を浮かべながら頷いた。
「全ク…鬼ニナッタ 僕ヲ マダ殿ト 呼ンデクレルノカ」
「勿論デゴザイマス」
上級鬼の1人が白頭巾を包屍鬼に丁寧に渡した。
「コレヲ 被ルノモ 久シブリダ」
「ソノ オ姿ヲ 目ニ収メルノモ 久シブリデスナ」
「ハハ。ソウダナ」
軽く談笑していく4人。その雰囲気はまさに人間だ。否、彼らは人間だ。
身体は鬼になろうとも心はまだ人間のつもりなのだ。周囲は戦争中であっても、落ち着き、冷静でいるべきだ。心に余裕を持つべきだ。
「サテ、勝ツゾ。皆ノ者」
包屍鬼は白頭巾を被って完全武装完了。
「「「我ラガ 殿ノ忠義ヲ」」」
「鬼ニナッタ僕…コンナ私ニ マダ忠義ヲ 向ケテクレル事ニ 感謝ヲ」
包屍鬼は3人の上級鬼と共に戦場に赴く。
「行クゾ。諸角余市。オ主ハ 魏ヘ」
「ハッ!!」
「土屋守四郎。オ主ハ 呉ヘ」
「ハハッ!!」
「五助。我ト共ニ蜀ヘ!!」
「ハハッー!!」
包屍鬼は信頼すべき臣下と己の十全を使って策を講じる。
武田信虎軍と三国同盟軍の戦いは佳境へと入った。
読んでくださってありがとうございました。
次回の更新も2週間以内を目指します!!
1055
前回で蓮華を助けたのは炎蓮と雪蓮でした(まあ、バレバレでしたけどね)
そして武田信虎と戦うのは塔を登っていた愛紗たちではなく、雪蓮と炎蓮になります。
2人が生存していた事に驚く曹操と蓮華。(桃香は知っていたので本編ではお口チャックでした)
哪吒
空を飛べるって本当に凄い事なんですよ。
ファンタジーじゃ普通かもしれませんが、現実世界では飛ぶ事にどれだけの歴史と財力が必要だったか。
天晴鬼。
正体は公家の人間。
ある事件を起こして天皇を怒らせた人。
これだけで本名が分かるかもしれません。
1056
包屍鬼side
武田八鬼将のまとめ役(リーダー)
彼の正体に関しては読者様たちも薄々気付いておりましたね。
彼の武装姿と部下(臣下)である3人の上級鬼。
これでほぼ正解に辿り着けると思います。