Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
FGO『落涙の翼』クリアしました!!

今回もとても面白い物語でした。
敵も味方もとても良いキャラでしたね。
エフェメロスもイプシロンも可愛い。サバージオスも敵でありながらも嫌いになれませんでしたね。
そしてそして物語終盤のイスカンダル召喚からの展開は心が熱くなり、感動しました。
イスカンダルとウェイバーのやりとり尊い。



江東の虎物語-海賊退治②-

1147

 

 

呉の近海にて。

黄飛虎と哪吒コンビは風火輪を利用した小舟の推進力で海を走り回っては小型・中型の海賊船を沈没させていく。

海賊は船の上での戦闘には慣れている。しかし海賊であろうが官軍であろうとも海(水中)に落ちればなすすべ無し。

 

「次の船は右だ哪吒殿!!」

「了解 船 旋回!!」

 

2人の子舟操作は見事なものだ。

海賊たちの船の動かし方も上手いが黄飛虎と哪吒の操作は上手い上にアクロバティック過ぎる。

 

「お、おい。こっちに来やがるぞ!?」

「い、一旦逃げろ!?」

「逃げねえで戦うんだよ!!」

「でもこの船の上じゃあ!?」

 

海賊たちも船を沈没させられっぱなしではいられない。黄飛虎と哪吒に対抗する気概を見せる者もいるが足場が悪いのだ。

中型の船はまだマシかもしれないが小型の船ともども足場は狭い。黄飛虎や哪吒は敵ではなく、敵船を破壊すれば後は勝手に海賊は無力化する事を狙って動いている。

たった短い時間で2人で小型・中型の船を数多く沈没させているのが海賊からすれば驚愕しかない。

 

「う、嘘だろ!?」

「大海賊であるオレらがたった2人に船を沈められてるだと!?」

「ま、負けるな。こっちもあっちの船にを破壊してやれ!!」

「でも、あいつらの船に追いつけねえぞ!?」

 

手漕きの船とエンジン(風火輪)付きの船では馬力が違う。

 

「黄飛虎 太公望動いた」

「よし。どうやら策は大詰めのようだな」

 

黄飛虎と哪吒の役割は小型・中型海賊船の動きを邪魔する事。

推進力の高い小型・中型の船を呉の港に近づけさせない為と太公望の策である海賊主船を誘導して座礁させる為だ。

 

「某らの仕事は上手くいったな」

 

上手くいきすぎている所か予想を超える働きである。

たった2人で小型・中型とはいえ、多くの海賊船を沈没させているのだから。しかし海賊もやられっぱなしではいられない。

 

「ヨクモ、俺ラの船をイクツモ沈めたナァ!!」

「妖気感知 妖魔接近!!」

 

哪吒は自分たちが操作する小舟の背後より近づく妖魔に視線を向ける。

 

「新手か!!」

 

黄飛虎も背後を見ると何かが凄い勢いで泳いできている。風火輪をエンジンとした小舟に泳いで近づくとは並大抵の者ではない。

何者か視認するために黄飛虎は目を細めながら接近する敵を見る。

 

「アレは…」

「鮫」

 

人語を話す巨大な鮫が接近してきていた。

 

「テメエら許さン。船諸共テメエらヲ噛み殺シてヤらぁ!!」

 

人語を話す巨大な鮫の正体は海賊副頭領。妖魔の力を与えられた故の姿だ。

与えられた妖魔は『大鯖』。

琉球伝説に語られる巨大な怪魚であり、沖縄の方言で鯖(サバ)とは鮫(サメ)。実は正体が妖魔ではなく、ただの鮫だったとも言われてもいる。

ただの鮫であっても海で鮫に襲われるのは妖魔に襲われるのも同じだ。人が鮫に襲撃される事件は現実に起きているからこそ侮れない。

 

「噛み殺ス。嚙み砕イて殺ス。俺ラ海賊ヲ…舐めタ事ヲ後悔サセテやらァ!!」

「鮫 急接近」

「まさかサメ映画みたいな事になるとはな」

「アイツ 妖魔に侵食されてる」

 

大鯖(海賊副頭領)に追いかけられては小型・中型の海賊船を沈没させられない。

 

「哪吒殿。妖魔退治だ。舟の速度を上げて奴を引き付けるぞ」

「了解」

 

哪吒は風火輪の馬力を上げる。

 

「舟ノ速度を上げタか。だが今ノ俺なら追いツけるぞ!!」

 

大鯖(海賊副頭領)も泳ぐ速度を上げる。

 

「接近変わらず 妖魔 誘導成功」

「よし。旋回して迎え撃つぞ」

「了解 妖魔討伐開始!!」

 

小舟を急旋回させて大鯖(海賊副頭領)と向かい合いながら走らせる。

 

「俺ニ噛み砕かレル準備ガ出来たッテ事だなァ!!」

 

大きな口を開き、牙をギラリと光らせる大鯖(海賊副頭領)。その姿を見せても黄飛虎と哪吒は恐れず小舟を進める。寧ろ速度を上げているくらいだ。

 

「死ネエえエえエええエええイ!!」

「喰われる気はない。しかし某らの武器なら食わせてやるぞ!!」

 

黄飛虎のスキル『黄家の絆(B)』の発動。

 

「天化、天禄、天爵、天祥!!」

 

大鯖(海賊副頭領)の周囲に青年から幼い4人の武人たちが出現する。

 

「出番だ出番だ!!」

「天祥が一番乗りです!!」

「我が銀錘を見よ!!」

「行きます!!」

「な、何ダコイツら。どっかラ現れたタ!?」

 

彼らの正体は黄飛虎の自慢の息子たちだ。

黄天化の双鎌による斬撃が、黄天禄の槍での連続突きが、黄天爵が持つ中国刀の斬撃が、黄天祥の投擲する中国刀が大鯖(海賊副頭領)に集中砲火。

 

「グぎャああアアアああア!?」

「トドメだ!!」

 

最後に黄飛虎が神気の纏った槍を大鯖(海賊副頭領)の大きく開いた口に向かって力の限り投擲。

 

「ゴォぎャああああアアアあああアアああアあ!?」

 

神気を纏った槍は大鯖(海賊副頭領)を貫ぬき、絶命させる。最後に海賊副頭領が見たものは黄飛虎ではなく、海賊主船が岩礁地帯に座礁した光景であった。

 

「どうやら丞相殿も成功したようだな」

 

 

1148

 

 

黄飛虎と哪吒が海賊副頭領を倒し、太公望が海賊頭領が乗る海賊主船を岩礁地帯に座礁させた。

この結果から残った海賊たちは混乱し始める。何せ頭領と副頭領という司令塔が敗北したのだから残った部下たちは動きが止まり、どうするか慌てふためくものだ。

実際に遠くから海賊たちを見ると「頭領と副頭領が!?」や「ウチらの主船が!?」とか聞こえてくる。もはや炎蓮や太公望たちを倒そうと思っていない。呉の港に襲撃しようする気も失せている。

組織のトップを倒せば瓦解する。特に烏合の衆となればトップが消えれば霧散するように消滅する。

 

「孫堅殿、海賊たちが撤退していきます!!」

「ああ、見えてるぜ。この戦いオレらの勝ちだ!!」

 

大きな海賊団だが所詮は烏合の衆であったのが頭領と副頭領が敗北した事で部下たちは戦いを諦めて撤退を選んだ。

炎蓮は追撃の指示はしない。戦力に余裕があるのなら追撃したかもしれないが、実際は余裕がない。撤退してくれるのなら、様子を見るだけでいい。

いずれは残党も討伐せねばならないが、それは太守や州刺史が本腰を上げてもらわねばならない。

 

「勝鬨を上げろぉおおおおおお!!」

「「「おおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」

 

炎蓮の勝鬨に兵士たちは呼応するように大声で勝鬨を叫ぶ。

 

「策は成功したな」

「うん。これでもう大丈夫だね孫堅さん」

「勝ったのか。ワガハイあまり活躍なかったなー」

「そんな事ねえぜ。お前らもよくやってくれたよ」

 

ニッと笑う炎蓮。それにつられて藤丸立香と太歳星君も笑った。

これにて孫堅(炎蓮)の海賊撤退作戦の活躍は改変されなかった。内容は異なるが結果的に同じである。

 

「太公望たちにも戻って貰わないと……あれ、太公望の乗る船が戻ってきていない?」

 

藤丸立香が太公望の乗る船の方に視線を移す。どうやら戻っておらず太公望は座礁した海賊主船を観察している。

 

「釣り人さん?」

 

一緒に乗っている漁民も太公望が黙って座礁した海賊主船を見ているので気になって声を掛けるが反応はない。彼はずっと座礁した海賊主船を見ている。

これには理由があり、海賊頭領の動きを見張っているからだ。それは以前に哪吒が報告していた海賊頭領からの妖気。

海賊副頭領は妖魔の力を与えられていた。哪吒の報告も含めると海賊頭領が妖魔の力を与えられていないわけがない。

 

(まだ動かない)

 

太公望は打神鞭を手で遊ばせながら座礁した海賊主船を注意深く観察する。

海賊頭領が妖魔の力を開放した時にすぐ対応できるためにいつでも迎撃する準備をしているのだ。

 

「あのぉ…釣り人さん?」

「このまま待機で…いえ、すぐに船を動かせるようにしていてください」

「は、はい」

 

ジィィっと見ていると水面に動きを確認。何かが物凄い速さで泳いで接近。

 

「来た」

 

太公望は打神鞭を構えていつでも迎撃準備完了。

 

「来い……って、アレ」

 

物凄い速さで泳いでくる何かは太公望の乗る船を無視。

 

「僕を無視ですか!?」

 

物凄い速さで泳ぐ何かは恐らく妖魔の力を開放した海賊頭領だ。太公望の策で海賊主船を座礁させたのだから恨みが向いているはず。

故に狙いは太公望自身かと予想していたが海賊頭領は無視して別に向かっている。

 

「海賊頭領の向かう先はまさか!?」

 

すぐさま太公望は漁民たちに指示して船を炎蓮と藤丸立香が乗る船に戻る。そして術式を展開して藤丸立香に連絡を飛ばす。

 

「マスターそっちに海賊頭領が向かいました。気を付けてください!!」

 

 

1149

 

 

太公望からの緊急連絡が入る。

海賊頭領が妖魔の力を開放して座礁した海賊船から炎蓮と藤丸立香たちが乗る船に急接近。

狙いは恐らく炎蓮。海賊頭領は自分たちがやられたのと同じようにトップを狙おうをしている。トップすなわち炎蓮を倒そうとしているという事だ。

 

「孫堅さんまだ終わってない!!」

「なに?」

 

海から何かが飛び出す。その正体は予想通り妖魔の力を開放した海賊頭領であった。

 

「孫ォン堅ェンン!!」

「コイツ!?」

 

妖気を開放しながら海賊頭領は剣を炎蓮に振りかぶる。

 

「死ェえイ!!」

「やらせるか!!」

 

炎蓮も簡単に斬られるつもりはない。すぐさま抜刀して剣を受け止める。

 

「死ね死ネしね。よくもヤッテくれヤガったな。ヨクも俺ノ海賊団ヲ!!」

 

海賊副頭領は倒れ、海賊主船は座礁した。部下たちは混乱し、勝手に撤退した。

大きく膨れ上がった自慢の大海賊団は瓦解した。その全てが炎蓮によって潰されたと海賊頭領は思いこんだ。

 

「まズは貴様カラだ孫堅。そして次ハ糸目野郎ダ!!」

 

怒りの先は炎蓮と太公望。

構えた剣で切り刻んで殺してやるとギョロッとした目で訴えてくる。そんな事を知った事ではないと炎蓮も剣を抜く。

 

「今まで奪ってきたクズ野郎が。自分が奪われたからって逆上か?」

 

その怒りは奪われた者の怒りである。奪う者は奪われた時に異様なほどに怒るものだ。

 

「いっちょ前に怒ってんじゃねえよ!!」

 

怒っているのは海賊たちに奪われた漁民たちだ。

 

「死ネ孫堅!!」

「テメーが死ね!!」

 

海賊頭領と炎蓮の剣が交差する。

 

「孫堅殿!?」

「ここはオレに任せろっ。お前たちは他に襲撃が無いか警戒しろ!!」

 

襲撃は海賊頭領だけだが、もしかしたら他にも襲撃の可能性がある。戦いはまだ終わっていないので警戒は怠ってはいけない。

 

「海デ鍛えタ剣ヲ喰らいやがレ!!」

「こっちはテメーらみたいな賊共を叩斬ってきたんだよ!!」

 

海賊頭領の剣も馬鹿には出来ない。今まで炎蓮が相手してきた賊の中でも上位だ。

一撃一撃が重く鋭い。しかし炎蓮だって負けていない。彼女は未だに発展途上だが実力はそこら辺の賊には負けないくらいの強さはある。

 

「オラアアアアアアアアアア!!」

「小娘ガァ!!」

 

炎蓮の剣技が海賊頭領を上回る。個々の対人戦なら炎蓮は負けない。

 

「オラアアア!!」

「ぐオっ!?」

 

炎蓮が海賊頭領の剣を弾き飛ばす。あとはトドメと言わんばかりに剣を再度振るうが回避された。

この瞬間こそが海賊頭領が狙っていた瞬間だ。彼は剣で炎蓮を殺そうとしていない。別の方法で殺そうと算段している。

 

(どンな達人デモ攻撃の後は一瞬ダけで隙があル。ソレハ孫堅、キさまも例外じゃネエぞ!!)

 

海賊頭領はギラリと目を光らせ、炎蓮を両腕で捕まえる。彼女の骨をへし折る勢いの力だ。

 

「テメッ、離しやがっ!?」

「水中でオレと一緒ニ根競べとイこウか!!」

 

海賊頭領は炎蓮を捕まえたまま海へと一緒に落水。

 

「孫堅さん!?」

「ソンソンが落ちたぞ!!」

 

海の中もとい水の中。どんな武人でも水中では動きが鈍り、そして息が続かない。

呼吸ができなければ一騎当千の武人であっても簡単に死ぬ。水中とは生物にとって危険な空間なのだ。

 

「孫堅殿!?」

「お、落ちたぞ!?」

「ど、どうすれば!?」

 

炎蓮が海賊頭領と海に落ちた事で兵士たちも海賊たちのような混乱。しかし藤丸立香と太歳星君は冷静にやるべき事を考える。

やるべき事は炎蓮を救出する事である。藤丸立香は自らに縄を縛り付ける。

 

「太歳星君!!」

「ウン!!」

 

太歳星君が藤丸立香にしがみ付く。

 

「すいません。合図があったらこの縄を引っ張ってください!!」

「え、君、ちょっとまさか!?」

 

藤丸立香と太歳星君は海へと跳び込んだ。

 

(炎蓮さん!!)

 

水中で人間は自由に動けない。そして呼吸も出来ない。

溺れれば人間は一巻の終わりである。

 

「ガハハハハ。孫堅、貴様モこれデ終わりダ!!」

 

海賊頭領は水中でも喋っている。喋っているという事は口を開いたという事だ。

口を開けば海水が入ってくる。そして呼吸が出来ないはずだが海賊頭領は水中でも呼吸が出来ている。

理由は簡単で海賊頭領に妖魔が埋め込まれているからだ。

 

「息止メ我慢対決ダぜ。しカし、オレに勝てるカ?」

 

彼に埋め込まれた妖魔は『水落鬼』。中国各地の伝承に登場する妖怪の一種である。

その正体は溺死した人間が妖魔と化した存在といわれており、緑色の眼玉をした水獺(かわうそ)の様な姿をしているとも言われている。

様々なものに化けたりして自身の身代わりとなる人間を水中に引きずり込んで溺死させようとする妖魔だ。

 

(ぐ…この野郎!?)

 

炎蓮が狂った虎と呼ばれていても水中では手も足も出ない。虎だって水中では生きていけないのだから。

人間が水中で息を止められるのは一般成人で一分程。肺活量を鍛えていれば数分は可能かもしれないが永遠には止められない。

炎蓮であっても流石に長時間は息を止められない。ただでさえ強力な腕力で締め付けられているのだから、より息を止めることは出来なくなる。

 

(まずい…これは流石にマズイ!?)

 

どんどんと海底へと沈んでいく海賊頭領と炎蓮。

 

「ほホウ、なかなかイキヲ止めラレルようダ。しかシ後どれくらいモつダロウな?」

 

海賊頭領が水中で喋っていても炎蓮の耳には届いていない。水中では人間の耳では伝わりにくいものだが、そもそも炎蓮は海賊頭領の言葉を聞いている暇がない。

 

(も、もう息が…)

 

ガボッとついに炎蓮は水中で口を開いてしまった。意識が急激に遠のいていく。

 

(オレも…これでお終いなのか…………ん?)

 

薄れゆく意識の中で目にしたのが藤丸立香と太歳星君であった。

 

(あ…あい…つら)

 

炎蓮は意識を消失した。

 

(炎蓮さんがマズイ!?)

(任せろであであのマスター!!)

(魔力を流すよ太歳星君!!)

(りょっか!!)

 

藤丸立香と太歳星君は急いで炎蓮を助ける為に海の中を泳いでいく。

魔術礼装のおかげで水中でも息は長く保てるが無限ではない。藤丸立香と太歳星君は短期決戦で海賊頭領を倒し、炎蓮を救出せねばならない。

溺れてしまった炎蓮を急いで救出しなければ応急処置が間に合わなくなる。

 

「ガはハは。孫堅を溺死サセてやったぞ!!」

 

このまま炎蓮の溺死体を兵士たちの前に叩きつけようかと考えた時に藤丸立香と太歳星君の姿が視界に入った。

 

「アいツラは…ふん、孫堅の腰巾着どモが。孫堅ヲ助けに来タつもりだろうがモウ遅イ。貴様ラも一緒ニ溺死体にシテやルぞ!!」

 

ニヤリと凶悪の顔で藤丸立香と太歳星君を睨みつける。炎蓮を水中に投げ捨てて2人目掛けて接近。

水落鬼の力を持つ海賊頭領は人を溺れさせるのはもはや簡単である。何なら今後は人を溺れさせて金品や物資を奪うのも良いかとも考え始める。

 

(太歳星君。来るよ!!)

(大丈夫。あっち奴のがいる方向は大凶なのだ)

 

太歳星君も海賊頭領に負けないくらい凶悪な笑顔を作る。よく見るとちょっと可愛らしい凶悪な笑顔だが、太歳星君は恐ろしい存在だ。

海賊頭領は2人を容易く溺れ死にさせてやろうと思っているが彼は太歳星君の恐ろしさを知らない。そしてこれから今まさに味わう事になる。

 

(喰らえー!!)

「溺死体ニさせっエっ!?」

 

太歳星君が手を翳した瞬間に大きな鐘が出現して海賊頭領目掛けて落下していった。

 

「は、エ、カ、鐘ェ!?」

 

呪いの籠った大きな鐘が海賊頭領を押し潰して、そのまま深い海底へと落ちていくのであった。

 

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」

(バイバイだぞー)

 

水落鬼になってしまった者は地上をもう拝めない。海賊頭領の末路はまさに水落鬼になってしまった者と同じであった。

 

 

1150

 

 

炎蓮は海賊頭領によって海の中へと引きずり込まれた。そして溺れた。

最後に藤丸立香と太歳星君を海の中に入って来た事を確認して意識を失った。

これが自分にとって最期だと覚悟したが、まだ自分の人生は終わっていないようだとぼんやりと炎蓮は思った。

何せ今まさに思考しているのだから。

 

(ん?)

 

自分の唇に何か柔らかいモノが接触しているのが分かった。そして肺に酸素が入り込んできたのも分かった。

目を開けると藤丸立香が炎蓮に口づけをしていた。そして体内に入り込んだ海水を吐き出した。

 

「ゴホォッ!?」

「よかった意識が戻った!!」

「テ、テメ…何で口付けなんて」

「人工呼吸だから」

「あ、そーか……藤丸がそういう趣味かと思ったぜ」

 

どんな趣味かと思ったがあえて口にしない事にした。

 

「身体に問題はない?」

 

溺れた後に蘇生が成功したとしても後遺症が残る場合がある。

炎蓮は自分の体調を確認してみるが特に問題は無さそうであった。思考もしっかりとしているので脳にも損傷無しだ。

 

「平気だ」

「良かった」

「…お前が海賊の頭領を倒したのか?」

「オレがっていうか太歳星君だけどね」

「ワガハイ強いんだぞ」

「…お、おお」

 

太歳星君がニッコリとした笑顔を炎蓮に向ける。

子供っぽいが藤丸立香と共にに海に飛び込んでまで炎蓮を助けた。それは海賊頭領を倒したからこそ船の上にいる。

 

「助けてくれてありがとな………炎蓮だ」

「え?」

「真名だよ。命の恩人に真名を預けないわけねえだろ」

「そっか。真名を預けてくれてありがとう炎蓮さん」

「イェンイェンだな」

「よろしくな藤…いや、立香、太歳星君。てかイェンイェンって」

 

面白いあだ名を付けられるのは初めてであった。

 

「って、そうだ海賊は!?」

 

藤丸立香が海の方に視線を送ると海賊船は遠くへ撤退しており、小さく見えていた。

 

「オレらの勝ちだよ。呉の港は守られたんだ」

「そっか…そーかぁ」

 

安心して急に気が抜けたのかパタンを仰向けに倒れる。

 

「大丈夫か?」

「んおっ、張昭か何でここに!?」

「海賊どもが撤退したのを見て、わしもこの船まで来たのじゃ」

「………どーだ。オレは狂った虎だったか?」

 

「フッ」っと軽く笑う雷火。

 

「ある意味、狂った虎かものう」

「ンだよソレ」

 

呉の近海を騒がせた海賊団は撤退した。呉の港町は守られたのだ。

それは炎蓮の歴史を守られたという事でもあるのであった。

 

「おい立香。お前らは今回の戦の功労者だ。オレからも褒美が出る様に言って……あれ?」

「どうしたのじゃ?」

「立香たちがいねえ」

「む、本当じゃ。まさか海に落ちてはおるまいな」

 

藤丸立香と太歳星君がいない。そして太公望たちも居なかった。

 

「何処にいった?」




読んでくださってありがとうございました。
次回も6月中更新を目指します!!


1147
黄飛虎と哪吒コンビ VS 海賊副頭領
海賊副頭領の力は『大鯖』。正体は鮫。
2人なら鮫退治はなんのその。
ジャンヌの鮫より怖くないはず。


1148~1149
海賊頭領との戦い。
彼の力は『水落鬼』。
水の中に引きずり込み、溺れさせる。どんな武人であっても水中じゃあ手も足もでませんからね。
意外にも炎蓮は大ピンチでした。
でも藤丸立香と太歳星君の協力でピンチを脱出。


1150
アニメや漫画とかで人工呼吸中に意識を取り戻して「キスされてる!?」なんてシーンがあったりしますけど…実際にあり得たりするのかなって思う今日このごろ。
そんな事を思っている暇はないような…。

人工呼吸で大昔からあったみたいですね。
代的な人工呼吸法は18世紀後半から19世紀ごろから編み出されたみたいです。

何はともあれ、孫呉の(炎蓮の)過去改変を防げました。
しかしまだ終わらない。まだこれは最初なので…。
そういう意味で藤丸立香たちが消えたのは「次の場面」に向かったからです。

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