Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
連続更新です!!
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前回までのあらすじ。
雷火が陶謙を会いに行くとの事で徐州まで遠出する。
その護衛に炎蓮と祭が同行。ついでに藤丸立香と太歳星君も。
「徐州まで近いようで遠いな」
「明日には到着する。護衛は恙なく頼むぞ」
「分かってるって」
護衛を引き受けたが今の所、賊やゴロツキたち襲われる事は無かった。
もしかしたら遠くに賊やゴロツキがいたかもしれないが、炎蓮や祭の実力を見て襲うのを諦めた可能性もある。
(もしくは…太公望が片付けてくれたとか?)
藤丸立香がチラリと後ろを見る。誰も見当たらないが実は隠れているは太公望。
彼には今度、徐州に行くと伝えた。炎蓮、祭、雷火の三名が呉から離れるとなると敵にとって狙いやすい状況だ。
故に太公望も敵の襲撃に備えて炎蓮たちには内緒で追跡している。
「敵の気配は感じないぞ」
太歳星君も周囲を察知しているが特に襲撃がある様子はない。
刺客の気配も賊やゴロツキも居ない。刺客が居ないのは未だに動きが無いだけだ。そして賊やゴロツキが居ない理由は黄飛虎と哪吒が幽州に向かう道中で全て成敗していったからである。
「ふーむ…暇じゃのう」
祭が詰まんなさそうに歩く。せっかくの護衛という事で盗賊たちが襲ってきたら炎蓮に良い所を見せようとヤル気満々なのだが襲撃が無いのであればガックシだ。
襲撃が無いのが物足りないと思うのは炎蓮もである。しかし襲撃が無いのなら無いで良いと思うのは雷火だ。
「暇で良い事じゃろうが」
「護衛が仕事しないんじゃ護衛じゃねえだろ」
「危険が無いのが一番じゃろう」
日が落ち始める。
「そろそろ野営の準備をするかの」
「おう」
「ここをキャンプ地とする」
「何じゃって?」
野営の準備をテキパキしていく。藤丸立香も特異点の旅で慣れているので手伝う。
「旅人だからか野営の準備は手慣れてるな立香」
「まあね。色んな所で野営したからさ」
「ほー」
本当に様々な場所で野営をしたものである。
「立香は旅人だから違和感はねえが張昭も野営になれてるのは意外だったな」
「儂もそう思う。儒者ならば野営なんぞ出来ないと思うてたわ」
「何を言う。儂は儒者だからこそ様々なとこに顔を出す。遠出で野営するなんぞ度々あるぞ」
昔の時代に電車や車なんて便利な物はない。それこそ旅館やホテルなんかも道中にあるわけがない。
遠出するという事は野営、野宿をする事が確定するものだ。
「明日の為に食事を取って早く寝るぞ」
「それもいいがまた立香の旅話を聞こうぜ。こいつの話は楽しみの1つじゃねえか」
徐州までの道のりで藤丸立香の旅話は意外も炎蓮たちに好評であった。
ありのまますべてを話す事は出来ないのである程度は脚色しているが面白がって聞いてくれている。
「晩飯の用意でもして食事しながら聞こうぜ」
「おう。こいつの話は儂も面白いと思う」
「とんちきな話もあるが儒者として興味深い話もあるからのう。ちょっと夜更かししてもいいかもしれん」
何だかんだで雷火も藤丸立香の旅話には興味を抱いている。
「ところで今日の晩飯は何にするのかのう?」
「お、あそこに猪いなかったか? 狩ってくるか?」
「なら今日の晩飯は…メラス・ゾーモス」
「なんと?」
「豚の肉を血と酢と塩で煮込んだ汁物」
「本気か?」
メラス・ゾーモスはマズイと言われるが人によっては旨いらしい。
「あはは、冗談。でもそういう料理があるのは本当だよ」
「じゃあ、その話を聞かせてくれよ」
「いいよ」
晩飯の用意をして、食事を始める。もぐもぐと咀嚼して藤丸立香の話を聞く。
「んじゃあ…その、めらすぞーもすって料理の話を聞かせてくれよ」
「いいよ」
ゴクリと水で喉を潤してから藤丸立香は語る。
「話しの始まりは筋トレもとい鍛錬から始まる…そう筋肉なんだ」
「もうわしには分からんくなった話なんじゃが?」
雷火はもう付いて行けない話題と判断。
「おいおい筋肉の話だろ。分かりやすい話じゃねえか」
「これだから儒者はのう…」
「その言葉そのまま返すぞ。これだから脳筋共は」
武人には筋肉の話は造作もない事である。
「筋肉とはすなわちマッスル。マッスルとは筋肉を鍛える事で強くなるという意味なんだ」
「マッスルか。良い言葉だな」
「うむ」
「ほれ、脳筋っぽい話ではないか!!」
雷火の言葉は否定できない。何せ筋肉(マッスル)の話なのだから。
「オレの仲間も言っている言葉がある」
その仲間とはレオニダス一世。彼は「身体の筋肉が衰えては脳の筋肉…脳の力も衰えかねない」と語ったのだ。
「「確かに」」
「何処が確かにじゃ!!」
何よりも万が一、急な襲撃があった際に筋肉を鍛えておくことで自分たちに戦力があると自信が湧く。それこそが重要なのだ。
「いや、そんなの…」
「屈強な筋肉は最強の盾であり、最強の壁。ゆえにレッツマッスルなんだ!!」
「反論が筋肉に阻まれてる気がするんじゃが」
もしも雷火がレオニダス一世と討論勝負をしたらレオニダス一世の筋肉論に押しつぶされるかもしれない。
「ソイツ面白いな。話がしてみてえよ」
「くくく…張昭も鍛錬してみればいいんじゃないか?」
祭は愉快そうに笑いながら雷火に筋トレを提案する。
「わしは武人ではない。儒者じゃ」
「それでも」
「なぬ?」
「鍛錬を己に課し、終わらせたのなら…それは必ず結果として自分に返ってくる」
筋肉は裏切らないというやつだ。
「それに筋肉を鍛える事で仲間意識も育まれるんだって」
「それもその仲間の言葉か?」
「そうだよ」
「その仲間とやらは筋肉を過信しすぎてないか?」
「ほら、筋肉は裏切らないからさ」
「だからそれが筋肉を過信し過ぎている証拠じゃ!!」
誰が何と言おうが筋肉は裏切らないのである。
「まあ、限界まで鍛錬をした後に食べるのがメラス・ゾーモスなんだ」
「鍛錬後に食べる料理なのか」
とても栄養価が高く、筋肉へダイレクトに効く気がする料理である。
「効く気がするかい」
「ところで旨いのか? 材料からすると旨そうには見えないが…」
「ワガハイも食べた事あるけど美味しく無かったぞ」
呪いの存在である太歳星君もメラス・ゾーモスは勘弁のようだ。
「マズイんかい」
「不味いかどうかは食べる者次第だってさ」
同じ訓練の後に同じ釜の飯を食べる。それこそが本場のスパルタスタイルの訓練である。
「まあ、メラス・ゾーモスも食べてマズイと認識したら鍛錬が手ぬるかった判断らしい」
「どういう判断じゃ」
スパルタの普段の食事は「美味いか、不味いか」ではなく「戦の役立つ身体作りになるか、ならないか」が第一らしいとの事。
この感覚は文化の違いのようなもので共有はしづらいともレオニダス一世は言っていた。
「聞いた事の無い料理だったけど、やっぱ大陸の外の料理だったか」
「うん。この大陸の料理じゃないよ」
スパルタという国の料理だ。
スパルタでは身体と精神を鍛える為に贅沢を罰している。その為のメラス・ゾーモスだが実は戦時下は美味しい料理が食べられるとの事。
生死感が異なるので理解が難しいかもしれない。スパルタ兵は普段から普段から決められた集団で過ごし、その同じ集団で厳しい訓練と質素な食事を共にする。
そんな仲間と戦に出て生きて帰るならば必ず勝利と共に。そうでなければ死して盾と共に。スパルタにとって質素な食事は勝つ意思そのもの。
美味い食事は死ぬ名誉そのもの。
「彼は言っていた…確かに美味しい料理に越した事はない。でもそうとも限らない事もあるって」
死にそうな程のキツイ鍛錬の後の質素な食事。それは喧嘩しながら笑いながら共に食べた仲間たちの事。辛い事も苦しい事も共に過ごし、乗り越えた絆をメラス・ゾーモスで思い出させてくれる。
そんな時にメラス・ゾーモスを食べると不思議と美味しく感じられるのだ。
「そういう料理なんだメラス・ゾーモスって」
「前半は筋肉で理解できん話かと思えば後半は他文化の話を聞けるとはのう。中々、興味深いというか文化の違いを知れて面白かったぞ」
「料理だけで大陸の外の話に繋がるとは思わなかったぜ。スパルタという国にオレは行ってみたくなったよ」
スパルタという国には強い兵士がたくさんいそうだと想像する炎蓮。何なら仲間として引き抜きをしたいくらいである。
「…材料はあるし作ってみるか。そのめらすぞーもすって料理」
酢も塩もある。豚の肉と血は先ほど飼った猪がある。
メラス・ゾーモスは作れなくもない。
「面白い話は聞けたが…作って食うのか?」
雷火は嫌そうな顔をした。
「姉貴が食うなら儂も食うぞ!!」
「立香も言ってたじゃねえか。美味いか不味いかは食った者次第だってよ」
結局メラス・ゾーモスを本当に作って食べてみる5人。やっぱり不味かったが後々の笑い話にはなるのであった。
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ある隠れ拠点にて。
「妾が与えた力は身体に馴染んだか?」
「はイ。韓暹殿ニ与えらレたコの力でアイツを殺す。この私ノ全てヲ台無しにシヤがったアイツを!!」
「ほっほっほ、良い憎しみじゃ。お主と同じ境遇の奴がもう1人おるがソッチはまだ馴染んでないようじゃからのう」
愉快に笑う男の正体は韓暹。
元漢帝国の将で、今は五胡所属。白波三鬼衆が1人。
「アイツか。私ト同じ境遇ノ者でしたナ」
「恨む相手は違うでおじゃるがな。まあ、その恨み相手共は一緒にこっちへ来ておじゃるけど」
韓暹は藤丸立香たちと同じように過去の呉へと転移してきた者。彼の目的は過去の呉にて炎蓮たちを亡き者にする事だ。
その為に彼は暗躍し、刺客を作り出している。呉の港町に攻めてきた海賊もまた彼が手引きしていた。
「アイツにハ悪イが私が全員殺しテやる」
「うむうむ。その意気じゃ」
韓暹は優雅に扇を仰ぐ。
「さて、作戦を詰めるでおじゃるよ」
「はイ」
復讐相手を殺すには計画をちゃんと立てねばならない。
行き当たりばったりの計画や出たとこ勝負の計画では復讐は完遂しない。
「あ奴らは徐州の陶謙のところに向かっておる」
「おオ、韓暹殿は既にそコマでの情報ヲ手に入れテイルとは流石ですナ」
「ほっほっほ。まあのぅ」
未来の知識を得ているのだから過去の流れは把握している。特に炎蓮たちの歴史を調べれば、どの時期にどのような動きをしているのもだ。
「陶謙のところに紛れ込むのが第一段階でおじゃるな。ところでお主は陶謙と面識は?」
「無イですナ」
「なら安心したでおじゃる。顔を知られてないなら紛れ込めそうじゃ」
顔を知られていないのであれば韓暹と共にいる男の悪評も陶謙には知られていないという事だ。
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徐州にて。
「徐州にとうちゃーーく!!」
太歳星君が両手をバンザイしながら徐州到着を喜ぶ。
呉から徐州まで何だかんだで遠い旅であった。疲れたのでさっさと宿に泊まって横になりたいが、まずは雷火の用件が先である。
「護衛ご苦労であったの。わしの用事が終わるまで自由にしてよいぞ」
護衛は行きだけではなく、帰りも込みで護衛である。
「そういや聞いてなかったが陶謙に何で会いに行くんだ?」
「ああ、陶謙殿から官吏になるよう勧誘されたのじゃ」
「なに…!?」
要は雷火は徐州刺史の陶謙から「臣下として仕えてみない?」と言われていたようなものだ。
「その返事をしにきたのじゃ。こういうのは直接会って話さねばならんからな」
その言葉にドキリとさせられる炎蓮。何故かよく分からないが胸の辺りがもやもやと嫌な気持ちになってしまう。
この気持ちの正体は雷火が他の誰かに取られるのが嫌なのだ。雷火という人物を最初に目を付けたのは炎蓮であり、仲間として欲している。
「…陶謙に仕えるのか?」
「いや、断りの返事をしに来たのじゃが」
「断るのか?」
「うむ」
陶謙には仕えないとキッパリと言った雷火。その言葉に炎蓮は心のもやもやが一瞬で消えた。
「はっ、そうかよ」
「何か嬉しそうじゃな?」
「ンなわけねえだろ」
そう言って炎蓮は街を探索しに行くのであった。
「姉貴何処に行くんじゃ?」
「街をブラブラするだけだよ。美味い飯もあるかもしんねえし、それと強い奴もいるかもしれねえかえらな」
せっかく呉以外の街に来たのだから雷火の言った通り、見分を広めるためだ。
「立香と太歳星君も来いよ」
「うん。徐州饅頭とかあるかな?」
「あるんじゃね?」
「ワガハイも行くぞー」
雷火は陶謙に会って仕官の返事をしに行くだけだ。その場に炎蓮や藤丸立香が居ても何もする事はない。
「さて、わしは陶謙殿に会いに行くかの」
雷火は陶謙に会い行くために屋敷へと赴くのであった。
「で、陶謙殿の仕官を断ったら投獄されるとは流石に予想出来んかったんじゃが」
投獄された雷火。この時ばかりは炎蓮や藤丸立香をやっぱ連れていくべきであったと思うのであった。
「どうするかのぉ」
読んでくださってありがとうございました。
次回の更新は7月中。
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メラス・ゾーモス。
食べたことないけどマズイとの事。
材料からしてねえ…でも食わず嫌いはよくないって言うしな…。
まあ、食べる機会はほぼ無いけど。
メラス・ゾーモス。
英霊食聞録からの話です。
このお話で私はメラス・ゾーモスの存在を知りました。
「ここをキャンプ地とする」
分かる人には分かるネタ。
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敵SIDE側
白波三鬼衆の韓暹がまた動き出します。
もう1人の男の正体は恋姫英雄譚4で登場してます。
もっとも、その男はモブの立ち絵すらなく、会話すらもしている場面も無かったんですがね。
名前も出ていません…ある人物の口からこんな事してたよっていう感じの事がちょっと語られたくらいです。
なのでほぼオリジナルキャラで登場します。
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張昭が陶謙によって投獄される。
これ、調べたら情報があったんですよね。
仕官を断ったら投獄する陶謙ってヤバイな…。
それとも当時だと断ると投獄されるくらい不敬だったのだろうか。