Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
遅くなりましたがやっとこさ更新です!!
いやあ…師走なのか忙しくて執筆してる暇がない。
FGOのクリスマスイベントも全く箱イベが進まないです
(ストーリーはクリアしました。謎の伏線を残したのが気になります)
アビーとロウヒが可愛すぎます。
恋姫…というかネクストンがコミケに出店しますね。
どのようなグッズが出るのか!!
コミケに行きたいです…そしてFGO関連のグッズも買いたいです!!
1068
大空を支配する神喰い蟲。その名は大百足。
彼は于吉が生み出した怪異だ。最初はただの百足であったが、于吉の実験等の繰り返しによって怪異と変化した。
その後が己よりも位の高い怪異や龍を喰らっていきながら大百足へと進化していった。汎人類史の大百足に比べれば差はあるが、その出来は鬼の大群や三国同盟軍を軽く捻り潰す事に造作もない。
「ギギギィ」
今の大百足に脅威となる存在はいない、いないはずだった。ある日、この人物は敵だと認識できる存在が現れたのだ。
強大で巨大な大百足が敵と認識する人物こそが俵藤太である。この大百足は何故、彼が敵だと思ったのか理由は分からない。餌として食い殺すのではなく、敵として殺さねばならないと本能が訴えるのだ。
故に大百足はそこらの有象無象よりも俵藤太に意識が向くのが当然だった。
「ギギギギィ」
嫌悪感のある敵が己の背中に乗って駆けてくる。
大百足は噛み殺そうと胴体を曲げながらも襲い掛かる。
「うおっと!!」
俵藤太は回避する。魔力で足場を創りながら空中を駆け、大百足の背を駆け、意識を己へと集中させる。敵の意識を集中させる概念礼装を使ってまでだ。
大百足を地上で暴れさせるわけにはいかない。そして大百足を倒す準備の時間稼ぎの為である。
「こっちだ大百足!!」
矢を大百足の顔に向かって放つ。
「ギギィ!!」
見事に命中したが意味は無し。
大百足はヴリトラを喰らい、その力を得ている。
ヴリトラの力とは「木、岩、武器、乾いた物、湿った物、ヴァジュラのいずれによっても傷つかず」というものだ。
「武器」が効かないのであれば矢が効くはずもない。しかし今は効かなくとも良い。意識を俵藤太に集中させれば良いのだから。
「ギギィ!!」
大百足が妖力を発し、妖力弾を放出する。狙いは当然の如く俵藤太。
「矢避けの加護」
スキルによって妖力弾を回避する。
「弓矢部隊構え!!」
「放てーー!!」
紫苑、祭、夏侯淵による弓矢部隊が一斉に矢を放つ。
数多の矢が大百足の顔や額に向けて放たれた。数打てば当たるの如く、直撃するが大百足に意味は無し。
紫苑たちの矢は大百足にとって鬱陶しいくらいだ。その鬱陶しいくらいで十分である。
ヴリトラの力で守られているが弱点である唾液の矢が顔に向かってくるのは極力嫌うはずだ。人からしてみれば顔に向かって蜂が飛んでくるようなもの。
「突貫!!」
哪吒は魔力を開放し、風火輪を噴射。全力で大百足の腹に突撃する。
その衝撃は大百足に少しは警戒させるほど。少しというと弱く思われるが巨大な生物が己より小さい生物を警戒させるのは十分な事である。
「スキル使用。道術 神将・中壇元帥」
太乙真人から譲り受けた数々の宝具を使いこなすスキルと神将・中壇元帥による魔性を撃ち払う力を己に付与する。
哪吒が装備する乾坤圏や風火輪、火尖槍等を十全に解放。大百足は魔性の存在でもある。故に魔性特攻の力を付与できる哪吒は大百足に少しでも傷を与えようとするのであった。
「やああああああ!!」
怒涛の攻撃を大百足に撃ち込んでいく。
「ギギギギギ」
大百足を暴れさせないように俵藤太が、紫苑たち弓矢部隊が、哪吒が全力で攻撃で専念する。
「堅いのう」
「あの大百足だからね」
「資料を読んで知ってはいるけど…本物はもっと凄いんだろう?」
汎人類史の、俵藤太が戦った大百足の方がより恐ろしいというのだから今戦っている大百足の方がマシである。
「張角、師匠。宝具を」
「任せよ」
「我が力であの大百足を倒そうじゃないか」
藤丸立香の概念礼装を展開する。
「概念礼装起動。偉大なるや魔道元帥。多くの可能性、多くの未来を守護するもの。その在り方は万華鏡の如し」
概念礼装『カレイドスコープ』。司馬懿(ライネス)と張角に魔力が装填される。
「師匠、張角 大百足の守りを剝がせ!!」
司馬懿(ライネス)と張角に令呪の魔力が宿り、魔力を全解放。
「さて、こいつの効果は折り紙付きだぞ? 渾沌に七穴、英傑に毒婦。落ちぬ日はなく、月もなし。とくと我が策御覧じろ。混元一陣!!」
「我等が色を掲げよ。蒼天已に死す。黄天當に立つべし。歳は甲子に在りて、天下大吉ならん!!」
2人の宝具が展開。
大百足を倒す算段はある。しかし厄介なのは大百足を守るヴリトラの力だ。
ヴリトラの力がある限り、大百足を倒す事が出来ないのだ。故に大百足を倒す為の第一段階がヴリトラの力を剝す事。もしくはヴリトラの力の穴を突く。
大百足を守るは「木、岩、武器、乾いた物、湿った物、ヴァジュラのいずれによっても傷つかず事」と「インドラは昼も夜も自分を殺すことができない事」である。
その2つの力を攻略する。
「そこは儂の出番じゃ」
張角の宝具『蒼天已死、黄天當立』。
黄巾の兵たちが掲げたスローガン、反乱の題目の名を冠した宝具。
漢帝国に対し最初に起こった民たちの明確な反乱行動という、大きな時代のうねりそのものの具象化。
張角たち兄弟が操ったと言われる天候操作の妖術が起動し、嵐、雷鳴、雹、霧などの大規模対軍攻撃が行われる。
「さて、ここで儂の宝具が効くのは反乱という部分じゃ」
彼の宝具は反乱の宝具である。大百足に、ヴリトラの力に「反乱」する。
「儂らは大百足に、ヴリトラの力に反乱する。圧倒的強者に力無き弱者は反乱する」
嵐が、雷が、雹が、天候操作が襲い掛かる。
「本当は対軍、対国に有効なんじゃが…まあ、ここは反乱という部分に力を入れようぞ。あとついでに空は黄色く…さあ、今は昼か夜かのう?」
大百足に反乱する力が皆に付与されていく。反乱する力によって大百足に真っ向から
「更に私の宝具が大百足の、ヴリトラの力を剝すぞ」
司馬懿(ライネス)の宝具である『混元一陣』。
司馬懿という人間の本質は、奇才奇策を振るう軍師ではない。戦争だろうが権力抗争だろうが当たり前に布陣し、当たり前に時を待ち、当たり前に勝ち、不機嫌そうに好きでもない詩を呟くというものだ。
その具現化とも言える宝具。相手を倒す算段さえあれば確実に倒す方法を創り出す事が出来る。すなわち「弱点を創り出す、弱点を丸裸にする」という事である。
「大百足、ヴリトラ。何方も弱点と倒された事を知っている」
大百足は俵藤太に倒され、ヴリトラはインドラによって倒された。歴史には倒された事が刻まれているという事は倒す方法があるという事。
それは彼女の宝具を展開するにあたって「一度倒した相手である事」や「すでに相手のデータが集まっている事」が十分であり、完全に宝具が大百足へと貫く。
「幻の日輪と月輪が水銀で作られた地平線から現れたとき、大百足の得手は潰され、秘めていた弱点が露わになる。もっとももう弱点は知ってるから秘められたも何も無いけどね」
弱点を創り出すも無い。弱点を知っているのだから弱点を剥き出しにするだけだ。
「所で日輪と月輪が現れた際は…昼と夜どっちかなー?」
黄天で、日輪と月輪が水銀の地平線から現れる。昼なのか夜なのか分からない。
大百足を倒す為に集められた者たちは「反乱」する事が出来る力を得た。大百足はヴリトラの力を得ていたが問答無用で弱点を剥き出しにされた。
「大百足討伐の第一段階を完了だ。第二段階に移行する。魔術礼装起動!!」
藤丸立香は魔術礼装を起動し、強化を仲間たち付与していく。第二段階とは百足を倒す武器の準備完了だ。
「朕の水銀は何でも成れる。水銀の弓矢」
始皇帝は水銀操作で口にした通り、水銀の弓矢を完成させる。まずは弓。
水銀は武器ではない。弓矢と言っているが暴論の如く武器ではない。そして水銀は金属であり、水分ではない。故に「武器と岩と湿ったもの」には当てはまらない。
「捉え方はその者次第だ」
敢えてグレーゾーンであれば判定は不明瞭になる。
「そして矢の部分は…こっちは確実に鉄であり武器だな」
水銀が北郷一刀の次元刀に纏わり、矢の形へとなっていく。
「そこは司馬懿さんと張角さんが何とかしてくれるって言ってましたよ始皇帝陛下」
「うむ。その刀に期待するは次元を貫く事である。次元を貫くという部分が重要なのだ」
次元を貫くというのは防御不可の攻撃。武器は効かないが次元を貫くという現象を打ち消せるかは不明瞭だ。しかし対象を大百足だけでなく、大雑把に考えればどうか。
貫くのは大百足ではなく、目の前の空間。大百足はたまたま貫かれた次元に巻き込まれたというオチだ。尤もそんな事を言いながら狙うは大百足の額であるが。
「暴論過ぎるけどなぁ…大丈夫なのか?」
「大丈夫であるぞ。司馬懿と張角の宝具によって奴のヴリトラの力は剝がされている。否、大百足の弱点が剥き出しになっているのだな」
大百足は守るべき核を盾の前に出しているような状態だ。
「今、朕らがやっているのは更なる後押しに過ぎん。既に敵を倒す算段は付いた。過剰戦力追加とも言える行為だ」
「過剰戦力追加上等、オーバーキル上等って奴ですね!!」
大百足を倒す水銀の弓矢が完成。その弓矢には俵藤太の唾液が含まれている。大百足を倒す者と言ったらやはり俵藤太なのだ。
「第二段階完了。第三段階に移行する。大百足の足止めを!!」
狙うは大百足の額である。動き回る大百足を止めるのが第三段階である。
狙いを定めるのであれば獲物は止まっている方が狙いやすいに決まっている。
ここで紫苑たちが率いる弓矢部隊の本当の仕事が始まる。
始皇帝によって作られた数多の水銀の矢を構える。自らの唾液を含ませた水銀の矢。
「始皇帝陛下から賜った水銀の矢」
「畏れ多いが…かの皇帝が創った矢。効かないわけがないな」
「我らがやる事は必ず当てる事だ」
己の使命は必ず矢を大百足に当てる事。ここ一番の大本番。
プレッシャーはとても重い。しかし紫苑、祭、夏侯淵たちはどのプレッシャーをはねのけている。
矢を大百足に当てるのが当然という顔だ。特に祭のどの誰よりも自信に満ちていた。
「大殿、雪蓮様。我が矢をご照覧あれ!!」
炎蓮と雪蓮が生きていた。これだけで今の祭は気が高まり、何でも出来るという自信に満ちているのだ。
「私も負けていられないわね」
「私もな」
3人が一斉に矢を放った瞬間、弓矢部隊の者たちも一斉に矢を放つ。
「大百足にとってはこの矢は毒矢じゃな。毒矢・戦陣雨!!」
「外しません。剛龍の矢!!」
「赤壁での借りを返すぞ。白狼至極弓!!」
多くの矢が大百足の顔に向かって突き刺さる。
大百足は水銀の矢を酷く嫌がった。討伐されずとも大百足が確実にダメージを負っている。しかしこの矢らは大百足を倒す為のものではない。
水銀の矢は始皇帝が創り出した矢。その矢は始皇帝によっていくらでも変化させる事が出来る。大百足の動きを封じ込める為のものだ。
「儒は坑すべし」
始皇帝のスキル『儒は坑すべし』。
敵対者に物理的重圧を科し動作を妨げる。坑す、とは生き埋めの処刑法を意味する。紀元前中国では大量虐殺の手段として最も効率的なものだった。今なお圧倒的な支配と苛烈なる統制の意思として始皇帝のスキルに顕現している。
「大百足よ 朕の御前だぞ。頭を垂れろ」
「ギギギギィ!?」
大百足の顔に突き刺さった水銀が変化し、顔から胴体へと巻き付いて縛り上げていく。
「ぬうん!!」
大百足は巨大で龍を喰らい神喰蟲だ。始皇帝も全力で力を発揮する。
「ふっ、中々なじゃじゃ馬だな。うーむ…ここに阿房宮型の朕がおれば完全に封じ込めるのだが」
大百足は全力で始皇帝の力に抗っている。
「しかし、舐めるな蟲。真人たる朕が蟲如き敗北せん!!」
魔力を。否、仙気を開放して始皇帝は大百足の動きを封じる。
「今っ…ぬ!?」
大百足も始皇帝に負けるつもりはない。捕縛から抜け出す為に大百足は口を大きく開いて狙いを定めた。
『ただれる息』。
大きな口から吐き出されたのは生物を腐らせ、崩す凶悪は息吹であった。
「いかん!!」
大百足の『ただれる息』は巨悪で強力だ。龍を喰らう蟲の息吹なのだから、ほぼどのような生物も一瞬で腐らせてしまって死に至らせる。
この戦場にいる人間、鬼、英霊さえもだ。始皇帝も直撃すればただでは済まない。
「おのれ」
始皇帝はすぐに新たな水銀を広く展開して、守りに入る。守るのは己だけではない。周囲にいた者たち全てだ。
守るために力を割いた瞬間こそが隙であった。そしてタイミングが悪かった。このタイミングで包屍鬼が敗北していたのだ。
包屍鬼が敗北した時、大百足は強制(ギアス)に近い命令が指示されている。それは敵味方関係無く暴れて戦場を破壊する事だ。
女神降臨神話の為の準備を急ぐ為である。暴れて、大陸を恐怖に陥れる。後は三国の王たちを生贄に捧げて女神を降臨させるだけだ。
「ギギギィギギィギィギギギィ!!」
『百足踊り』。
大百足は踊るように胴体をくねらせ戦場を蹂躙させていく。その光景は赤壁での再現である。今まで概念礼装もあって俵藤太に意識が釘付けになっていたが強制(ギアス)によって無効になった。
巨大な生物が何気なく動くだけで小さな生物は圧死する。大百足にとって鬼や人間たちは小さな蟻と同じだ。
ただ胴体をくねらせながら降下するだけ鬼や人間たちは潰れて死んでいく。更に駄目押しにと『ただれる息』も吐いていく。
圧倒的な暴力が戦場を蹂躙していく。ただの人間では勝てない。強大な力を持った鬼でも太刀打ちできない。
「ギギギギギギィィギギィギギィギィ!!」
誰も太刀打ちできない。それが大百足を見た者の感想である。しかし、だからと言って諦めるわけには行かないのだ。
この戦場にいる者たちは大百足を倒すという覚悟を持っているのだ。「勝てない」と言わず「勝つしかない」と言うのだ。
「ぬん!!」
水銀が大百足を縛り上げていく。
「蟲めが…朕を舐めるなと言ったであろう!!」
始皇帝は仲間や三国の兵士たちを守りながら大百足を封じ込める。
「ギギィ!?」
動きが封じられるが大百足には強制(ギアス)があるのだ。何が何でも敵味方関係無く暴れようとする。
「始皇帝。オレの魔力を!!」
藤丸立香は始皇帝の横まで駆けてくる。魔力を始皇帝へと流し、魔力が補填される。
危険な前線であろうとも藤丸立香と英霊が近くにいるだけで魔力は譲渡されやすく、強化も大きく変化する。
だからこそ藤丸立香はどのような特異点でも異聞帯でも前線へと赴くのだ。
「始皇帝。大百足を止めてください!!」
「朕一番の臣下に言われたのならば応えねばならんな」
スキル『書は焚すべし』の発動。
2000年以上に渡り全世界を支配し続けた為政者としての始皇帝の結論であり。民衆は徹底して衆愚に貶め、自意識の発芽を摘み取ることで天下泰平の礎とする。
その徹底した政策がスキルとして昇華され、他者の魔術回路に重圧を与えることが可能となったものである。
「今度こそ止まれ蟲」
大百足を物理的に止め、内側から魔術的にも止める。
「ギギギ!?」
完全に止まる大百足。
今こそが大百足を討つ時である。俵藤太が空から藤丸立香と北郷一刀の元に降りてくる。
「水銀の弓矢は完成しておるぞ」
「うむ、ここからは吾の出番だな。いや、吾らの出番か」
最後の大仕事。大百足を討つ事。それは俵藤太、藤丸立香、北郷一刀の3人で行われる。
北郷一刀が水銀の弓矢を構える。それを俵藤太が支える様に構え出す。
次元刀は北郷一刀しか扱えない。大百足を討つには俵藤太でなければならない。
「緊張せずともいい…と言っても難しいか北郷」
「いえ、俵さんが支えてくれるおかげで緊張はないです」
日本の大英雄が補助してくれる。緊張するかもしれないが絶対の安心感もある。
「マスター令呪の方は大丈夫か?」
「勿論。いつでも大丈夫」
藤丸立香は水銀の弓矢を撃つためのエネルギー。もしくは弾(矢)でもある。
手の甲に刻まれた令呪が輝き出す。
「ならば頼むマスター。大百足退治だ!!」
「令呪を持って命ずる。大百足退治の再演を!!」
令呪が強く輝きだし、俵藤太に魔力が装填される。そして宝具の解放が成された。
「南無八幡大菩薩……願わくば、この矢を届け給え」
宝具『八幡祈願・大妖射貫』。
生前の大百足退治の際に八幡神に祈りを捧げて矢を放ち、大百足の頭を撃ち抜いた逸話を反映した宝具。
まさに大百足特攻とも言える宝具だ。
「北郷よ。真っすぐに大百足の頭を…いや、その先を見るのだ」
「はい。いつでも大丈夫です!!」
次元刀に龍の加護が付与されていく。
大百足の頭を撃ち抜き、その先の空間を貫く。
「放つぞ!!」
「いっけぇぇぇぇぇぇぇ!!」
水銀の矢であり、次元刀であり、大百足を討つ矢が放たれた。
「ギギギギィ!?」
外す事は絶対に無い。矢は確実に大百足の頭を、額を撃ち抜いた。
巨大で圧倒的な怪物を人間たちが討伐する。創作の物語ではなく、現実で成したのだ。
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無双の塔 最上階。
武田信虎は力を解放し、まるで強化装甲を纏ったような姿へと変貌した。
より鬼へと進化したと言ってもいい。その覇気、妖気、威圧感は増している。
「ゆくぞ」
踏み込みが速かった。そして剣戟を重い。
「ぐ…!?」
受けたのは炎蓮だ。剣戟を受けた事で武田信虎の姿が見せかけでない事が嫌でも理解出来てしまった。
「よくぞ受けた。しかし我が手がまだ空いているぞ」
今の武田信虎には手が四本あると言ってもいい。背中からは二本の腕が伸び、まるで爪の翼がある。
「串刺しだ」
「そんな事させるわけないでしょ!!」
元々2対1だ。雪蓮が武田信虎の爪翼の動きを邪魔する。
「ふん。2人まとめて串刺しか斬り殺してやろう!!」
太刀を振るい、爪翼で薙ぎ払い、串刺しにしようとする。手数が最初よりも多くなり、2対1のアドバンテージを無効にしている。
更に強化装甲のような皮膚は堅牢であった。
「元々、堅かったのにもっと堅くなったわね!?」
「弱音吐いてんじゃねえ」
「吐いてないわ。ただの文句よ!!」
(文句ならオレだって言いてえよ。もうボロボロだってのに)
炎蓮と雪蓮も負けずに剣戟を撃ち込む。
「ほう。この我についてこれるか…む?」
「余所見してるなんて余裕ね!!」
武田信虎は一瞬だけ大百足の様子を確認した。そして現在の戦況を理解した。
(武田八鬼衆が…包屍鬼が敗北したのか。これはいよいよ急いだ方が良いな)
本当は目の前の2人と思い切り戦いを楽しみたいが任務が優先である。斬り払って間合いを取り、妖気を練る。
「鬼火纏い」
太刀に再度、鬼火を纏わせて苛烈なる炎の太刀を創り出す。
「水鬼纏い 千山万水」
目の前に大きな水玉が出現。その水玉を武田信虎は炎の太刀で両断した瞬間に水蒸気が周囲に蔓延した。
「ちょっ!?」
「目くらましのつもりか」
武田信虎の気配が薄くなる。
「隠形鬼纏い 神出鬼没」
水蒸気で視界が悪い。武田信虎の気配が薄い。これではどこから攻撃されるのか分からない。
「気ぃ付けろよ」
「あいつは何処に…母様後ろ!!」
音もなく武田信虎は炎蓮の背後に現れ、太刀を振りかぶっていた。
「ちっ」
ギリギリの所で防ぐ。防がれた武田信虎は表情を変えずにまた水蒸気の中へと消える。
「母様背中合わせ」
「ああ」
雪蓮と炎蓮は互いに背中を預け合う。少なくともこれで背中を斬られる事は無い。2人で連携し合う事で武田信虎の襲撃を対応できる。
(何処から来る…?)
気配は薄く、水蒸気で視界も悪い。一瞬でも気を抜けば首を落とされる。
(ほんとにこの戦いは一瞬でも気が抜けないわね。何度自分に言い聞かせてるのかしら)
頬に汗なのか水蒸気の粒なのか分からないが、重く垂れているように錯覚する。
(まだ来ない…)
待たされる時間が苦痛に感じる。酷く緊張する。瞬きも許されない。
(……ん?)
ここで雪蓮は猛烈に嫌な予感を感じ取った。直感というのか蓮華の顔が浮かんだのだ。
「まさか!?」
「おい雪れ…そうかっ」
駆け出す雪蓮。駆け出した先は蓮華たちがいる箇所。
炎蓮も雪蓮の考えを読んで、追いかける様に駆け出す。
「させないわよ!!」
水蒸気の中を切り抜けると武田信虎が静かに冷徹に太刀を振りかぶっていた。その先には蓮華たちが。
「邪魔をするな!!」
「するに決まってるでしょ!!」
武田信虎の目的は女神降臨神話を完成させる事。その為に三国の王を殺さねばならない。
三国の王さえ殺せば後は『あの女神』が勝手に現れて勝手に戦を終わらせてくれる。そうすれば武田信虎のやり直しが実現するのだ。
武田信虎は己のいた外史に戻って天下統一をやり直す。
その為に三国の王を殺す。炎蓮と雪蓮の始末は後回しで良いのだ。
「後回しで良いはずだったのだが…先に殺さないとダメか。急がば回れと言うしな」
水蒸気の中にまた消える武田信虎。
「また消えたわ。もう、この水蒸気が鬱陶し…え」
水蒸気に対してこんなにも苛ついた事は無い。しかし運が良いのか強風が吹いて水蒸気が吹き飛ぶ。
「やった。これも日ごろの行いね」
「何故強風が…風鬼で操作していたはずなのに。まさか何処かに敵が?」
武田信虎は周囲を見渡すが誰も居ない。敵はやはり炎蓮と雪蓮のみだ。
「……やはり三国の王共を処刑するには先に貴様らの首をさっさと刎ねねばならんようだな」
任務遂行の為には炎蓮と雪蓮を殺さねばならないと完全に理解した。最短で圧倒的に決着を付ける為に武田信虎は完全体へと変化する。
背中から生えている爪翼は崩れ落ち、肉体が絞られるように変化していく。無駄な肉をそぎ落とし、身軽になる。膂力は絞られ収縮し、より強くなる。
変化した武田信虎は無駄を省いた肉体となる。最早、余計な戦術は考えない。真っ向から倒すだけだ。
「この戦も終わりにするぞ」
武田信虎は跳んだ。そして炎蓮と雪蓮の2人同時に太刀を振るった。
「くっ!?」
「うおお!?」
何とか反応出来たのが精一杯。
「鎧袖一触。はあああああああ!!」
連続斬撃。早く、鋭く、重い。
2人は何とか防いでいるが徐々に斬撃に対応できなくなるのが理解出来てしまった。
斬撃が2人の身体を斬り付けていく。今のところ傷は浅いが徐々に深くなっていき、最後には首や胴体を真っ二つにされる。
(まずっ!?)
先に雪蓮が武田信虎の斬撃に追いつけなくなった。
「させるか!!」
炎蓮が雪蓮を蹴飛ばして無理やり間合いから抜け出させる。しかしそんな事をすれば炎蓮の隙が出来るに決まっている。
その隙を武田信虎は逃がすはずがない。
「まずは貴様からだ!!」
斬撃一閃。炎蓮は斬られる。
「「母様!?」」
雪蓮と蓮華が同時に叫んだが、娘たちの悲鳴をかき消すように炎蓮は雄叫びを上げる。
「う…おぅらああああああ!!」
斬られたにも関わらず炎蓮は倒れない。肉を斬られ、血を流すが彼女は剣を振るい続ける。
「なに?」
「まだ…まだぁ!!」
「この気配は」
炎蓮から妖気が発せられる。
「オレの内には鬼がいるんだよ。だからそこらな奴より頑丈だ!!」
急に炎蓮の力が強くなる。
「こいつ…っ!?」
「うおうらああああああああああ!!」
剣戟の速度が上がり、威力も重くなる。
内に秘めたる鬼神の力が炎蓮を底上げしているのだ。
武田信虎の攻撃に追いつき、更に押し返そうとする。炎蓮は武田信虎を超えようとする。
「調子に乗るな。鬼の力の使い方も分からん奴に我が遅れを取るか!!」
斬撃一閃。
炎蓮を切断する斬撃だが炎蓮は受けきった。
「おのれっ」
「この程度じゃオレは死なねえ!!」
炎蓮が気と妖気が発し、より強くなっていく。
彼女は己の限界を超えて武田信虎を倒すと覚悟を決めた。鬼神の力を使って己がどうなろうとも知った事ではない。
自分の娘を助ける為に命を賭けるだけだ。
「私も…まだまだ」
雪蓮は立ち上がり、気をまた練り上げる。母親が全力で戦って、自分たちを守っている。嬉しいのだが自分はいつまでも守られている立場ではない。
逆に炎蓮を助けるのだ。娘として母親を助けるのも当然の事である。
「はあああああ!!」
これ以上は長く戦えない。もう体力も少ないのだ。
次の一手で決める。彼女は全身に残る気を解放する。
「む」
炎蓮が気と妖気を発して練り上げる。雪蓮が全力の気を発して練り上げる。
2人の威圧と覇気が武田信虎は感じ取る。そして同じように妖気を発した。
「最後の一撃のつもりか。ならば我も圧倒的な一撃で終わらせてやろう」
カチャリと太刀を構える。
さっさと任務を遂行するためには2人を殺さねばならない。既に計画に遅れが出始めている。
ならば今この段階で決着を付けるには武田信虎自身も願ったりだ。
「我が最強の斬撃を喰らわそう!!」
禍々しき妖気が溢れ出す。無双の塔 最上階を武田信虎の妖気が支配した。
彼女の斬撃は雪蓮と炎蓮を斬殺する。
「一刀両断。我が剣よ…勝利を切り開けぇい 宗三左文字!!」
その斬撃は無双の塔すらも両断する。
「母様。私が先に行くわ」
「雪蓮!?」
「母様に良い所を譲るわよ!!」
全力の気を再度、練り上げた雪蓮が突貫。
「勝利への道を私が切り開く。小覇王極散閃!!」
菫色の気が発せられ、連続の斬撃が繰り出される。まるで剣閃が散るように放たれた剣技だ
舞うように乱れるように数多の剣閃が武田信虎の宗三左文字を少しだけズラした。そう『少し』だけで十分だった。
「なにぃっ!?」
「今よ母様!!」
「雪蓮が開いた道の先にオレが勝利を。武烈皇帝!!」
気と妖気を練り上げて爆発させた。炎蓮は風となって音速を超える。
音速を超えた突きが武田信虎の強化装甲すらも貫き、風曝させた。
「があああああああああああ!?」
「これで終わりだあああああ!!」
炎蓮の一撃は武田信虎の肉体を崩壊させる。
「我が…負ける?」
武田信虎はやり直す。復讐を果たす。しかし今ここで彼女は敗北する。
「我が…また、負けるというのかああああああ!?」
「オレの…オレたちの勝ちだ!!」
炎蓮が武田信虎軍の大将 武田信虎を討ち取った。
武田信虎軍 対 三国同盟軍の戦いは三国同盟軍の勝利で終わったのだ。
読んでくださってありがとうございます
次回の更新は年内に!!
あと1話で第5章も完結です。やっと完結です…第5章が。
今年もあとわずか…なんとか5章を終わらせます!!
1068
大百足退治。
司馬懿(ライネス)や張角の宝具だったり、始皇帝のスキルだったり、次元刀だったりで大百足を倒す方法を自分なりに考えました。強引だったりもしたですが何とか形にしました。
これで大丈夫だよね?っと何度も確認しましたが…今でも不安。
紫苑たちの必殺技ですが、これも天下統一伝の技です。
・毒矢・戦陣雨
・剛龍の矢
・白狼至極弓
秋蘭の必殺技がカッコイイ。
大百足の『ただれる息』と『百足踊り』はFGOからのものです。
北郷一刀と藤丸立香の活躍。
薄くなってしまった…申し訳ない。
やっぱこの2人の活躍が難しい!!
1069
雪蓮・炎蓮 対 武田信虎。
もっと書きたい欲はありましたが、これが私の限界でした。
武田信虎の完全体は…これもビジュアルファンブックからのものです。
宗三左文字…武田信虎が持っていたという事で必殺技にさせてもらいました。
たしか嘘か本当か分からないけど、最終的にこの刀は信長の手に渡ったとか何とか
彼女が食らった怪異は「鬼火」と「藤原千方の四鬼」です。
雪蓮と炎蓮の必殺技。これも天下統一伝のものです。
まあ、恋姫たちの必殺技はほぼ天下統一伝からのものなんですけどね。
・小覇王極散閃
・武烈皇帝
カッコイイです。そしてモーションも派手でした。
水蒸気を吹き飛ばした強風。
これって実はある存在からの補助だったりします。