Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
FGOではついに水着イベントが始まりましたね!!
今年の水着キャラも予想外のキャラたちばかりで驚きでした。
リップもついに水着実装おめでとう!!
さっそくガチャってお出迎えしました!!
今後のピックアップも楽しみです!!


江東の虎物語-地下牢迷宮-

1179

 

 

前回のあらすじ。

面会の為に地下牢に入ったら、そこは地下迷宮だった。

 

「何で?」

 

誰もがそう言うはずだ。役人である案内人ですら今の状況に混乱している。

 

「案内人さん。ここの地下牢ってこんなに複雑なの?」

「い、いや。こんなわけないぞ!?」

 

紫苑が案内人に複雑な地下牢に聞くと焦っていた。

その様子から何も知らないといった状況だ。嘘をついているようにも見えない。

 

「複雑な地下牢…何だか迷宮みたいだな」

「迷宮…迷路みたいな?」

「うん」

 

地下牢迷宮と言うべきかもしれない。

 

「迷宮なんて私は初めて」

「この大陸では迷路や迷宮なんてあるの紫苑ちゃん?」

「あんま聞かないなぁ。あ、でも有名なのが始皇帝陛下の秦始皇帝陵かな」

 

始皇帝の墓であるが迷宮や迷路のように複雑とも言われている。観た人によっては墓であり、迷宮である。

 

「お兄さんは?」

「いくつか知ってる。迷宮か…アステリオスや徳川廻天迷宮 大奥、極大霊障建築 

A.C.L.を思い出す」

 

迷宮に関する事件や異変に関わって来た藤丸立香。いきなり地下牢が迷宮になろうとも冷静であった。

 

「藤丸お兄さん冷静だね」

「慣れてるからね」

「迷宮に何度か入った事があるの?」

「うん。迷いに迷った」

 

迷宮や迷路には攻略法がいくつかある。地図の作成や右手法(左手法)等が挙げられるはずだ。

特に迷宮攻略で有名なのは『アリアドネの糸』だ。

 

「あ、確かに言われてみれば入口に糸でも紐でも結んで進む。そして結んだ糸や紐を辿れば簡単に帰れるね」

 

攻略法は意外にもシンプルなのが一番だったりする。

迷宮という言葉に惑わされる故に冷静な判断が出来れば攻略法は出てくるものだ。

 

「でも入口から糸も紐も結んでないよ?」

「そこなんだよね」

 

迷宮と思わず迷宮に入った時点である程度、攻略法を潰されたようなものだ。

 

「他には攻略法があったりする?」

「壁をぶち壊して進む」

「脳筋攻略だった!?」

「バスターは全てを解決するよ」

 

極大霊障建築 A.C.L.にてゴッホたちと解決した。その特異点で壁をぶち壊し、開拓しては突き進んだのだ。

 

「藤丸お兄さんって頭良いのか脳筋なのかどっちなの?」

「人は言う…藤丸立香は分からないと」

「分かった。藤丸お兄さんは馬鹿だね」

「失礼な」

「でも面白い人。フフッ」

 

軽く笑う紫苑。生意気盛りな時期らしいが大人の時と同じで善性を持つ人間だ。

小生意気な事を言っても優しさが感じられた。

 

「それで本当に壁をぶち抜いて進むの?」

「ゴッホちゃんがいればなぁ」

 

黄飛虎と哪吒たちがいるので壁をぶち抜いて進めそうだ。

 

「それよりも戻った方がいいでしょう。まだ入ってそこまで進んでいない。戻り道は覚えてます」

「さすが軍師太公望」

「まだそこまで迷わないで良かった。流石の僕でも奥の奥まで入り込んだなら分かりませんから」

(太公望なら迷宮を頭の中で全部マッピング出来そうな気がするけどなあ)

 

地下牢に投獄されている炎蓮と連れていった粋怜が心配だ。しかし迷宮は考えも無しに進むのはより酷い結果を生む。

一旦、入り口に戻って再攻略しないといけない。

 

「アガガガガガガガガッガ!?」

「な、なに!?」

 

急に案内人が悲鳴をあげた。その悲鳴は何かに驚いた時のではなく、苦しんでいる悲鳴である。

何事かと全員が案内人を見る。そしてただ見るだけだ。本当なら駆け寄って容体を診るべきはずなんだが近づけなかったのだ。

 

「え?」

 

近づけないからこそ容体を診る事が出来ない。

理由は案内人の身体が膨れ上がり、変化しているからだ。

 

「グオオオオオオオオオ!!」

 

案内人は身体中から赤毛を生やし、凶暴な獣の姿に変化していく。

 

「ええ、何々!?」

 

人間が獣に変化していく姿に驚く紫苑。

 

「まさか…アレは浮游か」

 

浮游。

赤い熊のような姿をしており、浮游を目撃した者は必ず不幸に見舞われるとされる。悪神が一柱。

 

「グオォォオオオオオオ!!」

(相柳の存在がありましたからね。浮游が存在する可能性はあった)

「あの案内人って人間じゃなかったの!?」

(変化するまでは普通の人でした。相柳の時のように知ってて力を取り込んだわけではなさそうです。それなら彼はただの…)

 

赤い毛並みが逆立って狂暴な顔が藤丸立香たちを睨む。

 

「ぐ…」

 

巨体の熊と相対すれば誰だって恐怖は抱くもの。それが悪神ともなれば藤丸立香や紫苑も無意識に足を引いてしまう。

 

「太公望。浮游って?」

「悪神であり、不幸を司る。浮游を目撃した者は必ず不幸に見舞われるとされると言われてますね」

「必ず不幸に…」

「ええ、その理由は単純です。浮游に、熊に喰われてしまうのですから」

 

不幸という言葉は「死」に繋がる。「身内の不幸」という言葉があるように死を連想させるのだ。

熊に関する事件は世界中にある。獣害とは恐ろしいもので日本にも熊に関する事件は存在する。

浮游を目撃した者は必ず不幸に見舞われるとされる。それは浮游に目撃されたら逃げられず喰われてしまうという意味なのだ。

 

「グオオオオオオオオオオオ!!」

 

浮游が咆哮する。

 

「マズイ。一旦逃げますよ」

 

現在は狭い地下牢内。戦闘には向かない空間だ。

戦闘になるなら戦いやすい場所というのは当然である。

 

「グガアアアアアアアアア!!」

 

浮游が襲い掛かる。

 

「させない!!」

 

哪吒が乾坤圏を発射して浮游の顔面に直撃させる。

 

「グワンッ!?」

「今!!」

 

一斉に走り出す藤丸立香たち。

 

「迷宮になってるせいか複雑だ!?」

 

異界化しているせいか地下牢は複雑な迷宮となっている。

浮游から逃げる為とはいえ、宛ても無く動き回るのは危険だ。迷宮でその行為は泥沼化である。

 

「取り合えず来た道を戻るぞ。まずは外へ誘き出すんだ!!」

 

地下牢に入ってから変に動き回っていない。来た道は太公望が覚えている。

 

「こっちです!!」

 

太公望が先頭に出て案内しようとした時、地下牢が変化を始める。

 

「なっ!?」

 

藤丸立香たちを分断させるように地下牢が変化したのだ。

 

「マスター!!」

「太公望!?」

「黄くん。マスターと黄忠さんを頼みます!!」

 

藤丸立香、紫苑、黄飛虎と太公望、太歳星君、哪吒の二組に分かれてしまうのであった。

 

 

1180

 

 

粋怜は地下牢に炎蓮をぶち込んでさっさと家に帰るつもりであった。しかし牢屋越しに粋怜は炎蓮から熱烈な勧誘を受けたのだ。

まさか牢屋にぶち込んだ相手から臣下になれだなんてあり得ない。普段冷静な粋怜も今回ばかりは驚いた。

普通は自分を牢屋にぶち込んだ相手を臣下に誘うわけないのだから。

 

「ふつーあり得ないでしょ」

「いいや、あり得る話だ。オレは仲間を探しているんだ。お前みたいな仲間が欲しい」

 

これから天下統一を果たすには多くの仲間が必要だ。自分に忠実な臣下が必要であれば、逆に自分に意見する臣下も必要である。

炎蓮に祭という忠実な仲間がいる。彼女は右腕のような存在だが忠実過ぎるのが少し難点だ。しかし粋怜が仲間になれば己に意見し、律させてくれると思ったのだ。

 

(こいつはきっとオレの左腕のような存在になってくれそうだ)

「アンタ…普通じゃないわよ」

「世の中を変えていくのはいつだって普通な奴じゃねえだろ」

「世の中を変えるって…アンタは何する気なのよ」

「オレはいずれ天下を獲るんだよ」

 

炎蓮は粋怜に己の夢を語る。

大陸の天下統一。民百姓の暮らしの為に動く。それが力ある武人の役目。

それはもう楽しく力強く粋怜に語ったのだ。勧誘も忘れずに熱心に。

粋怜は最初、夢想家のよく言う戯言だと思っていた。故に炎蓮の話を右から左程度に聞いていたが徐々に引き込まれるのを実感していく。

炎蓮は夢想家ではなく、本物だと実感していったのだ。

 

(私は何でこんな戯言に耳を貸しているのかしら。いえ、それは私がこの人に惹かれているから)

 

彼女の大層な夢に惹かれているわけではない。炎蓮という人物に惹かれているのだ。

こんな夢想家に付き合う必要はないと思うはずだった。しかしいつの間にか、本当に炎蓮について行くのも悪くないと思っている自分が現れたのだ。

 

「どうだ?」

「どうって?」

「オレの臣下にならねえかって言ってんだよ。オレにはお前が必要だ。オレの横で天下を獲った光景を見ねえか?」

 

その言葉に嘘はない。彼女なら本当に天下を獲った光景を見せてくれるんじゃないかと思わせてくれる。

 

「面白い提案ですね」

 

この時の選択を粋怜はいつまでたっても後悔しない。今この場で炎蓮の言葉を信じた事は未来でも語られる事になる。

 

「真名は粋怜よ」

「オレは炎蓮だ。よろしくな粋怜」

「はい。よろしくお願いしますね炎蓮様」

 

これが炎蓮と粋怜の出会いである。

 

「それにしても牢の中から口説かれてお仕えすることになるなんてね」

「面白いもんだろ?」

「普通じゃないですよ」

「天下獲るのに普通な事してたら獲れねえだろ?」

「ああ言えばこう言いますね」

「はっはっは!!」

 

笑う炎蓮に釣られて粋怜も笑ってしまう。

 

「炎蓮様。呉でのもめ事はもうお控えくださいね」

「ンな約束はできねえよ。喧嘩はオレにとってメシを食うのと同じだしな」

「もう…ふふふ」

 

きっと破天荒な主君に振り回される未来が来るのだと予想する粋怜。しかし嫌な気持ちはなく、寧ろ面白おかしい仕えが待っている気がすると期待が出てくるほどだ。

 

「しかし、今回は呉に来てよかったぜ。張昭のガキは留守だったが、おかげで有能な家臣が一人手に入った」

「お気が早いですね。私がお仕えするのは炎蓮様が太守に出世されてからですよ」

 

粋怜は炎蓮に忠誠を誓ったが呉の役人を辞めて炎がいる曲阿に務めるわけではない。

今ここで勝手に呉の役人を辞めるのは郭雄を裏切る事になる。更に役人としての責任者も疑われる。正式な手順に則って炎蓮に仕え直すのだ。

それに忠誠を誓ったが本当に炎蓮が本物かどうかを確かめる為に条件も出している。先ほど、言ったように炎蓮が太守になるというものだ。

 

「もうとっととオレのところに来たらどうだ?」

「さすがに今は無理ですよ。私は呉の県令 郭雄殿の部下ですし。気持ちとしてはもう炎蓮様の家臣ですけどね」

「郭雄のオッサンは元気にしてんのか?」

 

気軽に郭雄の事を聞いてくる。これだけで炎蓮と郭雄が旧知の仲と言うのが分かる。

 

「オッサンって…昔は炎蓮様も郭雄殿の部下だったんですよね。呉の役人をしてましたし」

「ああ。お前、今日、上役を三人もぶちのめしたな?」

「はい」

「あとあと問題になるんじゃねえか。何だったら郭雄殿にオレが口をきいてやるぜ?」

 

炎蓮は大雑把のようで細かいフォローは忘れない。

 

「ご心配には及びません。あんな連中を私は恐れたりしませんから」

「ふっ。けど、本当にいいのか。オレなんぞに仕えたら、もう真っ当な人生は歩めねえかもしれないぜ?」

 

熱烈に勧誘しておきながら不安になるような事を言ってくる炎蓮だが粋怜の気持ちは変わらない。寧ろ掛かってこいな気持ちである。

 

「望むところです。炎蓮様のお話を聞いて、私は生まれてはじめて、この人にならお仕えできる。命を預けられると感じましたから」

「ははっ、言ってくれるじゃねえか」

 

やはり粋怜は炎蓮の左腕になりえる存在と実感した瞬間であった。

 

「じゃあ炎蓮様。今晩は牢屋で過ごしてください」

「明日には身体が痛くなりそうだな」

「ふふ、我慢してください。そしてここから成り上がって私を仕官させてくださいね」

「任せろ。また明日な」

 

そう言って粋怜は炎蓮が入った牢屋から離れていくのであった。

 

「今夜は一生忘れられない出会いになるわね」

 

地下牢から出る為に足を進める粋怜。仕事も終えて酒でも呑むかと考えた矢先、異変を感じ始める。

 

「まだ開いてる店はあるかし……え?」

 

地下牢が自分の知っている地下牢でなくなっているのだから。

 

「え…ここってこんな複雑だったっけ?」

 

 

1181

 

 

地下牢迷宮の変化によって太公望たちと分断された藤丸立香たち。

問題は悪神である浮游だけでなく、変化する地下牢迷宮も含まれる。寧ろ空間が変化する地下牢迷宮の方が厄介かもしれないからだ。

空間、道が変化するとなると出口も入口も分からなくなる。そして迷宮の攻略法も限られてくるのだ。

マッピングや右手法(左手法)等の意味がなくなる。そしてアリアドネの糸作戦も意味もなさない。

 

「これはとんでもない場所にとじ込まれたな」

 

黄飛虎の言う通り、恐ろしい場所に閉じ込められた。

空間自体が浮游にとっての狩場になったのだ。獲物は藤丸立香たち。

浮游も地下牢迷宮に迷わされているから簡単には見つからないが逃げ場も無いという事になる。

 

「本当にラビリントスだな」

 

但し地下牢迷宮が変化するという点ではより複雑難解かもしれない。

 

(迷宮が変化する…浮游の力ではない。まさか他に迷宮に関する力を持つ者がいるのか?)

 

もしも迷宮を操る存在がいるのであれば、より恐ろしい。何せ、浮游を獲物の傍まで導く事が出来るのだから。

 

「マスター。浮游から逃げられないぞ」

「うん。すぐに迎え撃つ準備を考えないと」

「あの大きな熊を倒すの藤丸お兄さん?」

「ああ。あんな熊に喰われたくないからね」

「そうだよね」

 

紫苑は弓矢を手に持ち、構える

 

「私も手伝うよ」

「ありがとう黄忠ちゃん」

 

逃げ場が無いのならば迎え撃つしかない。獲物は藤丸立香ではなく、浮游もまた狩られる側だと思い知らせるのだ。

 

「でもどうやってあの熊を倒すの?」

「向こうが不幸を司るならこっちは凶つ神だ。ね、太歳星君」

『任せろー!!』

「え、どこから声が!?」

 

藤丸立香が腕からペリリっと札を剝す。その札から声が響く。

 

『皆さん無事で良かったです』

 

藤丸立香の腕に張り付いていた札は分断される前に太公望が投げたものだ。

札は離れた場所から連絡が取れ合う代物。無線機や電話みたいなものだ。

この外史の時代であれば、その効果は絶大だと誰もが思う。

 

『マスターの着眼点は正解です。相手は不幸を司る存在なら、こちらは凶神で迎え撃ちます』

「まずは合流しよう」

「でもどうやって合流するの?」

 

紫苑の尤もな疑問である。

変化する迷宮。マッピングや右手法等が意味をなさない。

 

「破砕、爆砕、北斎だ」

「どういう意味なの…いや、分かった」

「壁をブチの抜く」

「やっぱり」

 

地下牢迷宮の壁をぶち抜いて突き進むという力技で解決するという脳筋バスター戦法。

 

 

1182

 

 

粋怜は地下牢迷宮を走っていた。

 

「何なのよアレ!?」

 

走っているというよりも逃げている。何から逃げているかと言われれば浮游からだ。

炎蓮を牢屋にぶち込んで、その炎蓮から熱烈な勧誘を受けた。その後は地上に戻るはずだったが地下牢が迷宮となって迷ってしまった。

迷った矢先に浮游という不幸に出会ってしまったのだ。

 

「ああもう!!」

 

武器があれば戦えたかもしれないが素手では巨体な熊には敵わない。だから逃げるしかなかった。

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

浮游は目に入った人間を不幸にする。それは喰らうと言う事だ。

相手が誰であれ関係無い。地下牢迷宮にいる人間全てが獲物なのだ。

 

「グゴオオオオオオオオオオ!!」

「く、せめて何か武器でもあれば」

 

粋怜は逃げながらも周囲を確認して武器を探していたが見つからない。牢屋は罪人を閉じ込める場所。間違っても閉じ込めている罪人に武器を手に取らせるわけがないのだから。

 

「グガアアアアアアアアアアアア!!」

「ああもう、五月蠅いわね!!」

 

粋怜は地下牢迷宮を逃げる為に走り回っている。出口も入口も分からない。

ただ浮游から逃げる為にがむしゃらだ。だから最悪の展開になってしまう。

 

「嘘でしょ」

 

行き止まりだった。

 

「グオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

逃げ場が無い。

後ろはただの壁。正面には粋怜を不幸にする浮游。

 

「……今夜は最高の出会いがあったっていうのに、最悪な出会いにもあるなんてね」

 

ただ何もせずに喰われるわけにはいかない。浮游の眼球でも潰してやると覚悟を決める。

怖いが覚悟を決めた人間は何でも無茶をするものだ。

 

「グオオオオオオオオオ!!」

「私を兎かなんかだと思わない事ね!!」

 

粋怜が決死の覚悟を決めた時、背後から破壊音が響いた。そして人の声も。

 

「「「破砕、爆砕、ホクサーイ!!」」」

「ええ!?」

「グゴゴ!?」

 

壁をぶち抜いての登場に粋怜も浮遊も驚いていた。

 

「ええ、ちょっと、誰!?」

「話しは後。掴まって!!」

 

藤丸立香は粋怜に手を伸ばす。

正直誰か分からないが今は彼の手に捉まるべきだと判断する粋怜。

 

「よし。黄飛虎このまま戻って!!」

「うむ。五色神牛よ背に乗せる人が多いが気張れ!!」

 

五色神牛は吼えると力強く走り出す。そして浮遊は追いかける。

 

「ちょっとアンタたち誰なのよ!?」

「藤丸立香です」

「黄飛虎だ」

「私は黄忠、劉表様の家臣だよ」

 

3人はちゃんと自己紹介をした。

 

「劉表のとこの!?」

「私はそうだけど藤丸お兄さんと黄飛虎さんは違うよ」

「じゃあこの2人は誰」

「孫堅さんの友人です。食事に誘われたのに貴女に連行されたのを見た」

「ああ、なるほど」

「そして面会に行ったら地下牢が迷宮になってるし、赤い熊に追われる羽目になった者です」

「それも理解できた」

 

どうやらほぼ同じような状況というわけだ。

 

「で、この牛は」

「某の相棒だ」

「地下牢にでかい牛がいるのおかしいでしょ」

「でかい赤い熊に追われてるよオレら」

「……何でもない」

 

ツッコミどころはあるが今は緊急事態だ。まずは脅威となっている浮遊をどうにかしないといけない。

 

「しっかり掴まって!!」

「え、あ、うん」

 

粋怜はしっかりと藤丸立香に掴まる。

 

「黄忠ちゃん矢を熊に。こっちにおびき寄せるんだ」

「うん。任せて藤丸お兄さん。だからしっかりと支えてね」

「任せて黄忠ちゃん」

 

藤丸立香は紫苑の腰い腕を回して、しっかりと固定する。

片腕は粋怜を掴み、片腕は紫苑を。両手に花状態だが今はそんな事を言っている場合ではない。

 

「はっ!!」

 

紫苑の矢が浮遊に突き刺さる。刺さった個所は浮遊にとって痛い程度だ。

 

「グオオオオ!?」

「もっと顔とか目とか狙えないの?」

 

粋怜は相手の急所を伝える。

 

「狙えるよ。でも今はあの熊を怒らせて、より引き付けるのが目的だから」

 

紫苑の腕なら五色神牛の背の上でも正確に狙える。敵によって狙われたくない目や鼻に矢を当てないのはワザとである。

 

「もっと怒らして!!」

「お安い御用!!」

 

矢を浮遊に連続で当てていく。

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「怒ってるよ!!」

「よし。良い調子だ!!」

 

五色神牛と浮遊の距離は付かず離れず。

 

「何処に向かってるの?」

「あの熊をある場所まで誘き出してるんだ」

「こんな迷宮でおびき寄せる場所なんて……」

 

五色神牛が進んでいるのが壁をぶち抜いて作った道。

藤丸立香たち自作の道である。

 

「力技ね」

「ほら、やっぱり力技でしょ」

「バスターだからね」

「何言ってんの」

 

迷宮を自分たちの有利な空間に作り出す。まさに力技だ。

 

「黄忠ちゃん。次は矢を熊の…」

「任せて!!」

 

藤丸立香は紫苑に指示を出し続ける。紫苑は指示通りに矢を確実に放っていく。

 

「そろそろだぞマスター!!」

 

黄飛虎が叫ぶ。それは作戦開始の合図だ。

 

「黄忠ちゃん決めるよ!!」

「うん!!」

「概念礼装起動…崩壊せよ。新生の時は来たれり。破壊!!」

 

概念礼装『破壊』が紫苑に付与される。矢を引く力がいつもより強く感じる。

 

「黄ちゃんまだ引き付けて」

「うん」

 

五色神牛が広い空間に突入した。この広い空間も藤丸立香たちが無理やり力技で作り出した空間だ。

 

「今だ!!」

「はあっ!!」

 

紫苑の矢が浮遊の片目に直撃する。

 

「グオアアア!?」

 

どのような生物も矢が片目に刺されば冷静ではいられない。もしも冷静でいられるのならば、その生物は精神が異常か鋼のメンタルだ。

浮遊は片目を潰されて冷静ではいられなかった生物(悪神)だ。ただでさえ概念礼装で強化された正確無比な紫苑の矢だ。

紫苑の矢は浮遊の片目深くに突き刺さる。浮遊は激痛に耐えらずそのまま転がりながら広い空間へ突入した。

 

「今だ!!」

 

今度は藤丸立香が合図を送る。

 

「まっかせろー!!」

 

浮遊の上空から太歳星君が落下していた。

 

「そっちが不幸の悪神ならこっちは凶つ神だぞ!!」

「グオギャアアアアアガア!?」

 

太歳星君は祟り神としての側面を持つ。不幸と災いの力がぶつかり合う。

 

「勝負だぞ悪神」

「グオオオオオオオオオオオオオオオ!?」

 

大きな鐘が出現し、浮遊を上空からグシャリと押し潰した。

 

「不幸を司る悪神と凶つ神。勝ったのはワガハイだったな」




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新は未定。


1179
地下牢が地下牢迷宮に。
なぜ、迷宮(異界)化したかの理由はちゃんとあります。
その理由はいずれ。

案内人が浮游に変身。
実は案内人は知らずに浮游に侵食されていたのです。
犯人は白波三鬼衆。
正直言うと憐れな人…案内人すまない。

浮游。
悪神で、遭遇すれば不幸になると言われている。
作者の解釈で遭遇して不幸になると言う事は喰われてしまうって事かなと思いました。
大きな熊に遭遇すると誰もが食い殺されると思うので。怖いものです。

1180
炎蓮と粋怜side
粋怜が炎蓮の勧誘を受けたかと思ったら地下牢が迷宮になってた。
粋怜としては「何で!?」そして炎蓮は寝たので事件に気付かない。

1181
地下牢迷宮の攻略法。
壁をぶち抜く。もうただの力技。

1182
敵をおびき寄せて罠に嵌める。
まさにこの作戦。そして「不幸」と「災い」のぶつかり合い。
勝者太歳星君でした。

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