Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
何とか書けたので更新です。
FGOではもうすぐバレンタインイベントですね。
また甘いイベントが始まりで楽しみです。
そして新サーヴァントのキラキラのキャスター。一体誰なのかなあ。
さて、6章は季節イベントの話を書く予定です。
なので2月に入ったらこっちもバレンタインの話を書こうとしたら…間に合わなかったなあ
いや、2月中ならなんとかなるかな?
まあ、まずは今の話を書かないといけないんですけどね。
では、どうぞ
1079
三国同盟が成された後、まずすべき事は自国の安定であった。
武田信虎軍の戦力と大百足の暴威。各国の民たちの混乱は大きい。それらを倒したら五胡の宣戦布告によって三国は混乱状態だ。故に安定させねばならない。
戦後処理には様々な問題が山積みだ。雌雄を決する戦いである赤壁の戦いは武田信虎によって邪魔され、三国の戦いは有耶無耶になった。
有耶無耶になったとはいえ魏の敗北が濃厚であったのは確かであった。領地問題や賠償問題も議題に挙がったが同盟を先に組んだので今更掘り返せばゴタゴタになる。
その為、領地や賠償問題は帳消しにした。これから五胡と戦う準備をするのに同盟国から力を削ってどうするという事だ。
三国の領地は以前変わらずまま。
魏は大陸の北側。呉は大陸の東側である揚州方面。蜀は大陸の西側である益州方面。
軍事も武田信虎軍との戦いでボロボロだ。このような状況であれば一度解体して再編成した方が良い。
五胡対策を教えてもらったばかりだが、まずは自国の混乱をどうにかしなければならない。どうにかしなければ勝手に自滅する可能性もあるのだから。
「大変だよーーー!?」
蜀の王である桃香が叫んだ。
肉体労働をしているわけではないが様々な混乱を正す為に多くの文官や武官、民たちの意見を聞きは答えを出さないといけない。大量の竹間に目を通しては捌く。
まるで現代で言う大量の資料に捺印を押すような作業を朝から晩までやっているようなものだ。
「ご主人様助けてーー!?」
「俺も手伝ってるし、朱里や雛里たちも頑張ってるから」
「それでも終わらないんだけどーー!?」
泣き言は言っていられない。やらなければ終わらないのだから。
桃香は蜀の王なのだから彼女がすべき仕事は彼女がするしかないのだ。
「疲れたぁ…」
「ちょっと休憩しようか」
あんまん・桃まん。疲れた時には甘い物が一番だと言っていた。
桃香は頬いっぱいになる程かぶりついてはお茶で流し込む。
「美味しい~もぐもぐ」
「喉詰まらせるなよ」
「お茶飲んでるから大丈夫だよご主人様」
美味しそうに食べる人の姿を見ると自分も食欲を刺激されるものだ。北郷一刀も桃まんにかぶりつく。
「ん、美味い」
「だよね」
甘さとは幸せの味。美味しそうに食べてる姿を見て食欲を増すのは周囲に伝染する。
食欲を刺激されたのは北郷一刀だけではない。
「オレもいただけます」
「アタシも」
「私たちも頂こっか」
「うん、姉さん」
藤丸立香に玄奘三蔵、徴姉妹も一緒だ。
「それにしても大変だね桃香ちゃん」
「本当に大変なんだよ三蔵ちゃん。手伝ってほしいよ~」
「手伝ってあげたいけど国の内務的な事は手伝えないよ」
「うん。私たちは言ってしまえば余所者。余所者が国の運営に関する仕事は手伝えない」
「三蔵ちゃんたちは余所者じゃないのに」
桃香たち蜀陣営と仲が良い事は問題ない。しかし一線は決めておくべきだ。
蜀とは国。国の重要案件(内務的な事)を仲が良いからといって余所者に任せてはいけない。
「昔は手伝ってくれなかったっけ?」
諸葛孔明たちが文句を言いながら内務的な事を手伝っていたが今と昔では違う。
桃香が蜀の王の時と平原の相の時とでは段違いなのだ。
「私たちが手伝える事はもう限られている。国の事はそこに住むあんた達が決める事だよ」
徴弐に至極真っ当な事を言われて桃香は黙る。この場に居ない風鈴や朱里も徴弐の言葉を肯定するはずだ。
「うう…だよね」
「俺も頑張るから桃香も頑張ろう」
「うん。ご主人様」
国の混乱は国の者が治すという事だ。もちろん藤丸立香たちも手伝えるような事があるのならば手伝うつもりでいる。
「国事以外の事なら手伝うよ」
「助かる立香」
「あ、そうだ。皆に相談したい事があるの」
桃まんをごくりと飲み込んで桃香は真剣な顔になる。
「何ですか?」
「魏や呉とこれから足並みを揃えていく事になるんだけど」
「うん」
三国同盟が結ばれた事により、五胡と戦うため足並みを揃えるのは必要である。
足並みを揃えず、三国が勝手に五胡と戦っては同盟を成した意味が無い。
「足並みを揃えるって事は仲良くなるって事だよね?」
「まあ、そうだね」
表向きは仲が良さそうな同盟よりも、信頼し合っている同盟の方が良いに決まっている。
「だから三国が信頼し合える…仲良くなる方法を一緒に考えて欲しいの」
「仲良くか」
桃香の言いたい事は分かる。五胡との戦いで三国が力を合わせなければ勝てない。
足並みが揃わない同盟に意味無し。敵国にとって恰好の隙を与えているだけだ。もし同盟に亀裂が入れば五胡と戦う前から内部崩壊する。
桃香は表面上の仲良くではなく、背中を預けるくらい信頼し合いたいのだ。敷いては彼女の目指す大陸の平和に繋げる為に。
「まずは皆でご飯とかかな?」
「皆でご飯って…まあ、悪くないと思う」
「そうだよね!!」
皆でご飯。すなわち宴(会食)。
親交を深める手として必ず挙げられる方法だ。どの時代、どの世界でも挙げられる。
「天の国では他には仲良くなる方法とかあるかな?」
「他にか…う~ん。立香は何かある?」
「一体感・団結力を強くするとなると…やっぱ行事関連の事を一緒にやるのがいいんじゃないかな」
行事。この単語を聞くと何を思い浮かべるか。
人柄、国柄にもよって様々かもしれない。日本でならば正月、バレンタイン、海開き、ハロウィン、クリスマスと多い。
「カルデアでは季節になると様々なイベントが始まるもんね」
「その時だけは皆が協力し、準備しては楽しんでる」
特殊な環境下とはいえ、様々な国の英霊たちがバレンタインや水着、ハロウィン、クリスマスイベントを楽しんでいる。
「皆で準備して楽しんで、世界救って…確かに一体感はありますね」
(今、世界救ってとか言ってなかったか?)
楽しい季節イベントだが何故か世界の危機がセットで付いてくる気がしなくもない。
「マスターの言う通り、季節に関する行事を皆で楽しむのは良いかもしれません」
「なるほどな。確かに立香の言う通りだ。行事関連は皆で楽しむもんだ」
北郷一刀は日本人であり、学園生だ。体育祭や文化祭といった事を皆で経験しており、団結力が生まれるのを知っている。
「じゃあ三国で天の国の行事をやるのも1つの手だよね」
「三国で行事を?」
「うん。ばれんたいんにくりすますだっけ。それらを皆でやるの!!」
三国で現代の季節イベントをやってみる。
確かに面白そうな発案であった。意外にも試してみるのも良いかもしれない。
「詳しくはろういんとかくりすますとか教えて教えて」
「結構長くなるわよ桃香ちゃん」
「それも良いがまずは会食からにしようか。いきなり俺らが行事をやろうって言っても向こうはわけ分からんだろうし」
手始めに蜀主催の宴(会食)を開催する。その中で行事の事を話すのも良い話のネタになる。
話が盛り上がれば相手が興味を抱き、国同士で大きな行事を開けるかもしれないのだ。
「そうだね。まずは会食。そうなると会場の準備や料理の準備も…」
「日程やら、魏と呉に使者を送ったりも色々とあるぞ」
国同士の会食ともなれば簡単に開かれるものではない。入念な準備が必要なのだ。
「まあ、その前に魏も呉も俺らも戦後処理をどうにかしてからだけどな」
戦後処理とは簡単に終わらないものだ。
休憩時間が終われば桃香はまた山のように残っている戦後処理を片付けないといけいない。
「やだ~やりやくないぃ」
「頑張るぞ桃香」
「まあまあ、会食の準備なら私たちも手伝えますから」
「ありがとう徴側さん」
会食の準備くらいなら手伝っても誰もとやかく言わない。
「使者に立香たちも一緒に付いてきてもらった方がいいか」
何だかんだで魏と呉に親交があるのが藤丸立香たちである。
「じゃあ立香は呉への使者を頼む」
「………嫌だなぁ」
「それは自業自得だろ」
「一刀や桃香さんたちも一枚嚙んでるのに」
藤丸立香が呉に行きたがらない理由はある。それは炎蓮・雪蓮生存事件の件だ。
既に事件は幕を閉じているが当時は本当に色々と大変であったのだ。
1080
武田信虎との戦いを終えたすぐの事。劉豹の宣戦布告があったとはいえ、戦いは三国の勝利。
後に色々と問題が残っているが今だけは戦いを忘れて助け出した王と感動の再会と洒落込んでも良いものだ。
実際に曹操、蓮華、桃香達の前には部下たちが集まって涙を流したり、喜んでいたりしている。
今はそれで万々歳で一旦締めくくるものかと思っていたが、実際は終わりではなかった。物語でいう所のエピローグ後のオマケが発生したのだ。
感動の再会とは一転、まさかの威圧感が呉の陣営で起きていた。
「で、母様、姉様、立香。3人は私たちに秘密にしていたのね?」
秘密とは炎蓮と雪蓮が生存していた事だ。そしてその3人は呉の面々の前で正座させられていた。
「ひ、秘密にしていたわけじゃ」
「秘密にしていたのね?」
「はい…」
秘密にしていた事を肯定する藤丸立香。蓮華の圧倒的な覇気で黙る3人。
この時だけは蓮華の覇気(怒気)が雪蓮と炎蓮の覇気を超えていた。
「れ、蓮華…怖い顔してるわよ~」
「怖い顔をさせているのは誰でしょうか姉様?」
「………立香と母様かな~?」
雪蓮の前に笑顔だけど怖い顔で現れるは冥琳と梨晏。
「そうか大殿様と立香のせいか」
「じゃあ雪蓮は何も悪くないんだね?」
「め、冥琳、梨晏も…顔が怖いって。美人が台無しになっているわ…よ?」
「美人を台無しにさせているのは誰だろうな?」
「………母様と立香?」
「ちょっとお話しようか雪蓮」
「もうお話してる…」
冥琳と梨晏のとても良い笑顔だけど怖い顔に見えている。その怖い顔を見て青くなる雪蓮であった。
「けっ。オレ様のせいにするからだバカ娘」
「そんな事を言っておる炎蓮様ですが…」
「うっ」
雷火も良い笑顔だが怖い顔に見えてしまう。彼女の左右にいる祭と粋怜も同じであった。
「生きていたのでしたら戻って来んか馬鹿殿がぁ!!」
雷火ここ一番の怒声が炎蓮に放たれた。本当に心配した。否、もう会えないと号泣した。
炎蓮を守れなかったと後悔に圧し潰されそうだった。何が孫呉の両翼かと己を恥じた。
それほどまでに炎蓮を想っていた雷火、祭、粋怜。
「本当ですぞ炎蓮様。何故…何故!!」
「何故、生きていたのなら帰ってきてくれなかったのですか。私が炎蓮様を守れなかったから…不甲斐ない臣下だからですか!?」
普段では見られない3人の訴えのような怒りだった。
これには炎蓮も言葉が詰まってしまう。まさかこのような3人を見るとは思わなかった。
「だーっ、不甲斐なくねえよ。てめえら良い臣下だよ」
「なら何故、帰ってくださらなかったのですか!!」
「それは…」
答えを出さない炎蓮に威圧感を出して迫る。
「それは何ですか炎蓮様」
「…………」
「何故黙るのじゃ」
炎蓮と雪蓮が呉に帰らなかった理由。それはどうしようもない理由だ。
2人は確かに生死を彷徨った。実際は死んでいてもおかしくなかった。
本当だったならば死んでいたと言ってもいい。ただイレギュラーが居たからこそ彼女たちは生き残ったのだ。
(言えるわけねえ)
(うん…言えないわよ)
2人は死の間際に「後は任せた」的な言葉を遺した。あれだけ臣下たちに言葉を遺した手前、会うのが恥ずかしいのだ。
ある意味、大往生した末の最期の言葉を遺す。でも実は生きてましたとひょっこりと顔を出せるわけがない。
「雪蓮?」
「炎蓮様?」
「「………」」
黙る2人。喋らないのならば喋らせるまでと冥琳と雷火は動こうとするがここで蓮華が待ったをかける。
「母様、姉様。何故理由を話してくれないのですか」
「「………」」
しょうもなさすぎる理由なので話せないだけである。
ここで蓮華の視線が藤丸立香に移る。自分は関係無いですという風に気配を消していたが、それは不可能というもの。
炎蓮と雪蓮と一緒に並んで正座をしているのだから。
「2人が孫呉に帰らなかった理由を知ってる立香?」
ここで炎蓮と雪蓮はアイコンタクトで「喋るな。黙ってろ」と藤丸立香に送る。
「2人は…実は生きてましたって事になるのが恥ずかしくて帰らなかったとの事です」
藤丸立香は普通に炎蓮と雪蓮を裏切った。裏切り展開で炎蓮と雪蓮は口をパクパクさせていた。
「そ…そんな理由で?」
「しょうもなさすぎですぞ大殿」
「だから言いたくなかったのよー!!」
「裏切ったな立香!!」
「立香のせいにしない母様!!」
まさかの回答に呉の面々は呆れ、怒り、ため息を吐く。
「恥ずかしいでしょ。あれだけの言葉を遺したのに…あの後にひょっこりと顔出せないわよ」
「馬鹿なのか?」
「そうだよ。そんなんで失望するわけないじゃん!!」
「あれだけな弔い式しといて顔を出せるかっ」
「それでもです。貴女が生きていたのなら呆れるよりも歓びが勝るのですぞ!!」
わんやわんやと言い合う炎蓮と雪蓮と呉の面々たち。
どんどんといつもの展開になってきたような気がする。
「一応聞くけど、立香は母様と姉様が生きているのを知っていたのはいつ頃だったの?」
一瞬だけ考えたが、ここまできたら正直に話すべきだ。ここで嘘を付く、黙るのは悪手である。
「炎蓮さんが生きていると知ったのはたぶん蘇った黄祖を倒された後くらいかな。雪蓮に関しては魏と呉の戦いが終わった後くらい」
「それは……ん?」
ほぼほぼ、炎蓮と雪蓮が死んだと思われたすぐ後くらいだ。
「一応言っておくけど、私たちを助けたのは立香だから」
「正確に言うとオレだけじゃなくて燕青たちや華佗たちのおかげだから」
「それは……という事は、母様や姉様たちが死んだと思っていた…その後に再会していた時には2人の生存を知っていたって事?」
「はい」
「しかも助けたのは立香たちだと?」
「はい」
黙る蓮華もとい呉の面々。
「「「何ですぐに言わなかった!!」」」
怒るのも当然であった。助けた本人が何も言わないのだから。
炎蓮と雪蓮が亡くなって悲しんでいた呉の面々の前で、生存を知っている藤丸立香は黙って普通に過ごすのは如何なものか。
「いや、だって黙ってろって2人に言われてたからなんです」
「それでも普通は喋りなさいよ!!」
「だ、だって」
「だってじゃない!!」
呉の面々の怒りが藤丸立香にシフトチェンジ。
藤丸立香に怒りが移った事でちょっとだけホッとする炎蓮と雪蓮であったが、そうは問屋が卸さない。
「なにホッとしておるか」
「まだ言いたい事はたくさんあるんだよ雪蓮?」
「「うっ…」」
藤丸立香にも怒りがぶつけられるのも当然だ。
2人の生存を知っているのであれば言うべきだった。言えば孫呉は袁術に支配されたり、雪蓮も暗殺される事も無かったかもしれない。
炎蓮と雪蓮が亡くなった事で精神的に擦り減っていた蓮華や粋怜たちに生存を報告すれば精神を病ませるような事は起きなかったかもしれない。
報告とはとても重要で人間の動きを大きく変えるものだ。よく言う「報・連・相」である。
「賭博場の時も生存を知っていたのね立香くーん?」
「はい…」
「じゃ、じゃあ…立香。八傑衆が襲ってきた時も既に」
「知ってました」
炎蓮と雪蓮を亡くした時の呉の面々は確かに精神的にやられていた。特に蓮華はその最たる例だ。
実は生きていると言えば良かったのは確かである。
「立香くーん?」
「立香!!」
「申し訳ございませんでした…」
このように責められるのは当然の報いかもしれない。
「なるほどね~。その負い目があるから賭けで勝った私の身体を好きにしなかったとか?」
「あれは邪魔があったから」
「あ、やっぱあの時のあれは邪魔だったんだ」
「言葉のあやです。てか、何故そんな話に…」
「なぬ、粋怜。お主いつの間にそんな事を!?」
「邪魔なんて追い返して抱けばよかったじゃねえか立香」
「大殿は黙っておれ」
話がおかしな方向へと進み始める。
これも粋怜の策略だ。炎蓮と雪蓮が生きていた事を隠していた。藤丸立香が黙っていた。確かに怒らねばならない事だが、やはり生きていたという事実が嬉しいのだ。
そろそろお開きにしようと粋怜が一手加えたに過ぎない。
「本当よ。あの時の夜に私は立香と……その、し……心が弱って貴方に凄いこと言っちゃったし」
あの時の夜とは赤壁の戦いの前の時。
蓮華が顔を真っ赤にしてとんでもない事を口走った。怒っているとつい歯止めが効かなくなり、思っている事は吐き出すように言ってしまうものだ。
「え、何。蓮華ってば立香とヤったの?」
「姉様黙って!!」
「え、蓮華姉様ずるい」
「シャオも今は口を挟まない!!」
蓮華の手刀が雪蓮の脳天を直撃した。姉に対して手刀を繰り出す妹はあまりいないような気がする。
「よくやった蓮華!!」
「だから黙っておれ馬鹿殿!!」
「り、立香くんいつの間に…私には手を出さなかったくせに」
今度は雷火が炎蓮に手刀を繰り出した。主君に手刀を繰り出す臣下は普通いない。ただ炎蓮の石頭に雷火は逆に返り討ちにされるのだが。
「……冥琳」
「何だ雪蓮。私はまだ怒っているぞ?」
「貴女も立香とヤっ…」
雪蓮が何かを言い終わる前に冥琳が素早く手刀を繰り出した。
「痛っ!?」
(あの時は私も心が弱っていたから……まさか立香のやつ)
藤丸立香は誰にも何も言ってない。
「いや、あの夜に立香から冥琳の匂いがして」
「ふん!!」
「痛いんだけどー!?」
「え、冥琳ってばいつの間に」
涙目になる雪蓮だが笑っていた。
「ふふ、そんだけ元気なら大丈夫よね」
「何がだ雪蓮?」
「病気だって聞いたわよ」
雪蓮からの言葉にまた話の空気が変化する。
「…知っていたのか」
冥琳が病気というのは知っている者と知らない者がいる。
知っている者ならば顔を暗くし、知らなかった者は初耳だと言わんばかりに驚いていた。それが不治の病ともなれば当然だ。
「もう怒る気にはなれんな。最期に会えて良かったよ雪蓮」
自分の身体は自分自身が分かっている。
赤壁の戦いで全てを終わらせようとした。しかし終われず、武田信虎軍を倒すまで命の炎を燃やし続けたのだ。
まさか雪蓮と炎蓮を再会できたのは予想外だが、最期としては素晴らしい出来事だ。
「冥琳…」
梨晏が悲しそうになる。彼女だけでなく、蓮華たち全員もだ。
「あ、その病だけど治るって華佗が言ってたわよ」
「………………何て?」
「華佗が治るって。というか華佗なら治せるって」
華佗が診断させてくれと言っていたがどうせ治るはずが無いと断っていた冥琳。そもそも武田信虎軍を倒す為に診断する暇も無かったのもあった。
故に彼女は華佗の診断を諦めていたのだ。
「ねえ冥琳」
「……………」
「ねえ、今どんな気持ちぃ~?」
冥琳は己の病を知る者にはいくつか深刻な話をしていた。自分はもう助からない、もう長くは無い、必ず蓮華を大陸の王にする等々と。
それなのに実は不治の病でなく、治せる病と今になって知ってしまった。
「……………っ」
「その抱いている気持ちが、私が生きている事を隠していた理由よ!!」
仲間を見つけたりと、雪蓮はここぞに冥琳に対して指をさして威張る。もうどっちもどっちな状況だ。
「梨晏」
「何かな冥琳?」
「私を殺してくれ…」
「嫌だよ!?」
両手で顔を隠す冥琳。ある意味、弄られるネタを呉の面々に渡してしまう事となった。
「おう、じゃあこの話は終わりだ。さっそく冥琳を華佗のとこへ連れて行け雪蓮、梨晏」
「うん。行ってくるわね母様」
「は、離せ雪蓮、梨晏!!」
「嫌でーす」
ガッシリと冥琳を抱える雪蓮と梨晏であった。
「じゃあお開きだお開き」
炎蓮がここぞと言わんばかりに炎蓮・雪蓮生存事件に幕を下ろすのであった。
「国に帰ったら説教の続きですぞ炎蓮様」
「いい加減勘弁してくれ雷火…」
「立香もよ」
「オレも!?」
「当たり前」
こうして本当に炎蓮・雪蓮生存事件は幕を閉じたのであった。
1081
呉にて。
武田信虎軍との戦いが終わり、戦後処理も大方片付いてきた。それは魏も蜀も同じ事で、それを狙ってか蜀は魏と呉に使者を送ったのだ。
呉への使者には藤丸立香と燕青、紫苑。内容は宴(会食)のお誘いだ。三国同盟を強固にする為の親交を深める宴である。
「宴の誘いって…こんな時にか?」
「確かにそうかもしれませんが今を逃すと出来ない気がすると玄徳様が仰っております。そして三国同盟を強固にするために親交を深めたいのです」
使者の紫苑は蓮華に宴(会食)の旨を説明していく。
「まあ、五胡対策の為に三国の足並みを揃えるという点では間違ってないな」
五胡は強大だ。三国が力を合わせるべきなのは確かである。
(三国の力を合わせるか…)
確かに必要であるが思う所はある。蜀と呉は上手く親交していけるかもしれないが、魏に関しては微妙だ。
「宴なら行こうよ蓮華姉様!!」
「ちょっとシャオ」
ズズイと参加を推すは小蓮。「ハイハーイ」と挙手する動きは元気いっぱいだ。
「あ、良いと思うわよ。蜀のご飯も美味しいし」
「そうだな。呉の飯も美味いが蜀の飯も美味かったぞ」
ここにヒョイと更に現れるは雪蓮と炎蓮。
「雪蓮、炎蓮さん久しぶり」
「何が久しぶりよ。私たちを裏切って逃げたくせに」
「そうだぞ。よくもオレ様を置いて逃げやがって」
逃げたとは武田信虎軍との戦いの後、雪蓮と炎蓮は呉へと強制連行されたが藤丸立香は蜀へと戻ったからだ。
逃げたつもりはないと言いたかったが、確かに逃げたようなものなので否定できない。
「あら、呉に帰りたくなかったようにも聞こえるわね母様、姉様?」
「「……」」
何だか力関係が少しだけ変化しているように見える。
「ところで姉様と母様はまだ仕事中だった気がするけど?」
呉へと強制連行もとい強制帰還させられた2人の扱いは国の相談役のようなポジションだ。
生存していたからといって王に戻るという事は無い。呉の王は蓮華である。
その事を理解している2人は王に戻れと言われても、望まれても王に返り咲く気は一切無い。故に呉の相談役が丁度良い役職だったのだ。
「おかしいわね。冥琳と雷火が見張ってたはずなのに…何故ここにいるのかしら?」
「いやぁ、立香たちが来たっていうからつい」
「つい抜け出したと……もっと厳重に見張りを立てないと。いえ、もう監禁くらいにしないと駄目かしらね」
「怖いわよ蓮華。でも蓮華だって立香が来たと聞いて仕事を後回しにしたくせにぃ」
「なっ、違います。蜀からの使者であれば優先するのは当然です!!」
まさかの一言にあわあわする蓮華。姉にからかわれる妹という構図は変わっていないようだ。
「モテモテだな主」
「ふふ、そうね。少し妬けちゃうわ」
「モテモテなのかな?」
「おーっと。ここで鈍感スタイルは色んな方面から火に油だぜ」
「ごめんなさい」
一国の王から気に入られるのは確かにモテモテだ。そもそもカルデアでは案外、様々な王(英霊)から気に入られている。
彼の誑しっぷりは健在だ。
「コホン。宴の件だが参加させて頂く」
「ありがとうございます」
話を戻す為に蓮華は王気質に戻り、紫苑は使者の役に戻る。
「こんな時だからこその宴は良いかもしれない。今後の為の投資とも思えればいいからな」
「では、三国交流宴の詳細をよりお話しますね」
「ねえねえ、やっぱ服装もそれなりな服にした方がいいかな?」
「シャオ、口を挟まない」
1082
魏にて。
当然、魏にも宴(会食)を誘う為に使者として司馬懿(ライネス)、秦良玉、愛紗が訪れていた。
「宴ねぇ」
「はい、魏との親交を深める為に参加していただきたく。我が主 玄徳様もそう望んでおられます」
「こんな時に宴って…何を考えてんのよ劉備とやらは」
荀彧が呆れ顔になる。
「言われてるぞ愛紗殿」
「言われてますね愛紗殿」
「ぐむ…」
確かに言いたい事が分かる。時折、桃香は突拍子もない事を言い始める時があるが大概は良い方向に進むので試すのも悪くない。
「同盟を組んだとはいえ私も、魏も忙しいのだけれど…」
戦後処理は終わり、次は五胡対策を徹底的準備しなければならない。
「でもそうね。関羽が私と床を共にしてくれるなら参加しても良いわよ?」
「はぁ!?」
「関雲長…!!」
まさかの誘いに愛紗は顔が真っ赤。そして荀彧の殺意が愛紗を放たれた。
曹操、実は愛紗が好みだったりする。そして愛紗は以前に星が曹操の所が百合百合しいという意味がより理解できた。
「ふざけた事を言わないでください」
「いえ、本気」
「………」
本物だと心底理解できた瞬間であった。
「貴女がダメなら秦良玉でも良いけど?」
「秦良玉……っ!!」
荀彧の殺気が今度は秦良玉に放たれた。
「すまん秦良玉殿。頼んでも良いだろうか」
「ちょっと愛紗殿!?」
まさかのキラーパスが届いた秦良玉は慌てる。こういう話は苦手な秦良玉。
曹操としては反応が面白いのでお遊びが入っているのは確かだ。これで釣れたら儲けものの話。
「だ、駄目です。わ、私の全てはマスターのものなので!!」
「それを言うなら私の身体だってご主人様の物ですから!!」
「2人とも凄い事を口走っているけど?」
「「はうっ!?」」
司馬懿(ライネス)の指摘に顔を真っ赤にする2人であった。
「羨ましいわね2人の天の御遣いは……それと反応が可愛いわね」
面白いものが見れた曹操であった。
「じゃあ司馬懿はどう?」
「私はとても高いぞ?」
「どれくらい?」
「君が私の愛玩動物になるくらい」
「言うわね」
お互いにニヤリと笑い合う司馬懿(ライネス)と曹操。
「な、不敬な…なんて事を言うのよ司馬懿!!」
「いやいや、荀彧も想像してみてくれ。曹操が君の愛玩動物になったとしたら」
「華琳様が私の愛玩動物に………」
荀彧の鼻から鼻血が垂れる。これを見た者は「郭嘉か」とツッコミを入れるかもしれない。
「はっ、駄目駄目。解釈違いよ!!」
どうやら別の扉が開きかける寸前だったようだ。
「なんて事を想像させるのよ!!」
「あらあら、桂花は私で何を想像したの?」
「あ、いいえ!?」
「話してみなさい」
「か、華琳様ぁ…」
大きく話が逸れたので司馬懿(ライネス)が「コホン」と咳をする。
「それで、宴に参加してくれるのかな?」
「良いわよ」
「え、よろしいのですか?」
意外にも参加表明をしてくれる。
「ええ。劉備とはまだ話したい事もあったし。それと呉ともね」
曹操が色々と話したい事がある。蜀では桃香だけでなく、他の者とも話したい事がある。
三国同盟は成したが不安定な状態であるのだ。三国同盟は五胡対策の為に結ばれた。しかし不満に思う者は少なからずいるのだから。
読んでくださってありがとうございました。
次回の更新も未定です。でもせめて1週間後を目指したい!!
1079
本当は1月中に書き終わらせたかった三国交流宴編がはじまりました。
三国同盟を結んだその後の話です。
ここから季節イベントの物語を展開する予定だったのです。
FGOの季節イベントは何故か世界の危機もセットで付いてくる。
何ででしょうね?
バレンタインなんてチョコで世界が溺れるような危機になりかけますし。
1080
後回しにしていた炎蓮・雪蓮生存事件の顛末でした。
そりゃあ、怒られますよ。
冥琳も己の病が治らないと言っていたのに実は治ると分かって、恥ずかしなるとおもって
このような感じになりました。たぶんこうなる。
1081
呉に宴の招待。
原作と違って雪蓮と炎蓮は呉の相談役になりました。
そして蓮華には頭が上がらなくなるという展開に。
シャオの言う、「服装もそれなりに」
ドレスアップの展開になるかも
1082
魏に宴の招待。
愛紗は北郷一刀のもの。秦良玉は藤丸立香のもの
どちらも忠誠心が凄いですからね。こんな事も口走ってもおかしくないかも?
特にリャンさんは絆が深まると忠誠心が限界突破ですから。
華琳と司馬懿(ライネス)なら堂々と対等に言い合ってもおかしくないと思う。
そして2人して獲物を見つけて面白がるでしょう。
華琳は三国同盟について思う事があります。
不満に思う者に対して…それは誰なのか。