Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
何とか執筆できたので今日も更新です。
FGO
明日はついにバレンタインイベントが始まります。
キラキラのキャスターをお迎えするべく、石を用意しないと!!
そして新たに追加された英霊達の個別バレンタインイベントが気になります
やはり徐福ちゃんが気になる…。
男性だとやはりエドモン…しかし、彼は我がカルデアには居ない(とても悔しい作者)
さて、物語をどうぞ。
1083
三国が集まっての宴。三国交流宴が開催されることが決まった。
魏も呉も参加してくれるという事で桃香は喜んだ。これも平和への第一歩と考えれば嬉しくもなる。
五胡対策の為の同盟であったが三国が親交を深めていけば、五胡を倒した後でも同盟は続く。戦が起こらない事に繋がるのだ。
故に桃香は三国交流宴に対してやる気いっぱいだ。やる気いっぱいすぎで空回りするんじゃないかと白蓮が心配するくらいだ。
「会場良し、日程良し。会場を盛り上げる為に天和ちゃんたちに歌をお願いしたし、後は料理の準備だけ」
宴で一番大事なのは勿論、料理と酒だ。料理と酒が不味ければせっかくの宴が台無しになるのだから。
「美味しい料理どうしよう」
曹操は美食家だと聞く、彼女を満足させられる料理が用意できるか急に不安になるのであった。更に蓮華だって桃香よりも育ちが良い為に舌も肥えている。
「あれ…もしかしてわたしだけ高級な味とか分からないんじゃ」
桃香の舌はどちらかと言うと庶民派。高級料理であれ、大衆料理であれ美味しいなら美味しいと言う。しかし味の違いを細かく言えと言われれば困ってしまう。
「どうしよう白蓮ちゃん!?」
「桃香…今更すぎるぞ」
「だってぇ…」
「安心しろ。蜀の料理人も腕は確かだ。麗羽や空丹様達だって文句は言ってないだろ」
「あ、そっか」
蜀には空丹や麗羽たちのような舌が肥えている人物はいる。更には炎蓮や雪蓮たちも蜀の料理は美味しいと言っていた。
ならば蜀の料理人も腕は本物だと胸を張って良いのだ。
「そうだよね」
「なら、こっちが準備するなら料理人に最高の仕事をしてもらう為に最高の食材を用意するのが良いんじゃないか?」
「それだ」
料理人は食材を魔法のように美味しい料理にする。食材が良ければ良い料理になるのも道理だ。
「曹操の奴なら高級食材もそうだが珍味とかも用意すると良いんじゃないか。なんせ美食家と聞くし」
「流石は白蓮ちゃんだね」
「褒めても何もでないぞー」
高級食材もそうだが美食家ならば珍しい食材を調理した料理なんかも興味が惹かれるはずだ。
「今の時期だとどういう食材があるかな?」
「書庫に行って、一緒に調べてみるか」
「うん」
桃香は白蓮と共に書庫に向かって珍しい食材を調べるのであった。
「食材もそうだけど酒も用意しないとね」
「そうだな。しかし良い酒となると………お、この酒は」
「あ、この食材なんかも良いかも」
2人は良い酒と食材の資料を見つけるのであった。
1084
キノコ。
我々の身近な食材の1つであるキノコ。食用キノコはたくさんの種類があり、風味や食感はさまざまである。
中には高級品や珍味もあり、その美味しさは無限大だ。有名なのが松茸やトリュフではないだろうか。
「キノコ狩りか。山の食材を頂く…うむ、良い」
「キノコ美味しいもんね。アタシも山で迷子になってお腹が空いた時はよくキノコを探したわ。でも毒キノコには注意よ。御仏も言ってるわ」
キノコ狩りのメンバー藤丸立香に俵藤太、玄奘三蔵、鶸、蒼の5名。
何故この5名がキノコ狩りをしているかと言うと三国交流宴に出す料理の為だ。宴は美味しい料理があってこそである。そして美味しい料理を作るには美味しい食材が必要なのだ。
「肉が主役なのが多いけどキノコが主役でも良いじゃないか」
メインディッシュが肉料理と思う人は多い。しかしキノコがメインディッシュは珍しいかもしれない。
ロクスタなら「肉よりもキノコだろうがバカヤロー!!」とでも言うかもしれない。
「キノコは涼州にいた頃によく山で採ってたな~」
「そうだね。キノコ焼きやキノコ鍋、キノコの炒め物。どれも美味しかった」
そもそもキノコをメイン料理にしようとしたのは桃香の希望である。
曹操は美食家だ。彼女を納得させるのであればただ良い食材を用意しては駄目だと思って、珍味食材を用意しようと思い至ったのである。
文献等を調べに調べた結果、選ばれた食材がキノコなのだ。
「えーっと、確か桃香様が採ってきて欲しいキノコはマイタケだっけ?」
「そうだよ蒼。何でも食べると舞うくらい美味しいキノコなんだって」
その話を聞いて藤丸立香と俵藤太は『今昔物語集』を思い出した。
『今昔物語集』にはキノコを題材として話がある。その1つに鶸の言うような話があるのだ。
そのキノコこそが舞茸。しかし現代ではもしかしたらソレは舞茸ではなく、ワライタケではないかとも言われている。
(もしもワライタケだったらマズイね。美味しい本物の舞茸を採ろう)
(そうだな)
間違っても毒キノコを宴に出してはならない。
「ところでキノコ狩りをするっていうけど、どこまで行くのー?」
「良い場所があるんだ。あそこなら様々なキノコが生えてるから舞茸もあると思う」
藤丸立香の言う良い場所とは以前、華佗から教えてもらった場所だ。以前とは張勲の病気を治す為に薬の材料探しの時である。
冬虫夏草を採る時に一度だけ赴いたが、キノコを採るとなったらその場所が一番だ。
「あの場所には創造神…キノコの精霊様がいるしね」
「キノコの精霊って面白そう!!」
「あの…それは大丈夫なんですか?」
少しだけ不安になる鶸。
「大丈夫だよ」
「うむ。大丈夫だぞ鶸よ」
「御仏も大丈夫って言ってるわ。そのキノコの精霊は信じられるって」
(3人とも何故かキノコの精霊に対する信頼感が凄いんですが…)
藤丸立香たちのキノコの精霊信仰は絶対である。
「もうすぐ着くよ」
キノコの山にて。
何故かキノコ型のモンスターが暴れていた。
「何ですかこれー!?」
「あはは。面白すごーい」
「蒼もそんなこと言ってる場合!?」
まさかアレがキノコの精霊ではないかと訝しむ鶸だが藤丸立香たちは否定する。
「アレは違うね」
「違うな」
「違うわね」
キッパリと否定する3人。
「この山にはあんなのがいるんですか?」
「いや、初めて見る。以前は大きなイモムシは見たけど」
「大きなイモムシはいるんですか!?」
この山の生態系が分からない。
舞茸を採りに来たらキノコのモンスターと出会う藤丸立香たちであった。
「なんだアレ。大きくない?」
キノコ型のスプリガンと言えば良いかもしれない。二足歩行は出来なさそうであり、キノコのように地面や木材から生えている。
地面から生えている上半身だけのスプリガン型のエネミーだ。但し普通のスプリガンよりも巨体である。
「おや、この前の人間たちじゃないでちゅかー」
「はっ、創造神…いえ、キノコの精霊様!!」
藤丸立香はひざまづく。俵藤太と玄奘三蔵は軽く頭を下げた。
(これがキノコの精霊?)
現れたキノコの精霊は緑の傘に黄色い身体をしており、目がキラキラさせていた。
この存在こそが藤丸立香たちが神のように讃えているキノコの精霊である。
(…凄い精霊には見えませんが)
「うわー、面白可愛い」
鶸と蒼がキノコの精霊を興味深く、怪しみながら観察していた。
「おや、また可愛い子が増えてまちゅね」
チラリとキノコの精霊は鶸と蒼を見た。
「キノコの精霊様。アレは何が起きてるんですか?」
「何か急に生えてきたでちゅ」
(急にあんなのが生えてくるんですか…この山)
鶸は頭が痛くなりそうになるのであった。
「真面目な話をするとあのキノコお化けの下に何かいるでちゅ。そしてあいつの中にも何かあるでちゅ」
キノコ型スプリガンの体内に何かあり、上半身の下に何かいる。
(ある…と、いる?」
キノコの精霊は「何かいる」と「何かある」と答えた。一文字違うだけでだいぶ意味が異なるのだ。
「お前たちはどうしてまたこの山に来たでちゅか?」
「実は美味しい舞茸を採りに来ました」
「舞茸あるでちゅよ」
「本当ですか?」
「あるでちゅ。なら、アイツを倒したら舞茸の生えている場所を教えてあげるでちゅ」
話は決まった。キノコ型のスプリガンを倒して舞茸を採取するだけである。
「戦闘準備だ。藤太、三蔵ちゃん!!」
「おう」
「任せて!!」
すぐさま戦闘体勢となる。
「鶸さん、蒼さんも大丈夫?」
「え、あ、はい!!」
「まっかせて~」
鶸と蒼も槍を構える。
「行くよ!!」
キノコ型のスプリガン討伐戦開始。
「三蔵ちゃんごめん。スキルの妖惹の紅顔をお願い」
「まっかせて。それと謝んなくていいわよマスター!!」
玄奘三蔵のスキル『妖惹の紅顔』を発動。
キノコ型のスプリガンは玄奘三蔵に狙いを定めた。
「魔術礼装起動。緊急回避を付与!!」
玄奘三蔵のスキルによってキノコ型のスプリガンの狙いは一時的に彼女だけだ。
囮作戦のようなもの。狙いが玄奘三蔵だけにあれば俵藤太と鶸と蒼が堂々と攻撃を放てるのだ。
「藤太、鶸さん 蒼さん!!」
「決めるぞ!!」
「はい!!」
「いっくよー!!」
3人同時攻撃によりキノコ型のスプリガンは穿たれる。
「オオオオオオオォォォォ……」
キノコ型のスプリガンの体躯に3つの穴が空く。これで終わりかと思えば終わりではない。
穴が空いたが塞ぐように新たなキノコが生えてくる。そし体躯はより大きくなっていく。
「再生している?」
「再生というか成長?」
再生力が異様に速い。
「ふむ…奴は大地から魔力を吸い取っているようだな。それが再生力が速い理由だろう」
「オオオオオ…ク…エエ…エ。キ…ノ…コヲ…ク…エ…エ」
巨大な腕を振りかぶって玄奘三蔵を狙う。攻撃を受けたのにキノコ型スプリガンは痛くもかゆくもないのか狙いは変わらない。
「あれ、倒せてないの!?」
回避スキルも付与されている彼女は巨大な腕の振りかぶりを避ける。そして如意棒で撃ち返す。
「あれ、効いて無さそう?」
キノコ型スプリガンはぶよんぶよんしながら体勢を戻す。
普通に攻撃しては倒せない事が分かった。では、どうすれば倒せるのか。
藤丸立香はすぐさま頭をフル回転。相手はキノコ型スプリガン。奴の体内に「何かある」のと下に「何かいる」との事だ。
「そう言えば…」
彼は戦闘をよく観察して指示を出す。それこそマスターの役割の1つだ。
今までの戦いの中で彼の観察眼は成長している。
「何か球のような物があったような」
キノコ型スプリガンに穴を開けた際に何か球のような物が埋め込まれているのが見えた。恐らくキノコの精霊が言う「何かある」だ。
俵藤太が言うには大地から魔力を吸っているという。ならばその球が驚異的な再生力の仕掛けかもしれない。そして地面の下に「何かいる」との事だが。それは掘り起こせば分からない。
藤丸立香は令呪を見る。
「確かキノコは…」
キノコには本体がある。我々が食す部分は子実体と言われており、本体の方を菌糸体と言う。
「藤太。三蔵ちゃんはキノコ型スプリガンの腕を止めて!!」
「分かったぞ」
「行くわよ!!」
俵藤太が矢を放ち、キノコ型スプリガンの右腕を穿つ。玄奘三蔵はキノコ型スプリガンの左腕を如意棒で弾き飛ばす。
「鶸さんと蒼さんは奴の中心より上を穿いて!!」
「任せてください。麗技・渦槍突!!」
「必殺、轟技・満潮槍波ーー!!」
鶸と蒼の必殺技が同時に繰り出され、キノコ型スプリガンの胴体に大きな穴が空く。その際に謎の球を発見し、蒼が見事に回収。
「今だ。来いフェルグス!!」
フェルグス・マック・ロイの影が召喚される。
「令呪を持って命ずる。敵を掘り起こせ!!」
宝具『虹霓剣(カラドボルグ)』。
地形破壊さえ可能とする、高威力と広範囲を誇る対軍宝具。しかし今だけは広範囲の破壊ではなく、キノコ型スプリガンが生えている範囲のみだ。
「いっけぇ!!」
地面を穿ち、破壊する。キノコ型スプリガンの本体を倒し、尚且つ下にいる「何かいる」を地面の中から掘り起こした。
「何あれ!?」
地面から出てきたのはぶよぶよした赤茶色の塊であった。
「あれからも魔力を感じるな…恐らくキノコ型スプリガンの菌糸体があの塊に寄生し、更に謎の球によって魔力を吸い上げていたのであろう」
「それであんなキノコの魔物が成長しちゃったって事なの?」
「かもしれん」
キノコ型スプリガンを倒したら謎の球と赤茶色の塊をドロップ。
「この球は分からないけど…この塊はもしかして肉霊芝じゃないかな?」
「肉霊芝って何なの蒼?」
「嘘かホントか分からないけど、不老不死になれる食べ物だよ。一応…キノコらしいけど」
肉霊芝。別名、太歳とも言う。
「マスターもしや…」
「うん」
藤丸立香は地面から出てきた肉霊芝を触り、語り掛ける。しかし何も反応が無い。
「どうしたの藤丸さん?」
「いや、何でもないよ……もしかして違うのか?」
「よくやったでちゅね。助かったでちゅ」
肉霊芝を確認しているとキノコの精霊がふよふよと近づいてくる。
「いえ、キノコの精霊様の為なら」
「お礼に舞茸が生えている場所を案内するでちゅー」
何はともあれキノコ型スプリガンを倒し、異変は解決した。しかし謎の球と肉霊芝についてはこれからだ。
「キノコの精霊様。この球と肉霊芝を頂いても良いでしょうか?」
「いいでちゅよ」
すんなりと頂けた。この2つは持ち帰って調べる他ない。
「肉霊芝って美味しいのかなー?」
「蒼…それを宴には出せないよ」
不老不死になれるかもしれない食材だが、得体の知れない物を宴に出してはならない。尤も曹操としては舞茸よりも興味を示しそうだが。
「舞茸の群生地に着いたでちゅー」
「おお、見事な舞茸だな」
美味しそうで大きな舞茸がたくさん生えていた。
「いっぱい採っていくでちゅー」
「ありがとうございます」
桃香の依頼である「舞うくらい美味しいキノコ」の採取完了。
「これが食べると舞うくらい美味しいキノコなんだね」
「おや、ワライタケの方が良いでちゅか?」
「キノコの精霊様。そっちは遠慮致します」
ここで蒼のお腹がカワイイ音色と出した。
「あはは、恥ずかしい」
「よし。せっかくだから採りたてを頂くか。キノコ狩りをしている者の特権だ!!」
採りたてを食す。確かに現地でキノコ狩りをしている者の特権だろう。
「カルデアから持ってきた調味料の塩に醤油にバターもあるよ」
「流石だマスター」
舞茸のバター醤油焼きはとても美味しい。焼いている匂いだけで食欲増進だ。
「「「では、いただきます!!」」」
キノコ狩りも良いものだ。
「このキノコも美味しそう。これは何ていうキノコなのキノコの精霊さん?」
「それはスパーッパァでちゅ」
「すぱ…?」
「それ食べたら眠くなりそうなキノコだな」
楽しく焼きキノコを食べるのであったが藤丸立香たちは鶸と蒼の微妙な変化に気付いていた。
(何処か楽しくなさそう…2人とも何かあるのかな?)
実は鶸と蒼には心に迷いがあった。
1085
三国交流宴で必要な食材は舞茸だけではない。もう1つ手に入れたい食材がある。正確には食材というよりも飲み物だ。
それは酒。宴と言ったらやはり酒だろう。ただの酒ではない面白くない。面白い酒となると幻の酒だ。
幻の酒と言われても「うん?」となるはずだ。だから桃香は白蓮と共に文献を読み漁って、ついに見つけたのだ。その幻の酒とは『勝利の美酒』。
酒の神とも言われる儀狄が作った酒だ。
儀狄は夏の禹の時代に初めて酒を造ったとされる伝説上の人物。
儀狄の酒は四字熟語で「儀狄之酒」というのもある。意味は儀狄の酒を飲み、その美味さ酒に溺れて国を滅ぼすものが出ると言う。
美味しい酒を造ったのに国が亡ぶなど儀狄にとっては不名誉しかない。故に彼は美味しいけど国が亡ばない酒を造ったのだ。それが『勝利の美酒』。
勝負事に勝ってから飲む勝利の美酒ではなく、これから勝負事に勝てるようにと飲む酒。どちらかと言えば『勝利への美酒』という言い方かもしれない。
「そんな酒を探すように言われた我ら、お酒が飲み隊だ!!」
「「「おおーー!!」」」
「お酒が飲み隊って…」
お酒が飲み隊のメンバーは星、桔梗、荊軻、蒲公英、翠の5人。
ある文献より儀狄の造った『勝利の酒』はある山のある洞窟内で時長く熟成されているという。5人は『勝利の美酒』を探して、その洞窟内へと足を進める。
「文献によるとこの洞窟内にあるらしいぞ」
「本当にあるのかよ。あっても腐ってないか?」
「「「酒は腐らない」」」
「お、おう」
酒好きの者達からならば酒の神と言われる儀狄が造った酒なら飲みたくないわけがない。
「すんすん…ふむ、酒精の匂いがするな」
「うむ。するな」
「これは良い酒の香りだ」
荊軻、桔梗、星の3人は鼻をヒクつかせ酒の香りを嗅ぎ分ける。
「3人ともすごーい。蒲公英は分からないに」
「何でお前ら分かんだよ」
蒲公英と翠には分からない。
「はあ…」
ため息を吐く翠。そして、そんな彼女を心配する蒲公英。
いつも通りの2人であるが、分かる者には彼女たちのある変化に気付く。
実は2人、心に迷いがあるのだ。それは三国同盟を結んでからである。その迷いには不満や怒りや後悔等々だ。そしてそんな事を思っている自分に嫌な気持ちを抱いている。
(はあ…気分転換で来たってのにアタシは)
(お姉様…)
普段は翠をからかう側の蒲公英だが今だけは心配してしまう。
心に迷いがあるのは翠と蒲公英だけではなく、馬一族全員だ。舞茸狩りに行っている鶸と蒼も心に迷いがある。
(あー…もう。アタシはいつまで悩んでるんだ)
馬一族の中で一番、心に迷いを作っているのは翠だ。
周囲には心配かけないように普段通りにしているが分かる者には分かる。
「翠よ」
「あんだ荊軻?」
「気をつけろ」
「は?」
いきなり気をつけろと言われてポカンとするがすぐに気を張った。
「うわ、何だこいつ!?」
洞窟内を進んでいくと大きな大蛇が待ち構えていた。
「キシャアアアアアアアアアアアア!!」
「さしずめ…勝利の美酒の番人か?」
目の前の大蛇は巴蛇。
中国で伝わる巨大な蛇の怪物だ。
「キシャアアアアアアアアアアアア!!」
「大きくない!?」
「あの蛇は勝利の美酒でも飲んで、あそこまで大きくなったのかもしれんな」
巴蛇から濃厚な酒の匂いがする。
酒と蛇は何かと縁がある。故に目の前の巴蛇が酒を飲んでいたっておかしくない。
「キシャアアアアアアアアアアアア!!」
巴蛇の「大威迫」。相手に己の脅威さを示し、警戒・萎縮させる。
巴蛇の脅威とは巨大さという力。人間なんて一飲み出来るくらい大きい。大きさとは脅威だ。
敵の強大さに慄いて恐怖し、動けなくなる。あとは動けなくなった獲物を丸呑みすれば巴蛇の勝ちである。
「うぐ…こいつ!?」
「しっかり気を持て。喰われるぞ」
パシンッと頬を叩く翠。心に迷いがあれば戦いにも迷いが生まれる。
「大丈夫だ。戦える!!」
「行くぞ」
獲物を丸呑みするために巴蛇は口を大きく開けて襲い掛かる。
「散れ!!」
散開する荊軻と翠たち。
「よし。ここは儂の豪天砲で」
「撃ったら洞窟が崩れる」
「…撃てぬのなら豪天砲で叩くまでよ!!」
桔梗は豪天砲で巴蛇を叩きつける。
「キシャッ!?」
「私らも続くぞ!!」
「うん!!」
星や蒲公英の同時攻撃。相手が巨大だろうが星たちは武器を振るって打ち倒す。
巴蛇からしてみればまさかの反撃だ。今まで己の前に現れた生物は全て餌に過ぎなかったが今回現れた生物は己を危険に晒す存在であった。
すぐさま相手を餌から敵性生物へと切り替える。
「キシャアアアアアアアアアアアア!!」
巴蛇の「凶禍の吐息」。吐き出された吐息はとても酒精が強かった。どちらかと言えば「凶禍の吐息」ではなく「凶酒の吐息」だ。
「うわっ酒クサ!?」
翠は口と鼻をすぐさま塞ぐ。まともに吸えば酩酊感に襲われ、最悪アルコール中毒になってしまう程かもしれない。
酒の吐息でアルコール中毒なんてあり得ないかもしれないが幻想種ともいう蛇の酒の吐息は馬鹿に出来ない。何せ毒も含まれているのだから。
「はれはれ~…翠お姉様が251人いるぅ?」
「それはヤバいぞ蒲公英!?」
「おわっ…紫苑が何故ここに!? 違うぞ。酒を盗み飲みしておらん!?」
「桔梗の奴は幻覚でも見ているのかよ!?」
「華蝶仮面参上!!」
「星は……いつも通りだな。てか、華蝶仮面はお前じゃないだろ」
「あはは、始皇帝をぶっ刺したーーい!!」
「荊軻それ不敬すぎるぞ!?」
翠以外全員が巴蛇の「凶酒の吐息」にやられている。
「凶酒の吐息」は巴蛇の切り札だ。酒の力は脅威であり、生物を狂わす。「儀狄之酒」という四字熟語はまさに現実だ。
「く…まともなのはアタシだけか」
口と鼻を布等で塞ぐが洞窟内に「凶酒の吐息」が充満すれば翠も危険だ。
荊軻達を連れて撤退するか、己の攻撃で仕留めるしかない。
「あはは 翠行くぞーー!!」
「え、荊軻!?」
荊軻が元気よく飛び出す。どうやら荊軻は酔っていても巴蛇を倒す敵としっかり把握している。
「へべれけパワー全開!!」
荊軻の特別スキル「へべれけパワー」。何故か宝具を一瞬で放てるようになる。
「不還匕首(ただ、あやめるのみ)!!」
宝具の匕首を巴蛇の脳天に突き刺した。
「キシャアアアアアアア!?」
切り札を使ったにも関わらず反撃されるとは思わなかった巴蛇。脳天に突き刺された匕首は巴蛇に生命の危機を無理やり知らせた。
「翠ーー!!」
「分かってるって!!」
今度は翠が飛び出す。己の得物である銀閃を力の限り巴蛇に向かって振るった。
「秘技・旋回斬!!」
巨大な巴蛇の首を銀閃で斬り落とした。
「よっしゃあ!!」
酒の番人である巴蛇は討伐された。
「倒したが…星たちの看病をしないとなあ」
『勝利の美酒』を探す前に酔っている蒲公英たちの介抱が先かと思ってすぐに駆け寄る。
「お姉様が151人いる~」
「100人減ったな。少しは良くなっているのか?」
「はっ…紫苑が居ない。幻だったか!?」
「酔いが醒めたか?」
「翠も…華蝶仮面にならないか?」
「まだ酔ってるなコイツ」
大丈夫そうで大丈夫じゃないのかもしれない。
「おい、お前ら。もうすぐで勝利の美酒だぞ」
荊軻が甘言を呟く。
「「「飲むーー!!」」」
「コイツら元気だな」
倒れた巴蛇の後ろには扉があり、開いてみると酒壺がたくさん置いてあった。
「「「「あったーーー!!」」」」
「アタシ以外全員すっげえ酔ってる」
翠もまた酔いそうな状況だ。それほどまでに酒の匂いが強いのだ。
「……ちょっとくらい飲んでも良いか?」
「駄目だろ星」
「こんなにあるのだ。一壺だけでも…」
「それ全部飲んじゃうオチになるだろソレ!!」
たくさんお酒があっても酒豪の者が揃えば全部飲んでしまうオチが見えてしまうのであった。
読んでくださってありがとうございました。
次回の更新は未定。しかし今度は2週間以内を目指します。
1083
宴の為の食材探し。
これなんですが…実は天下統一伝ネタから取ってるのです。
1084
探す食材はキノコ。
実は天下統一伝ネタで、「緊急作戦!宴の料理を確保せよ!」というのがありました。
確か食材を集めるイベントで、キノコだったような気がします。
キノコを舞茸にしたのは、キノコを題材したネタから決めました。
まさかのキノコの精霊様が再登場!!
自分もまた再登場させるとは思わなかったです。
肉霊芝。別名、太歳。
はい…そういう事です。こっちはまたいずれの話になります。
スパーッパァ。
ス〇ークのネタです。
鶸と蒼には心に迷いとは…
1085
酒を集める。「勝利の美酒」なんですがコレも天下統一伝ネタだったりします。
「勝利の宴は盛大に」というイベントがありました。そこからのネタです。
まあ、「勝利の美酒」という言葉だけなんですけど。そこからオリジナルで儀狄という酒の神を参考にオリジナル展開を広げました。儀狄の造った勝利の美酒というのはオリジナルです。
巴蛇
大威迫と凶酒の吐息はFGOのオロチエネミーの技です。
凶酒の吐息はオリジナル
翠と蒲公英の心の迷いとは…
馬一族全員が心に迷いを患ってます。