Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
FGOでは新イベントである『落涙の翼』を楽しくプレイ中。
いやあ、今回の新イベントも面白いです。
物語もたぶんまだ中盤だと思いますが…中盤でも熱い!!
これが終盤に近づくとどうなっていくか楽しみです。





江東の虎物語-海賊退治①-

1144

 

 

前回までのあらすじ。海賊と戦いになる。

 

「夜が明けたか」

 

まだ薄暗いが雷火の目には海賊の姿をはっきりと視認していた。

海賊船の数は合計五十隻という戦力だ。その全てが呉の港町に押し寄せれば簡単に制圧される。

 

「これは…何という」

 

海賊船から銅鑼の音が呉の近海で鳴り響く。

その合図は今まさに呉の港町に襲い掛かると言ったようなものであった。

 

「突撃だーーーーーッ!!」

 

海賊の頭領が吼える様に号令をかけた。その号令に呼応するように家族たちは吼えた。

 

「「「おおおおおおおおおっ!!」」」

「きおった。くっ…なんたる船の数か。孫堅め、あの大船団をどうやって食い止めるつもりなのじゃ…?」

 

援軍も無く、呉の港町にいる兵士たち百人程度。海賊の戦力と圧倒的に差がありすぎる。

援軍を州刺史や太守に報せているが間に合うはずがない。そして間に合わせるために時間を稼ぐのも不可能とも思えてしまうくらいだ。

 

「んん? あの岬に立っておるのは…孫堅? あんな所で兵も率いずに、いったい何をしておるのじゃ。それに横にいるのはあ奴らは…」

 

岬の先に立つは孫堅。そして横には藤丸立香と太歳星君が居た。

 

「来やがったな海賊ども」

「たくさんいるぞー」

 

大小の海賊船が五十隻も海に並んでいるのは圧巻だ。

流石の炎蓮も実際に視認すると冷や汗をかいてしまう。いずれ大陸の天下を獲るというのに、この程度で弱気になるのはまだまだ自分は未熟だと思う。

未熟だと思う炎蓮だが、まだ大きな戦もしていない者がいきなり五十隻の船を保有する海賊と戦うとなれば弱気や不安になっても誰も責めはしない。

 

「ふー…」

 

炎蓮は深呼吸をし、冷静になろうとする。

ここで弱気や不安を見せたり、感じ取らせるわけにはいかない。

もしも弱気や不安を見せてしまえば、協力者たちの士気を落とす。そして海賊たちに勝利する事が出来なくなるのだ。

 

「準備は万端だよ孫堅さん」

「ワガハイも手伝い頑張るぞ」

 

チラリと声をかけてきた2人に顔を向ける。

藤丸立香と太歳星君。その他にも仲間がいるらしいが、彼らは呉の外れの港町で出会った旅人たちだ。

海賊たちによる襲撃があった時、漁民たちを避難させて被害を少なくさせた彼らに協力を得られた。此度の戦いでも協力をしてもらえればと思っていたが予想以上に役に立っていた。

 

(正直に言えば不気味なくらいにオレにとって都合が良すぎる段取りをしてくれたもんだぜ)

 

海賊たちに勝利するために炎蓮が考えた策がある。

雷火との会話で思いついた策であったが藤丸立香たちは既に彼女が考えた策を知っていたかのように準備をしていたのだ。

当たり前のように「何でだ?」と聞く。すると返って来た返事は「仲間に頭が良い人がいるから」であった。

 

信じられないが藤丸立香の仲間に炎蓮と同じ策を考えた者がいるだけでという事。ふと思い出すは糸目の爽やか男の太公望。

それでも準備まで既に始めているのもおかしいと思うが今となっては助かっている。海賊たちが攻めてくるのに間に合ったのだから。

 

(色々と追及したいところはあるが今はそれどころじゃねえからな)

 

今すべき事は海賊たちに勝利する事だ。

勝利条件は海賊を倒す事ではなく、勝つ事だ。その勝つとは海賊たちに呉の港町に上陸させない事である。

 

「さて、やってやるか」

 

炎蓮は目を見開いて海賊たちを睨みつけた。

 

「このまま港へ突っ込むぞ。進めーー!!」

 

海賊の頭領は声を落とさず吼え続ける。全ては士気を落とさないようにするため。

 

「お頭!!」

「どうした?」

「見ろ、あそこに孫堅がいるぞ!!」

「む…?」

 

海賊の頭領は岬に立つ炎蓮を見つける。

 

「…よし、今だ。合図を送れ!!」

 

炎蓮も海賊船を見ながら合図を送るように指示する。

 

「おう!!」

 

藤丸立香は力強く太鼓を叩く。太鼓の音が呉の近海に響き渡る。

 

「ワガハイの鐘も鳴らすかー?」

「まだいいかな」

 

太鼓が強く重圧に鳴り響く音は海賊たちにも聞こえる。

 

「太鼓だと?」

 

何の合図かと思った海賊頭領だったが部下の声が耳に響く。

 

「頭、南から船団が!?」

「なに?」

「あの旗は太守の船団じゃないか!?」

「な、何故、太守殿の船団が?」

 

居るはずがない太守の船団に海賊たちは焦りを滲み出した。

 

「続けて合図を送れ!!」

「分かったのだー!!」

 

炎蓮の指示に今度は太歳星君が太鼓を元気よく叩く。またも太鼓の音が海に響き渡った。

 

「お頭。北からも船団が現れたぞ!?」

「あの旗印…州刺史の船団だ!?」

(馬鹿な…刺史も太守もまだ動いていないはずだ。船団がこんな場所にいるはずはない)

 

部下たちは焦りを見せているが海賊頭領は冷静になろうとする。

 

(これはどうなっておる? いつの間に援軍が…いや、到着が速すぎる)

 

別の箇所で状況を見ていた雷火も現れた太守と州刺史の船団に驚愕する。援軍要請は確かに報せたが到着したにはあり得ない程に速いのだ。

 

「よーし、いいぞ。北と南から取り囲め。十隻を敵の背後に迂回させ、退路を断つのだ!!」

 

藤丸立香と太歳星君は太鼓を力強く叩く。

 

「まだ矢は射かけるな。海賊どもを包囲して一網打尽にする!!」

 

炎蓮が的確に指示し、藤丸立香と太歳星君が太鼓を叩いて合図を送っていく。

 

「ぐ…まさか、これは罠じゃないですかい!?」

「お頭、謀られたんだ!!」

「待ち伏せだ。このままじゃ囲まれるぞ!?」

 

海賊たちは焦りに焦った。

 

「今だ。港に待機している船団を前へ。押し出せーーーー!!」

 

炎蓮が大きな号令を出す。そして太鼓の音が鳴り響くと太守と州刺史の船団が海賊船に向かって進む。

あり得ない光景に海賊たちは慌てふためく。如何に船を五十隻と部下五百を超える海賊としても本腰を入れた太守と州刺史の船団とやり合うつもりはない。

戦ってまで呉の港町から物資を奪うには割に合わない。普通であれば撤退を選ぶのが当然であった。しかしその選択は今回ばかりは選ばれなかった。

 

「こりゃあ港を攻めるどころじゃねえぜ!?」

「一旦、沖へ引き返そう!!」

「待て野郎ども」

 

慌てふためく海賊たちを落ち着かせたのは海賊頭領であった。彼は冷静に状況を分析していた。

この外史本来の歴史であれば、海賊頭領はこの場で撤退の指示を出していた。しかし彼は撤退の指示を出さずに相手の船団と炎蓮を睨む。

 

呉の港町を襲撃する前に現れた「怪しい奴」の助言を思い出す。

その者いわく、孫堅(炎蓮)の策に騙されるなとの事。何が起きようとも港に向かって進むが良しとの事。

 

「お前ら、このまま船を突き進むぞ!!」

「ええ、お頭本気ですかい!?」

「よくよく冷静に考えろ。太守や刺史の船団がこんな早くに現れるはずねえだろ!!」

「で、でも目に見える船は…」

「あんなもの偽物だ。ただ太守と刺史の船団のように見せかけているだけだ!!」

 

本来の歴史であれば海賊頭領は炎蓮の策に騙されて撤退を選ぶ。しかし「怪しい人物」とやらの助言で本来とは逆の選択を海賊頭領は選ばされたのだ。

 

「っ、海賊どもがこっちに向かってくるだと!?」

 

炎蓮は一瞬だけ焦りを見せてしまった。

彼女が考えた策は海賊を騙すもの。太守と州刺史の船団だが本物ではない。ただのそう見せかけているハリボテ船だ。

中身は漁船や商船であり、史と太守の旗印を勝手に掲げただけの船である。勿論、船を動かしているのは役人の兵士ではなく港町の漁民たちだ。

 

今回の作戦はいるはずの無い太守と州刺史の船団に騙されて海賊が撤退する事を望んでいた。

 

(………策は失敗したってのかよ!?)

 

海賊は撤退する事なく、呉の港町に向けて進んでくる。本来であれば海賊は撤退していたが歴史が改変している。

 

(まずい…このままじゃ協力してくれた漁師たちが危険だ)

 

船を操るは漁民たちだ。もしも海賊と戦闘になったら殺されてしまう。

海賊に策が騙しだとバレないようにハッタリを利かせていた。それこそ自信満々にあたかも大軍の指揮を執って海賊を包囲殲滅するかのような身振りをしたのである。

 

(クソッ…海賊どもを欺けなかったのかチキショウ)

 

もしもの為に兵を乗せたのは港に待機している船団だけ。すぐに漁民たちを乗せた船を撤退させねば皆殺しにされ、海の藻屑にされてしまう。

焦りを見せてしまったがすぐに冷静になって指示を出さねばならない。まず協力してくれた漁民たちの安全だ第一だ。そして兵を乗せた船に自分も乗って戦わねばならないかと思案する。

 

時間はなく、すぐに藤丸立香と太歳星君に撤退の合図を送れと言おうとした時に太鼓の音が響いた。

 

「おい勝手に太鼓を叩くな!!」

「策は失敗したよ孫堅さん」

「分かってるよ!! だから撤退を…」

「策の第一段階は失敗した。なら次の策だ孫堅さん」

「は?」

 

本当であれば第一段階の策。それは炎蓮が考えた策で成功するのが一番良かった。しかし何者かに歴史は改変され、本来とは異なる状況になっている。

ならばここからが藤丸立香たちが本当の役割をこなすだけである。歴史の改変を元に戻すのはいつもやっている事だ。

 

「次の策ってなんだよ。てか、まだどうにか出来るのか!?」

「うん。オレの仲間には頭の良い人がいるんだ」

 

策とは不利な状況でも勝つために絞り出すものだ。

 

 

1145

 

 

炎蓮の策は失敗に終わった。本来であれば成功していたはずだが于吉の刺客が既に仕掛けていたのか海賊たちは策に騙されず呉の港町へ直進している。

 

「おい、どうするんだ」

 

ここから先は炎蓮はノープラン。一応、もしもの為に兵を乗せている船団はいるが海賊に勝つ道筋は限りなく薄い。

海賊を騙す策が失敗した事で街に常駐している兵士たちだけで戦うしかないと思われたが、新たな策が炎蓮に授けられる。

 

「こっからはオレらの策に…戦い方をさせてくれないか孫堅さん」

「お前らの戦い方?」

 

正直に言えばこの状況で打開策があるならいくらでも乗る。

 

「…オレは何をすればいい?」

「孫堅さんは大将だ。ドンっと構えてて欲しい」

「はっ。ハッタリでも何でもドドンっと構えてやるよ」

「そして指示は出し続けて欲しい」

「指示っつったってどんな指示をすればいいんだよ?」

「海賊を出来る限りに港に近づけさせるのを遅らせる様に」

 

官軍に見せたハリボテ船で海賊船の進路を阻害する事だ。

海賊船に突撃しろとは言わない。漁民たちが海賊船に乗り込んで戦えとは言わない。

 

「分かったぜ。で、海賊をどうやって撃退するんだ?」

「特攻隊の船をこっちから出す」

 

藤丸立香が手を挙げると港からモーターボートのように推進する小舟が一隻。

 

「何だあの船 速すぎだろ!?」

 

ありない速度で推進する船には誰かが2人乗っている。その2人は黄飛虎と哪吒。

 

「どうやってあんな速度を出してるんだよ!?」

 

2人が乗っている小舟がモーターボートのような推進力を出している理由は哪吒だ。

哪吒の持つ宝具(宝貝)である風火輪をエンジン代わりにしてこの外史世界ではまだ到達していない推進力を生み出している。

2人は恐れずに海賊船へと突っ込んでいく。

 

「あの速さには驚いたがあいつらだけで大丈夫なのかよ?」

「うん。2人は戦いの達人だから」

 

そう言う藤丸立香に炎蓮は黄飛虎と哪吒が乗る小舟をもう一度確認する。すると海賊船(小)に向かって黄飛虎が跳んで武器を叩きつけて沈没させた。

 

「哪吒!!」

「了解 次!!」

 

黄飛虎はもう一度、己の小舟に乗り直して次の海賊船(小)を沈没させていく。

船は人を乗せて海や川を進む。人が水の上を攻略した成果である。しかし壊されれば人は為すすべもなく水に沈まされる。

海の男と言われる海賊も船が無ければなすすべもない。武器も振るえずに沈むだけだ。

 

「哪吒よ次は迂回するぞ!!」

「了解 風火輪噴射!!」

 

風火輪の噴射と同時に黄飛虎は櫂を使って上手く進路を曲げる。そして新たな海賊船(小)を沈没させていく。

海賊船(小)は『艇』や『赤馬』、『先登』レベルのもの。この程度の大きさであれば黄飛虎や哪吒が沈没させられる。

 

「…おいおい、とんでもねえな」

 

黄飛虎と哪吒の活躍で小回りの利く船は沈没させられていく。先に小回りの利く船をどうにかしなければ港に上陸させられる恐れがある故にだ。

たった一隻の小舟で複数の海賊船を沈没させていくのは圧巻。本当に『強い』や『凄い』という言葉しか出ない。

 

「すげえ奴らだな。だがデケェ船はどうする?」

 

大きい船とは『楼船』や『露橈』レベルのものだ。特に『楼船』は簡単には沈没させられない。

 

「狙うは頭領の乗っている船だ。どんな戦でも大将を落とせば勝ちだよ」

「まあな……まさか敵頭領の乗ってる船を沈没させるって事か?」

「ああ」

「出来るのか?」

「出来る」

「言うじゃねえか」

 

自信満々に言い切る藤丸立香に炎蓮は笑う。

 

「オレの仲間が実は既にあの船に乗っているんだ」

 

藤丸立香が指さす船は官軍に見せかけたハリボテ船。『艨衝』という船だ。

『艨衝』は頑丈な船首を持つ細長い快速船。猛スピードで突入し敵船を破壊する目的とした船である。

 

「まさかあの船でデケェ船に突貫するわけじゃねえよな? まあ、破損させる事は出来そうだが…」

「しないよ。作戦はこう」

 

藤丸立香は海賊頭領の乗る船を沈没させる策を炎蓮に伝える。

 

「なるほどな」

「策を成功させるために当然だけど海賊を上陸させてはいけない。そして敵頭領の乗る海賊を引き付けないといけない」

「オレの役目は仲間に指示して海賊船の陣形を崩せばいいのか」

「うん」

「徹底抗戦だ。船を出すぞ!!」

 

炎蓮と藤丸立香たちは港に待機させていた兵士たちが乗る船に乗り込んで海へと出る。

外史世界における孫堅(炎蓮)の歴史の中で起きるはずのない海賊攻略戦が始まる。

 

 

1146

 

 

港に待機していた兵士の乗る船が動きだした。その様子を確認するは『艨衝』という船に乗っている太公望。

どうやらマスターである藤丸立香が炎蓮に第二段階目の策を伝え、了承を得られたという事だ。

 

「ふむ…」

 

黄飛虎と哪吒が海賊船(小)を次々と沈没させているおかげで敵頭領が乗る船への道も見えてきた。

ここから自分の仕事だと確信し、太公望は同じ船に乗る漁民たちに声をかける。

 

「皆さん。ここから本番です」

「ほ、本番?」

 

漁民たちは最初の策が失敗に終わった事で不安がっていた。しかし太公望は言葉巧みに彼らから不安を取り除く。

 

「海賊たちを騙して撤退させる策は失敗しました。しかしまだ終わりではありません」

「まだ何とかなるのか?」

「はい。その為に貴方たちの力をお貸しください」

 

船を動かすには太公望だけでは不可能だ。漁民たちの力が必要である。

 

「僕と一緒に海賊を倒しませんか?」

「海賊を倒すだって?」

「ええ。貴方たちはあの海賊たちから奪われた者たちです。では、今から仕返しに行きませんか?」

 

太公望と一緒の船に乗る漁民たちは呉の外れの港街にいた者たち。そして海賊に苦渋を飲まされた者たちでもある。

 

「孫堅殿も諦めていないようですよ」

 

呉の港に待機していた船が進んできている。そして炎蓮の大声による指示と太鼓の音が響いている。

 

「まだ負けていません。貴方たちの力が必要です」

「でもどうやって海賊を倒すんだい」

「そうだ。あの大きい船をどうやって…」

「作戦はこうです」

 

太公望は敵頭領の乗る海賊を沈没させるさせる策を伝える。

もう奪われるのは勘弁だ。なら今度は此方が仕返しをする番だ。

 

「そんな事が出来るのか?」

「でもこのままやられるよりはマシじゃないか?」

「なら…やってやろうじゃねえか!!」

 

漁民たちがヤル気を出し始める。

 

「僕と一緒に海賊を倒して英雄になりませんか?」

「ああ、やってやろうじゃねえか!!」

「海の男は海賊だけじゃねえ事を見せつけてやる!!」

「海の女だっているわよ!!」

 

士気が再燃し、漁民たちはすぐに船を漕ぎ出す。目指すは敵頭領が乗る海賊船。

 

「さあ、小舟が大船をひっくり返しますよ」

 

炎蓮率いる船団と海賊団の海戦だ。

 

「南側にいる船団は海賊の後ろに回り込めーーー!!」

 

太鼓の音に負けないくらい炎蓮は吼えるように指示を出す。

 

「次ぃ、北側にいる船団は迂回し横っ腹に向かって進めーーーー!!」

 

炎蓮の自信満々な指示に海賊の頭領はいぶしかんだ。海賊を騙す策は見抜き、突破した。もはや打つ手はないはずであったが炎蓮の徹底抗戦の姿勢である。

そもそも船に乗って海に出てきた事や、あり得ない速度で小回りが利く船を沈没させている小舟も予想外であった。

 

「頭、どうしますか」

「孫堅が何をする気か知らんが…所詮は悪あがきだ」

 

炎蓮が率いる船団は呉の港町に上陸させないように海賊船の進路を邪魔する動きをしているのは理解している。そして乗り込んでこない事も察した。

 

周囲にいる船団に戦える船員はいないと理解し、しかも兵士がいるのは炎蓮が乗っている船だと予測した。

戦力は依然、海賊の方が上である。しかし気になるのはあり得ない速度で動き回る子船だ。

 

「あの舟がどうやってあの速さを出しているか知りたいが…しかし我が船を沈没させていくのは気に食わん」

 

海賊の頭領は副頭領に視線を送る。

 

「オレの出番だな頭領」

「ああ。あいつから貰った力を早速使え」

 

頭領の言う「あいつ」とは炎蓮の策が海賊を騙す策と教えてきた「怪しい奴」だ。実は頭領と副頭領はその者から力を与えられていた。

怪しい奴と警戒はしていたが特別な力をくれるというのであれば遠慮せず貰った。そもそも、その者の狙いは孫堅(炎蓮)だ。

孫堅(炎蓮)を倒せるのであれば海賊だろうが何だろうが利用したいという事だと予測している。

 

「行ってくるぜ頭領」

「気を付けろ」

 

副頭領は海賊船から海へと跳び込んんだ。

 

「よし、お前ら。オレ様たちはこのまま呉の港へと進むぞ!!」

 

海賊頭領はそのまま呉の港町へと進む。

 

「藤丸の仲間が次々と敵の小舟を沈没させているが主力は依然に突き進んできやがるな」

 

炎蓮は指示を止めずに漁民たちの乗る船団を動かしている。しかし時間の問題でもある。

 

「孫堅殿。このままでは海賊船にぶつかります」

「ああ」

 

孫堅の乗る船と海賊船が向かい合うように進んでいる。

 

「このまま進め」

「しかし」

「問題ない。オレを信じな」

 

このまま進むのも策である。尤も策というよりも度胸勝負だ。

 

(これで良いんだよな?)

(ああ。このまま進んで)

 

このまま突き進むのは海賊船の進路を変えたいからだ。

海賊も孫堅の乗る船と衝突しようとは思わない。ここからは炎蓮のハッタリをかます演技の勝負。

 

「このまま突き進めーーー!!」

 

海賊に炎蓮の乗る船は相打ち覚悟だと思わせる事だ。

 

「頭ぁ。孫堅のやろうは突っ込んできやすぜ!?」

「……まさか自暴自棄になったか?」

 

呉の港町を守る為に命を賭けて海賊船を沈没させようと躍起になったのかもしれないと判断した海賊頭領。

あり得ない速度で走る小舟は予想外であるが依然、戦力は海賊が上だ。敗北するという未来は海賊頭領には無い。

 

「チッ…このまま突っ込んでも衝突するだけだ。向こうが乗り込んでくるってんならウチの自慢の部下たちで蹂躙するだけなんだが、ただ衝突する為だけに来るってんのなら…」

 

海賊頭領はすぐさま部下に指示を出して船の進路を変えた。

 

「孫堅殿。海賊が進路を変えました!!」

(ハッタリはオレの勝ちだ。しかしまだだ…)

「此方も進路を変えますか?」

「ああ。敵大将の船を追うんだ。ピッタリと横に付くんだ!!」

 

海賊船を追うように進路を変える。

 

「頭。孫堅のやつぁが追ってきやすぜ!!」

「何が何でもオレらに衝突する気か。チッ……他の船団で囲んで仕留めろ」

 

海賊船が一隻沈没するかもしれないが頭領の乗る主船を沈没させられるかはマシと判断。

 

「おーい。いっぱい海賊船がワガハイらの船に近づいて来てるぞー」

「予想通り主船を守る為に他の船を寄越したか」

 

頭領の乗る船を沈没させたいくないのは当然だ。ならば他の船を身代わりにするはずである。

 

「このままでは囲まれます孫堅殿!!」

「ああ、離脱だ。全力で漕げ!!」

 

孫堅の乗る船は全力で海賊船に囲まれないように兵士たちが櫂で全力で漕ぎ始める。

 

「敵船の進路は変えた。こっちの仕事は果たしたぜ」

 

海賊を撃退する為の策は次の手に。

 

「頭。孫堅のやろうが逃げましたぜ!!」

「ふん。やっぱオレの乗る船を狙ってたか」

 

海賊頭領と主船を沈没させれば海賊の士気を下がる。なれば海賊団は大混乱に陥る。

 

「ふん。貴様の考えは読めてるぞ孫堅!!」

「頭ぁ!!」

「今度は何だ?」

「中型の船がこっちに来やすぜ!!」

「何だと?」

 

海賊頭領の視界に入るは『艨衝』という船。そして数人の船員。

 

「こっちに来る。まさか突撃する気か?」

 

『艨衝』の役割は知っている。大型船での突撃が失敗した保険かと予想する。

 

「どうしますか?」

「矢でもくれてやれ」

 

海賊たちは矢を構えて放つ。

 

「伏せてください皆さん」

 

『艨衝』に乗る太公望は打神鞭にて矢を撃ち落とす。

 

「さあ。このまま突撃しますよ!!」

「頭、矢を撃ち落とされました!?」

「なに。チッ……艨衝は正面から向かうな。横っぱしらに付いて沈没させてしまえ!!」

 

海賊船が太公望の乗る『艨衝』の横に近づいて行く。

 

「よし、こっちに来てくれましたね。皆さんこのまま全力で漕ぎますよ!!」

「任せな!!」

「ええ、やってやるわ!!」

 

太公望と乗る漁民たちは櫂で漕ぎまくる。

 

「このまま漕いで敵船の前に出ますよ!!」

「「「おお!!」」」

 

『艨衝』は海賊船の前に出る。

 

「オレらの前に出るとは馬鹿な奴め。お前たちこのまま全力で漕いで奴らの船に突撃して沈めてしまえ!!」

「「「おお!!」」」

 

『艨衝』は敵船に衝突してこそ真価を発揮する。しかし後ろを見せてしまえば意味はなし。

 

「ふん。自分たちがどのような船に乗ってるか分かっていない素人どもめが」

 

海賊頭領は太公望たちを馬鹿にする。船乗りが船の真価も発揮できないようでは当然の評価かもしれない。

 

「…良い感じに付いてきてくれてますね」

 

太公望が何も考えずに船を進ませているはずが無い。

海賊船の前に出て良い狙いの的になったのはワザだ。自ら狙いやすい的になれば敵は追撃したくなるものだ。獲物を狙う獣の気持ちのようなもの。

敵・邪魔者が近くにおり、狙いやすい場所にいるのであればさっさと討つと考える。海賊たちは見事にその考えに嵌ったわけである。

 

「皆さん、そろそろ準備を!!」

 

太公望は打神鞭を振るって近くの岩に巻き付けた。

 

「ふん!!」

 

岩に巻き付いた打神鞭を力の限り引っ張る。

 

「船の進路を無理やり曲げます。櫂で補佐をお願いします!!」

「「「おお!!」」」

 

打神鞭を巻きつけた岩を中心に無理やり船を急旋回。

 

「僕、筋力Dなんですけど頑張りますよ!!」

 

本当は黄飛虎であれば適任だが彼は小回りの利く海賊船を相手している。

小回りの利く海賊船に現在の状況を邪魔されないために黄飛虎と哪吒に出てもらっているのだから文句は言わない。

 

「あんな無理やりに船を旋回させただと!?」

「こっちも旋回しやすぜ頭領!!」

「いや、逃げたのならこのまま港……なぁっ!?」

「どうしやした頭!?」

 

ここで海賊頭領は自分たちが誘い込まれたと理解した。気付くのに遅すぎた。

 

「すぐに旋回しろっ。このままだと岩礁地帯に突っ込むぞ!?」

 

海賊頭領が誘い込まれたのは岩礁地帯。

海賊の主船は太公望の乗る船に突撃して沈没させるために速度を出しすぎていた。

 

「早く旋回しろ!! いや、速度を落とせぇぇぇ!!」

 

このまま海賊船が岩礁地帯に突っ込めば座礁する。速度が乗っていれば最悪勢いによって海賊船が転覆する可能性だって大いにある。

鉄の船でさえ岩礁地帯に座礁すれば壊れるのだ。木製の船であれば砕け散ってもおかしくない。

 

「狙い通りですね。再見……いえ、再会は望んでませんけど」

 

太公望は二本指をピッと振るジェスチャーを海賊頭領に送った。

 

「あ、あのヤロウがああああああああああああああ!?」

 

海賊頭領が乗る主船は岩礁地帯に突っ込んで砕け散りながら座礁するのであった。




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新も6月中と考えてます。
海賊との戦いも次回で決着がつきます。


1144~1145
途中までは原作と似た流れですが途中でオリジナル展開になりました。
海賊が孫堅の策に騙されなかった場合です。
ここからが藤丸立香たちの出番です。

黄飛虎と哪吒
2人なら小型から中型の船を沈没させれそう。
なので本編のような活躍になりました。
哪吒の風火輪をエンジン代わりに使用すれば小舟もモーターボートになってもおかしくないと思います。


1146
黄飛虎たちが海賊の小型の船や中型の船を沈没させて、海賊戦隊の動きを遅くする。
炎蓮たちの乗る船で海賊主船の進路を変える。
太公望たちが海賊主船を岩礁地帯に誘導する。
こんな感じの展開でした。

特に太公望たちが岩礁地帯に誘き出す展開は、「ある海賊映画」をオマージュしたものです。
海賊映画ってなるとやっぱりすぐ分かるかもしれません。

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