Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。

FGOではバレンタインイベントが開催真っ最中。
キラキラのキャスターは予想通り小野小町でしたね。
まだお迎えできてない…
バレンタインイベントを楽しんでおります。甘い物語が展開して無糖のコーヒーや渋めのお茶が足りないです。

まだ全てを見終わってませんが水着徐福ちゃんの良かったです。
やっぱり距離が近すぎる悪友みたいだなあ。ぐだ男×徐福も良いと思っている作者です。

ついこの前活躍したビショーネのバレンタインイベントも良かった。
とんでもない新人ですねえ。ほんとにアレはプロポー…。



三国交流宴-三国同盟への不満-

1086

 

 

三国同盟。

五胡を迎え撃つ為に結成された同盟だ。敵が強大すぎる故に力を合わせるのは分かる。敵の敵は味方と言うのであれば魏も呉も味方だ。

 

呉と同盟を組むのは良い。しかし魏と同盟を組むのは心がモヤモヤする。モヤモヤすると言うがはっきり言ってしまえば「嫌だ」という事。

そんな気持ちを抱いているのが翠だ。彼女だけでなく、馬一族全員だ。何故と言われれば魏は、曹操は母の仇であるからだ。

 

曹操が涼州に攻めて来て母である馬騰を死に追いやった。そのような人物と同盟を組むのに抵抗があるのは当然である。

最初は桃香に反対を言おうとした。しかし三国同盟は五胡を迎え撃つ為であり、延いては今後、戦を起こさせない楔でもある。

 

未来の事を考えれば必要な同盟だ。それを自分の我儘で結ばせないのは悪手だ。故に翠は心に迷いを抱いてしまった。何とも言えない気持ち悪い感情が彼女を悩ませる。

曹操と組むのは嫌だ。仇を討ちたい。しかしそんな事をすれば自分が戦いの火種になってしまう。桃香たち仲間を裏切る事になる。

そんな考えに悩む自分が嫌になる。

 

「はぁ…」

 

重い重いため息が吐かれる。このような気持ちは益州攻略戦以来だ。もしくはもっと酷いかもしれない。

 

「何やってんだろあたし」

 

何も起こしていないが自分の悩みがとても重い。心のモヤモヤが気持ち悪い。

 

「三国同盟は必要だって頭では分かってんだ。でもなぁ」

 

頭で分かっていても分かろうとしない自分がいる。

自分はこんな奴だっただろうかと自問自答をするが答えは出ない。

 

「自分自身が嫌になるよ」

 

曹操が嫌いだ。そんな奴と同盟を組んだ桃香も嫌だと思ってしまった。そんな事を思った自分も嫌になる。

 

「最悪な気分だ」

「そういう時は酒を飲むといい」

「おわっ!?」

 

音も気配もなく近づいてきたのは荊軻であった。片手には酒壺を持っている。

 

「こんな昼間から酒は飲まねえよ」

「堅い事言うな。非番だろう?」

 

差し出された酒を一度は拒否したが、結局は受け取って飲んでしまう。

 

「ん…」

 

美味い酒だと思うが素直に美味しいとは言えなかった。

 

「これ宴用の酒じゃねえよな?」

「違うぞ。勝利の美酒は紫苑管理の下、厳重に保管されている。手出しできん」

 

実は荊軻、星、桔梗の3人でちょっとだけちょろまかそうとしたが紫苑の鉄壁な管理で失敗した。失敗したせいで桔梗だけ紫苑に捕縛され、こってりと説教されたの事。

 

「何やってんだよお前ら」

「仕方ないので自前ので我慢するしかない。儀狄の造った酒は宴まで我慢するさ」

 

クイっと酒を飲む荊軻。

 

「悩みがあるなら話を聞いてやるぞ。酒の肴代わりに」

「肴代わりかよ」

 

翠を酒を飲む。

悩みなんて無いと言おうとしたが、結局は悩みを吐いてしまった。

 

「あんたはさ…嫌いな奴と同盟を組みたいか?」

「組みたくないな」

「即答かよ」

 

キッパリと答えた荊軻。

翠としてはなんやかんやで「同盟を組む」と言われると思っていた。

 

「嫌いな奴と仲良くしたいと思わんだろう?」

「そうなんだけどさ」

 

それでも力を合わせないといけない時がある。

 

「……私も今の組織に嫌いな奴はいるぞ」

「そうなのか?」

 

荊軻の言う組織とはカルデアの事だ。翠の見解では藤丸立香を中心に動いている特殊部隊か何かだと思っている。

一癖も二癖もある者たちばかりだが仲良くやっているように見えている。

 

「信頼しあってそうだけど」

「普通に殺したいと思っている奴がいるぞ」

「穏やかじゃねえな」

 

まさかの発言に驚く。

 

「え、誰だよ…?」

「始皇帝」

「不敬すぎんだろ!?」

 

相手が相手でまた驚いてしまう。そもそも始皇帝が今なお存在している事自体が驚きなのに。

 

「これでも何回か暗殺を試みている」

「怖いわ!!」

 

とんでもない奴がいたもんだと驚きが隠せなくなっている。実際のところそれは本当に大丈夫なのか、大問題ではないのか。

 

「まあ、主に普通に止められているがな。そして罰を受ける」

「当たり前だろ」

 

始皇帝を暗殺なんて処刑ものだ。

 

「暗殺しようとすると禁酒させられてしまうのだ」

「罰が軽くねえか!?」

 

始皇帝を殺そうとした罰が禁酒とはあり得ない。

 

「とても重い罰だぞ」

「どういう神経してんだよ」

「話を戻すが私は始皇帝が嫌いだ。主が始皇帝を連れてきた時は一緒に刺すべきかちょっと悩んだくらいだぞ?」

「お、おう…」

 

荊軻は始皇帝に因縁がある。斬っては斬れない因縁だ。

本来であれば同じ組織にいる事はあり得ない。それでも同じ組織に所属しているのは汎人類史を取り戻す為、藤丸立香に力を貸す為だ。

その為に今だけは因縁を置いておく事にしているのだ。

 

「ある目的の為だけに一時的に力を合わしているのさ」

「一時的に…」

 

荊軻達の目的とやらは分からないが翠は今の自分たちの状況だと思った。

 

「嫌いな奴だが力は本物だ。目的の為に力を合わす間柄なのだろうな私と始皇帝は」

「始皇帝の事は嫌いなままなのか?」

「嫌いだぞ。だが一緒にいるせいなのか妙な関係性にはなってるな」

 

始皇帝からしてみれば隙あらば暗殺してくる荊軻は不敬すぎるが、それはそれで楽しんでいるのだ。

暗殺とは重い行為なはずだが始皇帝は荊軻との対決を楽しんでいる。荊軻としては憤慨ものだが始皇帝にとってはじゃれ合いをしている感覚なのだ。

 

「じゃれ合いって…」

「何か苛ついてきたな。今から暗殺しに行くか」

「待て待て!!」

 

本当に暗殺しに行く気配であったので急いで止める翠。

 

「ま、嫌いな奴は嫌いなままでいいのさ。同盟を組んだからといって無理に好きになる必要は無い」

「嫌いなままでいい………」

「ああ」

 

荊軻との話で翠の心の迷いが少しだけ晴れた気がした。

 

「まだ迷いがあるのなら他の人にも話を聞きに行ってみるといい」

「他の人?」

「ここにはいるじゃないか。因縁ある奴らが」

 

 

1087

 

 

白蓮の場合。

 

「私が麗羽をどう思っているかだって?」

 

翠は荊軻と共に白蓮を訪ねていた。

彼女の因縁の相手とは麗羽だ。幽州で太守をしていた頃、麗羽に攻め滅ぼされた過去がある。

そのような過去があるというのに今や彼女は麗羽たちの世話役を任されていたりするのだ。普通は自分の国を滅ぼした奴の世話役なんて嫌に決まっている。

 

「そんなの嫌いに決まってんだろ」

「そうなのか?」

「当たり前だろ。自国を滅ぼした奴なんか好きなもんか」

 

その割には仲が良いように見える。

 

「麗羽の厄介ごとに巻き込まれて振り回されてるだけだよ」

 

ため息を吐く白蓮。真面目で気が優しく素直な性格であり、桃香程では無いがお人好しな部分もある。その為、自国を滅ぼした麗羽たちの世話役としてキチンと面倒を見ているのが証拠だ。

 

(普通はねえよな…)

 

自国を滅ぼした奴の世話役なんて普通は誰もやりたがるはずがない。しかし白蓮は面倒を見ている。

彼女は意外と器が大きいのかもしれない。

 

「白蓮って意外に凄いのな」

「意外ってのは余計だ」

(ただの苦労人でもあるな)

 

荊軻が酒を出す。

 

「何で酒をくれたんだ?」

 

肩にポンっと手を置いてウンウンと頷く荊軻。

 

「何の頷きだよ…」

 

きっと白蓮はこれからも苦労していくのだと予想されるのであった。

 

「嫌なら断ればいいんじゃねえの?」

「そうなんだけど…何故か私がいつの間にか世話役になってたんだよ」

 

気が付けば麗羽たちの世話役になっていた。面倒事を押し付けられたのか、ただ単に案外相性が良かった為に任されたのか。

 

「ムカついた事とかないのか?」

「いっぱいある」

「あんのかよ」

「あるさ。でも…嫌いだけど悪い奴だとは思ってないんだよ」

「なんだそりゃ?」

 

嫌いだけど悪い奴じゃない。矛盾のようで首を傾げる。

 

「何て言ったらいいか難しいな。確かに麗羽はムカつくけど悪い奴じゃないんだよ。だから無視できないっつーか」

 

嫌いと言っているが白蓮は麗羽の事を何処かほっとけないと思っていて、嫌悪まではしていない。一緒に過ごす事でお互いの事を知る事ができ、知らなかった一面を見る事も出来た。

何だかんだで振り回されて面白がっている時もあるのだ。現に今、白蓮が麗羽の事を話しているが怒りや嫌悪感を発していないのだから。

 

「麗羽が蜀に来たせいで妙な関係になっちまったもんだよ」

「妙な関係性か…」

 

白蓮と麗羽の関係性はまるで保護者と問題児のような関係性に思えた。

 

月の場合。

 

「えーっと…麗羽さんの事をどう思っているかですか?」

 

月は麗羽による反董卓連合結成によって漢の再建計画を潰された。場合によっては殺されていたかもしれないのだ。

反董卓連合は麗羽の思惑だけで動いていただけではなく、様々な諸侯たちが独自の思惑で動いていた。月の漢再建計画を潰したのは麗羽だけではないのだが反董卓連合の始まりはやはり麗羽だ。

 

(麗羽の奴って…案外やらかしてんな)

 

案外どころではないかもしれない。

 

「嫌いではありませんよ」

「え、そうなのか。だって月お前は麗羽に…」

「はい。麗羽さんに反董卓連合を結成されてしまいました。ですが、あの戦いは私も悪いのです」

 

月も悪い。それは漢を建て直す為に性急すぎたという事。

漢を建て直す為に国の悪性を無理やり取り払った大粛清が苛烈過ぎたのだ。そのせいで「悪い噂」が流れた。

月が情報統制をしっかりしていれば逆に麗羽を仲間に取り込み、反董卓連合そのものを起こさせなかったかもしれない。そして月自身も大粛清はやり過ぎたと思っている。

それでも無茶をしなければ漢は建て直せなかったと思っている。後悔はあるが、多くの血を流す覚悟は出来ていた。

 

「私がもっとちゃんとしていれば上手くいっていたかもしれません。ですがもう過去の話ですので…あの時は私が悪かった。だから麗羽さんだけでなく、他の人たちも嫌いじゃありませんし、恨んでもいません」

(本当か?)

 

月の言葉が嘘なのではないかと思う翠。しかし月の顔を見ても嘘か本当か判断できない。

漢の再建は本当に目指していた。失敗に終わったが大きな悲壮感も怒りも無い。失敗したけれど自分の選んだ道を突き通したのだ。

燃え尽き症候群のようなもので、やりきった月は敵となっていた麗羽や曹操たちに対して恨み等は薄くなっているのかもしれない。

 

「それに今は麗羽さんたちと何だかんだで仲良くしてますし。反董卓連合の事はもういいんです」

「そっか」

 

月は桃香の下に来てからガラリと漢にいた頃と生活が変わった。それは良い方向へと変わったのだから何も文句は無い。

漢は再建できなかったが桃香の下で最終目標であった大陸の平和への手助けができる。それで月は十分なのだ。

 

(荊軻や白蓮とは違った感じだな)

(月の場合はある意味例外なのかもな。本当は怒ったし、恨んだりもしたはずだ。しかし復讐者にはなれないのだろう)

 

性急すぎた漢再建計画は敵を多く作る事を理解していた。故に月は誰かに討たれる敵と理解していからこそ、恨む・怒るという事は筋違いと思っているのかもしれない。

月は自分の招いた因果応報を飲み込んだのだと翠は思うのであった。

 

麗羽の場合。

 

「華琳さんの事をどう思っているかですって?」

 

麗羽と曹操の相性は最悪らしい。見る人はソレを同族嫌悪ではないかと言うのだ。

お互い会う度に口喧嘩。麗羽から先攻で曹操が後攻。最終的には曹操によって負かされて麗羽が逆キレを起こすというのが一連の流れだ。

最終的に戦争へと発展したのが『官渡の戦い』だ。色々とあったが曹操の勝利で治まった。

 

「そんなのだぁいっっ嫌いに決まってますわ!!」

「お、おう…」

 

大迫力な怒り爆発に圧される翠。

 

「今でも華琳さんをギッタギタのボッコボコにして、あのクルクルお下げをびよんびよんして真っすぐにさせたいですわー!!」

「びよんびよんして真っすぐにって何だよ?」

「面白いなやっぱり麗羽は」

 

荊軻は麗羽の事を面白い人物と思って嫌っていない。寧ろ侠客として豪快な麗羽は好感が持てる。実は燕青も面白いと思っていて好印象である。

 

「同盟を組んだ事をどう思ってるんだ?」

「え、五胡を倒す為に仕方ないのでしょう?」

「そうだけどさ」

「ま、華琳さんは私程ではないですが実力があるのは確かです。だから五胡と戦う時は汗水垂らさせながら戦わせますわ」

(ある意味すげえなこいつ)

 

周囲から見てどう考えても麗羽よりも曹操の方が上なのだが、決して麗羽は自分が上だとしか認めない。

 

「今は同盟を組んでますが、いずれは華琳さんをギッタンギッタンにしてさしあげますわよ」

「いずれって…」

「当然でしょう。官渡の戦いは私があえて華琳さんに勝利を差し上げましたが次はそういきません。次は私が勝ちますわ!!」

 

三国同盟五胡の対策だけではない。未来で戦争を起こさせない楔になるものだ。しかし麗羽は特に今後の事を考えていない。

ただ悔しいから、ムカつくから曹操を倒したいと素直に思っているだけなのだ。とても純粋で本音に素直な麗羽を翠は今だけ羨ましいと思ってしまった。

 

「何だか華琳さんの事を話したらムカついてきましたわね」

「ならこの酒をやろう。良い酒だぞ?」

 

荊軻が酒壺を渡す。

 

「あら、くれるのなら遠慮なくもらいますわ」

 

曹操も麗羽もお互いを嫌っているというが無意識に認め合っているのかもしれない。でなければ、いちいち突っかかる事は無い。

曹操であれば興味無しと即判断して麗羽を無視するはずだ。無視しないで何だかんだで返答しているのは、認めているという裏返しかもしれない。そのような事を本人に言えば即否定するだろうが。

 

『官渡の戦い』で敗北した今でも麗羽は曹操との関係性は変わらない。ある意味、悪友的な間柄かもしれないと思う翠であった。

 

 

1088

 

 

蜀にいる「ある人物と因縁ある人たち」との話を聞いた翠。

彼女たちは自分なりの決着を付けていた。もしくは変わらないままでいる。

ただ聞いているとほぼ「嫌い」とはっきり言っている。一緒にいるから、同じ所属だからと言って好きになる必要は無い。

 

「どうだった?」

「んー…話を聞いて少しは納得は出来たような出来ないような。ただちょっと聞きたかった内容が少し違うというか」

「はっきりせんな」

「悪ぃな。ただちょっと…もっとこう何て言うか、あたしなりの決着の付け方が3人と違うような気がして」

 

麗羽たちから聞いた話からヒントがあったはずだ。自分の心の迷いを撃ち払う方法だがきっとシンプルだ。しかし中々出てこない。

 

「ならもう1人聞いてみるか?」

「他にもいんのか?」

「ああ。うちの主さ」

 

藤丸立香の場合。

 

「オレの話が聞きたい?」

「ああ。あんたは敵だった奴と仲間になって旅してたって聞いた。それをどう思ってたのか聞きたくてさ」

 

翠は荊軻から彼の事を少しだけ聞いていた。

藤丸立香は旅の最中で敵対した者と仲間になって先へ進むという事を繰り返している。その中で藤丸立香は何か思う事は無いのか。

敵対していたという事は殺し合いをしたという事だ。時には敵の苛烈な策に仲間達が殺された過去もあるはずだ。そのような敵と仲間になって心情はどうなのか。

 

「やっぱ思う事はあるよ」

 

藤丸立香は聖人ではない。嫌いだと思う人も普通にいる事もあるだろう。

特異点や異聞帯では敵だった英霊に苦渋を舐めさせられ、裏切られ、殺されかけた事がある。

その後は汎人類史を救う為に新たな力を貸してもらうため英霊召喚を行う事がある。その際に特異点や異聞帯で敵対していた英霊と契約を結ぶ場合があるのだ。

召喚された英霊は特異点や異聞帯で出会った人物とは同じであるが違う場合がある。しかし特殊なケースとして特異点や異聞帯で起きた事を記憶して召喚されるのだ。

 

「最初はオレだって警戒する。心の中で嫌だと思ってしまう。目的の為に力を貸してもらいたいと思っていてもね」

(あたしと同じだ)

「でも…力を合わせる為には歩み寄らないといけない事もあるんだ」

「歩み寄るか」

「主の得意分野だな」

「得意分野のつもりじゃないんだけど…」

 

コミュニケーションを取るのが得意なつもりは無いと否定的な事を言う藤丸立香に荊軻は「嘘付くな。清姫に確かめるぞ」と言う。

 

「相手の事を知るって事かな。相手には相手の望みや理想…誇りがあるんだと分かるんだ」

 

相手には相手の通す筋がある。英雄でも反英雄でも自分の核となる『何か』を持っている。その『何か』とは誇りだったり、復讐だったり、正義だったり、信仰だったりと様々だ。

その己の核となる部分は何があっても折れてはならない。代える事ができないものだ。

 

「知ると…やっぱり意外な面があったりするんだ。だから嫌いだと思っていた人の見方が変わるんだよ」

 

藤丸立香は翠に混乱しないように特異点や異聞帯での話をする。

例えば第三て絶海に沈んでいったのだ。

 

「そんな奴が居たのか」

「うん。嫌いな奴だったけど彼には彼の目的があった。その為に敵対していた。でも仲間になって彼の事を知るとどこか嫌いにはなれなかった」

 

何ならカルデアで召喚し、契約した後は一緒にバカやる仲にまでなっている。

 

「敵対して戦った。今度は仲間として戦った。戦い合う事で互いを知っていったんだ」

「他にもいたりするのかそんな奴らが?」

「結構いるよ」

 

亜種特異点Ⅰでは悪の化身たるジェームズ・モリアーティと一緒に戦って、裏切られた。

全ては彼の掌で転がされていたが、特異な運命の下にまた彼と今度こそ仲間になれた。ジェームズ・モリアーティは悪である事は変わらないが藤丸立香はその悪性に信頼を置いていた。

ジェームズ・モリアーティもまた藤丸立香の善性に信頼を置いている。2人は妙な信頼関係を築いている。

 

「裏切った奴とまた仲間になってんのかよ」

「うん。厳重注意の仲間だけど信頼してるんだよ」

 

悪と善。相容れないようでも絆は結べるのだ。白黒しっかりと決着をつけるべく、彼とは戦った。

 

「…藤丸も器が大きいな」

「そうかな。お人好しって言われるけど」

「確かに主はお人好しすぎるしな」

 

荊軻だけでなく、他の英霊たちも口を揃えてマスターは「お人好し」と認めるはずだ。

 

「他にも敵対していたがとんでもない関係に成った奴らもいるだろう」

「え、そうなのか。誰なんだ藤丸?」

「とんでもない関係って荊軻………」

 

ふと、考える藤丸立香。とんでもない関係になった英霊と聞いて心当たりがありすぎる。

 

「第六異聞帯なんか最たる例だろう」

「まあ…そうだね」

 

第六異聞帯では妖精国の女王であるモルガンと敵対していた。しかし第六異聞帯は様々な思惑が混じり合った場所なのである意味、苛烈な異聞帯であった。

翠に説明するのが難しい異聞帯ではあるが簡略化して説明するのなら反乱軍と王国の戦いのようなものである。

藤丸立香たちが反乱軍に所属し、モルガンが言わずもがな王国軍だ。

 

「お前らそんな戦いにも参加してたのかよ」

「うん」

 

妖精国での事を話しだすと1日では語り切れない。だから簡単に説明する。

 

「反乱軍と王国軍の戦いは反乱軍の戦いで終わったよ」

「藤丸たちが勝ったのか。まあ、勝ってないと今ここに居ないよな」

「まあ、アレは勝ったというか…王国軍の自滅でもあったと思う」

 

妖精国臣下たちに裏切りや暴走。妖精たちの闇の部分が露わになった事で反乱軍は勝利したとも言える。

 

「ま、話を聞くに全ての黒幕がいたそうだが」

 

妖精国を滅ぼした黒幕。永い時間かけて、入念に準備して妖精国を壊滅させた。反乱軍と王国軍の戦いも黒幕の一手であったのだ。

 

「で、何がとんでもない関係になったって繋がるんだよ。その黒幕と仲良くなったってか?」

「まあ、一応その黒幕と仲間にはなったんだけど…そっちとは別の話」

(……聞けば聞く程その かるであ って組織が意味分かんねぇな)

 

普通は敵対した奴らと仲間になる事は無い。それこそ国を滅ぼした者を仲間にするとは考えられない。

そんな事を思ったが身近に麗羽と白蓮の関係や、月と反董卓連合の関係もあった。特殊な例かもしれないが、あり得ない話じゃないと飲み込んだ翠。

 

「えーっと何て言えば良いか…」

「はっきり言うと我が主はその王国軍の女王から夫認定されている」

「ぶっ」

 

噴き出す翠。

反乱軍の者が王国軍の女王と夫婦になるなんてどのような夢物語だと言いたくなる。

 

「どんな関係になってんだよお前は!?」

「気が付いたら?」

 

最初は皮肉を込めてモルガンから「夫」と言われていたが共に過ごし、戦い、絆を深めていく事で本当の意味で「夫」と言われるようになったのだ。

「気が付いたら」と簡単に言っているがそんな事は無い。藤丸立香はモルガンの事を知り、モルガンが藤丸立香の事を知ったからこそ成った関係なのだ。

 

「え、てことはあんた所帯持ちだったのか」

「いや、違うぞ翠」

「え、荊軻。だってお前さっき」

「その女王が勝手に主の事を夫と呼んでいるだけ」

「……よく分からないんだが」

 

世の中分からない事が多い。故に自称母や姉や妹。はたまた家や恋人を名乗る者が現れるものだ。

 

「他にもあったりするのか?」

「まだまだあるよ」

 

中には本当にどの面下げて仲間になってんだという英霊だっている。それでも召喚したのが藤丸立香であり、召喚に応じたのがその英霊たちだ。

 

「………聞いてみたいがもうお腹いっぱいなあたしがいるな」

 

正直に言って藤丸立香たちの話を興味深い。ところどころ理解できない部分もあるがためになる話もある。

 

「翠さんが悩んでいるのは分かってたよ」

「んえ?」

「だって、こういう話を聞きに来たのは三国同盟について…いや、曹操さんの事だね」

「……そんなに分かりやすいかあたし」

「「うん」」

「二人して即答かよ!?」

 

実際のところ翠だけが悩んでいるのではなく、馬一族全員が悩んでいる。

 

「そっかあたしだけじゃなくて蒲公英たちも…」

 

妹たちも悩んでいる事すら気付かないくらいに自分は悩んでいたようだ。

 

「でも…藤丸の話を聞いていたら何となく解決策が分かったんだ」

「それなら良いんだけど」

「ああ。あたしは曹操の事を結局のところ知らない。だから知らないといけないんだ」

 

今の翠にとって曹操はただの母の仇程度しか思っていない。しかし曹操は魏王であり、特別な人間だ。何を思って涼州に攻めて来たのか知らない。

ただ領地拡大とでしか思って攻めて来たとしか翠は思ってなかった。もしかしたら何か思想があったかもしれない。故に翠は曹操の事を知るべきだと思ったのだ。

 

藤丸立香だけでなく、白蓮たちも言っていた。相手を知る事で意外な面が見えたと。

ならば翠は自分なりの方法で曹操を知ろうと思ったのだ。藤丸立香もやっていたという相手を知る方法。きっとその方法が翠には合っている。

 

「あたしはそんな頭が回らないから単純なやり方がいい」

 

嫌いなままでいい。しかし相手の事を知れば何かが変わるかもしれない。そうすれば今の翠の心の迷いが晴れるかもしれない。

 

「それなら一刀に相談してみなよ」

「ご主人様に?」

「一刀も翠の事を心配してたからさ」

「ご主人様にもバレてたんだ」

 

本当に自分は分かりやすいのかと思ってしまって苦笑する。

 

「そうだな。ご主人様に我儘を言ってみるか」

 

翠の我儘。

 

「任せてくれ翠」

「あたしまだ何も言ってねーぞご主人様」

 

この事を北郷一刀に話したところ、彼女は桃香の部屋に案内される。

 

「翠ちゃん…」

「桃香 先に謝っておく。そして聞いて欲しい事があるんだ」

「曹操さんの事だね」

「桃香にもバレてたのかよ」

 

本当に自分は分かりやす過ぎるのかと少しだけショックを受ける。もしかして自分か隠すのが下手のかと。

 

「桃香。翠の話を全部聞いてくれないか?」

「うん、ご主人様。分かってる」

 

北郷一刀と桃香は真剣な顔だ。それは翠の本音を聞くのであれば当然の事である。

 

「桃香。あたしは三国同盟の事…曹操の事を」

 

翠は全てを語った。

曹操が嫌いだという事。理由は母の仇だという事。三国同盟は必要だと分かっていても自分の心の何処かで否定的だという事。

 

「そっか…」

 

全てを聞いた桃香は申し訳ない顔をしていた。

 

「ごめんね。全員の総意を聞かずに三国同盟を進めてしまって」

 

元敵国と同盟を組むのは仲間から反対の意見はあるはずだ。翠だけでなく、他の者たちもいたはずだ。

同盟賛成派が多いが故に三国同盟が成ったが同盟反対の者達のケアを怠っていた桃香に責任があるのだ。

 

「いや、三国同盟は必要だった事だ。正解の行動だよ。これは私の馬鹿な悩みなんだ」

「そんな事ない。翠ちゃんの気持ちは分かるよ」

 

仇の奴と同盟を組むのは当事者からしてみれば良い気持ちではない。

桃香も何処か大丈夫だろうと軽い気持ちがあったのは否定できない。白蓮、月、麗羽等の例から何とかなると思ってしまっていた。

全ては認識の甘さ故に翠たち反対派を悩ませてしまっていた。桃香は翠に謝罪する。

 

「謝らないでくれ」

「後出しになってしまうけど三国交流宴はただ親交を深める宴だけじゃなかったの。同盟反対派の人たちに相手の事を知ってもらう会合でもあるの翠ちゃん」

 

元敵国と言えど相手の事を知らずなままではいけない。知れば相手の見方が変わるかもしれない。少しでも自分と相手の心の溝を埋めれればと思っているのだ。

 

それは桃香が無双の塔で曹操と蓮華と一緒に捕縛されていた時に分かった事だ。捕縛されている間は会話くらいしか出来ない。しかしその会話が相手を知る切っ掛けになったのだ。

捕縛されていたとはいえ、三国の王たちが長い時間一緒に会話を続けた。なれば相手の事が徐々に分かってくる。曹操がどのような事を思って戦いを始めたかも分かってきたのだ。

 

「……翠ちゃん。わたしも曹操さんの事が嫌いだったよ」

「え、そうなのか!?」

「うん。嫉妬からの嫌いだったかな」

 

桃香は曹操が羨ましかった。強く、優しく、才能があり、桃香よりも高みにいた。

それだけの力があるのならもっと良い方法で皆を笑顔に出来る方法が曹操なら出来たのではないかと思ってしまった。しかし曹操の実際のやり方は桃香の思うようなものではなかった。

この考えは勝手すぎるものだ。桃香は曹操のやり方では大陸を平和に出来ないと思ったから戦った。曹操が邪魔だから戦ったのだ。

 

「ごめんね。わたしはこんな考えをしてたんだ。醜いよね」

「……いや、寧ろ桃香の気持ちが知れてより好きになれたよあたしは。桃香も誰かを嫌いになる事があるんだな」

「わたしだって人の子だからね」

 

優しくてお人好しなだけではなかった。桃香も人並みに誰かを嫌いになる人間なのだと知れた。

 

「曹操さんにも曹操さんなりの考えがあった。その考えは分かる所もあったし分からない所もあったよ。でも納得出来たの」

「納得できたのか」

「うん。曹操さんもやっぱり同じ道を歩んでた。嫌いだったけど…今は友達になりたいって思ってるの」

「そっか」

 

相手を知れば見方が変わる。それは誰であっても可能性がある事だ。

翠がすべきことは相手を知る事だ。それで好きになるか、嫌いなままかが決まる。心の迷いを消す答えが出るのだ。

一瞬だけ考え込んで彼女は己の主に真剣な眼差しで見つめた。

 

「桃香…いや、我が主 劉玄徳様。この馬超の我儘を聞いていただきたい」

「この劉玄徳。我が臣下 馬超の我儘を聞き届ける」

 

三国交流宴が開催される。




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新は…未定だけど2月中にはなんとか更新したいです。
一応次回で『三国交流宴編』は終わらせるつもりです。


1086
翠の悩み。
それは三国同盟の反対。曹操の事が嫌い。母の仇だという事。
これは原作の魏ルートで強く出ていた気がします。
今回の話はソコにスポットを当てた話になります。

荊軻が翠の相談に乗ります。
彼女はある意味、人生経験が豊富すぎますからね。良い相談をしてくれるでしょう。

荊軻と始皇帝の話。
公式でももっと出して欲しい。でも2部3章でとても活躍したし、扱いが難しそうだなあ。

1087
恋姫の蜀って冷静に見ると因縁がある人たちばかりだなって思います。
それで仲良くなっているのだから凄いよ。
自分なりの解釈も挟んでますけど、白蓮や麗羽、曹操たちは相手を嫌いだと言っていても本音は認めている感じだと思ってます。

月の場合はちょっと特殊だと思ってます。彼女は性格から自分が悪いと思ってそうです。


1088
システム・ゲーム的な事は置いておいて…
藤丸立香も特異点や異聞帯で敵対していた英霊たちと契約し、絆を結んでいるのだから凄い。これがコミュ力EXの力か!!
翠だけでなく、他の人も聞けば普通に驚きますよね。

そして「相手の事を知れば見方が変わる」。これは本当にそうですよね。

イアソンなんか1部3章ではムカつくヤツだったのに2部5章前半ではメッチャ良いキャラでした。まさに評価が一気に変わった瞬間でした。

ジェームズ・モリアーティも当時は裏切り者キャラだったのですが、今では藤丸立香にとってのアーチャーと言っても良いくらい信頼されるキャラになってますね。
互いに相手の悪と善を信頼し合っているのが良い。

モルガンとの関係も良いです。
物語では敵対していたのに、絆を深めるともう…
バレンタインイベントでは数多のマスターが堕ちたのではないだろうか。
藤丸立香とモルガンの絡みが公式でもっと欲しいです。

妖精国の黒幕…オベロンとも関係も良いですよね。
他の英霊とは無い関係だと思ってます。アルキャスも入れての躍動トリオが素晴らしい。

「どの面下げて仲間になってんだ」の筆頭格である蘆屋道満。
此方もカルデアでは他の英霊とはない関係になっていると思ってます。

桃香が曹操に思っている本音。
これは魏ルート最終あたりで分かる事ですね。
彼女だって誰かを嫌いになったり、邪魔だと思う。だって人の子ですから。
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