Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
本日は『母の日』。恥ずかしがらずに母親に感謝してみるのも良いかもしれません。
作者の私は早めの母の日で花を送ろうとしましたが、いらないと言われました。
…アレ?ってなりましたね。でも代わりに外食に行きました。
喜んでくれて良かったですよ。
さて、本編の方をどうぞ。
1135
建業の庭園にて。
炎蓮は己の昔話をしていた。語る程のものでもないが娘たちがどうしても聞きたいというので仕方なく話している。
語り始めたばかりで、話の内容は炎蓮と雷火が出会った頃と謎の旅人と出会った部分だ。
「その頃に母様は雷火と出会ったのね」
「おうよ」
「第一印象はただのゴロツキじゃったな」
役人であったが恰好は山賊そのものだったらしい。
「母様が山賊の恰好してたってシャオ意外」
「おいおいシャオ。オレは山賊の恰好なんかしてなかったぜ?」
「あの時の姿はどう見ても山賊じゃったろうが」
初顔合わせは良かったとは言えなかった。
当時は雷火に対して炎蓮はただの偉そうなガキの儒者としか思わなかった。逆に炎蓮にたいして雷火はただの大うつけとしか思わなかった。
ただ、お互いに何かを感じ取り、妙な興味を湧いたのも事実である。
「あの、謎の旅人というのが後の孫呉の協力者かしら?」
燈が謎の旅人について追及する。
「そうだぜ。普通のようで普通ではないような奴だったな」
「わしとしては小柄な方が異質であったがの」
顔も名前も思い出せないのに出会いや共に行動した事を覚えているのは不思議である。
(普通でようで普通ではない……何だか立香君みたいね)
燈が初めて藤丸立香に出会った時の感想と同じだ。
「その頃に大殿は彼らと出会ったんですね」
「儂らが出会ったのはその後と言う事か」
「じゃあ、この後は2人がその謎の旅人と出会う話?」
「いや」
粋怜と祭が登場する話はまだ先だ。
これからする話は炎蓮の武勇の始まりである。
「お母さーん」
「あら、璃々」
昔話の続きを再開しようとした時、紫苑たちの元に璃々たちが花を持って歩いてきた。
呉では『子供の日』と『母の日』を同時に催している。璃々たちが来たのは『母の日』の為である。
「お母さん。いつもありがと」
「ふふ、お花ありがとうね」
『母の日』は日頃の母の苦労をねぎらい、母への感謝を表す日。
子供は母親に甘えてばかりで苦労ばかりかけている。子供は親に苦労ばかりかけているからこそ感謝は心の底からすべきだ。そして大人になったら世話になった分すべてを恩返ししていくのである。
「…母さんコレ」
「喜雨ありがとう」
「今日は良い野菜が採れたんだ。料理するから食べて欲しい」
「楽しみにしてるわ」
感謝の仕方は人それぞれ。酒を送ったり、花を送ったり、料理を作ったり。
「風鈴先生これお花です!!」
「風鈴先生にはお世話になったしな」
「桃香ちゃん、白蓮ちゃん。私は2人のお母さんじゃないのだけれど」
「風鈴先生はお母さんみたいにお世話になったので」
「全くもう」
本当の母親でなくとも、母親代わりの人に感謝するのも良いものだ。
「桔梗様。花とお酒です」
「何でわしは焔耶から花と酒を貰うんじゃ。わしはお主の母親ではないぞ」
「そうなんですけど桔梗様はワタシの師匠なので日頃の感謝として」
「母の日の定義とは」
もはや感謝する理由としての『母の日』になっていた。それが悪い事ではないので誰も文句は言わない。
「母様も花が良かった?」
「酒で」
「やっぱ母様は花より酒よね」
『母の日』は恥ずかしがらず母親に感謝するのも良いものだ。
1136
過去の呉にて。
恐らく筋肉式レイシフトで過去の呉に転移した藤丸立香たち。
過去に転移した理由は恐らく何か異変が発生する可能性があると仮定。呉の街という事なら狙われるのは孫家やその関係者たちだ。
以前の歴史改変事件では孫呉を狙っていた。また同じく于吉たちが狙ってきた可能性がある。
「この時代だと…炎蓮さんたちが活躍する時代だよな?」
藤丸立香たちがいる時代はこれから炎蓮が仲間を集め、武勇を轟かせていく。
「そうなると狙われるのは炎蓮さんや雷火さん、粋怜や祭さんたちか」
粋怜と祭の所在は分からない。現在分かっているのは炎蓮と雷火たちだけ。
「そのスイスイとサイサイは何処にいるか見当ついてるのか。であであのマスター」
「全く」
何処にいるか分からないが名前は分かる。容姿は、未来より過去にいるのだから若い姿だ。しかし髪色や目の色といった特徴で聞き込みは出来る。
熱心な聞き込みをしていれば1つや2つの情報が入り込むもの。聞き込みをしていると名前は分からないが祭と似た特徴を持つ人物が呉郡の外れにある港で見かけたというものだ。
本当に祭がいるかどうか確認しに行くため、藤丸立香と太歳星君、太公望の3人で向かう事になった。
黄飛虎と哪吒は呉の街で待機。もしかしたら炎蓮と雷火を狙って刺客が襲ってくるかもしれないが故にだ。
「さて、到着したけど…」
「「「ひゃっはああああああああああああああ!!」」」
世紀末世界に跋扈してそうなゴロツキが言いそうな掛け声を海賊が吼えながら港町を襲っていた。
「治安悪っ!?」
雷火の言っていた海賊とは彼らの事だ。
力がものを言う時代であれば、盗賊・山賊・海賊が跋扈していてもおかしくない。
「うわぁっ!?」
「な、なんだ!?」
漁民たちは海賊の凶悪な脅威に逃げ惑うしかない。
「かかれーーーー!!」
「「「おおおおおお!!」」」
海賊の頭領による号令で海賊たちが波のように港町を飲み込む。
「で、出たぞぉっ!?」
「ひぃぃ、海賊だー!?」
「ひゃっはーーー!!」
「みんな逃げろー!!」
「きゃああ、お助けーー!!」
海賊の頭領は剣を掲げて先頭を駆ける。
「行けぇ野郎ども、金目のものと食料を奪うのだ!!」
「港の船も残らず頂くぞ!!」
「「「おう!!」」」
「誰か、助けてーー!?」
このような状況で藤丸立香はただ立ち竦むだけでは終わらない。
「太公望、太歳星君。皆を助けよう」
「数が多いですが漁師たちを避難させる事は出来そうですね」
「ワガハイ皆を助けるぞ」
すぐさま藤丸立香たちは行動を移す。
「おら、ババアどきやがれ!!」
「きゃあ!?」
「ふ、船だけは、船だけは勘弁してくれ!!」
「うるせえ。逆らうとぶち殺すぞ!!」
「ぐわっ!?」
海賊たちは無法の如く漁民たちを傷つけ、略奪を開始する。
「はっはーっ。よりどりみどりだぜ!!」
「辞めろーー!!」
「あんだこのガキは?」
「ガンド!!」
「ぐおっ!?」
海賊にガンドを撃ち込み、動きを止める。
「お、お前さんは?」
「早く逃げてください」
「し、しかし、わしの積み荷と船が…」
「命あっての物種です!!」
海賊に殺されればそれまでだ。
漁民たちには申し訳ないが積み荷や船は諦めてもらうしかない。
「貴方は早く役人にこの事を伝えてください」
「あ、ああ。分かった…あ、お役人様。お役人様。早く海賊どもを捕まえてください!!」
港町にも役人や兵士は常駐している。しかし海賊の数に比べれば少なく、誰から見ても海賊を捕まえるような態勢ではない。
「ば、馬鹿。話しかけるんじゃない!!」
「何を言ってるんですか。あんたら港を守ってるんだろ。なんとかしてくださいよ!!」
漁民の訴えに役人は海賊たちの横行を見ては嫌な汗を垂らす。
「ぐ…」
「どうする?」
「多勢に無勢だぜ。俺たちだけじゃとても…」
役人たちは海賊と戦って捕縛する意思は感じられない。既に弱腰で逃げる事しか頭になかった。
「ほ~う。間抜けな役人どもが雁首そろえておるな。はっは。この俺たちを捕まえるつもりか?」
「いやぁ……はは」
「ひ、退くぞ!!」
「ああ」
海賊に対して役人たちは愛想笑いをして急いで逃げるのであった。
「あああ、お役人様!?」
「え、嘘!?」
役人たちが逃げ出した事に藤丸立香は焦った。
太公望と太歳星君とで漁民たちを避難させているが限界がある。もはや全ての積み荷と船は諦めるしかない。
「ひゃはは。すげえ逃げ足の速さだな」
「役人などあんなものよ」
「そら、ジジイ。その積み荷を寄越しやがれ!!」
「ああ!?」
「逃げるんだ!!」
積み荷と船に未練がましく手を伸ばすが届かせてはならない。届かせれば海賊に殺される。
藤丸立香は申し訳ないと思いながら漁民たちを無理やりにでも避難させるしかなかった。
「はーっはっはっはっは!!」
「余裕があるなら若い女も奪っちまうか!!」
「それ良いっすね副頭領!!」
「いやっーー!?」
積み荷と船を奪えば、次の獲物を探す。
「積み荷と船は諦めますが漁民たちは駄目ですよ」
「させないのだー!!」
太公望と太歳星君が若い女性達を攫おうとした海賊に蹴りをくらわせる。
「うぎゃ!?」
「てめえ、ぶっ殺されてえのか!!」
歯向かえば怒りをくらうのは当然だ。
「はやく逃げてください」
「あ、ありがとうございます」
「マスター。彼女たちを」
「うん。みんなこっちに!!」
冷静に迅速に避難を行う藤丸立香たち。
無傷は不可能であたが漁民たちをたった3人で避難させた。死人が出なかっただけ十分な働きである。
「このガキに糸目の野郎がぁ」
海賊たちは剣を振り上げて、いつでも襲い掛かろうとしていた。
「こいつら呪っちゃうか?」
「そうですねぇ」
太歳星君はその身から呪いを滲み出させ、太公望は打神鞭を取り出す。
「てめえらさっさとズラかるぞ!!」
「と、頭領!?」
海賊の頭領が撤退の号令をかけた。
「いいんすか頭領!?」
「目的は達した。余計なもんとじゃれあう必要はねえ」
どうやら海賊の頭領は2人の異質さに気付いたのかもしれない。
多くの部下を纏める頭領なだけはあるという事だ。
「ふう。撤退してくれて良かったですよ」
1137
海賊が港町から去った後。
「どうどう!!」
馬を止めて現状を確認する炎蓮。
「ち、間に合わなかったか」
「うう…」
「ああぁ…わしの船が。積み荷がぁ」
周囲を確認すると悲壮感で包まれていた。
(ひでえ有様だな。海賊どもめ…荷も船も根こそぎかよ」
「ど、どう…!!」
炎蓮の後に彼女の上司である郭雄が遅れて到着する。
「こら、孫堅。私を置いて先に行くな」
「郭雄殿。海賊はもう姿を消しちまってるよ」
「ふむぅ…そうか」
周囲を見れば郭雄も状況を全て理解した。
「そりゃあそうだよ。アンタたち今頃やってきて何なのさ!!」
「な、何を申すのだ!!」
いきなり噛付いてくる漁民たち。彼らからしてみれば守ってくれるはずの役人たちがさっさと逃亡し、終わった後に戻ってくるのだから当然だ。
「海賊が去った後で呑気に見物かよ。お役人様は気楽なもんだな!!」
「く…」
好き勝手に言われているが間に合わなかったのは事実だからしょうがない。
「おい。港を守っていた役人や兵はどうしたんだ?」
「役人なんてみんな逃げちまったよ」
「逃げただぁ?」
「ああ、戦いもせんでなっ。おかげでわしの船が…どうしてくれるんじゃ!!」
「ぐぬぬ…なんという情けないう奴らか。後で厳罰に処さねばならんな」
郭雄は港町にいる役人が全て逃げ出した事に驚愕し、怒った。漁民の怒りも当然かもしれない。
「ま、戦った所で皆殺しにされただけスよ。あの海賊ども、相当な手練れのようだからな」
「孫堅……しかしまたしても多くの船や荷を奪われてしまったか」
此度のはここ最近 呉の近海で暴れ回っている名を上げてきた海賊だ。略奪を繰り返し、規模が大きくなっている。
既に海賊船は五十隻を超えている。口で言うのは簡単だが五十という海賊船は脅威でしかない。
「アイツらますます力をつけてるな。この分だと呉の港も危ないぜ」
「賊どもが呉の港に攻めてくると申すのか?」
「呉の港を落とせば長江の門が開く。オレが海賊ならもっと稼ぐために長江へ乗り込む。なんせ呉の水軍は弱ぇしな。州刺史殿にしても海賊退治には本腰を入れてねえ。今が狙い時だろう?」
「むむむ!!」
海賊を放っておいた結果が炎蓮の予測である。恐らく高確率で海賊は呉の港を襲ってくる。
「ほんと頼りにならないわね」
「県令さまが守ってくれないんじゃ俺たちは何のために税を納めているんだよ!!」
「そうじゃそうじゃ!!」
これでもかと文句を飛ばす漁民たち。海賊に奪われた船と積み荷は戻ってこない。
奪われた怒りをぶつけるのは守ってくれなかった役人しかいなかった。
「わ、私に言われても知らん。海賊を退治するほどの兵士を動かす権限はこの私には無いのだ」
県令である郭雄であっても多くの兵力を有していない。彼の言う通り兵を動かす権限も無い。
それだけの力が郭雄にあれば漁民たちに好き勝手を言わせないはずだ。
「左様に文句があるのなら太守殿に申すがよい!!」
「なんて言いぐさだい!!」
「あんた、それでも県令か!!」
「うぐぐ…」
言われっぱなしも郭雄もそろそろ我慢が出来なくなる。
「おい!!」
そろそろ郭雄がキレそうな時に、炎蓮が一喝で漁民たちは黙らせた。
「ごちゃごちゃうるせえんだよ。テメーら、ちったあ落ち着きやがれ!!」
「てめーらだと!?」
「落ち着いてなんかいられないわよ。だいたいアンタは何なのさ!?」
「オレは孫堅だよ」
「え!?」
「あんたが…孫堅!?」
己の名前を出した瞬間に漁民たちに動揺と驚きが走った。
「オレのことを知ってんのか?」
「あ、ああ…知ってるさ。孫堅って言やぁ呉の狂った虎って呼ばれてる役人だろ」
「呉の狂った虎ぁ?」
まさかの二つ名に微妙な反応をしてしまう炎蓮。
「孫堅は盗賊ごと街を焼き払ったって」
「山賊の根城を一人で乗り込んで賊を皆殺しにしたって聞いたぞ」
「いくらなんでも大袈裟だぜ。ま。似たような事はやったけどな」
実際に賊の隠れ家に火を放って辺り一面が焼け野原にしたり、川の堤防を破壊して賊の根城を水の底に沈めたりした。
しかし作戦が甘いのが関係無い者たちにも被害が出てしまった事もあるらしい。その場合はちゃんと弁償しているようだ。
「酒と博打に目がない、とても役人には見えないごろつきだってとも」
「はっは。そいつは正しいな」
酒と博打が好きなのは本当で、ゴロツキ風の恰好もしているので否定できなかった。
「いや、まさか。噂の孫堅がこんなに若い姉ちゃんだったとは」
「おう、おまけに飛び切りの美女だろう?」
「ん~、よく見ると器量良しね。まるで男みないな恰好をしているけど」
「オレはこれが動きやすくていいんだよ」
やはり誰が見てもゴロツキ風の恰好と判断されるようだ。
「お、おい孫堅。いつまでくだらん話をしているのだ。さっさと検分を済ませるぞ」
「まあ、待ちなっての」
「ぬ」
炎蓮が郭雄を手で制して漁民たちに顔を向ける。
「なあ、テメーらよ。明日から仕事がなくて困るんじゃねえのか?」
「ああ。俺たちの船はみんな海賊に持っていかれたから」
「く…船と積み荷はわしの全財産じゃった。本当にどうすればいいんじゃ」
「だったらオレが雇ってやるよ」
まさかの言葉にポカンとしてしまう漁民たち。
「へ、雇うとは?」
「そりゃあどういう意味だ?」
そのままの意味である。
「オレは交易をやっているんだ。ちょうど人手が足りなくてな。呉の街に越して来たら全員を雇ってやる。住む場所も給金もきっちり面倒見てやるぜ?」
「ほ、ほんとうかい!?」
「アンタ、オレたちをからかってるんじゃ」
財産と仕事を失った者たちにとっては希望の勧誘であった。
「オレは役人だ。民を騙したりしねーよ」
「しかし…」
「ま、好きにすりゃあいいさ。急に引っ越すのも難儀だろうしな。どうしてもこの港で踏ん張るってんだならそれもアリだと思うぜ」
「あたし…アンタのところに行くよ」
「俺も!!」
「本当にあんたを信じていいのかい?」
「呉の孫堅の言葉に嘘はねえぜ」
次々と炎蓮の勧誘を受ける漁民たち。明日を生きる為には彼女の勧誘は本当に希望なのだ。
「孫堅…いや、孫堅殿。どうかよろしくお願いいたします!!」
「孫堅様!!」
「調子の良い連中め。はっはっは!!」
先ほどまで役人に文句しか言っていなかった漁民たちは感謝の言葉へと変わっていた。
炎蓮の器の大きさを魅せた姿に郭雄は心の中で「ほう…」と呟いた。そして彼女が意外にも金を持っている事にも知った。
「さて、郭雄殿。そろそろ検分をしますか」
「あ、ああ。そうだな………おい孫堅」
「なんスか」
「あんな者どもを雇うとは…一体、どういうつもりなのだ?」
「アイツらが海賊に何もかも奪われたのはオレたち役人が不甲斐なかったせいだろ?」
役人の不甲斐ないせいと言われて否定できない。否定したかったが何も出来なかったのも事実なのだから。
「だからその責任を取っただけの話っスよ」
「まことにお前は変わった奴だな。ところで、そんなに交易で儲けているのか?」
「ああ、儲けてるぜ。それがどうしたんスか?」
意外にも商才がある炎蓮。そうでなければこの場にいる漁民たちを雇える事は出来ない。
「ん…こほん。それならば少し私にも都合してくれんか?」
「ああ?」
「刺史殿や太守殿への贈り物がな…近頃、賄賂の要求が厳しいのだ」
郭雄は県令であるが上には頭を下げたり、良い顔をしなくてはならない。
世渡りや出世には多くの金が必要なのだ。これも漢帝国の腐敗が進んでいる証拠である。
「へ、馬鹿な事抜かしてんじゃねえよ」
「なぁっ、何だその態度は!?」
「郭雄殿にカネを貸してオレに得があるんスか。あるなら貸してやってもいいけどよ」
「あんな民どもに情けをかけるくらいなら県令のこの私に貸しをつくったほうが得に決まってるだろう?」
「かーっ。まるで話になんねえ!!」
「何をぉ!?」
郭雄と炎蓮は上司と部下の関係だ。彼女の口の聞き方は普通に上司に対して失礼である。
それでも郭雄が許しているのは彼の人柄の良さかもしれない。尤も部下に対して金をせがむのもどうかと思うが。
「アンタはそうやって自分の器にふさわしい生き方をしてりゃいいさ。そんなアンタでも、その内このオレ様が使い道を見つけてやるからよ」
「な、なぬなっ、孫堅 貴様無礼にもほどがあるぞ!!」
「はーっはっはっはっは!!」
笑って金の都合に関して終わらせるのであった。それよりも考える事がある。
それは今後の海賊たちの動向である。彼女の予測では近いうちに呉の港街を襲ってくるはずなのだ。
(海賊か…奴らは略奪の度に武器や船を手に入れ、勢力をどんどん拡大してやがる。呉の街が襲われるのも時間の問題だな。なんとかしねーといけねえが)
何とかしたくとも敵戦力は大きい。そして炎蓮自身が海賊に対抗できる戦力を持っていないのもある。
(ったくよぉ。あの海賊どものせいで実はオレの商売もあがったりなんだよなぁ。またずいぶんと人を雇っちまったが、これじゃあ儲けが減る一方だぜ。天下を獲るにはカネがいんのによぉ)
交易をしているという事は船で商品を運んでいたりもしている。海賊が呉の近海を跋扈しているのは炎蓮自身も悩みの種であった。
(クソどもが…今にみてやがれよ。しかし、どうしたもんだろうなあ?)
対策を早いうち考えないといけないが、さっぱりと対抗策が浮かばない。
(郭雄殿は頼りにならねえ。刺史も太守も海賊の被害なんぞ見て見ぬフリをしてやがる。小せえ山賊や盗賊ならオレ一人で楽に叩き潰せるんだが、あの規模の海賊となったら…)
海賊の戦力は船五十隻はある。戦力差をどう埋めるか、どうやって退治するか、悩んでも答えはなかなか出なかった。
「…まずは検分するか。死傷者はいるか?」
「いや、幸い死傷者はいないよ」
重症、軽傷はあるとも全員が生存している。
「よく助かったもんだな」
「役人の代わりに助けてくれた人たちがいたんですよ。旅人なんですがね」
「なに?」
役人が逃げ出すような海賊相手に漁民たちを避難させて助けた旅人が3人いる。
その旅人たちはどうやら根性があるようだと評価し、興味が湧き出た炎蓮。
「そいつら何処にいるんだ?」
「彼らなら向こうに」
「顔を見に行ってみるか。郭雄殿も」
「待たんか孫堅」
たった3人で漁民たちを死傷者なく避難させたのは十分な働きだ。
海賊が呉の港町に襲ってくる時に備えて、その旅人3人は力になるかもしれない。
「おい。お前たちが……って、てめえらは」
「あれ、孫堅さん?」
旅人3人のうち2人は呉の街で見かけた者たちであった。
ここからが藤丸立香と炎蓮の物語の始まりである。
読んでくださってありがとうございました。
次回も5月中に!!
一週間後に更新出来たらします。
1135
母の日なのでちょっとした母の日の話。
なので炎蓮や紫苑たち年上系の方々が集まってたわけです。
1136~1137
英雄譚4のお話です。
炎蓮の過去のお話に藤丸立香たちがいたら?
というオリジナル展開の話。
郭雄
英雄譚4で登場する炎蓮の上司(過去での)
立ち絵はモブなんですよね。
小物感があるけど悪い人ではない。何だかんだで炎蓮も彼を邪険してませんでしたし。