Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
FGOではついに術の戴冠式戦が始まりました。
頑張って周回中です。それにしてもついに「彼」が再登場して私は興奮中です。
そんな「彼」…「偽典ソロモン」との戴冠戦でまさか彼がグランドセイバーを出したのがめちゃ驚きましたよ。
彼女は実装されるの!?っとまず初めに思っちゃいましたね。
そして偽典ソロモンが仲間になるのか!?


江東の虎物語-封神-

2008

 

 

朝廷迷宮は洪水によって飲み込まれた。

洪水は自然災害の1つで人間では普通に勝てない事象である。予防策云々は先人たちの知恵や過去の経験があってこそできる。しかし今ここで、現場で突発的に、目の前で洪水が発生すれば人間は為すすべなくに飲み込まれるだけ。

 

「ほ…ほっほほ。死んだ死んだ。孫堅諸共全員死んだ!!」

 

炎蓮は殺すなと于吉より言われていたがどうでもいい。韓暹(共工)にとってもう炎蓮たちを全員殺さねば気が済まないからだ。

虚仮にされ、逆鱗を刺され、もう少しで韓暹(共工)が逆に殺されるところだったのだ。

 

「于吉殿は…孫堅を殺すなと言っておったが……これで三国のうち一国が消えたのじゃ。結果的にいずれは滅ぼす国なのじゃから…今殺しても結局は…というものじゃろうて」

 

命令違反を勝手に正当化する韓暹(共工)。カルデアのマスターまで仕留めたのだから御の字のはずだと勝手に思う。

カルデアはある意味、三国よりも厄介な存在だ。五胡が動いた時に必ずや厄介な相手になると判断したからこそ炎蓮ごと洪水で溺れ殺したのである。

 

「ほ…ほっほほ。これが…龍の逆鱗に触れた…末路なのじゃ」

 

韓暹(共工)の目に映るは洪水によって飲み込まれた無残な朝廷迷宮。

洪水に飲み込まれた人間はほぼ生きていない。死体が見つかる事はなく、見つかったとて見るに堪えない姿で発見される。

 

「くそっ…さっさと逆鱗に刺さった剣を…抜いて傷を塞がねば…」

 

喉元の逆鱗に刺さった斬妖剣は深い。斬妖剣を刺した炎蓮、郭雄、黄飛虎には恨みと怒りしかなく、本当だったら噛み殺したかった。それでも殺したのだから多少は溜飲が下がるというものだ。

 

「ん?」

 

韓暹(共工)は洪水で飲み込まれた朝廷迷宮で一か所だけ不思議な箇所を見つけた。

 

「うずしお…なぜ渦潮は?」

 

気になって覗きに行くと渦潮の中心かた何かが飛び出し、韓暹(共工)の顔に突撃してきた。

 

「ぐごけ!?」

 

その何かとは哪吒であった。

 

「お主は…小蠅。なぜ生きて!?」

 

渦潮の中心には他にも誰かいた。1人だけでなく、複数人いる。

 

「何故生きているのじゃ!?」

 

渦潮の中心では雷火が赤い布を力の限りぐるんぐるんとぶん回していた。

 

「くうううう、腕がつる!?」

「張昭。気合だ気合!!」

「頑固な頭を使え張昭!!」

「張昭先生。がんばれがんばれ」

「黙っとれお主ら!!」

 

炎蓮、祭、粋怜が応援しているが雷火としてはうっとおしいだけのようだ。

雷火がぶん回している赤い布の正体は『混天綾』。赤い布のような形状をしており、長い場合は7尺(約2.3メートル)。

『混天綾』は水をかき乱す力がある。故に洪水が迫った時に雷火は『混天綾』をぶん回して、迫りくる洪水を無理やり逸らしたのである。

ぐるんぐるんとぶん回して洪水を逸らしている結果、渦潮が発生したのだ。

 

「張昭先生を守るぞ!!」

「私はまだまだ戦えます!!」

「私も戦えるよ!!」

 

郭雄に風鈴、紫苑が雷火の前に出る。今ここで雷火を殺されたら全員が洪水に飲み込まれて溺れ死ぬのだから何が何でも守るのだ。

 

「う、腕がつりそうじゃ」

「頑張ってください張昭殿。私もすぐに土遁の術を再展開します」

 

太公望は土遁の術を再展開して足場となる瓦礫を呼び寄せる。

 

「そして決着を付けます。マスター、太歳星君!!」

「ああ!!」

 

藤丸立香が令呪を輝かせる。

 

「ワガハイにまっかせろー!!」

 

太歳星君はいつの間にか韓暹(共工)の真上に浮いていた。

 

「な、何じゃあの小僧は?」

 

太歳星君の姿を見て何か嫌な悪寒を感じた。

彼は確かに最初から居た子供であったが今一度確認すると、ここまで異様な雰囲気を出していたかと思う。

 

(ま、不味い気がする…この小僧から離れないと…いけない気がする!?)

 

距離を取らねばと韓暹(共工)は動こうとしたがもう遅い。既に藤丸立香と太歳星君は動いていた。

 

「令呪を持って命ずる。太歳星君…悪神すらも恐れる祟りをお見舞いしてやれ!!」

 

令呪の一角が消費され、魔力が太歳星君に装填される。令呪ブーストもかかり、太歳星君の異様な魔力が滲み出す。

 

「あ…ああ…これは!?」

 

韓暹(共工)はもう太歳星君の間合いだ。

 

「ワガハイ覚醒!!」

 

太歳星君が己の姿を隠すほどの凄まじい呪力に放出した。そして姿を現した時、少年から青年の姿になっていた。

 

「え、誰だ!?」

「太歳星君だよ。青年になった太歳星君だ」

「大人になったって事か!?」

 

炎蓮たちが太歳星君の青年姿に驚いているが藤丸立香が冷静に説明した。

太歳星君の青年時の姿は凶神として活性化している状態だ。どちらかと言えば本来の姿。

チラリと藤丸立香と炎蓮たちを見てから韓暹(共工)を睨む。

 

「お前たちを救うためならどんなヤツでも祟ってみせよう」

 

太歳星君の真上には不気味な色の巨大な呪塊が現れていた。その姿はまるで呪いの木星のようであった。

 

「地を巡るは鏡の凶星、空に瞬き災禍が喘ぐ。太歳頭上動土(タイソエイ・アウェイクン)!!」

 

宝具『太歳頭上動土(タイソエイ・アウェイクン)』。

祟り神としての本領を発揮する宝具。不気味な色の巨大な魔力塊を生成し、そこから凄まじい呪いを放射して、相手にダメージと多種多様な不調を与える。

宝具名の由来は「太歳の頭上の土を動かす」という中国の諺が元になっており「身の程を知らず、余計なことをする」という意味だ。

実際に動かした結果一族郎党七十人以上が死ぬ大惨事が起きている例もある。

 

「グギャ…ギャガガガガ…アガアアガアア…アギャアアアアア!?」

 

太歳星君の宝具による凄まじい呪いが韓暹(共工)を飲み込んだ。

 

「共工は龍で悪神。太歳星君の呪いも耐えうる可能性だってあるでしょう。しかしそれは龍の強靭な肉体と堅い鱗があるからこそ」

 

太歳星君の呪いが逆鱗に刺さった斬妖剣に注がれていた。

 

「じゃあ内側はどうですかね。どんなに硬い外皮でも内側は柔らかいものでしょう?」

 

どんな生物も外皮よりも内側の方が柔らかいものだ。

 

「斬妖剣が良い受信器になってます。太歳星君の呪いが直接内側に注がれるのは流石の共工も耐えがたいはずです」

 

斬妖剣は受信機・避雷針のような役割を果たし、太歳星君の呪いを韓暹(共工)に送り込んでいるのだ。

凄まじいまでの呪いを直接内側に注がれれば韓暹(共工)であってもただでは済まない。

 

「斬妖剣を逆鱗に刺すのが本命ではありません。本命は太歳星君の呪いを貴方に注ぎ込む事ですよ」

「何故じゃなずぇじゃっ。妾は無敵の神なのじゃぞ!?」

「共工は確かに恐ろしい神ですが無敵ではありせんよ。共工も敗北するのです」

 

共工は文献で恐ろしい神として書かれているが敗北したとも残されている。

それこそ顓頊や堯という名の人物に敗北したのだ。悪神であっても無敵ではなく、倒せると存在と証明されている。

 

「共工は洪水神…水神です。過去に火の神と戦った事があり、勝敗は火の神が勝利しました」

 

共工は祝融という中国神話の火の神と争った。水と火ではどちらが勝つかと言われれば普通は水と答える人がほぼだ。しかし勝利したのは祝融である。

 

「この事から共工は火の神…火に敗北します」

 

太公望はチラリと空中で旋回している哪吒を見た。

 

「頼みましたよ哪吒!!」

「令呪を持って命ずる。哪吒、洪水神を倒す再演を!!」

「了解!!」

 

哪吒が令呪ブーストによって魔力装填・強化される。

 

「宝貝解放!!」

 

朝廷迷宮の一番高い位置まで跳び、哪吒は蓮の華を咲かせる。そして火尖鎗を開放して炎を纏わせて一気に急降下。

狙いは言うまでも無く韓暹(共工)。悪神黒龍を焼き尽くす火の槍が迫る。

 

「桃園仙術式目、三魂飛んで七魄霧散。これ即ち火尖槍炎上!!」

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」

 

哪吒に貫かれた韓暹(共工)は燃え上がり、強靭な肉体は焼かれ、硬い鱗はボロボロに崩れ剝がれていく。

悪神黒龍は地に無理やり墜とされたのであった。もはや韓暹の言う無敵の神と言うには見えない姿だ。

 

「な、なずぇじゃ…妾は無敵の神なのじゃぞ……」

「うわっ…アイツまだ生きてるぞ!?」

 

倒したかと思った韓暹がしぶとく生きていた姿を見て炎蓮は警戒をまだ解かない。

 

「勝利はしましたよ。もう彼は何も出来ないでしょう。ですがこの後が共工と同じように余計な事をされたら困りますね」

 

顓頊や堯、祝融と戦った共工は彼らに敗北したが殺されてはいなかった。生き残って後々、余計な大惨事を起こしたのだ。

 

「恐らく彼はこの後、逃げ出すでしょうね」

 

太公望は打神鞭を手に持つ。

 

「眼鏡女ぁ!!」

「眼鏡女?」

 

韓暹は炎蓮たちに言っているわけでは無い。別の誰かに対して一方的に喋っているのだ。

 

「この異界を解除しろぉ!!」

 

その言葉が響いた瞬間、朝廷迷宮が徐々に消えていく。そして韓暹は朝廷から逃げる様に空へと力弱く逃げ出していく。

 

「これはいけません。やはり彼は逃げる気満々ですね。哪吒、彼を追いかけて北へ誘導させてください」

「了解」

「さあ、最後は僕の出番ですね」

 

打神鞭を太公望は片手で回した。

 

「さてと」

 

朝廷迷宮が解除され、正常な朝廷に戻りつつある。韓暹が共工の力を使って洪水を起こしたので朝廷はこの後、水浸しだ。

そんな中で韓暹は朝廷を飛び出し、空へと逃げ出した。その後を追うは哪吒。

太公望の指示のもと、彼女は韓暹を北へとそれとなく誘導させる。

 

「マスター僕らも追いかけますよ。シフソウくん」

「モモモ!!」

「来たれ。擬竜神獣・四不相(ぎりゅうしんじゅう・しふそう)!!」

 

四不象が真なる姿へと変化する。その姿は麒麟のような四足獣。

竜の如き巨大な魔力を纏い、姿を変え、空を駆け抜け、時には敵軍を灼き尽くすことが霊獣である。

 

「さあ、乗ってくださいマスター。黄飛虎と太歳星君は瓦礫の上に。土遁の術で運びます」

 

太公望と藤丸立香が四不象の背に乗ろうとした時、待ったをかける人物が現れる。その人物とは炎蓮である。

 

「待て。オレも行く。最後までオレも戦う!!」

「炎蓮さん」

 

藤丸立香が手を伸ばそうとしたが太公望に止められる。

 

「いえ、ここから先は僕らだけの戦いになる。最後の仕事は僕らだけで」

「なんだと。オレはまだ戦えるぞ!!」

「やせ我慢は良くないですよ。宝貝を使った反動でもう立つのもやっとでしょう?」

「く」

 

太公望の言葉に炎蓮は言い返せない。彼女だけでなく、雷火や粋怜たちも宝貝を使った者たち全員が疲労しきっているのだ。

 

「貴女方はこの朝廷から無事に抜け出す事が重要です。この有様の朝廷にいたら面倒ですよ」

 

朝廷は洪水によって水浸し。ボロボロの黒龍が朝廷から飛び去ったという状況も少なからず見られて不吉だと噂される。

そんな中心な現場に炎蓮たちがいれば色々な意味で面倒なのは確かだ。ここはさっさと退散する事が先決なのである。

 

(それにこの時代で彼女たちと会うのもこれが最後です)

 

太公望の思っている事がを藤丸立香は何となく察する事が出来た。

今回の黒幕は韓暹。彼との決着が付けば元の時代に戻れるはずなのだから。

 

「炎蓮さん」

「な、何だよ立香?」

「また会いましょう。祭さん、黄忠さんたちもまた会いましょう」

「り、立香」

「藤丸のお兄さんちょっと待って」

 

藤丸立香は炎蓮や紫苑たちに視線を送って手を振った。

 

「おい、待て!!」

 

炎蓮の制止を振り切って四不象は飛び立ち、韓暹追いかけるのであった。

 

 

2009

 

 

広大な青い空を優雅に泳ぐというよりも必死に逃げているのは韓暹。その姿はボロボロの悪神黒龍であり、雄々しさや強靭さ、神々しさもない。

彼が講じた全ての計画を炎蓮や藤丸立香たちに潰された。いよいよ己自身で潰すしかないと思い切って出陣するも太公望の策と炎蓮たちの活躍により敗北した。

神聖で最強の力を持った韓暹は敗北が信じられなかった。今自分が必死に逃げている状況も信じられなかった。信じられない状況ばかりだが今は逃げるしかないのだ。

 

(この妾が敗北なんぞ…敗北なんぞぉ!?)

 

頭の中で自分は負けていないと反芻しても現実は必至に逃げている状況だ。

 

(逃げているのではない。戦略撤退なのじゃ…今は戻って傷を癒さねば!!)

 

本拠地の五胡に戻れば同僚の白波三鬼衆がいる。彼らも韓暹と同じように強大な力を于吉に与えられている。

同僚の力を借りれば炎蓮や藤丸立香たちを倒せると踏んだのだ。

 

(速く元の時代に戻らねば!!)

 

必死な韓暹であるが元の時代に戻れる事はない。太公望が悪神黒龍である共工を今ここで封神するのだから。

 

「逃がしませんよ」

 

太公望は逃げていく韓暹の後ろから追いかけていく。

 

「シフソウ君。絶対に撒かれないように」

 

コクリと頷く四不象。

 

「太公望。今向かっている方向って」

「はい、北です。正確には幽州ですね」

 

藤丸立香の問いかけに含みのある笑みを浮かべた。

韓暹が空に逃げようとした時に太公望は哪吒に北へと誘導するように指示をした。その北へという方向が幽州の地だ。

 

「幽州の地。アイツを…共工を倒すための場所」

「はい。共工は今まで敗北を何度かしていますが完全に倒された事は無かったとされる程しぶといですが、唯一完全に敗北した事があるんです」

 

共工が完全に敗北された事実。それは堯の時代にて幽州の地において共工が処刑されているというものだ。

 

「奴を完全に倒すなら朝廷ではなく、幽州の地です」

 

説明している内に幽州の地に到着する。

韓暹は必至に逃げている状況なので哪吒によって北へと誘導されているのに全く気付かない。

 

「太公望 誘導完了!!」

「誘導ありがとう哪吒。ここからは僕の出番です!!」

 

打神鞭を強く握る太公望。

 

「マスター僕に最後の令呪を!!」

「ああ、令呪を持って命ずる。悪神の封神を!!」

 

令呪によるブーストが太公望に付与される。

魔力が、力が溢れてくる。狙いを定めて打神鞭を構える。

 

「思想鍵紋、励起」

 

悪神を倒すのに容赦はしない。

東方における思想魔術に纏わる思想鍵紋。思想盤の特権領域へのアクセス。打神鞭の真価を開放。

 

「な、なんじゃ!?」

 

韓暹は太歳星君の攻撃をされる時よりも上の嫌な悪寒を感じた。それこそ生命の危機を感じる程のものだ。

己は共工の力を手にした存在で神である。神が、悪神が生命の危機を感じるのはあり得ない。しかし韓暹は嫌な脂汗がドバドバと溢れる。

 

「い、嫌じゃ嫌じゃっ。わ、妾は…こ、こんなところで終わりたくない。あの世界線のように終わりとうなああああああい!?」

「八十四符印、全基起動。空よ、開け。落ちろ打神鞭!!

「あ」

 

韓暹の真上に巨大な打神鞭が現れた。悪神を封神するための宝貝である。

 

「あ…ああ…あああ…ああああああああああああ!?」

「光に消えろ」

 

空から雲を割く程の巨大な打神鞭に韓暹を押し潰し、今度こそ地へと堕ちた。

ついに過去の呉で陰謀をまき散らしていた韓暹は幽州の地で共工と共に封神されたのだ。

 

 

2010

 

 

幽州の地で悪神が封神された。そして五胡の幹部が1人である白波三鬼衆の1人を倒したという事でもある。

 

「いやあ、見事に悪神を封神しましたね」

「うん。これで過去の呉で異変は起きないね」

「やったぞ。敵は倒したぞ」

「これで後は元の時代に戻るだけだな」

「万事解決?」

 

皆が「うんうん」と頷く中で哪吒だけが疑問符で首を傾けた。

その理由は共工の力を手にした韓暹を倒したからである。物語的に敵を倒したから万事解決というわけでなく、問題が起こる場合もある。

物語的にハッピーエンドではなくバットエンドというのはいただけないが今回は相手が共工だからこそである。

 

「流石は共工ですね…こればっかりは予想外でした。いえ、予想は出来たかもしれないんですけど」

 

共工の力を手にした韓暹は最後の最後で余計な置き土産をしてくれたのだ。

 

「共工は敗北した時にとんでもない災害を起こすんですよね」

 

例えば不周山に頭突きを喰らわせ破壊して天地が崩そうとしたり等だ。

今回の災害は天地をどうこうというわけではない。幽州の一部の地で祟りや呪いが蔓延ってしまったからである。

 

「ワガハイのせいかー…」

「いやいや、太歳星君のせいじゃないから!?」

 

韓暹との戦いで太歳星君は彼に呪いを注ぎ込んだ。それこそ韓暹が呪い袋のような状態になる程まで。

呪い袋状態の彼を打神鞭で圧し潰せば呪いは当たり前のように破裂して呪いが周囲に噴き出す。その結果、周囲の地に呪いや祟りによって汚染されてしまったのである。

 

「流石は共工だ。敗北してなお傷跡を残すか」

「厄介悪神」

 

幽州の一部の地を呪いで汚染させたのが本当に共工のせいかと言われれば微妙なところである。

 

「このまま元の時代には戻れませんよね」

「そもそも元の時代に戻れる感じはしないけど」

 

目の前には呪いによって汚染された土地。どうやって正常な土地に戻すかと考えていた時に強者の気配を感じとる。

 

「なんだか凄い事になってるわねん。呪いが幽州の地を汚染しちゃってるじゃなぁい」

「誰だ」

 

黄飛虎がすぐさま莫邪宝剣を構えるが現れた相手を見て莫邪宝剣を降ろした。

 

「貂蝉殿か」

 

現れた強者とは貂蝉であった。黄飛虎も太公望も貂蝉と初めて出会った時、「なんという強者だ」とか「あれ…もしかして仙人とかそういう関係者だったりします?」とか言っていた。

本当に貂蝉は何者なんだと思ってしまう。尤も正体は外史の管理者という上位存在と知っているのだが。

 

「あらん。貴方たち私を知ってるのぉ?」

「え」

 

貂蝉は黄飛虎お顔や藤丸立香の顔を見て、初対面の感想が口から出ていた。

 

「あら、そっちの子はカワイイわねん。ご主人様みたいにとってもイ・イ・オ・ト・コの子」

 

バチンとウインクする貂蝉。太公望が小声で「ウインクでバチンって擬音初めて聞きました」とか呟いた。

 

「えと、オレらの事を知らないんですか?」

「え、私ってば新手のナンパされちゃってるの。もーう、私ってば都一の踊り子だからしょうがないのだけれど私には心に決めたご主人様がいるのよん」

 

ナンパされてると思って貂蝉は身体をくねくねさせる。

 

「…本当に知らないのか」

 

貂蝉が演技をしているようには見えない。本当に貂蝉は藤丸立香と初対面のようであった。

 

(貂蝉は確か外史の管理者でしたっけ)

(そうだよ太公望)

(ふむ…時間を超越している存在かと思っていましたが、完全に時系列から切り離された存在というわけではないのかもしれませんね)

 

貂蝉は外史の管理者で様々な外史世界に飛ぶことができ、様々な時代を超える事が出来るが全ての外史世界と時間軸の記憶を共有しているようではないようだ。

目の前にいる貂蝉は藤丸立香たちをまだ知らない。

 

(どうしよう…ここは正直に話す?)

(相手が外史の管理者なら正直に話してもいいでしょう)

 

外史の管理者である貂蝉は外史世界の均衡を保とうとする。そしてイレギュラーである藤丸立香たちも外史を壊そうとするつもりはない。

ここで正直に話せるものだけ話して協力してもらう方が一番だ。藤丸立香は今までの事を貂蝉に話せる範囲の全て説明していく。

 

「なぁるほどねん」

 

説明を受けた貂蝉はすんなりと納得した。普通であれば藤丸立香たちの説明を聞いても信じられないものだが、そこは外史の管理者として可能性が無くはないと判断したのだ。

 

「立香ちゃんたちの事を信じるわ。未来の私はとんでもない仕事をやってるのねー…。ま、今はそれよりもこの呪いによって汚染された地をどうにかしないといけないんだけど」

 

呪いによって汚染された地をこのままにすれば元の時代で間違いなく大問題に繋がる。なんなら幽州という地が消えているかもしれないのだ。

 

「どうするか」

「ここはワガハイがどうにかするぞ」

「太歳星君?」

 

手を元気よく手を挙げる。

 

「太歳星君どうやって?」

「簡単だぞ。ワガハイが地に潜るだけ」

 

幽州の地を汚染している呪いは元々、太歳星君の呪いだ。

その呪いを生み出した本人が抑える事など容易いという事である。

 

「潜るって…」

「なるほど視肉として呪いを抑え込むというわけですか」

 

太公望は太歳星君の考えを一瞬で理解する。

 

「そうだぞ」

 

太歳星君は視肉(太歳)として同一視される。視肉(太歳)は掘り起こされると恐ろしい祟り(呪い)が放出されると言われている。

ならば逆説的に考えてみれば視肉(太歳)が掘り起こされなければ祟り(呪い)も何も起きないという事になる。

 

「ワガハイがこの地に潜って呪いを全部回収するぞ」

「でもそれじゃ太歳星君と一緒に元の時代に戻れないじゃないか」

「大丈夫だぞ。であであのマスター未来で待ってるから。それに…たぶんだけどワガハイがこの地に潜らないと皆が元の時代に帰れないと思う」

「太歳星君…」

 

今思えば過去の呉に転移したのは太歳星君であろう肉塊を見つけて調べようとした時だ。それはある意味、視肉(太歳)を掘り起こしたからと言える。尤も掘り起こしたつもりはないのだが。

掘り起こした事で過去への転移が起動したのであれば、視肉(太歳)を埋める事で元の時代への転移が起動するというのはある意味繋がっている。

 

「おそらくですけど…太歳星君に仕掛けていた転移術式は貴方が組み込んだと思われます」

 

太公望がチラリと貂蝉を見る。その視線に貂蝉は両手を挙げて「やれやれ」とため息を吐いた。

 

「たぶん私だと思うわよん。だって、今この瞬間にそう考えていたから」

「そうなの?」

「だって立香ちゃんたちは未来から来たんでしょ。その辻褄が合うように調整するつもりだったしぃ」

 

未来と過去の辻褄を合わせる為に貂蝉が色々と調整する。その色々というのが太歳星君に組み込まれていた謎の転移術式だったのだ。

 

「大丈夫だぞ。ワガハイは未来でであであのマスターたちに見つかっているならすぐに会える!!」

「…太歳星君」

「それにイェンイェンやサイサイ達に会えるんでしょ?」

「うん、そうだね」

 

そう返事をした時、藤丸立香や太公望たちの身体が光り始める。

 

「え」

「転移のスイッチが入ったんでしょうねん」

 

やはり太歳星君が幽州の地で埋まる事が藤丸立香たちが元の時代に戻る最後の起動スイッチだったようだ。

 

「またね であであのマスター!!」

「うん。すぐに再会しよう太歳星君」

 

藤丸立香たちは元の時代に戻って行った。

彼らが元の時代に帰ったのを見送った太歳星君と貂蝉は最後の仕事をこなすだけである。

 

「じゃあチョウチョウ。ワガハイが埋まるの手伝ってー」

「あらやだ。私が蝶々だなんて口説き上手な男の子ねえ。まあ、華蝶仮面2号をやってるんだけれど」

 

そういう意味で言ったわけでは無い太歳星君。しかし太歳星君はよく分かっていない。

 

「掘って太歳星君ちゃんを優しく埋めればいいのねん」

「うん」

「私の手刀は地面を天元突破するわぁん!!」

 

軽く手刀で地面を抉った貂蝉。そして太歳星君はその穴に元気よくジャンプした。

 

「おやすみー」

「う~ん…太歳星君ちゃんみたいな可愛い男の子を地面に埋める…絵顔的にヤバァイわね」

 

軽く猟奇的な犯罪をしている感覚の貂蝉。罪悪感がヤバイ事になっていた。

最後の仕事をこなした貂蝉は腕を組んで考える。

 

「この外史のこの時代でおかしなものを感知したから来たけど…こういう事だったのね」

 

貂蝉は両手を挙げる。

 

「この記憶は忘れていた方がいいわね。色々と辻褄を合わせる為に…まあ、覚えていたい記憶もあるけど仕方ないわねえ」

挙げた両手を己のこみかめ部分に勢いよく叩いた。

 

「漢女式 忘心掌底衝撃波!!」

 

掌底による衝撃波が貂蝉を襲う。

 

「くわんくわんくわあぁん………はっ!?」

 

自分でこめかみ部分に掌底を食らわせて一瞬だけくらくらしていたがすぐに覚醒する貂蝉。

 

「ここはどこ。私はだあれ?」

「ここは幽州でお主は貂蝉だろうが」

「あら卑弥呼いつの間に」

「ついさっきだ」

 

いつの間にか卑弥呼が貂蝉の背後に現れていた。

 

「こりゃ凄い。呪いが土地を汚染しているではないか。何がどうなったらこうなるのだ」

「ええ…でも大丈夫よん」

「大丈夫ではなかろうが」

「いいえ、もう大丈夫よ。記憶は無いけど対処はしたから」

「そんな台詞で信じられるか」

「いいえ、信じて」

 

真剣な目に卑弥呼はため息を吐いた。

 

「まったく…どういう対処をしたんだ」

「自分で忘れたけどもうもう問題ないわ。まあ、呪いの汚染が消えるまで私が見張っておくから」

「なら任せたぞ。私も忙しいからな…それに最近まで大人しかった于吉や左慈たちの様子が少し変だ。色々とやるべき事がある」

 

そう言って卑弥呼は別の外史に飛ぶのであった。

 

「何で自分自身で記憶を忘れたかは未来で答え合わせ出来るかしら」

 

これにて過去の呉での物語は終わったのであった。

 

 

2011

 

 

五胡の拠点にて。

 

「おかえりなさい。過去の呉ではどうでしたか?」

「最悪でした。韓暹は命令違反するし、私の事を都合のいい駒扱いするしで最悪の上司でした」

「それはそれは大変でしたね」

 

于吉は過去の呉から戻って来た監視者に労いの言葉を口にする。

 

「それで命令違反した韓暹は何処です?」

「アイツなら負けちゃいましたよ。おっきな柱に圧し潰されました」

「大きな柱?」

「はい。太公望が持ってた杖っぽいの」

「ああ…打神鞭ですか」

 

幹部が1人敗北したというのに于吉も監視者も特に落胆も焦ってもいない。

 

「封神されましたか…彼には共工の力を与えたというのに。共工が封神か…笑えるんだが笑えないんだが反応に困ります」

 

白波三鬼衆の1人が敗北。戦力が減ってしまったがしょうがないとすぐに切り替える于吉。

彼にとって幹部が1人減っても計画に何も支障が無いと判断しているからである。決戦まで白波三鬼衆が1人減ったところで何も問題無いのだ。

 

「そうだ。貴女い与えた力は使えこなせそうですか?」

「まだまだですね。完全に使いこなせるまでは時間がかかりそうです」

「そうですか。まあ、徐々に慣れてください」

「分かりました」

 

監視者に与えた異能は戦闘向けではない。しかし完全に使いこなせた時こそある意味恐ろしいものになる。

 

「建物を異界化するその異能は便利ですからねえ」

「私も逃げる時とか便利だと思ってますね」

 

異界化する異能は様々な場合で様々な応用が出来る。

 

「さて、何は何であれお仕事お疲れさまでした。ゆっくり休んでまた三国での潜入捜査を頼みますね」

「はい」

 

監視者の女性は自室に戻っていくのであった。

 

「……カルデアはやはり厄介ですね。共工の力を与えた人間まで倒しますか」

「やっぱカルデアを潰すか?」

「左慈」

 

左慈が気配も無く現れた。

 

「必ずしも倒す必要はありません。我らの目的達成にカルデアを倒すというのはありませんから」

「計画の邪魔にはなるだろう」

「まあ、五胡には勝ってもらいたいのでカルデアが三国の助力しているのは邪魔っちゃ邪魔なんですよね」

「三国の戦力を減らすのもそうだがカルデアの戦力を減らすのも視野に入れるか?」

「その為に白波三鬼衆で実験してるんですけどね」

 

白波三鬼衆で実験とは神霊の力を利用するというものだ。

 

「その実験は上手くいってるのか?」

「はい。どうやら共工を倒すのにカルデアのマスター及びに英霊を四騎で倒したそうなので」

「ほう?」

「なので神霊人間をあと数人用意出来ればと思います」

「可能なのか。神霊を人間に組み込むのは簡単ではないぞ?」

 

人間の肉体に神霊を埋め込むのは簡単ではない。しかし不可能というわけでもない。

 

「疑似サーヴァントというものが存在しますからね。それを元に色々と実験中ですよ」

 

その成功例が韓暹(共工)であったのだ。

 

「神霊と波長の合う人間か」

「いやあ、成功するのにけっこう犠牲を出しちゃいましたね」

「ふん。貴様もエグイ奴だ」

「いえいえ、私は優しいですよ?」

 

ニヤリと微笑を浮かべる于吉だが、その微笑が悍ましい。

 

「それにカルデアのマスターと北郷一刀に仕掛けた術式も順調です」

「決戦には間に合いそうか?」

「微妙な所ですね。間に合えば良いんですけど、こればっかり向こう任せな部分もあるので」

「じゃあ、そっちは期待しないでおくか」

 

左慈は懐から出した肉まんを齧る。

 

「決戦では女カと劉豹、暗影たち…それと楊奉が居れば戦力は十分ですよ」

「ならさっさと女カには覚醒してもらわないとな」

 

五胡が完全に動き出す時まで、そう遅くはない。




読んでくださってありがとうございました。
江東の虎物語編の次回で最後です。
なので次回の更新はなんとか今月中というか今年中で投稿します!!


2008~2009
洪水から助かったのは雷火が混天綾を使用したおかげでした。
今回の戦いは宝貝が大活躍ですね。

敵との決着第一段階は太歳星君と哪吒が決めました。
そしてそして本当の決着は太公望が決めました。
共工を倒すのに色々と逸話とかも調べて物語に組み込みましたね。

朝廷で炎蓮たち別れましたが…もっと良い感じの別れがあっても良かったかな。
けっこう急すぎた感があったかもしれません。
でも敵を逃がさないために急いで追いかけたという事でなんとか…。
もっとドラマ性があった方がよかった…(投稿しておいてぐだぐだと書く作者)


2010
最後の仕事。
過去と未来の辻褄を合わせる為のもの
太歳星君が何故、キノコの山にいた理由が今回のもの。
実はキノコの山は幽州の地にあったのでした。
そして太歳星君に組み込まれていた転移術式は予想通り貂蝉が組み込んだもの。


2011
今回の作戦は失敗したけど于吉は冷静です。
敗北しても彼にとって計画通りなので。
そして監視者の女性…彼女の正体はまだ内緒です。
恋姫キャラなのは確かです。ヒントは眼鏡の女の子キャラ。

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