Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは
連続更新です!!


江東の虎物語-刺客襲来-

1196

 

 

炎蓮が風鈴と久しぶりに再会。そして色々と有意義な話をする。

特にこれから成り上がるには必要な事は聞いておきたいものだ。上に上がるにつれ敵は厄介になっていき、多くなっていく。

そこれそライバルとなる者たちは切れ者ばかりと思っていた方がいい。

 

「盧植殿的には面白そうなヤツとかいんのか?」

「え、目の前にいますよ?」

「いや、オレじゃなくてよ」

 

ここ最近の良い人材は誰かと言われれば風鈴は炎蓮を推す。

 

「ふっふっふ。やはり姉貴は朝廷の役人に認められるほど凄いのじゃな!!」

 

祭は自分の事のように鼻を高くする。

 

「盧植殿。孫堅を調子に乗らせんでくだされ」

「いえいえ、ちゃんと正当な評価です。孫堅殿はちゃんと考えている方ですよ」

「そんな風には思えんがのう」

「どーいう意味だよ」

「そのまんまじゃ」

 

辛口評価の雷火だが本当は炎蓮の事を何だかんだで認めている。

海賊との防衛戦で既に認めているのだから。

 

「で、オレ以外は。なんならこの朝廷で腕の立つ奴とか」

「そうですね……朝廷だと徐栄殿や高順殿ですかね」

 

口に出した2人の名は官軍の将軍だ。

 

「2人とも国の忠臣であり、実力は目を見張るものがあります」

「徐栄…アイツか」

「おや、徐栄殿を知ってらっしゃるので?」

「ここで来る途中でちょっとな。ずいぶんと宦官と仲が悪そうだったぜ」

「あー…そういう事」

 

高順という者は知らないが徐栄はつい先ほど知ったばかりだ。

知ったと言っても一言二言程度の話をしたくらいである。そもそも話をしたと言うか一方的に話しかけられたと言ってもいい。

 

(アイツは強い。朝廷にはあんな強者もいるんだな。なら盧植が言う高順とか言う奴も強いんだろうな)

 

ここで炎蓮の気配センサーがピクリと反応。

 

(何だ…何人か盧植の部屋の外にいるな。しかも気配を消してんな)

 

気配を消しているというのに炎蓮は感知した。それほど彼女の気を感知する能力が高かったという事だ。

もしくは隠れている者の気配の消し方が下手か未熟なだけである。

 

「盧植殿」

 

炎蓮が急に小さな声で名前を呼ぶので風鈴も小さな声で返す。

 

「どうしました?」

「囲まれてんぞ」

「っ!?」

 

その言葉に風鈴は驚きそうになったがすぐに冷静になって声を潜めた。

 

「祭、張昭。騒ぐなよ」

 

今ここで騒ぐと部屋の外にいる者たちに感付かれる。

 

「囲まれておるじゃと?」

「何でじゃ?」

 

部屋の外にいる者たちは刺客。

孫堅を暗殺する為に宦官が用意した刺客たちである。。

 

「…………恐らくだがオレは呉郡太守の朱貢殿に睨まれていると思っている。そうだとすると、どうせ奴が宦官どもを唆したんだろう」

 

部屋の外にいる者たちが刺客ではないかと予想する。そして刺客に狙われる理由もだ。

 

「それはおかしいぞ。お主を県令に推挙したのはその朱貢殿ではないか」

 

炎蓮が役人にまた戻れたのは朱貢が推薦したからだ。

確かに雷火が言うように県令に推した人物が何故暗殺をするのか分からない。推薦しておいて暗殺するなんて本末転倒だ。

 

「何もおかしくねえよ。オレが県令になればこうして都へ上る時が来る。それがオレを始末する好機というわけさ」

「なんと…まあ、確かに曲阿で姉貴の命を狙うは至難の技じゃろうが」

「考えすぎではないか。いくらなんでも手が込み過ぎている」

「暗殺ってのはそういうもんだろ?」

 

暗殺とは簡単に実行できるものではない。綿密に計画してやっと暗殺が始まる。

朱貢が黒幕と仮定して、炎蓮を暗殺するためにとても時間をかけ、回りくどい方法で暗殺計画を実行したのだ。

 

「ううむ…」

「じゃあ、呉郡太守が姉貴を狙った黒幕か」

「いや、断言はできねえ。オレが勝手にそう思っているだけだよ。都の宦官共にしても若い芽は早いうちに摘んでおきたいだろうしな」

 

炎蓮が刺客に狙われる理由は上に上がって来たからだ。成り上がり者は既に上に居る者たちや宦官たちに嫌われる。

何せ宦官たちは己が地位を脅かされるのが最も恐れているのだから。故に地位を脅かす可能性のある者たちを潰したがるものだ。

 

「特に、オレみたいにいずれは天下に立つような器はよ」

「よう抜かすわ。じゃがこれで合点がいった。お主、わざとじゃな」

「あん?」

「わざと、何の事じゃ?」

「その服装も城での振る舞いも何もかもじゃ。宦官共を欺くために粗野ない仲の小心者であるかのようにみせかけたか」

「お、おおお!!」

 

宦官を欺くために小者の演技をしていたという事で祭も「そういう事か!!」と納得した顔。

先ほどの宦官にへつらっていた炎蓮の姿に見損なっていたが、その全てが演技だったというのなら話は別だ。

全ては考えられた動きであり、落ちた評価は急に上がりだした。そして主人の考えを理解出来なかった己を恥じる。

 

「おいおい。オレは粗野な田舎の小心者じゃねえか」

「まったく…お主は大したもんじゃ」

「いやはや、さすがは姉貴じゃ」

 

流石と褒めるが実際のところ炎蓮の演技は失敗に終わっている。刺客が部屋の外にいるのが証拠である。

 

「これが天下の都…洛陽の有様か。訪れるたびに腐敗の度合いが増しておる気がするわい」

 

雷火の言葉が風鈴は心を痛めるが事実なのだから言い返せない。立場が逆なら風鈴も同じ事を言っているはずだ。

 

「オレを狙っているにしても盧植を巻き込むもんか?」

「……私を邪魔だと思う者たちもいますから」

「お互い大変だな」

 

風鈴は朝廷での良心の1つ。彼女を評価し、懇意にしている者たちも多い。そして、そんな彼女を気に入らないと思う者たちもいる。

 

「で、どうするんじゃ姉貴。まさかこのまま暗殺されるというわけではなかろう?」

「勿論だ。迎え撃ってやる。つーかそれしかないだろうしな」

 

刺客が襲い掛かってくるなら殺されるわけにはいかない。生きたいのであれば反撃するしかないのだ。

扉がコンコンと叩かれる。炎蓮は風鈴に視線を送ると頷いた。

 

「誰ですか?」

「衛兵の波賛です。緊急の報告ですが部屋に入っても?」

「構いません。私が扉を開けます」

 

炎蓮と祭が扉左右の位置に付く。

風鈴が静かに席から立って扉に手をかける。扉を開けると衛兵ではない者が立っていた。

 

「盧植殿。お命頂戴!!」

「テメーがくたばれ」

 

炎蓮の裏拳が刺客の顔面に打ち込まれた。

 

「「「っっ!?」」」

 

部屋の外には刺客が複数人控えていた。

 

「悟られていたぞ」

「迅速に仕留めろ!!」

「孫堅と盧植を殺せ!!

「全員殺せ」

 

残りの刺客が一気に部屋に雪崩れ込み、剣を抜いた。

 

「テメーらが死ね!!」

 

盧植の部屋で刺客たちと交戦する。

 

「張昭と盧植は下がってろ。やるぞ祭!!」

「おう!!」

「私も狙われる身。私も迎え撃ちます」

 

風鈴も剣を抜く。そして炎蓮と祭にも剣を渡した。

場所が朝廷なだけに炎蓮たちは武器は没収されている故に風鈴は部屋に隠していた剣を渡したのである。

 

「貴様ら刺客が姉貴を仕留められると思うな!!」

 

刺客たちとの戦い。

朝廷の闇を恐ろしく、悍ましい目に遭うかと思われたがそんな事はなかった。

 

「儂らが…姉貴が刺客なんぞに殺されるわけなかろう!!」

「はっ。オレを殺したければ頭を狙ってみろ」

 

炎蓮は己の額をトントンと突くのであった。

 

「…………何だろうな。やっぱ狙ってほしくねえ」

 

炎蓮は己の額を突くのを辞めた。何となくだが嫌な気持ちになったからだ。

 

「ったく、朝廷で刺客が襲ってくるなんてな…ここではコレが日常茶飯事じゃねえだろうな?」

「…そんな事ありません」

 

そう言う風鈴であるが朝廷も裏では何をしているか分からない。否、後ろめたい事をいくらでもやっているのは気付いている。

暗殺、謀殺術中何でもござれの朝廷になりつつある。本来の朝廷はこのような闇は無いものでありたい。

 

「こりゃさっさと帰るか」

「そうした方がよろしいです」

 

暗殺されかけた場所に長居するつもりはない。さっさと帰還するが吉である。

 

「お前も一緒に来るか盧植?」

「いえ。私はこの朝廷に残ります」

「アンタも狙われたんだぞ?」

「それでも私はここに残ります」

 

風鈴は朝廷に残って戦う。これ以上、朝廷を腐敗させるわけにはいかないからだ。

 

(やっぱ盧植は出来る奴だな。だがたった1人で何とかなるものか…ならオレんとこに来てもらいたいもんだ)

 

炎蓮たちはさっさと朝廷から退散する事を考える。しかし退散は出来ない未来だ。この後の彼女たちは逃げる事は出来ず、戦うという選択肢しかないからだ。

 

 

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「ふむ…暗殺失敗か」

 

炎蓮たちの暗殺は失敗に終わった。しかし韓暹にとって暗殺失敗は予定通りだ。

尤も炎蓮だけは死なないと思っていた。祭や雷火たちの誰かが死ねば儲けものだったというくらいである。

結局のところ韓暹が自ら出向いて孫呉の基盤とも言える炎蓮たちを潰すしかない。

 

「孫堅はギリギリ生かすとして…張昭、黄蓋、程普を殺すかの。ついでに盧植や黄忠たちも殺すか?」

 

既に作戦は開始されている。朝廷内が彼にとっての狩場だ。

 

「それにしても失敗するのは踏んでいたが少しくらい負傷させるくらいの成果は出せかなかったのかのう」

「刺客の質が悪かったんじゃないですか?」

「もしくは宦官共の策謀が薄かったかのう」

 

ヤレヤレとため息を吐く。

 

「じゃあ作戦開始じゃ。この朝廷を妾の狩場にせい」

「……私は狩場を用意するだけ。戦わないですよ」

「分かっておる。この朝廷内を面白おかしくすればよい。あとは妾がやる」

「面白かしくって…私の能力はそんな愉快な能力じゃないですよ」

 

朝廷が異界化していく。

 

「妾も本気を出そう。神々しくも暴力たる化身の姿をみせてくれるぞ」

 

韓暹の姿が大きく変化していく。

 

 

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朝廷の異界化。

まさかの異常事態発生に炎蓮たちは動揺する。

 

「な、なんじゃコレは!?」

「朝廷とはこんな複雑な場所だったかのう?」

「いえ、こんなの朝廷ではありません!!」

 

何が起きているかと朝廷内が迷宮のように異界化しているからだ。

刺客の襲撃を退けてさっさと朝廷から出ていこうと風鈴の部屋から出た時、朝廷内がおかしくなっていた。

そんなの朝廷に務めている風鈴からしたら驚愕ものだ。朝廷の魑魅魍魎と相手しているとはいえ、ここまで以上は初である。

 

「チッ、まぁた何か起きやがったか。勘弁してくれよ」

「ぬう…何となくじゃが地下であの県令に襲われた事件を思い出すの」

「わしもじゃ」

 

風鈴は驚きっぱなしだが炎蓮たちは冷静になっていた。

まるで彼女たちは似たような事件に遭遇している口ぶりである。特に粋怜がこの場にいたら呉での地下牢事件を思い出すはずだ。

 

「おい盧植」

「何でしょうか孫堅殿」

「朝廷には怪しげな妖術師でもいんのか?」

「いえ…そんな人は居ないと思いますけど」

 

朝廷には様々な人間がいる。風鈴が知らないだけで妖術師がいるかもしれない。

それこそもっとヤバイ人間も潜んでいてもおかしくない。

 

「ったく、さっさと朝廷からオサラバするつもりが朝廷が逃がしてくれねえとはな」

「おい盧植よ。まさかコレも姉貴を暗殺するもんじゃなかろうな」

「……分かりません。もしそうだとしても朝廷にこのような事を起こさせる人物がいると思う恐ろしいです」

 

炎蓮を暗殺する為だけにこれだけの大がかりの計画を宦官がするはずがない。

確かに彼女は他の者達とは違う力を風鈴は感じている。しかし今の朝廷を揺るがすような力はない。

 

(宦官たちがそこまで孫堅殿を恐れているのかしら。それとも…別の誰かが暗躍している?)

 

炎蓮は宦官とは別の誰かに狙われているのかもしれない。それこそ宦官よりもヤバイ人物に。

 

「取り合えず外に向かって歩くしかねえか」

「こんな分け分からんくなった朝廷を歩き回っても迷うだけだと思うぞ」

「だがずっとここにいても立ち往生だろ」

「そうじゃが…こんな如何にも迷ってくださいというような光景の中を進むのか?」

「安心しろ。迷わない必勝法がある」

 

炎蓮や雷火たちは異常事態の中で冷静でいようとしている。

 

「…冷静なのですね」

「まあな。これでも異様な異常事態には遭遇した事がある。だから多少は慣れてんだよ」

「な、なるほど」

 

人間は異常事態が発生すれば慌てふためくものだ。しかし炎蓮たちがすぐに朝廷の異界化を受け入れて冷静になった。

経験があるからこそ慣れる事が早くなり、冷静になる事も早かったという事である。

 

「で、迷わない必勝とは何じゃ?」

「立香に教えてもらってな」

「ほう…立香に」

「よし。記憶が正しければ外はこっちだったな」

 

炎蓮は腕をぐるんぐるんと回す。

 

「何しとんじゃ。あと必勝法とたらを教えい」

「外に向かって壁をぶち抜く事だぜ」

「脳筋か!?」

「ほーう、立香の奴も考えるのう。そして分かりやすい」

「脳筋が増えおった!?」

 

迷宮の壁ぶち抜き攻略法に炎蓮と祭は実行しようとする。雷火は脳筋攻略法にため息が出た。

 

「なんか槌でも斧でもねえか盧植殿?」

「えーっと…ないわ。それと朝廷は壊さないでほしいかな…こんな状況でも」

「そうじゃぞ。こんな状況じゃが」

 

朝廷は大陸の頂点。そう簡単に壊していいようなものではない。

 

「だがよぉ。こんな複雑な場所を当たりもつけず歩き回っても迷うだけだぜ」

「壁壊しは最終手段とするぞ。正攻法で地図を書きながら進む」

 

マッピングを開始。

 

「朝廷内を全て書き写すなぞ暗殺でも計画してるのかと疑われてもおかしくないのう」

「あはは…そうですね」

 

朝廷内を図面に全て書き起こされたら色々と危険と思われるのは当然だ。

 

「こんな状況だから図面に起こしても意味無いと思うけれど、後でその図面は燃やしてくださいね」

「うむ。分かっておる盧植殿」

 

何はともあれマッピングをしながら異界化した朝廷内を進もうとした時に変化が訪れる。ただし、その変化は悪い方にだ。

 

「ほっほっほっほ」

 

異界化した朝廷から笑い声が聞こえてくる。

 

「誰だ!!」

 

いの一番に反応したのは炎蓮だ。

聞いたことも無い笑い声が異界化した朝廷に響く。警戒するのは当然だ。

 

「悉く妾の策を崩してくれたの」

「策だぁ?」

 

いきなり訳の分からない事を言われても当然の如く意味が分からない。しかし謎の声の主は炎蓮たちに無視して勝手に話し続ける。

 

「妾の予定では今ごろ孫呉は大打撃を受けて弱体化しているはずじゃった。しかし今だに健在じゃ……だから妾が出張る事にした」

 

ぬるりと朝廷の迷宮から朱色の鬣を靡かせた黒い龍が現れた。

 

「な!?」

「なんじゃアレは!?」

「龍!?」

 

圧倒的な威圧感と巨体で炎蓮たちを睨みつける。その龍の正体は韓暹である。白波三鬼衆の1人。

龍の姿を見て勝手に脚が後退したり、脚が竦む。危険だと本能が警鐘を鳴らしている。相手は最強生物である龍であり、人間が手を出していい存在ではないのだから。

 

「ここで貴様らを殺す」

「コイツ…」

「この神々しくも高貴な姿こそ真なる妾じゃ。この姿を拝めて良かったの。そして死ね」

 

韓暹(龍)は大きく口を開いた。

 

「貴様らなぞ今の妾にとって蟻んこじゃ。一噛みで終わり」

「逃げるぞ!!」

 

今のこの場で真正面から戦っても勝てる気がしない。

龍相手に無策で戦うものではないのだから。逃げると言う選択は間違いではなく、正解だ。

 

「逃げれると思うてか!!」

 

大きな口を開き、牙をギラつかせて炎蓮たちに迫る。

 

「ほっほっほっほっほっほ。逃げるな逃げるな」

 

朝廷迷宮は広いが彼にとっては狭い。韓暹(龍)が動く度に朝廷内が壊れていく。

龍を室内に留められるはずがない証拠だ。

 

「走っても走っても引き剥がせねえ!?」

「あの巨体だから距離が離れないんでしょう!!」

「取り合えず狭い通路でも部屋にでも入って奴から目をくらませるしかねえ」

「隠れてもあの巨体で押しつぶされるだけではないか!?」

 

刺客を倒した剣を韓暹(龍)に投げ飛ばしても勝てそうにはない。

 

「ヤバいな…どうするか」

「こっちです!!」

「この声は太公望か!!」

 

聞き覚えの声の方に顔を向けると太公望がいた。

 

「哪吒たのみます」

「交给我吧」

 

哪吒が飛び出して韓暹(龍)の顔周りを飛び回る。

 

「ぬう、鬱陶しい蠅め。しかし蠅が龍に勝てるとでも思うてか?」

「蠅でも目に向かってこられたら驚くだろう?」

 

黄飛虎も駆けて力の限り脚力を踏ん張って跳んだ。

 

「むおおおおおう!?」

 

哪吒と黄飛虎が韓暹(龍)の両目に向かって突撃する。

どのような生物でも目に異物が飛んで来れば反射的に目をつぶるか回避するものだ。

本物の龍であれば平気かもしれない。しかし彼は身体が龍であっても意識は人間だ。人間の感性を持っているのだから彼は反射的に目をつぶってしまう。

瞼を閉じて異物がはね返った感覚が伝わる。

 

「鬱陶しい蠅どもめ。高貴な妾の目を汚す気か!!」

 

バチリと目を開いて蠅どもをはたき殺そうと探すが見つからない。

 

「糞っ。逃がしたでおじゃる!!」

 

視界を塞がれた一瞬の隙を突かれ、炎蓮たちを見失わされた。

 

「おのれぇええええええええええい!!」

 

韓暹(龍)は身体をくねらせ、暴れ回る。炎蓮たちを潰せなかった事と邪魔された事に怒り心頭だ。

一瞬にして朝廷迷宮内は破壊される。そして再構築されていく。

 

「……あまり破壊しないでくれると助かるんですけど」

「おお、お主も近くにおったか。奴らは何処にいったのじゃ。というか奴らをこの場に無理やりにでも出せい」

「無理」

 

外套を被った女性がキッパリと否定した。

 

「なぬ?」

 

威圧的に韓暹(龍)は外套を被った女を睨む。

 

「そんなに睨んでも無理。威圧的に言っても無理。今の私にはこの能力をまだ完全に使いこなせてないんだから」

 

外套を被った女は建物内を異界化する力を持っている。しかし力を得たばかりで未熟である。

 

「何度も言ってるけど私の今回の仕事は貴方の監視です。貴方の手伝いは本来の仕事に入っていないんですよ」

「ちっ。使えん女め」

(この屑男最悪なんだけど)

 

心の中で悪態をつく外套を被った女。

 

「なら兎を追い詰める虎のように…いや、龍のように……否否っ。神が狩りをしてやろう」

 

韓暹は龍であり神。その力の正体は共工。

 

「妾は神ぞ」

 




読んでくださってありがとうございました。
次回の更新はまた未定。


1196
原作では刺客に襲撃はありませんでしたが此方の物語では刺客の襲撃が起きてしまった世界線です。
まあ、普通に撃退しましたが。

衛兵の波賛
ただの舞台装置。名前についてはそのまんま。刺客・暗殺なので。

炎蓮の額を狙って欲しくないという言葉。
今の彼女は知らないけど、何となく悪寒がしたので発した台詞。


1197
敵SIDE
今回の黒幕が自ら動き出します。


1198
朝廷の異界化。
呉の地下牢での事件と同じです。

黒幕である韓暹。
彼の身に埋め込まれた力は共工。
予想していた読者は多くいたかと思われます。
はい。大正解です。
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