Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

321 / 377
こんにちは。
ちょっと遅れましたが更新完了です。

FGOではギリギリにイベントをクリアしました。
ゴッホちゃんと黒幕の対決。私的には熱かった。
ゴッホちゃんの幕間が、まさかこのイベントに繋がっていたなんて…面白いですね。
もしかしたら他の幕間にも伏線が?
さて、今回のイベントも面白かったです!!

12月には何がまっているのやら。


三国怪異乱戦⑪

1063

 

 

無双の塔 屋外周辺。

武田信虎軍と三国同盟軍の最終決戦が始まった。

包屍鬼の決戦陣形である「渦潮包囲 内側崩しの陣」が三国同盟軍を内側から猛威を振るう。

武田信虎軍と三国同盟軍が入り混じって最早乱戦状態だ。乱戦状態の中で如何に冷静に対処できるかが勝利への条件である。

 

「討ツベキ相手ハ軍師ダ!!」

 

包屍鬼自ら前線に出て、三国同盟軍の本陣へと突っ切る。目指すは蜀の要である朱里と雛里だ。

 

「ココカ!!」

「しまった!?」

「諸葛亮様と鳳統様をお守りしろ!!」

 

蜀の兵士が朱里たちを守ろうと包屍鬼を囲む。

 

「武田信虎軍 武田八鬼将 包屍鬼。イザ尋常ニ勝負!!」

 

包屍鬼は太刀を抜いて蜀の兵士を斬り捨てる。相手は強敵と分かって蜀の兵士は朱里たちを守る為に壁となる。

 

「皆さん!?」

「お逃げください諸葛亮様。我らは貴女方の為ならいくらでも壁になります!!」

 

朱里と雛里は焦る。まさか敵の指揮官自らこうも前線に出てくるとは予想外であった。

 

「まだですか!?」

 

実のところ手は打ってあるが、包屍鬼の方が動きが速かったのだ。

このままでは仲間の兵士が多く斬り殺され、朱里と雛里が討ち取られる。

 

「逃げるだけなんて…!!」

「雛里ちゃん?」

 

雛里は術を展開する。

 

「見ツケタゾ」

 

包屍鬼が既に朱里たちに追いつきつつある。そして太刀が振るわれた。

 

「させません!!」

 

親友である朱里を守る為に雛里は勇気を出す。

彼女にとって朱里は親友であり、尊敬し、目標とすべき人物だ。このような所で死んでいい人ではない。友を守るという意志が雛里に力を与える。

 

「夜鳳招来!!」

 

魔力で形成された鳥が包屍鬼に直撃し、爆発した。

 

「今です兵士の皆さん!!」

「「「おおおおおおおおお!!」」」

 

雛里の術が包屍鬼の動きを止め、兵士たちが剣、槍を振るう。

 

「凄い…雛里ちゃん」

 

親友の勇気と強さを視た朱里。これは自分も負けていられない。

彼女も同じように親友を大切に思い、尊敬し、目標にしている。

 

「見事ナ術ダ。シカシ我モ負ケヌゾ!!」

 

包屍鬼兵士たちを薙ぎ払い、跳ぶ。

 

「っ、夜鳳招来!!」

「二度目ハ効カヌ!!」

 

魔力弾の鳥を斬り捨てる。そして包屍鬼の間合いに入った2人。

逃げ場はない。2人が討ち取られれば蜀軍は大きく弱体化する。彼女たち自身も己の重要性を分かっている。

何が何でも死ぬわけにはいかない。

 

「終ワリダ」

「…させない」

「ヌ!?」

 

包屍鬼の背後より大きな気を放つ存在が物凄い勢いで接近。

その気を感じとってすぐさま朱里たちより視線を変え、守りの体勢に入る。そして衝撃に耐えた。

 

「良かった…間に合った」

 

朱里たちの視界に入るは最強の一角とされる呂布奉先。

 

「恋さん!!」

「…来た。任せて」

「恋殿が来たからにはもう勝利は決まったようなものです!!」

 

バサリと『呂』という旗を高く掲げる音々音。ここに呂布奉先あり。

 

「呂布奉先……見事ナ一撃ダ。マサカ 呂布奉先ト 戦エルトハ。人デアッタ頃デハ アリエン話ダ」

 

吹き飛ばされた包屍鬼だが難なく立ち上がる。

 

「鬼ニナルト 何ガ起コルカ 分カランモノダナ」

 

呂布奉先 真名は恋。この大陸で最強の一角だ。

本作戦では切り札の1つに入っている。詠や月たちと共に伏兵部隊として組み込まれており、決戦時となった瞬間に彼女の突発力で本拠点に合流する手筈だった。

そのような手筈であったが包屍鬼の方が動きが速かった為、作戦はズレたのである。しかし作戦のズレは修正される。

 

「呂布奉先ガ来タトイウ事ハ…渦潮包囲ガ突破サレタ。スグニ戻サネバ」

 

包屍鬼はすぐに突破された部分を修正しようと部下の鬼に指示を出そうとするが恋が跳んで方天画戟を振るう。

 

「…させない」

「面白イ」

 

包屍鬼は恋に向かって太刀を振るう。

武田信虎軍と三国同盟軍の最終決戦は始まったばかりだ。

 

 

1064

 

 

呉軍陣営。

攻めるは包屍鬼の部下である土屋守四郎。大槍を振るって呉の兵士達を薙ぎ払う。

天晴鬼のように怪異・妖魔の能力は無いが天晴鬼よりも強い。特別な妖具を使用しているわけでもない。

彼は己の大槍と戦闘経験だけで屈強な呉の兵士たちを薙ぎ払っているのだ。

 

「オオ、ナント屈強ナ兵士達カ。ドノ兵士モ強イ…昂ルゾ!!」

「これ以上ウチの兵士たちをやらせないよ!!」

「ヌ、何奴カ!!」

 

槍同士がぶつかり合う。

 

「名は太史慈。字は子義!!」

「何タル強敵。武者震イガ止マラン。コノ土屋守四郎ト 一騎打チヲ!!」

「勿論。さっきの鬼なんかよりも気持ちの良い奴だね」

 

天晴鬼の印象が最悪のようだが土屋守四郎という鬼は好印象のようだ。それでも手加減や情が湧くわけではない。

 

「オオオオオオオオオ!!」

「はああああああああ!!」

 

土屋守四郎と梨晏の槍捌きがぶつかり合う。

槍で打ち合うだけで土屋守四郎という鬼の実力がすぐに分かった。当然だが梨晏は一瞬たりとも気を抜かない。

彼は今まで戦ってきた敵の中でも上位に入る。王を救うための戦だという状況でなければ、彼とはより良い戦いが出来たかもしれない。

 

「やっぱ強いね。でも蓮華様を救う為にさっさとアンタを倒さなきゃいけないの!!」

「ソウカ。此方ハ殿ノ為ニ 貴様ラヲ屠ル!!」

 

お互いの槍捌きは互角。普通に戦っていては勝負は付かない。

寧ろ体力面で考えれば人間よりも鬼の方が強い。持久戦になれば梨晏が先に体力を切らして敗北してしまう。

 

勝つ為には土屋守四郎を超える技を繰り出すしかない。力勝負で勝てない、もしくは同格であれば技で補うしかないのだ。

 

梨晏は武人だ。鍛錬に妥協は許していない。その鍛錬の中で技の会得も忘れていない。

我流だが自分なりの戦闘スタイルと技を今に至るまで磨き続けてきたのだ。今その磨いてきた技を出さずにいつ出すのだ。

梨晏は気を槍を撃ちながらも気を高めて練り上げる。

 

「はああああああああああああああ!!」

「ヌヌ、コレハ」

 

気の高まりを土屋守四郎が気付かないはずがない。

何かを放つ気配だけは分かった。分かった上で彼は正面から受けとめると決めた。

槍捌きは互角。梨晏の技を正面から破ればもはや彼女に勝ち筋無し。

 

「来イヤアアアア!!」

 

土屋守四郎は正々堂々と正面から梨晏を破るのだ。

梨晏と土屋守四郎の一騎打ち。勝敗は梨晏の技を土屋守四郎が破るか否かで決まる。

 

「グオオオオオオオオ!!」

 

2人は確かに一騎打ちをしていたが戦場は乱戦状態だ。周囲の者たちは2人が一騎打ちをしているか否かは分からない場合もある。

故に分からない場合が起きてしまった。

 

「え!?」

 

梨晏はミスを犯した。気を集中し過ぎたせいで一瞬だけ背後の鬼に気付かなかったのだ。

一瞬だけ気付かなかったのが命取り。しかしまだ運が良かった。梨晏は無理やりにでも身体を捻って鬼の攻撃を避けたつもりだが片腕を負傷させた。

 

「ぐぅ!?」

 

片腕が折れた。激痛が走るが歯を噛みしめて我慢する。動かなければ鬼に殺されるのだから。

 

「グオオオオオオオオ!!」

 

鬼は梨晏を食い殺そうと大きく口を開いた。

 

「まずっ!?」

 

迫る鬼をどうにかしなければならない。練り上げた気を使って技を放てば鬼を倒せる。しかしそれでは土屋守四郎を倒す術を失う。

土屋守四郎がまた気を練り上げる時間を待ってくれるはずがない。腕の痛みと次の手を考える状況が彼女の判断を鈍らせる。

 

「グオオオオオオオオ」

「もうこうなったら…!!」

 

もう未来の自分に任せようと思って技を放とうした時、鬼の口に入ったのは梨晏ではなく、大槍だった。

 

「私ト彼女ノ 一騎打チヲ 邪魔スルナアアア!!」

 

土屋守四郎が梨晏を喰らおうとした鬼を大槍で串刺した。

 

「私ノ槍デモ喰ラッテロ」

「アンタ…何で」

 

鬼は土屋守四郎の仲間のはずだ。普通であったら梨晏を助けるはずがない。

 

「コ奴ハ私ト其方ノ 一騎打チヲ 邪魔シタ。ソノ罰ダ」

 

土屋守四郎は梨晏を見る。折れた片腕を見て土屋守四郎は腰の小刀を抜いて、己の片腕を切断した。

 

「な、何で!?」

「コレデ同ジダ。オ互イニ 条件同ジダゾ。サア、仕切リ直シダ」

 

土屋守四郎は小刀を捨て、大槍を構える。

 

「アンタ……フフ」

 

腕の痛みでそれどころではないのに笑う。

 

「アンタやっぱそこらの鬼とは違うね」

 

梨晏は槍を構え直して土屋守四郎を見る。

 

「来イ!!」

「行くよ!!」

 

梨晏は練り上げた気を一気に解放。

 

「これが私の奥義。三叉・暗夜戟槍!!」

 

槍を突き出したと同時に紫電が如くの閃光が放たれた。

 

「ナント大技カ!!」

 

これを土屋守四郎は正面から受けて立つ。妖気を大槍に纏わせて同じように突く。

 

「いっけえええええええ!!」

「ドオオオオオオオオオ!!」

 

お互いの全力を撃ち出した。

 

「はあああああああああああああああああああ!!」

「……見事」

 

梨晏の奥義が土屋守四郎を貫いた。この勝負は梨晏の技が土屋守四郎を超えたのだ。

 

「良い勝負だったよ。土屋守四郎」

 

 

1065

 

 

魏軍陣営。

攻めるは包屍鬼の部下である諸角余市。太刀を振るって魏軍を斬り捨てていく。

太刀といってもただの太刀ではなく、大太刀である。振るえば兵たちが真っ二つ。

 

膂力と技、大太刀の切れ味が大きく発揮されている。むやみやたらに近づけば彼の間合いに入り込み終わりだ。

彼の凄さは乱戦状態の中で魏の兵士だけを斬る技術である。

 

「本当にさっきの鬼よりも強いのー!?」

「ここは私にお任せを」

 

諸角余市と対峙するは秦良玉。トネリコの槍を構える。

 

「白杵槍!!」

 

魔力を開放し、槍に纏わせると緑色の光が発光する。

反英霊をやや畏怖させる力がある。反英霊でなくとも敵対する者の武器が発光すれば怪しくて余計な動きは出来ない。

 

「何者カ」

「我が名は秦良玉」

「来イ。真ッ二ツニシテクレル!!」

 

白杵槍と大太刀が振るわれ、ぶつかり合う。

 

(やはり鬼の膂力。私より上)

 

筋力は諸角余市の方が上。鬼は力の象徴であるのだから当然だ。

カルデアにいる鬼の英霊の力を知っているからこそ、鬼種の力を舐める事なんて出来ないのは当然だ。

 

「でも速さは此方が上です」

 

秦良玉は素早く動く。筋力は負けていても俊敏さでは負けていない。乱戦状態の中で彼女は素早く、複雑に動いて攪乱させる。

ただでさえ、敵味方が入り乱れる周囲だ。諸角余市は秦良玉を目で追う事が出来ない。

 

「速イ。狙イガ 定マラヌ」

 

力、技、大太刀の切れ味が良いとしても相手の狙いが定まらねば意味無し。俊敏さと複雑な歩行。諸角余市の視界から抜け出す。

彼が秦良玉を見失った瞬間が攻撃の時だ。

 

「はああああ!!」

「ヌオ 上カ!?」

 

諸角余市の頭上よりロケットの如く突撃し、白杵槍を突き立てる。

 

「せえええい!!」

「負ケヌ!!」

 

強力な突きを大太刀で受け止める。受けた事で、その威力に驚愕する。

全身の筋肉を発揮させて諸角余市は秦良玉の突きを弾き返した。

 

「ヌアアアアアアアアアアアアア!!」

「くっ!?」

「俊敏ニ動キ、攪乱。ソシテ死角カラノ攻撃。見事ダガ我ニハ効カヌゾ」

 

諸角余市は妖気を膨れ上がらせる。

 

「オ主ノ強サハ本物ダ。故ニ最強ノ一撃ヲ持ッテ 断チ切ロウ!!」

「…忠士の相」

「ナニ?」

 

秦良玉は静かにスキルを発動。

マスターに忠誠を誓い、同時にマスターからも信頼を寄せられる。

無実の罪で夫が投獄されたにも拘らず、彼女は明に忠義を尽くし、当時の皇帝である祟禎帝も彼女に絶大な信を置いた。その功績がスキルへと昇華したものだ。

 

藤丸立香と秦良玉は堅く、熱く絆で結ばれている。離れていても第六感のような力が発揮され、お互いに何をすべきか分かるのだ。

 

「マスター!!」

 

彼女の声と共に令呪が切られた。魔力が秦良玉へと装填される。

 

「卑小非才の身なれど、この信頼には全てを捧げましょう。祟禎帝四詩歌…此処に参ります!!」

 

宝具『崇禎帝四詩歌(むよくにしてちゅうぎのうた)』。

秦良玉に対し、時の皇帝崇禎帝が送った四つの詩歌。

都に召喚された良玉は、盗賊征伐の失敗の責任を取るものと考え、部下に私財を与えて覚悟を決めたが、彼女に贈られたのは恩賞と皇帝自らが作ったという彼女を讃える四つの詩歌であった。

彼女の意志が、彼女という人格者が宝具へと昇華したものである。

 

「何ダ アレハ?」

 

秦良玉の周囲に文字が浮かび上がった。否、文字ではなく四つの詩歌である。

謎の現象に諸角余市は戸惑うがすぐに冷静となる。今の彼は妖力を全開にして最強の一撃を放つだけなのだ。

最強の一撃で謎の浮かび上がる四つの詩歌ごと秦良玉を消し飛ばすのみである。

 

「我ガ一撃デ葬リ去レェェェイ!!」

「其一の詩歌」

 

秦良玉は諸角余市の最強の一撃を白杵槍で迎え撃った。

 

「ナンダ?」

 

最強の一撃を放ったはずだ。そして秦良玉の白杵槍を打ち破る威力だったはずだ。しかしぶつかり合った瞬間に全開にした妖気が霧散したように消えたのである。

結果、最強の一撃は威力激減した。

 

「其二の詩歌」

 

白杵槍による連続突き。

一撃一撃と喰らうごとに威力が増している。否、諸角余市の耐久値が一撃喰らうごとに落ちているのだ。

 

「コレハ!?」

 

秦良玉が攻撃を繰り出す際に四つの詩歌が光り輝き、彼女に力を与えているのだ。

 

「負ケヌ。我ガ勝利ハ殿ノ為ニ!!」

「其三の詩歌」

 

大太刀を振るって秦良玉に一撃を食らわす。しかし何故か秦良玉にダメージは無い。寧ろ傷が消えているくらいだ。

 

「ドウイウ事ダ!?」

「其四の詩歌」

 

白杵槍で大きく薙ぎ払う。

諸角余市が自分自身の異変に気付いた時にはもう遅い。既に彼の肉体は大きく崩されており、万全の攻撃が出来ない。

 

「これにてトドメです!!」

 

四つの詩歌がより強く輝く。そして解放した魔力が炎のように燃え上がり、秦良玉は最高の一撃を繰り出した。

 

「ナントウ…見事ダ」

 

最高の一撃によって貫かれた諸角余市。

 

「申シ訳ゴザイマセヌ…殿」

 

勝者は秦良玉。

 

 

1066

 

 

蜀軍陣営。

攻めるは包屍鬼の右腕である湯浅五助。馬に乗り、駆けて槍を振るう。

対峙するは星だ。己の得物である「龍牙」を振るって湯浅五助と渡り合う。

お互いに馬を駆け、槍を交差させる。何合も打っているが決着は着かず。しかし体力面からしてみれば星が先に切れてしまう。

 

「トウアアアアアアアアア!!」

(くっ…このまま長期戦は危うい。そして周囲は乱戦状況。馬を駆けるのも難しくなってきた)

 

馬を駆ければ機動力は大きい。しかし周囲は敵味方入り乱れている故に馬の機動力が削がれてき始めているのだ。

 

(だが相手も同じ条件だ。ここは勝負を仕掛ける!!)

 

星は馬の背に立つ。

 

「ヌ」

「行くぞ。白飛龍・涯角槍!!」

 

お互いにまた駆ける馬が交差した瞬間に跳んだのだ。

湯浅五助の槍は空振り、星は真上。そして全身を蒼い気で包んで龍牙を湯浅五助目掛けて急降下して穿つ。

 

「ヌウウウウウウウン!!」

 

彼女の必殺の突きを耐える。

 

「儂ヲ舐メルナアア!!」

 

妖気を開放し、無理やり槍を薙ぎ払う事で星を地面へと叩きつけた。

 

「ぐあ!?」

「マダ!!」

 

追撃を辞めぬ湯浅五助は倒れた星に向かって突進。

鬼の突進をまともに喰らった星は強い衝撃と共に吹き飛んだ。

 

「星!?」

「ぐぬ…鈴々。私は大丈…ぶっ」

 

吐血。内臓を負傷した証拠だ。

星はすぐに立とうとするが無理な話。上手く身体が言う事を聞いてくれない。

 

「星はここで休んでで」

「休んでいるわけには…」

「鈴々が行くのだ!!」

 

星の代わりに鈴々が湯浅五助に向かって突進。

 

「ヌウ。小柄ナガラ鍛エ抜カレシ膂力。名ヲ名乗レ!!」

「鈴々は張飛なのだ!!」

 

鈴々は気を溜めて一気に解放した。

 

「虎魂大喝!!」

 

気と咆哮による爆発。

 

「儂モ負ケンワアアアアア!!」

 

湯浅五助も同じように妖気を溜めて一気に解放。

妖気と咆哮の爆発だ。

互いの衝撃がぶつかり合い、吹き飛ぶ。

 

「まだまだなのだー!!」

「儂モダ」

 

湯浅五助は妖気を発し、槍にも纏わせる。

 

「コオォォォォ」

 

呼吸を整え、肉体に妖気を巡らせる。必殺の突きを放つ。

 

「穿テェェ!!」

「にゃ!?」

 

必殺の突きが鈴々を穿つ。

彼女はギリギリのところで回避する。回避したが彼の穿つ槍の威力に冷や汗を流される。

空を突いた湯浅五助の槍は衝撃を生み、正面の先にいた鬼と蜀の兵士たちを吹き飛ばしたのだから。

 

「シマッタ。仲間マデ吹キ飛バシテシマッタ」

 

仲間の鬼を吹き飛ばしたが今は鈴々を倒す事が優先。次弾を打つ為に妖気を溜める。

 

「鈴々も負けないのだ」

 

鈴々もまた同じように気を発揮し、練り上げる。必殺一撃で倒す為に彼女は現状で最大限の力を発揮しようとした。

 

「今度コソ殿ニ勝利ヲ。必殺穿通!!」

「鈴々の一撃必殺。蛇矛一念!!」

 

互いの必殺の一撃は妖気と気がぶつかり合い、爆発を起こすのであった。

 

(コノ妖気ハ…五助)

 

2人の妖気と気の爆発は蜀陣営にまで響いており、臣下の妖気を感じ取った包屍鬼。

その妖気と威力を感じ取って臣下の戦いに感謝する。鬼になった己にここまで戦ってくれる事に対して感謝しかない。

故に彼も必ず勝利すると一層覚悟を決めた。

 

「我ガ名ハ包屍鬼。覚悟!!」

 

包屍鬼は太刀を構えて恋に斬りかかる。

 

「…負けない!!」

「恋殿いっけーーです!!」

 

音々音の声援を受けて恋は気を開放し、技を撃つ。

 

「…一騎当千!!」

 

方天画戟に気を纏わせ、叩きつける事で気を爆発させる。

その威力は湯浅五助と鈴々が先ほど技をぶつかり合ったのとほぼ同じ。

 

「素晴ラシキ威力。受ケ流シテナケレバ マズカッタナ」

 

包屍鬼は太刀で方天画戟の軌道を受け流していた。

彼は剣術を会得している。ただ太刀を振るうのとわけが違うのだ。

 

「一刀流剣術!!」

「…負けない!!」

 

太刀と方天画戟が打ち合う。

静の剣術と動の方天画戟。互いに技と力がぶつかり合い、磨きがかかっていく。

少しでも精神を乱しては、どちらかが敗北する。

恋は己にここまでついてくる敵は数少ない。故に彼は全力で倒さねばならぬと再認識する。

 

(…強い)

 

鬼の膂力は当然だが、恋が警戒しているのは包屍鬼の技術と知恵である。

技術は渡り合っている時点ですぐに理解できた。しかし知恵だけは底がまだ見えない。

 

(…こいつ)

 

包屍鬼は恋と戦っている。確かに恋を見て、本気で討とうとしている。しかし彼は恋とは別を見ているようも見えるのだ。

 

(何か狙ってる…待ってる?)

「オオオオオオ。切落。卍。拂捨刀。無想剣!!」

「凄い怒涛の技。でも恋も負けない!!」

「十分ダ」

「え」

「恋殿ぉ!?」

 

音々音の悲鳴にも似た声に恋は一瞬だけ隙を見せてしまった。

 

「隙アリダ」

「うぐ!?」

 

斬られたが致命傷ではない。

 

「我ガ包囲陣 渦潮ハ中心ヘト集約スル」

 

包屍鬼が仕掛けた包囲陣は徐々に中心へと鬼の大群が三国軍を圧し潰していく。

その中心にいるは朱里と雛里たちだ。三国同盟軍の頭脳を先に潰す。朱里たちが終われば次は荀彧たちや冥琳たちである。

彼は心臓よりも頭脳を先に潰す。

 

「敵味方ガ入リ乱レテイルガ 渦潮ノヨウニ中心ニイル者達ヲ 囲ミ潰ス」

 

これこそが包屍鬼が仕掛けた「渦潮包囲 内側崩しの陣」の本領である。

最早、朱里と雛里達に逃げ場はない。彼女たちだけでなく三国同盟軍は内から渦潮のように切り刻まれ圧し潰されるのだ。

 

「まだです!!」

「何?」

 

朱里は叫んだ。逃げ場がないと分かっていても彼女は諦めていなかった。

 

「この包囲陣が貴方の最強の陣ならこっちは決着の陣を決めます!!」

「決着ダト…面白イ。何ヲスル?」

「背水の陣ならぬ…逆流の陣です!!」

「ハ?」

 

背水の陣は味方に退却できないという決死の覚悟をさせ、敵を破る陣だ。しかし逆流の陣とはこれ如何に。

 

「流した水を戻します。逆流させるんです!!」

「戻ス…マサカ!?」

「はい。開戦と同時に無双の塔に斬り込んだ突撃部隊を全て戻します!!」

 

突撃部隊は項羽や馬一族の翠たち、白蓮、霞。

最前線の戦力が「渦潮包囲 内側崩しの陣」が突っ込んできたのだ。

 

「殲滅!!」

「馬一族のお戻りだ!!」

「公孫賛部隊はまだまだ戦えるぞー!!」

「この張遼が戻って来たでーー!!」

 

一点からの切り崩し。しかしすぐに包囲陣は戻される。

 

「戻りません。渦潮の中心を消せば渦潮は消えます。その中心とは貴方です」

 

渦潮の中心は朱里たちではなく、包屍鬼である。

この怒涛の逆流は湯浅五助では止められない。鬼の大群では止められない。包屍鬼でも止められない。

 

「マサカ戻ストハ…無双ノ塔ニ我ガ兵ガ入ル危険ガアルハズ」

 

無双の塔には王を救出するために少数精鋭の部隊で突撃した。そして突撃部隊は外の鬼たちを侵入させないように周囲の鬼の大群の殲滅を命じていたのだ。

 

「はい。その危険は百も承知。ですが…この策を実行できるための方法があるのです!!」

 

無双の塔の周辺は呪いで鬼たちは倒れていた。

 

「項羽様と離れたくなかったのに。後で後輩に八つ当たりでもするか」

 

虞美人の包囲により無双の塔周辺は呪いがばら撒かれていた。鬼だろうが怪異だろうが人であっても近づけない。

 

「アノ爆発シテハ 再生スル 頭ノオカシイ怪異カ!!」

「はい!!」

 

勢いで返事してしまった朱里。後で虞美人の説教を受けるかもしれない。

 

「何かムカツク事を言われた気がするわ」

 

自爆し、再生してはまた自爆するなんて普通は誰もやらないので朱里と包屍鬼の感想はあながち間違ってはいない。

 

「鬼ニナッタ自分ガ 言ウノモ何ダガ…予想外ダナ」

 

虞美人の存在は包屍鬼の予想を超える存在。尤も彼だけでなく、朱里や荀彧たちでも読めない。

戦略を考える事が苦手な虞美人が、戦略を考えるに長ける者たちに度肝を抜かす。

 

「ウチが来たでーー!!」

「霞!!」

「合わせろ恋!!」

 

包屍鬼を挟むように霞と恋が駆ける。

 

「マダダ。我ハ負ケヌ!!」

「飛龍偃月刀!!」

「方天画戟全開。一騎当千!!」

 

霞と恋の同時攻撃。

包屍鬼は太刀を折られ、直撃した。

 

「ミ、見事…ダ」

 

包屍鬼の敗北が決まった瞬間である。

 

 

1067

 

 

包屍鬼の敗北。それは武田信虎軍の事実上の壊滅である。

敗北した事をすぐさま彼の右腕である湯浅五助は感知してしまった。

 

「…殿」

「にゃ、どうしたのだ?」

 

先ほどまで必殺技を撃ち合っていたが急に敵の動きが止まれば気にもなる。

大きく発していた妖気も収まっていく。

 

「儂ノ負ケダ」

 

カランと槍が彼の手から落ちた。

 

「申シ訳ゴザイマセヌ。儂ハマタ殿ニ勝利ヲ献上出来ナカッタ」

 

湯浅五助は腰から小刀を抜く。

 

「にゃ」

 

鈴々は反射的に構える。

 

「構エズトモヨイ。儂ノマケダ」

 

湯浅五助は己の腹に小刀を刺した。

 

「何をしてるのだ!?」

「介錯ヲ頼ム。殿ト供回リヲサセテクレ」

 

鈴々はいきなりすぎて動揺してしまう。

 

「頼ム…!!」

「…その役目、私で良いか?」

「趙雲カ。其方ナラ頼メル」

 

内臓を負傷していた星は動けるようになっていた。

 

「鬼でありながら、その強さ、その忠誠に感服したぞ。さらばだ」

「其方達モナ」

 

湯浅五助は殿の元に。

 

(スマヌ…五助)

 

包屍鬼は右腕の臣下に心の中で謝罪した。彼だけでなく、土屋守四郎や諸角余市にも。

彼は臣下たちに勝利を導かせられなく申し訳ないという気持ちだった。そして己らを破った者たちに賞賛を。

 

「見事デアッタ」

 

敗北した包屍鬼であったが倒れない。立ったまま朱里たちに賞賛を送った。そして己に勝った褒美としてある情報を伝える。

 

「我ニ勝利シタ。ソレハ武田信虎軍ノ瓦解ヲ意味スル」

 

武田信虎軍は瓦解するが武田信虎は敗北しない。

 

「ココカラガ 正念場ダゾ」

「それは…どういう意味ですか」

「信虎殿ハ1ツノ 命令ヲ出シテイル」

「命令?」

 

命令を出しているというが包屍鬼に対してではない。上空を支配する大百足である。

 

「武田八鬼将ガ…我ガ敗北シタ瞬間ニ 大百足ハ暴レ出ス」

「え」

 

その言葉を聞いた時、上空の大百足が地上に降りて三国同盟軍だけでなく、瓦解した武田信虎軍すらも蹂躙し始める。

 

「そんな!?」

「大百足ニ 敵味方関係無ク 地上ノ者達ヲ 蹂躙スルトイウ 命令ダ」

「まずいでコレ!?」

「早ク次ノ手ヲ打テ。ソレシカ言エヌ」

 

大百足を今まで上空に留まらせていたのは俵藤太たちのおかげだ。しかし包屍鬼が負けた瞬間に武田信虎が大百足に指示していた最優先命令によって動き出す。

俵藤太に意識を持って行かれていた大百足は目を覚ましたように地上へと降りて暴れ出す。

敵味方関係無く、赤壁での悪夢が蘇る。味方や鬼が蹂躙されていく。

 

「朱里ちゃん危ない!?」

「きゃあ!?」

 

大百足に蹂躙された鬼の死体が朱里に圧し掛かる。

重い鬼の死体が圧し掛かっては抜け出せない。

 

「雛里ちゃん逃げて!!」

「嫌だよ。朱里ちゃんを見捨てられないよ!!」

「アカン。助けにいかないって危なっ!?」

「れ、恋殿」

「ねね、こっち。早く朱里たちを…!!」

 

霞と恋が朱里たちを助けに行こうとも鬼たちが邪魔だ。鬼たちですら混乱し、大百足に蹂躙されているのだから。

 

「逃げて雛里ちゃん!!」

「嫌です。友達を見捨てるなんて出来ない!!」

 

雛里は朱里を助ける為に鬼の死体をどかそうとするが彼女の力では動かせない。

上空からは大百足の腹が見える。そのまま圧し潰そうとしているのだ。

 

「逃げて!!」

「嫌です!!」

 

大百足の腹が迫って来た瞬間に2人は目をつぶった。

 

「「……え?」」

 

結果的に2人は潰されなかった。その理由は包屍鬼が2人を庇ったからである。

 

「どうして…」

「僕モ分カライ。理由ヲ付ケルナラ…君ラノ友ヲ助ケヨウトスル 姿ニ心ヲ 動カサレタ…コトカナ」

 

動けない身体だが動いた。包屍鬼もどうしてこのような行動を取ったか分からない。

本当に2人の助け合う友情にでも心が動いたのかもしれない。

 

「マッタク僕ハ何ヲヤッテイルンダカ」

 

一瞬だけ包屍鬼の素が出たのを見た朱里と雛里。彼は元々、優しい人間だったのかもしれない。

 

「早ク…ドウニカシロ。モウ保テヌ」

「朱里、雛里!!」

 

跳んで来た恋が鬼の死体をどかして2人を抱えて、脱出した。

包屍鬼から離れていく朱里と雛里は敵である彼に最後に感謝を伝えるのであった。

 

「友カ……友ハ良イモノダ」

 

包屍鬼は人間だった頃にかけがえのない戦友がいたのだ。

 

「友ハ良イモノダヨナ…三成。マタ会イタイガ 鬼ニナッタ僕ニ 資格ハナイ…カ」

 

彼はそのまま目を閉じた。




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新は未定ですが…12月中に5章を終わらせるために頑張ります!!
本当に無双の塔編も終わりが見えてきました。具体的にはあと3話くらいかな。


1063
包屍鬼の戦い。
本来だったら、後方で指揮してますが決着の為に前線にでました。

やっとこの戦で恋を登場させる事が出来ました。

1064
土屋守四郎と梨晏の戦い。
ちょっと異なるけど、2人の正々堂々の戦いを演出したつもりです。
鬼の中にも気持ちのいい奴がいてもおかしくない。

三叉・暗夜戟槍
天下統一伝の梨晏の必殺技。ビーム出るんですよ。


1065
諸角余市と秦良玉の戦い。
この戦いでは秦良玉の宝具やスキルを個人的な解釈で書きました。
忠士の相
マスターと信頼し合えるなら、離れていても第六感的な者で意思疎通出来そう。と思真下。
宝具に関してはモーションから、それっぽく書きました。

1066~1067
湯浅五助と星と鈴々の戦い。
2人と対等に戦う湯浅五助。覚悟が決まっている者はいつもよりも力が出ると思います。
個人的な解釈ですけど湯浅五助はとても忠誠が高そうです。

包屍鬼との戦い。
一刀流剣術。調べたら逸話があるらしいです。

また色々と戦術や戦の陣を書きましたが、本当に大丈夫かなって思ってます。
まあ、深く考えてくれないければ…。
背水の陣からの逆流の陣って…アリなのかなぁ。

ぐっちゃんパイセン
戦術を考えるのは苦手だけど、やることなす事は戦術家からしてみれば予想外過ぎると定評があると思ったので書きました。
自爆して再生からのまた自爆して呪いをばらまく。彼女しかできませんね。

包屍鬼は鬼になっても「友」を忘れません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。