Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
ゴールデンウイークが…終わってしまう。うう…嫌だぁ。
今日は子供の日。柏餅やちまきを食べて元気になりましょう。
さて、今回からまた新たな物語になります。
『江東の虎』編です。どういう物語かは本編をどうぞ!!
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呉の建業にて。
街の空を見上げると色鮮やかな大きい鯉が泳いでいた。勿論本物の鯉ではなく、鯉を模した織物である。
日本人が観れば「鯉のぼりだ!!」と誰しもが口にする。
「見事な鯉のぼりだなあ」
『雛プリンセス杯』・『宝卵探し祭』と続き、次にどのような催しを行うかと会議が行われた。そして今回も北郷一刀の知識が求められたのだ。
「つっても今の時期の日本行事はゴールデンウイークっていう大型連休なんだけどなあ。ゴールデンウイークは行事でもないけど」
ゴールデンウイークは大型連休であって行事ではない。
「んー…行事ってなると子供の日とか」
「「「子供の日?」」」
子供の日は「子供の人格を重んじ、子供の幸福を図るとともに、母に感謝する」事を趣旨としている日だ。
鯉のぼりを上げたり、柏餅やちまきを食べたりする。そして子供は親に感謝し、親は子供を慈しむ。
「平和的な催しだね」
「そうだな。そういう日があっても良いって事さ」
『雛プリンセス杯』や『宝卵探し祭』と違ってインパクトは無いが今回は呉が主導となって仕切る事になった。
呉の職人は腕が良く、日本の鯉のぼりに負けないくらいの色鮮やかな鯉のぼりを造りあげて、空を泳がせた。
「天の国の鯉のぼりにも負けないくらいでしょ?」
鯉のぼり(鯉幟)は江戸時代に武家で始まった端午の節句に家庭の庭先に飾る織物で、色鮮やかな鯉の形に模して作ったのぼりである。
空を泳ぐ鯉くらい子供も元気になって欲しいという願いが込められているのだ。更に中国の故事にある急流の滝を上り龍となった鯉の伝説などから、立身出世の象徴として考えられている。
「うん。凄いよ雪蓮」
「雪蓮が凄いのではなく、呉の職人だぞ立香」
「ちょっと冥琳。私だって手伝ったんだから」
職人だけでなく、料理人も負けていない。柏餅・ちまきという料理(菓子)もちょっとした情報だけで作り上げる。
「ま、話を聞くに複雑な造りではなさそうだから簡単だったけどね。まあ、似たような物があったからってのもあるんだけど」
「そう言うが雪蓮は作れんだろう」
「ええ。私は食べる専門だもん」
柏餅。
餡の入った餅を包む柏の葉は、新芽が出てから古い葉が落ちることから子孫繁栄の縁起物とされている。
パクリと柏餅を食べる雪蓮。
「こっちのちまきもなかなか旨い」
「うん。美味しいね」
冥琳と梨晏はちまきをもぐり。
ちまき。
ちまきは笹や茅などの葉で餅を包み、糸で円すい形に縛った和菓子。
邪気や災いを払い、健康と長寿を願う意味が込められている食べ物だ。中国だと疫病から身を守り、忠義心のある子に育つ事を願う食べ物でもある。
(子供の日は他にも鎧飾りや兜飾りを飾ってりするんだよな。小さい時は新聞紙で兜作って頭に被ってたっけ)
甲冑飾りや武者人形などの五月人形を飾り、強く逞しい男の子に育つように願われる。
「さあて良い酒も買ったし、母様に感謝しなくちゃねー」
「子供の日」が過ぎれば「母の日」なんてのもある。
母の日は日ごろの母の苦労を労い、感謝する日だ。せっかくだから一緒にやってしまおうという事になったのだ。
「間違っても自分で飲んじゃ駄目だよ雪蓮」
「ちょっとなんて事を言うのよ立香」
「立香の言う通りだ」
「ふふ。そうだねー」
「冥琳と梨晏まで酷くない?」
軽く笑ってしまう冥琳と梨晏であった。
「雪蓮は返ってタケノコ料理で我慢しとけ」
「そっちも楽しみ」
タケノコは力強い生命力と成長の早さから縁起物として知られており、真っすぐ上に向かってスクスクと育つ姿に重ねて子供の健やかな成長を願う行事食である。
炊き込みご飯やお吸い物、煮物など美味しい料理が多い。想像するだけでジュルリと涎が垂れそうだ。
「あ、マスターちょっと良いですか」
建業の街並みを見ながら通りを歩ていると太公望が手を振って前から歩て来る。
「どうしたの?」
「いえ、あの『塊』について話が」
「分かった」
太公望の言う『塊』とはキノコの精霊がいる山で見つけたモノだ。
その『塊』は藤丸立香たちにとって『仲間』かもしれないのだ。
「ごめん。また後で合流する」
「ええ、行ってきなさい立香」
藤丸立香と太公望は早脚で街中へと消えていく。
「ふむ…太公望か」
冥琳がポツリと呟く。軍師として聞かないはずの無い名前だ。そして尊敬する軍師の1人だ。
彼と軍師として話せるのはとても貴重なもの。朱里や雛里、男嫌いの桂花であっても彼と話せることを望むだろう。
実際に軍師陣は彼の時間が空いていれば相談や話をしたいと思っているくらいだ。
冥琳は既に何度か太公望と話合いをしており、全てが為になるものであった。まだまだ話足りないくらいである。
「まさかあの時に助けられたのが太公望だったとはねー」
あの時とは雪蓮の暗殺事件の時である。
「あの時、彼は私の望む者ではないと言っていたが…全く、実際はとても望む者だったじゃないか」
本当であれば太公望はあの時、雪蓮を助けられたのだが理由があって助けられなかった。しかしそれは冥琳が知らなくていい事だ。
1128
建業の屋敷に戻ると蓮華や小蓮と合流する。
「雪蓮姉さま」
「蓮華にシャオ…も酒を買ってきたのね」
2人の手は良い酒壺が抱えられていた。
孫家三姉妹とも母親に感謝の印で贈る物はやはり酒だと同じように思いついていたようだ。
「3人ともお酒」
「ま、良いだろう。大殿では3つでも足りぬと思うがな」
冥琳の言葉に全員が笑いながら頷いた。
「じゃ、行きましょ」
蓮華たちと合流した雪蓮は屋敷の中庭に進むとお目当ての人物が団欒していた。
炎蓮、祭、粋怜、雷火、紫苑、桔梗、燈、風鈴というメンバーであった。
「わあ、熟女の会合」
「はい?」
「…ごめんなさい」
紫苑の並々ならぬ威圧によって黙らせられた雪蓮。
これ以上の茶々は矢が飛んでくると本能的に理解出来てしまった。今の紫苑に逆らうと後が怖いのだと本能が訴えてくる。
「雪蓮殿これ以上はよした方がよいぞ。紫苑を怒らせるとこの庭を半壊させられるぞ」
「ちょっと桔梗そんな冗談はやめてよ」
桔梗の言葉に紫苑が止める。
「いや、冗談ではないのだが」
桔梗の目は嘘を言っていなかった。紫苑に対して『年齢関連』は禁句であるのだ。
「確かに紫苑が本気を出したらこの庭は矢だらけになるだろーよ」
「炎蓮さんまでよしてくださいよ」
機嫌良さそうに笑う炎蓮。
「ほら母様。良いお酒」
「おうよ。ありがとうな」
「それはこっちもよ。母様には感謝してるわ」
「私もです母様」
「シャオもー!!」
蓮華と小蓮も炎蓮に感謝と共にお酒を送るのであった。
「酒ばっかじゃねえか」
「でも好きでしょ?」
「おう」
ニカっと笑う炎蓮であった。
「それで、さっきまで何の談笑していたの?」
言えなくなった熟女の会合でどのような話をしていたのか気になる雪蓮。
「炎蓮さんの昔話よ」
「うむ。聞いていて面白いぞ」
燈が代わりに答えてくれて、桔梗が昔話を評価していた。
「そうなんだ」
「ええ。聞いていて興味深いわよ。私と桔梗さん以外は皆さん昔から顔見知りなんですって」
「え、そうなの?」
炎蓮と祭たちは昔からの仲だというのは当然知っている。意外なのが紫苑と風鈴も昔から知り合いだという事だ。
「ええ。実は炎蓮さんとは昔会った事があるのよ」
「私も。ふふ、炎蓮さんは昔から凄い人でしたよ」
紫苑と風鈴とも昔馴染みとは興味深い。そして自分の母親の過去話に興味が深々である。
尊敬し、偉大な母親である炎蓮の武勇伝は聞いてみたい。案外、娘でありながらも炎蓮の過去は知らないのだ。
「シャオ、母様の昔話聞きたーい!!」
「私も聞いてみたいです」
「ほら、シャオと蓮華も聞いてみたいって」
自分の娘たちに武勇伝を聞かせるのは何となくこっぱずかしいと思う炎蓮。一言「うるせえ」と口にしようと思ったが雷火がまさかの雪蓮たちの援護射撃。
「良いのではないですかな。炎蓮様の昔話」
「大殿の昔話をすると私達の昔話にもなっちゃいますけどね」
炎蓮の過去話を語るのであれば粋怜や祭たちの過去話にもなる。それは孫呉黎明期の話。
「私はもっと聞きたいですよ」
「おい燈まで」
「だって面白いんですもの。気になるのは孫呉の土台を造る際に活躍したけど名も残らなかった協力者とか」
「え、そんな人がいたの母様?」
「まあな」
炎蓮は酒をクピリと飲む。
「あやつらか」
雷火も懐かしむように呟く。それは粋怜や祭も同じであった。
「もう顔も名前も思い出せんが…奴らとは無茶したもんじゃ」
先ほどから「あやつら」とか「奴ら」と言う事は複数人いたということだ。
「顔はともかく名前も覚えてないの?」
「薄情かもしれんがな」
「え、雷火まで?」
不思議な事に炎蓮たち全員が、その協力者の顔や名前を憶えていなかった。
「確か…その人たちって炎蓮様が最初に勧誘したんでしたっけ」
「おう」
「え、祭よりも先に?」
炎蓮が臣下として最初に勧誘したのが祭だとされている。実際は勧誘されたのではなく、祭の方から勝手に付きまとったというのが正しい。
「ああ。振られちまったがな」
「え、母様の勧誘を振る人なんているんだ」
「おう。何人もいるぞシャオ。例えば紫苑とかな」
「紫苑も勧誘されてたんだ。知らなかった」
「ええ。でもその時、私は劉表様に仕えていましたからね」
「なるほど。じゃあ協力者って人たちもそうなの?」
「いや、あいつらはそんなんじゃなかったな」
何故勧誘を断られたかも思い出せない。
「聞かせてよ母様」
「しょうがねえな」
炎蓮たちは昔の話を語り始めるのであった。
1129
屋敷のある一室にて。
机に置かれるはキノコの精霊が住む山で見つけた『塊』。それは『肉霊芝』。
この『肉霊芝』を見つけた時、藤丸立香はある英霊を思い浮かべたのだ。
「どう太公望?」
「はい。やはり彼だと思います」
「やっぱり」
太公望は『肉霊芝』を調べて確信した。この『肉霊芝』は英霊である。
「仲間 発見 合流」
「ふむ…しかし彼は寝たままで起きないと」
この場にいるは藤丸立香、太公望、黄飛虎、哪吒。
彼の目覚めに手伝ってもらう為に集まってもらったメンバーである。
「声を掛けても起きないんだよね」
「…何か術式が組まれていますね」
「え?」
「ちょっと解析してみますので皆さんは少し離れていてください」
間違っても呪いが周囲にまき散らされないように注意せねばならない。英霊が呪の神霊なのだから。
「無理やり起こされるのが嫌いって言ってましたから気を付けて……あ」
「「「あ?」」」
『肉霊芝』が大きな光を放射して周囲を包み込んでいく。
「黄君、哪吒、マスターを!!」
「太公望 何した!?」
「哪吒よ。それよりもマスターを!!」
放射された光はどんどんと大きくなって藤丸立香たち全員を包み込んでしまう。
「この感覚はレイシフトみたいな…いや、前にも似たような」
光が治まった時には部屋に誰も居なくなっていた。
「……そっか。今日がその時だったのねん」
隠れて部屋の様子を見ていた貂蝉が意味深に呟くのであった。
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『肉霊芝』が放射した光によって包み込まれた藤丸立香。
目を覚ますと何処かの街の道端で倒れていた。身体に異常はなく、令呪もある。
周囲を見渡すと太公望たちの姿は見えない。姿が見えないが魔力パスは繋がっているので退去しているわけではないようだ。
「ここは何処だ?」
先ほどまでは建業の屋敷にいたのに街の外で横たわっていたという事実。原因は間違いなく『肉霊芝』の放った光だ。
レイシフトのような感覚だったが微妙に違った。何方かいえば以前に貂蝉が使用した筋肉式レイシフトのような感覚だったのだ。
「もしかして貂蝉が関わってる?」
貂蝉に問いただしたいがこの場には居ないので後の話だ。
今はどうするべきかを考えなくてはならない。
「本当にここは何処?」
周囲を見渡しても何処かの街としか分からない。分からないのであれば脚を動かして調べるしかないのだ。
「ちょっと周囲を調べ…」
「であであのマスター!!」
「太歳星君!?」
急に背後から抱き着いてきたのはカルデアの英霊が1騎 太歳星君であった。
元気いっぱいの笑顔で藤丸立香の背中に引っ付き、何処か楽しそうだ。
彼は太歳から生まれていた化身。中国の道教や日本の陰陽道における禍津神である。
「合流出来て良かったぞ」
「うん。オレもだよ」
まさか太歳星君と合流出来るとは思いもしなかった。しかし仲間が1人でも合流できればとても心強いものだ。
「ねえ太歳星君は何で肉霊芝になっていたんだ?」
「何の話だ?」
「え?」
太歳星君は肉霊芝になっていた事に対して記憶が無い。忘れたというよりも最初から肉霊芝になってないというような顔だ。
(どういう事だ?)
腑に落ちないが今は太歳星君と合流出来た事を喜ぶべきだ。そして現状について調べなければならない。
「太歳星君。この辺りについて何か知ってる?」
「知らないぞ。カルデアで日向ぼっこしてて、ワガハイは目が覚めたらここにいたのだ。そしてであであのマスターを見つけたんだぞ」
「そっかー。じゃあ一緒にここが何処か調べない?」
「いいぞ!!」
元気いっぱいの太歳星君。
お互いに今の状況が分からないのであれば、やはり調べる他ない。
「じゃあ行こっか」
「おい、てめえら。ここいらのもんじゃねえな」
「え?」
これから現状を調べる為に「さあ出発だ」という時に誰かから声を掛けられた。
「……蓮華?」
「誰だよソイツ」
藤丸立香の前は山賊風の身なりをした蓮華がいた。
「オレは孫堅だよ」
「孫権じゃなくて?」
「字が違う。権じゃなくて堅だ」
どういう状況か理解できてしまった。
「…………ゑ?」
読んでくださってありがとうございます。
次回の更新も5月中。
今回から始まるは『江東の虎物語』編。
はい…恋姫†英雄譚4の炎蓮の過去話です。オリジナル設定を組み込んだ物語となります。
1127~1128
今回は行事とかあまり関係無い話ですけどちょっとだけ行事関連を入れてみました。
「子供の日」と「母の日」。ちょっとだけ。
英雄譚4の炎蓮過去話。
オリジナル設定によるオリジナル展開もあります。
炎蓮たちが言う、孫呉黎明期に協力した者たちとは?
それがオリジナル展開。
1129~1130
太公望たちが調べるは肉霊芝。
読者の皆様は既に感付いていたでしょう。
はい…もちろん正体は太歳星君でした!!
太歳星君もついに恋姫外史世界に登場です。
『江東の虎物語』編では彼が活躍します!!
彼だけでなく、太公望、黄飛虎、哪吒たちも!!
最後に現れた山賊風の身なりの蓮華。
彼女の正体は孫堅。
はい…もうどういう展開か丸分かりです。