Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
恋姫革命の最終章の『劉旗の大望』の公式サイトが開かれましたね。
発売予定は7月26日予定みたいです。気になるな~


新たな孫呉の者たち

127

 

 

釣りをしている炎蓮と荊軻。特にやることがないので釣りをしているのだ。

最初は炎蓮が1人で釣りをしていたところに荊軻が通って声を掛けられたというところから始まったのだ。

 

「こんな池で大鯉が釣れると?」

「ああこの池の主だ。七尺はあるぜ…前に見た事があるからな。絶対に釣ってみせるぜ」

 

糸を垂らして静かに待つ。大鯉は警戒心が高いからちょっとの音でも逃げられるらしいのだ。

酒を嗜みつつ、釣り糸を静かに待つ。そんな一時も悪くはないだろう。

 

「ツマミもあった方が良かったな」

「フフッ、なら今からでも取ってくればいい」

「オレはこの垂らした釣り糸を見てるので忙しい…お?」

 

釣り糸に反応が来る。大鯉かどうか分からないが魚が釣餌に掛かったのは間違いない。

 

「…今だ」

 

釣り糸を上げようとしたが逃げられる。

 

「ああ、バラした!?」

「少し早かったようだな」

「ちっ…」

 

また釣り糸を池に垂らす。

魚を釣るのは忍耐も必要だ。だがただ我慢するのではなく魚が掛かる待つ時も楽しむことの1つにするべきである。

 

「お前らはいつまでここにいるんだ?」

「何だ藪から棒に?」

「てめえら天の御遣いと護衛は于吉とかいう道士を捕まえたらここから去るのか?」

 

藤丸立香たちがこの呉の地に天の御遣いとして降り立った事になって、その後は孫呉の一員になったことになっている。

今の荊軻たちは孫呉の一員として戦っているが、このまま孫呉に永住するつもりは無い。そもそも永住はできない。

炎蓮は彼らがずっとここに居るわけではないというのを勘づいていた。

 

「お前らの目的は于吉を捕まえて大陸の混乱を正すことなんだろう。なら捕まえた後はどうするかって話になるだろーが」

「そうさな…恐らく于吉を捕まえることか、もしくは奴の策を打ち破る事。それが私たちの役目だ。それが終えれば確かに去るかもな」

 

最初に過去の呉に来た理由は孫呉が滅んだという理由だ。貂蝉によって頼まれ、間違った歴史を正すために過去に跳んだのである。

それが解決したら荊軻たちは元の時代に戻るか、元の世界に戻るかだ。

 

「そうか…」

「急にどうしてそう思った?」

「今さっき思ったからだ」

「今さっき?」

「ああ。ふと思ったんだよ…お前らの役目を終えた後ってどうなるかなってな。終わったらそのまま呉に永住するか、天に戻るかとな」

 

荊軻たちは孫呉の一員と、そういう認識が徐々に広まっている。まだ長くこの建業にいればそのうち荊軻たちがずっと住んでいるのが当たり前と思われるかもしれない。

だが炎蓮は違った。荊軻たちが『天の国』という別の国の人間と認識している。そんな存在が天の下にある大地に永遠といるのかと思ったのだ。

 

「天の国の人間が、その下の大地にいるもんか?」

「我らは天上人ではないぞ」

「なら天下人か?」

「天下人でもないさ」

 

荊軻たちは炎蓮たちが思うような存在ではない。

 

「ふむ、立香とも話したが…天の国の人間は特別ってわけではないのだな。オレらと同じっぽいな」

「同じ人間だよ。ただ生きた場所…生き様が違うだけさ」

「そうか。ますます親しみが持てそうだ」

 

軽く笑う炎蓮。元々、藤丸立香たちに『天』という言葉が合うような神聖さは感じないが不思議な人間さは感じた。

まるで生きた世界が違うようにだ。だが、同じ人間であることは変わら無さそうである。

 

「だが、お前らが役目を終えて戻るかもしれねえなら立香にはさっさと孫呉に血を入れてもらわねえとな」

「ははは。それは我が主とそちら側次第だろう」

「そうなんだよなぁ。さっさとヤればいいものの…あいつらを見るに仲は徐々に縮まっているのは分かる。なのに何でヤらねえんだ?」

 

ため息を吐く炎蓮。これは本気で言っているからこそのため息である。

 

「孫呉を盤石にするために天の御遣いの…天の血を入れると言うがよく決めたものだな」

「まあな。だが天の人間なら誰でも良いってわけじゃねえさ」

「ほう?」

「そりゃそうだろ。婚姻を結ぶとしても子作りにしても女も男も…人にもよるがやっぱりある程度上限を超えなきゃダメだ」

 

誰だって人の好みというものがある。炎蓮も藤丸立香を見てまず容姿を確認。次に会話をしてどのような人間かを確認。

藤丸立香をある程度どんな人間かを確認したからこそ、孫呉の人間に血を入れることを良しとしたのだ。後は彼ら次第の問題である。

 

「ほお。最初の出会いでそこまで確認してたか」

「ああ。立香が下種な奴だったらあんな事を言うわけないだろ」

「そうだな。だがうちの主はそんな奴では無いだろう?」

「ああ。一緒に会話し、過ごし、戦い。そうすればあいつがどんな人間かより分かるってもんだ」

 

あの時の藤丸立香への種馬発言も勢いだけではなかった。彼をよく見て、考え、判断した。

『天の御遣い』というものをどう上手く取り込んで、孫呉をより高みへと昇華されるか考えていた。彼女はあの場にいた誰よりも考えていたのだ。

 

(孫呉の礎を造った人物か)

 

彼女は豪快に見えて誰よりも考えている人間なのだ。

 

「お、きたきた。静かにしてろよ荊軻」

 

また釣り糸に反応が来る。

 

「炎蓮様。何をしておいでか?」

「あ!?」

 

また大物を逃がす。

 

「逃がしたではないか婆!!」

「まだ傷も癒えておられぬというのに釣りとは…大人しく屋敷で養生してくださらんか」

「説教はよせ。だからおとなしく池の小魚と戯れているだろうが」

(七尺の大鯉と格闘する気ではなかったか?)

「荊軻殿までおったか」

「ああ。炎蓮殿の愚痴相手さ」

「ふむ。そうであったか」

「はあ、暇だ。遠乗りでもしたいものだ」

「何をたわけたことを、遠乗りなど以っての外じゃ!!」

「うるさいうるさい。魚が逃げるだろうが!!」

「うるさくさせておるのは何方か!!」

「ったく、やかましいぞババァ!!」

「ババアとはなんじゃ。この小童!!」

 

喧嘩するほど仲が良い。

そもそも雷火が炎蓮を小童呼ばわりなら彼女の歳は一体幾つなのか気になる所である。

 

「ジッとしていられぬ炎蓮様は子供か!!」

「うるさいわ」

「しばらくは養生してもらいますからな」

「ったく、分かった分かった」

 

荊軻たちは知らないが、黄巾党の乱で負った傷は相当な深手だったらしい。

幸い命に係わる傷ではないが、これでも彼女はまだ十分に動けないという。ならば完全な彼女はどれほどのものかも気になってしまう。

 

「お、来たか!!」

 

またも釣り糸に反応がくる。

竿先がピクピクと反応している。今度こそ逃がさないように集中する炎蓮。空気を読んだのか雷火も静かにしている。

 

「よし!!」

「あ~っ、やっと見つけましたぁ~」

 

逃げる大物。

 

「ぬぁっ!?」

「日頃の行いじゃな。やはり天は見ておられる」

「ぬううう」

「も~、お探ししましたよ炎蓮様ぁ」

「うるぁあああ!!」

「ひああ、どうして怒鳴るんですか!?」

「穏に当たるな」

 

理不尽が穏を襲う。タイミングが悪いとしか言えない。

 

「くそっ。この池の主を釣ったら今度は長江の主を釣る気だったのに…」

「長江の主?」

「ああ、最近噂になってる長江の主だ。その大きさは七尺以上…もっともっとあるらしいぞ?」

「ただの噂すぎんのじゃ。ワシは二十尺以上あると聞いたぞ」

 

二十尺以上となると約6メートル以上はある。それは大きすぎだ。もしくはそれ以上の可能性もある。

もしかしたら長江の主の正体が鯨かもしれないと荊軻は予想してしまう。船が渡れるほどの大きい河川なら何かの間違いで鯨が入ってきてもおかしくはない。

間違って海から河川に鯨やイルカが入ってくる例は少なからずあるのだ。

 

「釣る気満々だったんだがな」

「養生せよと言っておりまする」

 

雷火なら炎蓮を長江へと釣りに行かせるはずがない。

 

「たく、もう釣りなんぞやめだ…して如何した。何か知らせでも参ったのか?」

「あ、はい~。先ほど知らせで近々、仲謀さまがお戻りになるそうですよ~」

「ほう」

 

炎蓮の顔が明るくなる。

 

「仲謀…炎蓮の娘か」

「ああ、そうだぜ。色々と土産話を聞かせてもらうか」

 

孫権。炎蓮の娘で次女にあたる。

また新たな孫呉の者が現れるのであった。

 

 

128

 

 

孫権と孫尚香に周泰が駐屯先から建業に帰還したという知らせが入った。

これにより炎蓮は雪蓮たちを集めて彼女たちを出迎えた。

 

「母上、ただいま戻りました!!」

「良く戻った仲謀。長らくの役目、ご苦労であった」

「本当に久しぶりよね。尚香に幼平も元気にしてた?」

「うん。姉様!!」

「はい、達者に暮らしてました!!」

 

孫権に孫尚香、周泰。やはり予想していた通り全員が女性であった。もうこの外史の武将が全員女性でも違和感を覚えなくなった今日この頃。

彼女たちを見ていると孫尚香と目が合う。

 

「へー…姉様、見て見て」

 

孫尚香が孫権の裾を引っ張って藤丸立香たちを見るように促していた。

 

「何よ尚香?」

「ほら、見てってば。あのコがきっとそうだよ。天の御遣い。周りにいるのが護衛だと思う」

「尚香、謁見の間では私語を慎みなさい」

「もーう」

 

孫尚香と周泰は藤丸立香たちに興味が出たようであるが孫権はそうでもないようだ。こちら側を見向きもしない。

雪蓮からはとても真面目な女性とチラっと聞いたが、なるほどっと納得できそうである。

気真面目そうな空気感は炎蓮や雪蓮たちとは違う。姉妹であるが彼女だけは何か違うものを持っているような感じである。

 

「立香ったら品定めは後にしてね」

「してません」

 

雪蓮のからかい言葉を否定。今は評定中。

 

「母上、まずは丹陽群の統一、心よりお喜び申し上げます」

「おう」

「また、豫洲の黄巾討伐における鬼神の如き活躍ぶり…この仲謀もその報に心沸き立つ思いでした。ともに戦えず無念でございます」

「はっは、お前はまだ若い。これからいくらでも手柄を立てる機会はあろう」

「ハッ。それで、その…豫洲での戦ですが、お怪我をされたと聞きましたが」

「見ての通りよ、大事ない。して、盧江の様子は如何だ?」

「はい。黄巾の乱終息の後、民たちは落ち着いています。ただ…気になるのはやはり江賊の動きです」

 

江賊。この言葉を聞いて藤丸立香は首を傾ける。

それに気づいたのか燕青が小さな声で教えてくれる。

 

「江賊ってのは簡単に言うと海賊みてえなもんだ。場所が海じゃなくて大きな川だがな」

 

長江の流れに沿って生きる呉の者たちにとって江賊は対決を避けては通れぬ相手。

話によると長江下流の江賊の多くは炎蓮に従っているが中流から上になるとまだ独立している勢力が多いとのこと。

 

「母上がこの揚州を制した後は当然、荊州方面への進出もお考えでしょう。今からその時に備え、慮江の江賊を早急に討伐すべきかと」

「ああ、やるならさっさと潰すか…よし、者ども戦だ!!」

 

炎蓮が玉座から立ち上がる。

 

「え、ですが母様は…」

「お待ちくだされ炎蓮様!!」

「そんな、駄目ですよ~」

 

雷火と穏に静止の声が挙げられる。

 

「ああ?」

「まったく、血の気の多い殿じゃ。お諫めしたばかりだというのに」

「何があっても母様には出陣させないわよ。絶対に建業で大人しくしていてもらうからね!!」

 

今度は雪蓮が強い言葉で炎蓮を止める。

 

「案ずるな、傷などとっくに」

「駄目。許さない!!」

 

何が何でも炎蓮に建業で留守番してろと言い放つ雪蓮。

それは玉座の前に仁王立ちし、断固とした態度で自分の母親を諫める。

その彼女さに「しょうがない」と言う感じに玉座に座り直す炎蓮。

 

「しょうがねえな。ったく分かったよ」

 

これには孫権も一安心したため息が出た。

 

「仲謀」

「あ、はい!!」

「此度の江賊討伐はあなたに命じるわ。皖城に長く居て、慮江の江賊の動きはあなたが一番よく把握できているはず」

「はい。お任せください!!」

「やれやれ、ついに党首の座から、オレを追い落とすつもりか。年寄りは黙って屋敷に引っ込んでろってか?」

「そういうこと。母様はのんびり釣りでも楽しんで」

「応、そうするか。雷火、貴様も参れ。今日こそ池の主を釣り上げるぞ!!」

「御意」

 

炎蓮は一瞬だけ笑って評定の途中だが出ていく。雪蓮の跡取りとしての自覚が出てきたのに嬉しかったのかもしれない。そして雷火は炎蓮が大人しく養生してくれたのに一安心だ。

そして勝手な行動をしないように見張るためについていったに違いない。

 

「相変わらずでしょ」

「あ、ええ。でもお元気そうで良かった。お怪我をされたと聞いた時は本当に心配で…夜も眠れなかったんです。すぐに建業へ戻りたかったけどお母さまからの遣いがどうしてもだめだと言うから…」

「ふふ、ま、あの人には傷がちゃんと治るまでゆっくりしてもらいましょう。私たち姉妹で母様の代わりを務めるわよ」

「はい、励みます!!」

「尚香もいいわね?」

「はーい。伯符姉様!!」

「では、出陣の日取り、軍の編成などはおって指示するわ。あなたちも長旅で疲れたでしょう。今日はもう休みなさい」

 

このように今日の評定は終了した。

小軍隊はそれぞれに自分隊の役目へと戻っていくのであった。

 

「あー、ほんと久しぶり。幼平、街へ遊びに行かない?」

「はい、行きましょう!!」

「姉様も一緒に行く?」

「私はいい。少し用事がある」

 

そう言って孫権は孫尚香たちを見送った後に藤丸立香たちの方を振り向く。

その顔を険しくしながら歩いてくる。

 

「私は孫家の次女。姓は孫、名は権、字は仲謀だ」

「初めまして。藤丸立香です。こっちは順に荊軻、李書文、燕青ね」

 

自分の自己紹介をし、控えていた荊軻たちも自己紹介をしていく。

 

「知っている。天の御遣いと言われている男とその護衛たちだな?」

「そういう事になってるね」

「…胡散臭いわね」

「え?」

 

まさかの言葉に少しドキリとする。確かに天の御遣いではないのだからしょうがないのかもしれないが。

 

「ふん。どこの人間か知らないが、孫家に取り入っていったい何を企んでいる?」

「ええ?」

「邪な考えを抱いているのなら切り捨てられないうちにさっさと立ち去りなさい」

「……」

 

友好的な挨拶ではない。どこからどうみても敵視している。

これには藤丸立香も焦る。燕青は小さく「言うねえ」と呟く。

 

「なんだ?」

「いや、こんなこと言われるとは思わなくて…」

 

まさかの初顔合わせは悪い印象から始まった。

 

「ううむ」

「あ、仲謀と立香が話してるじゃない。どう、上手くいきそうかな祭?」

「いやぁ、かなり危ういな」

「え」

 

祭の言う通りよく見ると良い雰囲気ではない。

 

「こんなことを言われると思わなかっただと?」

 

孫権の目が鋭くなる。

 

「それは私にお前の考えが見透かされたからか?」

「いや、そういうわけじゃ」

「ふん、どうだか」

 

孫権の冷たい目が藤丸立香を見抜く。

疑い、信用しない、敵。そういうものを混ぜた冷たい目である。

このように会った瞬間から敵認定されるのは初めてではない。だがやはりそのような目で見られると良い気分ではない。

 

「早く私の前から消えーー」

「はあーい仲謀。どうしたの?」

 

ガバリと雪蓮が孫権に急に抱き着く。

 

「ね、姉様!?」

「ちょっとこっちに来ましょうねー」

 

孫権が雪蓮に引っ張られてった。

 

「言われたな立香」

「言われましたね」

 

藤丸立香の方には祭が来てくれてフォローしてくれる。

彼女がここまで藤丸立香に冷たい態度をとったのは理由がある。

それはやはり彼が彼女にとって全く訳も分からない人間であるからだ。自分の家族の輪に知らない男がいつの間にかに入っていれば誰だって不安がるものだ。

一人暮らしの者が久しぶりに実家へと帰ってきたら知らない人が家族の輪に入っていた。そう考えると孫権の気持ちは当たり前である。

更に冥琳から聞くと孫権は高貴な者の心得を実践していると言う。

『素性の知れない者を近づけさせない。甘言を弄する人間を近づけさせない。金玉に執着しない。』

この心得を実践していれば訳の分からない藤丸立香を不審な目で見るのは当たり前だ。

 

「まー…しょうがないな。こればかりは孫権に信用してもらうしかないだろぉ」

「そうさな。誰だって初対面で信頼を得ることは不可能だ」

 

燕青たちも「しょうがない」と言うしかなかった。

藤丸立香もこればかり仕方ないと思う。彼女の気持ちになってみれば確かに納得できる。

チラリと孫権の方を見ると雪蓮と話終わったのか玉座の間を出て行った。そして雪蓮が代わりに来てくれた。

 

「立香ごめんなさいね。仲謀が失礼な事言ったみたいで」

「いや、こればかりは仕方ないよ。逆の立場だったら俺もそうしたと思う」

 

少し違うかもしれないが、もしも長期のレイシフトから帰ってきてマシュが知らない男と親しくしてたら藤丸立香やランスロットは絶対に良い気持ちは抱かない。

もし、そんな事があったら藤丸立香は何をするか、何を思うか分かったものではない。ランスロットだってそうだ。

 

「いきなり他人を最初から信用できんさ。それに今の時代も考えみるとな。彼女の立場的にもな」

「そうだよね李師匠」

 

この藤丸立香と孫権の衝突はどちらが悪いというわけではない。こればかりはしょうがないと言うしかない。

どちらの気持ちもくみ取れば誰だって分かる衝突である。

孫権との初顔合わせは悪い結果であった。

 

 

129

 

 

現在の揚州にて。

 

「そうか、これから揚州の建業に向かうのか。だが俺は行けない」

「んま、何で華佗ちゃん!?」

「ぬうう、儂も華佗と離れたくない!!」

 

華佗の言葉に貂蝉と卑弥呼がショックを受けた。

 

「ほれ、さっさと行くぞ筋肉達磨」

 

どうでもいいと言わんばかりに武則天はトコトコと彼らの横を歩いて過ぎた。

 

「悪いな。俺はあの女性の看病をしなくてはいけないんだ。治療が終わったとはいえ、そのまま放置することはできないからな」

「当然 治療終わってもまだ 次看病」

「哪吒の言う通りだ。太平妖術の書があるのなら俺も行きたいが…医者としてはあの女性を診なければならない」

 

自分の使命があるのは分かっているが医者として患者を放り出すことは出来ない。彼女に何かあったら助けられるのは今の段階だと華佗しかいない。

 

「申し訳ないがそっちは任せてはもらっていいか貂蝉、卑弥呼?」

 

華佗は動けない。ならば貂蝉たちに頼むしかなかった。

 

「貂蝉たちが頼りだ。頼む」

「華佗ちゃん!!」

「華佗!!」

 

華佗に任せられた気持ちが嬉しいのか貂蝉と卑弥呼はヤル気がモリモリ出てきた。

筋肉もモリモリしている。

 

「任せて華佗ちゃあん!!」

「ダーリンのためなら火の中水の中…溶岩の中まで!!」

「いや、溶岩の中は…泳ぐ奴はいるか」

 

実際に溶岩の中を泳ぐ奴らがいるのを思い出した俵藤太であった。

 

「あ、それと天和たちも置いて行ってほしい」

「ま、浮気!?」

「助手として彼女たちの力が欲しいんだ」

「何だ浮気じゃなくて助手ね」

「ホっとしたぞい」

「何の話だ?」

「「こっちの話」」

 

華佗と天和たちは助けた女性の看病のためにお留守番が決定した。

今回ばかりは彼らは行動できない。華佗には軍医として孫尚香たちと行動してもらいたいが無理のようである。

これには孫尚香たちにとっては残念としか言いようがない。華佗の噂は孫呉にも届いていたのだ。

 

「そっか…。でも華佗って結構イイ男ね」

「あげんぞ孫尚香!!」

「そんな厳つい顔で睨まなくても取らないわよ卑弥呼」

 

華佗たちとは惜しまれながらも分かれて貂蝉たちは揚州の建業へと出発した。

 

「さあ、急いで建業へ行くわよ!!」

「小蓮様。そんなに急いだら隊列が崩れますよ~」

 

昨夜は十分に休息を取ったおかげで孫呉の者たちは多少は元気を取り戻している。心の中では急がなくてはと思っているが移動できる速度は決まっている。

逆に焦って移動してバテても意味は無い。確実に揚州の建業に向かわなければならないのだ。

 

「周囲の警戒は怠るな。いつ黄祖の追手があるか分からないからな」

 

建業に近づくということは黄祖の軍。兵馬妖がいつ現れてもおかしくないということだ。

 

「敵の戦力は把握出来ているか?」

「いえ、出来てません~」

 

諸葛孔明と陸遜は軍師同士で黄祖の戦力について話し合っていた。

 

「前までの黄祖軍なら把握してましたが兵馬妖とやらが加わった後は分かりません~」

「そうか。その辺りは此方でも調べねばならないか」

 

黄祖軍に加わった于吉の力。それがどれほどのものかは分からない。

だが一国を落とせるというのは確実である。

 

(于吉の力はまだ未知数だ。どういう力を持っているか分からんからな)

 

元の黄祖軍の戦力は陸遜から説明は受けた。後は于吉の力だけである。

今分かっているのは太平妖術の書と兵馬妖だ。太平妖術の書も正直まだ分からない所もある。

特に于吉の力は分からない。後ろで孫尚香と乙女トークしている貂蝉並みに分からない。

 

(于吉は張譲に力を与えて悪龍へと変化させた程だ。どういう類か分かったものではない)

 

今の削れた孫呉の戦力ではまともに黄祖軍と戦っても勝てない。戦い方にも考えなければならないだろう。

 

(それは孫呉の仲間が集まってからだな。そもそも建業自体が無事とは限らないからな)

 

やる事、考える事は多い。今回は洛陽で起きた時よりも大変になる。

 

「ねえ、程普さん」

「何かしら三蔵さん?」

「程普さんってもしかして太平道での戦いに参加してた人?」

「そうよ。どうしたの?」

「いや、その戦いで変な話を聞いたのよ。化け物が儀式で呼ばれたってね」

 

玄奘三蔵の話で程普はため息を吐く。あまり思い出したくないといった感じである。

 

「戦いに良し悪しがあるとして…太平道の戦いは良いものではなかったわ」

 

ゲンナリしている程普。それを見て玄奘三蔵も「あちゃあ」って口を滑らした。

 

「化け物は確かに出てきたわ。大賢良師は張角を蘇らしたかったみたいだけど…出てきたのは別物よ」

「どんな化け物だったの?」

「どんなか…口で言うのは難しいわね。呼ばれた化け物も完全な姿で現れたわけじゃなのよね」

「不完全な姿で召喚されたってこと?」

「ええ。出てきたのはまるで肉塊の腕のような奴だったし」

 

その戦いは苛烈を極めた。戦ならいくらでもやってきたが化け物退治はその時が初めてあったのだ。

 

「ま、何とかなったけどね」

 

化け物退治に感じては完全に召喚されていなかったのが幸いした。儀式を途中で中断させれば召喚されかけていた化け物は消えたのだ。

 

「その化け物は太平妖術の書で呼ばれたみたいなんだよね」

「太平妖術の書で?」

 

ここでも太平妖術の書がやはり絡んでくる。

太平妖術の書は妖術書。様々な力が備わっている妖術書ならば化け物を呼ぶ力があってもおかしくはない。

 

「何とかなったのは私たちと天の御遣いたちが力を合わせた結果ね」

(マスターたちのことね)

 

程普たちが言う天の御遣いとは藤丸立香たちの事だ。

既に諸葛孔明から説明を受けている。過去修正のために孫呉の者たちと接触しているのは良いのだがまさかの役目とか色々と説教したい気持ちが出てくるが今は抑えている玄奘三蔵である。

 

「その天の御遣いはどこ?」

「天の御遣いは役目を終えたのか帰ったわ。全く…何で帰っちゃうのよ」

(帰った…もしかしてもうこっちに戻ってきたのかしら?)

 

玄奘三蔵は程普から天の御遣いとなったマスターの事を聞くのであった。そんな様子を俵藤太は見ている。

正確には程普の足を見ているのだ。勿論、変な目で見ているわけではない。

 

「どうしたの藤太ちゃんったら程普ちゃんの足をジロジロ見ちゃってえ。もしかしてムラムラしちゃったぁん?」

「いや、そうではない。良い女であるのは否定しないがな。気になったのは彼女の片足だ」

「片足?」

「うむ。最初に出会った時は彼女の片足は義足だった」

「むむ?」

 

俵藤太が程普と会った時は義足であったのだ。それは彼自身がしっかりと見ていた。

だが今は義足ではなく、ちゃんとした足があるのだ。それが俵藤太が気になる部分で程普の足を見ていた。

 

「義足だったはずがいつの間にかアタシに負けないくらいの美脚になっていたと」

 

貂蝉の足を見て「美脚?」と俵藤太が疑問の目を向ける。

 

「それは過去修正の影響でしょうね」

「ふむ。マスターが絡んだ事によって変化したのか」

「でしょうね」

 

藤丸立香たちが過去に行かなくとも太平道による騒動は起きていた。その事件は藤丸立香たちがいなくとも鎮める事が出来たのだが、結果だけが少しだけ違う。

それが程普の義足だったのだ。藤丸立香たちがいなくとも太平道を鎮められたが程普の片足を失った。それが過去修正を行う前の呉だ。

だが藤丸立香たちによって過去が少しだけ変わったのだ。ほんの少しの変化である。

 

(次元接触現象が起きたのね…上書きがされた。大きな変化ではないけど…でも呉の運命を少しづつ変えてるわね。やるわね立香ちゃん!!)

 

呉の運命は少しづつ変化している。




読んでくれてありがとうございました。
次回の更新は2週間後予定です。もし早く更新できそうならば1週間後ですかね。


今回はついに孫権たちが登場しました!!
藤丸立香との初接触は、まあ悪い結果でした。ここは北郷一刀と一緒ですね。
誰だって自分が実家に帰ってきたら知らない男が家族と仲良くなってた…なんて事になってらそりゃあいきなり受け止めることは難しいでしょうね。そもそも孫権の立場もありますからね。
ここから立香たちはどう信用してもらうかって話になります。

ですが次回は過去サイドではなく現在サイドに戻ります。

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