Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。

FGO
奏章Ⅲをクリアしました。
今回の物語も最高でした。まだネタバレはしていけないと思うので詳しく話せませんが…
最後の最期で「彼女」が出てきたのは涙が出そうでしたね。背中を押してくれたのが彼女だからこそ藤丸立香は前に進めたのかもしれません。

双天†恋姫
既に発売していた!?
見逃していました…しかし物語が気になりますね。
劉邦と項羽の物語…どのような展開になるのか!!


三国怪異乱戦⑧

1057

 

 

無双の塔 下層「百目の階」。

ここを守護するは百々目鬼。身体中に蠢く目をギョロギョロと動かして武則天を、思春を、明命を観察している。

百々目鬼の力は数多の目だ。相手の動きを一挙手一投足見逃さない。

 

「私は、我は、儂は…強い」

 

百々目鬼は動かず、刀を構えたまま武則天たちを観察したままだ。

敵の魂胆は既に気付いている。敵は「後の先」を狙っているのである。

「後の先」は相手が仕掛けてきた技に合わせて掛ける技。数多の目で相手の動きを観察する百々目鬼にとって抜群の戦い方である。

此方から仕掛けなければ相手も簡単には動かない。しかし思春たちにとっては時間が無い。

 

「ぐ…」

「落ち着け」

 

焦りを出している事が丸分かりの思春に声を掛ける武則天。

 

「落ち着いている」

「落ち着いて無いだろう」

(落ち着いてないです思春さま)

(お主もな)

 

明命もまた少しは焦りを滲み出している。

早く助けにいかねば蓮華が処刑されると知ってしまったから故の焦りだ。こういう場合、「後の先」を先頭スタイルにしている敵は厄介だ。

急いで助けに行かねばと駆られて冷静になれず、「後の先」の餌食になる。これでは敵の術中に嵌りまくりだ。

 

「何も策も無いまま突っ込んでは奴の餌食じゃ」

「ぐっ…」

 

思春は己の技を見切られている。

無駄に攻撃を仕掛けても回避され、カウンターを喰らうだけだ。カウンターを防いだとしても技の無駄打ちを繰り返すだけで体力を奪われる。

時間も無い。攻撃も回避される。最悪の未来は蓮華を処刑される事。それらが思春と明命を焦らせる。

 

「落ち着けと言っておろうに」

「分かっている」

 

分かっているが焦りというものは中々抑えられないものだ。

 

「策を授ける。だから迅速に仕留めるのじゃぞ」

「その策とは何だ?」

「ごにょごにょごにょ」

 

武則天は小さく思春と明命に策を授ける。

 

「なるほどな」

「猫好き娘 お主にコレを授ける。慎重に扱え。厳顔より貰ったモノじゃ」

 

明命が受け取ったは長方形の木箱だ。

 

「…何だアレは?」

 

百々目鬼の目にも見えていた木箱。しかし中身は何かまでは分からない。

ただ警戒に越した事は無い。身体にある数多の目のいくつかで木箱を持つ明命を見つめる。

 

「妾が指示する。散開せよ」

「良いだろう」

「お任せします」

 

3人は百々目鬼を囲うように散開した。

百々目鬼は全身の目を3人に向ける。散開しようが彼女に死角は無く、何をしようが対処できるように構え直す。

 

「作戦開始じゃ!!」

 

先に動いたのは思春であった。追うように明命が走る。武則天は動かない。

 

「…2人同時に動いた。挟み撃ちか。しかし意味は無い」

 

百々目鬼を挟み撃ちをしようが死角無し。回避可能であり、回避した瞬間に思春と明命を刀で斬ればいい。

先に動いた思春が到達する。次に明命が到達する。百々目鬼は初撃の思春を回避し、斬る。次撃の明命を開始し、斬る。

百々目鬼の作戦は決定。未だに動かない武則天を観察から外さない。

 

「…先に2人を斬る」

「喰らえ!!」

「…投擲か。無駄」

 

思春が苦無を投げつける。しかし百々目鬼は簡単に回避。

 

「なに?」

 

反対側の明命が木箱を苦無に向かって投げた。

警戒は怠っていなかった百々目鬼だが木箱の中身だけは分からない。その答えが今こそ分かる。

 

「ドッカーンじゃ」

 

木箱に苦無が当たった瞬間に爆発が起きた。

 

「…火薬!?」

 

冷静な百々目鬼が初めて驚いた声を上げる。

周囲は爆煙によって充満し、百々目鬼の視界を封じる。いくら目が多くても煙で視界が悪くなれば意味をなさない。

 

「…小癪な真似を」

 

百々目鬼は全身の目を集中させる。視界を悪くされようが何処から襲われてもいいように完全警戒。

完全警戒をしていたおかげで爆煙の中から人影を視認。

 

「目くらましは無駄」

 

人影が見えた。後は刀で斬るはずだった。

 

「な…に!?」

 

百々目鬼 二度目の驚愕。

人影は1人だけでなく、複数人。合計7人も現れれば百々目鬼は身体が固まった。

視界の悪い空間でいきなり目の前に複数人も現れれば驚いて思考処理が追い付かなくなるものだ。

 

「くっふっふー。酷吏召喚」

 

現れた謎の人物たちは酷吏。

 

「人間だろうが怪異だろうが脳の処理が止まれば身体も固まるものじゃ。アレじゃアレ。ギョっと驚くと身体が固まるアレ」

 

これが武則天たち3人同時であれば百々目鬼は冷静対処していた。しかし視認していなかった7人の酷吏は予想外であったのだ。

 

「決める。残影撃!!」

 

百々目鬼に一瞬だけ隙が出来た。思春にとって十分すぎる隙だ。

瞬時に駆け抜け、己の剣で百々目鬼を斬り払った。

 

「ぐああああああああ!?」

 

百々目鬼の断末魔が響いた。

 

「やりました!!」

「聞くに堪えぬ断末魔じゃのう……む?」

「があああああああああああああああああ!?」

 

煙が晴れていくと百々目鬼の様子がおかしいのに気付く3人。斬った本人である思春も嫌な予感がしたのか距離を取った。

 

「ああああああああああああああ!?」

 

百々目鬼の身体が変容していた。

 

「私は…我はああああああああああ!?」

 

百々目鬼は女性の身体であったが膨れ上がり、筋肉が膨張する。肉体は女性から男性の身体へと変化する。身体から刃のようなモノを生やす。数多の目は変わらずギョロギョロと多く蠢く。

 

「我は百目鬼だあああああああああ!!」

 

百々目鬼ならぬ百目鬼。

百目鬼は俵藤太が討った凶悪な鬼。両手に百の目を光らせ、全身に刃のような毛を持つ3メートルもある鬼だ。身体からは炎を噴き出す事もでき、口からは毒も吐くことが出来る。

 

「変化したのか!?」

「ようやく我がお…もて…に出れ……」

 

百目鬼がピタリと止まる。

 

「な、なんですか?」

「ごおおおおおおおおおおおお!?」

 

またも百目鬼が叫んだ。

百目鬼がまた変化を始める。肉体がより筋肉質になり、何故か甲冑や兜が身体の内側から浮き出て纏わる。

甲冑と兜を装備し、身体から複数の刃を突き出し、数多の目を蠢かせ、大槍を手に持つ。

 

「儂は釣竿斎宗渭だあああああああああああああ!!」

「「「誰」」」

 

釣竿斎宗渭。

もしくは三好政康という名で、日本の四国地方の戦国武将。

日本の戦国時代を知る者であれば「三好三人衆」という名前を聞いた事があるかもしれない。彼はその1人である。

釣竿斎宗渭は三好政康の法名だ。

 

(あの三好三人衆の1人か)

 

「誰」と言っていた武則天だが聖杯の知識より知らない名前ではなかった。

(確かあのぐだぐだサーヴァントの関係者か)

 

武則天の言うぐだぐだサーヴァントとは織田信長の事である。頭の中で織田信長が笑っているの姿が浮かぶ。

織田信長の関係者と言うが仲間というわけではない。どちらかと言えば織田信長と釣竿斎宗渭は敵対関係だった。

 

(ぐだぐだしとらんのう)

(だってそっちの奴はワシらと関係無いし)

「脳内に直接話しかけてきおった!?」

 

脳内の織田信長が武則天に話しかけてきた事に驚く。

 

「どうした」

「いや、何でもない。ただの白昼夢みたいなものじゃ」

 

頭をぶんぶん振るって脳内の織田信長を追い出そうとする。

 

(居座るぞ)

(居座るな!!)

 

脳内の妄想織田信長の事を一旦忘れる。

まず解決せねばならないのが目の前の敵である。

相手の鬼が釣竿斎宗渭という者であろうが敵は敵。倒すべき敵である。

 

「やっと儂が表に出れたぞ。儂は百々目鬼ではない、百目鬼でもない。儂は釣竿斎宗渭であぁる!!」

 

ギョロリと数多の目で3人を睨む。

 

「やっと表に出れた儂の相手がこんな小娘共とはな」

 

舌打ちをする釣竿斎宗渭。小娘と侮られる3人は苛つく。

彼女たちは武将と皇帝だ。ただの小娘と言われる事は侮辱である。

 

「ぬぬっ」

「なんだ」

「その剣は業物だな!!」

 

釣竿斎宗渭は刀剣の目利きに関しては一流。故に思春と明命の持つ業物の価値に気付く。

 

「貴様らを殺してその剣をもらい受ける」

「やってみろ」

 

無双の塔 下層「百目の階」にて第二ラウンド開始。

 

「儂が表に出た事で勝ちは確定だ!!」

 

釣竿斎宗渭は口から毒を吐く。その毒は百目鬼の力。

 

「毒じゃ。吸うな」

 

口を塞ぐ3人。部屋に毒が充満していく。

この毒がどれほどの毒性を持つか分からない。しかし彼が取り込んでいる百目鬼は俵藤太が戦ったとされる百目鬼だ。

微弱な毒ではないと考えた方が正しい。元々、時間をかけて戦うつもりはないが再度 短期決戦で決着をつける事を確認する。

 

「行くぞ小娘共!!」

 

口から毒を吐きながら突撃する釣竿斎宗渭。身体は大きい。そして鋭い刀剣も生えている。直撃すればただでは済まない。

 

「回避しろ!!」

「ぬう、避けたか。しかしまだまだ!!」

 

大槍を連続で振るう。

 

「こいつ…」

「儂の時代が来たのだ。日ノ本の天下は信長でも信虎のモノでもない。儂のモノだ!!」

 

片腕に刀剣を生えさせ、振りかぶる。大槍で周囲を薙ぎ払う。毒を吐いて敵を弱らせる。数多の目で敵を観察し、見切る。

 

「儂は強いのだ!!」

(確かに強い。いや、厄介だな」

 

毒が部屋に充満していく。

 

(早くしなければ。しかし奴には数多の目がある。もう一度同じ手は喰わないだろう)

 

先ほど仕掛けた武則天の策に敵は警戒する。二度目に引っかかるほど馬鹿ではない。

 

「やはり目を潰すか」

 

武則天がぽつりと冷酷に呟く。

 

「出来るのか?」

「やってやろう。スキル『拷問技術』。そして酷吏召喚」

 

酷吏が召喚され、思春と明命が見たことも無いような拷問器具を持っていた。

 

「あの…ソレは何ですか?」

「聞きたいか?」

「い、いえ、大丈夫です!!」

 

怖い笑顔の武則天に顔が青くなる明命。

 

「そんなので何とかなるのか?」

「まともに使えば意味はないじゃろう。じゃが…猫奴隷娘」

「猫奴隷娘って私ですか!?」

「耳貸せ」

 

またも「ごにょごにょ」聞かされる。

 

「単純だがいいじゃろう」

「そうですね」

 

明命も準備開始。

 

「これが最後ですよ」

「何をしようが無駄だ。儂の数多の目の前では意味無し!!」

 

ギョロリと数多の目が3人を睨む。

 

「確かにたくさん目があるのは強い力じゃ。しかし数多の目があるなら数多のモノで対抗すればよい」

 

数多の目を持っているとはいえ、1人である。見切れる力をあろうとも回避させなければいい。

数の暴力で攻めればいい。

 

「煙幕幻弾!!」

「拷問器具の雨霰じゃ」

 

苦無が、拷問器具が釣竿斎宗渭に降りかかる。

 

「ぬお!?」

 

ギョロギョロと数多の目が降りかかる苦無と拷問器具を見切る。そして一瞬で思考をまとめる。

 

「ええい。見切れるが回避できる隙間がない」

 

釣竿斎宗渭は必要最低限の動きで苦無と拷問器具を撃ち落とす。最小の被害で身を守る。

 

「ふん。所詮は浅知恵だ。確かに目は少し潰されたがまだまだ残っているぞ!!」

「本当に今のが妾の策じゃと思ったか?」

「なに!?」

 

釣竿斎宗渭の足元に毒々しい液体が広がっていた。

 

「何だこれは!?」

「喜んでばかりもおられまいが、其方は幸運じゃぞ。妾の公務を誰よりも間近で見られるのじゃからな。宝具開放…告密羅職経。こっちが本命じゃ」

 

毒沼に嵌った釣竿斎宗渭は毒壺に閉じ込められた。

 

「今じゃ!!」

 

思春は駆ける。

 

「喰らえ残影撃!!」

 

毒壺に閉じ込められた釣竿斎宗渭ごと斬り払った。

 

「やりましたか!?」

 

毒壺が真っ二つになり、中身が飛び出す。

 

「ぐおおおおおおおお!?」

 

釣竿斎宗渭は大きな傷を喰らっていたが倒れてはいなかった。

 

「おのれ小娘共がぁ!!」

 

倒れなかった釣竿斎宗渭だが、数多の目は毒で潰されていた。これでもう相手の動きを見切る力は低減した。

 

「仕留めそこなったが…次で決める!!」

「いや、次で決めるのは儂だ。儂を怒らせたな!!」

 

釣竿斎宗渭から妖気が溢れ出す。

 

「儂の切り札を見せてやろう。新たに得た力…まさに神業とも言える力を見て慄き喚け!!」

 

大きな妖気を前に3人は完全な警戒態勢だ。

 

(なんじゃ…まるで宝具を開放するかのようなものじゃぞ?)

「お家流…三好下野入道聞書!!」

 

釣竿斎宗渭の周囲に様々な刀が出現した。

出現した様々な刀は全てが業物であり、その一本一本が宝具級。その力を武則天や思春たちは嫌でも分かってしまう。

 

「刀剣解放…童子切安綱、鬼丸国綱、鬼切安綱、薬研藤四郎、骨喰藤四郎、大典太光世、小龍景光、南泉一文字、三日月宗近…まだまだあるぞ!!」

 

釣竿斎宗渭は一流の刀剣の目利きであり、『三好下野入道聞書』という目利き論の著書も書いている程だ。

彼は仲間と共に永禄の変を起こし、敵対していた将軍 足利義輝を殺害する事件を起こす。事件の際に彼は足利義輝が抵抗する際に用いた刀剣の価値に気付き、丁重に保護したと言われている。

 

その刀剣類が業物である童子切安綱や三日月宗近等であったと言う。

釣竿斎宗渭の『お家流』はそれらを元に完成させた技だ。

 

「この力を解放した儂であれば武田信虎よりも強い。否、日ノ本一の強さだ!!」

 

出現した刀剣類は全てが宝具級。この外史世界やカルデア世界由来の物でなくとも本物である。

 

「刀剣全開放。全てを殲滅せよ!!」

 

刀剣類の力が解放されれば武則天たちは肉片の一片も残らず消滅する。

 

「させると思うか?」

「ぐおおおおおおおおおおおお!?」

 

釣竿斎宗渭の肉体に激痛が走った。その激痛は彼の『お家流』を中断させる程だ。

 

「告密羅職経…妾の宝具は継続中じゃぞ」

 

宝具『告密羅職経』。

彼女の統治時代に記されたと言われる酷吏達の指導書。言わば罪人を作り上げるためのモノ。

この宝具は「彼女は自由に罪人を生み出せる」という国家的法則の体現に等しいものだ。

すなわち、彼女がこの宝具を展開した時、彼女は誰に対しても「拷問するもの」となり、相対するものは問答無用で「拷問されるもの」となる。

 

「この宝具をお主が受けた段階で既に勝敗は決まっていたのじゃ」

 

釣竿斎宗渭は既に武則天の拷問部屋に拉致された状態。彼女の掌の中。

 

「な、何という激痛…!?」

 

身体中に激痛が走り、脳さえも思考が落ちそうになる。数多の目は毒で潰され、身体も動きが鈍い。

それでも釣竿斎宗渭は歯を食いしばり激痛を我慢して『お家流』を開放しようとする。

 

「この釣竿斎宗渭…日ノ本の武将がこの程度の痛みでぇ!!」

「次こそ決めろ」

 

武則天の合図で思春は駆けていた。既に敵は彼女の射程圏内。

 

「今度こそ終わりだ。鈴音冥閃!!」

 

独特な動きをしながら高速で駆け抜ける。この時、釣竿斎宗渭には思春の姿が4人に見えた。

思春は今度こそ決めるために全力で剣を振るった。

 

「う、嘘だ。儂が…またこんな小娘共に負けるなんて!?」

「我々の勝ちだ!!」

 

釣竿斎宗渭は思春の剣技によって切り刻まれ消滅した。

 

 

1058

 

 

無双の塔 屋外周辺。

三国同盟軍は武田八鬼将を打ち倒し、指揮系統が崩れた鬼の大群を押し返す勢いで攻撃に転じていた。

特に呉軍の勢いは蜀と魏よりも大きい。その理由は炎蓮と雪蓮の復帰だ。呉軍は鬼なぞ怖くも無いという気概で食いかかっている。

怪異も斬り払い、鬼の大群も駆逐する勢い。戦いの流れは三国同盟軍にある。

 

「鶴翼の陣で進め!!」

「「「うおおおおおおおおおおお!!」」」

 

冥琳と穏、包は本陣で脳をフル回転させてあらゆる作戦を考え、鬼の大群を倒す。

亞莎と李書文(殺)は呉軍の中衛で前衛と後衛のサポートに徹する。

粋怜と梨晏、燕青、荊軻は前衛で鬼神の如く鬼を屠る。

 

「凄い。皆凄いよ!!」

「うむ。今の我々に怖いものなどありませぬ」

「シャオは何をしたら…」

「小蓮様はどっしりと構えてくだされ。王が強くあればあるほど部下は勇気づけられます」

「なら鼓舞だね」

 

雷火の進言に小蓮は精一杯の大声で鼓舞を発した。

彼女の力強い鼓舞がより呉軍に勇気と力を与える。

 

「包としては次にこの陣形で進むのが良いかと…って聞いてますか?」

「…何だ」

「どうしました冥琳さま?」

 

勢いに乗る呉軍。しかし冥琳が一番に戦の変化に気付いた。

 

「敵の動きが変化している。いや、修正しているか」

「え、本当ですか?」

「ああ。先ほどまで指揮系統が崩れていたが徐々に持ち直し始めている」

 

敵軍の乱れが修正されている。この変化は呉軍だけでなく、蜀軍や魏軍も気付き始めている。

三国同盟軍の将たちに武田八鬼将は打ち倒された。しかし全員が打ち倒されたわけではない。まだ生き残っている武田八鬼将がいるのだ。

 

「前衛と中衛に警戒を伝えろ。敵が何か仕掛けてくる。そして我々も周囲を警戒し、策を練り直すぞ」

 

冥琳が気付き始めた戦の変化。それは前衛にて現れた。

 

「トアアアアアアアアアア!!」

「なに!?」

 

快進撃を進める呉軍だがここで快進撃が止まった。

新たに現れた鬼の大群が快進撃を進める呉軍に突撃してきたのだ。

 

「トアアアアアアアアアア!!」

 

雄叫びを上げながら現れた鬼の大群が呉軍に突撃し、乱戦に入る。

 

「応戦せよ!!」

「「「おおおおおおお!!」」」

「全力デ 掛カレェイ!!」

「「「グオオオオオオオオオオ!!」」」

 

新たに現れた鬼の大群は今まで戦っていた鬼の大群と違った。戦い方が変化したのである。

この変化に前線に出ている粋怜や梨晏たちは分かった。そして本陣にいる小蓮や冥琳たちも分かった。

 

「なになに!?」

「アレらか」

 

呉軍が今まで戦っていた鬼の大群は天晴鬼が指揮していたものだ。しかし新たに現れた鬼の大群は合戦を知っている。

 

「天晴鬼 配下ノ 鬼タチ。我ガ軍ノ 指揮ニ 入レェイ!!」

 

指揮系統が乱れた鬼の大群も新たに現れた鬼の大群に加わり、鬼の勢いも戻る。

 

「アイツは…強えぞ」

 

燕青は構え直す。その言葉に粋怜たちも新たに現れた鬼を警戒。

戦場に新たに現れたのは甲冑と兜、槍を完全武装した上級鬼であった。

 

「何者だ!!」

 

粋怜が槍を構えながら上級鬼に対して返答を聞き出す。

 

「大谷家 家臣 土屋守四郎。孫尚香殿、御覚悟ヲ召サレヨ!!」

 

新たに現れた上級鬼は己の事を「土屋守四郎」と名乗った。そして堂々と呉軍の大将首をもらい受けると宣言した。

新たな敵の参戦は呉の受け持つ戦場だけでなく、魏と蜀が受け持つ戦場にも現れている。

 

「大谷家 家臣 諸角余市。曹仁殿、御覚悟ヲ召サレヨ!!」

 

魏が受け持つ戦場には甲冑と兜、太刀を纏った上級鬼が現れている。その名も「諸角余市」。

 

「敵の援軍か!!」

「なんやさっきの奴らより強そうな気がするんやけど!?」

「ような…じゃなくて絶対強いのー!!」

 

楽進たちもまた新たに現れた敵に警戒する。倒した隋身鬼も強かったが新たに現れた諸角余市は並々ならぬ気迫を感じる。

 

「彼は強い」

 

秦良玉も諸角余市が強者と認めた。

 

「強者共ガ 多イナ。故ニ…良シ。殿ニ 勝利ヲ 捧ゲル!!」

 

諸角余市は太刀を構えて気合を入れる。

 

「行クゾ。魏軍ノ将タチヨ。我ガ 太刀ノ 錆ニナル 覚悟ハ 良イカ!!」

 

諸角余市は駆け出すと背後に待機していた鬼の大群も動き出した。

 

「アカン、こっちも応戦するで!!」

 

呉軍と魏軍に現れた上級鬼は武田八鬼将がまとめ役である包屍鬼が隠し控えさせていた戦力だ。

 

そんな彼がもう1人の上級鬼と共に蜀の受け持つ陣営へ進行していた。元々、彼が受け持っていた敵は蜀軍だ。

後方で様子見をしていたが天晴鬼や狂(凶)射鬼が倒された事で彼が三国同盟軍全てを受け持つ事になったのだ。

鬼の大群の指揮は完全に包屍鬼に託された。彼は三国同盟軍を倒す為に動き出したのである。

 

「五助 一番槍ヲ」

「オ任セクダサイ!!」

 

名誉ある一番槍を指名された上級鬼の名は「湯浅五助」。

彼は甲冑を纏い、腰に刀を携える。槍を握り、馬に乗って蜀軍へと駆け抜ける。彼に続くは鬼の大群たちだ。

 

「我コソハ 大谷家 家臣 湯浅 五助 ナリ。我ガ 穿ツ槍ヲ ゴ覧アレ!!」

 

湯浅五助が蜀軍に突撃する。その様子を見ながら包屍鬼は鬼の大群を動かす。

 

「マズハ 小手調ベ。五助 守四郎 余市ノ軍 偃月ノ陣デ 攻メル」

 

仕切り直しの第二戦。

三国同盟軍に鬼の大群を突撃させる。それに対し三国同盟軍、各国は正面より応戦した。

 

「新手か!!」

「敵は馬に乗ってるのだ」

「ならば」

 

星も馬に乗って駆ける。後ろに続くは鈴々たちだ。

 

「私に続けー!!」

「突撃ーー!!」

 

衝突する両軍。

 

「たああああ!!」

「オオオオオ!!」

 

馬駆ける二騎。星と湯浅五助はお互いの槍を振るう。

たった一合打ち合っただけで両者共に相手が強者と確定した。

 

「ヌウ…強イ。我コソハ 大谷家 家臣 湯浅 五助。名乗レ」

「我が名は趙雲。字は子龍!!」

「趙雲殿カ。ナラバ覚悟!!」

「それは此方の台詞だ!!」

 

馬を駆けてもう一度槍を振るう。交差した槍は弾かれ、互いに馬から落ちず。

 

「マダマダ!!」

「此方もだ!!」

 

2人は何度も馬を駆け、槍を撃ち合う。

 

(強イ。コレ程ノ 武人ハ 我ガ国デモ 上位ニ入ルゾ。故ニ…昂ル!!)

(こいつ…今までの敵と違う。強く、芯があるぞ)

 

槍を撃ち合うだけで相手からの気迫と実力が伝わる。

 

「オオオオオオオ!!」

「はああああああ!!」

 

星と湯浅五助の撃ち合いは激しく続く。

 

「流石ハ趙雲。聞キシニ勝ル 戦ブリ。我ガ臣下 率イル 部隊ニ食ライツイテイル」

 

輿に座った包屍鬼は目を大きく見開き周囲を観察する。まず最初に観察するは星と湯浅五助の戦いだ。

その戦いぶりに自分も昂ってしまうが冷静になる。戦は冷静に先を見る事が大切であるのだ。

 

「趙雲ダケデナイ。他ノ将タチモ 強イ。ソシテ カルデア…奴ラモ 要注意ダ」

 

戦況が変化した事は既に三国同盟軍に嫌でも知れ渡っている。故に一時的に三国同盟軍は混乱に陥っているはずだ。

すぐに混乱は治まるが正面から突撃して来る鬼の大群に目を取られる可能性は高い。

 

「正面ガ 騒ゲバ騒グホド 宜イ」

 

三国同盟軍は全力で応戦している。しかし現段階で湯浅五助たちは大将首を獲る気は無い。惹き付ける役をこなしているだけだ。

つまり本体のようで陽動部隊である。まず包屍鬼が仕掛けた最初の計略が別動隊による奇襲である。

 

「奴ラハ 背水ノ陣」

 

元々、武田信虎軍は無双の塔を囲うように配置されている方円の陣を取っていた。

三国同盟軍はその方円の陣の一点を貫いた。であれば貫かれなかった部分は無傷という事になる。

故に包屍鬼は全体の陣形を変えた。各国に部隊を分け、戦わせた。しかし全ての鬼を三国に投入させたわけではない。

 

武田信虎軍を更に分けて別動隊をいくつも編成させていたのだ。その1つが三国同盟軍の後ろから奇襲する部隊である。

開戦したと同時に奇襲部隊を遠回りで三国同盟軍の背後へと移動させていた。正面と背後だけでなく、左翼と右翼にも突撃させるように武田信虎軍を既に動き始めさせている。

四方向からの攻撃。それは包囲殲滅陣形の策である。

 

「サア 如何スル 三国ヨ」

 




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新も二週間以内を目指します。


1057
無双の塔での戦い。
敵は…百々目鬼+百目鬼+釣竿斎宗渭。
3人が混ぜられた存在が正体でした。
釣竿斎宗渭は戦国†恋姫で登場したキャラになります。

彼のお家流はオリジナルです。
三好下野入道聞書。彼の功績ですね。

まさか多くの刀剣を保護していたなんて知りませんでした。
彼のおかげで大切な刀剣が残されたのですね。
これはお家流というか宝具に昇華したらめっちゃ強いと思ってオリジナルで付け加えました。

思春の鈴音冥閃は天下統一伝の技。
明命の木箱の件も天下統一伝の設定を使っています。

武則天の敵を壺に封じ込めるのは元のモーションもそうですが、アガルタ漫画版も参考にしてます。


1058
包屍鬼が本気を出し、仕切り直しの第二戦。
三国同盟軍もこれからが正念場です。
ある意味ここからが乱戦でなく合戦です。
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