Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
なんとか3月中に『雛プリンセス杯編』を完結できました。
エピローグ的なものなのでちょい短め?です。
でも…完結出来た事でもう3月も終わりかぁと思う作者です。
4月なって何だかんだすぐにFGO奏章Ⅳが配信となりそうです。
あと一ヵ月。長いようで短いかもですね。
1105
雛プリンセス杯。最上段の番人である貂蝉と卑弥呼を倒し、試練を突破。
あとはゴールまで走り切るだけとなる。現在は武則天、藤丸立香、北郷一刀の3人が残っていた。
「さあ、最後の試練が突破されました。優勝がまもなく決まろうとしています!!」
実況の陳琳が挑戦者たちに発破をかける。
ゴールは目の前だ。最後まで走り抜けと言っている。
藤丸立香たちがゴールすれば小蓮チームの勝利。北郷一刀がゴールすれば鈴々チームの勝利である。
季衣と香風は動けず、脱落。季衣チームは残念ながら脱落してしまったので蜀と呉の勝負となった。
(鈴々は動けなさそうだ)
北郷一刀は動けない鈴々の様子を見て駆け出す。蜀の代表として最後まで勝負は捨てないという心持ちだ。
「この勝負。諦めるか!!」
「こっちだって負けるか!!」
藤丸立香も駆け出す。
「男同士の駆けっこ勝負だ!!」
「望むところ!!」
お互いに身体は鍛えており、脚の速さは自信がある。
「「うおおおおおおおお!!」」
掛け声を出しながら全力疾走。しかしこの勝負は男同士の勝負ではなく、チーム戦というのを忘れてはいけない。
「酷使よ」
「「「アイアイサー」」」
「うえ?」
北郷一刀の視界の埋めつくすように複数の酷使が現れて下敷きにされた。
「………数の暴力はキツイって」
「チーム戦じゃ。男同士の勝負に水を差す云々なぞ言わせんぞ?」
北郷一刀脱落。
これにて鈴々チームは完全脱落となった。
「おおーっと、北郷一刀選手が脱落です。これは孫尚香組の優勝は確定したーーー!!」
後はゴールに悠々と歩けば優勝で、お雛様とお内裏様が決定だ。
「……まだだよ」
チャクラムである月下美人が武則天を囲むように飛来した。
「月華炎奏輪」
月下美人が燃え上がり、炎のサークルが武則天を囲んだ。
「ほう…なかなかの技じゃのう」
「これでも努力してるんだよ」
炎のサークル内には小蓮が立っていた。
「痺れて動けんのかと思っていたが」
「気の乱れは治したもーん」
卑弥呼の技によって動けなくなったのは鈴々と季衣と小蓮の3人。しかし小蓮は既に動けているので脱落は免れたのだ。
(あの小娘やるな。手加減していたとはいえ、もう気の乱れを治したとは…あの3人の中で気の操作が一番上手いのやもしれぬ)
鈴々と季衣は気が大きく、操作も出来る。しかし気の操作は小蓮の方が上手だったという事で彼女だけが立ち上がったのである。
「ちょっとシャオ何してんの?」
藤丸立香は冷静に小蓮の行動に対して疑問を抱く。
季衣や鈴々たちも脱落し、残っているのは藤丸立香たちだけだ。そのままゴールすれば優勝する。
ただゴールするだけなのに今の状況は武則天と小蓮が仲間同士でこれから争うようにしか見えない。
「何って最後の試練を突破するためだよ」
「ほお…其方も気づいたか」
「そりゃあの台座を見たら気づくもん」
台座というのはお雛様とお内裏様が座る場所である。藤丸立香も台座を見て理解した。
「え、もしかして…優勝者って2人だけって事?」
「ははは。気づいたか」
卑弥呼が愉快そうに笑った。そして悪戯が成功したような感じでもある。
「その通りだ。優勝者とはお雛様とお内裏様。故に2人だけが優勝者なのだ」
なかなか嫌らしい勝負を仕掛けを組み込んだものだ。
まさか隠し試練とも言えるようなもので最後は仲間内で勝負とは予想出来なかった。
「……ならオレが棄権」
「ダメだよ立香」
「そうじゃ。其方はお内裏様で決定しておる。後はお雛様を決める勝負なのじゃぞ」
藤丸立香がリタイヤすれば武則天と小蓮が優勝できると思ったが、その選択が失敗のようだ。
善意のつもりだったが2人からしてみれば余計なお世話だったようである。
ここで彼がすべきことは結果を待つ事。そして2人を応援するだけである。
「分かった。2人の勝負を見届けるよ」
「応援してね立香」
「分かっておるなマスター」
「どっちも応援するから」
雛プリンセス杯。それはお雛様を決める大会。
「即効で終わらせてやろう」
「それはどうかな~?」
小蓮の手元にチャクラムの月下美人が無い。周囲には炎のサークルで逃げ場が無い。
武則天は様子見で酷使を召喚して突撃させる。
「無駄だよ。月華炎奏輪」
炎のサークルから月下美人が飛び出し、酷使たちを打ち倒す。
「炎のサークルから円月輪が飛び出してきおった。なるほど…そういう技か」
月下美人が炎のサークルを作るように回転しており、360度から敵目掛けて飛来する。
月下美人は燃え盛る炎の中を飛来しているので視界で捉えるのはなかなか難しい。
「見事な技じゃな」
「シャオ努力してるんだよ」
「素晴らしき努力じゃ」
努力する事は素晴らしき事。そして努力した成果が得られるのはより素晴らしい。
対戦相手であろうとも、相手の努力を貶すような事はしない。
「これがシャオの切り札」
この技を習得するには気の操作や妖術・魔術の会得が必要だ。
会得したがゆえに小蓮の努力は本物である。姉の蓮華も妹の努力に頷きながら感心していた。
「炎の円陣から縦横無尽の飛来する月下美人。何処も逃げ場なんてないんだからね!!」
小蓮が両手を交差するように降ると炎のサークルから月下美人が縦横無尽に飛来した。
「お雛様はシャオなんだから!!」
「技の練度は驚嘆に値する。その努力は称賛に値する。しかし、妾は負ける事は嫌いでな」
武則天はパチンと指を鳴らす。
「え?」
小蓮が突然、壺の中に閉じ込められた。
「宝具 告密羅職経」
飛来してきた月下美人は途中で墜ち、炎のサークルは消滅する。
「妾との間合いが近すぎたな。他の者ならば勝っていたやもしれぬが妾には効かんかったというやつじゃ」
再度、指をパチンと鳴らすと壺がパリンと割れる。中から泥酔した小蓮が出てきて倒れた。
「うにゃ~~ふらふらする~~」
「酔いどれの刑じゃ。二日酔いになるといいぞ」
ニパっと良い笑顔の武則天。そして顔真っ赤でふらふらと倒れる小蓮。
「うう…悔しい」
「今回は妾が上手じゃったという事じゃ。しかし其方の頑張りは称賛する」
「…ふらふらする~~」
「後でウコンでも送るかの」
二日酔いは本当に地獄なので後でウコンやら生姜、果物を差し入れする。
「くっふっふー。妾がお雛様じゃな」
「雛プリンセス杯の優勝は~~武則天殿と藤丸立香殿だああああああ!!」
雛プリンセス杯の初代お雛様とお内裏様は武則天と藤丸立香となり、幕を閉じたのであった。
1106
雛プリセンス杯の優勝者には可能な限り願いを叶られる権利が与えられる。
優勝者はカルデアの武則天と藤丸立香である。藤丸立香は考え中だが武則天は既に決まっていた。
彼女の願いとはマスターである藤丸立香と1日を一緒に過ごすというものであった。
「そんな願いで良いの?」
「そんな願いとはなんじゃ。そんな願いとは」
武則天の願いに藤丸立香は肩透かしを食らった。彼女の事だから三国の王たちでも悩ませる願いでも言うかと思ったのだ。
何故か蓮華は「そういう事!?」みたいな反応をしていた。答えは2人きりで1日過ごすので邪魔するなという事である。
「妾はそこまで我儘ではないぞ」
「そうだっけ?」
「無礼じゃぞマスター」
「ごめんごめん……だからその拷問器具をしまってください」
武則天が怖い拷問器具を出していた。用途は聞きたくない。
「意外かもしれんがマスターと一緒に過ごすのはなかなか難しいのじゃぞ」
カルデアでは仲間となってくれた英霊は年々増えている。それにより2人きりで過ごすというのが普通に難しくなっているのだ。
戦力が増えるのは良いが英霊が400を超えるという驚愕の事実。
「今日は其方に妾を奉仕、エスコートする事を命ずる」
「うん。分かったよ神聖皇帝陛下」
藤丸立香が皇帝に頭を下げ、手を取る。その行動に嬉しく微笑む武則天。
「じゃあ行こう」
お出かけという名のデート。
蜀の城下町を周る。近代と違って観光は難しいかもしれないが、蜀の城下町でも楽しめる所はあるものだ。
「あ、屋台が色々と出てる。見てみない?」
「ふむ、B級グルメというやつじゃな。良いじゃろう」
屋台というか点心だ。
間食や軽食をさすもので餃子、焼売、まんじゅう、お粥、 麺類などがある。
「甘味でも食べようか」
「良いのう。時代的に甘味は中々手に入らんからな。いや、この異世界ではそうでもないか?」
チラリと周囲の屋台を見渡すと案外、甘味を扱い店がチラホラある。
異世界(外史)なので「この時代にこの甘味があったっけ?」という言葉が出てきそうになる。
「外史の中華スイーツも意外と豊富なんだ」
中華スイーツと言われて想像するのが杏仁豆腐や月餅等だ。
「あれは…白玉?」
「アレは湯圓じゃな」
湯圓。白玉団子で餡を包み、甘めのお湯に浮かべた中華スイーツだ。
「あの杏仁豆腐っぽいのは…」
「アレは葡萄井凉糕じゃな。やはり甘味が意外とあるのう」
葡萄井凉糕。原料は玄米、ゼリーのような食感が特徴で黒蜜を垂らして食べるスイーツ。
「あ、リンゴ飴っぽいのがある。あれは確かサンザシ飴だ」
サンザシ飴とはリンゴ飴の小ぶり版のようなものだ。
山査子(サンザシ)というバラ科の植物の実を使ったべっこう飴である。
色鮮やかで、他の果物を組み合わさればより彩が強くなる。現代では「映え」になるものだ。
「ああ、糖葫芦か。あれがいいのう」
「じゃあ買おう」
サンザシはスーパーフードとも言われており、知る人ぞ知る美容食品とも言われている。
1本買って武則天に渡そうとする。
「ん」
武則天が可愛く口を開いた。
すぐに彼女の意図を理解する。流石にコレが分からないほど藤丸立香は鈍感ではない。
「はい、あーん」
「もぐり…ふむ、中々な甘さじゃな。ほれ、次」
「はい。あ、オレも食べたいから残してくれると嬉しいな」
「どうしようかのう。くっふっふー。山査子は美容にも良いから妾が食べるべきじゃろう」
「もう十分美しいでしょ」
「……まったくお主はすぐそう言う」
藤丸立香に美しいと言われてまんざらでもない武則天。
「美は一日してならずじゃ」
美と聞いて武則天と一緒に修行を周ったのを思い出す。確かに美は鍛え続けなければならないらしい。
「美と言えば修行でクレオパトラのレッスンを思い出すね」
「美気(ビューラ)という単語を作り出しておったの」
クレオパトラ考案のトレーニングシステムも良い思い出だ。
画面に映し出される美しいポーズを真似る体操である。その名も「フィットファラオプログラム」。
何だか何処かで聞いた事があるような気がしなくもないが、クレオパトラが考案したトレーニングである。
「アレは妾もいささかびっくりしたのう」
「意外にハードな体操だったよね」
「途中で変なのおったよな。正直なところどうポーズすれば分からんかったぞ」
「あれは不意打ちで出てくるのは卑怯だったよね」
変なのではなく、美しきメジェド様である。
「まあ、結果的に美蛇のおかげで美しくなったからあのプログラムは本物じゃったのだろう。そう言えば結局、あのトレーニングプログラムは流通したのじゃろうか?」
「うーん…広まったかのかな?」
広まったような広まっていないような。そこは有耶無耶である。
取り合えずカエサルはまだ「フィットファラオプログラム」は履修していないはずだ。
「確か美の次が知だったよね」
「うむ。知識は国を統べるには必要な力じゃ。妾は勉学を疎かした事はないぞ」
勉強した事は必ず自分の為になる。よく、学生時代に勉強したものが社会人になった今だと意味が無かったと言う人もいるが、そんな事は無ない。
社会人として働くための礎にもなっているのだ。他にも未来の選択肢を増やしているという部分もあったりする。数学の道を選べば数学者に、歴史の道を選べば歴史学者など様々だ。
「三国時代じゃがここは異世界。異世界の知識とはなかなか得られるものではない」
「書物がある店に行ってみようか」
「そうじゃな。もぐり」
「あ、結局全部食べられた」
ここは三国志の外史。それは三国志の異世界でもある。
正史とほぼ似た歴史を辿っているが何処か違う部分もある。場合によってはこの異世界にしかない文化や知識があってもおかしくない。
例として「真名」というのがあるのが良い証拠だ。
「こういう本屋にもこっちの世界には無い発見があるかもね」
「知的好奇心が刺激されるな…ほうほう」
武則天が本棚から1冊手に取って開く。
「何読んでるの?」
「これは妲己が書いた本というやつじゃな」
「……その本って人気あるのか」
以前、別の書物店でも見かけた本であった。この書物を見るのもこれで3回目である。
「どう見ても偽物じゃな。中身の拷問内容も薄い…それにこの拷問方法では相手をただ殺すだけじゃ」
淡々と辛口評価を出すのであった。
「オレも何か本でも…」
藤丸立香の視界に『押忍、乱れ狂う漢女の肉体美-恋する筋肉-』というタイトルの本が入った。
(また続編が出てる…)
人気作品は続編が刊行されるものだ。
「他には…こすぷれのもくろく?」
藤丸立香が手に取った書物は『湖州扶練之目录』。
「え、もしかしてこの世界にもサバフェスみたいのがあるの?」
目録(カタログ)を開くと様々なサークルが載っていた。まさによく見るカタログその物である。
「結構早い段階でカタログが売られてるんだ。色々なサークル名があるぞコレ」
『美少女愛好倶楽部』、『八零壱朱雛』、『馬秘夜入桜肉』、『麺麻同盟』、『漢女盛々』。
「何だろう…何となく分かるような?」
サークルに所属している人の顔が過ったが、気のせいだろうと首を振った。
取り合えず気になるのは本当なので買う事が決定。後でゆっくりと読もうと決めた藤丸立香である。
「何を買ったのじゃ?」
「サバフェスのカタログみたいなもの」
「何々…湖州扶練之目录。本当にサバフェスのカタログみたいじゃな。この異世界にもあるのか…あの祭典が」
「あるみたい。ある意味行ってみたい」
サバフェスを体験した身としてが異世界のサバフェスみたいな祭典も参加してみたいものだ。サークル主としてでも良いし、一般客としても良い。
サバフェスで鍛え上げた実力をこの外史世界でも遺憾なく発揮させたいものである。
「ん…何か聞こえてきた」
チラリと賑やかな方向に視線を移すと高名な劇団が蜀に訪れている。
「武則天、演劇だって。見に行ってみる?」
「面白そうじゃな。観てみるのも一興じゃ」
高名な劇団の演目は古典ながらも練り込まれた演出と情感たっぷりの演技が大衆を感動で泣かせると評判らしい。
今回演じられるのは『覇王別姫』。かの有名な項羽と虞美人の物語だ。この時代にこのような演劇があったのかと気になるが置いておく。
藤丸立香と武則天はカルデアの項羽と虞美人を想像しながら劇団の演目を楽しむ。
「面白かったね」
「なかなかの演技力じゃったな。妾を楽しませる余興として及第点じゃった…しかし」
「うん。こっちの項羽と虞美人を知っているから違和感があった」
素晴らしい演劇だったのだがカルデアでの本物を知っているので違和感が微妙にあったのだ。
異世界の項羽と虞美人の結末とカルデアの項羽と虞美人の結末は似ているようで異なる。
「あの演劇を項羽と虞美人が観たらどう思うんだろう?」
「さあの。項羽は特に思う所は無いじゃろうて。まあ。虞美人は…」
「介錯違いよって言いそうかもね」
お互いに軽く笑い合う。
「そろそろ夕食にしようか」
「ふむ。派手で豪華な店を所望する」
「今のオレのお小遣いでいけるかな…」
「そこはバシっと高級店を奢るくらいの気でいけい」
「はは そうだね。神聖皇帝に食事を奢ったなんて自慢できる」
「くっふっふー。そうじゃそうじゃ」
中華の高級料理はやはりフカヒレの姿煮や北京ダック、つばめの巣のスープ。
これだけで高額で財布の重さがすぐに軽くなる。それでも、美味なのは間違いない。
「てか、武則天なら食べ慣れてるんじゃ?」
「其方と食べるのはまた違うんじゃよ」
中華の高級料理を舌鼓。金額が高い代わりに美味は確定であった。
「ふむ、カルデアキッチン並み程ではないが美味じゃな」
(カルデアキッチン組の方が上なんだ。まあ、オレもオカン(エミヤ)やブーディカたちの料理が好きだな)
心の中で「せめてエミヤ(オカン)と呼んでくれ」と聞こえた気がした。オカン(エミヤ)という言い方の何が問題だったのだろうかと思う藤丸立香。
(オカン(エミヤ)はオカン(エミヤ)だし)
また心の中で「なんでさ…」と聞こえた気がした。
豪華で派手な食事が終われば1日の終わり。
現代みたいに電気のおかげで夜も明るいという事は無い。なれば夜になればもう寝るしかないのだ。地域や個人の差があるかもしれないが昔は夜遅くまで起きて仕事や娯楽が少なかった事も由来する。
(この異世界も夜になれば早寝の人が多いよね)
夜の見張りの兵士などは例外だ。そして夜でしかない娯楽も意外にあったりする。
「今日は楽しかったね。どうだったオレのエスコートは?」
「まあまあな及第点じゃな」
「厳しい評価だった」
「当然じゃろう。妾は厳しく評価するぞ」
仲間であろうと身内であろうとマスターであろうと武則天の評価は甘くないという事だ。しかし少しでも楽しめたのなら藤丸立香としても及第点だと思っている。
「よっと」
ぽすんっとベッドに腰かける。部屋には藤丸立香と武則天。まんまカルデアのマイルームにいるような感覚である。
マイルームではよく話し合う。お互いを知る為や世間話、バカ話、恋バナだったりと様々だ。
「おい、まだ妾の雛プリンセス杯での望みは全部叶っておらんぞ」
「え」
武則天がのしりと藤丸立香の寄りかかる。何ならそのまま体重を押し掛けて藤丸立香をベッドへと倒す。
「エスコートはちゃんとして及第点はもらったはずなんだけど」
「まだ奉仕はしてもらっておらんぞ」
「ええー…」
確かに武則天は最初に「今日は其方に妾を奉仕、エスコートする事を命ずる」と言っていた。
「奉仕かぁ。マッサージでもする?」
「そうじゃのう…」
武則天が蠱惑な笑みを浮かべた。
彼女は姿こそ童女であるが内側は大人顔負けの大人な精神の持ち主だ。
その蠱惑的な笑みにドキリとさせられる。ただでさえ身体が密着しているのドキドキ度は上昇である。
「大人な夜のマッサージが良いかのう?」
「ちょっ」
まさかの発言でズドンっと撃たれた衝撃だ。
普段の彼女であれば言わない発言である。ツンツンデレデレする事はあるものの、ここまでドストレートに言う事は無い。
「えーっと…夕食のお酒で酔ってる?」
「酔っておらぬわ。本気で言っておる」
彼女の眼は本気だった。少し恥ずかしいのか顔を赤くしている。
(うむむ…ここまで言うつもりはなかったのじゃが)
武則天自身もこのような発言には不思議がっている。自分自身はこのような事を言う性格であったのかと。
何かがおかしいと思うが今の自分は止められない。まるで己の心が外部から刺激を受けて歯止めがきかなくなっているような感覚である。
普段では理性で抑えている感情が今まさに解放されているのだ。
「其方は妾のものじゃ。ならば妾が何を言っても文句は言わせん」
「いやぁ…でも」
「妾は其方を共同統治者として認めた。そして、その事を其方は重く受け止めていると言っていたな?」
「それは…うん」
武則天に共同統治者として認められた。その評価を軽く受け止めたわけではない。
真剣な言葉を発した彼女に藤丸立香が簡単に、片手間に受け止めるなんて出来ない。
「そして…其方は妾を寂しくさせないと言ってくれたではないか。嘘なのか?」
「そんな事はない。オレは貴女を寂しがらせたりしない」
言葉とは軽くもあり、重くもある。彼女の言葉の重さは理解している。故に彼も真摯に返す。
「なのに最近の其方は妾を蔑ろにしておる」
「そんな事は…」
「ある。カルデアでも契約するサーヴァントはどんどん増え、そっちを優先しておる。この異世界でもそうじゃ。新たに女を増やし、そっちに鼻を伸ばしおって」
「そんな事は無いんだけど。てか、女を増やしてるって言い方はちょっと…」
「あるのじゃろうて」
カブっと首筋を噛まれた。
「奉仕をせぬのなら…罰として拷問じゃ」
あたふたするだけで藤丸立香は武則天に何もしない。
己は皇帝であり、自分で言うのも何だが魅力的な女性だ。これで手を出されないのは女性としてショックを受ける。ただでさえ相手は共同統治者として認めた男なのだから。
「……妾は嫌なのか?」
「嫌なわけない。貴女は素敵な女性だ」
「なら何でじゃ」
「………だって……だし」
「なんと?」
「だって武則天は…子供だし」
「…………………」
フリーズした武則天。
藤丸立香は一応は一般男性。『そう言う事』に対して子供相手は普通に駄目だと思うのは一般的ではないだろうか。
「妾は其方よりも年上なのじゃが」
「いや…お姿が。最近はそういうのが厳しい世の中です」
「見た目で判断するのはよくないぞ。そもそも妾は英霊なのじゃが」
武則天も確かに何故この姿で現界したかは思う所がある。しかし理由はちゃんとあるので文句は無い。
「そもそも南蛮では…」
「あれは事故です」
「ああ言えばこういう奴じゃのう」
藤丸立香のまさかの発言で彼女は説教したくなったが辞めた。何せ彼女はちゃんと大人なのだから。
「ふむ…ならばこれで良いじゃろう?」
「え」
クラス変更。アサシン霊基からキャスター霊基へ。
「どうじゃ?」
今の武則天はキャスタークラス。その姿はグラマラスな水着にサイドテールの姿である。
正直初めて大人な武則天を見た時は驚き、ドキドキと大人の魅力を感じた。
「これで文句ないじゃろ」
グラマラスな肢体が藤丸立香を襲う。
大人の色気に溢れている美女に押し倒された状況に興奮しない男はいない。藤丸立香も例外ではない。
「…これでも駄目なのか?」
不安顔の武則天が藤丸立香の顔を覗き込む。
「これでも妾は魅力が無いのか?」
「そんな事ない。もう一度言わせてもらうけど武照はとても素敵な女性だよ」
「くふふ。やっとその名で呼んでくれたな」
月光に照らされる影は2人。徐々に1つへと重なるのであった。
読んでくださってありがとうございました。
次回の更新4月1日です。
まあ、ちょっとした番外編(オマケ)みたいなものになります。
1105
お雛様決定戦。
武則天VS小蓮の戦いは武則天の勝利となりました。
1対1だったら武則天の宝具が強いですよね。
小蓮の「月華炎奏輪」は天下統一伝の技となります。
ちょっとオリジナル要素も入ってますけどね。
負けてしまって残念な小蓮だけど、彼女の活躍はまたあります。
1106
藤丸立香×武則天の話でした。
意外にも彼女もマスターラブ勢だったりするんですよね。
バレンタインや幕間でもデレてましたし、絆セリフの共同統治者宣言はねえ。
それにミスティックアイズシンフォニーでの時もね。
それにしてもカップリングの話を書くのは難しいですね。
大変だぁ…。