Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

356 / 377
こんにちは。
FGOの10周年!!
今回も色々と大きな情報が公開されてワクワクが止まりませんでした!!
まさか所長が帰ってくる日が来るとは…めっちゃガチャりましたね。
しかし、すぐ後に水着イベントが…来る!!


FGOでは既に第4のオルガマリー…ステラマリーが登場してますね。
う~ん…実は作者、アクアマリーをクリアした所で止まっているんですよね。
早くグランとステラをクリアしないと…。


江東の虎物語-的矢-

1172

 

 

お茶を啜って一息つく。

 

「…という事があったのじゃ」

「そんな事もあったのう」

 

雷火と祭は「うんうん」と頷きながら昔話を語る。

 

「え…雷火ってば昔にそんな危機があったの?」

「あの時は流石に駄目かと思ったの」

「儂も何だかんだで危なかったのう。あの時、あやつに守られてなかったら毒で死んでいたかもしれん」

「祭まで!?」

 

昔話を聞いていたら炎蓮と同じように命の危機に瀕していた雷火と祭であった。

今ここに2人が生存しているというネタバレを知っていても昔話を聞いていた時はハラハラしていた蓮華と小蓮。

 

「2人を守ったその人は大丈夫だったの?」

「そうだよ。猛毒を浴びたんでしょ?」

「それが…城の外で落ち合うはずだったじゃが合流出来んかったのじゃ」

「え、もしかしてそれって」

「安心しろ死んではおらん。その後でひょっこりと顔を出したからの」

「まったく…あ奴め。勝手に居なくなったかと思えば急に顔を出すとは…無駄に心配させおって」

 

話しを聞くに祭と雷火の命の恩人は雷火たちを心配させるだけさせて、ひょっこりと再会したとの事。

この事を聞いてまたホッとする蓮華と小蓮。嘘か本当か分からないが、その者は本当に毒が効かないのかと別の意味で驚くのもあるのだが。

 

「で、2人はその人が初恋だったり?」

 

ニヤニヤする雪蓮。自分の母親を揶揄った時と同じように2人を揶揄うのであった。

 

「なな、何を言うか雪蓮様!?」

「ええい、臣下を揶揄うでない策殿」

「だってぇ、2人が助けられた時の事を強く語ってたから惚れたのかなーって」

「だから揶揄うでない!!」

 

普段は揶揄えない2人を揶揄う雪蓮はとても楽しそうだ。

 

「でも雷火も祭も男としてその人を認めたんでしょ?」

「……まあ、のう」

「あの覚悟は中々じゃったからな」

 

祭が真名を預けたのが証拠である。当時の雷火もその者をそこらの男よりかは気骨があると認めた程である。

 

(やっぱり惚れてたんじゃないの?)

 

初恋だったかどうかは2人の心内だけしか分からない。

 

「その人凄い覚悟だったと分かったけど、私としては陶謙さんが雷火さんを投獄したって方が驚きかなー…」

 

桃香は何とも言えない顔をしていた。

彼女は陶謙とは知り合いだ。なんなら陶謙から徐州の太守の席を譲ってもらった関係でもあり、恩人でもある。

だからこそ尊敬する1人である陶謙が仕官しないからといって雷火を投獄したのが信じられなかった。

 

「陶謙殿がわしを投獄したのは事実じゃぞ」

「うそー…」

「事実じゃ。まあ、陶謙殿も事件後はわしに謝罪してくれたがの」

 

当時の陶謙も冷静になると「やり過ぎた…」と反省していたとの事。そして黒歴史になったとの事だ。

もっとも自分の城で発生したコンわらわら事件や相柳花火事件も頭を悩ます事になったので雷火を投獄した罰だと戒めるしかなかった。

 

「それほど陶謙は貴女が欲しかったのでしょうね」

「華琳も欲しかった人材がいたとして仕官を断られたら投獄しちゃう?」

「私も流石にそんな事しないわよ雪蓮」

 

雷火と陶謙の仲はその事件によって険悪になったというわけではない。時折再会しては雷火が陶謙に対して投獄ネタで揶揄って笑い話にしているくらいだ。

 

「もう亡くなってしまったが陶謙殿とはたまに茶を飲みながら対談するくらいは良好であったよ」

 

陶謙が亡くなった時は雷火は彼女の為に弔辞を記し、その功徳を称えている。

 

「……今度、陶謙殿の墓参りでも行くかの」

「陶謙さんも喜ぶと思います」

 

雷火は陶謙の好きな酒でも見繕うかと思うのであった。

 

「さて、少ししんみりしたが昔話の続きに戻るかの」

「なら、こっからは私も語るわ」

 

ここで粋怜も昔話の語りに加わっていく。

 

「何処から語ろうかしら…やっぱり私と炎蓮様の初めて出会った時くらいからかな」

「粋怜と母様の出会いか。気になるわ」

「炎蓮様との出会いは…私が炎蓮様を地下牢にぶち込んだ時かしらねー?」

「また地下牢での話!?」

 

地下牢に縁でもあるのかと聞きたくなるものだ。

 

「てか母様、粋怜に地下牢にぶち込まれたの?」

「そう言えばそんな事があったな」

「それと私はその辺りで炎蓮さんと出会ったわね」

「紫苑さんも?」

 

 

1173

 

 

藤丸立香と太歳星君たちは呆然としていた。

つい先ほどまで相柳という怪物を倒して陶謙の城から脱出したかと思えば、いきなり時間軸が飛んで見覚えがあるような無いような場所に居るのだから。

 

「えーっと…異変を解決したから時間軸が跳んだって事かな?」

「そのようですね。いやぁ…急すぎですね」

「某は徐州に向かっていたら何も出来ずに時間軸が跳んだんだが」

 

事件解決したら即時間軸が跳ぶ事になると炎蓮たちに何も言えずに消える事になる。

そうなると何も言えずに消える事になるので炎蓮たちに色々と後から言われる羽目になる。何せ以前、何も言えずに消えてから再会したら理不尽なラリアットを喰らったのだから。

 

「それにしても…何でマスターはベタベタなんだ?」

「えーっとこれは毒で…」

「は?」

 

黄飛虎の説教が開始された。

 

「マスター、祭殿と雷火殿を守るための行動は悪い事ではない。しかし自らが危険に遭う事は褒められたものではないぞ」

「はい…」

「そもそもマスターは自身の立場を理解しているのか。いいか、マスターはクドクドクドクド…」

「ごめんなさい…」

 

クドクドクドと説教が終わらない。この説教はマスターを思ってこそであり、藤丸立香自身も無茶すればこうなる事は分かっていた。

何故ならこれが初めてではないのだから。そして黄飛虎の説教を後ろで聞いている太公望は耳が痛かった。

 

(黒幕を見つける為と炎蓮殿たちを守る為とはいえマスターの所に行けなかったので…僕も聞いてて耳が痛い)

 

今回は問題ないと太公望は判断した故に哪吒に道術で連絡を取り合って任せたのだ。

彼は優先順位は理解している。もしもの時があれば彼が判断を間違えない。

 

「まあまあ黄くん。説教はその辺で」

「丞相殿。む、そうだな…マスターはこれからは注意する事だぞ」

「はい!!」

 

元気よく返事をする藤丸立香だが、また何処かで無茶するんだろうと心の中で予想する黄飛虎であった。

彼の悪い所でありながら良い所だから嫌いにはなれないのだ。

 

「さて、僕も陶謙殿の城で何もしなかったわけではありません。今回の黒幕っぽいのを見つけました」

「おお、流石は丞相殿」

「太公望やっと役に立った」

「哪吒の辛口評価!?」

「冗談」

 

今回の黒幕の情報となると無視できない話だ。詳しい説明をしようと思ったが太公望はふと藤丸立香を見て一言。

 

「まずはマスター。沐浴して、そのベタベタを洗い流してください。流石に悪目立ちしてます」

「あ、はい」

 

周囲を見ると確かに街の人たちから視線を受けている藤丸立香。

確かに毒粘液まみれと男が街中に突っ立っているのは悪目立ちを越して変質者や危険な奴と思われる。

 

「呉の街に銭湯ってあるかな?」

「あっても毒粘液まみれの人をお風呂には入れたくないだろう。何処か水でも汲んで沸かすか」

「ドラム缶風呂とか浪漫あるよね」

「ドラム缶なんてこの時代には無いぞマスター」

 

閑話休題。

 

「さっぱりしました!!」

 

綺麗になった藤丸立香。ついでに服装(魔術礼装のアトラス院制服)を着替える。

 

「この魔術礼装ってお洒落でいいよね。特に眼鏡」

「「「眼鏡」」」

 

眼鏡は良いものだ。

 

「さて小腹も空いた事でしょう。何処か点心でも摘まみながら今回の黒幕の話をしましょうか」

 

焼売や春巻きをもぐもぐと太歳星君は咀嚼する。

 

「うまーい」

「うん。美味い美味い」

 

点心を摘まみながら太公望は陶謙の城で接触した敵の事を話す。

その接触した敵とは月が話していた韓暹という男。白波三鬼衆を名乗っており、于吉の先兵であり、五胡に所属する幹部が1人。

 

「韓暹……確か傾や月たちの元同僚だったか」

 

五胡の王である劉豹が三国宣戦布告時に現れた人物であり、元漢帝国の武将でもある。故に傾や月たちと認識があるのだ。

 

「ただの武将と思ってはいけません。彼も身体に妖魔……いえ、彼は神霊を宿しています。しかも凶神の類を」

 

妖魔ではなく神霊という言葉が出て藤丸立香は身体がこわばる。

英霊も強力な存在であるが神霊はより強力だ。過去の旅路で神霊と戦った事があり、その全てが苦戦させられている。簡単に苦戦と言ってしまうが実際は命からがらの戦いしかなかった。

藤丸立香の身体がこわばるのもしょうがないものだ。

 

「更に彼は凶神に精神を侵食されていませんでした。あの凶神を取り込んでいながら精神に異常をきたしていないとは…油断出来ない相手ですよ」

「あの凶神って事は…予想がついているの太公望?」

「はい。なんせ僕ですから」

 

自信満々たる太公望。ここはいつも通り流石である。

 

「その凶神とは…」

 

太公望が韓暹に宿る凶神の正体を明かそうとした時、面白そうな騒ぎ声が響いてきた。それこそ点心の屋台まで響くくらい大きな騒ぎ声である。

藤丸立香はふと気になって視線をつい太公望から騒ぎ声の方に向いてしまう。太歳星君も気になったのか桃饅頭をパクリと飲み込んで席を立つ。

 

「太歳星君?」

「行こであであのマスター」

「え、ちょっと太歳星君」

「あはは。行って来て良いですよマスター、太歳星君」

 

軍師としての勘が2人を騒ぎの方に向かわせた方が良いと囁いている。

 

「僕は黄くんと哪吒とで話の続きをして対策を考えときます。マスターと太歳星君は騒ぎの方へ。たぶん2人が行った方がいいと思います」

「太公望がそう言うなら」

「ゴーゴー」

 

太歳星君に手を引っ張られながら藤丸立香は騒ぎの方に向かうのであった。

 

 

1174

 

 

騒ぎの方に向かってみると的矢に挑戦している2人がいた。

どうやらその2人が的矢勝負をしており、周囲に観客が集まって騒いでいるようだ。更に挑戦者2人に見覚えがある。

1人は言わずもがなというか予想していた炎蓮であった。彼女は的矢に集中しており、藤丸立香と太歳星君に気付いていない。

 

「イェンイェンだ」

「何となく予想出来たけどね。もう1人は…」

 

艶やかな紫の髪で幼いながらも色気を薄っすらと感じさせる美少女。

炎蓮とは頭1つ分小さいが矢を構える姿は完成に近づいていた。

 

「もしかして紫苑さん?」

 

面影と服装が大人の紫苑にそっくりだ。

 

「的矢勝負は3本勝負みたいだぞ」

「そうみたいだ。それで…」

 

的矢勝負で1本目は既に放たれていた。

紫苑は見事に的ど真ん中。対して炎蓮は的から外れており、代わりに壁に矢で粉砕していた。

 

(流石は紫苑さん。幼い時から弓の腕は相当なものだ)

 

幼い時から弓の腕が磨かれている。これからより鋭く磨かれていくと神業と称される弓術者となるのだ。

 

「お姉さんは邪念が多いみたいね?」

「なんだぁ!?」

「だって、そんなに気持ちが乱れていたら、当たるものだって当たらないよ?」

 

紫苑は弓矢を構えて、集中。そして一気に放った。

 

「平常心でないと…はっ!!」

 

紫苑の放った矢は的のど真ん中に刺さる。1本目と合わせて連続でど真ん中である。

 

「ふふふふ」

(この、簡単に命中させやがって…)

「こんなものかなー?」

「くうう、このオレを舐めンなよぉおおお!!」

 

紫苑は炎蓮を軽く煽るように覗き込む。

 

(幼いときの紫苑さんって結構生意気な性格だった?)

 

この時代の紫苑は勝ち気で自信家、生意気盛り真っ最中。

弓の腕も若いながらもこの時から超一流とも言われているのだから自信家に繋がってしまうのもしょうがない。

 

「はあ!!」

 

炎蓮が2本目の矢を放つが的から外れる。しかし屋敷の屋根をぶち抜いた。

1本目は屋敷の壁をぶち抜き、今度は屋根をぶち抜いた炎蓮の一矢は強力だ。しかし的に当たらなければ意味がない。

 

「あ…」

 

凄い威力なのだが的に当たらず、他人の屋敷を壊してしまう結果に彼女は心の中で「ヤベッ」と思ってしまう。

 

「す、すごい。でもひっどい狙いだね」

 

矢の威力に紫苑も驚いているが正確さがない。

 

「ぬぅううううう!!」

「私は二本命中したよ。お姉さんの方は二本外したから、これで勝負は私の勝ちだよね?」

 

3本勝負中、紫苑が矢を2本的のど真ん中。炎蓮が2本的から外してしまっている。

普通であれば紫苑の勝利である。

 

(たぶん炎蓮さんは負けを認めないだろうなー)

 

負けず嫌いの炎蓮がこれで簡単に負けを認めるわけがない。

予想通り、炎蓮は3本目の矢を弓に構える。

 

「うるせえ。このまま負けられっかよ!!」

「諦めが悪いなぁ。それじゃあ、これでトドメ……はっ!!」

 

しょうがないと思いながら紫苑は弓矢を構える。紫苑が3本目の矢を放ち、見事に的のど真ん中。

3回連続で的のど真ん中に刺すのは神業である。彼女を知る者が弓の腕が超一流と褒めるのも納得の結果である。

 

「ぬわ!?」

 

3本連続で的のど真ん中に矢を射られてまた驚く。これで炎蓮に後が無い。

もう後が無いと言うか、これで紫苑の完全勝利なのだが炎蓮は諦めていなかった。

 

「ふふふ。もう負けを認めたらどう?」

「まだ勝負は終わってねえよ!!」

「終わったけど」

(確かに)

 

紫苑の正論に藤丸立香は遠くで頷いた。彼だけでなく、周囲の観客も全員が「正論」と思ったに違いない。

 

「今度こそ、ぬおうりゃあああああ!!」

 

渾身の一撃を放つ炎蓮。渾身の一矢は的を木っ端みじんにした。

 

「ええええっ!?」

「はっはー、見たか。これが孫堅様の実力よぉ!!」

 

渾身の一矢は的に直撃し、粉々に粉砕。誰もが予想出来なかった結果を叩き出したのが驚愕である。

 

「どうやったらあの堅い的が矢で粉々になっちゃうの…」

 

紫苑は正確さがあっても炎蓮のように的を粉砕する程の筋力は無い。

驚異の筋力に関しては紫苑も羨ましいと思ってしまう。正確さと高火力が合わされば紫苑の弓の腕は完璧になるからだ。

 

「ああ…その前に民家の壁や屋根を矢で吹き飛ばしていたけど」

 

的矢勝負の胴元もとい興行師の呆然と3本の矢で壊した民家の家を見る。

 

「応、ちょっと力が入っちまったぜ。おいオッサン、あの家の主にはこれで弁償してやってくれ」

「ちょっと力を入れた矢で家は壊れんと思うんですがね」

 

興行師は炎蓮から迷惑代もとい弁償代を渡す。弁償代はちょいと多めだ。

 

「ええ、あ、はい」

「そんだけありゃあ足りるだろ?」

「へ、へい、十分かと」

「よし。これで勝負はオレ様の勝ちだな」

 

自信満々に「勝者はオレ様だ」と言わんばかりの顔をしていた。

 

「ええ、なんでそうなるの!?」

 

紫苑が抗議するのも当然である。

 

「あン? じゃあ勝ったのは自分だって言いてえのか?」

「だって私の勝ちだもん。私は三本とも的の真ん中に当てたよ?」

 

的のど真ん中に3本とも命中。的矢勝負にして完全勝利の条件である。

 

「孫堅さんが当てたのは一本だけ。しかも、的が壊れちゃったから真ん中に当てたかどうかも分からないし」

「阿呆かオマエは」

「阿呆じゃないもん!!」

 

今さらながら紫苑のプリプリしながらの抗議は珍しい。大人の紫苑であれば冷静にあしらうのだから。

 

「あの的は的であって的にあらず」

「え?」

 

炎蓮が屁理屈を言い出す。

 

「あれが敵の兵士だと考えてみろ?」

「うん」

「テメーの矢はあの通り三本とも命中したが。敵の兵士はどうだ。まだ立ったままだぜ?」

「ええええ…?」

 

紫苑、炎蓮の屁理屈に納得のいかない声をあげる。

 

「それに引き換え、オレに射られた兵士は一撃で木っ端みじんに粉砕されちまった。この勝負、誰がどう見てもオレ様の勝ちだろ?」

 

腕を組んで「どうよ?」とドヤ顔の炎蓮。

 

「いや、黄忠ちゃんの勝ちだな」

「だね」

「孫堅ちゃん、そりゃ屁理屈だ」

 

周囲の観客は炎蓮の屁理屈を突っぱねて紫苑の勝利を肯定した。

 

「ぐ……」

「ほらぁ、やっぱり私の勝ち。孫堅お姉さんの負けだよー」

「うん。何処からどう見ても黄忠さんの完全勝利だね」

「イェンイェンの負けだぞー」

「ほら、お洒落な眼鏡のお兄さんと陽気そうな少年も言ってるよ」

「はー…言われなくても分かって……んん?」

 

炎蓮の視界に藤丸立香と太歳星君が入った。

 

「「「……」」」

 

3人が一瞬だけ黙る。そして先に動いたのは炎蓮であった。

 

「テメーらはまた勝手に居なくなって、勝手に出てきやがってぇ!!」

「レオニダスブートキャンプを思い出せ!!」

 

炎蓮のラリアットを回避する藤丸立香であった。今度は受けない。

 

「何で!?」

 

炎蓮と藤丸立香の奇行に驚く紫苑であった。

 

「いつも通りだぞ」

「えええ…いつも通りなの?」

「うん」

「というか2人は誰?」

 

当然の疑問である。

 

「場所を変えて話そうか」

「おら、避けんな!!」

「いや、避けるでしょ普通」

 

閑話休題。

 

「オレは藤丸立香」

「ワガハイは太歳星君だ!!」

「オレらは孫堅さんの知り合いだよ」

「そうなんだ。知り合いにしては遠慮が無いくらい仲が良さそうだね」

 

簡単な自己紹介をする。

 

「で、テメーはいったい何者なんだ?」

 

藤丸立香と太歳星君の自己紹介が終われば今度は紫苑の番だと炎蓮は促す。

 

「テメーじゃなくて黄忠。劉表様の家臣だよ」

「へえ…劉表殿ってあの荊州のか?」

 

劉表の名は炎蓮も流石に知っている。

 

「そう。孫堅さんは何なの?」

「オレは曲阿の県令だよ」

「えええっ、県令なの!? てっきり野盗か山賊かと思ってた」

「えええっ、炎蓮さんもう県令になったの!?」

 

紫苑と同じように藤丸立香も驚いた。

 

「よく言われるよ。んでもって立香も何驚いてるんだ」

「いや、だってついこないだまで無職だったのに」

「ついこないだの時も無職じゃねえよ。交易とか色々とやってたわ」

 

藤丸立香の記憶では炎蓮は塩城の県丞をクビになったばかりである。それが再会して県令になっているとなると異例の昇進速度だ。

 

「どういう理由で県令になったの?」

「県令になったというか県令にさせられたみてえなもんだ」

 

炎蓮が県丞を辞めたその後は、交易で財を蓄え、雷火の助言に従って人材登用や諸勢力との関係強化に尽力していた。

当時、江東の情勢はとても不安定であった。農民一揆が相次ぎ、豪族たちは互いの土地を巡って小競り合いを繰り返していたのだ。

そのような状況であるから郡や県の長官には力ある人間が抜擢さあれるようになっていた。その結果、名を馳せていた炎蓮に白羽の矢が立ったのだ。

 

「なるほど。なら炎蓮さんの名は着実に広まってるんだね」

「そういう事にはなるな」

「私も噂で聞いてるよ。狂った虎だって」

「ははっ。その二つ名は払拭できなかったんだ」

「笑うな。そして避けるな」

 

吹いた藤丸立香。そして拳が飛んでくるのを回避する。

 

「で、劉表殿の家臣が呉の街で何をしているんだ?」

「お暇をもらって武者修行の旅をしてるんだ」

「ほ~う、そいつは感心なこった」

「ふふ、これでも私も名が広まってるみたい」

「あん?」

「だって、藤丸お兄さんが自己紹介する前から私の名前を知ってたみたいだし」

 

そう言えばと藤丸立香自身も思う。確かに自己紹介もしていないのに紫苑の事を名である「黄忠さん」と口にしていた。

しかし紫苑の名を知っていたのは未来で知っていたからである。尤も彼女の弓の腕を考えれば名が広まっていてもおかしくはない。

 

「………なあ黄忠、劉家に仕えるのなんぞやめて、オレところに来ないか?」

「どういう意味?」

「オレの家臣にならねえかって聞いてンだよ」

 

炎蓮は紫苑の事を気に入っていた。

彼女の弓の腕は祭に匹敵する。そして生意気ながらも芯の通った人間だとも分かったからである。

 

「えー、そんなの絶対に嫌だよ」

「絶対イヤかよ」

 

何となくだが結果は予想出来ていた。

 

「だって私は劉表様の家来だもん。ご主君を裏切るなんてあり得ないよ。孫堅お姉さんのことは嫌いじゃないけどね」

「ははっ、そいつはありがとよ」

「じゃあ、また何処かでね」

 

欲しい人材だがしょうがない。また再会出来れば誘ってみるかと思うのであった。

 

「振られたね炎蓮さん」

「うるせえ……ところで祭と張昭もお前らが勝手に居なくなったの怒ってたぞ」

「再会したら祭さんと張昭さんからもラリアットかなぁ…」

 

この頃、呉の関係者と再会はラリアットが常備になってきた気がしなくもない。

 




読んでくださってありがとうございます。
次回の更新も未定。


1172~1174
江東の虎物語編もまた一段落しました。そしてそのまま次の話へと進みます。

次は内容的に炎蓮が粋怜と紫苑に出会う頃の話。
粋怜の幕間と英雄譚の後日談を合わせた話ですね。

今回は早速若い頃の紫苑と出会いました。
藤丸立香たちは今回そんなに絡んでいませんが徐々に絡んで来てオリジナル展開が広がります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。